JP3840939B2 - 軟窒化処理用鋼およびその製造方法 - Google Patents
軟窒化処理用鋼およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3840939B2 JP3840939B2 JP2001293085A JP2001293085A JP3840939B2 JP 3840939 B2 JP3840939 B2 JP 3840939B2 JP 2001293085 A JP2001293085 A JP 2001293085A JP 2001293085 A JP2001293085 A JP 2001293085A JP 3840939 B2 JP3840939 B2 JP 3840939B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- steel
- less
- rolling
- soft nitriding
- temperature
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Heat Treatment Of Sheet Steel (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス加工を行い軟窒化処理を施す軟窒化処理用鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、自動車などの工業製品の部品材料として用いることができるプレス加工性に優れた軟窒化処理用鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
表面硬化処理は、鋼の表面を硬化させるのと同時に、鋼の表面に残留応力を生じさせ、耐摩耗性や耐疲労性を向上させる処理である。現在実用化されている代表的な表面硬化処理の方法としては、浸炭処理と窒化処理が挙げられる。
【0003】
浸炭処理は、鋼をγ域まで昇温し、鋼の表面に炭素を拡散・浸透させる処理であって、浸炭後は焼入を行い表面硬化を図る。浸炭処理では、高温域まで昇温するため、深い硬化硬さが得られるが、浸炭後に焼入・焼戻が必要となるため、鋼に歪みが生じやすい。このため、浸炭処理した鋼を、例えば自動車のトランスミッションなど、回転を伴う部分に使用される部品には使用できない。歪みは焼入後にプレステンパー処理などの特殊処理を行うことにより除去することはできるが、特殊処理に伴う時間的、コスト的な損失の発生は避けられない。
【0004】
一方、窒化処理は、A1点以下で窒素と炭素を同時に拡散・浸透させる処理である。窒化処理では、加熱温度が500〜550℃と低く、加熱により相変態することはないため、浸炭処理のように鋼に歪みが生じることはない。しかし、その処理時間が50〜100時間と著しく長く、処理後も表面に生成した脆い化合物層を除去する必要があるなど、この場合も時間的、コスト的な損失の発生は避けられない。
【0005】
そこで、軟窒化処理と呼ばれる方法が開発されている。軟窒化処理は、NaCNに空気を吹き込みNaCNOに変化させ、窒化能を低下させた溶融塩に付けた浸炭ガス中にNH3を添加して鋼の窒化を行う表面硬化処理の方法である。軟窒化処理は、上記窒化処理と同様に相変態することのないため、鋼に歪みが生じることがなく、さらに、窒化処理に比べその処理時間は約半分ですむ。そのため、近年、機械構造物に用いる部品の表面硬化処理の方法として急速に普及しつつある。
【0006】
そのような軟窒化処理を施すための軟窒化処理用鋼の製造方法として、例えば、特許第2906996号公報には、冷間鍛造性および疲労特性に優れた軟窒化処理用鋼の製造方法が、特許第2907011号公報には、熱処理歪みの少ない軟窒化処理用鋼の製造方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
軟窒化処理は、予め軟窒化処理用鋼を求める形状に成形した後に施されるため、軟窒化処理用鋼には、加工性が求められる。その加工には、切削加工や塑性加工など様々な加工法が用いられるが、切削加工では、切削に時間がかかり、かつ加工コストも高くなる。よって、軟窒化処理用鋼を求める形状に成形するには、塑性加工が多用されている。
【0008】
塑性加工でも特にプレス加工は、同一の形状の成形体を短時間に大量に形成でき、コストの面からも優れた加工法である。そのため、軟窒化処理用鋼の成形には、プレス加工を用いることが好ましいが、前述の公報に記載された軟窒化処理用鋼にプレス加工を用いることは、炭素などの添加元素の含有量が多いため、伸びなどの加工性に劣るため、困難である。
【0009】
一方、特許第3153108号公報や特開平9−25543号公報には、良好なプレス加工性を有する軟窒化処理用鋼が開示されている。しかし、これらの軟窒化処理用鋼を製造するには、鋼の炭素含有量を極めて少なく制限する、および/または鋼に高価な元素を添加するといったことをしなけらばならず、製鋼コストや材料コストが増大し、結果として最終的な製造コストが増大する。
【0010】
本発明の課題は、以上のような課題を解決するものであり、安価でプレス加工性のよい軟窒化処理用鋼板およびその鋼板からなるプレス成形体ならびに軟窒化処理用鋼板の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、まず、鋼の成分組成について考えた。前述の特許第3153108号公報や特開平9−25543号公報に記載の軟窒化処理用鋼では、TiやVといった高価な元素を必須の添加元素とする。このため、鋼の材料コストは増大する。鋼の材料コストを安価に抑えるためには、このような高価な元素を添加しなければよい。そこで、これらの元素を添加せず、軟窒化処理に適した成分組成について検討した。
【0012】
そして、TiやVを含有しない鋼に対し、プレス加工性が良好となる軟窒化処理用鋼の製造方法について検討した。軟窒化処理用鋼に限らず、一般に鋼の特性はその製造方法にも依存する。例えば、同じ組成を有する鋼であっても製造条件の相違により結晶粒径に相違が生じ、その結果、諸特性に相違が生じる。鋼の結晶粒径が粗大となると、プレス加工した際、プレス成形体の表面に肌荒れや割れが発生する。このようなプレス加工によって発生する欠陥は、製造時の諸温度や圧下率などを適切に制御し、鋼自体の諸特性を整えることで、その発生を抑えることができる。
【0013】
本発明は、上述の知見をもとに完成に至ったものであり、その要旨は、下記(1)を特徴とする軟窒化処理用鋼板ならびに下記(2)および(3)を特徴とする軟窒化処理用鋼板の製造方法にある。
【0014】
(1)質量%で、C:0.03%以上0.10%未満、Si:0.005〜0.10%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.20〜2.00%を含有し、不純物として、S:0.01%以下、P:0.020%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.01%以下であり、残部がFeおよび不純物からなり、JIS G 0552で規定されるフェライト結晶粒度が粒度番号で5以上12以下であることを特徴とするプレス加工性に優れた軟窒化処理用鋼板。
【0015】
(2)質量%で、C:0.03%以上0.10%未満、Si:0.005〜0.10%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.20〜2.00%を含有し、不純物として、S:0.01%以下、P:0.020%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.01%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる鋼材を仕上圧延機の出側における鋼材の温度がAr3点以上950℃以下となるように熱間圧延し、巻取温度500℃以上700℃以下で巻き取ることを特徴とするプレス加工性に優れた軟窒化処理用熱延鋼板の製造方法。
【0016】
(3)質量%で、C:0.03%以上0.10%未満、Si:0.005〜0.10%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.20〜2.00%を含有し、不純物として、S:0.01%以下、P:0.020%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.01%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる鋼材を熱間圧延した後、圧下率30%以上で冷間圧延を行い、600℃以上Ac1以下で焼鈍を施し、調質圧延を行うことを特徴とするプレス加工性に優れた軟窒化処理用冷延鋼板の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
本願の第1発明は、プレス加工性に優れた軟窒化処理用鋼板に関する発明である。ここで、プレス加工とは、深絞り加工、曲げ加工、しごき加工、打ち抜き加工などを総称した加工法をいい、プレス加工性に優れたとは、鋼材に大きな強度を付加しなくてもプレス加工が可能であって、プレス加工を施したときプレス成形体に実質的に欠陥となりうる割れなどが発生しないことをいう。また、軟窒化処理用鋼は、板状または帯状である鋼、すなわち鋼板または鋼帯を指すことができるが、以下説明では、軟窒化処理用鋼または鋼は鋼板に限定するものとする。
【0018】
本願の第2発明および第3発明は軟窒化処理用鋼板の製造方法に関する発明であって、第2発明は熱間圧延による製造方法、第3発明は冷間圧延による製造方法である。
【0019】
以下では、本発明に関し、(1)鋼または鋼材の成分組成および結晶粒度、(2)熱間圧延による製造方法、および(3)冷間圧延による製造方法についてそれぞれ詳細に述べる。
【0020】
(1)鋼または鋼材の成分組成および結晶粒度
鋼または鋼材(以下、これらをまとめて鋼と示す)の成分組成は、以下の通りである。なお、以下に述べる化学組成の%表示はいずれも質量%を意味する。
【0021】
C:0.03%以上0.10%未満
Cは鋼のプレス加工性に寄与する元素である。C含有量が低いほど、プレス加工性は良くなるが、含有量の過剰な低減は製鋼工程での製鋼時間が必要以上に長くなるので、製鋼コストの上昇を招く。よって、C含有量は0.03%以上であることが好ましい。一方、鋼に0.10%以上のCが含有している場合には、鋼のプレス加工性が悪くなる。よって、C含有量は0.10%未満であることが必要である。
【0022】
Si:0.005〜0.10%
Siは製鋼段階で脱酸剤として必要な元素である。Si含有量が多いと、表面性状が悪化し、鋼板にスケール模様が発生する。これにより表面粗度が粗くなると製品の見栄えが悪くなるため、Si含有量は低いほどよい。しかし、Si含有量の過剰な低減は製綱コストの上昇を招く。よって、Si含有量は0.005%以上であることが好ましい。一方、表面性状の悪化を防止するためには、Si含有量は0.10%以下であることが必要である。好ましくは、Si含有量は0.05%以下である。
【0023】
Mn:0.1〜1.0%
Mnは不純物として含有する固溶Sによる鋼表面の微細割れをなくしヘゲ疵を防止する効果を有する。この効果を得るにはMn含有量を0.1%以上とすることが必要である。しかし、Mn含有量が1.0%を超えると鋼の強度が上昇し、プレス加工性を害する上、材料コストが増大する。そのため、Mn含有量は1.0%以下であることが必要である。好ましくは、Mn含有量は0.60%以下である。
【0024】
Cr:0.2〜2.0%
Crは軟窒化処理に対し鋼表面の窒化を促進し、表面硬さを高くする効果を有する。この効果を得るにはCr含有量を0.2%以上とすることが必要である。好ましくは、Cr含有量は0.5%以上である。一方、Cr含有量は多いほど表面硬さおよび硬化深さが上昇するが、Cr含有量が2.0%を超えると表面に強固な軟窒化処理層が形成され、硬化深さが減少するため、軟窒化処理が適切に行われない上、材料コストが増大する。そのため、Cr含有量は2.0%以下であることが必要である。好ましくは、Cr含有量は1.5%以下である。
【0025】
この他、不純物として、S:0.01%以下、P:0.020%以下、sol.Al(可溶性Al):0.10%以下、N:0.01%以下であることが必要である。特にSはプレス加工性の悪化を招くため、好ましくは0.0050%以下とすることが好ましい。
【0026】
そして、以上のような成分組成からなる軟窒化処理用鋼は、JIS G 0552で規定されるフェライト結晶粒度が粒度番号で5以上12以下であることが必要である。粒度番号が5未満では、プレス成形時に肌荒れや割れが発生する。一方、粒度番号が12超では、特殊な条件で圧延を行う必要があり、実用的ではない。
【0027】
(2)熱間圧延による製造方法
熱間圧延による製造方法(第2発明)では、上記(1)の成分組成を含有する鋼材を仕上圧延機の出側における鋼材の温度がAr3点以上950℃以下となるように熱間圧延し、巻取温度500℃以上700℃以下で巻き取ることによって、軟窒化処理用鋼を製造する。
【0028】
熱間圧延する際、仕上圧延工程では、通常、7台程度の仕上圧延機を用いるが、このとき、仕上圧延機の出側における鋼材の温度、すなわち出側の最終の仕上圧延機を通過したときの鋼材の温度がAr3点以上950℃以下であることが必要である。この温度がAr3点未満であると、鋼に粗大な結晶粒が形成され、軟窒化処理用鋼としてプレス加工を施したとき、いわゆるオレンジピールと呼ばれる肌荒れが発生する。一方、950℃を超えると鋼表面に形成されるスケールが剥離しやすくなり、調質圧延ラインまたは酸洗ラインを通過中に剥離したスケールにより押込み疵が発生するなど表面不良が発生しやすくなる。鋼材の温度をこの温度範囲内に制御する方法は問わない。例えば、鋼材の温度の低下を抑えるために、仕上圧延工程においてヒータを設けるなどしてもよい。
【0029】
そして、上述したように熱間圧延した後は、圧延された鋼材を巻取温度500℃以上700℃以下で巻き取る。巻取温度を500℃未満とすると、鋼自体の機械的強度が大きくなりすぎ、プレス加工性が悪化する。一方、巻取温度を700℃超とすると、鋼表面に形成されるスケールが剥離しやすくなり、調質圧延ラインまたは酸洗ラインを通過中に剥離したスケールにより押込み疵が発生するなど表面不良が発生しやすくなる。
【0030】
(3)冷間圧延による製造方法
冷間圧延による製造方法(第3発明)では、上記(1)の成分組成を含有する鋼材を熱間圧延した後、圧下率30%以上95%以下で冷間圧延を行い、600℃以上Ac1以下で焼鈍を施し、調質圧延を行うことによって、軟窒化処理用鋼を製造する。
【0031】
この製造方法では、まず鋼材に熱間圧延を施す。ここでの熱間圧延は、冷間圧延の素材とする鋼材を作るために行うものであり、その方法は問わない。
【0032】
次に、この鋼材に冷間圧延を施す。このとき、冷間圧延は圧下率30%以上95%以下で行うことが必要である。圧下率を30%未満とすると、焼鈍の際に結晶の成長が促進され結晶粒が粗大になるので、プレス加工時に肌荒れや割れが生じる場合がある。一方、圧下率を95%超とすると、圧延時の破断や圧延パス回数の増大など操業上あるいはコスト上の問題が生じる。
【0033】
続いて、冷間圧延した鋼材に焼鈍を施す。焼鈍は鋼材を再結晶させるために行われ、再結晶が起こることにより、冷間加工で鋼材に蓄積された歪みエネルギーが解放されるためにプレス加工性が向上する。このとき、焼鈍温度は600℃以上Ac1点以下とすることが必要である。焼鈍温度を600℃未満とすると、再結晶が不十分となり、十分なプレス加工性が得られない。一方、焼鈍温度をAc1点超とすると、鋼材の組織が部分的にオーステナイト組織となり、焼鈍後、粗大パーライト組織または焼入れ組織(マルテンサイト組織)が生じるため、プレス加工性が悪くなる。焼鈍方法については、特に問わない。箱焼鈍(バッチ焼鈍)、連続焼鈍のいずれも用いてもよい。
【0034】
最後に、焼鈍した鋼材に調質圧延を施す。調質圧延はこの工程以前の工程で生じた加工しまやひずみ模様の除去や硬度向上のために行うものであり、その方法は問わない。
【0035】
以上のように熱間圧延または冷間圧延により製造された鋼は、プレス加工性に優れ、軟窒化処理用鋼として適した特性を有する。熱間圧延か冷間圧延の選択は、この鋼をプレス加工したプレス成形体に求められる特性より決定すればよい。
【0036】
【実施例】
まず、第2発明にしたがい、熱間圧延により軟窒化処理用鋼を作製した。
【0037】
表1は、作製に際し用いた鋼材の成分組成およびAr3点を示した表である。表1において、番号1〜4および12〜14は本発明に係る鋼(鋼材)の成分組成の範囲内にある鋼材であり、番号5〜11は本発明に係る鋼(鋼材)の成分組成の範囲外にある鋼材である。
【0038】
【表1】
これらの鋼材に対し、仕上圧延機の出側における鋼材の温度が任意の温度になるように調整し、熱間圧延後の鋼材の厚みが1.6mmとなるように熱間圧延した後、任意の巻取温度でこれらの鋼材の巻き取りを行った。
【0039】
表2は、このときの仕上圧延機の出側における鋼材の温度と巻取温度を示した表である。表2において、番号1〜11は第3発明で規定する温度範囲内にあるものであり、番号12〜14は第3発明で規定する温度範囲外にあるものである。
【0040】
【表2】
巻取後の鋼に対しては、プレス加工性を調べるために、引張強度、全伸びを測定するとともに、密着曲げによる外観検査を行った。引張強度および全伸びの測定には、JIS Z 2201にしたがって引張試験片を作製し、JIS Z 2241にしたがって引張試験を行った。また、密着曲げによる外観検査は、曲げ試験によって鋼の曲げ角度が180℃になるように曲げて目視により割れの有無を検査した。ここで、引張強度が440MPa以下、全伸びが40%以上、外観に割れがないまたは問題とならない程度の微細な割れしかないものを合格品とした。さらには、JIS G 0552にしたがってフェライト結晶粒度について調べた。
【0041】
一方、軟窒化処理層の特性(以下、軟窒化特性という)を調べるために、表面硬度、硬化深さおよび表面性状について調査した。表面硬度と硬化深さは、鋼を保持時間として3時間、軟窒化処理ガス中に保持し、軟窒化処理層を形成した後、JIS Z 2244にしたがってビッカース硬さ試験により測定した。表面性状は、軟窒化処理層を目視することにより調べた。ここで、表面硬度はビッカース硬さが600(Hv10kg)以上のものを、硬度深さは表層から0.1mmの位置でのビッカース硬さが500(Hv100g)以上のものを、表面性状は目視により検査しスケール模様、カブレ疵などのないものを合格品とした。
【0042】
表3は、熱間圧延により軟窒化処理用鋼を製造したときのプレス加工性、結晶粒度および軟窒化特性を示した表である。
【0043】
【表3】
番号1〜4については、第2発明にしたがって製造された鋼のため、プレス加工性、結晶粒度および軟窒化特性はともに良好であったのに対し、番号5〜14については、プレス加工性または軟窒化特性が悪く軟窒化処理用鋼としての特性を有していなかった。
【0044】
番号5〜14のうち、番号5〜11は、本発明の成分組成の範囲外の成分組成を有する鋼材を使用したものである。番号5はC含有量が多く、引張強度が高くなり、全伸びも不足した。番号6はSi含有量が多く、鋼表面にスケール模様が発生した。番号7はMn含有量が少なく、軟窒化処理層にカブレ疵が多数発生した。番号8はMn含有量が多く、引張強度が高くなり、全伸びも不足した。番号9はS含有量が高く、曲げ試験によって端部に割れが発生した。番号10はCr含有量が少なく、軟窒化処理層が適切に形成されず、表面硬度および硬化深さが得られなかった。番号11はCr含有量が多く、硬化深さが得られなかった。
【0045】
一方、番号5〜14のうち、番号12〜14は第3発明で規定する温度範囲外の温度で製造したものである。番号12は仕上圧延機の出側における鋼材の温度をAr3点以下としたため、曲げ試験において肌荒れや割れが発生した。番号13は巻取温度を700℃以上としたため、スケールが剥離し鋼の表面に押込み疵が多数発生した。番号14は巻取温度を500℃以下としたため、引張強度が高くなり、全伸びも不足した。
【0046】
次に、第3発明にしたがい、冷間圧延により軟窒化処理用鋼を作製した。
【0047】
表4は、作製に際し用いた鋼材の成分組成およびAr1点を示した表である。表4に示すように、冷間圧延により作製した軟窒化処理用鋼についてはすべて同じ成分組成のものを用いた。
【0048】
【表4】
これらの鋼材に対し、通常の熱間圧延した後、冷間圧延後の鋼材の厚みが1.6mmとなるように任意の圧下率で冷間圧延を行い、任意の温度で焼鈍を施し、調質圧延を行った。
【0049】
表5は、このときの圧下率および焼鈍温度を示した表である。表5において、番号15〜17は第3発明で規定する圧下率、焼鈍温度の範囲内にあるものであり、番号18〜20は第3発明で規定する圧下率、焼鈍温度の範囲外にあるものである。
【0050】
【表5】
調質圧延後の鋼に対しては、上述の熱間圧延により軟窒化処理用鋼と同様に、プレス加工性、結晶粒度および軟窒化特性について調べた。このとき、試験方法や合格品の判断基準などについては、上述したものと同じである。
【0051】
表6は、冷間圧延により軟窒化処理用鋼を製造したときのプレス加工性、結晶粒度および軟窒化特性を示した表である。
【0052】
【表6】
番号15〜17については、第4発明にしたがって製造された鋼のため、プレス加工性、結晶粒度および軟窒化特性はともに良好であったのに対し、番号18〜20については、プレス加工性が悪く軟窒化処理用鋼としての特性を有していなかった。番号18は圧下率が低いため、曲げ試験において肌荒れや割れが発生した。番号19および20は焼鈍温度が第4発明で規定する温度範囲外であったため、引張強度が高くなり、全伸びも不足した。
【0053】
以上示すように、第2発明または第3発明を製造した鋼はプレス加工性および軟窒化特性に優れ、軟窒化処理用鋼としても特性を有する。
【0054】
【発明の効果】
本発明に係る軟窒化処理用鋼は、鋼に含有する成分組成を限定し、製造時の諸温度や圧下率などを制御するだけで製造することができ、プレス加工性に優れ、しかも高価な元素を含有していないため、材料にかかるコストも低い。
【0055】
この鋼を用いれば、プレス成形体も安価に製造することができ、プレス成形体に形成した軟窒化処理層は優れた特性を示す。
Claims (3)
- 質量%で、C:0.03%以上0.10%未満、Si:0.005〜0.10%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.20〜2.00%を含有し、不純物として、S:0.01%以下、P:0.020%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.01%以下であり、残部がFeおよび不純物からなり、JIS G 0552で規定されるフェライト結晶粒度が粒度番号で5以上12以下であることを特徴とするプレス加工性に優れた軟窒化処理用鋼板。
- 質量%で、C:0.03%以上0.10%未満、Si:0.005〜0.10%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.20〜2.00%を含有し、不純物として、S:0.01%以下、P:0.020%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.01%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる鋼材を仕上圧延機の出側における鋼材の温度がAr3点以上950℃以下となるように熱間圧延し、巻取温度500℃以上700℃以下で巻き取ることを特徴とするプレス加工性に優れた軟窒化処理用熱延鋼板の製造方法。
- 質量%で、C:0.03%以上0.10%未満、Si:0.005〜0.10%、Mn:0.1〜1.0%、Cr:0.20〜2.00%を含有し、不純物として、S:0.01%以下、P:0.020%以下、sol.Al:0.10%以下、N:0.01%以下であり、残部がFeおよび不純物からなる鋼材を熱間圧延した後、圧下率30%以上で冷間圧延を行い、600℃以上Ac1以下で焼鈍を施し、調質圧延を行うことを特徴とするプレス加工性に優れた軟窒化処理用冷延鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001293085A JP3840939B2 (ja) | 2001-09-26 | 2001-09-26 | 軟窒化処理用鋼およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001293085A JP3840939B2 (ja) | 2001-09-26 | 2001-09-26 | 軟窒化処理用鋼およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003105489A JP2003105489A (ja) | 2003-04-09 |
JP3840939B2 true JP3840939B2 (ja) | 2006-11-01 |
Family
ID=19114945
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001293085A Expired - Fee Related JP3840939B2 (ja) | 2001-09-26 | 2001-09-26 | 軟窒化処理用鋼およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3840939B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006117982A (ja) * | 2004-10-20 | 2006-05-11 | Exedy Corp | 車両の駆動系部品の製造方法 |
CN102839324B (zh) * | 2011-06-24 | 2014-07-23 | 宝山钢铁股份有限公司 | 一种高频电阻焊石油套管用钢、套管及其制造方法 |
CN104080938B (zh) | 2012-01-31 | 2016-01-20 | 杰富意钢铁株式会社 | 发电机轮毂用热轧钢板及其制造方法 |
US10077489B2 (en) | 2012-06-27 | 2018-09-18 | Jfe Steel Corporation | Steel sheet for soft-nitriding and method for manufacturing the same |
US10077485B2 (en) | 2012-06-27 | 2018-09-18 | Jfe Steel Corporation | Steel sheet for soft-nitriding and method for manufacturing the same |
US10344371B2 (en) | 2014-06-13 | 2019-07-09 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corporation | Steel sheet for soft-nitriding treatment, method of manufacturing same, and soft-nitrided steel |
-
2001
- 2001-09-26 JP JP2001293085A patent/JP3840939B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003105489A (ja) | 2003-04-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP2103697B1 (en) | High carbon hot-rolled steel sheet | |
EP3098330B1 (en) | Material for cold-rolled stainless steel sheet and method for producing same | |
EP2801636B1 (en) | High carbon hot-rolled steel sheet and method for producing same | |
EP2465962A1 (en) | High-strength steel sheets and processes for production of the same | |
EP3181714B1 (en) | Material for cold-rolled stainless steel sheets | |
EP3530769A1 (en) | Martensitic stainless steel sheet | |
JP5664797B2 (ja) | 疲労強度に優れる窒化用熱延鋼板、窒化用冷延鋼板及びそれらの製造方法、並びにそれらを用いた疲労強度に優れた自動車部品 | |
EP2253729B1 (en) | High-strength metal sheet for use in cans, and manufacturing method therefor | |
EP2955242B1 (en) | Steel sheet for nitriding and production method therefor | |
EP2241645B1 (en) | High-strength stainless steel material and process for production of the same | |
EP2801635B1 (en) | High carbon hot-rolled steel sheet with excellent hardenability and minimal in-plane anisotropy, and method for producing same | |
KR101735220B1 (ko) | 연질화 처리용 강판 및 그 제조 방법 | |
KR101701652B1 (ko) | 연질화 처리용 강판 및 그 제조 방법 | |
JP3840939B2 (ja) | 軟窒化処理用鋼およびその製造方法 | |
JP3578435B2 (ja) | プレス成形性と表面性状に優れた構造用熱延鋼板およびその 製造方法 | |
JP3928454B2 (ja) | 窒化処理用薄鋼板 | |
JP2007162138A (ja) | 窒化処理用鋼板およびその製造方法 | |
JP2002155339A (ja) | 深絞り性に優れた中・高炭素鋼 | |
CN111315907B (zh) | 钢板 | |
EP1975268A1 (en) | Cold-rolled steel sheet and method for manufacture thereof | |
JP4325245B2 (ja) | 耐久疲労特性に優れた窒化処理部材およびその製造方法 | |
EP3546602B1 (en) | Method for manufacturing a quenched molding | |
JP2004232078A (ja) | 成形性に優れる超高強度冷延鋼板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20040310 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040706 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20040824 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20041025 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060314 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060421 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060718 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060731 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 3840939 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090818 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100818 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110818 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110818 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120818 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120818 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130818 Year of fee payment: 7 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130818 Year of fee payment: 7 |
|
S111 | Request for change of ownership or part of ownership |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130818 Year of fee payment: 7 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
S533 | Written request for registration of change of name |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533 |
|
R350 | Written notification of registration of transfer |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |