JP3839731B2 - 無線基地局用装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、移動無線システムにおいて、サービスエリア(領域)を複数のセクタ(扇形)に分割してサービスを行う無線基地局用装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信方式において、周波数利用効率を高めるために一つの基地局のサービスエリアを複数のセクタに分割するセクタ方式がある。セクタ方式ではそれぞれのセクタにおける無線通信サービスを独立に提供しているために、一つの無線基地局にセクタごとに無線機器を別個に設置していた。例えば、PDC(Personal degital cellular)で一般的である3セクタ対応基地局では、図3Aに示すようにサービス領域が120度角間隔の3つのセクタSA1,SA2,SA3に分割され、各セクタSA1,SA2,SA3にそれぞれアンテナA1,A2,A3が設けられ、図3Bに示すように、アンテナA1,A2,A3はアンテナ共用器11−1,11−2,11−3に接続される。セクタSA1,SA2,SA3用の各変調装置12−1,12−2,12−3よりの変調出力信号は送信増幅器13−1,13−2,13−3でそれぞれ電力増幅され、フィーダ14−1,14−2,14−3をそれぞれ通じ、更にアンテナ共用器11−1,11−2,11−3をそれぞれ通じてアンテナA1,A2,A3に給電される。アンナテ共用器11−1,11−2,11−3で分離されたアンテナA1,A2,A3の各受信信号は低雑音増幅器15−1,15−2,15−3をそれぞれ通じて復調装置16−1,16−2,16−3へ供給される。
【0003】
つまり各セクタSA1,SA2,SA3ごとにそれぞれアンテナAs(s=1,2,3)、アンテナ共用器11−s、変調装置12−s、送信増幅器13−s、フィーダ14−s、低雑音増幅器15−s、復調器16−sを備えるセクタ用無線装置17−1,17−2,17−3を個別に設けて、各セクタSA1,SA2,SA3ごとに無線通信サービスを独立に提供していた。
ところで複数系統の送信増幅器の低消費電力化を可能にする増幅器構成として、マルチポート増幅装置がある。典型的なマルチポート増幅装置の構成を図4に示す。マルチポート増幅装置は、例えば入力側ハイブリッド回路(多端子電力合成器)21と、複数の主増幅器22−1〜22−Nと、出力側ハイブリッド回路(多端子電力合成器)22にて構成される。入力側ハイブリッド回路21及び出力側ハイブリッド回路23は、一般にπ/2ハイブリッドを用いたバトラーマトリックス回路にて構成される。
【0004】
マルチポート増幅装置は入力される信号を入力側多端子電力合成器(ハイブリッド回路)21にて複数の主増幅器22−1〜22−Nに均等に分配して増幅し、これら増幅出力を出力側多端子電力合成器(ハイブリッド回路)23で各系統に分配することで、各系統の負荷によらずマルチポート増幅装置の各増幅器22−1〜22−Nへの入力電力を均一にできる特徴がある。しかしながら、図3に示されるような従来の増幅器構成(個別構成)では、入力系統の負荷によらず各増幅器は最大負荷を想定して設計される。このためマルチポートアンプ構成全体の飽和出力は、個別構成全体の飽和出力の系統数分の1にできる。
【0005】
マルチポート増幅装置はその構成上から他系統への電力漏洩を生じる問題がある。一般に電力漏洩はアイソレーションにて評価される。マルチビームまたはアダプティブアレーシステムにマルチポート増幅装置を適用すると、アイソレーションはビームまたはヌル方向の設計値からの誤差を生じる。このため、マルチポート増幅装置のアイソレーションをなるべく高くする必要があった。
このアイソレーションを高めるには、ハイブリッド及び個別増幅器の利得及び位相特性を均一化する必要がある。これらの関係は、文献(江上俊一郎、川合誠、多端子電力合成形マルチビーム送信系、電子情報通信学会論文誌B,Vol.J69-B,No.2,pp.206-212,Feb.1986)に示されている。8系統のポート間のアイソレーションを20dB以上達成するには、利得偏差±1dB、位相偏差±10deg以内が必要である。これらの偏差を達成するために、ハイブリッド及び個別増幅器の電気的特性の均一化が必要であり、その均一化の調整に多大な労力を必要としていた。これまでに人工衛星搭載用マルチポート増幅装置のアイソレーションは20dBである(参考文献、山本員市、堀川浩二、田中将義、ETS−VI搭載2.5GHz帯100W出力マルチポート増幅器、1990年電子情報通信学会春季全国大会、B−204,Mar.1990)。又、従来のマルチポートアンプ構成のアイソレーションを60dB以上達成することは、その調整精度の観点から実現することがきわめて困難である。
【0006】
このような点からこの発明者等は国際公開WO01/22574A1公報(2001年3月29日公開)によりフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器を提案した。この原理的構成を図5に示す。この発明によれば、図4に示した入力側多端子電力合成器21と、増幅器22−1と出力側多端子電力合成器23から成る従来の多端子電力合成形電力増幅器に対し、各系統の入力ポートIPn(n=1,…,N)と出力ポートOPn間において主増幅器22−nを含むフィードフォワード増幅回路24−nを構成する。
多端子電力合成形電力増幅器では、ハイブリッドの電気的特性と主増幅器の電気的特性のばらつきにより、ポート間に電力漏洩を生じる。そのため、ポート間で干渉が生じ、アレーアンテナで形成されるビーム指向性が所定の設計通りにならない。アレーアンテナで形成されるビーム指向性を設計どおりにするには、ポート間アイソレーションをなるべく小さくする必要がある。そのためには、主増幅器及び入力側及び出力側多端子電力合成器を構成するπ/2ハイブリッドの特性のばらつきを小さくする必要がある。π/2ハイブリッドの特性は比較的容易に高い精度で構成できる。そこで、各系統ごとに主増幅器22−nに対しフィードフォワード増幅回路24−nを構成することで、主増幅器22−nの電気的特性のばらつきを小さくする。その結果、他ポートへの電力漏洩を小さくでき、従って、ポート間アイソレーションを大きくできる。
【0007】
図6にその具体例を示す。この例は、図5に示した原理的構成における各フィードフォワード増幅回路24−nを入力側多端子電力合成器21と出力側多端子電力合成器23との間に各ポートに対応して構成したものである。即ち、N系統の入力端子IP1,…,IPNを有し、N系統の入力電力合成及び分配を行う入力側多端子電力合成器21と、入力側多端子電力合成器21のN個の出力端子にそれぞれ接続されたN系統の独立したフイードフォワード増幅回路24−1,…,24−Nと、N系統のフィードフォワード増幅回路24−1,…,24−Nの出力端子にそれぞれ接続された入力端子を持ち、N系統の出力端子OP1,…,OPNに接続された出力側多端子電力合成器23とからフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器が構成される。
【0008】
各フィードフォワード増幅回路24−nは入力信号を主増幅器経路4AMと線形信号伝達経路4ALに分配する電力分配器41と、主増幅器経路4AMに直列に挿入された第1可変位相器4P1、第1可変減衰器4A1及び主増幅器22−nと、主増幅器経路4AMの出力と線形信号伝達経路4ALの出力を分配合成し、主信号伝達経路4BMと歪注入経路4DLに出力する電力分配・合成器42と、歪注入経路4DLに直列に挿入された第2可変位相器4P2、第2可変減衰器4A2及び補助増幅器4Xと、主信号伝達経路4BMの出力と歪注入経路4DLの出力を電力合成し、主増幅器22−nの生成した歪をキャンセルする電力合成器43とから構成される。フィードフォワード増幅回路24−nの電力分配器41から電力分配・合成器42までのループを歪検出回路40Aと呼び、電力分配・合成器42から電力合成器43までのループを歪除去回路40Bと呼ぶ。
【0009】
線形信号伝達経路4ALと主信号伝達経路4BMは単にケーブルから成る遅延線路であり、電力分配器41、電力分配・合成器42、電力合成器43などは、例えば方向性結合器あるいはハイブリッドで構成される。歪検出回路40Aの線形信号伝達経路4ALに対し、第1可変減衰器4A1と第1可変位相器4P1を調整して電力分配器42の歪注入経路4DLへの出力側で主信号成分がキャンセルされ、主増幅器22−nによる非線形歪成分(差成分)だけが残るようにすることにより、歪検出回路40Aのループを平衡させる。同様に、歪除去回路40Bの主信号伝達経路4BMの信号に対し、第2可変減衰器4A2及び第2可変位相器4P2を調整して電力合成器43の出力側で主増幅器22−nの非線形歪成分がキャンセルされ主信号成分だけが残るようにすることにより、歪除去回路40Bのループを平衡させる。主増幅器22−nの非線形歪を除去するためのこの様なフィードフォワード増幅回路自体はよく知られている技術である。
【0010】
次にこのフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器の電気的特性の均一性について説明する。
図6に示す各フィードフォワード増幅器24−nは、歪検出回路40Aと歪除去回路40Bに遅延線路40D1,40D2を持つ。歪検出回路40A及び歪除去回路40Bは、電力分配・合成器42及び電力合成器43で、それぞれの経路4AMと4AL及び4BMと4DLからの信号を等振幅、等遅延、逆位相になるように片方の経路で振幅と位相を調整して二経路の信号を合成する。このとき振幅と位相の調整精度により、歪検出回路40A及び歪除去回路40Bのループ平衡性がきまる。日本国特許出願公開No.1−198809号「フィードフォワード増幅器の自動利得調整回路」に示されているように、例えば、30dB以上の歪抑圧量を得るためには振幅偏差及び位相偏差がそれぞれ±0.3dB及び±2deg以内のループ平衡性を達成する必要がある。
【0011】
線形信号伝達経路4ALを構成する遅延線路は電力分配器41と電力分配・合成器42間を接続するケーブルであり、その長さにより遅延量が決まるので、この遅延量のばらつき、即ち長さのばらつきは非常に小さくできる。第1可変位相器4P1はこの遅延線路4ALを基準として調整すればよいので、これも精度高く決めることができる。実際のループの平衡調整においては、この種の技術において通常用いられているように、第1パイロット信号を使って位相及び振幅調整を行うことにより、高精度にループ平衡調整ができ、その結果、ループの位相偏差を±2deg以内、振幅偏差を±0.3dB以内とすることが比較的容易に可能である。歪除去回路40Bのループ平衡調整も同様に遅延線で構成された主信号伝達経路4BMを基準として第2可変位相器4P2を第2可変減衰器4A2と共に調整すればよいので、第2パイロット信号を使って位相偏差±2deg以内、振幅偏差±0.3dB以内の高精度のループ平衡調整ができる。
【0012】
このように、多端子電力合成形電力増幅器における複数の主増幅器の均一な電気的特性を実現する方法として、それぞれの主増幅器をフィードフォワード構成化することが有効である。
この公報で提案されているフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器は、複数の通信系統を1つの無線装置として処理する場合に限らずマルチビーム及びアダプティブアレーアンテナのための送信増幅器にも適用できることが示されている。しかし、あくまでも1つの無線装置において用いられている複数の増幅器を有効利用する考えである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
セクタ対応基地局では、前述したようにセクタ数の無線装置を備える。このため、基地局設備は消費電力、装置規模がセクタ数倍となる。今後、現行PDCシステムとIMT(International Mobile Telecommunications)システムの設備を同一建物または中継設備に収容する必要性があり、より低消費電力かつ小型・軽量の基地局設備が求められる。この発明の目的は、上記の背景のもと小型・軽量及び低消費電力化の可能な、セクタ対応の無線基地局用装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
従来、各セクタごとに設けられていた無線装置の少くとも送信電力増幅器を一体化し、少くとも各セクタ対応の入力ポート、出力ポートを有する多端子電力合成形増幅器を構成し、かつ各セクタ対応の入力ポートと出力ポート間において、これら送信電力増幅器の少くとも1つを主増幅器とし、主増幅器から生じる歪成分を除去するフィードフォワード増幅回路をそれぞれ構成し、セクタ対応の出力ポートを対応するセクタアンテナに給電接続する。例えば、3セクタであれば、フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器の入力端子は少くとも3である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1にこの発明の実施形態を示し、図3〜図5と対応する部分には同一参照符号を付けてある。この例ではFDD(Frequency Division Duplex)用3セクタ基地局用装置にこの発明を適用した場合である。この実施例では3つのセクタSA1,SA2,SA3に対する無線装置中の少くとも電力増幅系はフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器を有する1つの無線装置として一体化される。
つまりこの基地局用装置のサービス領域は3つのセクタSA1,SA2,SA3に分割され、各セクタSA1,SA2,SA3にそれぞれアンテナA1,A2,A3が設けられ、各アンテナA1,A2,A3にアンテナ共用器11−1,11−2,11−3が接続され、アンテナ共用器11−1,11−2,11−3にそれぞれ低雑音増幅器15−1,15−2,15−3を通じて各セクタ用復調装置16−1,16−2,16−3が接続される。
【0016】
この実施形態においては各セクタ用変調装置12−1,12−2,12−3の出力側と接続された入力ポートIP1,IP2,IP3と、アンテナA1,A2,A3への送信給電端子、つまりこの例ではアンテナ共用器11−1,11−2,11−3の送信入力側に接続された出力ポートOP1,OP2,OP3との間に主増幅器22−1,22−2,22−3を有する多端子電力合成形電力増幅器31が接続され、更に各セクタ対応入力ポートIP1とOP1間、IP2とOP2間、IP3とOP3間に、主増幅器22−1,22−2,22−3をそれぞれ含み、その主増幅器が生成する歪成分を除去するフィードフォワード増幅回路32−1,32−2,32−3がそれぞれ構成される。
【0017】
図1Bでは図が複雑になるためフィードフォワード増幅回路32−3の部分だけ各部を示し、他のフィードフォワード増幅回路32−1,32−2は一部のみしか示していないが、これら3つのフィードフォワード増幅回路32−1,32−2,32−3は同一構成とされる。
各フィードフォワード増幅回路32−1,32−2,32−3において、図6と対応する部分に同一参照符号を付けて示すように入力ポートIP3よりのセクタSA1,SA2,SA3とそれぞれ対応する変調信号が電力分配器41で主増幅器経路4AMと線形信号伝達経路4ALとにそれぞれ分配される。各主増幅器経路4AMに分配された変調信号は第1可変位相器4P1、第1可変減衰器4A1をそれぞれ通じて、多端子電力合成形電力増幅器31における多端子電力合成器21の対応する1つの入力ポートに供給される。
【0018】
これら各変調信号は主増幅器22−1,22−2,22−3に分配されて電力増幅され、これら電力増幅出力は多端子電力合成器23で各セクタ用変調装置12−1,12−2,12−3の出力変調信号ごとに合成されて各1つのポートを通じて電力分配・合成器42へそれぞれ供給される。各線形信号伝達経路4ALに分配された変調信号は対応する電力分配・合成器42へそれぞれ供給される。主増幅器経路4AMは多端子電力合成形電力増幅器31においては、多端子電力合成器21の1つの入力ポートからの1つのセクタ用変調信号は3つの主増幅器22−1,22−2,22−3を通じて多端子電力合成器23の1つの出力ポートへ出力される。従って、その1つの入力ポートから主増幅器22−1,22−2,22−3を通じ、1つの出力ポートに達する経路は、各フィードフォワード増幅回路32−1,32−2,32−3における1つの主信号増幅器経路4AMの一部を構成し、つまり3つの主増幅器21−1〜21−3は、フィードフォワード増幅回路32−1,32−2,32−3の主増幅器経路4AMの一部を共通に構成していることになる。
【0019】
各フィードフォワード増幅回路32−1,32−2,32−3で各電力分配・合成器42においてその主増幅器経路4AM及び線形信号伝達経路4ALよりの各セクタ用変調信号が分配合成されて、主信号伝達経路4BMと、第2可変位相器4P2、第2可変減衰器4A2及び補助増幅器4Xよりなる歪注入経路4DLとをそれぞれ通じてそれぞれの電力合成器43へ供給される。これら多端子電力合成形電力増幅器31とフィードフォワード増幅回路32−1,32−2,32−3とによりフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33が構成される。
【0020】
この構成により、電力分配・合成器42より歪注入経路4DLに注入される歪成分は、主増幅器22−1,22−2,22−3でそれぞれ生成され、これら歪成分中の各セクタ用変調装置12−1,12−2,12−3の変調信号が分配電力増幅されたものが多端子電力合成器23の各1つの出力ポートに合成される経路と同一の経路でそれぞれ合成されたものであり、これが各電力分配・合成器42から電力合成器43までの歪除去回路40Bで各セクタSA1,SA2,SA3用の変調信号の電力増幅出力から除去されて、共用器11−1,11−2,11−3を通じてセクタSA1,SA2,SA3のアンテナA1,A2,A3へそれぞれ給電される。
【0021】
3セクタ対応のため、フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33は少くとも3入力3出力である。多端子電力合成器21,23の構成は、例えばバトラーマトリックス構成の3端子分配器等で構成される。4入力4出力のフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33を用いる場合は、4端子の内一つの端子を終端器にて終端する。これにより、3セクタの送信信号を4つの主増幅器22−1〜22−4で電力増幅を行う、この構成はいわゆる冗長構成となる。仮に1つの主増幅器が故障しても他の主増幅器を共通利用して送信信号を電力増幅できる。
【0022】
3セクタSA1,SA2,SA3に対するフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33の消費電力は、従来の独立な無線装置を3セクタSA1,SA2,SA3に用いる構成と比較して、1/3となる。フィードフォワード4端子電力合成形電力増幅器33を用いる場合の消費電力は、独立な無線装置を3セクタSA1,SA2,SA3に用いる構成と比較して、4/9となる。このように、フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33を用いることにより構成が多少冗長になるが従来のセクタごとに独立な無線装置を用いる場合と比較して低消費電力化を達成する。
【0023】
図2にフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33と共用器11−1,11−2,11−3と低雑音増幅器15−1,15−2,15−3を、アンテナA1,A2,A3用の塔(図に示していない)に塔頂装置34として設けた場合を示す。塔頂装置34のフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33、低雑音増幅器15−1〜15−3は、中継設備に収容された変調装置12−1〜12−3、復調装置16−1〜16−3と同軸ケーブル又は光ファイバのケーブル35−1〜35−3、36−1〜36−3により接続される。これらケーブル35−1〜35−3、36−1〜36−3はそれぞれ、文献(鈴木恭宜、陳凝、垂澤芳明、廣田哲夫、野島俊雄、2GHz帯塔頂設置型アダプティブアレーRF回路、電子情報通信学会無線通信システム研究会、RCS2001−81、July2001)に示されるように多重化されてもよい。この図2に示す基地局装置構成は、図3に示した従来構成に比べて低消費電力化を可能にしており、フロントエンドの塔頂設置を可能にしている。
【0024】
ちなみに、例えば、PDCのようなTDMAシステムの場合、各セクタごとに運用する周波数とそのチャネル数が異なる。他セクタへの電力漏洩は、他チャネルへの電力漏洩となる。この電力漏洩の許容値に関しては、他チャネルへの漏洩電力に関する規格値以下にする必要がある。PDCであれば、送信スプリアスを送信出力に対して−60dB以下または2.5μWにしなければならない(文献、デジタル方式自動車電話システム標準規格RCR STD−27)。所でフィードフォワード構成による歪抑圧量は、特願昭63−23574「フィードフォワード増幅器の自動調整回路」に示されている。例えば、30dB以上の歪抑圧量を得るための振幅偏差及び位相偏差において、それぞれ±2deg及び±0.3dB以内のループ平衡性を達成する必要がある。一方端子間のアイソレーションを30dB達成する多端子電力合成形電力増幅器の利得標準偏差と位相量標準偏差はそれぞれ0.7dBと5degであり、フィードフォワード構成による歪抑圧量30dB以下の振幅偏差及び位相偏差の方が少ない偏差を実現できる。
【0025】
このため、フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器33によれば、従来のマルチポート電力増幅器(多端子電力合成形電力増幅器)よりも十分アイソレーションをとれる。仮に主増幅器部分のマルチポート電力増幅器31のアイソレーションを30dB、歪除去回路40Bの歪成分抑圧量を30dBとすれば、全体としてアイソレーション60dBを達成できる。これは上述したPDC方式の送信スプリアス規格を満足するものである。
この発明においても、前記公報で説明しているように、パイロット信号を用いた各種手法により、歪検出回路40A、歪除去回路40Bの各ループを高精度に平衡状態に保持させることができる。
【0026】
図1と図2にはFDD方式用基地局用装置を示したが、この発明は、FDD方式のみならずTDD(Time Divition Duplex)方式についても同様に適用して同様の効果がある。TDD方式では、FDD方式用基地局用装置におけるアンテナ共用器11−1,11−2,11−3をRFスイッチに置き換え、送信側と受信側とを切換える構成に変更するだけでよい。
上述では3セクタ基地局用装置にこの発明を適用したが、6セクタ基地局用装置、その他の複数セクタ基地局用装置にも適用できる。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたようにこの発明によれば、複数セクタの基地局の無線装置を一体化し、セクタ基地局設備の低消費電力化、送信電力増幅器の小型化・軽量化をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Aはセクタとアンテナの配置例を示す図、Bはこの発明の実施形態を示す機能構成図である。
【図2】この発明の他の実施形態を示す機能構成図。
【図3】Aはセクタとアンテナの配置例を示す図、Bは従来のセクタ基地局用装置の構成を示す図である。
【図4】従来の多端子電力合成形電力増幅器を示す図。
【図5】従来のフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器を示す図。
【図6】従来のフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器の具体例を示す図。

Claims (4)

  1. 複数のサービスセクタにそれぞれアンテナを備え、上記各セクタ対応の変調装置よりの搬送波周波数が互いに異なる変調出力信号をそれぞれ電力増幅して対応するアンテナへ給電する無線基地局用装置において、上記各変調装置よりの変調信号がそれぞれ供給される複数の入力ポート、電力増幅出力を対応するセクタのアンテナへ給電する複数の出力ポート、複数の主増幅器を有する多端子電力合成形電力増幅器と、上記セクタ対応の入力ポートと出力ポートの間において上記複数の主増幅器を含んで構成され、これら主増幅器が生成する歪成分をそれぞれ除去する複数のフィードフォワード増幅回路とを具備し、
    上記多端子電力合成形電力増幅器を構成する各回路及び上記複数のフィードフォワード増幅回路を構成する各回路は、上記各セクタ対応変調装置の全ての搬送周波数帯をカバーする特性であり、
    更に、上記多端子電力合成形電力増幅器と上記複数のフィードフォワード増幅回路によりフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器が構成され
    上記各アンテナと出力ポートとの間に挿入され、アンテナよりの受信信号を、アンテナへの送信信号と分離して出力する複数のアンテナ共用器と、これらアンテナ共用器よりの分離された受信信号をそれぞれ増幅する複数の受信増幅器と、
    上記フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器とが塔頂装置として、上記アンテナが設けられている塔に設置されていることを特徴とする無線基地局用装置。
  2. 複数のサービスセクタにそれぞれアンテナを備え、上記各セクタ対応の変調装置よりの搬送波周波数が互いに異なる変調出力信号をそれぞれ電力増幅して対応するアンテナへ給電する無線基地局用装置において、上記各変調装置よりの変調信号がそれぞれ供給される複数の入力ポートに接続された入力側多端子電力合成器と、その入力側多端子電力合成器の各出力端子に接続された複数のフィードフォワード増幅回路と、これらフィードフォワード増幅回路よりの各電力増幅出力を入力とし、出力端子が対応するセクタのアンテナへ給電する複数の出力ポートに接続された出力側多端子電力合成器とを具備し、
    上記入力側多端子電力合成器と、上記複数のフィードフォワード増幅回路、上記出力側多端子電力合成器を構成する各回路は、上記各セクタ対応変調装置の全ての搬送周波数帯をカバーする特性であり、
    更に、上記入力側多端子電力合成器、上記複数のフィードフォワード増幅回路及び上記出力側多端子電力合成器によりフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器が構成され
    上記各アンテナと出力ポートとの間に挿入され、アンテナよりの受信信号を、アンテナへの送信信号と分離して出力する複数のアンテナ共用器と、これらアンテナ共用器よりの分離された受信信号をそれぞれ増幅する複数の受信増幅器と、
    上記フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器とが塔頂装置として、上記アンテナが設けられている塔に設置されていることを特徴とする無線基地局用装置。
  3. 複数のサービスセクタにそれぞれアンテナを備え、上記各セクタ対応の変調装置よりの搬送波周波数が互いに異なる変調出力信号をそれぞれ電力増幅して対応するアンテナへ給電する無線基地局用装置において、上記各変調装置よりの変調信号がそれぞれ供給される複数の入力ポート、電力増幅出力を対応するセクタのアンテナへ給電する複数の出力ポート、複数の主増幅器を有する多端子電力合成形電力増幅器と、上記セクタ対応の入力ポートと出力ポートの間において上記複数の主増幅器を含んで構成され、これら主増幅器が生成する歪成分をそれぞれ除去する複数のフィードフォワード増幅回路とを具備し、
    上記多端子電力合成形電力増幅器を構成する各回路及び上記複数のフィードフォワード増幅回路を構成する各回路は、上記各セクタ対応変調装置の全ての搬送周波数帯をカバーする特性であり、
    更に、上記多端子電力合成形電力増幅器と上記複数のフィードフォワード増幅回路によりフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器が構成され
    上記各セクタ対応に設けられた複数の受信増幅器と、上記各アンテナに接続され、対応するセクタの出力ポートと対応するセクタの受信増幅器の入力側とを切替え接続する複数の送受信切替えスイッチと、
    上記フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器とが塔頂装置として、上記アンテナが設けられている塔に設置されていることを特徴とする無線基地局用装置。
  4. 複数のサービスセクタにそれぞれアンテナを備え、上記各セクタ対応の変調装置よりの搬送波周波数が互いに異なる変調出力信号をそれぞれ電力増幅して対応するアンテナへ給電する無線基地局用装置において、上記各変調装置よりの変調信号がそれぞれ供給される複数の入力ポートに接続された入力側多端子電力合成器と、その入力側多端子電力合成器の各出力端子に接続された複数のフィードフォワード増幅回路と、これらフィードフォワード増幅回路よりの各電力増幅出力を入力とし、出力端子が対応するセクタのアンテナへ給電する複数の出力ポートに接続された出力側多端子電力合成器とを具備し、
    上記入力側多端子電力合成器と、上記複数のフィードフォワード増幅回路と、上記出力側多端子電力合成器を構成する各回路は、上記各セクタ対応変調装置の全ての搬送周波数帯をカバーする特性であり、
    更に、上記入力側多端子電力合成器、上記複数のフィードフォワード増幅回路及び上記出力側多端子電力合成器によりフィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器が構成され
    上記各セクタ対応に設けられた複数の受信増幅器と、上記各アンテナに接続され、対応するセクタの出力ポートと対応するセクタの受信増幅器の入力側とを切替え接続する複数の送受信切替えスイッチと、
    上記フィードフォワード多端子電力合成形電力増幅器とが塔頂装置として、上記アンテナが設けられている塔に設置されていることを特徴とする無線基地局用装置。
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