JP3836386B2 - 被覆粒状肥料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥料の溶出が精度良く調節された多層被覆粒状肥料及びその製造方法に関する。
詳しくは、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする被覆材で一次被覆され、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする被覆材で二次被覆された多層被覆粒状肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、閉鎖性水域の富栄養化や硝酸性窒素による地下水汚染などの環境問題から、肥料の低減など環境負荷軽減が課題となっている。また、農業人口の減少、従事者の高齢化により省力型肥料が要請され多くの被覆粒状肥料が開発され市販・実用化されている。しかし現在市販されている被覆粒状肥料の大半は、一般にリニア型と云われ肥料成分の溶出曲線が大略直線的である。このリニア型被覆粒状肥料は従来の化成肥料と比べて肥料成分の溶出が制御されており、追肥施用を相当省略することができその需要量は年々増加している。植物は幼苗期はあまり肥料成分を必要とせず、成長期に多く必要とする。この植物生育段階を考慮すると、リニア型被覆粒状肥料も初期における溶出率が大きいためさらなる改良が求められている。
【0003】
このような要請に対応すべく、シグモイド型と云われる溶出曲線がS字状を描く被覆粒状肥料が開発されている。即ち、この肥料は、初期における溶出率が極力抑制され、植物の成育段階に対応して溶出率が大きくなるように工夫された被覆粒状肥料である。このような技術を開示した文献として例えば、特許第2819194号、特許第2867175号、特開平8-151286号公報、特開平10-291881号公報等がある。例えば、特許第2819194号は、粒状肥料の表面に、アルカリ物質からなる第一被覆層が形成され、該第一被覆層の表面に、オレフィン系重合体とアルカリ水可溶性重合体との混合物からなる第二被覆層が形成された被覆粒状肥料を開示し、特許第2867175号は、粒状肥料の表面に高吸水膨潤性物質からなる第一被覆層が形成され、該第一被覆層の表面にオレフィン系重合体からなる第二被覆層が形成された重層被覆粒状肥料を開示している。
【0004】
また、特開平8-151286号公報は、粒状肥料の表面がワックス類で一次被覆され、さらにその表面がアルキッド樹脂と水に可溶あるいは膨潤する物質で二次被覆された後、一次被覆材を溶融もしくは軟化処理した多層被覆粒状肥料を開示し、特開平10-291881号公報は、粒状肥料の外部が、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂からなる少なくとも1層の被膜で被覆された被覆粒状肥料を開示している。
しかしこれら開示技術も、製造が煩雑であったり、肥料が高価となったり、溶出制御が困難であったり、また効果が必ずしも充分期待できないことなどが考えられる。
【0005】
一方、被覆粒状肥料を使用する上での問題として、被覆材が生分解性樹脂でない場合、被膜が圃場に残留し環境汚染を招来することがある。また、被覆材に溶剤型樹脂を使用した場合、大気汚染を招来し、また、被膜成形時に於ける作業者人体への影響(毒性)、火災(引火性)等の問題があり、加えて溶剤の除去、回収には複雑な操作と、多大の費用を要する。そのため、製造時に有機溶剤を使用することなく、且つ生分解性を考慮しやすい天然産物を使用したウレタン樹脂を被覆材として使用した被覆肥料が提案されている。
【0006】
ヒマシ油をウレタン樹脂成分として使用した場合、液状で取り扱いやすい、即ち、溶剤を使用しなくて良いといった利点に加え、ブロッキング性が少ないという利点がある。
例えば、米国特許第5538531号公報は、徐放性肥料及びその製造方法を開示している。この徐放性肥料は、内側の被膜は、(A)1分子あたり約1.5〜3個のNCO基を含有し、且つNCO含有量が10〜50質量%である芳香族ポリイソシアネートまたはその誘導体と、(B)2〜6個のヒドロキシル基を有し、約10〜22個の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルキル基を有するポリオールの反応生成物からなり、好適なポリオールとしてヒマシ油及び水素化ヒマシ油が、ポリイソシアネートとして、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが例示されている。外側の被膜は、滴下融点50〜120℃の有機ワックスからなる。
【0007】
また、特公平7-16648号公報にはポリイソシアネート、フェノールホルマリン縮合物、ヒドロキシル基含有軟化剤、触媒アミンからなる無溶剤型被覆剤が開示されている。そこでは、ウレタン被膜の軟化剤としてヒマシ油が使用され、必須成分としてフェノールとアルデヒドの縮合物を含むポリオール成分、他に任意に塗布組成物の希釈剤としてヒドロキシル基含有化合物が使用される。また、特許第2916762号にはオキシエチレン基とエステル基を含有するポリウレタン樹脂からなる被覆剤が、さらに、特許第3161997号にはポリオール成分とポリイソシアネート成分から誘導され、ポリオール成分としてヒマシ油及びその誘導体を使用した被覆剤が開示されている。特開平10-265288号公報には芳香族ポリイソシアネートから得られるイソシアネート基末端プレポリマー、ヒマシ油又はヒマシ油誘導体ポリオール、アミン系ポリオールからなるポリウレタン樹脂で被覆された被覆粒状肥料が、特開2001-213685号公報にはヒマシ油とポリエーテルポリオールの混合物、またはヒマシ油とポリエーテルポリオールの反応生成物からなるポリウレタンで被覆された徐放性肥料粒子が開示されている。
しかしながら、粒状肥料の被膜として、ヒマシ油を用いたポリウレタン被膜を利用するこれら公知の方法では、本発明の目的とする精度の良い溶出調整機能を有する被覆粒状肥料を得ることはできない。
【0008】
また、溶出時間を遅延する目的で、特開2000-44377号公報には、熱硬化性樹脂で被覆した粒状肥料において、その被覆部及び肥料部の少なくとも一方に疎水性化合物を含有させ、肥料の溶出時間を遅延させた被覆粒状肥料の開示がある。さらに、溶出調整機能を付与する目的で、特開2000-350554号公報には、ポリイソシアネートとアルキド樹脂と油からなる樹脂で被覆された尿素系製品の開示がある。しかしながら、これら方法でも必ずしも満足できる溶出調整機能は得られない。
【0009】
被膜形成法に関して云えば、特許第2532264号には、尿素肥料表面にイソシアネート化合物を過剰量反応させベースコートを形成させ、その上にポリオール化合物を反応させることを特徴とする技術の開示がある。また、特開平9-202683号公報は未硬化熱硬化性樹脂の添加と硬化を繰り返し粒状肥料表面上に被膜を形成する方法を開示している。また、その他ポリウレタン被覆方法として、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を交互に積層し反応させる方法も行われているが、十分に反応が進み難く、被膜形成に時間を要し、必ずしも工業的とは云い難い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、生分解性を考慮した原料を用い、有機溶剤を使用しない、しかも簡便な方法で、初期における溶出率が従来の被覆肥料に比べて遙かに小さい、後述する特定の溶出曲線を描く多層被覆粒状肥料及びその製造方法について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成したものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は窒素、りん酸、カリウム、マグネシウムの少なくとも一成分を含有する粒状肥料表面が、ヒマシ油とポリイソシアネートとをイソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比が0.7〜3.0の範囲で反応させた反応物で一次被覆され、アルキド樹脂とポリイソシアネートとをイソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比が0.7〜3.0の範囲で反応させた反応物で二次被覆された肥料であって、当該肥料12.5gを25℃、250mlの水中に浸漬した場合の窒素、りん酸、カリウム、マグネシウムの少なくとも一成分の溶出率が下記数3及び表4の範囲にある多層被覆粒状肥料
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】
(上記数3及び数4に於いて、 Eは溶出率%を、tは浸漬日数を示す)
に関する。別言すれば本発明は、肥料成分の初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の多層被覆粒状肥料に関する。既に述べた様に、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物を用いる利点は、反応物であるポリウレタン樹脂を被覆材として使用できる点である。ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物から成る単純な組成の一次被覆で、硬度が大きく且つ欠陥のない被膜を形成することが可能であるが、この一次被覆のみでは本発明の目的とする多層被覆粒状を得ることはできない。これに更にアルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物を二次被覆することにより、始めて本発明の目的とする特定の溶出曲線を描く多層被覆粒状肥料を製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。今、数3及び数4について説明すると、数3は多層被覆粒状肥料12.5gを25℃、250mlの水中にt(但し、20≦t≦60)日間浸漬したときに窒素(N)、りん酸(P2O5)、カリウム(K2O)、マグネシウム(MgO)の少なくとも一成分の溶出率(%)Eが、 E≦(7/4)t−25を満足することである。数4も同様である。このような溶出曲線を描く本発明多層被覆粒状肥料は、初期における溶出率が極めて小さく、植物生育段階に対応して溶出率が次第に大きくなっており、肥料成分が植物に有効に利用されることが理解される。
さて、本発明に使用するヒマシ油の品質については特に制限はない。ただ、構成脂肪酸の約90%がリシノール酸であることが望ましく、水酸基価が150〜170、粘度が500〜900mP・s(25℃)の物性を有するものがより好ましく使用される。
【0016】
また、ウレタン化に際し使用されるポリイソシアネートには、モノマーのジイソシアネートが含まれる。好適な例として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの混合物も使用することができる。しかし、これらのうち本発明の目的及び被膜形成性の点からポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートがもっとも好ましい。
【0017】
ヒマシ油とポリイソシアネートとのモル比は、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比(NCO/OH)として0.7〜3.0が好ましい。これらの比率の範囲外となると反応物即ちポリウレタンの架橋が減少し十分な耐水性被膜が得られなかったり、被膜強度が減少し被膜に欠陥が発生しやすくなり、肥料成分の初期における溶出率を小さくすることがきわめて困難となる。ところで、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物量は一次被覆の被覆量の80質量%以上であることが好ましい。80質量%を下廻ると本発明の目的を達成することが困難となる。
【0018】
本発明において、これまでとは全く異なった溶出パターン、即ち、初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の多層被覆粒状肥料を得るためには、上記一次被覆に次いで、ポリオール成分としてアルキド樹脂を使用し、一次被膜上をアルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物で二次被覆することが必要である。本発明に使用するアルキド樹脂は特に限定されるものではないが、本発明者が最も推奨するアルキド樹脂は油変性アルキド樹脂で、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸等の多塩基酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール及び変性剤として天然植物油あるいは動物油等を加熱縮合して得られる一般的なものである。しかしながら、アルキド樹脂はウレタン化して被覆材として使用するため、本発明溶出特性の観点から水酸基価は20〜400のものが好ましい。
【0019】
また、酸価に関して云えば、酸価が高いとウレタン化反応が阻害され被膜の乾燥性が悪くなり溶出率が本発明の範囲内にある多層被覆粒状肥料をうることが困難となるので、酸価は15以下、さらに好ましくは10以下で、粘度は低いものが望ましい。また、ウレタン化して樹脂とした場合の膜強度の観点から、変性剤としてはアマニ油、ヒマシ油が、多塩基酸としてはフタル酸、アジピン酸が、多価アルコールとしてはグリセリン、エチレングリコールが特に推奨される。しかし、これらに限定されるものではない。
【0020】
アルキド樹脂とポリイソシアネートの使用比率は、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比(NCO/OH)として0.7〜3.0が好ましい。これらの比率の範囲外となるとポリウレタン架橋の減少から十分な耐水性被膜が得られなかったり、被膜強度が減少し被膜に欠陥が発生しやすくなり、肥料成分の初期における溶出率を小さくすることが困難となり本発明の目的を達成すもことができない。
【0021】
アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物で二次被覆する場合、アルキド樹脂に少量のヒマシ油を予め混合して使用しても良い。しかし、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物量は二次被覆の被覆量の80質量%以上であることが好ましい。80質量%を下廻ると一次被覆の場合と同様、本発明の目的を達成することが困難となる。本発明多層被覆粒状肥料は後述するように、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物層と、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物層が、重層する様な形で粒状肥料が被覆されている。ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする一次被覆量と、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする二次被覆量の質量割合は、一次被覆の被覆量が全被覆量に対して40〜95質量%で、二次被覆の被覆量が全被覆量に対して5〜45質量%であることが好ましい。この範囲を逸脱すると本発明の特定の溶出率曲線を示す多層被覆粒状肥料を得ることが困難となる。
【0022】
ところで一次被覆と二次被覆の関係について云えば、一次被覆はピンホールなどの欠陥のない完全被膜の形成により、極力、初期の肥料成分の溶出を抑制するとともに、一定期間後の溶出速度の増大に寄与することを目的とする。二次被覆は被覆粒状肥料内部への水の浸透を抑制する効果があると推測される。一次被覆だけでは初期における溶出抑制期間の形成が困難であり、二次被覆だけでは初期における溶出率の低減ができず、且つ、その後の溶出率も増加しない。先述の通り、ポリウレタンはポリオールとポリイソシアネートの使用割合により耐水性及び被膜形成性が変化すること、また、溶出率は被覆量の影響を受けることから、一次被覆、二次被覆の溶出率への影響については一概には云えないが、二次被覆量の割合が増加する従い初期における溶出抑制期間は長くなる。また、一次被覆量の割合が増加するに従い一定期間後の溶出速度は増大する。
【0023】
一次被覆、二次被覆におけるウレタン化に際しての反応促進のため触媒を添加することは有用な技術である。触媒には公知のものを用いることができ、例えば、オクタン酸カリウム等の有機塩類、トリエチレンジアミン等のアミン化合物が使用できる。反応速度の調整の容易さ、均一な被膜の形成のし易さの点から、脂肪族モノカルボン酸カリウムが好ましい。また、ヒマシ油分子間、アルキド樹脂分子間で架橋させ、より強靭な被膜を形成する目的で、架橋触媒として、例えば、ナフテン酸マンガン、オクタン酸コバルト等の有機塩類を使用することも有用である。
【0024】
本発明に使用する肥料は粒状であれば特に限定はなく、例えば、尿素、硫安、塩安、りん安、硝安、硫酸カリ、塩化カリ、りん酸マグネシウム、硫りん安、硫加りん安、りん硝安カリ、過りん酸石灰等が代表例として挙げられる。肥料粒子の粒径に特に限定はないが、1mm〜5mmのものが好ましく使用される。
【0025】
次いで、粒状肥料への被覆方法について述べれば、流動または転動状態にある粒状肥料に対し各被覆材を付着反応させ、これを熱風等で加温することによって粒状肥料上で硬化させ被膜を形成する方法が使用できる。粒状肥料を流動、転動するには公知の方法が使用できる。例えば、流動化には流動装置や噴流動装置が、転動化には回転パンや回転ドラムの装置が使用できる。
【0026】
各被覆材は液状化し、粘度が300mP・s以下となる様に調整したものを使用する。例えば、ヒマシ油、アルキド樹脂は80〜120℃に加熱する。ポリイソシアネートは常温で300mP・s以下のものはそのまま、また、固体のものは融点以上に加熱し液状化する。被覆材の粘度が300mP・sを越えると作業性が悪くなり、さらに均一な被膜が形成されず、肥料成分溶出の制御が困難となるため好ましくない。
【0027】
肥料粒子への被覆材即ち、ヒマシ油、ポリイソシアネート、アルキド樹脂の付着方法は、肥料粒子に均一に塗布できれば特に限定はなく、スプレーによる噴霧、滴下に限らず実施できる。また、各被覆材は同一の箇所から粒状肥料に噴霧しても、あるいは別々の箇所から噴霧しても良い。
【0028】
作業性の面から、触媒はヒマシ油、アルキド樹脂に予め混合して使用し、ポリイソシアネートはヒマシ油あるいはアルキド樹脂とは別の箇所から噴霧することが好ましい。付着、反応により生成した被膜を硬化させるには、一次被覆においても、二次被覆においても室温から90℃の範囲で加熱を行うが、硬化温度が低すぎると噴霧された溶液の粘性が高くなり粒子表面上で均一な膜が形成されない。また、硬化温度が高すぎるとウレタン化反応の速度が速くなり、硬化速度を調節し難く、均一な被膜形成が困難となる。従って、加熱温度は50℃〜80℃が好ましい。被覆材の粘度を下げ、肥料粒子表面上に均一な被膜を形成させるため、また反応性を高めるために有機溶剤を使用することもできる。
【0029】
ところで、肥料粒子上への被膜の形成は被覆材の付着、硬化を繰り返すことで行われる。即ち、繰り返しによる被膜の多層化により緻密な被膜を形成することができる。一回の被膜形成に使用される被覆材の量は、被覆材の噴霧あるいは滴下速度、硬化速度等により異なり一概に言及することはできないが、一次被覆、二次被覆のいずれにおいても、被覆される粒状肥料に対し好ましくは0.3〜1.5質量%である。下限を下廻ると被覆回数が増え、工業的に不利となるばかりでなく、被覆ムラを起こしやすい。上限を上廻ると粒状肥料粒子上に多数の粒子の塊が形成され、転動あるいは流動中にこの塊が肥料粒子から離脱して被膜に欠陥が生じ好ましくない。肥料粒子への被覆材の付着、硬化の繰り返しは一次被覆にあっては少なくとも3回以上即ち、被膜を3層以上に多層化することが好ましい。上限に関して云えば、格別制限はないが工業的生産の観点から25層程度である。二次被覆について云えば、少なくとも1回以上、即ち1層以上とすることが必須であり、上限に関して云えば、一次被覆の場合と同じである。一次被覆、二次被覆ともに、肥料粒子への被覆材の付着、硬化の繰り返し工程の回数が上記範囲外となり、回数が少ない場合には、被膜に存在するピンホールの影響で初期における溶出の抑制が困難となる。また、回数が多くなると生産性が低下し、工業的に不利となる。
【0030】
ところで、溶出率が本発明の範囲内にある限り、作業性の向上及び肥効調節の補助的手段として被覆材に脂肪族エステル、ワックス、ロジンおよびその誘導体、界面活性剤、タルク、炭酸カルシウム等の各種添加剤を加えることができる。また、粒状肥料散布機により散布される等、より強靭な被膜が必要な場合には、保護膜の形成も有用であり、例えば、保護膜形成材料として、ポリエチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を利用することができる。これらの添加剤、保護膜形成剤の使用割合としては、全被覆量の40質量%以下であり、これ以上となると本発明の目的を達成することができない。
【0031】
この様にして得られる本発明多層被覆粒状肥料は、これまでとは全く異なった前記の通りの特定の溶出パターンを示す、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の多層被覆粒状肥料となっている。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。尚、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
【0033】
実施例及び比較例における使用原料の略号は下記のとおりである。
A液:ヒマシ油(水酸基価159.2、粘度695mP・s/25℃、伊藤製油(株)製、商品名URIC H-30)3000gに、触媒として脂肪族モノカルボン酸カリウム溶液(濃度70%)30gを混合し、100℃に加熱して調製した。
B液:油長47%のアマニ油ヒマシ油変性アルキド樹脂ポリオール(水酸基価191)3000g、触媒として脂肪族モノカルボン酸コバルト溶液(Co濃度8%)15g、脂肪族モノカルボン酸カリウム溶液(濃度70%)30gを混合し、100℃に加熱して調製した。
C液:ヒマシ油(水酸基価159.2、粘度695mP・s/25℃、伊藤製油(株)製、商品名URIC H-30)450g、油長47%のアマニ油ヒマシ油変性アルキド樹脂ポリオール(水酸基価191)2550g、触媒として脂肪族モノカルボン酸コバルト溶液(Co濃度8%)13g、脂肪族モノカルボン酸カリウム溶液(濃度70%)30gを混合し、100℃に加熱して調製した。
D液:ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製、商品名スミジュール44V10)
E液:ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名ゴーセノール GL-05)500gを水2500gに溶解した。
【0034】
[実施例1]
粒状尿素(平均粒径3mm)30kgを、熱風発生機を付設した遠心転動造粒コーティング装置(回転円板径780mm)に仕込み、90rpmで回転させ、粒状肥料を転動状態にし、下部より熱風を送り70℃に保持した。
加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液とを、2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を8回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この場合の被覆率は8.8%であった。
被覆率(%)=(被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100
また、窒素成分の溶出率の測定結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
二次被覆の噴霧−硬化工程を6回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0036】
[実施例3]
二次被覆の噴霧−硬化工程を4回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0037】
[実施例4]
一次被覆の噴霧−硬化工程を5回、二次被覆の噴霧−硬化工程を6回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0038】
[実施例5]
一次被覆の噴霧−硬化工程を8回、二次被覆の噴霧−硬化工程を4回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0039】
[実施例6]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は3.7g/秒の、D液は2.9g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.8g/秒の、D液は1.8g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0040】
[実施例7]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、C液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、C液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0041】
[実施例8]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被覆を形成した。次に、E液を2.5g/秒の速度で60秒間噴霧する工程と、転動させ乾燥する工程を14回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0042】
[実施例9]
粒状尿素を粒状硫加りん安肥料に変えた以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素、りん酸、カリウム成分の溶出率を表1に示す。
【0043】
[実施例10]
粒状尿素を粒状苦土過りん酸肥料に変えた以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及びりん酸とマグネシウム成分の溶出率を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧し、2分間転動させ硬化した。この噴霧−乾燥工程を9回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び溶出率を表1に示す。
【0045】
[比較例2]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧し、2分間転動させ硬化した。この噴霧−硬化工程を18回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び溶出率を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
被覆率:被覆率(%)=(被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100
溶出率:被覆粒状肥料12.5gを250mlの水に加え容器を密閉して25℃の恒温槽に入れる。これを一定期間後に取り出し肥料と溶液を分別し(*)、溶液中に溶出した肥料成分を定量し、次式により溶出率を計算した。
溶出率(%)=(溶液中の肥料成分量/被覆粒状肥料中の全肥料成分量)×100(**)
* 尚、肥料成分測定毎に、毎回分別した肥料に新たに250mlの水を加えた。
** 表中の溶出率は累積値を示す。
【0048】
上表から、ヒマシ油とアルキド樹脂を被覆材に適用したものは、初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出率変化を示すことが判る。
【0049】
【発明の効果】
本発明多層被覆粒状肥料は、肥料成分の初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の肥料で、植物の成長段階に対応して肥料成分が溶出するため、植物に有効に吸収利用され追肥等をほとんど必要としない優れた省力型肥料である。また、肥料成分が有効に吸収利用されることから河川、湖沼等への流亡がなく極めて環境に優しい肥料と云うことができる。加えて本発明多層被覆粒状肥料は、有機溶剤を使用しなくても製造可能であることから、人体や環境への影響が殆どない。また、本発明における被覆材は、生分解性のため土中に残存することがない。このように、本発明の多層被覆粒状肥料は産業上甚だ有用・有益な肥料であり、また優れた効果を奏するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、肥料の溶出が精度良く調節された多層被覆粒状肥料及びその製造方法に関する。
詳しくは、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする被覆材で一次被覆され、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする被覆材で二次被覆された多層被覆粒状肥料に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、閉鎖性水域の富栄養化や硝酸性窒素による地下水汚染などの環境問題から、肥料の低減など環境負荷軽減が課題となっている。また、農業人口の減少、従事者の高齢化により省力型肥料が要請され多くの被覆粒状肥料が開発され市販・実用化されている。しかし現在市販されている被覆粒状肥料の大半は、一般にリニア型と云われ肥料成分の溶出曲線が大略直線的である。このリニア型被覆粒状肥料は従来の化成肥料と比べて肥料成分の溶出が制御されており、追肥施用を相当省略することができその需要量は年々増加している。植物は幼苗期はあまり肥料成分を必要とせず、成長期に多く必要とする。この植物生育段階を考慮すると、リニア型被覆粒状肥料も初期における溶出率が大きいためさらなる改良が求められている。
【0003】
このような要請に対応すべく、シグモイド型と云われる溶出曲線がS字状を描く被覆粒状肥料が開発されている。即ち、この肥料は、初期における溶出率が極力抑制され、植物の成育段階に対応して溶出率が大きくなるように工夫された被覆粒状肥料である。このような技術を開示した文献として例えば、特許第2819194号、特許第2867175号、特開平8-151286号公報、特開平10-291881号公報等がある。例えば、特許第2819194号は、粒状肥料の表面に、アルカリ物質からなる第一被覆層が形成され、該第一被覆層の表面に、オレフィン系重合体とアルカリ水可溶性重合体との混合物からなる第二被覆層が形成された被覆粒状肥料を開示し、特許第2867175号は、粒状肥料の表面に高吸水膨潤性物質からなる第一被覆層が形成され、該第一被覆層の表面にオレフィン系重合体からなる第二被覆層が形成された重層被覆粒状肥料を開示している。
【0004】
また、特開平8-151286号公報は、粒状肥料の表面がワックス類で一次被覆され、さらにその表面がアルキッド樹脂と水に可溶あるいは膨潤する物質で二次被覆された後、一次被覆材を溶融もしくは軟化処理した多層被覆粒状肥料を開示し、特開平10-291881号公報は、粒状肥料の外部が、粒径1〜200μmの高吸水性物質の粒子とウレタン樹脂からなる少なくとも1層の被膜で被覆された被覆粒状肥料を開示している。
しかしこれら開示技術も、製造が煩雑であったり、肥料が高価となったり、溶出制御が困難であったり、また効果が必ずしも充分期待できないことなどが考えられる。
【0005】
一方、被覆粒状肥料を使用する上での問題として、被覆材が生分解性樹脂でない場合、被膜が圃場に残留し環境汚染を招来することがある。また、被覆材に溶剤型樹脂を使用した場合、大気汚染を招来し、また、被膜成形時に於ける作業者人体への影響(毒性)、火災(引火性)等の問題があり、加えて溶剤の除去、回収には複雑な操作と、多大の費用を要する。そのため、製造時に有機溶剤を使用することなく、且つ生分解性を考慮しやすい天然産物を使用したウレタン樹脂を被覆材として使用した被覆肥料が提案されている。
【0006】
ヒマシ油をウレタン樹脂成分として使用した場合、液状で取り扱いやすい、即ち、溶剤を使用しなくて良いといった利点に加え、ブロッキング性が少ないという利点がある。
例えば、米国特許第5538531号公報は、徐放性肥料及びその製造方法を開示している。この徐放性肥料は、内側の被膜は、(A)1分子あたり約1.5〜3個のNCO基を含有し、且つNCO含有量が10〜50質量%である芳香族ポリイソシアネートまたはその誘導体と、(B)2〜6個のヒドロキシル基を有し、約10〜22個の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルキル基を有するポリオールの反応生成物からなり、好適なポリオールとしてヒマシ油及び水素化ヒマシ油が、ポリイソシアネートとして、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートが例示されている。外側の被膜は、滴下融点50〜120℃の有機ワックスからなる。
【0007】
また、特公平7-16648号公報にはポリイソシアネート、フェノールホルマリン縮合物、ヒドロキシル基含有軟化剤、触媒アミンからなる無溶剤型被覆剤が開示されている。そこでは、ウレタン被膜の軟化剤としてヒマシ油が使用され、必須成分としてフェノールとアルデヒドの縮合物を含むポリオール成分、他に任意に塗布組成物の希釈剤としてヒドロキシル基含有化合物が使用される。また、特許第2916762号にはオキシエチレン基とエステル基を含有するポリウレタン樹脂からなる被覆剤が、さらに、特許第3161997号にはポリオール成分とポリイソシアネート成分から誘導され、ポリオール成分としてヒマシ油及びその誘導体を使用した被覆剤が開示されている。特開平10-265288号公報には芳香族ポリイソシアネートから得られるイソシアネート基末端プレポリマー、ヒマシ油又はヒマシ油誘導体ポリオール、アミン系ポリオールからなるポリウレタン樹脂で被覆された被覆粒状肥料が、特開2001-213685号公報にはヒマシ油とポリエーテルポリオールの混合物、またはヒマシ油とポリエーテルポリオールの反応生成物からなるポリウレタンで被覆された徐放性肥料粒子が開示されている。
しかしながら、粒状肥料の被膜として、ヒマシ油を用いたポリウレタン被膜を利用するこれら公知の方法では、本発明の目的とする精度の良い溶出調整機能を有する被覆粒状肥料を得ることはできない。
【0008】
また、溶出時間を遅延する目的で、特開2000-44377号公報には、熱硬化性樹脂で被覆した粒状肥料において、その被覆部及び肥料部の少なくとも一方に疎水性化合物を含有させ、肥料の溶出時間を遅延させた被覆粒状肥料の開示がある。さらに、溶出調整機能を付与する目的で、特開2000-350554号公報には、ポリイソシアネートとアルキド樹脂と油からなる樹脂で被覆された尿素系製品の開示がある。しかしながら、これら方法でも必ずしも満足できる溶出調整機能は得られない。
【0009】
被膜形成法に関して云えば、特許第2532264号には、尿素肥料表面にイソシアネート化合物を過剰量反応させベースコートを形成させ、その上にポリオール化合物を反応させることを特徴とする技術の開示がある。また、特開平9-202683号公報は未硬化熱硬化性樹脂の添加と硬化を繰り返し粒状肥料表面上に被膜を形成する方法を開示している。また、その他ポリウレタン被覆方法として、ポリオール成分とポリイソシアネート成分を交互に積層し反応させる方法も行われているが、十分に反応が進み難く、被膜形成に時間を要し、必ずしも工業的とは云い難い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、生分解性を考慮した原料を用い、有機溶剤を使用しない、しかも簡便な方法で、初期における溶出率が従来の被覆肥料に比べて遙かに小さい、後述する特定の溶出曲線を描く多層被覆粒状肥料及びその製造方法について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成したものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明は窒素、りん酸、カリウム、マグネシウムの少なくとも一成分を含有する粒状肥料表面が、ヒマシ油とポリイソシアネートとをイソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比が0.7〜3.0の範囲で反応させた反応物で一次被覆され、アルキド樹脂とポリイソシアネートとをイソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比が0.7〜3.0の範囲で反応させた反応物で二次被覆された肥料であって、当該肥料12.5gを25℃、250mlの水中に浸漬した場合の窒素、りん酸、カリウム、マグネシウムの少なくとも一成分の溶出率が下記数3及び表4の範囲にある多層被覆粒状肥料
【0012】
【数3】
【0013】
【数4】
【0014】
(上記数3及び数4に於いて、 Eは溶出率%を、tは浸漬日数を示す)
に関する。別言すれば本発明は、肥料成分の初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の多層被覆粒状肥料に関する。既に述べた様に、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物を用いる利点は、反応物であるポリウレタン樹脂を被覆材として使用できる点である。ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物から成る単純な組成の一次被覆で、硬度が大きく且つ欠陥のない被膜を形成することが可能であるが、この一次被覆のみでは本発明の目的とする多層被覆粒状を得ることはできない。これに更にアルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物を二次被覆することにより、始めて本発明の目的とする特定の溶出曲線を描く多層被覆粒状肥料を製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。今、数3及び数4について説明すると、数3は多層被覆粒状肥料12.5gを25℃、250mlの水中にt(但し、20≦t≦60)日間浸漬したときに窒素(N)、りん酸(P2O5)、カリウム(K2O)、マグネシウム(MgO)の少なくとも一成分の溶出率(%)Eが、 E≦(7/4)t−25を満足することである。数4も同様である。このような溶出曲線を描く本発明多層被覆粒状肥料は、初期における溶出率が極めて小さく、植物生育段階に対応して溶出率が次第に大きくなっており、肥料成分が植物に有効に利用されることが理解される。
さて、本発明に使用するヒマシ油の品質については特に制限はない。ただ、構成脂肪酸の約90%がリシノール酸であることが望ましく、水酸基価が150〜170、粘度が500〜900mP・s(25℃)の物性を有するものがより好ましく使用される。
【0016】
また、ウレタン化に際し使用されるポリイソシアネートには、モノマーのジイソシアネートが含まれる。好適な例として、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの混合物も使用することができる。しかし、これらのうち本発明の目的及び被膜形成性の点からポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートがもっとも好ましい。
【0017】
ヒマシ油とポリイソシアネートとのモル比は、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比(NCO/OH)として0.7〜3.0が好ましい。これらの比率の範囲外となると反応物即ちポリウレタンの架橋が減少し十分な耐水性被膜が得られなかったり、被膜強度が減少し被膜に欠陥が発生しやすくなり、肥料成分の初期における溶出率を小さくすることがきわめて困難となる。ところで、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物量は一次被覆の被覆量の80質量%以上であることが好ましい。80質量%を下廻ると本発明の目的を達成することが困難となる。
【0018】
本発明において、これまでとは全く異なった溶出パターン、即ち、初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の多層被覆粒状肥料を得るためには、上記一次被覆に次いで、ポリオール成分としてアルキド樹脂を使用し、一次被膜上をアルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物で二次被覆することが必要である。本発明に使用するアルキド樹脂は特に限定されるものではないが、本発明者が最も推奨するアルキド樹脂は油変性アルキド樹脂で、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸等の多塩基酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール、トリメチロールプロパン等の多価アルコール及び変性剤として天然植物油あるいは動物油等を加熱縮合して得られる一般的なものである。しかしながら、アルキド樹脂はウレタン化して被覆材として使用するため、本発明溶出特性の観点から水酸基価は20〜400のものが好ましい。
【0019】
また、酸価に関して云えば、酸価が高いとウレタン化反応が阻害され被膜の乾燥性が悪くなり溶出率が本発明の範囲内にある多層被覆粒状肥料をうることが困難となるので、酸価は15以下、さらに好ましくは10以下で、粘度は低いものが望ましい。また、ウレタン化して樹脂とした場合の膜強度の観点から、変性剤としてはアマニ油、ヒマシ油が、多塩基酸としてはフタル酸、アジピン酸が、多価アルコールとしてはグリセリン、エチレングリコールが特に推奨される。しかし、これらに限定されるものではない。
【0020】
アルキド樹脂とポリイソシアネートの使用比率は、イソシアネート基とヒドロキシル基のモル比(NCO/OH)として0.7〜3.0が好ましい。これらの比率の範囲外となるとポリウレタン架橋の減少から十分な耐水性被膜が得られなかったり、被膜強度が減少し被膜に欠陥が発生しやすくなり、肥料成分の初期における溶出率を小さくすることが困難となり本発明の目的を達成すもことができない。
【0021】
アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物で二次被覆する場合、アルキド樹脂に少量のヒマシ油を予め混合して使用しても良い。しかし、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物量は二次被覆の被覆量の80質量%以上であることが好ましい。80質量%を下廻ると一次被覆の場合と同様、本発明の目的を達成することが困難となる。本発明多層被覆粒状肥料は後述するように、ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物層と、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物層が、重層する様な形で粒状肥料が被覆されている。ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする一次被覆量と、アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物を主成分とする二次被覆量の質量割合は、一次被覆の被覆量が全被覆量に対して40〜95質量%で、二次被覆の被覆量が全被覆量に対して5〜45質量%であることが好ましい。この範囲を逸脱すると本発明の特定の溶出率曲線を示す多層被覆粒状肥料を得ることが困難となる。
【0022】
ところで一次被覆と二次被覆の関係について云えば、一次被覆はピンホールなどの欠陥のない完全被膜の形成により、極力、初期の肥料成分の溶出を抑制するとともに、一定期間後の溶出速度の増大に寄与することを目的とする。二次被覆は被覆粒状肥料内部への水の浸透を抑制する効果があると推測される。一次被覆だけでは初期における溶出抑制期間の形成が困難であり、二次被覆だけでは初期における溶出率の低減ができず、且つ、その後の溶出率も増加しない。先述の通り、ポリウレタンはポリオールとポリイソシアネートの使用割合により耐水性及び被膜形成性が変化すること、また、溶出率は被覆量の影響を受けることから、一次被覆、二次被覆の溶出率への影響については一概には云えないが、二次被覆量の割合が増加する従い初期における溶出抑制期間は長くなる。また、一次被覆量の割合が増加するに従い一定期間後の溶出速度は増大する。
【0023】
一次被覆、二次被覆におけるウレタン化に際しての反応促進のため触媒を添加することは有用な技術である。触媒には公知のものを用いることができ、例えば、オクタン酸カリウム等の有機塩類、トリエチレンジアミン等のアミン化合物が使用できる。反応速度の調整の容易さ、均一な被膜の形成のし易さの点から、脂肪族モノカルボン酸カリウムが好ましい。また、ヒマシ油分子間、アルキド樹脂分子間で架橋させ、より強靭な被膜を形成する目的で、架橋触媒として、例えば、ナフテン酸マンガン、オクタン酸コバルト等の有機塩類を使用することも有用である。
【0024】
本発明に使用する肥料は粒状であれば特に限定はなく、例えば、尿素、硫安、塩安、りん安、硝安、硫酸カリ、塩化カリ、りん酸マグネシウム、硫りん安、硫加りん安、りん硝安カリ、過りん酸石灰等が代表例として挙げられる。肥料粒子の粒径に特に限定はないが、1mm〜5mmのものが好ましく使用される。
【0025】
次いで、粒状肥料への被覆方法について述べれば、流動または転動状態にある粒状肥料に対し各被覆材を付着反応させ、これを熱風等で加温することによって粒状肥料上で硬化させ被膜を形成する方法が使用できる。粒状肥料を流動、転動するには公知の方法が使用できる。例えば、流動化には流動装置や噴流動装置が、転動化には回転パンや回転ドラムの装置が使用できる。
【0026】
各被覆材は液状化し、粘度が300mP・s以下となる様に調整したものを使用する。例えば、ヒマシ油、アルキド樹脂は80〜120℃に加熱する。ポリイソシアネートは常温で300mP・s以下のものはそのまま、また、固体のものは融点以上に加熱し液状化する。被覆材の粘度が300mP・sを越えると作業性が悪くなり、さらに均一な被膜が形成されず、肥料成分溶出の制御が困難となるため好ましくない。
【0027】
肥料粒子への被覆材即ち、ヒマシ油、ポリイソシアネート、アルキド樹脂の付着方法は、肥料粒子に均一に塗布できれば特に限定はなく、スプレーによる噴霧、滴下に限らず実施できる。また、各被覆材は同一の箇所から粒状肥料に噴霧しても、あるいは別々の箇所から噴霧しても良い。
【0028】
作業性の面から、触媒はヒマシ油、アルキド樹脂に予め混合して使用し、ポリイソシアネートはヒマシ油あるいはアルキド樹脂とは別の箇所から噴霧することが好ましい。付着、反応により生成した被膜を硬化させるには、一次被覆においても、二次被覆においても室温から90℃の範囲で加熱を行うが、硬化温度が低すぎると噴霧された溶液の粘性が高くなり粒子表面上で均一な膜が形成されない。また、硬化温度が高すぎるとウレタン化反応の速度が速くなり、硬化速度を調節し難く、均一な被膜形成が困難となる。従って、加熱温度は50℃〜80℃が好ましい。被覆材の粘度を下げ、肥料粒子表面上に均一な被膜を形成させるため、また反応性を高めるために有機溶剤を使用することもできる。
【0029】
ところで、肥料粒子上への被膜の形成は被覆材の付着、硬化を繰り返すことで行われる。即ち、繰り返しによる被膜の多層化により緻密な被膜を形成することができる。一回の被膜形成に使用される被覆材の量は、被覆材の噴霧あるいは滴下速度、硬化速度等により異なり一概に言及することはできないが、一次被覆、二次被覆のいずれにおいても、被覆される粒状肥料に対し好ましくは0.3〜1.5質量%である。下限を下廻ると被覆回数が増え、工業的に不利となるばかりでなく、被覆ムラを起こしやすい。上限を上廻ると粒状肥料粒子上に多数の粒子の塊が形成され、転動あるいは流動中にこの塊が肥料粒子から離脱して被膜に欠陥が生じ好ましくない。肥料粒子への被覆材の付着、硬化の繰り返しは一次被覆にあっては少なくとも3回以上即ち、被膜を3層以上に多層化することが好ましい。上限に関して云えば、格別制限はないが工業的生産の観点から25層程度である。二次被覆について云えば、少なくとも1回以上、即ち1層以上とすることが必須であり、上限に関して云えば、一次被覆の場合と同じである。一次被覆、二次被覆ともに、肥料粒子への被覆材の付着、硬化の繰り返し工程の回数が上記範囲外となり、回数が少ない場合には、被膜に存在するピンホールの影響で初期における溶出の抑制が困難となる。また、回数が多くなると生産性が低下し、工業的に不利となる。
【0030】
ところで、溶出率が本発明の範囲内にある限り、作業性の向上及び肥効調節の補助的手段として被覆材に脂肪族エステル、ワックス、ロジンおよびその誘導体、界面活性剤、タルク、炭酸カルシウム等の各種添加剤を加えることができる。また、粒状肥料散布機により散布される等、より強靭な被膜が必要な場合には、保護膜の形成も有用であり、例えば、保護膜形成材料として、ポリエチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を利用することができる。これらの添加剤、保護膜形成剤の使用割合としては、全被覆量の40質量%以下であり、これ以上となると本発明の目的を達成することができない。
【0031】
この様にして得られる本発明多層被覆粒状肥料は、これまでとは全く異なった前記の通りの特定の溶出パターンを示す、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の多層被覆粒状肥料となっている。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。尚、特に断らない限り%は全て質量%を示す。
【0033】
実施例及び比較例における使用原料の略号は下記のとおりである。
A液:ヒマシ油(水酸基価159.2、粘度695mP・s/25℃、伊藤製油(株)製、商品名URIC H-30)3000gに、触媒として脂肪族モノカルボン酸カリウム溶液(濃度70%)30gを混合し、100℃に加熱して調製した。
B液:油長47%のアマニ油ヒマシ油変性アルキド樹脂ポリオール(水酸基価191)3000g、触媒として脂肪族モノカルボン酸コバルト溶液(Co濃度8%)15g、脂肪族モノカルボン酸カリウム溶液(濃度70%)30gを混合し、100℃に加熱して調製した。
C液:ヒマシ油(水酸基価159.2、粘度695mP・s/25℃、伊藤製油(株)製、商品名URIC H-30)450g、油長47%のアマニ油ヒマシ油変性アルキド樹脂ポリオール(水酸基価191)2550g、触媒として脂肪族モノカルボン酸コバルト溶液(Co濃度8%)13g、脂肪族モノカルボン酸カリウム溶液(濃度70%)30gを混合し、100℃に加熱して調製した。
D液:ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(住友バイエルウレタン(株)製、商品名スミジュール44V10)
E液:ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製、商品名ゴーセノール GL-05)500gを水2500gに溶解した。
【0034】
[実施例1]
粒状尿素(平均粒径3mm)30kgを、熱風発生機を付設した遠心転動造粒コーティング装置(回転円板径780mm)に仕込み、90rpmで回転させ、粒状肥料を転動状態にし、下部より熱風を送り70℃に保持した。
加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液とを、2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を8回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この場合の被覆率は8.8%であった。
被覆率(%)=(被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100
また、窒素成分の溶出率の測定結果を表1に示す。
【0035】
[実施例2]
二次被覆の噴霧−硬化工程を6回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0036】
[実施例3]
二次被覆の噴霧−硬化工程を4回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0037】
[実施例4]
一次被覆の噴霧−硬化工程を5回、二次被覆の噴霧−硬化工程を6回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0038】
[実施例5]
一次被覆の噴霧−硬化工程を8回、二次被覆の噴霧−硬化工程を4回とした以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0039】
[実施例6]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は3.7g/秒の、D液は2.9g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.8g/秒の、D液は1.8g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0040】
[実施例7]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、C液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、C液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0041】
[実施例8]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、一次被覆として、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被膜を形成した。次に、二次被覆として、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧する工程と、転動させ硬化する工程を6回繰り返し、被覆を形成した。次に、E液を2.5g/秒の速度で60秒間噴霧する工程と、転動させ乾燥する工程を14回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素成分の溶出率を表1に示す。
【0042】
[実施例9]
粒状尿素を粒状硫加りん安肥料に変えた以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び窒素、りん酸、カリウム成分の溶出率を表1に示す。
【0043】
[実施例10]
粒状尿素を粒状苦土過りん酸肥料に変えた以外は、実施例1と同一の被覆条件で被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及びりん酸とマグネシウム成分の溶出率を表1に示す。
【0044】
[比較例1]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、A液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、A液は4.1g/秒の、D液は2.5g/秒の速度で45秒間噴霧し、2分間転動させ硬化した。この噴霧−乾燥工程を9回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び溶出率を表1に示す。
【0045】
[比較例2]
実施例1と同じ装置を用い、実施例1と同様に加温され且つ転動状態にある粒状尿素に、B液とD液を2ヶ所から別々に2流体ノズルにより、B液は4.3g/秒の、D液は2.3g/秒の速度で23秒間噴霧し、2分間転動させ硬化した。この噴霧−硬化工程を18回繰り返し、被覆粒状肥料を製造した。この被覆粒状肥料の被覆率及び溶出率を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
被覆率:被覆率(%)=(被膜質量/被覆粒状肥料の質量)×100
溶出率:被覆粒状肥料12.5gを250mlの水に加え容器を密閉して25℃の恒温槽に入れる。これを一定期間後に取り出し肥料と溶液を分別し(*)、溶液中に溶出した肥料成分を定量し、次式により溶出率を計算した。
溶出率(%)=(溶液中の肥料成分量/被覆粒状肥料中の全肥料成分量)×100(**)
* 尚、肥料成分測定毎に、毎回分別した肥料に新たに250mlの水を加えた。
** 表中の溶出率は累積値を示す。
【0048】
上表から、ヒマシ油とアルキド樹脂を被覆材に適用したものは、初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出率変化を示すことが判る。
【0049】
【発明の効果】
本発明多層被覆粒状肥料は、肥料成分の初期における溶出率が極めて小さく、その後の溶出率が比較的大きな、一般にシグモイド型と云われる溶出調整型の肥料で、植物の成長段階に対応して肥料成分が溶出するため、植物に有効に吸収利用され追肥等をほとんど必要としない優れた省力型肥料である。また、肥料成分が有効に吸収利用されることから河川、湖沼等への流亡がなく極めて環境に優しい肥料と云うことができる。加えて本発明多層被覆粒状肥料は、有機溶剤を使用しなくても製造可能であることから、人体や環境への影響が殆どない。また、本発明における被覆材は、生分解性のため土中に残存することがない。このように、本発明の多層被覆粒状肥料は産業上甚だ有用・有益な肥料であり、また優れた効果を奏するものである。
Claims (12)
- 被覆量が多層被覆粒状肥料に対して5〜22質量%である請求項1記載の多層被覆粒状肥料。
- ヒマシ油とポリイソシアネートとの反応物量が一次被覆の被覆量の80質量%以上で、一次被覆の被覆量が全被覆量に対して40〜95質量%である請求項1又は2記載の多層被覆粒状肥料。
- アルキド樹脂とポリイソシアネートとの反応物が二次被覆の被覆量の80質量%以上で、二次被覆の被覆量が全被覆量に対して5〜45質量%である請求項1、2又は3記載の多層被覆粒状肥料。
- 被覆が4層以上の多層被覆である請求項1〜4のいずれか1項記載の多層被覆粒状肥料。
- ポリイソシアネートがポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートである請求項1 〜5のいずれか1項記載の多層被覆粒状肥料。
- ヒマシ油が水酸基価150 〜170、粘度が500 〜900mP・s(25℃)の物性を有するヒマシ油である請求項1〜6のいずれか1項記載の多層被覆粒状肥料。
- アルキド樹脂が水酸基価20 〜400、酸価15以下の物性を有するアルキド樹脂である請求項1〜7のいずれか1項記載の多層被覆粒状肥料。
- ヒマシ油とポリイソシアネートとをイソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比が0.7〜3.0の範囲で粒状肥料に付着させ硬化し一次被膜を形成し、次いでアルキド樹脂とポリイソシアネートとをイソシアネート基/ヒドロキシル基のモル比が0.7〜3.0の範囲で一次被膜上に付着させ硬化し二次被膜を形成することを特徴とする請求項1項記載の多層被覆粒状肥料の製造方法。
- ヒマシ油とポリイソシアネートとを粒状肥料に付着させ硬化することを3回以上繰り返す請求項9記載の多層被覆粒状肥料の製造方法。
- ヒマシ油が触媒を含んだものである請求項9又は10記載の多層被覆粒状肥料の製造方法。
- 触媒が脂肪族モノカルボン酸カリウムである請求項9、10又は11記載の多層被覆粒状肥料の製造方法。
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