JP3836310B2 - コンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法にかかり、橋梁工学の保全技術に関し、橋の弱点部を簡便に計測して、その損傷劣化度を早期発見するための診断技術に関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
一般にコンクリート構造物の健全度評価法として、次の方法がある。
(1)経験法:コンクリートのひびわれや鉄筋の腐食の目視調査から経験的に耐荷力を推定する方法。
(2)剛性法:荷重を載荷してたわみや応力度を求め、版理論を解析して全断面有効、RC断面の計算結果と比較する方法。
(3)たわみ法:上記と同様のたわみ値と計算値を比較する方法。
(4)応力度法:鉄筋の断面欠損等を考慮して応力度を算定し、許容応力度以下であれば耐荷力ありとする方法。
(5)その他:床版の破壊安全率法等押し抜き剪断破壊の耐荷力比を求める方法。
図4の右側は、従来の(2)や(3)の計算方法の概念を示したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
(1)の方法は目視によって広く浅く、かつ効率的な点検を目指したもので、過去の損傷事例からの目視点検を客観的に判定するための経験法であり、ひびわれ密度法、遊離石灰法などがある。しかし、近年の建設及び維持管理において床版防水工の施工が一般的になってきているため、その適用範囲が限定されるようになった。
(2)、(3)及び(4)の方法は、橋梁上に定荷重車を静的あるいは動的に載荷する方法で、床版や桁のたわみや曲げ応力を計測する方法である。この場合は、大掛かりな作業足場が必要である。この計測結果の解析では、版理論等の計算値と実測値を対比するが、各部材の桁、対傾構、床版および地覆・壁高欄の荷重分配係数やその部材剛性を設定する必要がある。特に、床版補強の中間縦桁や増厚などの補強部材がある場合は、そのコンクリートと桁の合成効果を設定する必要がある。
このように、計測方法が車線規制を伴って大規模となり、かつ計算値は煩雑な仮定や版理論解等の計算が必要な上、結果のバラツキが大きく、その再現性に対しても信頼性評価は低い。
(5)の方法は、床版のヤング係数及びひびわれ深さなどを調査して、押し抜きせん断の破壊安全率を求める方法である。ひび割れ深さの測定が厄介で、計算も面倒である。
本発明は、以上のように補修・補強に必要な情報を簡便な計測により定量的に入手できる調査方法が望まれていた点に着目し、無次元剛性比による健全度評価方法は、多数の計測データにより裏付けされた橋梁診断技術として実現したものである。
従って、本発明は、橋梁床版の維持管理分野において、床版剛性に着目した、簡便でかつ再現性のある評価手法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法は、床版の支間中央部の動たわみを頻度計測してその累積百分率曲線から動たわみ差を求める。この動たわみ差と床版支間長の比から、動たわみ差を変数とする現床版の劣化度係数を求める。この劣化度係数と基準床版の終局状態における劣化度係数から、両係数の比である無次元剛性比を求める。そして、この無次元剛性比を基準として床版の健全度を評価する。
【0005】
本発明が成り立つためには、以下の前提条件が必要である。
(1)鉄筋コンクリート床版は、設計基準に基づき設計及び施工されたもので、同時期の施工の床版はほぼ一定の剛性断面の範囲内にある。
(2)走行車両は、レーンマーク間を走行しているため、載荷位置及び荷重は、過積載の一部車両を除き、統計的にほぼ同一の集合体をなすもので、単位時間(24時間)以上の動たわみ頻度測定から床版及び床版を支持する部材の剛性比が算定できるものとする。
(3)どの床版も、所定の輪荷重を支持するため、床版及び床版を支持する部材の剛性比を一定の範囲内で管理すれば、所定の橋梁の「安全性及び使用性」の耐荷力が得られるものとする。
【0006】
床版の破壊形態は、押し抜き剪断破壊であるが、曲げ部材である床版は曲げ剛性が低下して押し抜き剪断破壊に達することが条件となる。
また、鋼橋において、床版の曲げ剛性が健在の(一定以上ある)場合は、活荷重が床版の荷重分配によって桁及び対傾構、横構の各部材断面に発生する応力度を低減しているので、床版の剛性が健全であれば、一般に鋼部材の疲労破壊が生じる恐れは少ない。
【0007】
該動たわみの頻度計測は24時間にわたってなされていてもよい。
この場合、計測度数が多くなり、測定精度が上がる。勿論24時間以上であれば更に好ましいが、24時間あれば最低の条件が確保される。
【0008】
該頻度計測は接触センサーによってなされてもよい。
この場合、接触センサーは、設備が大型になるが、塗装足場等の吊り足場が設置される場合は、同時に多数のパネルの計測ができる。
【0009】
該頻度計測は非接触センサーでなされてもよい。
この場合、床版から離れた地点で計測を行える。
【0010】
該非接触センサーはレーザードップラー振動計であってもよい。
この場合、床版の下面に直接に光線を向けても、反射鏡を介して水平方向から照射してもよく、レーザードップラー振動計の設置位置の自由度が広がる。
【0011】
該動たわみ差は10%と50%の間で計測されてもよい。
この場合、非線形性や載荷条件などの要因の影響をほとんど除去できる。
【0012】
該基準床版の終局状態における劣化度係数は多数の損傷床版パネルの頻度計測データから求められた基準床版のときの数値となっていてもよい。
実際の床版の終局状態とは部分的な押し抜き剪断破壊の発生時点を指している。この場合、数多くの床版の検証の結果から終局状態の劣化度係数を特定できているので、この終局状態の劣化度係数を採用することにより、床版の劣化度の判定ができる。
【0013】
該動たわみが15tと20tの定荷重車での動載荷によるたわみとなっていてもよい。
この場合、15tと20tの両荷重によるたわみが得られるので、より実体に近いたわみの測定ができる。
【0014】
【発明実施の形態】
図1は床版の損傷と補修・補強の関係を示す概念図、図2は一般走行車による荷重分布と、接触式と非接触式の各センサーの変位計による床版のたわみ計測装置の概略図、図3は図2の右側面図、図4は床版の剛性比による健全度評価方法の解説図で、一点鎖線の左側は一般車走行による劣化度、右側は定荷重載荷試験による劣化度を示す。この左側で、(a)は図2と同様の計測装置の概略図、(b)はたわみδの状態を示す図、(c)はたわみ−頻度曲線図、(d)は累積百分率のたわみ頻度曲線C’を示す図、(e)は無次元剛性比(荷重〜たわみ比)の関係を示す図である。また、右側で、(a′)は(a)に対応する図、(b′)は同じく(b)に対応する図、(e′)は(e)に対応する図、(f′)は床版のひび割れと中立軸の関係を示す図である。図5は無次元剛性比法とたわみ法の考え方の比較図で、(a)は一般走行車、(b)は定荷重車による各劣化度を示す。
【0015】
図1で、横軸に時間tをとり、縦軸に耐荷力Pをとってある。床版1の剛性に関しては、当初18cmで、改良型は9cmの増厚である。Aは床版損傷モデル曲線、Bは5cmの増厚工P1後の曲線、Cは9cm増厚工P2後の曲線、DとEは新旧コンクリートの剥離状態を示す。また、t1は使用開始、t2は補修補強時点である。d1は許容値、d2は使用限界、d3は供用限界、d4は最終状態である。L1は+5cmの増厚工による延命、L2は+9cmの増厚工による延命を示す。
【0016】
評価の手順は次の通りである。
(1)図2、3、4、5及び17に示すように、厚さが一定である床版1の支間Sの中央部の動たわみδを頻度計2でPeek−Valley法等による頻度計測をし、統計上必要な相対たわみ数(単位時間24時間以上又は大型車交通2、000台以上)をヒストグラムレコーダーに収録し、統計処理をして、床版の相対たわみ差(δ10−δ50)を累積百分率のたわみ頻度曲線Cから求める。
この動たわみ差と床版支間長Lの比から動たわみ差を変数とする床版の劣化度係数Asを求める。この劣化度係数Asと床版1の終局状態における劣化度係数Asfから両係数の比である無次元剛性比As/Asfを求める。そして、この無次元剛性比As/Asfを基準としてコンクリート床版の健全度を評価する。
【0017】
(2)床版の剛性比による劣化度{A(s/sf)}を求める式は次の通りである。図4を参照して、左側の場合、
【数1】
ただし、
δ10−δ50 :一般車の走行時の実測たわみ(mm)
δ’10−δ’50 :終局状態の評価値(mm)
P10−P50 :一般車の走行時の過重差(t)
【0018】
また、右側のたわみ法の場合、
【数2】
ただし、
δ1 :全断面の理論たわみ(mm)
δ2 :RC断面の理論たわみ(mm)
δ :定荷重車の実測たわみ(mm)
【0019】
床版1の終局状態は次の通りである。
ただし、
E:部材の弾性係数
I:断面二次モーメント
【0020】
上記において、(1)と(2)式を関連させるため
【数3】
【0021】
なお、具体的な床版の劣化度係数比は次のようになる。
【0022】
【表1】
[表1]は計算例と適用式の説明をするものである。
(注)この表の記号欄の基準床版の補正係数は適用式及び「単位の説明」(1)式ジメンジョンの下線部である。また、表の単位欄の太字が「単位の説明」の(2)式ジメンジョンの式中に含まれる太字である。
【0023】
上記の床版の劣化度A(s/sf)=As/Asfは、理論的には非線形性や載荷条件など種々の要因の影響を受けるが、床版のたわみ差(δ10−δ50)や剛性比(As/Asf)を用いることでほとんどの要因は消去でき、実用上の床版の耐荷力評価が±10%以下に納まる前記の式(1)’が得られる。
【0024】
このため、図1の床版損傷モデル曲線のように床版の曲げ剛性比が低下(0→1)すれば、いずれ押し抜き剪断破壊するので、全ての補修・補強を含めて一元的に管理するため、表2のように一定の曲げ剛性比による管理値{劣化度A(s/sf)}を定め、それ以下で保全管理するものとする。
【0025】
【表2】
[表2]は「鋼橋床版の健全度評価法による判定値」を示すものである。
【0026】
図6は全計測データ劣化度と動たわみとの関係を示す図で、動たわみδ10と18cm厚基準床版の劣化度との間に関連性があるのが分る。R2は相関係数である。
なお、表2の管理判定値及び測定方法の基準床版(d)=18cmの使用限界状態(A(s/sf)=0.5)や終局状態における劣化度係数は、過去の疲労試験及び多数のたわみ頻度測定データを基に設定したものである。今後、更に頻度測定データを蓄積することにより、信頼性の一層の向上がはかれよう。
【0027】
【表3】
[表3]は任意のパネル上の大型車動波形によるたわみ頻度分布の簡単な計算例を示し、(a)は接触式センサー、(b)は反射式非接触式センサーを用いた場合である。
【0028】
図7は[表3]の(a)及び(b)を一緒にグラフにした度数−たわみ図で、接触式と非接触式の相関性が分る。
【0029】
【表4】
[表4]は京葉道路の篠崎高架橋での接触式と非接触式センサーによる計測例である。
【0030】
図8は[表4]を度数%とたわみの関係でグラフ化したもので、相関性の存在が分る。
【0031】
鉄筋コンクリート床版は直接に輪荷重を支持する部材で、常時、重交通量下で、しかも過積載車両による移動・繰り返し荷重を受ける。そのほか、使用環境も様々で、厳しい高温多湿や凍結融解などの自然環境条件にさらされる。そのため、一般的な構造物の維持管理手法と異なる位置付けが必要である。
特に、橋梁の維持管理において、鋼橋床版は橋梁の初期損傷を発見するためのキー(鍵)部材の役割をしている。
このため橋梁全体系の「使用性、安全性」を評価する上で、床版の剛性比による評価法は極めて有効なパラメーターとなる。
【0032】
図1も併せて参照して、概念的に既設の床版1の厚さdは18〜20cmとなっている。床版1の曲げ剛性が健全(0〜P1間)であれば、他の鋼部材を含め疲労損傷が少ない。しかし、重交通下で、おおむね20年以上の疲労繰り返しを受ければ、徐々に床版剛性の低下が始まり、主桁3と対傾構4との取合部5に局部亀裂損傷が現れる。
【0033】
図1の設計上の使用限界状態P1は、ひびわれ6が中立軸7に達した時点をRC断面(引張無視、n=15)として設計しているが、床版1を長期間使用していると亀甲状のひびわれが多数発生し、貫通ひびわれから遊離石灰が溶出する状態に達する。
【0034】
この状態でも鉄筋応力は許容値以下であるため、終局状態である押し抜き剪断破壊までには、相当の荷重繰り返しを受けられる。このため使用限界状態を超しても道路管理上からは、部分打ち換え等を行えば、床版は一時的に使用可能である。
【0035】
仮に、床版補強を行わずに、図1のように、使用限界を超して放置(t3〜D)すれば、当然、道路管理上の供用限界(通行止め等)d2も超え、道路機能上の安全性が保てなくなる。この段階で増厚工等の補修・補強を行っても、その効果や持続性は期待できず、道路機能上、重大な損傷をきたし、全面打ち変え、全面架け替え等の事態になる。
【0036】
しかしながら、使用限界状態(d2)までの間に、図1の「+5cm増厚工」や「+9cm増厚工」ように、床版の上・下面増厚工等の補修・補強を行った場合は、比較的安価で、かつ、長期にわたって効率的に機能保全(使用性、安全性)を確保することができる。
【0037】
すなわち、図1の床版寿命の概念図で、初期の床版損傷を放置するのでなく、車線規制のみで補強ができる使用限界状態に達する以前に補修・補強を完了する必要がある。このためには、補修の必要性や優先順位、補修範囲、施工時期など補修計画に必要な信頼できる床版の損傷情報の収集が急務である。従来の経験法による目視調査だけでは、床版の微小な剛性低下や、鉄筋腐食による床版断面欠損たわみ変化などによる変形の初期損傷の情報は得られない。
この評価法により、容易にかつ迅速に床版の評価ができる。
【0038】
実床版上を走行する平均輪荷重Pt/輪は、概ね平均荷重P=6t/片輪前後を示す一般車の無次元剛性比と、定荷重車15t車及び20t車の載荷のたわみ荷重と無次元剛性比とから、表5や図9のように、平均輪荷重Pt/輪の計測システムが完成された結果、図6に示すように、この計測システムによって健全度評価値(劣化度)は、高速道路のどの路線によっても、路線間あるいは橋間であっても、ある程度の相対比較が可能となった。
【0039】
図9は表5の実測例に示す一般走行車と荷重車による劣化度の関係をプロットしたもので、先の一般車走行から求めた劣化度と上記の定荷重車走行から求めた劣化度とは強い相関関係にある。
【0040】
【表5】
[表5]は姥久保高架橋での20t車と15t車の接触式センサーによる実際の測定結果を基にそれぞれの劣化度係数を求めたものである。ここで、No.2の連行荷重差をNo.8の平均値P=6tと設定したときの荷重差に変換する。No.12の無次元剛性比による劣化度を求める。この結果は図9にプロットされている。
【0041】
【表6】
[表6]は動的載荷試験の計測結果を示す。
【0042】
特に、この手法は計測値の再現性に優れている。同一パネルにおいて、補強前・後をモニタリングする場合、図10のように高精度の相対比較が可能な計測システムである。
【0043】
また、このシステムによって、路線間や橋梁間、あるいは図11のように交通特性、図12のように計測時間などに左右されずに、ある程度の相対比較が可能となった。
【0044】
また、単位時間24時間以上計測すれば、床版の無次元剛性比が求められるようになる。
図13は計測時間48時間と24時間の劣化度の関係を示す図である。
【0045】
【表7】
[表7]及び図14は[表3]の[簡単な計算例]に使用したときの任意の大型車のたわみデータである。この比較表は、図15のように、接触式センサーと非接触式センサーの波形データをたわみの絶対値で比較したものである。接触式センサーに比べて非接触式センサーは5%程度小さいが、よく近似している。
【0046】
図14は[表7]の数値を基に接触式センサーと非接触式センサーの比較をグラフ化したもので、両者は強い相関関係がある。
【0047】
図15は大型車の動たわみ波形データの比較で、両者の相関性が表われている。
【0048】
長期の現場計測や低周期の振動領域の計測が可能なように一部レーザードップラー振動計を改良した結果、安定した計測が可能となった。
【0049】
【表8】
[表8]は接触式(D−1)および非接触式(R−2:反射型)センサーを比較した結果である。この表から明らかのように、従来の電気式変位計の接触式と今回初めて本格的に実施したレーサードップラー振動計による非接触式との比較を行った結果、接触式より非接触式の方がやや小さい値を示すことが分かった。
【0050】
図16は接触式(D−1)および非接触式(R−2:反射型)センサーによる劣化度を比較したグラフである。両者の相関性が明らかに表われている。
【0051】
しかも、レーザードップラー振動計を用いれば、計測方法にもよるが、床版下面の使用状況などに制約されずに計測ができるようになる。
【0052】
図17はレーザードップラー振動計23による床版1の相対たわみδの三通りの測定方法を示してある。(a)は[R1法]で床版1の相対たわみδを地上Eから計測する場合、(b)は[R2法]で橋脚等の上からミラー反射板Mを介して計測する場合、(c)は[R3法]で簡易ビームB上から計測する場合である。
【0053】
動たわみの頻度計測は24時間にわたってなされる。
こうすると、ある程度の大型車両が走行していれば計測度数が多くなり、床版の無次元剛性比が求められるので、計測によって安定したデータが得られる。
【0054】
頻度計測は接触センサー21によってなされる。
こうすると、接触センサー21は設備が大型になるが、塗装足場等の吊り足場がある場合は、接触センサー21の方が多数同時計測ができる。
【0055】
頻度計測は非接触センサー22でなされる。
こうすると、床版から離れた地点で計測を行える。
【0056】
非接触センサー22はレーザードップラー振動計23となっている。
こうすると、床版1の下方にレーザードップラー振動計23を設置できる場合はここに設置して床版1の下面に直接に光線を向け、河川や鉄道線路があって直下に設置できない場合は橋脚に設置して水平方向から照射し、ミラー反射鏡Mを介して床版1の下面に当てるようにしてもよく、レーザードップラー振動計23の設置位置の自由度が広がる。
【0057】
動たわみ差は10%と50%の間で計測される。
こうすると、非線形性や載荷条件などの要因の影響をほとんど除去できる。
【0058】
床版1の終局状態の劣化度係数Asfは多数の損傷床版パネルの頻度計測データから求められた基準床版のときの数値となっている。
こうすると、実際の床版の終局状態とは部分的な押し抜き剪断破壊の発生時点を指しているが、数多くの床版の検証の結果から終局状態の劣化度係数Asfを特定できているので、この終局状態の劣化度係数Asfを採用することにより、床版の劣化度の判定ができる。
【0059】
動たわみが15tと20tの定荷重車での動載荷によるたわみとなっている。
こうすると、15tと20tの両荷重によるたわみが得られるので、より実体に近いたわみの測定ができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明によれば次のような特徴がある。
(1)床版下面から支間中央の一般走行車両による動たわみ頻度測定をするだけで、簡単かつ煩雑な計算を必要なしに床版の損傷度の評価ができる。
(2)初期損傷を早期発見して対応でき、「床版の剛性比による管理値」による維持管理ができ、コスト縮減した実施計画や予算管理が効率的に行える。
(3)鋼橋のコンクリート床版は、橋梁の初期損傷を発見するためのキー(鍵)部材の役割をしており、床版を管理することで、少なくとも橋梁の「使用性」・「安全性」を確保することが可能となる。
(4)費用対効果分析では、少なくともコスト縮減効果として、床版の全面打ち変え工に対して増し厚工は1/8程度で、剛性回復の効果(P2〜C)は、単に機能回復的な補修(+5cm)と25t対応を考慮した改良的な補強(+9cm)では3倍以上となり、初期損傷を早期発見することで、増し厚工により「早期対応」をすれば、おおよそ1/10以上のコスト縮減が実現できる。
【0061】
請求項2によれば、動たわみの頻度計測は24時間にわたってなされるので、ある程度大型車両が走行していれば計測度数が多くなり、床版の無次元剛性比が求められるので、計測によって安定したデータが得られる。
【0062】
請求項3によれば、頻度計測は接触センサーによってなされるので、接触センサーは設備が大型になるが、塗装足場等の吊り足場がある場合は、接触センサーの方が多数同時計測ができる。
【0063】
請求項4によれば、頻度計測は非接触センサーでなされるので、床版から離れた地点で計測を行える。
【0064】
請求項5によれば、非接触センサーはレーザードップラー振動計となっているので、床版の下方にレーザードップラー振動計を設置できる場合はここに設置して床版の下面に直接に光線を向け、河川や鉄道線路があって直下に設置できない場合は橋脚に設置して水平方向から照射し、反射鏡を介して床版の下面に当てるようにしてもよく、レーザードップラー振動計の設置位置の自由度が広がる。
【0065】
請求項6によれば、動たわみ差は10%と50%の間で計測されるので、非線形性や載荷条件などの要因の影響をほとんど除去できる。
【0066】
請求項7によれば、床版の終局状態の劣化度係数は多数の損傷床版パネルの頻度計測データから求められた基準床版のときの数値となっているので、実際の床版の終局状態とは部分的な押し抜き剪断破壊の発生時点を指しているが、数多くの床版の検証の結果から終局状態の劣化度係数を特定できているので、この終局状態の劣化度係数を採用することにより、床版の劣化度の判定ができる。
【0067】
請求項8によれば、動たわみが15tと20tの定荷重車での動載荷によるたわみとなっているので、15tと20tの両荷重によるたわみが得られ、より実体に近いたわみの測定ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】床版の損傷と補修・補強の関係を示す概念図である。
【図2】一般走行車による荷重分布と、接触式と非接触式の各センサーの変位計による床版のたわみ計測装置の概略図である。
【図3】 図2の右側面図である。
【図4】 コンクリート床版の無次元剛性比による健全度評価方法の説明図で、(a)は図2と同様の計測装置の概略図、(b)はたわみδの状態を示す図、(c)はたわみ−頻度曲線図、(d)は累積百分率のたわみ頻度曲線Cを示す図、(e)は無次元剛性比(荷重〜たわみ比)と劣化度の関係を示す図、(a′)は(a)と、(b′)は(b)と、(e′)は(e)とそれぞれ対応する図、(f′)は床版のひび割れと中立軸の関係を示す図である。ある。
【図5】 無次元剛性比法とたわみ法の考え方の比較図で、(a)は一般走行車、(b)は定荷重車による各劣化度を示す。
【図6】 全計測データ劣化度と動たわみとの関係を示す図である。
【図7】[表3]の(a)及び(b)を一緒にグラフにした度数百分率−たわみ図である。
【図8】[表3]の(a)及び(b)を一緒にグラフにした累積百分率−たわみ図である。この図からδ10、δ50を読取り、先の式(1)’に代入した値が[表4]である。
【図9】一般走行車と荷重車による劣化度の関係図である。
【図10】高精度の相対比較が可能な計測システムであることの説明図である。
【図11】平日と休日の交通特性の違いを示す図である。
【図12】劣化度と計測時間および大型車の台数の関係を示す図で、計測期間などに左右されずに相対比較が可能な根拠を示す。
【図13】計測時間48時間と24時間の劣化度の関係を示す図である。
【図14】接触式と非接触式センサーの比較図である。
【図15】大型車の動たわみデータの比較図である。
【図16】接触式と非接触式センサーによる劣化度の比較図である。
【図17】レーザードップラー振動計による測定方法を示す図で、(a)はR1法、(b)はR2法、(c)はR3法である。
【符号の説明】
1 床版
S 支間
δ たわみ
2 頻度計
21 接触センサー
22 非接触センサー
23 レーザードップラー振動計
M ミラー反射鏡
B 簡易ビーム
Claims (8)
- 床版(1)の支間(S)の中央部の動たわみ(δ)を頻度計測してその累積百分率曲線(C')から動たわみ差(δ10−δ50)を求め、この動たわみ差と床版支間長(L)の比から動たわみ差を変数とする床版の劣化度係数(AS)を求め、この劣化度係数と基準床版の終局状態における劣化度係数(ASf)から両係数の比である無次元剛性比(AS/ASf)を求め、この無次元剛性比を基準として評価することを特徴とするコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
- 該動たわみ(δ)の頻度計測は24時間にわたってなされる請求項1に記載のコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
- 該頻度計測は接触センサー(21)によってなされる請求項1又は2に記載のコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
- 該頻度計測は非接触センサー(22)でなされる請求項1に記載のコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
- 該非接触センサー(22)はレーザードップラー振動計(23)である請求項4に記載のコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
- 該動たわみ差(δ10−δ50)は10%と50%の間で計測される請求項1に記載のコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
- 該基準床版の終局状態における劣化度係数(ASf)は多数の損傷床版パネルの頻度計測データから求められた基準床版のときの数値となっている請求項1に記載のコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
- 該動たわみ(δ)が15tと20tの定荷重車での動載荷によるたわみとなっている請求項1に記載のコンクリート床版の無次元剛性比を用いた健全度評価方法。
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