JP3835723B2 - 発泡ラミネートシートおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は発泡ラミネートシートおよびその製造方法に係り、とくにベースシートに接合されたラミネートフィルムがスポット状に発泡されている発泡ラミネートシートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙を主材料とする使捨て式の簡易容器が広く用いられている。このような簡易容器は、扇形の原紙をカップ状に成形するとともに、上部開口の周縁部を外側に巻込んでカール部となし、さらに底部開口を底板によって閉塞した構造をなしている。
【0003】
このような紙を主材料とする使捨て式簡易容器は、その中に熱い飲料を注入した場合には、この容器の壁面を通して熱が手に伝わる。従って熱い飲料を注入して飲むのには不適当である。
【0004】
特開昭57−110439号公報には、容器胴部材および底板部材から成る紙製容器において、少なくとも容器胴部材の片側壁面に熱可塑性フィルムの発泡断熱層をコーティングまたはラミネートし、容器胴部材の別の壁面は熱可塑性合成樹脂フィルムまたはアルミニウム箔を接合した断熱性簡易容器が開示されている。このような容器によれば、とくに熱可塑性合成樹脂フィルムの発泡断熱層によって容器の胴部に断熱性が付与されることになり、中に熱い飲料を注入して手で持って飲むことが可能になる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭57−110439号公報に開示されている断熱容器は、胴部を構成する紙に含まれる水分が加熱されて蒸発する際に、表面の熱可塑性合成樹脂フィルムを発泡させるようにし、これによって断熱性を付与するようにしている。このような容器によれば、発泡した熱可塑性合成樹脂フィルムによって比較的良好な断熱性を簡易容器に付与できるようになる。
【0006】
ところがこのような構造は、胴部を構成する紙の内側と外側のラミネートフィルムの仕様を変えることを要する。また発泡炉で数分間加熱を行なうことによって発泡させるようにしており、専用の発泡炉を準備しておかなければならず、発泡炉に通すための設置スペースが必要で、生産性が悪いという問題がある。また発泡が紙に含まれる水分の蒸発によって行なわれるために、発泡の度合の制御が難しいという問題がある。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであって、生産性に優れ、しかも発泡の制御が容易な発泡ラミネートシートを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本願の一発明は、スポット状に接合阻止剤を塗布したベースシートと、該ベースシートの表面に接合されたラミネートフィルムとの接合構造から成り、
前記接合阻止剤を塗布した部分において前記ラミネートフィルムと前記接合阻止剤との間に前記ベースシートに含まれる水分または前記ラミネートフィルムを透過する空気によって気体が充填されて前記ラミネートフィルムがスポット状に発泡していることを特徴とする発泡ラミネートシートに関するものである。
【0009】
ここで接合阻止剤がラミネートフィルムに対する親和力を有しない物質から成るものであってよい。またベースシートが紙から成るとともに、ラミネートフィルムがポリエチレンから成り、接合阻止剤がシリコンオイルまたはフッ素樹脂であってよい。
【0010】
製造方法に関する発明は、ベースシートの表面に接合阻止剤をスポット状に塗布し、
該ベースシートの表面に高分子フィルムをラミネートし、
該高分子フィルムがラミネートされた表面を加熱して真空吸引する、
ことによって前記ラミネートフィルムと前記接合阻止剤との間に前記ベースシートに含まれる水分または前記ラミネートフィルムを透過する空気によって気体が充填されて前記ラミネートフィルムがスポット状に発泡することを特徴とする発泡ラミネートシートの製造方法に関するものである。
【0011】
このような製造方法において、接合阻止剤の塗布が印刷によって行なわれてよい。また前記加熱および真空吸引がこのシートを所定の形状に成形した後に行なわれてよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1〜図6は本発明の一実施の形態に係る発泡ラミネートシートをその製造の順に沿って原理的に示すものである。図1に示すようにベースシートとして板紙10が用いられる。このような板紙10の表面にはシリコンオイル11等の接合阻止剤11がスポット状に塗布される。このような接合阻止剤11の塗布は、印刷の方法によって行なわれてよい。これによって規則的な配列で接合阻止剤11をスポット状に板紙10の表面に塗布することが可能になる。
【0013】
このような接合阻止剤11が塗布された板紙10の表側の表面にはラミネートフィルム13が、裏側の表面には別のラミネートフィルム14が接合される。ここでこれらのラミネートフィルム13、14はともにポリエチレンフィルムであってよい。一例として、表側のラミネートフィルム13は例えば膜厚が55μmの低密度ポリエチレンから構成されてよい。また裏側のラミネートフィルム14は膜厚が15μmの低密度ポリエチレンから構成されてよい。
【0014】
ラミネートフィルム13、14はともに板紙10の表側と裏側の表面にそれぞれ接合される。ところが表側のラミネートフィルム13は接合阻止剤11がスポット的に塗布された部分においては板紙10との接合が阻止される。すなわちラミネートフィルム13はシリコンオイル11を塗布した部分においては板紙10には接合されていない状態でラミネートが行なわれる。このようにしてラミネートシート15が得られる。
【0015】
このようなラミネートシート15に対して図3に示すように熱板19によって加熱するか、図4に示すように熱風吹出し装置20から熱風を吹出して加熱する。このときに熱板19の加熱面あるいは熱風吹出し装置20の熱風の吹出し部分が板紙10のラミネートフィルム13を塗布した表面に対して加熱を行なうようにする。
【0016】
この後に図5に示すように、ラミネートシート15の表面であってラミネートフィルム13が接合されている方の面に吸引器22を当てがい、吸引パイプ23によって吸引器22の内側を真空吸引する。するとラミネートフィルム13は接合阻止剤11によって板紙10と接合されていない部分が図6に示すように発泡される。なおこのときの発泡ガスは板紙10に含まれる水分やラミネートフィルム13を透過する空気である。
【0017】
このような方法によって、板紙10の表面に接合されたラミネートフィルム13が簡単に発泡することになる。しかもこのような発泡は、接合阻止剤11を塗布した部分においてスポット状に発泡するために、予め塗布されるシリコンオイル11等の接合阻止剤のスポットの大きさやその配置を任意に調整することによって、板紙10上のラミネートフィルム13の発泡の大きさや位置を任意に調整することが可能になる。
【0018】
またこのような発泡シートは、接合阻止剤11を板紙10の表面に印刷の手法によって塗布するとともに、この後に接合されたラミネートフィルム13を加熱して真空吸引することによって得られる。従って従来の発泡ラミネートシートのように加熱炉を用いることなく発泡ラミネートシートを得ることが可能になる。このために従来に比べて生産性が向上するとともに、生産のための設置スペースも少なくて済むという利点をもたらす。
【0019】
次にこのような原理を用いて断熱性の簡易容器を製造する方法を図7〜図12によって説明する。図7に示すように大きな板紙10を用意する。このような板紙10は複数のカップ状簡易容器を製造するのに十分な大きさの板紙である。このような板紙10の表面にシリコンオイル11等の接合阻止剤を塗布する。なお図7において扇形で示している輪郭は便宜上図面で示しているだけであって、実際にはこのような輪郭を線で設ける必要はない。またこのような板紙10の側面側には打抜く際の基準となる基準マーク26を印刷の方法によって形成しておくことが好ましい。
【0020】
板紙10上に上述の如く接合阻止剤11を印刷によって塗布したならば、この後に図8に示すように、その両側の表面にそれぞれラミネートフィルム13、14を接合する。そしてこの後に板紙10を打抜くことによって、図9に示すような扇形ラミネートシート27が得られる。このようなラミネートシート27はカップ状をなす簡易容器の胴の部分を成形するのに必要にして十分な大きさのラミネートシートである。
【0021】
このようなラミネートシート27を用いて図10および図11に示すようなカップ状をなす簡易容器28を成形する。すなわち扇形のラミネートシート27を巻込んでカップ状に成形するとともに、上部開口52の周縁部を外側へ巻込むことによってカール部53を形成し、この容器に所定の剛性を与える。また底部開口を底板54によって閉塞する。底板54の下側に折曲げられている周壁部55をこの簡易容器28の胴の下端側の折返し部分56によって挟着することにより、底板54が取付けられる。
【0022】
このようなカップ状をなす簡易容器28が図12に示す発泡装置の供給部32に供給される。このときに簡易容器28は逆様にした状態で積重ねて供給される。供給部32には開閉部33が設けられ、この開閉部33の開閉動作によって、簡易容器28は1つずつロータリアーム34のマンドレル35上に装着される。マンドレル35は水平軸36をを中心として旋回する4本の支軸37を備え、これらの支軸37の先端部にそれぞれマンドレル35を取付けた構造をなしている。
【0023】
1番上側に位置するマンドレル35に簡易容器28を供給した後に、ロータリアーム34は水平軸36を中心として90°旋回し、左側の位置に至る。この位置において支軸37によってマンドレル35がその軸線を中心として回転する。すると外周側に臨むように設けられている加熱ユニット38が簡易容器28の外周部をまんべんなく加熱することになり、これによってラミネートシート27の表面に接合されているラミネートフィルム13が所定の温度に加熱されるようになる。
【0024】
この後にロータリアーム34が水平軸36を中心としてさらに90°旋回され、バキュームユニット40の上部に至る。ここでマンドレル35から離脱した簡易容器28がこのバキュームユニット40の凹部41内に装着される。凹部41の内周面には空隙42が形成されるとともに、この空隙42が吸引孔43と連通されている。従って吸引孔43を通して真空吸引を行なうことによって、バキュームユニット40の凹部41に装着された簡易容器28はその外周側のラミネートフィルム13がスポット状に発泡することになる。
【0025】
上記バキュームユニット40はインデックステーブル46上に配されており、このインデックステーブル46が駆動部47によって垂直な軸線を中心として回転する。バキュームユニット40による真空吸引を終った簡易容器28は、インデックステーブル46の90°の回転によってバキュームユニット40に保持された状態で排出パイプ48の下側に導かれる。そしてこの排出パイプ48で簡易容器28が吸引されて排出されるようになる。
【0026】
図12に示す装置の主要な操作は、ロータリアーム34上における加熱ユニット39による加熱と、インデックステーブル46上のバキュームユニット40による真空吸引である。これら2つの工程は何れもタクトタイムが非常に短く、このために図12に示す装置によって効率的に断熱性を有する紙製の簡易容器を製造することが可能になる。またこのような装置によって製造されたカップ状の簡易容器は、とくにその胴の外周面に接合されているラミネートフィルム13が接合阻止剤11をスポット状に印刷した部分において確実に発泡が行なわれるために、発泡の大きさおよびその密度等を接合阻止剤11の印刷によって任意に設定することが可能になる。これによって発泡の度合や断熱性の制御を任意に行なうことが可能になる。
【0027】
【発明の効果】
以上のように本願の一発明は、スポット状に接合阻止剤を塗布したベースシートと、該ベースシートの表面に接合されたラミネートフィルムとの接合構造から成り、接合阻止剤を塗布した部分においてラミネートフィルムと接合阻止剤との間にベースシートに含まれる水分またはラミネートフィルムを透過する空気によって気体が充填されてラミネートフィルムがスポット状に発泡している発泡ラミネートシートに関するものである。
【0028】
従ってこのような構造によれば、接合阻止剤を塗布した部分において発泡が行なわれている発泡ラミネートシートが供給されるようになる。とくにこのような発泡ラミネートシートは、発泡部分で断熱性が付与されることになり、断熱性を有するシートが供給される。
【0029】
製造方法に関する発明は、ベースシートの表面に接合阻止剤をスポット状に塗布し、該ベースシートの表面に高分子フィルムをラミネートし、該高分子フィルムがラミネートされた表面を加熱して真空吸引することによって前記ラミネートフィルムと前記接合阻止剤との間に前記ベースシートに含まれる水分または前記ラミネートフィルムを透過する空気によって気体が充填されて前記ラミネートフィルムがスポット状に発泡するようにしたものである。
【0030】
従ってこのような構成によれば、簡単な構成によってベースシートに接合された高分子フィルムを発泡させることが可能になり、このような発泡によって断熱性を付与されたラミネートシートが得られることになる。しかもこのような製造方法は、発泡のために加熱炉を用いることなく発泡を行なうことができるために、その生産性が高いばかりでなく、簡易型の設備によって発泡ラミネートシートを製造できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】接合阻止剤を塗布した板紙の平面図である。
【図2】ラミネートフィルムを接合した板紙の断面図である。
【図3】熱板による加熱を示す正面図である。
【図4】熱風吹出し装置による加熱を示す正面図である。
【図5】吸引器による真空吸引を示す要部断面図である。
【図6】発泡ラミネートシートの拡大断面図である。
【図7】カップ状簡易容器を製造するための原紙の平面図である。
【図8】同ラミネートフィルムを接合した状態の断面図である。
【図9】打抜かれた扇形原紙の平面図である。
【図10】カップ状簡易容器の斜視図である。
【図11】同縦断面図である。
【図12】加熱および発泡を行なうための装置を示す正面図である。
【符号の説明】
10 板紙
11 シリコンオイル(接合阻止剤)
13 ラミネートフィルム(表)
14 ラミネートフィルム(裏)
15 ラミネートシート
19 熱板
20 熱風吹出し装置
22 吸引器
23 吸引パイプ
26 基準マーク
27 扇形ラミネートシート
28 カップ状容器
32 供給部
33 開閉部
34 ロータリアーム
35 マンドレル
36 水平軸
37 支軸
39 加熱ユニット
40 バキュームユニット
41 凹部
42 空隙
43 吸引孔
46 インデックステーブル
47 駆動部
48 排出パイプ
52 上部開口
53 カール部
54 底板
55 周壁部
56 折返し部

Claims (6)

  1. スポット状に接合阻止剤を塗布したベースシートと、該ベースシートの表面に接合されたラミネートフィルムとの接合構造から成り、
    前記接合阻止剤を塗布した部分において前記ラミネートフィルムと前記接合阻止剤との間に前記ベースシートに含まれる水分または前記ラミネートフィルムを透過する空気によって気体が充填されて前記ラミネートフィルムがスポット状に発泡していることを特徴とする発泡ラミネートシート。
  2. 接合阻止剤がラミネートフィルムに対する親和力を有しない物質から成ることを特徴とする請求項1に記載の発泡ラミネートシート。
  3. ベースシートが紙から成るとともに、ラミネートフィルムがポリエチレンから成り、接合阻止剤がシリコンオイルまたはフッ素樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の発泡ラミネートシート。
  4. ベースシートの表面に接合阻止剤をスポット状に塗布し、
    該ベースシートの表面に高分子フィルムをラミネートし、
    該高分子フィルムがラミネートされた表面を加熱して真空吸引する、
    ことによって前記ラミネートフィルムと前記接合阻止剤との間に前記ベースシートに含まれる水分または前記ラミネートフィルムを透過する空気によって気体が充填されて前記ラミネートフィルムがスポット状に発泡することを特徴とする発泡ラミネートシートの製造方法。
  5. 接合阻止剤の塗布が印刷によって行なわれることを特徴とする請求項4に記載の発泡ラミネートシートの製造方法。
  6. 前記加熱および真空吸引がこのシートを所定の形状に成形した後に行なわれることを特徴とする請求項4に記載の発泡ラミネートシートの製造方法。
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