JP3835212B2 - 角速度センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動子を加振手段により駆動振動させ、角速度が印加されたときに該駆動振動方向と直交する方向への振動子の振動に基づいて角速度を検出するようにした振動型の角速度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の振動型の角速度センサは、一般に、基部と、この基部に連結された振動子と、この振動子と連結して設けられ振動子側の部位とこれに対向する基部との間にて、振動子を第1の方向へ駆動振動させるために振動を発生させる加振手段と、振動子の駆動振動のもと角速度が印加されたときに第1の方向と直交する第2の方向への振動子の振動に基づいて角速度を検出する検出手段とを備えるものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この種の角速度センサについて、本発明者等は、試作検討を行った。図8は、本発明者等が周知の半導体製造技術を用いて試作した角速度センサの概略平面構成を示す図である。
【0004】
図8に示す様に、半導体基板J1には、エッチング等にて溝を形成することにより、振動子J3及び振動子J3の外周に位置し振動子J3を支持する基部J2等が形成されている。なお、振動子J3は基部J2に対して可動となっており、基部J2は、図示しない支持部(支持基板等)に支持されている。
【0005】
振動子J3は、図中のy方向へ自由度を持つ検出梁J5を介して基部J2に連結された略コの字型をなす外側部J31と、外側部J31の内側に位置する内側部J32と、図中のx方向へ自由度を持ち、これら外側部と内側部とを連結する駆動梁J6とより構成されている。
【0006】
また、基部J2には、振動子J3をx方向へ駆動振動させるための櫛歯状の駆動電極J7が形成されている。この駆動電極J7は、振動子J3の内側部J32から突出する櫛歯部J4と噛み合うように配置されている。また、基部J2には、角速度を検出するための櫛歯状の検出電極J8が形成されている。検出電極J8は、振動子J3の外側部J31から突出する櫛歯部J9と噛み合うように配置され、検出手段J8、J9を構成している。
【0007】
かかる角速度センサにおいては、駆動電極J7から信号を印加することにより、振動子J3をx方向に駆動振動させる。そして、この駆動振動のもとz軸回りに角速度Ωが加わったとき、コリオリ力によって振動子J3は、y方向へ振動(検出振動)する。この検出振動によって、検出電極J8における櫛歯間の容量が変化し、この容量変化を検出することで、角速度Ωを求めることができる。
【0008】
ここで、基部J2側の櫛歯状の駆動電極J7とこの駆動電極J7に対向する振動子J3の内側部J32の櫛歯部J4とにより、振動子J3をx方向へ駆動振動させるための加振手段が形成される。
【0009】
そして、加振手段においては、駆動電極J7への信号印加により、図9中の矢印に示す様に、両櫛歯部J4、J7が近づいたり遠ざかったりする様に、両櫛歯部J4、J7の間にて、振動子J3をx方向へ駆動振動させるための振動が発生する。
【0010】
このとき、角速度センサを大気中にて駆動させると、両櫛歯部J4、J7の間には、空気の粘性抵抗が存在し、それによって、両櫛歯部J4、J7間における振動(つまり、加振手段における振動)が減衰する(ダンピング)という問題がある。
【0011】
そして、このダンピングによって、加振手段による振動子J3における駆動振動の振幅を十分に稼ぐことができないという問題が生じる。振動子J3の駆動振動の振幅が不十分であると、検出振動の振幅も不十分となり、結果、角速度検出の感度が不十分になってしまい、センサ特性が低下する。
【0012】
単純には、加振手段における振動の振幅を小さくすれば、両櫛歯部J4、J7の間における空気の粘性抵抗を小さくすることができるが、この場合、振動子J3の駆動振動の振幅も小さくなってしまう。
【0013】
また、加振手段における空気の粘性抵抗の影響を無くすために、センサ全体を真空にパッケージすることも考えられるが、センサを真空に封止するために手間がかかったり、構成自体が複雑化する等の問題がある。
【0014】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、振動型の角速度センサにおいて、加振手段における振動の振幅を小さくしても、振動子における駆動振動の振幅が小さくならずに確保できるようにすることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、基部(20)と、基部に連結された振動子(30、40)と、振動子を基部の表面と平行な第1の方向(x)へ駆動振動させるために、第1の方向に振動を発生させる加振手段(34、44)と、振動子の駆動振動のもと角速度が印加されたときに第1の方向と直交するとともに基部の表面と平行な第2の方向(y)への振動子の振動に基づいて角速度を検出する検出手段(70、80)と、振動子と加振手段とを連結する梁手段(60)とを備え、梁手段は、加振手段に連結されて加振手段の発生した振動による変位を、てこの原理によって第1の方向に沿って拡大する第1の梁手段と、第1の梁手段に連結されて拡大された変位の振動をして振動子に伝える第2の梁手段とを備え、前記第1の梁手段は、一端が固定点である支点(61)となり他端が互いに接続された作用点(62)となる2つの梁を有し、それぞれの梁において、前記支点と前記作用点との間に前記加振手段に接続された力点(63)が設けられ、前記加振手段の振動による前記力点の変位を前記作用点において前記第1の方向に沿って拡大するようになっており、前記第2の梁手段は、前記2つの梁の他端が接続された前記作用点に連結されていることを特徴としている。
【0018】
本発明によれば、梁手段において、加振手段からの振動による力点の変位を、支点を介して、作用点では拡大して振動子に伝えることができるため、てこの原理により、振動子の変位は力点の変位よりも大きいものになる。従って、加振手段における振動の振幅を小さくしても、振動子における駆動振動の振幅が小さくならずに確保することができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明のように、振動子を、それぞれ基部(20)に連結された第1の振動子(30)と第2の振動子(40)とより構成する場合、第1及び第2の振動子のそれぞれに対して検出手段(70、80)を設け、加振手段(34、44)および梁手段(60)を、第1の振動子と第2の振動子との間に設けたものにすることができる。
【0021】
このように、振動子が2個ある場合、2個の振動子の間に、加振手段および梁手段を設ければ、センサ構成の簡略化の点で有効である。
【0022】
さらに、請求項3に記載の発明のように、梁手段(60)を、第1の振動子(30)と第2の振動子(40)とを連結するものとし、加振手段(34、44)の振動により、第1及び第2の振動子が、梁手段を介して第1の方向(x)へ互いに逆相に駆動振動するようになっているものにすることができる。
【0023】
それによれば、駆動振動において、第1の振動子の動きと第2の振動子の動きが互いにキャンセルされ、両振動子を連結する梁手段における梁の途中部に、固定点としての支点が構成されるため、梁手段における梁の一部を基部に固定して支点を形成すること無く、梁手段は、てこの作用を適切に発揮することができる。
【0024】
梁手段における梁の一部を基部に固定して支点を形成する場合、当該支点を周囲の基部から電気的に絶縁するために溝等を形成する必要があるが、本発明によれば、そのようなことが不要となり、簡略化された構成を実現することができ、好ましい。
【0025】
また、請求項4に記載の発明のように、加振手段(34、44)としては、加振手段における梁手段(60)との接続部に形成された櫛歯部(34a、44a)と、基部(20)に形成された櫛歯部(34b、44b)とが噛み合って対向しているものにすることができる。
【0026】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る角速度センサS1の概略平面構成を示す図である。本角速度センサS1は、振動子を、それぞれ基部20に連結された第1の振動子30と第2の振動子40とより構成したものである。
【0028】
角速度センサS1は、シリコン基板等の半導体基板10よりなり、この半導体基板10に、エッチング等の周知の半導体製造技術を用いて溝を形成することにより、図1に示す様に、矩形破線10aの内部を中空部とする枠形状の基部20、2個の振動子30、40、各手段等が区画形成されている。
【0029】
基部20の内周に位置する第1の振動子(図中、左側)30及び第2の振動子(図中、右側)40は、互いに対称形状をなしている。本例では、両振動子30、40は、図1中のx方向(第1の方向)に沿って並べられており、両方とも基部20に対して可動となっている。なお、基部20は、図1では図示しない支持部(支持基板等)に支持されている。
【0030】
両振動子30、40は、矩形枠状をなす外側部(第1の振動部)31、41と、この外側部31、41の内側に位置する略矩形状の内側部(第2の振動部)32、42と、これら外側部31、41と内側部32、42とを連結する駆動梁33、43とを備えている。そして、両振動子30、40は、外側部31、41にて検出梁50を介して基部20に連結支持されている。
【0031】
駆動梁33、43は、図1中のx方向(第1の方向)へ自由度を持つもので、本例では、x方向へバネ変形可能な様に、x方向へ延びて折り返された略コの字形状をなしている。また、検出梁50は、図1中のy方向(第2の方向)へ自由度を持つもので、本例では、y方向へバネ変形可能な様に、y方向が長手方向となっている長方形枠状をなしている。
【0032】
また、第1の振動子30と第2の振動子40との間には、両振動子30、40の各内側部32、42をx方向へ互いに逆相に駆動振動させるために振動を発生させる加振手段34、44と、加振手段34、44の振動による変位をてこの原理によって拡大して振動子30、40の内側部32、42に伝える梁手段60とが設けられている。
【0033】
ここで、図1中の梁手段60およびその近傍部の拡大図を図2に示す。なお、図2においては、溝によって区画された半導体基板10の表面に、識別を容易にするためのハッチングを便宜上、施してある。
【0034】
梁手段60は、第1の振動子の内側部32とこれに対応する加振手段34との間を連結し、第2の振動子の内側部42とこれに対応する加振手段44との間を連結するとともに、第1の振動子の内側部32と第2の振動子の内側部42とを連結する折り返し枠形状を有する梁である。
【0035】
そして、梁手段60は、折り返し部に位置し固定点である支点61と、各振動子の内側部32、42に接続された作用点62と、各加振手段34、44に接続された力点63とを備える。
【0036】
ここで、図1、図2に示す様に、各振動子30、40について、梁手段60における振動子の内側部32、42との接続部(作用点62)の上下に、それぞれ、支点61、力点63を備える。また、力点63が支点61と作用点62との間に設けられているため、作用点62は力点63よりも支点61から遠い位置に存在する。
【0037】
また、各加振手段34、44は、加振手段34、44における梁手段60(力点63)との接続部に形成された櫛歯部(加振用可動櫛歯部)34a、44aと、基部20に形成された櫛歯部(加振用固定櫛歯部)34b、44bとが噛み合って対向しているものである。そして、図1、図2に示す様に、各振動子30、40について、梁手段60における作用点62の上下に、それぞれ加振手段34、44は2個設けられている。
【0038】
詳細は後述するが、このような加振手段34、44および梁手段60は、次のような作動を行うものとして構成されている。加振手段34、44に駆動信号が印加されると、加振手段における対向する両櫛歯部34aと34bとの間および43aと44bとの間にて、梁手段60側の加振用可動櫛歯部34a、44aがx方向へ振動する。ただし、第1の振動子30と第2の振動子40とで、互いに逆相(逆方向)に振動するように、加振手段34と加振手段44とでも互いに逆相に振動が発生する。
【0039】
すると、この加振用可動櫛歯部34a、44aのx方向への変位により、梁手段60においては、支点61を固定点として力点63がx方向へ変位することで、作用点62も、x方向において力点63と同方向へ変位する。そして、作用点62は力点63よりも支点61から遠くにあるため、加振手段34、44の振動による力点63の変位は、作用点62では拡大して振動子の内側部32、42に伝えられる。
【0040】
このように、両振動子30、40の各内側部32、42をx方向へ駆動振動させるために加振手段34、44にて発生した振動の変位は、梁手段60を介して、てこの原理によって拡大して振動子30、40の内側部32、42に伝えられるように構成されている。
【0041】
また、図1に示す様に、基部20と各振動子30、40との間には、角速度を検出するための検出手段70、80が、各振動子30、40毎に設けられている。各検出手段70、80は、各振動子30、40の外側部31、41から突出する櫛歯部(検出用可動電極)70a、80aと、この検出用可動電極70a、80aと噛み合って対向するように基部20側に形成された櫛歯部(検出用固定櫛歯部)70b、80bとよりなる。
【0042】
また、半導体基板10の基部20には、アルミ等よりなる各パッドが形成されている。第1の振動子30が検出梁50を介して支持されている基部20には、第1の振動子30に電気的に接続されたパッド30aが形成され、第2の振動子40が検出梁50を介して支持されている基部20には、第2の振動子40に電気的に接続されたパッド40aが形成されている。
【0043】
また、加振手段34、44における加振用固定櫛歯部34b、44bと導通する基部20には、加振用固定櫛歯部34b、44bに電気的に接続されたパッド34c、44cが形成されている。また、各検出手段70、80における検出用固定櫛歯部70b、80bと導通する基部20には、検出用固定櫛歯部70b、80bに電気的に接続されたパッド70c、80cが形成されている。
【0044】
ここで、パッド30a、40aは、それぞれ第1の振動子30、第2の振動子40を一定電位に保つためのパッドであり、パッド34c、44cは加振手段34、44に振動を発生させ各振動子30、40をx方向へ駆動振動させるための駆動用パッドである。また、パッド70c、80cは、検出手段70、80からの信号を取り出すための検出用パッドである。
【0045】
また、図1において、基部20の左下隅部に設けられているパッド90aは、振動子、加振手段、検出手段と溝を介して電気的に絶縁されている基部20を一定電位に保つためのパッドである。これら各パッドは、ワイヤボンディング等により、後述するセンサS1の外部に設けられた信号回路と電気的に接続されている。
【0046】
次に、角速度センサS1の製造方法について、SOI(シリコンオンインシュレータ)基板を用いた例として述べる。図3及び図4は、最終的に図4(d)に示す角速度センサS1を製造するための製造方法を示すもので、上記図1中のA−A線に沿った断面に対応して、各工程中のワークを示したものである。
【0047】
図4(d)に示す様に、このSOI基板104は、一対のシリコン基板101、102を酸化膜(絶縁層)103を介して貼り合わせてなるものであり、上記図1に示す半導体基板10は、図4(d)中のSOI基板104における上側のシリコン基板102に相当する。
【0048】
そして、図4(d)に示す様に、上側のシリコン基板(半導体基板)10は、開口部10aが形成された下側のシリコン基板101及び酸化膜103に、支持されている。なお、開口部10aの平面形状は、上記図1中の破線に示すようになっており、それにより、各振動子、梁手段、加振手段、検出手段は、開口部10a上にて可動となっている。
【0049】
まず、図3(a)に示す様に、単結晶シリコンからなる両シリコン基板101、102の間に酸化膜(例えば厚さ1μm)103を挟んでなるSOI基板104を用意し、上側のシリコン基板102の全面に表面抵抗値を下げ、次工程にて形成されるアルミニウムからなる上記各パッド(図中では、パッド70c、80cが図示されている)との接触抵抗を下げるために、例えばリンを高濃度に拡散(N+ 拡散)する。
【0050】
続いて、SOI基板104の表面(上側のシリコン基板102)にアルミニウムを例えば1μm蒸着し、ホト、エッチングを行い、上記各パッド30a、40a、34c、44c、70c、80c、90aを形成する。続いて、図3(b)に示す様に、SOI基板104の裏面(下側のシリコン基板101)を切削研磨(バックポリッシュ)することにより所定の厚さ(例えば300μm)とし、且つ鏡面仕上げする。
【0051】
続いて、図3(c)に示す様に、SOI基板104の裏面(下側のシリコン基板101)にプラズマSiN膜300を堆積(例えば0.5μm)し、ホトパターンを形成し、プラズマSiN膜300をエッチングすることにより所定の領域を開口する。
【0052】
続いて、図4(a)に示す様に、上側のシリコン基板102の表面に、上記基部20、2個の振動子30、40、各手段等を画定するパターンをレジストで形成し、ドライエッチングにより垂直に酸化膜103までトレンチ形状を形成する。
【0053】
続いて、図4(b)に示す様に、下側のシリコン基板101を、プラズマSiN膜300に形成したパターンをマスクとして、例えばKOH水溶液で深くエッチングする。このとき、酸化膜103までエッチングを進めると、エッチング液の圧力により酸化膜103が破れてSOI基板104を破損するため、酸化膜103が破れないように、例えば下側のシリコン基板101のシリコンを10μm残してエッチングを終了できるようエッチング時間を管理する。
【0054】
続いて、図4(c)に示す様に、プラズマドライエッチングにより、図4(b)の工程で残したSiをエッチング除去する。このとき、SOI基板104の裏面のプラズマSiN膜300は同時に除去される。最後に、図4(d)に示す様に、酸化膜103をドライエッチングによって除去して、上記振動子30、40等を形成することにより、角速度センサS1が完成する。
【0055】
この後、振動子30、40、加振手段34、44及び検出手段70、80における上記各パッドは、ワイヤボンディング等により、上記信号回路と電気的に接続される。図5は、この信号回路のブロック図である。
【0056】
図5には、上記パッドのうち、第1の振動子30、第2の振動子40をそれぞれ駆動振動させるための駆動用パッド34c、44cと、検出手段70(第1の振動子側)、検出手段80(第2の振動子側)からの信号を取り出すための検出用パッド70c、80cが示してある。
【0057】
図5に示す様に、第1の振動子30、第2の振動子40には、それぞれ共通の交流電圧(矩形波もしくは正弦波)が、駆動信号として印加されるようになっている。つまり、各加振手段34、44において、加振用可動櫛歯部34a、44aと加振用固定櫛歯部34b、44bとの間に、電圧が印加されることで静電気力が発生し、各加振手段34、44における加振用可動櫛歯部34a、44aが振動するようになっている。
【0058】
また、各検出手段70、80には、それぞれ検出用パッド70a、80aを介して、検出用可動電極70a、80aと検出用固定櫛歯部70b、80bとの間の容量を電圧に変換するためのC/V変換回路100が接続され、このC/V変換回路100の先には、駆動信号からのタイミングに基づき、検出を行わせるためのスイッチングを行う同期検波回路110が接続されている。
【0059】
次に、本角速度センサS1の作動について述べる。まず、信号回路に設けられた図示しない駆動回路から駆動用パッド34c、44cを介して、それぞれ、第1の振動子30に対応した加振手段34、第2の振動子40に対応した加振手段44に上記駆動信号を印加する。
【0060】
すると、加振手段34、44における加振用可動櫛歯部34a、44aと加振用固定櫛歯部34b、44bとの間の静電相互作用により、加振用可動櫛歯部34a、44aが加振用固定櫛歯部34b、44bに対して、近づいたり離れたりするようにx方向に沿って振動する。
【0061】
このとき、第1の振動子30に対応した加振手段34と、第2の振動子40に対応した加振手段44とでは、x方向に沿って互いに逆方向(つまり、逆相)に振動が発生する。それによって、加振手段34、44に接続された梁手段60の力点63も、加振用可動櫛歯部34a、44aの振動の変位に伴って変位する。
【0062】
そして、梁手段60においては、この力点63のx方向への変位により、作用点62も、x方向において力点63と同方向へ変位する。そして、作用点62は力点63よりも支点61から遠くにあるため、加振手段34、44の振動による力点63の変位は、作用点62では拡大して振動子の内側部32、42に伝えられる。
【0063】
つまり、加振用可動櫛歯部34a、44aが加振用固定櫛歯部34b、44bに対して、近づいたり離れたりするに伴って、折り返し枠形状を有する梁手段60は、図1および図2中の上下の支点61を固定点とし、左右の作用点62の部位を最大変位点として、x方向への枠幅が広がったり縮まったりするのである。
【0064】
こうして、梁手段60における作用点62の変位(振幅)は、加振手段34、44における振動の変位すなわち力点63における変位(振幅)よりも大きな変位となる。そして、この作用点62の変位に伴い、両振動子30、40における内側部32、42が、駆動梁33、43の作用により、互いに逆相(逆方向)でx方向へ駆動振動する。
【0065】
なお、梁手段60においては、支点61が固定点であるが、厳密には、上記したような駆動振動における梁手段60の変形(x方向への枠幅の拡縮等)に伴って、若干変位する。しかし、この支点61の変位は、駆動振動における力点63の変位(加振手段34、44による振動の変位)に比べて、一桁以上小さいものであるため、支点61は、実質的には動かない固定点として構成することができる。
【0066】
こうして、両振動子30、40が駆動振動しているときに、z軸(図1参照)回りに角速度Ωが印加されると、各振動子30、40にはy方向へ互いに逆方向のコリオリ力が作用する。すると、このコリオリ力によって、各振動子30、40は、それぞれ、振動子全体が検出梁50の作用により、y方向へ互いに逆相にて振動(検出振動)する。
【0067】
この検出振動において、各振動子30、40に対応する検出手段70、80における櫛歯間の容量が、印加角速度(コリオリ力)の大きさに応じて変化する。この容量変化は、各検出用パッド70a、80aを介して上記C/V変換回路100にて電圧に変換される。このとき、上記同期検波回路110によって検出手段70、80からの出力が角速度信号として得られる。
【0068】
このような角速度センサによれば、両振動子を逆相に駆動振動させることによって、外部加速度をキャンセルしつつ、角速度の検出信号を2個の振動子からの足し合わせとして感度良く検出することができるという利点がある。以上が、本角速度センサS1による角速度検出の作動である。
【0069】
ところで、本実施形態によれば、振動型の角速度センサにおいて、加振手段34、44の振動による変位を、てこの原理によって拡大して振動子30、40に伝える梁手段60を備えている。
【0070】
本実施形態では、梁手段60は、振動子30、40(振動子の内側部32、42)と加振手段34、44とを連結する梁であって、固定点である支点61と、振動子の内側部32、42に接続された作用点62と、加振手段34、44に接続された力点63とを備えており、上記した、てこの原理による変位拡大作用を適切に発揮することができる。
【0071】
このような振動子の変位拡大手段としての梁手段60の作用を、図6に示す作用説明図を用いて具体的に説明する。振動子30、40(振動子の内側部32、42)の駆動振動の変位(振幅)をXとすると、この変位Xは、実質的に梁手段60における作用点62の変位に相当する。
【0072】
また、梁手段60においては、力点63が支点61と作用点62との間に設けられているため、作用点62は力点63よりも支点61から遠い位置に存在するが、ここで、支点61−作用点62間の距離をA、支点61−力点63間の距離をBとする。
【0073】
すると、振動子30、40の駆動振動の変位(梁手段60における作用点62の変位)Xに対して、梁手段60における力点63の変位は、(B/A)・Xとなる。つまり、所望の振動子の変位Xを実現するために必要な加振手段33、44の振動による変位は、振動子の変位Xよりも小さくすることができる。
【0074】
ここで、図7に、本実施形態の具体的な効果を示す。図7は、支点61−作用点62間の距離Aと支点61−力点63間の距離Bとの比B/Aを変えていったときの、振動子30、40の駆動振動の振幅(図中、振動子振幅にて示し、単位はμmである)の変化を調べた結果を示す図である。
【0075】
図7に示す様に、比B/A=1のとき(従来のものに相当)に比べて、比B/Aを小さくしていくと、振動子振幅が大きくなっており、本実施形態における振動子の変位拡大効果が実現されることがわかる。
【0076】
このように、本実施形態によれば、梁手段60において、加振手段34、44からの振動による力点63の変位を、支点61を介して、作用点62では拡大して振動子30、40に伝えることができ、振動子の変位Xは力点の変位よりも大きいものになる。
【0077】
従って、本実施形態によれば、加振手段34、44における振動の振幅を小さくし加振手段における空気の粘性抵抗を小さくしても、振動子30、40(振動子の内側部32、42)における駆動振動の振幅が小さくならず十分に確保することができる。
【0078】
そのため、本実施形態の角速度センサS1は、センサを真空パッケージするといった手間を施すこと無く、角速度検出の感度が十分に確保され、センサ特性が確保されたものにすることができる。
【0079】
また、本実施形態では、振動子を、それぞれ基部20に連結された第1の振動子30と第2の振動子40とより構成し、第1及び第2の振動子30、40のそれぞれに対して検出手段70、80を設けており、加振手段34、44および梁手段60を、第1の振動子30と第2の振動子40との間に設けたものとしている。
【0080】
このように、振動子が2個ある場合、2個の振動子30、40の間に、加振手段34、44および梁手段60を設ければ、センサ構成の簡略化の点で有効である。
【0081】
具体的には、梁手段60を、第1の振動子30と第2の振動子40とを連結するものとして、加振手段34、44の振動により、第1及び第2の振動子30、40が、梁手段60を介してx方向(第1の方向)へ互いに逆相に駆動振動するようにしている。
【0082】
それによれば、駆動振動において、第1の振動子30の動きと第2の振動子40の動きが互いにキャンセルされ、両振動子30、40を連結する梁手段60における梁の途中部に、固定点としての支点61が構成されるため、梁手段60における梁の一部を基部20に固定して支点を形成すること無く、梁手段60は、てこの作用を適切に発揮することができる。
【0083】
本発明では、梁手段の梁を基部20に固定して支点を形成するようにしても良いが、その場合、当該支点を周囲の基部20から電気的に絶縁するために溝等を形成する必要がある。その点、本実施形態によれば、そのようなことが不要となり、簡略化された梁構成を実現することができ、好ましい。
【0084】
(他の実施形態)
なお、梁手段としては、上記実施形態のように、力点が支点と作用点との間に設けられたものでなくとも良く、加振手段の振動による変位を、てこの原理によって拡大して振動子に伝える構成ならば、力点と作用点との間に支点がある構成であっても良い。
【0085】
また、振動子は、上記図8に示す如く、1個でも良い。この場合、例えば、図1における左右どちらか半分の構成において、上述のように、梁手段における梁の一部を基部20に支持固定することで支点を構成すれば良い。
【0086】
また、上記図1に示す角速度センサS1では、各振動子30、40について、梁手段60における作用点62の上側と下側に、それぞれ加振手段34、44は2個ずつ設けられている。この場合、例えば、作用点62の下側の加振手段34、44のみを、拡振動子30、40の加振手段として用い、作用点62の上側の加振手段34、44は、振動子の駆動振動をモニタするモニタ手段として用いても良い。
【0087】
この場合、作用点62の上側のモニタ手段34、44は、作用点62の下側の加振手段34、44と同様に振動する。このモニタ手段における振動によって、モニタ手段における対向する両櫛歯部間の容量が変化し、この容量変化を上記したC/V変換回路等を用いてモニタ信号として検出すれば、振動子の駆動振動の状態をモニタすることができる。そして、このモニタ信号を上記駆動回路へフィードバックさせ、自励発振を行うことにより、振動子の駆動振動状態を適宜調整することが可能となる。
【0088】
また、加振手段および検出手段は、上記した櫛歯部が対向する構造でなくとも良く、例えば、平板が平行して対向する平行平板型の構成であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る角速度センサの概略平面図である。
【図2】図1中の梁手段およびその近傍の拡大図である。
【図3】上記実施形態に係る角速度センサの製造方法を示す工程図である。
【図4】図3に続く製造方法を示す工程図である。
【図5】上記実施形態に係る角速度センサの信号回路のブロック図である。
【図6】上記実施形態における梁手段の作用説明図である。
【図7】梁手段による効果を具体的に示す図である。
【図8】本発明者等が試作した角速度センサの概略平面図である。
【図9】加振手段における振動の様子を示す説明図である。
【符号の説明】
20…基部、30…第1の振動子、34…第1の振動子の加振手段、
34a…第1の振動子の加振手段における加振用可動櫛歯部、
34b…第1の振動子の加振手段における加振用固定櫛歯部、
40…第2の振動子、44…第2の振動子の加振手段、
44a…第2の振動子の加振手段における加振用可動櫛歯部、
44b…第2の振動子の加振手段における加振用固定櫛歯部、
60…梁手段、61…梁手段の支点、62…梁手段の作用点、
63…梁手段の力点、70…第1の振動子の検出手段、
80…第2の振動子の検出手段。
Claims (4)
- 基部(20)と、
前記基部に連結された振動子(30、40)と、
前記振動子を前記基部の表面と平行な第1の方向(x)へ駆動振動させるために、前記第1の方向に振動を発生させる加振手段(34、44)と、
前記振動子の駆動振動のもと角速度が印加されたときに前記第1の方向と直交するとともに前記基部の表面と平行な第2の方向(y)への前記振動子の振動に基づいて前記角速度を検出する検出手段(70、80)と、
前記振動子と前記加振手段とを連結する梁手段(60)とを備え、
前記梁手段は、
前記加振手段に連結されて前記加振手段の発生した振動による変位を、てこの原理によって前記第1の方向に沿って拡大する第1の梁手段と、
前記第1の梁手段に連結されて前記拡大された変位の振動をして前記振動子に伝える第2の梁手段とを備え、
前記第1の梁手段は、一端が固定点である支点(61)となり他端が互いに接続された作用点(62)となる2つの梁を有し、それぞれの梁において、前記支点と前記作用点との間に前記加振手段に接続された力点(63)が設けられ、前記加振手段の振動による前記力点の変位を前記作用点において前記第1の方向に沿って拡大するようになっており、
前記第2の梁手段は、前記2つの梁の他端が接続された前記作用点に連結されていることを特徴とする角速度センサ。 - 前記振動子は、それぞれ前記基部(20)に連結された第1の振動子(30)と第2の振動子(40)とよりなり、
これら第1及び第2の振動子のそれぞれに対して前記検出手段(70、80)が設けられており、
前記加振手段(34、44)および前記梁手段(60)は、前記第1の振動子と前記第2の振動子との間に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の角速度センサ。 - 前記梁手段(60)は、前記第1の振動子(30)と前記第2の振動子(40)とを連結するものであり、
前記加振手段(34、44)の振動により、前記第1及び第2の振動子は、前記梁手段を介して前記第1の方向(x)へ互いに逆相に駆動振動するようになっていることを特徴とする請求項2に記載の角速度センサ。 - 前記加振手段(34、44)は、前記加振手段における前記梁手段(60)との接続部に形成された櫛歯部(34a、44a)と、前記基部(20)に形成された櫛歯部(34b、44b)とが噛み合って対向しているものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の角速度センサ。
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