JP3834440B2 - ダイオキシン類の湿式無害化処理方法 - Google Patents

ダイオキシン類の湿式無害化処理方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はダイオキシン類の湿式無害化処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン(2,3,7,8−TCDD)に代表されるダイオキシン類は、人体に対して強い有害作用を示すことから、その環境への排出は強く規制されている。我国の厚生省は、1997年1月に「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を発表し、新設の全連炉から排出される排ガス中のダイオキシン類の濃度を、0.1ng−TEQ/Nm3以下とするように指導している。また、環境庁は、1997年12月の大気汚染防止法の改正に伴って、ダイオキシン類を指定有害物質とし、一般廃棄物のみならず、産業廃棄物の焼却において発生するダイオキシン類についても規制値を設けることになった。
ダイオキシン類の無害化処理法については、従来各種の方法が提案されている。このような方法としては、焼却法、溶融法、熱分解法、光分解法、オゾン分解法、過酸化水素による酸化分解法、水熱分解法及びアルカリ分解法等が挙げられる。
しかしながら、これらの従来法は、いずれも、その実施に大きな困難を伴ったり、経済性の点で未だ不満足である等の問題を含むものである。
特開平10−146574号公報によれば、ダイオキシン類を含む飛灰に濃硫酸等の酸化性酸を加えてスラリー状となし、このスラリーを100℃以上の温度に加熱してダイオキシン類を分解する方法が提案されている。
この方法では、比較的効率よくダイオキシン類の無害化を実施することができるものの、その処理温度が水の沸点(大気圧下、以下同じ)以上の温度である100℃以上、好ましくは200℃以上でしかも水を蒸発させながら処理を行うことから、エネルギーの消費割合が大きい上に、装置コストが高い等の問題を含む。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ダイオキシン類を無害化する湿式処理法において、その処理温度が水の沸点よりも低く、ダイオキシン類の無害化コストの安価な方法を提供することをその課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、意外にも、ダイオキシン類は、100℃より低い温度において、反応触媒を溶解状態で含む塩酸酸性水溶液と接触させることによって無害化し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、ダイオキシン類の湿式無害化処理方法であって、100℃より低い温度において、該ダイオキシン類に反応触媒を溶解状態で含む塩酸酸性水溶液を接触させて、少なくとも60%の分解率で該ダイオキシン類を分解無害化させることを特徴とするダイオキシン類の湿式無害化処理方法が提供される。
また、本発明によれば、焼却炉から発生したダイオキシン類含有飛灰を含む焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法であって、該焼却炉排ガスに100℃より低い温度において反応触媒を溶解状態で含む塩酸酸性水溶液を接触させて、該排ガス中の飛灰を水溶液中に移行させると共に少なくとも60%の分解率で該飛灰に付着しているダイオキシン類を分解無害化させることを特徴とする焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法が提供される。
さらに、本発明によれば、焼却炉から発生したダイオキシン類含有飛灰を含む100℃より高い温度の焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法であって、該焼却炉排ガスを冷却用液と気液接触させて該排ガス温度を100℃より低い温度に低下させる冷却工程、該冷却工程で得られた排ガスを塩酸酸性水溶液と気液接触させる気液接触工程及び該冷却工程で得られた排ガスと接触した後の飛灰を含む冷却用液と該接触工程で得られた排ガスと接触した後の飛灰を含む塩酸酸性水溶液を、別々に又は合一の状態で、塩素イオン濃度が10ミリモル/リットル以上、銅イオン濃度が20mg/リットル以上及び処理温度が100℃より低い処理条件下に保持して飛灰中のダイオキシン類を少なくとも60%の分解率で分解無害化させるダイオキシン類分解工程を包含することを特徴とする焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法が提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
本明細書で言うダイオキシン類とは、2,3,7,8−テトラクロロジベンゾ−p−ジオキシン(2,3,7,8−TCDD)及びその類縁化合物を指し、ジベンゾ−p−ジオキシン核に1〜8個の塩素原子が置換したポリクロロジベンゾ−p−ジオキシン類(PCDDs)及びジベンゾフラン核に1〜8個の塩素原子が置換したポリクロロジベンゾフラン類(PCDFs)等を包含する。
【0006】
ダイオキシン類は、前記のように種々の塩素化合物を包含するが、その具体的種類により、各種ダイオキシン類の有害性の程度はそれぞれ異なるため、各種ダイオキシン類の混合物全体としての有害性を評価するには異なるダイオキシン類の有害性を区別して評価する尺度が必要になる。このため、各種ダイオキシン類の短期間での毒性評価結果に基づき、各種ダイオキシン類の量をそれと同程度の毒性を有する2,3,7,8−TCDDの量に換算する係数(毒性当量係数(TEF))が求められており、各種ダイオキシン類のそれぞれの実際の量にこの毒性当量係数を乗じた値を加え合わせたものが毒性等価換算値(TEQ)と呼ばれて、ダイオキシン類の排出量や濃度を表すのに用いられている。
【0007】
本発明によるダイオキシン類の無害化処理方法は、ダイオキシン類に反応触媒を溶解状態で含む塩酸酸性水溶液(以下、単に水溶液とも言う)を接触させることを特徴とする。この場合、その処理温度は、水の沸点(100℃)より低い温度であり、好ましくは80℃以下の温度である。その下限温度は、30℃程度である。
本発明で反応処理剤として用いる前記水溶液において、そのCl-イオン濃度は、水溶液1リットル当り、10ミリモル以上、好ましくは100ミリモル以上であり、その上限値は3000ミリモル程度である。そのpHは、7以下、好ましくは6以下であり、その下限値は、通常、2程度である。この水溶液は、他の無機酸、例えば硫酸を含むことができるが、この場合、水溶液中のCl-イオンとSO4 2-イオンとのモル比[Cl-]/[SO4 2-]は、5以上、好ましくは20以上に調節するのがよい。この場合、その上限値は特に制約されない。ダイオキシン類と水溶液との接触方法としては、ダイオキシン類又はそれを含有する固体を水溶液中で撹拌する方法や、ダイオキシン類又はそれを含有する固体に水溶液をスプレーさせて接触させる方法、充填塔や棚段塔で接触させる方法等が挙げられる。
なお、本明細書で言う塩酸酸性水溶液とは、塩素イオンを含有する酸性水溶液を意味し、酸性を維持するための酸は、塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられるが、塩酸の使用が好ましい。
また、ダイオキシン類の分解とは、ダイオキシン類が非ダイオキシン化することを意味する。
【0008】
本発明で用いる塩酸酸性水溶液は、ダイオキシン類の分解を促進させる反応触媒を含有する。本発明者らの研究により、100℃より低い温度において、前記水溶液をダイオキシン類に接触させることによりダイオキシン類を無害化し得ることが明らかにされたが、反応触媒を含有しない水溶液を用いる場合には、ダイオキシン類を無害化するのに相当の長時間を要することになるため、その反応触媒を水溶液に含有させることは、工業的又は商業的観点からは非常に重要になる。このような反応触媒としては金属イオンが用いられるが、この場合の金属は低次価数と高次価数をとり得る金属であれば、還移金属でもそれ以外の金属でもよい。このような金属には、鉄、マンガン、銅、ニッケル、コバルト、モリブデン、クロム、バナジウム、タングステン、銀、スズ等が包含される。金属イオンは1種又は2種以上の混合物であることができる。金属イオンには、通常の金属イオンの他、錯イオンも包含される。本発明者らの研究によれば、銅イオン又は鉄イオンが好ましい。水溶液中に含有させる触媒金属イオンの量は、特に制約されないが、銅イオンの場合、金属換算量で、20〜10,000mg/リットル、好ましくは100〜5,000mg/リットル程度である。10,000mg/リットルを超えても、その添加効果の増加は期待できない。また、他の金属イオンの場合も、その量は銅イオンの場合と同程度である。
本発明で用いる反応触媒は、一般には、塩化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の金属酸化物又は金属塩の形で供給される。本発明で用いるダイオキシン類を無害化させる反応処理剤としての塩酸酸性水溶液は、これらの金属酸化物や金属塩を溶解状態で含むが、この場合、その反応触媒は未溶解分を含むことができる。この未溶解分は、通常、溶解状態へ移行する過程にある。このような溶解状態へ移行する過程にある未溶解分を含む反応触媒も、有効に作用する。
本発明で用いる反応触媒としては、飛灰や炉灰等の焼却灰中に含まれている金属成分を利用することができる。焼却灰には前記した如き反応触媒として作用する金属が含まれている場合が多い。このような焼却灰中に含まれている金属成分を反応触媒として利用するには、焼却灰を塩酸水溶液中に加えて攪拌すればよい。このような焼却灰中の金属成分は金属イオンとしてその塩酸水溶液中に溶出される。そして、このような金属イオンを溶解状態で含有する塩酸酸性水溶液は、本発明におけるダイオキシン類に対する反応処理剤として用いることができる。本明細書において言う反応触媒は、自らの価数を変化させながら、ダイオキシン類を無害化させる作用を有するものも包含するものである。従って、反応触媒として用いる前記金属イオンは、同じ価数のものである必要はなく、低次価数金属イオンと高次価数金属イオンの混合物であることができ、例えば、一価銅イオンと二価銅イオンとの混合物等であることができる。また、反応中にその金属イオンの価数が増加又は減少するものであってもよい。本発明で用いる好ましい反応処理剤は、例えば、塩化第1銅と塩化第2銅を包含する塩酸酸性水溶液からなるものである。
【0009】
本発明で反応処理剤として用いる水溶液には、水溶液とダイオキシン類との接触を促進させるような物質(接触促進剤)を含有させることができる。この接触促進剤には、界面活性剤やアルコール類が包含される。この場合の界面活性剤の種類は、特に制約されず、陰イオン系、陽イオン系、非イオン系及び両性の界面活性剤が使用可能である。界面活性剤の添加量は0.005〜1重量%、好ましくは0.01〜0.5重量%である。アルコール類としては、低級アルコールが好ましく用いられ、その具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられる。その添加量は、0.5〜10重量%、好ましくは1〜10重量%である。
また、本発明においては、水溶液とダイオキシン類との接触を促進させるために、その水溶液に超音波を照射することが好ましい。超音波としては、エマルジョン調製用等に一般的に採用されている超音波が用いられる。
さらに、本発明によれば、必要に応じ、その水溶液には、酸素又は酸素含有気体を接触させてその水溶液中の溶存酸素濃度を高めることもできる。溶存酸素の存在は、反応触媒の活性発現を促進させ、ダイオキシン類の分解を効果的に促進させる。この場合の水溶液と酸素又は酸素含有ガスとの接触方法としては、水溶液中に酸素又は酸素含有ガスを吹込む方法や、水溶液の微細液滴に酸素又は酸素含有ガスを接触させる方法、充填塔において水溶液と酸素又は酸素含有ガスとを向流接触させる方法等が挙げられる。酸素含有ガスとしては、空気や酸素富化空気等が挙げられる。
【0010】
本発明の方法で用いる被処理原料はダイオキシン類であるが、このダイオキシン類の無害化処理においては、ダイオキシン類は単味の状態で処理されることは少なく、通常、固体に付着した状態で処理される。このようなダイオキシン類の付着した状態の固体としては、各種焼却炉から排出される焼却灰が挙げられる。この場合の焼却灰には、焼却炉からの排ガス中に含まれる飛灰と炉底に堆積する炉灰が包含される。このような焼却灰は、未燃炭素(あるいは炭素質物質)を含み、ダイオキシン類はこの未燃炭素中に存在していることから、非常に無害化しにくいものである。このような焼却灰を水溶液を用いて無害化処理する場合には、水溶液とダイオキシン類との接触を促進させる接触促進剤の使用が好ましく、その他に、その水溶液とダイオキシン類とが接触しやすくなるように、その水溶液に超音波を照射したり、あるいは焼却灰を粉砕したり、焼却灰を焼成してその未燃炭素量を減少させる等の前処理の実施も効果的である。
【0011】
被処理原料として焼却灰を用いる場合、この焼却灰は、通常、未燃炭素あるいは炭素質物質を含有するが、このような炭素質物質に含有されるダイオキシン類は、その炭素質物質がダイオキシン類と水溶液との接触を妨げることから、無害化することの困難なものである。そして、その無害化の困難性は、その炭素質物質の量が増加するに従って大きくなる。従って、この観点から、焼却灰中に含まれる炭素質物質の量をあらかじめ減少させることが好ましく、本発明者らの研究によれば、その炭素質物質の含有量は、2重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下にするのがよい。このためには、ゴミ等の廃棄物を焼却する燃焼炉における燃焼条件を調節して排出される焼却灰中の炭素質物質含有量を低減させるのが好ましい。また、多量の炭素質物質が付着した飛灰や炉灰の処理には、それらをいったん焼成してその炭素質物質の含有量を減少させた後、無害化処理するのが好ましい。
【0012】
固体に付着したダイオキシン類としては、前記した飛灰や炉灰等の焼却灰の他、ダイオキシン汚染土壌等が挙げられる。
本発明によれば、単味のダイオキシン類はもちろん、前記した如き固体に付着したダイオキシン類を無害化処理することができる。この場合、その処理温度が水の沸点より低い温度であることから、エネルギーの消費割合は非常に低く、かつ装置コストも低いものである。処理時間は1〜100時間程度であるが、その具体的処理時間は、その被処理原料であるダイオキシン類の存在状態及び水溶液の組成を含む処理条件、さらに所望するダイオキシン類分解率等により変わり、一義的に定めることは困難である。本発明の場合、その処理におけるダイオキシン類の分解率が60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上となるように行うことを必須要件とする。換言すれば、本発明の場合、水溶液の組成及び処理時間を含む処理条件、水溶液に含まれる反応触媒の種類、ダイオキシン類の反応性を高める予備処理等を適宜選択することにより、60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上のダイオキシン類の分類率が達成できる。水溶液等の安価な反応処理剤を用い、水の沸点よりも大幅に低い処理温度において、ダイオキシン類を60%以上の分解率で分解無害化する方法は、本発明者らが初めて開発したものである。
【0013】
次に、本発明を図面を参照しながら詳述する。
図1は、ダイオキシン類含有飛灰を本発明により処理する場合のフローシートの一例を示す。
図1において、10は固液接触装置を示し、2は固液分離装置を示し、3は金属分離装置を示し、4は銅分離装置を示す。
図1のフローシートに従って、ダイオキシン類含有飛灰を処理するには、100℃より低い温度に保たれた固液接触装置1にライン11を通してダイオキシン類含有飛灰を導入する。
固液接触装置10は、ダイオキシン類を無害化するためのもので、ここでダイオキシン類含有飛灰と反応触媒を溶解状態で含む塩酸酸性水溶液とが接触される。この固液接触装置10は、ダイオキシン類含有飛灰と液体とを接触し得る構造のものであればどのようなものでもよい。
この固液接触装置10には、ダイオキシン類含有飛灰と接触させるための補給用の塩酸酸性水溶液がライン13を通って導入され、また、必要に応じてのpH調節用のアルカリ水溶液がライン14を通って導入される。この場合のアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウムや、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ性物質を水中に溶解もしくは分散して形成した水溶液もしくはスラリーが用いられる。
【0014】
この固液接触装置10で用いられる水溶液中の塩素イオン濃度は、10ミリモル/リットル以上、好ましくは100ミリモル/リットル以上であり、そのpHは7以下、好ましくは6〜2である。pH2以下では、装置材料の腐食が激しくなり、また、ダイオキシン類分解処理後の水溶液のろ過性が悪くなる等の問題が生じる。また、この水溶液中には、反応触媒として銅イオンを含有させることが望ましい。この銅イオン原料は、ライン22を通って溶解状態または固体の状態で供給されるが、飛灰中に銅が含まれているときには、その銅は銅イオンとして水溶液中に溶出される。従って、前記銅イオンとしては、この飛灰中に含まれる銅を利用することができる。この場合には、ライン22からの銅イオン原料の供給は特に必要とされず、銅分離装置4で得られた銅をライン21を通って装置10に循環使用すればよい。固液接触装置10においてダイオキシン類含有飛灰と接触させる水溶液中の銅イオン濃度は、20〜10,000mg/リットル、好ましくは100〜5,000mg/リットルである。
【0015】
固液接触装置10においては、ダイオキシン類含有飛灰と水溶液との接触が行われ、これによって飛灰中のダイオキシン類が分解される。本発明においては、ダイオキシン類は、その60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上を分解させる。このためには、固液接触装置10での飛灰の滞留時間を大きく取り、反応時間を長時間に調節する方法等が採用される。ダイオキシン類の分解反応を促進させ、その分解に要する時間(反応時間)を短縮させるには、前記したように、水溶液中に反応触媒、特に銅イオンを含有させる等して、水溶液中の性状をダイオキシン類の分解に適したものに調整することが必要である。ダイオキシン類含有飛灰は都市ゴミ等を焼却する際に排出されるが、このものが未然炭素を含む飛灰である場合には、その飛灰に含まれるダイオキシン類の分解無害化は相当に難しい。この飛灰中のダイオキシン類を効果的に分解無害化するには、前記したように、その飛灰に付着する未燃炭素量をできるだけ少なくするのが有効である。本発明においては、前記したように、飛灰中の未燃炭素量は、2重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下に規定するのが好ましい。このためには、焼却炉におけるゴミ等の被焼却物の燃焼を十分な酸素の存在下で完全燃焼させて飛灰中の炭素質物質量を減少させることが必要である。また、飛灰中の未燃炭素量が多い場合には、この飛灰と接触させる水溶液中には、ダイオキシン類と水溶液との接触を促進させる前記した如き接触促進剤を添加するのが好ましい。
【0016】
固液接触装置10で固液接触した後の処理飛灰は、ライン15を通って固液分離装置2に導入され、ここで固液分離される。固液分離装置2は、液体中に含まれる固体を分離し得る構造のものであれば、どのようなものでもよい。このようなものとしては、濾過装置、遠心分離装置、沈降分離装置等が挙げられる。
固液分離装置2では、水溶液中に含まれる飛灰等の固体物質が分離され、固体物質の分離された後の水溶液はライン16を通って金属分離装置3に導入される。この金属分離装置3は、水溶液中に含まれる重金属イオンを分離し得る構造のものであれば、どのようなものでもよい。このようなものとしては、金属イオンを沈殿として沈降させる装置や、金属イオン吸着剤(イオン交換樹脂や、キレート樹脂等)を含む装置等が挙げられる。
【0017】
金属分離装置3で分離された金属は、ライン19を通って銅分離装置4に導入され、ここでその金属の中に含まれる触媒金属、例えば、銅が分離される。この銅は、水溶性銅化合物(塩化銅等)の形態でライン21を通って固液接触装置10に導入される。銅分離装置4は、金属の中から銅を分離し得る構造のものであればどのようなものでもよい。このようなものとしては、金属化合物の中から銅化合物を選択的に沈殿又は溶解させる装置や、金属イオンの中から銅イオンを選択的に吸着分離させる装置等が挙げられる。本発明の場合、金属分離装置3と銅分離装置4は別々の装置である必要はなく、塩酸酸性水溶液からの金属の分離と、金属の中から銅を選択的に分別する両方の機能を持った装置であれば、1つの装置であってもよい。
金属分離装置3で金属を分離した後の溶液(排水)は、中和した後ライン18を通って排出され、必要に応じ、さらに浄化処理を施して、河川等に放流される。
【0018】
本発明では飛灰と水溶液を接触させながらこれを所定時間保持することにより、その飛灰中のダイオキシン類をほぼ完全に分解無害化することができる。この場合、ダイオキシン類と水溶液との接触効率を高めるために、前記した接触促進剤の添加や、前記した超音波照射を採用するのが好ましい。
【0019】
図2は、溶融炉から排出される飛灰を含む排ガスを本発明により処理する場合のフローシートの一例を示す。図中40は溶融炉を示す。
溶融炉40には、上部に破砕ごみピットまたは破砕ごみホッパ41から、ピストンを用いたプッシャやポンプ等からなる給塵機42によって送られてくる破砕ごみのごみ投入口40aが設けられており、他方その底部には、PSA分離器によって空気から分離された酸素富化空気をごみの熱分解によって得られたチャーに供給して内部を高温に保持するための酸素富化空気の導入管43及び助燃剤の供給管44が接続されている。そして、この溶融炉40の下流側には、ごみの熱分解によって生成した還元雰囲気にある熱分解ガスを完全燃焼させるための二次燃焼室45が配設されている。この二次燃焼室45には、空気供給用の配管51と水(ゴミピットよりの汚水等)供給用配管52が付設されている。この二次燃焼室45の出口側に廃熱回収ボイラ46が設けられており、このボイラ46において回収された熱によって図示されないタービンを駆動し、これと連結された発電機によって上記廃熱が電力として回収されるようになっている。
【0020】
そして、上記ボイラ46の下流側に、排ガス冷却用水供給用配管を設け、冷却された飛灰を含む排ガスが導入される気液接触装置1が設けられている。気液接触装置1には、補給水供給用配管13とpH調節用アルカリ水供給用配管14が付設されている。
気液接触装置1には、水溶液移送配管15を介して固液分離装置2が接続され、さらに、この固液分離装置2には金属分離装置3が接続され、その金属分離装置3には銅分離装置4が接続されている。
【0021】
また、気液接触装置1の排ガスの出口ダクトには、図示されないミストエリミネータを介して、図2に示すように、順次排ガス流路30に沿って装置1から排出された排ガスを昇温させる熱交換器31と、排ガス中に残留している飛灰等を捕集するバグフィルタ(集塵機)33と、大気に放出する前の排ガスを白煙防止のために昇温させる熱交換器34とが配設されており、この熱交換器34を経た排ガスが、煙突から大気に放出されるようになっている。バグフィルタ33には、ここで捕集された飛灰を装置1に循環供給するための循環供給ライン36が付設されている。
【0022】
次に、図2に示したフローシートに従ってごみ等の廃棄物の焼却処理及び焼却炉排ガスの処理を行うには、ごみを投入口40aからごみ溶融炉40に投入し、投入された破砕ごみは、内部で熱分解されて熱分解ガスと炭素質で高カロリーなチャーになる。そして、上記チャーは、導入管43、44から供給された酸素富化空気及び助燃剤によって燃焼される。これによりごみ溶融炉40の底部は1650℃程度の高温に保持される。その結果、ごみ溶融炉40内は、底部の燃焼・溶融域、中央部の熱分解域及び頂部の乾燥域の三帯域が連続した状態に保たれ、ごみ中の不燃物が底部の燃焼・溶融域において無害の溶融スラグ(金属やガラスの溶融物)となり、炉底から連続的に排出されて行く。これと並行して、ごみ溶融炉(焼却炉)40の底部における反応によって発生した高温ガスは、炉内を上昇して順次投入されたごみを熱分解域において熱分解し、還元雰囲気の熱分解ガスを発生し、この熱分解ガスによって投入口40aから投入されたばかりのごみを乾燥する。
【0023】
前記熱分解ガスは、ダクトを介して、配管51を通って空気が供給され、配管52を通って汚水が供給されている二次燃焼室45に送られて完全燃焼された後、その廃熱がボイラ46で蒸気に熱交換され、得られた蒸気によってタービン及び発電機が駆動される。この発電機の駆動によって電力が回収される。このようにして廃熱が回収された排ガスは、排ガス冷却用水供給配管32よりダクト11内にスプレーされる水と接触し、断熱冷却されて100℃より低い温度(通常、約65℃)に冷却されて気液接触装置1に導入される。
【0024】
気液接触装置1においては、触媒金属イオン(銅イオン)を溶解する水溶液と排ガスとの接触が行われる。これにより、排ガス中の飛灰はその水溶液中に捕捉されるとともに、その飛灰中の金属成分がその水溶液中に抽出される。さらに、その排ガスに含有される塩化水素ガス等の酸性ガスは水溶液中に吸収される。気液接触装置1において、水溶液中に捕捉された飛灰の滞留時間を所定時間取ることにより、その飛灰中のダイオキシン類はほぼ完全に分解無害化される。この装置1における液体成分(スラリー溶液)の一部は装置1から抜出され、配管15を介して固液分離装置2に導入される。一方、その液体抜出量に相応する補給水が、系内の保有水量が一定となるように配管13を通って装置1に導入される。
【0025】
なお、装置1における排ガスの処理にともなって、処理すべき排ガスの容量が大きい場合や塩化水素ガスの濃度が高い場合には、経時的に塩酸酸性水溶液の酸性度が高まってpHが2よりも低下することも考えられるが、このような場合には、pH制御装置の検出器からの検出信号に基づいて、塩酸酸性水溶液に、pHを所定範囲に保持するための相応量のアルカリ水が配管14を通って導入される。
【0026】
気液接触装置1から排出される排ガス中の媒塵濃度は、通常、0.1〜0.3(g/Nm3)程度であるが、この排ガスは、ミストエリミネータ(図示されず)においてミストが除去され、熱交換器31に送られる。この熱交換器31において、次のバグフィルタ33において局所的な凝縮によるトラブルを避けるのに十分な温度を得るため、その水分飽和温度よりも20℃以上高い温度に昇温された後に、バグフィルタ33に送られる。
バグフィルタ33においては、排ガス中に残留している飛灰が取り除かれ、無害化された排ガスは熱交換器34においてさらに昇温されて煙突から大気に放出される。
バグフィルタ33において捕集されたバグ飛灰は分離除去されて戻り管36を通って気液接触装置1に送られ、そこで飛灰中のダイオキシン類は分解無害化される。
【0027】
固液分離装置2においては、水溶液中の飛灰が分離される。分離された飛灰は、その中に含まれるダイオキシン類が分解無害化された安全性の高められたもので、固液分離装置2から配管17を通って抜出される。一方、飛灰が分離された後の水溶液は、配管16を通って金属分離装置3に送られ、水溶液中に溶存する重金属成分が分離される。分離された金属は、配管16を通って銅分離装置4に送られ、ここで銅が分離される。分離された銅は、必要に応じて、水溶性銅化合物(塩化銅等)に変換された後、配管21を通って気液接触装置1に循環される。銅が分離された後の金属は配管20を通って排出される。
一方、金属分離装置3で金属を分離した後の水溶液は、配管18を通って排出される。
【0028】
本発明により焼却炉排ガスの無害化処理を行う場合、その排ガスが塩化水素を含み、またその排ガス中に含まれる飛灰中に銅等の触媒金属が含まれているときには、外部からの反応触媒の添加や、塩素イオンを含む酸性水溶液の添加は特に必要されず、外部からは工業用水の添加のみで排ガスを無害化処理することが可能である。
また、前記した飛灰を含む水溶液を保持する工程(ダイオキシン類分解反応工程)は、気液接触装置内において実施し得る他、その飛灰を含む水溶液を気液接触装置から抜出した後、反応容器に入れ、この反応容器内で実施することができる。反応容器内で実施する場合、その温度、pH条件、塩素イオン濃度及び反応触媒濃度等の処理条件を最適化することが容易であるので、気液接触装置とは別に配設した反応容器内で飛灰中のダイオキシン類の分解無害化を行うことは、好ましい方法である。
【0029】
図3に焼却炉排ガスが塩化水素を含み、排ガス中に含まれている飛灰が反応触媒金属を含む場合の焼却炉排ガスの処理で、気液接触装置とは別に配設した反応容器内で飛灰中のダイオキシン類を無害化処理する場合のフローシートの一例を示す。
図3において、70はボイラー、71は冷却装置、72は気液接触装置、73は熱交換器、74は集塵機、75は反応容器、76は固液分離装置、77は排水処理装置を示す。
図3に示したフローシートに従って排ガスを処理するには、焼却装置系からの高温(約900℃)の排ガスをライン81を通してボイラー70に導入してここで排ガス中の熱量を回収する。これにより排ガスの温度は約250℃程度に低下する。次にこの排ガスは冷却装置71に送り、ここでさらに冷却し、これにより、その排ガスの温度は約65℃程度にまで低下する。
冷却装置71は、ライン83から供給される冷却用水をスプレーして微細液滴とし、この液滴と排ガスとを接触させて断熱冷却させる構造の装置である。この冷却装置71における排ガスの冷却処理により、冷却された排ガスと、排ガスと接触して排ガス中の塩化水素及び飛灰等の汚染物質の一部を捕捉した冷却用水が得られる。この場合の排ガスと接触した後の冷却用水は、排ガス中の塩化水素を吸収したもので、塩酸水溶液となっている。
冷却装置71からの排ガス及び塩酸水溶液はそれぞれライン84及び85を通って気液接触装置(洗煙装置)72に導入される。この場合の気液接触装置72は、スプレー塔、充填塔などの液分散型、もしくは気泡塔、棚段塔などのガス分散型の構造のものである。
この装置72における排ガスと塩酸水溶液との接触処理により、排ガス中に含まれる酸性ガスや飛灰等の汚染物質は、その塩酸水溶液中にほぼ完全に移行する。このようにして清浄化された排ガスは、ライン86を通って熱交換器73に入り、ここで20℃以上昇温された後、ライン87を通って集塵機74に導入され、ここで排ガス中に残存する飛灰が除去される。飛灰を除去した後の排ガスはライン88を通って排出される。集塵機74で捕集された飛灰は分離除去されて戻り管93又は94を通って気液接触装置72又は反応容器75に送られる。
一方、気液接触装置72で得られた排ガスと接触した後の飛灰を含む水溶液は、ライン89を通って反応容器75に導入される。反応容器75では、飛灰中に含まれるダイオキシン類の無害化が達成される。
即ち、飛灰を含む水溶液は、この反応容器中で所定時間撹拌処理され、この間に飛灰中のダイオキシン類が分解無害化される。この場合の水溶液は、排ガス中に含まれる塩化水素ガスを吸収し、かつ飛灰中に含まれる反応触媒を溶解したものであり、ダイオキシン類に対しては良好な分解無害化作用を示すものである。反応時間は、飛灰に含まれる炭素質物質の量に依存するため、一義的に定めることは困難であるが、例えばダイオキシン類分解率80%を達成する場合、飛灰中に含まれる炭素質物質の量が0.5重量%以下の場合には、24〜48時間程度であり、1.5重量%程度の場合には50〜60時間程度である。一方、1.5重量%程度の場合、メタノール等の接触促進剤の存在下では、約20〜30時間程度である。反応容器75で得られた反応生成物は、ライン90を通って固液分離装置76に送られ、固液分離処理を受け、得られた固体物質(飛灰)はライン92を通って排出され、一方、分離された水溶液はライン91を通って、金属分離処理等を包含する排水処理工程に送られる。
【0030】
【実施例】
次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0031】
実施例1
焼却炉排ガス中から分離回収した下記性状の飛灰中に含まれるダイオキシン類の無害化処理を以下のようにして行った。
(飛灰の性状)
(i)炭素質物質の含有量 :0.1重量%
(ii)銅含有量 :0.35重量%
(iii)ダイオキシン類含有量:3.6ng−TEQ/g
(実験方法)
前記飛灰400gを、2リットルの純水中に加え、加熱撹拌しながら塩酸を添加して65℃、pH3.5を48時間維持した。この時の水溶液中のCl濃度は1900ミリモル/リットルで、〔Cl〕/〔SO4〕は113で、Cu濃度は500mg/リットルであった。48時間撹拌後、スラリーを吸引ろ過して処理後の飛灰中に含まれるダイオキシン類を分析した。ダイオキシン類分解率を以下の式により算出した。その結果、92%の分解率が得られた。
【数1】
R=(a0×c0−a×c)/a00×100 (1)
R :ダイオキシン類分解率(%)
0:未処理飛灰重量(g(Dry))
a :処理飛灰重量(g(Dry))
0:未処理飛灰中のDXN濃度(ng−TEQ/g)
c :処理飛灰中のDXN濃度(ng−TEQ/g)
【0032】
実施例2
実施例1において、pH調整を硫酸で行った以外は同様にして実験を行った。この時のCl/SO4モル比は19であった。この場合のダイオキシン類分解率は61%であった。
【0033】
実施例3
実施例1において、反応時間を変化させた以外は同様にして実験を行った。その結果、反応時間20時間で65%の分解率が得られ、反応時間48時間で92%の分解率が得られた。
【0034】
実施例4
焼却炉排ガス中から分離回収した下記性状の飛灰中に含まれるダイオキシン類の無害化処理を以下のようにして行なった。
(飛灰の性状)
(i)炭素質物質の含有量 :3.0重量%
(ii)銅含有量 :0.17重量%
(iii)ダイオキシン類含有量:17.4ng−TEQ/g
(実験方法)
前記飛灰400gを、純水に接触促進剤としてメタノールを10wt%添加した4リットルの溶液中に加え、加熱撹拌しながら塩酸を添加して65℃、pH3.5を48時間維持した。この時の水溶液中のCl濃度は480ミリモル/リットルで、〔Cl〕/〔SO4〕モル比は29で、Cu濃度は100mg/リットルであった。48時間撹拌後、スラリーを吸引ろ過して処理後の飛灰中に含まれるダイオキシン類を分析し、ダイオキシン類分解率を算出した。その結果、70%の分解率が得られた。
【0035】
実施例5
実施例4において、水溶液に超音波を照射した以外は同様にして実験を行った。この場合には83%の分解率が得られた。
なお、前記超音波としては、久保田商事社製の超音波処理装置UP−50Hから発生する超音波を用いた。
【0036】
実施例6
実施例4において、接触促進剤としてメタノールの代りにスルホサクシネート型アニオン界面活性剤8g及び特殊エーテル系非イオン界面活性剤4gを添加した以外は同様にして実験を行った。この場合には67%の分解率が得られた。
【0037】
実施例7
図4に示す実験装置を用い、以下の操作及び条件に従って飛灰中に含まれるダイオキシン類の分解実験を行った。
(処理操作及び条件)
1.図4に示すフラスコにFe、Mn、Mo、Cu、Zn、Cr及びVをそれぞれ100mg/L含む(塩化物として溶解)純水2.0Lを入れ、これに少量の塩酸を加えて加熱撹拌し、pH3.5及び65℃の条件を維持した。
2.次いで、これに実施例1で示した飛灰400gを投入し、塩酸を加えてpH3.5を維持ながら、50NL/時で空気流通下、65℃で48時間撹拌を続けた。
3.48時間の撹拌後、スラリーを吸引濾過して処理液と処理飛灰を得た。
4.原飛灰、処理液、処理飛灰及び排出ガス中のダイオキシン類を分析した。
【0038】
(処理結果)
(1)飛灰の上記湿式処理前後の重量変化は表1の通りであり、処理前の400gが処理後には150g(処理前の37.5%)に減少した。これはNacl等の溶解性塩類が溶解したためであると思われる。
【表1】
Figure 0003834440
【0039】
(2)上記湿式処理前後の飛灰中のダイオキシン類の濃度は表2に示す通りであり、処理後の飛灰中の濃度は全体的に処理前の飛灰中の濃度に比べてかなり低くなった。なお、表2及び表3中の略語は次の意味を有する。
T4CDDs:テトラクロロジベンゾパラジオキシン
P5CDDs:ペンタクロロジベンゾパラジオキシン
H6CDDs:ヘキサクロロジベンゾパラジオキシン
H7CDDs:ヘプタクロロジベンゾパラジオキシン
O8CDD:オクタクロロジベンゾパラジオキシン
Total PCDDs:全ポリクロロジベンゾパラジオキシン
T4CDFs:テトラクロロジベンゾフラン
P5CDFs:ペンタクロロジベンゾフラン
H6CDFs:ヘキサクロロジベンゾフラン
H7CDFs:ヘプタクロロジベンゾフラン
O8CDFs:オクタクロロジベンゾフラン
Total PCDFs:全ポリクロロジベンゾフラン
Total 全ダイオキシン類
【0040】
【表2】
Figure 0003834440
【0041】
(3)表3にダイオキシン類の除去率(分解率)を示す。除去率は処理後の飛灰重量が元の重量の37.5%になっていることを考慮して、前記数式1で算出した。なお、排出ガス及び処理液中のダイオキシン類は、物質収支上、無視しうる程度であったことから、除去率は飛灰中のダイオキシン類濃度の分析値のみから算出した。
【0042】
【表3】
Figure 0003834440
【0043】
実施例8
図3に示したフローシートに従い、焼却炉排ガスの無害化処理について示す。この場合の主要操作条件を図3との関連で以下に示す。なお、本実施例のデータは個々の小規模実験で得られた結果をベースとしている。
(1)ライン82
(i)温度:250℃
(ii)ガス量:15,000Nm3/h
(iii)ガス中の飛灰量:19,000g/h
(iv)ガス中の飛灰濃度:1.27g/Nm3
(v)飛灰中のダイオキシン類(以下、DXNと略記する)濃度:1.0ng−TEQ/g
(2)冷却装置71
(i)冷却液:工業用水
(ii)冷却温度:65℃
(3)ライン84
(i)温度:65℃
(ii)ガス中の飛灰量:12,000g/h
(4)ライン85
(i)温度:65℃
(ii)液中の飛灰量:7.000g/h
(5)気液接触装置72
(i)温度:65℃
(ii)処理液の性状
Clイオン濃度:845ミリモル/l
Cuイオン濃度:100mg/l
Cl/SO4モル比:100
pH:3.5
(6)ライン88
(i)温度:95℃
(ii)ガス中の飛灰量:152g/h
(7)ライン89
(i)温度:65℃
(ii)液中の飛灰濃度:1.1wt%
(iii)飛灰中のDXN濃度:2.1ng−TEQ/g
(8)反応容器75
Clイオン濃度:845ミリモル/1
Cuイオン濃度:100mg/1
Cl/SO4モル比:100
pH:3.5
滞留時間:48時間
(9)ライン90
(i)温度:65℃
(ii)液中の飛灰濃度:1.1wt%
(iii)飛灰中のDXN濃度:0.4ng−TEQ/g
(iv)DXN分解率:85%
(10)ライン92
(i)温度:65℃
(ii)飛灰量:7.07kg/h
(iii)飛灰中のDXN濃度:0.4ng−TEQ/g
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、焼却炉排ガス中に含まれる飛灰中のダイオキシン類を低コストでかつ高効率で分解無害化することができる。
本発明によれば、炉灰等の固体中に含まれるダイオキシン類を低コストでかつ高効率で分解無害化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイオキシン類含有飛灰を本発明により処理する場合のフローシートの一例を示す。
【図2】焼却炉(溶融炉)から排出される飛灰を含む焼却炉排ガスを本発明により処理する場合のフローシートの一例を示す。
【図3】焼却炉排ガスが塩化水素を含み、排ガス中に含まれている飛灰が反応触媒を含む場合の焼却炉排ガスを本発明により無害化処理する場合のフローシートの一例を示す。
【図4】ダイオキシン類の分解実験に用いた実験装置を示す。
【符号の説明】
1 気液接触装置
2 固液分離装置
3 金属分離装置
4 銅(反応触媒)分離装置
10 固液接触装置
32 水供給配管
40 溶融炉
41 破砕ゴミホッパー
42 破砕ゴミ供給機
45 二次燃焼炉
46 ボイラー
70 ボイラー
71 冷却装置
72 気液接触装置
74 集塵機
75 反応容器
76 固液分離装置
77 排水処理装置

Claims (22)

  1. ダイオキシン類の湿式無害化処理方法であって、100℃より低い温度において、該ダイオキシン類に反応触媒を溶解状態で含む塩酸酸性水溶液を接触させて、少なくとも60%の分解率で該ダイオキシン類を分解無害化させることを特徴とするダイオキシン類の湿式無害化処理方法。
  2. 該水溶液が、接触促進剤を含む請求項1の方法。
  3. 該水溶液に超音波を照射する請求項1又は2の方法。
  4. 該反応触媒が、低次価数と高次価数をとり得る金属イオンからなる請求項1〜3のいずれかの方法。
  5. 該反応触媒が、銅イオン又は鉄イオンからなる請求項1〜3のいずれかの方法。
  6. 該銅イオンの濃度が、該水溶液中20mg/リットル以上である請求項5の方法。
  7. 該反応触媒が、未溶解分を含み、該未溶解分が溶解状態へ移行する過程にある請求項1〜6のいずれかの方法。
  8. 該水溶液中の塩素イオン濃度が、10ミリモル/リットル以上である請求項1〜7のいずれかの方法。
  9. 該ダイオキシン類が、固体に付着しているダイオキシン類である請求項1〜8のいずれかの方法。
  10. 該ダイオキシン類が、廃棄物の焼却によって生成した飛灰又は炉灰に付着しているダイオキシン類である請求項1〜8のいずれかの方法。
  11. 該水溶液中に酸素又は酸素含有ガスを接触させる請求項1〜10のいずれかの方法。
  12. 焼却炉から発生したダイオキシン類含有飛灰を含む焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法であって、該焼却炉排ガスに100℃より低い温度において反応触媒を溶解状態で含む塩酸酸性水溶液を接触させて、該排ガス中の飛灰を水溶液中に移行させると共に少なくとも60%の分解率で該飛灰に付着しているダイオキシン類を分解無害化させることを特徴とする焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法。
  13. 該水溶液が、接触促進剤を含む請求項12の方法。
  14. 該水溶液に超音波を照射する請求項12又は13の方法。
  15. 該反応触媒が、低次価数と高次価数をとり得る金属イオンからなる請求項12〜14のいずれかの方法。
  16. 該反応触媒が、銅イオン又は鉄イオンからなる請求項12〜14のいずれかの方法。
  17. 該銅イオンの濃度が、該水溶液中20mg/リットル以上である請求項16の方法。
  18. 該反応触媒が、未溶解分を含み、該未溶解分が溶解状態へ移行する過程にある請求項12〜17のいずれかの方法。
  19. 該水溶液中の塩素イオン濃度が、10ミリモル/リットル以上である請求項12〜18のいずれかの方法。
  20. 該ダイオキシン類が、排ガス中の飛灰に含まれているダイオキシン類である請求項12〜19のいずれかの方法。
  21. 該水溶液中に酸素又は酸素含有ガスを接触させる請求項12〜20のいずれかの方法。
  22. 焼却炉から発生したダイオキシン類含有飛灰を含む100℃より高い温度の焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法であって、該焼却炉排ガスを冷却用液と気液接触させて該排ガス温度を100℃より低い温度に低下させる冷却工程、該冷却工程で得られた排ガスを塩酸酸性水溶液と気液接触させる気液接触工程及び該冷却工程で得られた排ガスと接触した後の飛灰を含む冷却用液と該接触工程で得られた排ガスと接触した後の飛灰を含む塩酸酸性水溶液を、別々に又は合一の状態で、塩素イオン濃度が10ミリモル/リットル以上、銅イオン濃度が20mg/リットル以上及び処理温度が100℃より低い処理条件下に保持して飛灰中のダイオキシン類を少なくとも60%の分解率で分解無害化させるダイオキシン類分解工程を包含することを特徴とする焼却炉排ガスの湿式無害化処理方法。
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