JP3832148B2 - シリンジ用アダプタ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体圧送用のシリンジが着脱可能に装着されて、このシリンジを片手で、円滑かつ容易に吸引操作を行える構造に変換するためのシリンジ用アダプタ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
シリンジは、一般に、先端がチューブやパイプ等の流体通路が接続される筒先を有する外筒と、この外筒内に挿入した内筒とを有し、この内筒の先端にピストン部を設けて、内筒を外筒に対して押し引き操作することによりピストン部を外筒の内面に沿って摺動させる構成としたものである。この外筒の内部には、ピストン部により流体室が区画形成され、内筒を押し引きすると、この流体室が拡縮することになる結果、筒先から流体を圧送させたり、また筒先から吸引したりすることができる。このシリンジは、薬液を注入したり、洗浄液を圧送したりするために、医療分野等で広く用いられている。
【0003】
シリンジは術者等が片手で操作できるようになっているのが望ましい。このために、外筒の基端部にフランジ状に張り出した指掛け部を形成し、また内筒の基端部に指当て部を形成し、これらでシリンジの操作を行うための操作力作用部が形成される。そして、指当て部に親指を当接させ、また人差し指と中指とで外筒を挟むようなし、かつこれらの2本の指を指掛け部に当接させた状態で、指当て部を指掛け部に近接させる方向に操作すると、内筒が外筒内に押し込まれる。この結果、ピストン部により区画形成した流体室の容積が縮小して、この流体室内の流体が筒先に接続した流体通路に圧送されることになる。このように構成したシリンジは流体圧送用のシリンジであり、注射液その他の薬液を体内に注入したり、色素等を散布したり、さらには体腔内壁を洗浄する等、幅広い用途に用いられる。
【0004】
ここで、シリンジは、前述した薬液等を圧送するためにのみ用いられるのではなく、体液を吸引除去したり、体内細胞を採取する際に、この細胞に吸引力を作用するため等としても用いられる。吸引用シリンジは、流体圧送用シリンジと、その本体部分の構成は実質的に同じであるが、シリンジ操作手段の構成が異なってくる。前述したように、流体圧送用のシリンジは内筒を外筒に押し込むのに適したものであるが、吸引用シリンジの場合には、内筒を外筒内に押し込むのではなく、内筒を引き抜く方向に変位させることになる。従って、流体圧送用のシリンジを吸引用としてそのまま転用する場合には、片手で外筒を把持し、もう一方の手で内筒を把持して、内筒を引っ張るように操作しなければならなくなる。つまり、この種のシリンジを吸引用として使用する場合には、操作は両手で行わなければならず、その操作は面倒なものとなる。
【0005】
例えば、内視鏡の処置具挿通チャンネルを介してカテーテルを体腔内に挿入し、このカテーテルを膵胆管内にまで導いて、膵液を吸引除去する場合には、術者は片手で内視鏡の本体操作部を把持していることから、シリンジが片手で操作できないと、術者本人が吸引操作を行えないことになり、看護婦等の操作の補助者が必要となる。また、超音波内視鏡において、その処置具挿通チャンネルから体内に穿刺処置具を刺し込んで、出血箇所からの吸引を行ったり、また組織細胞等を吸引して取り出す際等の操作においても、やはり術者がシリンジを操作できない。特に、穿刺処置具を用いて吸引を行う操作は、どの位置でどの程度吸引を行うか等の判断と、操作のタイミングとが極めて重要であり、従って術者自身がシリンジによる吸引操作を行うのが望ましい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
吸引用のシリンジは、外筒側の操作力作用部と内筒側の操作力作用部との位置を逆転させなければならない。つまり、内筒側の操作力作用部の位置より外筒側の操作力作用部を基端側に位置させる必要がある。このためには、外筒の基端部を内筒の基端部を越えた位置まで延在させ、かつ内筒に設けた操作力作用部を外筒から張り出すようにしなければならない。例えば、外筒に所定の長さだけ左右一対のスリットを形成すると共に、この基端部には着脱可能な蓋体を設け、また内筒には、これらスリットから外部に導出させた一対からなる指掛け部を連設して設け、これが内筒側の操作力作用部として機能する。内筒を外筒に組み込むに当っては、蓋体を開放して、内筒に設けた指掛け部をスリットに通すようにして装着した後に蓋体を閉鎖する。このように蓋体を閉鎖状態にすると、それが指当て部として、つまり外筒側の操作力作用部として機能する。そして、指当て部としての機能を有する蓋体に親指を当接させ、指掛け部に人差し指と中指とを掛けて、指掛け部を蓋体側に向けて押動させるように操作すると、内筒は外筒から引き抜かれる方向に変位し、この内筒の先端に設けたピストン部により区画形成される流体室が拡大するので、このシリンジに接続した流体通路内に負圧吸引力を作用させることができる。
【0007】
ところで、体液等の吸引操作を行う頻度は、薬液等の圧送の操作の場合と比較して、極めて少ないものであり、しかも吸引専用のシリンジは、流体圧送用のシリンジと比較して、その構造が複雑になる。このように、使用頻度の少ない特殊な器具は大量生産されないことから、そのコストの低減が図られず、また構造の複雑性も原因として、非常に高価なものとなる。そして、体内からの吸引を行うので、二次感染の防止等の観点で、吸引用のシリンジは、このように高価なものであるにも拘らず、それを再使用することができず、必ず使用の都度廃棄しなければならない。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、流体圧送用のシリンジを片手で吸引操作できるように変換できるようにするためのシリンジ用アダプタ装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前述した目的を達成するために、本発明は、先端に筒先が形成され、基端部に指掛け部を有する外筒と、先端に前記外筒の基端側開口から挿入されるピストン部が設けられ、このピストン部に連結した軸部の基端部に指当て部が形成された内筒とからなり、前記指掛け部と前記指当て部とを相互に近接する方向に操作することにより流体を圧送するシリンジに着脱可能に取り付けられ、このシリンジを吸引用として機能させるためのシリンジ用アダプタ装置であって、前記外筒の指掛け部が着脱可能に装着される外筒保持部と、前記内筒の前記指当て部またはこの指当て部に装着した指掛け部材を第2の指掛け部として、この第2の指掛け部に対応するように設けた第2の指当て部と、前記外筒保持部と前記第2の指当て部との間を連結し、吸引ストローク端位置を規制する連結部と、この連結部に設けられ、前記第2の指掛け部と前記第2の指当て部とを近接させて前記内筒を前記吸引ストローク端位置まで変位させたときに、前記第2の指掛け部が着脱可能に係合するストッパとを備える構成としたことをその特徴とするものである。
【0010】
ここで、流体圧送用のシリンジには、内筒と外筒との基端部に操作力作用部を構成する指掛け部と指当て部とが設けられている。ここで、操作力作用部は、シリンジを使用する際において手指を当接させて、内筒を外筒内に押し込む操作を行うために設けた部位である。流体圧送用のシリンジにおいては、内筒側に親指を当接させる指当て部が、また外筒側に人差し指と中指とで挟み込む指掛け部がそれぞれ設けられる。このシリンジを吸引用に転用するに当っては、外筒側の基端部にアダプタ装置を着脱可能に連結する。このために、アダプタ装置には、外筒の指掛け部が着脱可能に装着される外筒保持部が形成される。外筒保持部から外筒の基端側における延長線方向に連結部を延在させ、その端部に第2の指当て部を設ける。一方、この第2の指当て部に対して、内筒側に設けた指当て部をそのまま第2の指掛け部として機能させるか、または第2の指掛け部となる指掛け部材を着脱可能に装着する。外筒保持部と第2の指当て部との間は連結部により連結されるが、この連結部の長さは吸引ストロークを規制するものとなる。吸引を行うと、シリンジの内部が負圧になるから、その操作力を解除すると、ピストンが外筒内に引き込まれる方向に変位する可能性がある。シリンジに対する操作力を解除しても、内筒がみだりに移動しないように保持するために、連結部にはストッパを設ける。内筒側の指当て部を第2の指掛け部として利用する場合には、ストッパにはこの第2の指掛け部が直接係脱するものとする。また、内筒がこのストッパを容易に乗り越えることができるようにするために、ストッパにこの内筒が通過可能な通路を形成する。また、内筒側の操作力作用部にも第2の指掛け部材を着脱可能に設ける場合には、ストッパはこの第2の指掛け部材が係脱可能な構成とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。而して、図面において、図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示し、また図5及び図6はそれぞれ異なる変形例を示している。さらに、図7及び図8は本発明の第2の実施の形態を示し、図9はその変形例が示されている。
【0012】
まず、シリンジとアダプタ装置とを分解して示した図1と、それらを組み付けた状態の平面図と側面図である図2及び図3において、1はシリンジであって、このシリンジ1は外筒2と内筒3とから構成される。外筒2は、その先端側の端壁に筒先4が連設されており、この筒先4は先細のテーパ状に形成したものであり、例えばルアーロック機構5を有するチューブやパイプ等からなる吸引通路6に着脱可能に連結されている。外筒2の基端部には操作力作用部としてのフランジ部7が形成されており、このフランジ部7は流体圧送用として使用する場合には指掛け部として機能するものである。
【0013】
外筒2の基端部は開口しており、その内に内筒3が挿入されている。この内筒3は軸部8の先端にピストン部9を連結して設けたものである。軸部8は円形ロッド状等の形状となっており、図示したものにあっては、その一例として十文字状の部材からなり、その途中位置には数箇所のリブ10を連設したものが示されている。そして、軸部8の基端部には円板部11が連設されており、この円板部11も操作力作用部であって、流体圧送用として使用する場合の指当て部として機能するものである。
【0014】
従って、このシリンジ1は、内筒3を外筒2に組み込んで、外筒2の内部において、内筒3のピストン部9により区画形成される流体室に薬液等を収容させておき、人差し指と中指とを外筒2の両側に位置させて、それぞれフランジ部7に当接させると共に、円板部11に親指を当接させることにより、このシリンジ1を安定した状態で持つことができる。そして、フランジ部7を円板部11側に引き寄せる方向に押動操作すると、流体室内の薬液が筒先4から吸引通路6に向けて圧送されるから、流体圧送用のシリンジとして機能する。なお、シリンジ1を操作するに当って、それが流体圧送用として用いる場合であれ、また後述するように、吸引用として用いる場合であれ、指掛け部には人差し指と中指とを、また指当て部には親指を当接させるとして説明するが、これはシリンジ1の一般的な操作態様であり、要は一方の操作力作用部には親指を、他方の操作力作用部には親指以外の1または複数の指を当接させて、手を閉じる方向に動かすことによりシリンジ1が操作されることを意味する。
【0015】
以上のように構成したシリンジ1を吸引用として用いるためには、操作力作用部の位置を逆転させる。つまり、フランジ部7側には指当て部として機能する部位を設け、また円板部11側は指掛け部として機能する部位を設ける。これによって、内筒3側に設けた指掛け部に外筒2の指当て部を近接する方向に押動させた時には、流体圧送時とは逆に内筒3が外筒2から引き出される方向に移動する。このために用いられるのがアダプタ20であり、このアダプタ20は2つの部材から構成される。即ち、21はアダプタ本体、22は指掛け部材である。アダプタ本体21は概略樋状の部材からなり、その先端側には外筒保持部23が形成され、また基端側には円板状に形成した第2の指当て部24が形成され、さらにこれら外筒保持部23と第2の指当て部24との間には所定の長さを有するガイド部25が設けられる。従って、第2の指当て部24は外筒側第2の操作力作用部となり、またガイド部25は外筒保持部23と第2の指当て部24との間に設けた連結部である。
【0016】
外筒保持部23は外筒2の基端部が収容されると共に、この外筒2に連設したフランジ部7が嵌合するスリット溝26が形成されている。また、外筒保持部23の内径は180°より僅かに大きい円弧からなり、外筒2が外筒保持部23に嵌合される際には、この外筒保持部23が僅かに拡開し、この外筒2が完全に納まると、その外周面を180°以上の角度分だけ抱持される。従って、外筒2が外筒保持部23に対して、スナップアクション作用により嵌合され、外筒2は外筒保持部23内から逸脱しないように係止される。また、フランジ部7がスリット溝26に係合しているから、軸線方向にも動かないように固定される。
【0017】
一方、指掛け部材22はアーチ状に形成した連結用本体部27と、この連結用本体部27の左右に突出する一対の第2の指掛け部28から構成され、連結用本体部27の内周面には内筒3の基端部に連設した円板部11が嵌合するスリット溝29が形成されている。ここで、連結用本体部27は、必ずしも必須ではないが、内筒3に組み付けた状態で安定的に保持するために、180°より僅かに大きい角度の円弧形状となっている。また、第2の指掛け部28は細い丸棒状の部材から構成される。従って、シリンジ1において、内筒2に対する操作力作用部として機能する第2の指掛け部28は、外筒2に操作力が作用する第2の指当て部24より手前側に位置するようになる。
【0018】
アダプタ本体21におけるガイド部25は、外筒保持部23より薄肉で、内径が大きくなった円弧形状となっており、外筒2に内筒3を組み込んだ状態では、内筒3の円板部11に装着した指掛け部材22における連結用本体部27の外周面が収容されるようになっている。ここで、ガイド部25の両端面は第2の指掛け部28をガイドするガイド面25aとなっており、その円弧は、内筒3に装着した指掛け部材22を収容させた時に、第2の指掛け部28がこれらガイド面25aに圧接されて、内筒3の軸部8が僅かに撓むことになる角度分を有するようになっている。従って、第2の指掛け部28は、ガイド部25におけるガイド面25aの表面に所定の押圧力をもって摺接するようになる。また、アダプタ本体21に指掛け部材22が組み込まれた状態では、第2の指掛け部28は所定長さだけアダプタ本体21の外面から左右両側に突出している。そして、このガイド面25aには、内筒3が吸引ストローク端に変位した位置に、この内筒3の円板部11に装着した指掛け部材28が落とし込まれる係止凹部30が形成されている。
【0019】
以上のように構成することによって、内筒3を外筒2に組み込んで、ピストン部9を筒先4を設けた端面に近接した位置に配置するように内筒3を最も押し込んだ位置に配置する。これによって、ピストン部9により区画形成される流体室は形成されないか、または僅かな空間となる。このシリンジ1にまず内筒4の円板部11に指掛け部材22を連結する。この指掛け部材22の連結は、連結用本体部27に形成したスリット溝29に円板部11を挿嵌させることにより行うが、この連結用本体部27は180°より僅かに大きな角度の円弧となっているので、嵌合時のスナップアクション作用によって、指掛け部材22は内筒3に組み込んだ状態に保持される。
【0020】
次に、外筒2をアダプタ本体21における外筒保持部23に嵌合させる。この嵌合時にも、外筒保持部23はスナップアクション作用により外筒2の基端側の部位を保持し、かつフランジ部7がスリット溝26に嵌合される。内筒3に装着した指掛け部材22は、その第2の指掛け部28がガイド部25のガイド面25aに当接する。そして、外筒2が完全に外筒保持部23内に嵌合された時には、第2の指掛け部28がガイド面25aに圧接され、かつ軸部8は、その基端側が僅かに上方に撓んだ状態になる。
【0021】
以上の状態で、筒先4に吸引通路6のルアーロック機構5と連結して、この吸引通路6を内視鏡の処置具挿通チャンネル等を介して体腔内に挿入し、体液を吸引したり、体内組織を採取するために、シリンジ1を操作する。このシリンジ1による吸引操作は、人差し指と中指との間にアダプタ本体21を配置して、このアダプタ本体21の左右に突出する第2の指掛け部28にこれらの2本の指を当接させる。また、親指をアダプタ本体21の基端面を構成する第2の指当て部24に当接させる。従って、これら3本の指でアダプタ20に装着したシリンジ1を安定的に保持できる。
【0022】
そこで、人差し指と中指とを親指が当接している第2の指当て部24側に引き寄せるように(または親指を第2の指賭け部28側に押し込むように)操作すると、第2の指掛け部28がガイド部25のガイド面25aに沿って摺動して、内筒3が外筒2から引き抜かれる方向に変位する結果、ピストン部9により区画形成される外筒2内の流体室の容積が拡大することになり、この流体室が負圧状態になるから、吸引通路6内に負圧吸引力が作用して、体液や体内組織等がこの吸引通路6内に引き込まれる。
【0023】
第2の指掛け部28がガイド面25aに形成した係止凹部30の位置まで変位すると、つまり吸引ストローク端位置まで移動すると、図4に示したように、撓んだ状態となっている内筒3の軸部8が、その弾性復元力の作用で、第2の指掛け部28が係止凹部30内に落とし込まれる。この結果、内筒3がその位置で固定され、流体室内における負圧の作用により内筒3が引き戻される、所謂スプリングバックが生じることがなく、たとえ第2の指掛け部28と第2の指当て部24との間に作用する操作力を解除しても、その位置で安定的に保持される。従って、係止凹部30が内筒3を吸引ストローク端位置に保持するストッパとしての機能を発揮する。
【0024】
以上のように、アダプタ20は、流体圧送用のシリンジにおける指当て部と指掛け部との位置を逆転させるものであり、その結果、流体圧送時と同じ方向に操作することによって、つまり内筒3と外筒2とに設けた操作力作用部に親指と人差し指及び中指を当接させて、流体圧送時と同じ操作を行うことにより、シリンジ1に負圧吸引力を発揮させることができる。そして、この吸引操作を行った後に、シリンジ1をアダプタ20から分離して、シリンジ1のみを使い捨てとし、アダプタ20は再使用できる。
【0025】
ここで、内筒3を吸引ストローク端位置に変位させた時に、シリンジ1における外筒2の内部に作用する負圧により内筒3が外筒2内に引き込まれるスプリングバックを防止するために、アダプタ本体21のガイド部25には係止凹部30を形成するように構成したが、これ以外にも、例えば図5に示したように、第2の指当て部24に係止腕片40を連設して設ける構成とすることもできる。この係止腕片40は、第2の指当て部24からガイド部25のガイド面25a上に突出するものであり、その先端部の内面に突起40aが形成されている。そして、この突起40aの突出端とガイド面25aとの間の間隔は、第2の指掛け部28の直径寸法より狭く、また突起40aより基端側の部位はこの第2の指掛け部28の直径とほぼ同じ寸法か、またはそれより僅かに広くなっている。
【0026】
従って、内筒3が吸引ストローク端位置に変位すると、第2の指掛け部28は係止腕片40の突起40aの位置を通過することになり、この時には係止腕片40は弾性変形して、この第2の指掛け部28を通過させ、その後には係止腕片40が復元するから、第2の指掛け部28はこの突起40aに規制されることになり、内筒3のスプリングバックが防止される。そして、このように構成すると、第2の指掛け部28はガイド面25aに対して摺接させる必要がなくなるので、その移動が円滑になる。
【0027】
また、図6に示したように、指掛け部材22において、内筒3の円板部11が嵌合するスリット溝29に、両端が第2の指掛け部28との連結部近傍に止着した円弧状の板ばね41を装着して、この板ばね41はスリット溝29の溝底内面に沿うように配置され、その下端部に凸形状部41aを形成している。そして、この場合のスリット溝29の溝底の円弧形状としては、円板部11の外径より大きく、またスリット溝29における両溝端部間の間隔はこの円板部11の外径より小さくする。これによって、内筒3の円板部11に指掛け部材22を連結した時には、この円板部11は指掛け部材22から離脱することがなくなる。また、第2の指掛け部28がガイド部25のガイド面25aに当接した時には、板ばね41の凸形状部41aが撓むことによって、円板部11をスリット溝29から離脱させる方向に付勢力を作用する。
【0028】
この結果、図6の構成では板ばね41の凸形状部41aが撓むことによる反発力が作用して、係止凹部30の位置、つまり吸引ストローク端位置に至ると、円板部11は変位せず、指掛け部材22が板ばね41の付勢力により下方に変位して、第2の指掛け部28が係止凹部30内に落とし込まれる。而して、このように指掛け部材22が下降しても、なお円板部11はスリット溝29内に位置するように、このスリット溝29の深さを設定する。このように構成すれば、内筒3の軸部8には曲げ力が作用しない状態になるので、内筒3の移動を円滑に行わせることができる。
【0029】
次に、図7及び図8に本発明の第2の実施の形態を示し、また図9にはその変形例を示している。この第2の実施の形態においても、シリンジとしては前述した第1の実施の形態と同じ構成のもの、つまり流体圧送用のシリンジ1が使用される。
【0030】
これらの図において、50はアダプタを示し、このアダプタ50は、一端側に外筒保持部51が形成されており、また他端側が外筒側第2の操作力作用部として機能する第2の指当て部52となっている。そして、外筒保持部51にはスリット溝53が形成されており、シリンジ1における外筒2のフランジ部7は、このスリット溝53に係合されるようになっている。以上の点は、第1の実施の形態とは格別の差異はない。しかしながら、外筒保持部51と第2の指当て部52との間を連結する連結部54としては、比較的幅の狭い概略棒状となっている。この連結部54の幅寸法は、好ましくは、内筒3における円板部11の直径よりできるだけ小さくする。これによって、シリンジ1における外筒2のフランジ部7を外筒保持部51に係合させるようにして組み込んだ状態では、内筒3の円板部11は連結部54の側面から部分的に張り出すようになる。
【0031】
ここで、内筒3を外筒2に対して引き抜く方向に変位させる際に、この内筒3に設けた円板部11は連結部54の表面とは非接触状態に保たれるようになっている。そして、連結部54の表面における所定の位置にはストッパ55が形成されている。このストッパ55は、比較的緩い角度で立ち上がる傾斜スロープ55aと、この傾斜スロープ55aの端部に形成され連結部54の表面に対して概略直角(または所定の角度に傾斜するように)に立ち下がるストッパ壁55bとを有する形状のものである。従って、内筒3が外筒2に対して吸引ストローク端近傍にまで変位した時には、円板部11はこのストッパ55の傾斜スロープ55aに乗り上げるようになり、この結果内筒3の軸部8が反り上がる方向に曲げられることになる。そして、円板部11が傾斜スロープ55aを通過すると、軸部8の弾性復元力により真直ぐな状態になる結果、円板部11はストッパ壁55bに当接して、内筒3がスプリングバックの作用により外筒2内に引き込まれるのが防止される。従って、このストッパ55のストッパ壁55bを設けた部位が内筒3の吸引ストローク端位置となる。
【0032】
以上のように構成することによっても、アダプタ50によって、内筒3側の操作力作用部を構成する円板部11の位置より外筒2における操作力作用部の方が基端側に位置するようになり、つまり内筒3側の操作力作用部と外筒2側の操作力作用部との位置が逆転することになるので、流体圧送用として用いられるシリンジ1を吸引用シリンジとして機能させることができる。従って、アダプタ50に設けた第2の指当て部52に親指を当接させ、また内筒3の円板部11に人差し指と中指とで挾持するが、この時にはアダプタ5の連結部54も同時に人差し指と中指との間に挟み込ませ、この状態で人差し指と中指とを連結部54の側面に沿って滑らせるように操作することにより、シリンジ1による吸引が行われる。このように、指を連結部54の側面に沿って動かすように操作すると、吸引操作時に内筒3の軸部8に曲げ力等が作用することがなく、外筒2から真直ぐ引き出される。しかも、吸引ストローク端近傍に至ると、円板部11がストッパ55の傾斜スロープ55aに乗り上げ、次いでストローク端位置に至ると、ストッパ壁55bに係合することになるので、操作力を解除しても内筒3を外筒2から引き出した状態で安定的に保持される。
【0033】
ところで、ストッパによる内筒3の固定をより確実に行おうとすると、連結部表面からのストッパの高さをできるだけ高くしなければならない。ただし、内筒3の軸部8がストッパに乗り上げた状態になると、それ以上円板部11とストッパ壁との間の当接面積を大きくはならない。そこで、図9に示したアダプタ150のように、傾斜スロープ150aとストッパ壁155bとからなるストッパ150において、その中央部分に内筒3が通る凹状の通路155cを形成する。この結果、内筒3の円板部11がストッパ壁155bに当接した時に、軸部8が曲がるようなことはない。従って、操作時に円板部11に指が十分掛かるようにするために連結部154の幅を細くしても、内筒3の吸引ストローク端位置で極めて安定した状態に保持できる。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、シリンジにおける内筒と外筒とに設けた操作力作用部の位置を逆転させる構成としたので、吸引用シリンジより構成が簡単で安価な流体圧送用のシリンジを、片手操作で、円滑かつ容易に吸引操作できる吸引用のシリンジに転換できる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態を示すアダプタ装置をシリンジと共に示す分解斜視図である。
【図2】図1のアダプタ装置にシリンジを組み込んだ状態の平面図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】内筒を外筒に対して吸引ストローク端位置に変位した状態を示す図3と同様の断面図である。
【図5】吸引ストローク端位置での第2の指掛け部の係止機構の他の例を示す要部構成図である。
【図6】指掛け部材の他の例を示すものであって、この指掛け部材に内筒の円板部を係合させた状態のスリット溝に沿う断面図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態を示すアダプタ装置にシリンジを組み込んだ状態の外観図である。
【図8】図7のアダプタ装置の縦断面図である。
【図9】本発明の第2の実施例におけるアダプタ装置に設けたストッパの変形例を示す構成説明図である。
【符号の説明】
1 シリンジ 2 外筒
3 内筒 4 筒先
7 フランジ部 8 軸部
9 ピストン部 11 円板部
20,50,150 アダプタ 21 アダプタ本体
22 指掛け部材 23,51 外筒保持部
24,52 第2の指当て部 25 ガイド部
25a ガイド面 26,53 スリット溝
27 連結用本体部 28,52 第2の指掛け部
29 スリット溝 30 係止凹部
40 係止腕片 40a 突起
41 板ばね 41a 凸形状部
54,154 連結部 55,155 ストッパ
55a,155a 傾斜スロープ
55b,155b ストッパ壁
155c 通路

Claims (3)

  1. 先端に筒先が形成され、基端部に指掛け部を有する外筒と、先端に前記外筒の基端側開口から挿入されるピストン部が設けられ、このピストン部に連結した軸部の基端部に指当て部が形成された内筒とからなり、前記指掛け部と前記指当て部とを相互に近接する方向に操作することにより流体を圧送するシリンジに着脱可能に取り付けられ、このシリンジを吸引用として機能させるためのシリンジ用アダプタ装置であって、
    前記外筒の指掛け部が着脱可能に装着される外筒保持部と、
    前記内筒の前記指当て部またはこの指当て部に装着した指掛け部材を第2の指掛け部として、この第2の指掛け部に対応するように設けた第2の指当て部と、
    前記外筒保持部と前記第2の指当て部との間を連結し、吸引ストローク端位置を規制する連結部と、
    この連結部に設けられ、前記第2の指掛け部と前記第2の指当て部とを近接させて前記内筒を前記吸引ストローク端位置まで変位させたときに、前記第2の指掛け部が着脱可能に係合するストッパとを備える
    構成としたことを特徴とするシリンジ用アダプタ装置。
  2. 前記内筒の前記指当て部に前記第2の指掛け部を着脱可能に連結し、この第2の指掛け部は、前記連結部の側部に張り出すように設けられ、前記連結部にはこの第2の指掛け部が少なくとも吸引ストローク分だけ摺動可能な摺動面を設け、前記ストッパは、吸引ストローク端位置で前記第2の指掛け部が係合可能なものであることを特徴とする請求項1記載のシリンジ用アダプタ装置。
  3. 前記内筒の前記指当て部を前記連結部の側面から張り出すように設けることによって、前記第2の指当て部に対する第2の指掛け部とし、前記ストッパは吸引ストローク端位置でこの第2の指掛け部に係脱可能なものであることを特徴とする請求項記載のシリンジ用アダプタ装置。
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