JP3831157B2

JP3831157B2 - 便臭改善剤

Info

Publication number: JP3831157B2
Application number: JP26239199A
Authority: JP
Inventors: 晴彦堤; 卓間藤; 秀一橋爪; 信郎嶋崎; 優徳亀井; 良一伊藤
Original assignee: Morinaga and Co Ltd
Current assignee: Morinaga and Co Ltd
Priority date: 1998-11-12
Filing date: 1999-09-16
Publication date: 2006-10-11
Anticipated expiration: 2019-09-16
Also published as: JP2000204044A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カカオマス中に含まれるココア分を有効成分とする便臭改善剤、それを含む経腸栄養食品、便臭改善効果を有する飲食品及び飼料に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、重傷患者等には、点滴等による静脈からの栄養補給、すなわち経静脈栄養補給が一般に採用されているが、近年、重傷患者においても消化管を通しての栄養補給、すなわち経腸栄養補給を行う必要性が指摘されている。これは、経腸栄養補給が、小腸や大腸の消化管粘膜の萎縮を防止し、更に免疫力を高めることで、消化管から血管内への細菌やエンドトキシンの流入を抑制し、その結果、エンドトキシンが引き起こす呼吸不全や多臓器不全への進展を防止するのに役立つからである。
【０００３】
しかしながら、重傷患者等は、内臓機能も衰えているため、スムーズな排便がなされず、経腸栄養補給を困難にする理由の一つとなっている。このため、救急医療の分野では、患者が便通をスムーズに行えるか否かが早期回復に向けての重要な課題となっている。
【０００４】
また、近年の老化社会において、本人のみならず、老人医療や在宅看護等に携わる人達の労力を軽減し、環境を改善することも大きな課題となっている。特に排便の問題は大きく、スムーズなかつ定期的な排便を促すことによって、本人も快適になると共に、看護する者も作業をしやすくなる。更に、便臭が軽減されれば、本人や周囲の者の環境も改善されることになる。
【０００５】
一方、繊維を多く含んだ食品を摂取することによって便通が改善されることは、よく知られている。例えば、特開平１０−１４３７号には、カカオ豆及びその外皮であるカカオハスクに含まれる水不溶性繊維を有効成分とする乳酸菌増殖促進物質が開示されており、カカオハスク繊維を摂取することによって、排便回数が増加し、便通が改善するという効果も記載されている。
【０００６】
ところで、便臭の問題に限ってみれば、上述したようなケースだけでなく、近年のペットブームにより、室内で飼育される犬や猫等の糞尿の臭いも大きな問題となっており、その防臭・消臭のために様々な商品が開発されている。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平１０−１４３７号に記載された発明は、カカオ豆及びその外皮であるカカオハスクに含まれる水不溶性繊維に着眼してなされたものであって、カカオ豆中に含まれる他の成分についての着眼はなされていない。また、便通改善効果について記載されているものの、便臭を改善する効果については開示も示唆もなされていない。
【０００８】
更に、各種の食物繊維が便通改善効果を有することは知られているが、便臭を改善する効果については知られていない。
【０００９】
そして、これらの食物繊維を、救急医療、老人医療、在宅看護等の分野において積極的に利用しようとする試みは、これまであまりなされていなかった。
【００１０】
また、上述したようなペットなどの動物の糞尿の防臭・消臭剤は、通常の芳香剤と同様のものであり、糞尿自体の臭いを抑えるものではないため、その効果には限界があった。
【００１１】
すなわち、本発明の目的は、便臭を改善する効果を有し、安全で、手軽で、且つ栄養的に優れた便臭改善剤、それを含む経腸栄養食品、便臭改善効果を有する飲食品、更には、ペットなどの動物の糞尿の臭いを改善する効果を有する飼料を提供することにある。
【００１２】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明は、ココアパウダー及び／又はカカオマスを有効成分とする便臭改善剤を提供するものである。
【００１４】
また、本発明の便臭改善剤によれば、ココアパウダー及び／又はカカオマスと、他の栄養源とを含有し、かつ便臭改善のために用いられる経腸栄養食品を提供することができる。
【００１６】
また、前記他の栄養源として、蛋白質、脂質、糖質、ビタミン、及びミネラルを含有することが好ましい。
【００１７】
更に、本発明の便臭改善剤によれば、ココアパウダー及び／又はカカオマスを含有し、かつ便臭改善のために用いられる飲食品を提供することができる。
【００１８】
更にまた、本発明の便臭改善剤によれば、ココアパウダー及び／又はカカオマスを含有し、かつ便臭改善のために用いられる飼料を提供することができる。
【００１９】
本発明の便臭改善剤、それを含有する経腸栄養食品、及び便臭改善効果を有する飲食品によれば、ココアパウダー及び／又はカカオマスにより、便通や便の性状を改善するのみならず、便臭をも顕著に改善するという効果がもたらされる。
【００２０】
更に、ココアパウダー及び／又はカカオマスは、食物繊維以外の豊富な栄養成分や生理活性物質を含んでいるので、栄養補給効果や健康維持効果ももたらされる。
【００２１】
また、前記飼料によれば、ココアパウダー及び／又はカカオマスを含有することにより、動物の便臭の改善効果がもたらされる。
【００２２】
【発明の実施の形態】
本発明において、ココアパウダー及び／又はカカオマスは、主として、蛋白質、澱粉、食物繊維（水溶性難消化性多糖類、ヘミセルロース、セルロース、リグニン等）、リン脂質、無機質（リン、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、カリウム、ナトリウム等）、ビタミンＡ、ビタミンＢ群、ビタミンＣ、ビタミンＥ（各種トコフェロール等）、ナイアシン、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、乳酸、酢酸、タンニン（エピカテキン、カテキン、ケルセチン等のポリフェノール類）、無水カフェイン、テオブロミンなどを含有している。
【００２３】
本発明によって、得られる便臭改善効果は、上記ココアパウダー及び／又はカカオマスに含まれる食物繊維だけでなく、各種ビタミン類や、鉄や亜鉛などの微量元素による内臓機能活性化作用や、ポリフェノール類による酸化抑制作用、抗菌作用なども寄与していると考えられる。
【００２４】
本発明においては、例えばカカオマスからココアバターを搾油して得られるココアパウダーや、あるいはカカオマス自体が好ましく用いられる。また、カカオマスやココアパウダーを原料として製造される各種の飲食品、例えばココアドリンク、調整ココア、チョコレートなどとして、本発明の便臭改善剤を摂取することもできる。
【００２５】
一方、本発明において、経腸栄養食品とは、普通の食事が摂取できない病態にある人、例えば、頭部、顔面、口腔部損傷、意識障害、食欲不振等があって、かつ、消化器官はある程度正常な人などに、栄養補給をする際に使用する食品を意味する。
【００２６】
前記経腸栄養食品は、上記ココアパウダー及び／又はカカオマスと、他の栄養源とを含有させたものからなる。
【００２７】
また、他の栄養源としては、特に限定されないが、乳蛋白、大豆蛋白等の蛋白質、植物性油脂等の脂質、砂糖、デキストリン等の糖質、ビタミン類、ミネラル類などが好ましく用いられる。
【００２８】
経腸栄養食品は、上記ココアパウダー及び／又はカカオマスと他の栄養源とを、栄養所要量／日を目安にして配合し、そのまま混合粉末として、あるいは適当量の水等に溶解させることによって調製することができる。
【００２９】
経腸栄養食品を摂取させる方法としては、例えば飲食が可能な人であれば経口的に摂取させ、飲食が不可能な人の場合には、チューブを使用して鼻などから、あるいは胃や腸に孔を開けて投与する方法（経管投与）が採用される。
【００３０】
本発明の便臭改善効果を得るためには、上記ココアパウダー及び／又はカカオマスを、カカオマス換算で一日当り０．８〜４０ｇ摂取することが好ましい。
【００３１】
このため、飲食品又は経腸栄養食品として、本発明の便臭改善剤を摂取する場合には、上記飲食品又は経腸栄養食品中に、ココア分（カカオマスからココアバターを除いた成分）が、固形分換算で０．１〜８重量％含有されていることが好ましい。
【００３２】
また、便臭改善効果を有する前記飼料は、通常の飼料に上記ココア分（カカオマスからココアバターを除いた成分）を１〜１５重量％添加することにより得ることができる。
【００３３】
上記通常の飼料としては、特に制限はなく、犬、猫、ラット、マウス、ハムスター、ニワトリ、ブタ、牛などの飼料として市販されている各飼料や、通常飼料原料として用いられているものを適宜配合して調製したものを用いることができる。具体的には、例えば大豆粕、ホワイトフィッシュミール等の蛋白源、大豆油等の脂肪源、アルファルファミール等の繊維源、小麦、トウモロコシ、フスマ、胚芽、酵母、脱脂米糠、マイロ等の炭水化物源、ビタミンＡ、Ｄ₃、Ｅ、Ｂ₁、Ｂ₂、Ｂ₃、Ｂ₁₂、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、塩化コリン等のビタミン類、ＣａＣＯ₃、ＮａＣｌ、ＦｅＳＯ₄、ＭｎＣＯ₃、ＣｏＳＯ₄・７Ｈ₂Ｏ等のミネラル類を含有するものが好ましく用いられる。
【００３４】
また、上記ココア分の添加方法は、特に制限はなく、市販の飼料にふりかけたり、他の飼料原料と一緒に混合して粉末飼料としたり、ペレット状に加工したりしてもよい。
【００３５】
なお、人間以外の動物における本発明の便臭改善効果を得るための有効投与量は、例えばラットによる実験によれば、上記ココア分を、カカオマス換算で一日当り０．２〜４ｇ／体重２５０ｇ摂取させることにより効果が得られることがわかった。
【００３６】
【実施例】
実施例１（便臭改善剤の調製）
ココアパウダー、砂糖、全粉乳、脱脂粉乳等の原料を粉体混合して調製された市販の調製ココア（ミルクココア）を便臭改善剤として使用した。この調製ココアの２４ｇ中の成分は表１に示す通りであり、その熱量は９５ｋｃａｌであった。
【００３７】
【表１】

【００３８】
試験例１（排便間隔）
救急医療センターに入院した患者のうち、薬物中毒患者などの早期の経腸栄養補給が適さない疾患を除き、多発外傷、脊髄損傷、熱傷、内科系疾患などで３日以上入院し、経腸栄養補給を行った患者の中から無作為に抽出し、市販の経腸栄養食品に加えて、１回につき実施例１で得た調製ココア８ｇを２０ｍｌのお湯で懸濁し、１日３回経管投与した。
【００３９】
上記条件で、調製ココアを投与した患者１５名、調製ココア非投与の患者２５名について、入院後最初の排便から２回目の排便までの間隔を調べた。この結果を図１に示す。図１中の「ココア（＋）」は調製ココア投与患者の結果、「ココア（−）」は調製ココア非投与患者の結果である。図１の縦軸は患者数、横軸は１回目から２回目の排便間隔（日数）である。
【００４０】
図１の結果から、調製ココアを投与した患者における１回目から２回目の平均の排便間隔は１．４日であり、約８７％の患者が１回目の排便の翌日に次の排便があったことがわかる。
【００４１】
これに対し、調製ココア非投与患者における１回目から２回目の平均の排便間隔は２．１日であり、１回目の排便の翌日に排便があった患者は６０％にすぎなかった。これらの結果から、ココアの投与によって便通が改善され、かつ、定期的な便通がなされることがわかる。
【００４２】
試験例２（便の性状）
試験例１において、各患者の便の性状を調査した。評価は、各患者の便について、普通便、軟便、泥状便、水様便に分け、それぞれの人数を求めることによって行った。この結果を図２に示す。図２中の「ココア（＋）」は調製ココア投与患者の結果、「ココア（−）」は調製ココア非投与患者の結果である。図２の縦軸は患者数、横軸は便の種類を表す。
【００４３】
図２の結果から、ベストの性状であるとされる軟便が、調製ココア投与患者においては６０％であるのに対し、調製ココア非投与患者においては２８％にすぎなかった。この結果から、ココアの投与によって便の性状が改善されることが明らかになった。
【００４４】
試験例３（便臭の改善）
試験例１において、各患者の便の便臭を調査した。評価は、各患者の便臭について、強い、普通及び弱いの３段階に分類して行った。
【００４５】
その結果、調製ココア投与患者の場合には、殆どの患者が弱いに分類され、臭いでは排便に気がつかないケースも発見されたのに対し、調製ココア非投与患者においては、殆どの患者が強いあるいは普通であった。この結果から、ココアの投与によって便臭が軽減されることがわかる。
【００４６】
実施例２（飼料の調製）
飼料ＣＥ−２（商品名、日本クレア製）に、ピュアココア（商品名：ＭＯＲＩＮＡＧＡＰＵＲＥＣＯＣＯＡ、森永製菓（株）製）を１２．５％添加した固形飼料を調製（日本クレアに依頼）した。
【００４７】
なお、飼料ＣＥ−２は、蛋白源として大豆粕、ホワイトフィッシュミール、脂肪源として大豆油、繊維源としてアルファルファミール、炭水化物源として小麦、トウモロコシ、フスマ、胚芽、酵母、脱脂米糠、マイロ、ビタミン類としてビタミンＡ、Ｄ₃、Ｅ、Ｂ₁、Ｂ₂、Ｂ₃、Ｂ₁₂、パントテン酸カルシウム、ナイアシン、葉酸、塩化コリン、ミネラル類としてＣａＣＯ₃、ＮａＣｌ、ＦｅＳＯ₄、ＭｎＣＯ₃、ＣｏＳＯ₄・７Ｈ₂Ｏを含有するものである。
【００４８】
試験例４（動物の便臭の改善）
１週間予備飼育を行った６週齢の雄のＷｉｓｔｅｒ系ラットを代謝ケージに入れ、翌日糞尿を回収してその臭いを測定し、便中のガスの値によって９匹ずつ２群に分けた。そして、最初の４週間は、Ａ群にココア添加固形飼料、Ｂ群にコントロール飼料（ＣＥ−２）を自由摂取させ、その後４週間は、Ａ群にＣＥ−２、Ｂ群にココア添加固形飼料を自由摂取させた。また、飼料の摂取開始から８週間まで２週間ごとに便臭を測定した。ラットの飼育は通常ＰＣケージで行い、便臭測定時のみ前日から代謝ケージで飼育した。
【００４９】
便臭の測定は、糞及び尿をビニール袋に回収し、約１時間後、北川式ガス検知管を使用し、便臭（アンモニア、メチルアミン）の測定を行なった。その結果を図３に示す。図中、□はＡ群の糞尿中のアンモニア平均濃度、●はＡ群の糞尿中のメチルアミン平均濃度、◇はＢ群の糞尿中のアンモニア平均濃度、▲はＢ群の糞尿中のメチルアミン平均濃度を示す。図３の縦軸は濃度、横軸は飼育日数である。
【００５０】
図３の結果から、飼料にココアを添加することにより、糞便中のアンモニア、メチルアミン量が減少し、便臭が低減することが分かった。
【００５１】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ココアパウダー及び／又はカカオマスにより、便通や便の性状を改善するのみならず、便臭をも顕著に改善するという効果がもたらされる。このため、本発明の便臭改善剤、あるいはそれを含有する経腸栄養食品、飲食品を摂取させることにより、スムーズなかつ定期的な排便を促すことができ、それによって、患者、老人等の本人が快適になると共に、看護する者も作業をしやすくなる。また、便の性状や便臭も改善されるので、本人や周囲の者の環境も改善されることになる。更に、ココアパウダー及び／又はカカオマスは、食物繊維以外の豊富な栄養成分や生理活性物質を含んでいるので、栄養補給効果や健康維持効果ももたらされる。
【００５２】
更には、人間以外の動物においても同様に、飼料にココアパウダー及び／又はカカオマスを添加することにより、その糞尿の臭いを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】調製ココア投与患者及び調製ココア非投与患者について、入院後最初の排便から２回目の排便までの間隔を調べた結果を示す図表である。
【図２】調製ココア投与患者及び調製ココア非投与患者について、便の性状を調べた結果を示す図表である。
【図３】ココア添加固形飼料及びココア無添加固形飼料を与えたラットについて、糞尿の臭いを調べた結果を示す図表である。

Claims

ココアパウダー及び／又はカカオマスを有効成分とする便臭改善剤。