JP3828467B2 - 塩基配列解析チップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動処理により塩基配列の検出及び解析を行う塩基配列解析チップ及び塩基配列解析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電流検出型DNAチップにおいては,挿入剤と呼ばれる、DNAの2本鎖に選択的に吸着し電気分解における酸化電流を発生する化学物質が用いられる。すなわち、プローブとターゲットのハイブリダイゼーションが終了した後、電極を挿入剤に浸漬し、この電極を通して挿入剤の酸化電流を検出することにより、ターゲット吸着の有無を判定する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の電流検出型DNAチップでは、2つの問題があった。第一は、ターゲットとプローブの結合に由来する信号以外の電流がプローブを固定した電極(以下検出極と称する)で検出されてしまうことであり、第二は挿入剤吸着量の時間依存性ならびに挿入剤自体の劣化が測定に与える影響である。
【0004】
本来、挿入剤はDNAの2本鎖に選択的に吸着する。しかし、実際には検出極近傍では2本鎖以外の部分にも挿入剤が吸着されてしまうため、この吸着部位から信号が発生し、測定信号に重畳する。これが第一の問題である。この第1の問題に関しては,検体中のDNAの存在の有無に無関係な信号を検知する専用の電極(以下対照極と称する)を設け、この電極とプローブから得られる信号の差から本来検出すべき信号を得なければならない。
【0005】
ここで挿入剤の吸着量は,飽和するまでに一定の時間を要する。また、挿入剤の特性は時間経過と共に劣化する。この現象は、測定の方法によって2つの電極から得られる信号の差に影響を与える可能性が有る。すなわち、対となる電極間の条件が異なる。特に、挿入剤で電極の浸漬を開始した時刻から目的の電極の測定を開始する時刻までの間に挿入剤吸着量が累積する、あるいは挿入剤の劣化が起こるなどし,本来同一の条件で測定を行うべき電極の対で条件の不一致が生ずることとなる。これが第二の問題である。
【0006】
図18はセル13内の酸化電流と挿入剤浸漬時間の関係を示す図である。この図から分かるように、浸漬時間により酸化電流は大きくばらつくといえる。
【0007】
この第二の問題は,検出極と対照極との比較に限らず、プローブ同士を比較する際にも問題となる.たとえば、ヒト遺伝子の一塩基多型のひとつとして知られるMxA88についてG−Gホモ型、T−Tホモ型、G−Tへテロ型のいずれであるかを判定しようとする場合、プローブにG型とT型を用い,両者から得られる信号の差異を検定しなければならない。このため、G型検出用プローブ、T型検出用プローブ、GT型検出用プローブの各々が同一の条件で測定されることが測定精度を高めるのに必須である。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、自動処理により高精度で塩基配列の検出及び解析を行う塩基配列解析チップ及び塩基配列解析装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の一の観点によれば、基板と、前記基板上に形成され、検出の対象とする標的塩基配列とは相補的な塩基配列を有するプローブが固定化される複数の検出極と、前記基板上に形成され、前記標的塩基配列と相補的な塩基配列を有するプローブが固定化されていない対照極と、前記基板に形成され、前記複数の検出極の電気化学信号を測定する第1測定部と、前記基板に形成され、前記対照極の電気化学信号を測定する第2測定部と、前記基板に形成され、第1測定部の第1測定値から第2測定部の第2測定値を減算する減算部と、前記基板外部からの信号に基づき、第1測定部及び第2測定部の測定を同時に制御し、かつ減算部の減算を制御する制御部とを具備し、
前記複数の検出極は、少なくとも2つの検出極からなる検出極群の集合からなり、前記対照極は、少なくとも2つの対照極からなる対照極群の集合からなり、第1測定部は前記複数の検出極群の各々に対して1つずつ複数設けられ、第2測定部は前記複数の対照極群の各々に対して1つずつ複数設けられ、前記制御部は、前記複数の第1測定部の測定を同時に制御し、且つ前記複数の第2測定部の測定を同時に制御する塩基配列解析チップが提供される。
この発明の別の一の観点によれば、基板と、前記基板上に形成され、検出の対象とする標的塩基配列とは相補的な塩基配列を有するプローブが固定化される複数の検出極と、前記基板上に形成され、前記標的塩基配列と相補的な塩基配列を有するプローブが固定化されていない対照極と、前記基板に形成され、前記複数の検出極の電気化学信号を測定する第1測定部と、前記基板に形成され、前記対照極の電気化学信号を測定する第2測定部と、前記基板に形成され、第1測定部の第1測定値から第2測定部の第2測定値を減算する減算部と、前記基板外部からの信号に基づき、第1測定部及び第2測定部の測定を同時に制御し、かつ減算部の減算を制御する制御部とを具備し、前記対照極は複数設けられ、第1測定部は複数の検出極の各々に対して1つずつ複数設けられ、第2測定部は複数の対照極の各々に対して1つずつ複数設けられてなり、前記制御部は、複数の第1測定部及び複数の第2測定部の各々の測定を同時に制御する塩基配列解析チップが提供される。
【0012】
また、装置に係る本発明は、その装置により実現される方法の発明としても成立する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る塩基配列解析装置の一例を示す図である。図1に示すように、コンピュータ1と、このコンピュータ1に電気的に接続された塩基配列解析チップ2から構成される。
【0015】
塩基配列解析チップ2は、コンピュータ1からの命令に基づき、チップ上に形成された電極からの電気化学信号を検出し、その検出信号の電流電圧変換、AD変換、平均値算出等の信号処理、減算、塩基配列判定等を行い、得られた判定結果等のデータをコンピュータ1に出力する。
【0016】
この塩基配列解析チップ2は、半導体やガラス等からなる基板11上に形成されたTi及びAu等の積層構造からなる電極12と、この基板11に形成された電流電圧変換回路、AD変換回路、信号処理回路、減算回路やこれら回路の動作制御を行う制御回路などの周辺回路が半導体微細加工技術を用いて形成されている。また、各電極12上には、試料や薬液などを収容し、これら試料や薬液と電極12上のプローブとの電気化学反応を生じさせるセル13が設けられている。
【0017】
周辺回路の形成は、基板11に予めこれら回路を形成するために必要なゲート数に対応する論理ゲートに、論理設計に基づく回路配線を半導体微細加工技術を用いて形成することにより実現可能である。もちろんゲートアレイに限らず、他のカスタムIC開発工程により形成されてもよい。図1の例では、塩基配列解析チップ2の全面に電極12及びセル13が配置される場合を示したが、その一部の領域に配置し、他の領域には周辺回路が形成されるようにしてもよい。
【0018】
以下の実施形態では、検出の目的とするDNAの塩基配列を標的塩基配列と呼ぶ。そして、この標的塩基配列と相補的であり、この標的塩基配列と選択的に反応する塩基配列を標的相補塩配列と呼ぶ。この標的相補塩基配列を含むDNAプローブが塩基配列解析チップ2の検出極に固定化される。塩基配列解析チップ2のセル13内に導入される試料(検体溶液)には、検査の対象となるDNA等の塩基配列を有する物質が含まれている。この検査の対象となるDNAの塩基配列を検体塩基配列と呼ぶ。
【0019】
標的塩基配列とプローブの塩基配列が相補的であるとは、標的核酸配列中の連続する部分塩基配列がプローブの塩基配列に対し50%〜100%の相補性を持つことを指す。より好ましくは、100%の相補性を持つことを指す。なお、相補性を示す指標は、比較する全塩基配列に対し比較対象の二者間で一致する塩基数の割合を示す。
【0020】
この実施形態の塩基配列解析チップ2は、この検体塩基配列と固定化プローブの標的相補塩基配列をセル13内でハイブリダイゼーションさせ、その反応の有無を挿入剤導入後にモニタリングすることにより、試料中に標的塩基配列が含まれているか否かを判別するチップである。
【0021】
図2は塩基配列解析チップ2表面に設けられた電極構造の一例を示す図である。図2に示すように、検出極201、参照極202、対極203が1つずつ設けられた検出極系211〜21nがn個、対照極204、参照極205、対極206が1つずつ設けられた対照極系22が1個配置されている。複数の検出極系211〜21nに対して1つの対照極系22が対応して設けられている。これら検出極系211〜21nや対照極系22などの電極系、すなわち検出極201、参照極202及び対極203の3電極の組合せや、対照極204と、参照極205及び対極206の3電極の組合せに対してポテンシオ・スタットなどの3電極測定回路が接続され、各電極系21,22において電気化学測定信号が得られる。
【0022】
検出極201及び対照極204は、セル23内の反応電流を検出するための電極である。検出極201には、標的塩基配列とは相補的な標的相補塩基配列を有するDNAプローブが固定化される。
【0023】
対照極204は、検出しようとする標的のDNAとプローブDNAのハイブリダイズに由来する電流以外の電流であるバックグラウンド電流を検出し、後にバックグラウンド電流を検出極201で検出される電流から差し引くことによりバックグラウンド電流の重畳の影響を無くするための電極である。対照極204は、標的塩基配列と相補的でなく、標的塩基配列とハイブリダイゼーション反応を生じさせないような塩基配列を有するプローブが固定化されるか、あるいはプローブが固定化されずに利用される。
【0024】
対極203及び206は、検出極201あるいは対照極204との間に所定の電圧を印加してセル23内に電流を供給する電極である。
【0025】
参照極202及び205は、参照極202と検出極201の間の電圧を所定の電圧特性に制御すべく、その電極電圧を対極203あるいは206に負帰還させる電極である。この参照極202及び205により、対極203あるいは206による電圧が制御され、セル23内の各種検出条件に左右されない精度の高い酸化電流検出が行える。
【0026】
図2に示した電極配置は本発明の特徴を説明するための一例にすぎず、その電極配置、電極の対応関係などを種々変更することができる。例えば、参照極202及び205は、各検出極系211〜21n及び対照極系22に共通の1つの参照極とし、この1つの参照極と複数の検出極201及び対照極204を対応させて用いてもよい。また、検出極系211及び212については、ある1つの参照極を対応させ、検出極系213及び214については別の1つの参照極を対応させ、…というように、複数の検出極系に1つの参照極を対応させて配置してもよい。また、対極203及び206についても参照極と同じような変更が可能であり、複数の検出極201や対照極204について1つの対極203や206を共有して用いたりすることができる。また、1つの電極系21あるいは22に複数の検出極201あるいは複数の対照極204を配置してもよい。このように、複数の検出極201や対照極204に対して1つの参照極や1つの対極を対応させてもよい。
【0027】
図2の実現形態では,1種類のプローブに対して1つの検出極が設けられ、ネガティブコントロール1つに対して1つの対照極が設けられた場合を示した。この実施形態は、1つの電極による各測定の信頼性が充分である場合には有効である。実際の測定では、溶液の均一性など,何らかの要因で測定結果に揺らぎが生ずる場合がある。この揺らぎを補償するため、プローブ及びネガティブコントロール共に,同種の電極を複数個用い、これら複数の電極の平均を取ることが有効である。
【0028】
図3は塩基配列解析チップ2の回路構成の一例のブロック図である。
【0029】
プローブモジュール311〜31nは、検出極系211〜21nに対応する構成である。ネガティブコントロールモジュール32は1つ設けられている場合を示しているが、対照極系22が複数設けられる場合には、その各々に対して1つずつ対応して設けられる。
【0030】
プローブモジュール311〜31nはそれぞれ検出極系211〜21nを有し、セル13内において検出極201から得られる電気化学信号の検出を行うセンサとしての機能と、そのセンスした電気化学信号の信号処理やデータ解析等の機能が一体化された回路である。
【0031】
ネガティブコントロールモジュール32は、対照極系22を有し、セル13内において対照極204から得られる電気化学信号の検出を行うセンサとしての機能と、そのセンスした電気化学信号の信号処理やデータ解析等の機能が一体化された回路である。
【0032】
この塩基配列解析チップ2は、検出極201や対照極204で得られる電流を検出する電流検出型チップである。電流検出型チップの場合、検出極201と対照極204で得られるデータを比較しつつデータ解析を行うが、この図1の例では、これら2つの異なる機能を持つ電極を別々のモジュールとして実装する形態で実現されている。
【0033】
これらプローブモジュール311〜31n及びネガティブコントロールモジュール32は、それぞれ共通のグローバル命令バス33、グローバルアドレスバス34及びグローバルデータバス35に接続されている。
【0034】
コンピュータ1とのデータの入出力制御を行うインタフェース回路41がコンピュータ1と例えば外部端子により信号線を介して接続されている。このインタフェース回路41がコンピュータ1から受信した信号はデコーダ42に出力される。デコーダ42は、受信信号に基づきグローバル制御回路43を参照して生成される制御手順に基づきプローブモジュール311〜31n及びネガティブコントロールモジュール32を制御する。より具体的には、デコーダ42は、生成された制御手順に基づきグローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34にグローバル命令信号及びグローバルアドレス信号を出力する。グローバルアドレス信号によりアドレス指定されたプローブモジュール311〜31n又はネガティブコントロールモジュール32は、グローバル命令信号により指定された命令を実行し、得られたデータをグローバルデータバス35に出力する。インタフェース回路41は、グローバルデータバス35のデータをコンピュータ1に出力する。
【0035】
また、ネガティブコントロールモジュール32における処理結果は、各プローブモジュール311〜31nでの減算や比較に用いられる。従って、グローバルデータバス35を介してネガティブコントロールモジュール32からプローブモジュール311〜31nの各々にデータが出力される。
【0036】
処理を実行するモジュールの指定と実行する処理の種類は、デコーダ42から各モジュール311〜31n及び32に対してグローバルアドレスバス34及びグローバル命令バス33により与えられる。
【0037】
一例として、各プローブモジュール311〜31nで得られるデータをネガティブコントロールモジュール32から得られるデータで減算する場合を想定する。この場合、各プローブモジュール311〜31nで同時に酸化電流測定を行った後、ネガティブコントロールモジュール32から得られるデータをグローバルデータバス35を介して各プローブモジュール311〜31nに送出する。各プローブモジュール311〜31nでは、グローバルデータバス35からネガティブコントロールのデータを取得し、減算する。従って、減算も各プローブモジュール311〜31nで同時に行われる。なお、グローバルバス33〜35はすべてのモジュール311〜31n及び32に共通の信号線となっているため、実際にはネガティブコントロールモジュール32から各プローブモジュール311〜31nに順次データが転送され、同時に減算が開始する。
【0038】
塩基配列解析チップ2に外部から入力される命令信号の種類は、例えば(1)停止(2)無操作(3)測定開始(4)データ読み出し(5)ネガティブコントロールモジュール内減算(6)平均(7)モジュール内減算(8)モジュール間減算(9)リセットの9種類がある。この(1)〜(9)の命令信号は、命令コードとアドレスコードの組合せからなり、これらにより各構成要素に命令を与えることができる。
【0039】
また、この9種類の信号に加えて、制御信号として(10)ハードウェアリセット信号(11)操作開始信号(12)操作停止信号等を備える。これら(1)〜(12)示した信号はコンピュータ1からインタフェース回路41に入力され、バスを介さずに制御対象に直接入力され、制御対象のハードウェアを直接制御する。
【0040】
塩基配列解析チップ2から外部に出力される信号としては、(1)データ(2)測定異常フラグ(3)操作終了フラグ等を備える。測定異常フラグや操作終了フラグなどのフラグは、演算記憶装置450の内部状態を外部に示すためのビットである。
【0041】
デコーダ42は、(1)〜(9)に示される命令に対応するグローバル命令信号、グローバルアドレス信号をグローバル制御回路43から取得し、グローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34に出力する。
【0042】
チップ外部、すなわちコンピュータ1から塩基配列解析チップ2を利用する場合、逐次コンピュータ1と通信しながら上述した(1)〜(9)に示される命令を1命令ずつ実行する逐次実行方式と、プログラムメモリ領域、プログラムカウンタ、計算手順を制御する論理回路を塩基配列解析チップ2内のいずれかの箇所に1つ配置し、チップ2内に処理手順を書き込み自動処理するプログラム実行方式が考えられる。
【0043】
このプログラム実行方式の場合、(1)〜(9)に加えて、プログラムメモリへの書き込み命令を追加すればよい。プログラムメモリ領域、プログラムカウンタ及び論理回路は、例えばグローバル制御回路43に実装するのが望ましい。なお、プログラムメモリ領域に書き込まれる処理手順は、塩基配列解析チップ2の機能や検出極201に固定化されるプローブの種類や数、電極数などの設計条件により異なる。従って、コンピュータ1は、チップ機能情報に基づきプログラムメモリ領域に書き込まれる処理手順を生成するユーティリティプログラムを備えるのが望ましい。これにより、いかなる機能及び構成を有する塩基配列解析チップ2においても自動処理が実現可能である。
【0044】
この図3に示す塩基配列解析チップ2を用いた電気化学信号検出及び検出データの解析処理のフローチャートの一例を図4に示す。
【0045】
まず、検出極201に標的塩基配列とは相補的な標的相補塩基配列を有するDNAプローブを固定化した後、セル13に試料を充填して所定の温度に保持する。これにより、DNAプローブが試料内の検体DNAとハイブリダイゼーション反応を生じる(s1)。
【0046】
次に、緩衝液でDNAプローブ及びセル13内を洗浄した後、セル13内に挿入剤充填する。この挿入剤が導入された状態で測定を行う(s2)。
【0047】
この測定工程では、まずコンピュータ1からの測定開始信号をインタフェース回路41がデコーダ42に出力する。デコーダ42は、測定開始信号を受け、その命令に対応するグローバル命令及びグローバルアドレスを取得し、グローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34に送出する。
【0048】
この測定は各モジュール311〜31n及び32で同時に行うため、これらすべてのモジュールのアドレスが指定される。プローブモジュール311〜31n及びネガティブコントロールモジュール32は、このグローバルアドレスが指定されたグローバル命令を受け、測定を開始する。得られた測定データは各311〜31n及び32にそれぞれ格納される。
【0049】
より具体的に同時測定の原理を説明する。
【0050】
測定を各モジュール31 1 〜31 n 及び32で同時に行うため、デコーダ42及びグローバル制御回路43からなる制御部がこの同時性を制御する。グローバル制御回路43は、測定を開始すべきモジュールのアドレスを生成する。生成されたアドレスは、専用の通信線により各モジュールに伝達される。この信号は、各モジュール内部で後述するローカル制御デコーダ51等によりデコードされる。このデコードの結果、モジュールに同時に伝達された測定命令を実行するか否かが決定される。アドレス専用の通信線は、図3のようなバス方式で実現できる。この場合、測定を開始するアドレスはこの制御部によりグローバルアドレスバス34に書き込まれ、各モジュール311〜31n及び32で読み込まれる。
【0051】
また、アドレスを示すコードを一斉にブロードキャスト可能なグローバル通信線を用いてもよい。
【0052】
なお、同時測定を行うためにグローバルアドレスバス34に書き込まれるアドレスを示すコードは、例えば3種類設定できる。具体的には、個別のモジュールを1つずつ指定するコード、複数のモジュールのうちの2以上の一部のモジュールを指定するコード、全モジュールを指定するコードである。一部のモジュールを指定するコードとしては、例えば同一あるいは同一種類の塩基配列を有するプローブ同士を指定するコードが考えられる。
【0053】
これら3種類のコードが一斉に各モジュール311〜31n及び32でデコードされ、指定されたモジュールは同時に測定を開始することができる。このアドレスを示すコードをデコードする操作を以下、アドレスデコードと呼ぶ。
【0054】
個別のモジュールを指定するアドレスコードしか仕様に含めない場合、グローバル制御回路43によるアドレスの生成は、同時に測定すべきモジュールのアドレスを逐次発生するようになる。これに応じて、指定されたモジュールが逐次測定を開始することにより、ある有限の時間のずれの範囲内でほぼ同時の測定が実現される。
【0055】
逐次実行方式の場合、測定開始信号がコンピュータ1から入力されてから測定データが格納されるまで、コンピュータ1は逐次測定の詳細工程を実行するのに必要な各種命令をデコーダ42に出力する。デコーダ42はこれら各種命令をグローバル制御回路43を参照してデコードしグローバル命令バス33にグローバル命令信号を、グローバルアドレスバス34にグローバルアドレス信号を送出する。以下、コンピュータ1による塩基配列解析チップ2の制御が終了するまで同様の動作が繰り返される。
【0056】
次に、コンピュータ1は、平均信号をデコーダ42に出力する。デコーダ42は、この平均信号に基づき平均値算出を行うためのグローバル命令信号及びグローバルアドレス信号をプローブモジュール311〜31nに対してグローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34を介して送出する。これにより、プローブモジュール311〜31nは平均値算出処理を実行する(s3)。
【0057】
平均値算出は、各プローブモジュール311〜31nで得られた測定データの平均値を算出する処理である。この平均値算出処理は、第1の算出手法として例えば1つの特定のプローブモジュール31に他のプローブモジュール31から測定データをグローバルデータバス35を介して転送し、その特定の1つのプローブモジュール31が取得したすべてのプローブモジュール31についての平均値を算出し、得られた平均値データをグローバルデータバス35を介してまた他のすべてのプローブモジュール31に出力することにより実行可能である。他にも、第2の算出手法として、所定の数のプローブモジュール31の組合せについて平均値を算出し、さらにその平均値同士に基づきさらに代表するプローブモジュール31で平均値を算出するという工程を繰り返すことにより平均値を算出することもできる。
【0058】
また、すべてのプローブモジュール311〜31nの平均値を算出する必要はなく、検出極201に固定化されるDNAプローブの種類などに応じて特定の種類のプローブモジュール31同士の平均値を算出するようにしてもよい。例えばプローブモジュール311〜314が第1の塩基配列を有するプローブが固定化され、プローブモジュール315〜318には第2の塩基配列を有するプローブが固定化されている場合、プローブモジュール311〜314についての平均値を算出し、これとは別にプローブモジュール315〜318についての平均値を算出するように設定することができる。これにより、プローブの種類毎の平均値を算出することができる。
【0059】
なお、図3に示す例では、ネガティブコントロールモジュール32は1つのみ設けられている場合を示しているのでネガティブコントロール側での平均値算出を行う必要が無い。ネガティブコントロールモジュール32が複数設けられている場合には、各ネガティブコントロールモジュール32に対してプローブモジュール311〜31nに対してしたのと同じ平均値算出を行う制御信号を出力する。
【0060】
また、図3の例では、各プローブモジュール311〜31nにはそれぞれ1つずつ検出極201が配置されている場合を示したため、プローブ間の平均値算出を行う例を示したが、各モジュールに複数の検出極201が配置されている場合、その複数の検出極201から得られる測定データの平均値をとることもできる。この場合、他のモジュールにデータを転送する必要が無い。
【0061】
次に、コンピュータ1は、モジュール間減算信号をデコーダ42に出力する。デコーダ42は、このモジュール間減算信号に基づきデコーダ42はモジュール間減算を行うためのグローバル命令信号及びグローバルアドレス信号をプローブモジュール311〜31n及びネガティブコントロールモジュール32に対してグローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34介して送出する。これにより、プローブモジュー311〜31n及びネガティブコントロールモジュール32はモジュール間減算処理を実行する(s4)。
【0062】
このモジュール間減算処理は、各プローブモジュール311〜31nで得られた平均値データから、ネガティブコントロールモジュール32で得られた測定データを減算する処理である。ネガティブコントロールモジュール32が複数設けられている場合には、各ネガティブコントロールモジュール32の各々の平均値データでプローブの平均値データを減算する。
【0063】
具体的には、デコーダ42は、ネガティブコントロールモジュール32に対してグローバルデータバス35への測定データ(あるいは平均値データ)送出を命令する第1の処理と、各プローブモジュール311〜31nに対してこの送出された測定データの取得を命令する第2の処理と、モジュール内の平均値に対する取得した測定データの減算処理を命令する第3の処理からなる。
【0064】
プローブモジュール311〜31nがプローブの種別毎に平均値が算出されている場合、そのプローブの種別毎に平均値からネガティブコントロールモジュール32からの測定データを減算する。この場合、すべてのプローブモジュール311〜31nについて減算を行う必要は無く、プローブの種別毎に1つずつ代表するプローブモジュール311〜31nのいずれかが減算を行えば足りる。もちろん、すべてのプローブモジュール311〜31nが減算を行ってもよい。得られた減算値データは各プローブモジュール311〜31nに格納される。
【0065】
次に、コンピュータ1は、判定を行うための信号をデコーダ42に出力する。この判定を行うための信号は、前述の(1)〜(9)をシーケンシャルに組み合わせることにより生成される。この判定を行うための信号に基づき、デコーダ42は判定を行うためのグローバル命令信号及びグローバルアドレス信号をプローブモジュール311〜31nに対してグローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34介して送出する。また、判定処理の内容によっては、ネガティブコントロールモジュール32に対しても同様のグローバル命令信号及びグローバルアドレス信号を出力する。これにより、プローブモジュール311〜31nやネガティブコントロールモジュール32は判定演算処理を実行する(s5)。
【0066】
判定演算処理の一例としては、一塩基多型のSNP位置の塩基配列決定のための判定演算処理がある。この判定演算処理の場合、検出しようとする少なくとも2種類の型の候補を標的塩基配列として設定する。そして、その2つの標的塩基配列にそれぞれ相補的な第1のDNAプローブと、この第1のDNAプローブとSNP位置の塩基が異なる第2のDNAプローブを、検出極201に固定化しておく。そして、各DNAプローブの種類毎に得られた減算値データをプローブモジュール311〜31n内で比較し、値が大きい方のDNAプローブの塩基配列と相補的な塩基配列の型であると判定する。判定結果を示すデータはプローブモジュール311〜31n内に格納される。もちろん、比較する各DNAプローブの種類に対して1つずつ判定結果が得られればよいため、その判定を行う以外のモジュールでは判定処理を行う必要が無い。
【0067】
なお、第1のDNAプローブが固定化された検出極201と、第2のDNAプローブが固定化された検出極201から得られた信号強度を比較する際に、本実施形態では、第1のDNAプローブと第2のDNAプローブの他にいずれの標的塩基配列も検出しない(すなわちハイブリダイゼーションを生じない)ネガティブコントロールが固定化された対照極204が配置される。対照極204では、遺伝子の検出とは無関係な信号成分が検出される。これら3つの電極を用いて型判定を行う場合、最終的には第1のDNAプローブと第2のDNAプローブから得られた信号強度を比較し、その信号強度の差や信号強度の比を基に判定結果を得ることになる。その信号強度の比較に先立ち、対照極204から得られた信号を第1のDNAプローブ及び第2のDNAプローブの各々について検出極201から得られた信号から減算しておく。この減算により、DNAの検出に関わる正味の信号の比較が可能となる。
【0068】
第1及び第2のDNAプローブ及びネガティブコントロールに対応する3つの電極で行われる測定が同時に行われることにより、測定時刻によって観測される電流値が変動する影響を排除した比較が可能となる。
【0069】
ここで、電解質の均一性の不一致による影響を避けるべく、検出極201と対照極204は同一基板上に設けられていることが望ましい。さらに望ましくは、これら検出極201と対照極204は空間的に近接している。
【0070】
次に、コンピュータ1は、データ読み出し信号をインタフェース回路41を介してデコーダ42に出力する。デコーダ42は、このデータ読み出し信号に基づきデータ読み出しを行うためのグローバル命令信号及びグローバルアドレス信号をプローブモジュール311〜31nに対してグローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34介して送出する。これにより、プローブモジュール311〜31nは判定結果を示すデータをグローバルデータバス35に送出する(s6)。判定結果以外にも、減算値、平均値など他の解析データもあわせて送出してもよい。グローバルデータバス35に送出されたデータはインタフェース回路41を介してコンピュータ1に出力される。コンピュータ1は、取得したデータを例えば表示装置に出力する。
【0071】
以上により塩基配列解析動作が終了する。
【0072】
図5は各プローブモジュール311〜31nの詳細な構成の一例を示すブロック図である。各モジュール311〜31nは同じ構成であり、そのうちの1つのモジュールについて代表して図5で説明される。また、プローブモジュール31とネガティブコントロールモジュール32は、検出極201と対照極204の構成の相違以外は共通する構成である。
【0073】
プローブモジュール31は、デジタル関数発生器410と、D/A変換器420と、ポテンシオ・スタット430と、A/D変換器440と、演算記憶装置450から構成される。
【0074】
デジタル関数発生器410は、ポテンシオ・スタット430の対極203に印加すべき電圧パターンをデジタル値により発生させる。このデジタル関数発生器410は、通常のカウンタと同様の回路で実現される。タイミング制御信号に同期して、電圧値を刻々と変動させる。D/A変換器420は、デジタル関数発生器410で発生したデジタル関数をアナログ信号に変換してポテンシオ・スタット430に出力する。これにより、デジタル関数発生器410で発生した時々刻々と変化する電圧パターンがポテンシオ・スタット430にアナログ出力される。これらデジタル関数発生器410及びD/A変換器420により、ポテンシオ・スタット430内でのサイクリックボルタンメトリが実現する。
【0075】
ポテンシオ・スタット430は、D/A変換器420からのアナログ電圧パターン波形に基づき対極203に電圧を印加し、これにより対極203及び検出極201間で発生した酸化電流を検出してA/D変換器440に出力する。より具体的には、ポテンシオ・スタット430の対極203には補償器431が接続されており、この補償器431は、D/A変換器420からのアナログ電圧パターン信号に対して参照極202で得られた検出電圧信号を負帰還させた信号を増幅し対極203に出力する。参照極202で得られた検出電圧は電圧フォロア増幅器432の非反転入力端子に接続され、反転入力端子がデジタル関数発生器410の出力に負帰還される。これにより、デジタル関数発生器410で発生した電圧パターンに、参照極202の検出電圧をフィードバックさせ、対極203の電圧を制御することができる。
【0076】
セル13の検出極201は、トランス・インピーダンス増幅器433の反転入力端子に接続されている。トランス・インピーダンス増幅器433の非反転入力端子は接地され、その出力端子はA/D変換器440に接続されている。この検出極201から得られた信号はトランス・インピーダンス増幅器433により電流/電圧変換され、A/D変換器440に出力される。A/D変換器440は、ポテンシオ・スタット430の検出極201から得られた電気化学信号をA/D変換して演算記憶装置450に出力する。このA/D変換器440の変換動作はタイミング制御信号に同期して逐次実行されるため、演算記憶装置450には逐次検出データが出力される。
【0077】
演算記憶装置450は、制御信号やグローバル命令バス33から与えられた命令信号に基づき、デジタル関数発生器410、D/A変換器420及びA/D変換器440にタイミング制御信号を出力してこれら回路の測定タイミングを制御する。また、グローバル命令バス33及びグローバルアドレスバス34により演算記憶装置450に指示されることによりこのプローブモジュール31内での測定が行われ、測定の結果得られたデータはグローバルデータバス35を介して外部の他のモジュールやインタフェース回路41などに出力される。
【0078】
また、演算記憶装置450はポテンシオ・スタット430による測定以外に、ピーク検出操作、平均操作、減算操作、判定演算などの各種演算処理を実行する。この演算処理に必要なデータは、他のプローブモジュール31やネガティブコントロールモジュール32からグローバルデータバス35を介して取得する。また、演算記憶装置450には、リセットや割込などの強制的な制御信号やタイミングを指示する信号が制御信号としてインタフェース回路41から入力される。また、演算記憶装置450は、演算記憶装置450内の内部状態を外部に示すフラグ信号をインタフェース回路41に出力する。
【0079】
この図5に示す演算記憶装置450による測定動作(s2)の詳細なフローを図6を用いて説明する。
【0080】
演算記憶装置450で生成されたタイミング制御信号がデジタル関数発生器410に出力されると、デジタル関数発生器410はポテンシオ・スタット430へ入力する電圧のデジタル値をインクリメントする(s21)。これにより、ポテンシオ・スタット430の対極203に入力される電圧は大きくなる。この入力電圧が変わった時のセル13内の対極203及び検出極201の間の酸化電流は、検出極201で検出され、トランス・インピーダンス増幅器433で電流電圧変換された後(s22)、A/D変換器440に出力される。A/D変換器440は、電圧に変換された測定信号をデジタル値に変換して(s23)演算記憶装置450に出力する。演算記憶装置450は、入力されたデジタル値とすでに格納されているピーク値を比較し、大きな方の値をピーク値として抽出する(s24)。この段階で測定が終了していなければ、さらに(s21)に戻り入力電圧をインクリメントさせたデジタル値を取得し、ピーク値の抽出までを繰り返し行う。これにより、段階的に増分する電圧波形を発生させることができ、サイクリックボルタンメトリが実現できる。測定が終了と判定された場合、ピーク値を格納し(s26)、測定動作を終了する。
【0081】
図7は図5の演算記憶装置450の詳細な構成の一例を示すブロック図である。図7に示すように、演算記憶装置450は、ローカル制御デコーダ51と、算術論理演算回路52(ALU: Arithmetic and Logic Unit)と、汎用レジスタ53と、結果格納専用レジスタ54と、ローカルバスR1、R2及びWからなる。
【0082】
演算記憶装置450の一般的な機能について説明する。
【0083】
この演算記憶装置450は、ピーク検出操作、平均操作、減算操作、判定演算を実行することができる。
【0084】
ローカル制御デコーダ51は、グローバルアドレスバス34のアドレスをデコードする。デコードされたアドレスが、そのローカル制御デコーダ51を含む個別の演算記憶装置45のアドレスを指定するものである場合に、グローバル命令バス33で指定された命令をデコードしてその命令に対応する制御信号を算術論理演算回路52並びにバスを制御するための信号をローカルバスR1、R2、W等に出力する。これにより、算術論理演算回路52の算術論理演算が制御され、デコードされた命令が演算記憶装置45で逐次実行される。より具体的には、ローカル制御デコーダ51は、例えば図6,8,9で示される各ステップのシーケンスを算術論理演算回路52を制御することにより逐次自動実行する。また、ローカル制御デコーダ51は、デジタル関数発生器410、D/A変換器420及びA/D変換器440の動作タイミングを制御するためのタイミング制御信号を外部に出力する。さらに、ローカル制御デコーダ51は、算術論理演算回路52からの出力に基づき、算術論理演算回路52の演算処理後の状態を示すフラグ信号を出力する。
【0085】
このローカル制御デコーダ51は、一般的な論理メモリ、レジスト等により構成され、制御手順を表す信号列を出力する。より具体的には、ローカル制御デコーダ51は、マイクロプログラムカウンタやマイクロプログラムメモリなどにより構成され、マイクロプログラミング等を実現できる。
【0086】
算術論理演算回路52は、読み出し専用のローカルバスR1及びR2の2つのデータに基づき算術演算や論理演算を行い、演算結果をローカル制御デコーダ51及び書き込み専用のローカルバスWに送出する。
【0087】
汎用レジスタ53は、算術論理演算回路52の演算結果などの任意のデータを書き込み専用のローカルバスWを介して格納するとともに、格納されたデータをローカルバスR1及びR2に読み出し可能に送出する。
【0088】
結果格納専用レジスタ54は、算術論理演算回路52の演算結果や、A/D変換器440の出力データ(測定データ)を書き込み専用のローカルバスWを介して格納するとともに、格納されたデータをローカルバスR1及びR2に読み出し可能に送出する。
【0089】
グローバルデータバス35からのデータは、ローカルバスR2に読み出し可能に出力される。また、A/D変換器440の出力データは、ローカルバスWに書き込み可能に送出される。
【0090】
なお、ローカルバスR1、R2及びWを用いて算術論理演算回路52、汎用レジスタ53及び結果格納専用レジスタ54間のデータの授受を行う例を示したが、このローカルバスR1、R2及びWに置換して算術論理演算回路52、汎用レジスタ53及び結果格納専用レジスタ54からアクセス可能なセレクタを配置してもよい。このセレクタが読み出しデータ及び書き込みデータを選択して各構成との間でデータを授受することにより、データ制御が比較的容易になる。
【0091】
また、図7では説明の便宜のため汎用レジスタ53及び結果格納専用レジスタ54が1つずつ設けられている場合を示したが、格納するデータの種類やデータのビット数に応じて複数設けられていてもよい。
【0092】
算術論理演算回路52は実行されるデータ処理の種類等によりその装置構成を種々変更できるが、回路規模を縮小するため、実装される機能を加算、減算、右シフト、ロード、ストア命令に限るのが望ましい。もちろん、他の四則演算や論理演算を行う命令を実行するように実装されてもよい。実行可能な命令数を限定することにより算術論理演算回路52の回路規模を縮小することができ、使用ゲート数を少なくすることができる。もちろん、ローカル制御デコーダ51、汎用レジスタ53及び結果格納専用レジスタ54も同様に回路規模を縮小することにより同様の効果が得られる。
【0093】
このようにゲート数を少なくし、またその動作周波数を低く抑えて用いることにより、局所的な発熱を時間的に平坦化させることができる。その結果、セル13内における酸化電流の検出条件に与える発熱の影響を低減することができる。
【0094】
次に、この図7に示す演算記憶装置450を用いた各工程の詳細な動作について説明する。
【0095】
図6のフローにおける(s24)のピーク値の算出の詳細について図8のフローチャートを例に説明する。このピーク値算出の例として、図7の汎用レジスタ53を4つ配置した場合について説明する。4つの汎用レジスタ53の各々のアドレスを#0、#1、#2及び#3とする。#0の汎用レジスタ53は現時点の測定データの格納、#1は前回の測定データの格納、#2は現データの前データに対する増分データの格納、#3はピークの候補データの格納に用いられるとする。
【0096】
まず、i番目に測定された測定データを#0の汎用レジスタ53に格納する(s241)。次に、算術論理演算回路52は、前回までの測定データを#1の汎用レジスタ53から、現在の測定データを#0の汎用レジスタ53からローカルバスR1、R2を用いて読み出し、#0のデータから#1のデータを減算し、得られた差分値を#2の汎用レジスタ53にローカルバスWを介して格納する(s242)。
【0097】
次に、現時点の前の時点のデータを1つシフトさせるため、#1の汎用レジスタ53の格納値に#0のデータを代入する(s243)。次に、算術論理演算回路52は、#2のデータが負か否かを判定し(s244)、負であれば#3のデータが#0のデータより小さいか否かを判定する(s245)。#2のデータが負でなければ、測定データは小さくなっているため、ピーク値が測定データから抽出されることは無いと考えられるため、#3のデータを更新することなくi=i+1として、i+1番目の測定データについて(s241)〜(s244)の処理を繰り返す。
【0098】
#3のデータが#0のデータより小さくない場合、抽出されているピーク値に対して現時点の測定データが等しいか、あるいは小さいため、ピーク値の更新は無いと考えられるため、#3のデータを更新することなくi=i+1として、i+1番目の測定データについて(s241)〜(s244)の処理を繰り返す。#3のデータが#0のデータよりも小さい場合、現時点の測定データにより#3のピーク値を更新すべく、#3の汎用レジスタ53に#0のデータを代入する。
【0099】
このようなピーク値検出処理を入力電圧をインクリメントさせた分だけ繰り返し行い、その都度測定が終了しているか否かを判定し(s247)、終了であれば、#3の汎用レジスタ53に一時格納している仮のピーク値が専用レジスタ54に代入され、最終的なピーク値として格納される(s248)。なお、(s247)に示される測定終了か否かの判定は、(s244)や(s244)でNOに進んだ場合にもあわせて行ってもよい。
【0100】
次に、図4の(s3)で示した平均操作の詳細なフローを図9のフローチャートに沿って説明する。
【0101】
図9に示すように、まず平均を求めるための分母として、標本のすべての値を加算するため、平均をとるための測定データをその平均値算出を行うプローブモジュール31以外のモジュールから2n−1個グローバルデータバス35、ローカルバスR2を介して汎用レジスタ53に格納し、各測定データを算術論理演算回路52を用いて加算するとともに、その平均値算出を行うプローブモジュール31で得られた測定データを加算し(s31)、その加算結果を汎用レジスタ53に格納する(s32)。次に、算術論理演算回路52は、汎用レジスタ53から加算結果をローカルバスR1あるいはR2を介して取得し、n桁右シフト演算を行う。この右シフト演算により、加算結果がnで割った値が得られる。そして、得られた演算結果は結果格納専用レジスタ54に格納される(s34)。このような演算制御は、例えばマイクロプログラミングやステートマシンを用いて容易に実現可能である。
【0102】
なお、この平均値算出は、各プローブモジュール311〜31nのうちの複数のモジュールから得られる測定データの平均値を算出する例を示したが、ネガティブコントロールモジュール32が複数ある場合にも全く同様に適用できる。
【0103】
また、1つのプローブモジュール31に複数の検出極201が対応している場合には、その1つのプローブモジュール31内に格納された複数の測定データの平均値を得る動作に上述した処理を適用できることはもちろんである。
【0104】
次に、図4の(s4)で示したモジュール間減算処理について、図10のフローチャートを例に説明する。ネガティブコントロールモジュール32からの測定データ(減算データ)がグローバルデータバス35に送出される(s41)。図3のデコーダ42は、グローバル制御回路43を参照しつつ、プローブモジュール311〜31nのうち減算が実行されるモジュールをアドレスバスにより指定する(s42)。次に、プローブモジュール311〜31nのうちアドレスが指定されたモジュールは、アドレスデコードを行い(s43)、汎用レジスタ53に減算データを格納する(s44)。そして、汎用レジスタ53の減算データと他の汎用レジスタ53のそのプローブモジュール31に格納されていた平均値データなどの測定データを算術論理演算回路52が読み出し(s45)、プローブのデータからネガティブコントロールのデータを減算する減算が実行され(s46)、減算結果は専用レジスタ54に格納される(s47)。
【0105】
次に、図4の(s6)で示した読み出し処理について、図11のフローチャートを例に説明する。図3のデコーダ42は、データ読み出しの対象とするモジュールを311〜31n及び32から選択し、そのモジュールをアドレス指定する(s61)。モジュール311〜31n及び32のうちアドレス指定されたモジュールは、判定結果や減算結果、ピーク値、平均値などの解析データをグローバルデータバス35に送出する(s62)。グローバルデータバス35に送出されたデータは、インタフェース回路41を介してコンピュータ1に出力される(s63)。
【0106】
なお、以上に示したローカル制御デコーダ51の演算はほんの一例にすぎず、種々変更することができる。例えば、(s24)のピーク検出操作をデジタルフィルタにより行ってもよい。
【0107】
また、ピーク検出の後に減算処理を行う例として示したが、インクリメントされた入力電圧の各々に対応して減算処理を行い、その減算結果に対してピーク検出を行ってもよい。
【0108】
また、プローブモジュール31とネガティブコントロールモジュール32の減算をデジタル値同士で行う場合を示したが、アナログ値のままで行ってもよい。また、プローブモジュール31やネガティブコントロールモジュール32の例えばA/D変換器440の前後あるいは演算記憶装置450内にセレクタを設け、またその1つのモジュール31あるいは32に複数の検出極201あるいは対照極204を設け、セレクタが複数の電極からの信号を切り替えて演算を行うようにしてもよい。
【0109】
また、回路規模縮小のため、算術論理演算回路52を、全加算器やレジスタ等の複数の回路が直列接続された直列式回路により構成してもよい。
【0110】
これらは電極数、チップ面積、回路規模、発熱量などの境界条件により適当な構成を採用するのが望ましい。演算の並列性があまり求められない場合には、検出された電気化学信号のA/D変換のみを行い汎用レジスタ53に格納し、塩基配列解析チップ2に1つ設けた計算処理ユニットを使い、シリアルに前述の各種演算を行う方法も考えられる。ここでいう計算処理ユニットは、図3でいうデコーダ42及びグローバル制御回路43などが該当する。
【0111】
以上説明したように本実施形態によれば、検出極と対照極の信号の差を並列に効率的に算出することができる。また、複数の電極から検出されたデータの平均値を効率的に算出することができる。また、ピーク電流値の検出や判定操作も並列に効率的に実行され得る。また、測定を一貫して自動処理することができる。また、デジタルデータによりデータを取り出すことができるため、外部半導体素子からのデータの利用が効率的に行える。従って、本チップ2を汎用的な遺伝子解析装置部品として利用することができる。また、A/D変換をチップ2上で行うことにより、外部由来の雑音の影響を低減することが可能である。さらには、1チップにセンサ、測定及び解析回路を設けることにより、センサが設けられた基板とは別に測定及び解析回路を設けた場合に生じるようなチップ間の信号伝播中に発生する電気的なノイズを低減することができる。
【0112】
前述の図5に示したプローブモジュール31の変形例を図12に示す。図5のプローブモジュール31はこの図12に示すプローブモジュール31’で置換することができる。
【0113】
図12に示すように、プローブモジュール31’は、複数の検出極系21と、デコード/制御回路701と、ポテンシオ・スタット702と、電流/電圧変換回路703と、A/D変換器704と、ピーク抽出回路705と、セレクタ706と、レジスタ707と、NC(ネガティブコントロール)レジスタ708と、セレクタ709と、差分器710から構成される。ポテンシオ・スタット702は複数の検出極系21に対して1つ設けられている。ポテンシオ・スタット702、電流/電圧変換回路703、A/D変換器704及びピーク抽出回路705は同数設けられている。また、レジスタ707は検出極系21と同数設けられている。図12では、検出極系21が4つ設けられ、この34つの検出極系21からの4つの電流を2つのポテンシオ・スタット702が検出する構成となっている。従って、1つのポテンシオ・スタット702が2つの検出極系21からの電流を取得する。電流値の切替はポテンシオ・スタット702に設けられたセレクタにより行われる。
【0114】
デコード/制御回路701は、デコーダ42からのグローバル命令バス33、グローバルアドレスバス34及び制御信号に基づき、ポテンシオ・スタット702、セレクタ706及びセレクタ709の動作を制御する。
【0115】
ポテンシオ・スタット702は、デコード/制御回路701の制御の下、対応する検出極系21の対極203に電圧を印加するとともに、検出極201から酸化電流信号を検出する。検出された酸化電流信号は、電流/電圧変換回路703により電圧変換されA/D変換器704に出力され、デジタル信号に変換されてピーク抽出回路705に出力される。ピーク抽出回路705のピーク抽出処理は前述した(s24)の手法と共通する処理を行うので詳細は省略する。得られたピーク抽出値はデコード/制御回路701及びセレクタ706に出力される。
【0116】
デコード/制御回路701は、ピーク抽出回路705からのピーク抽出値の入力に応答してセレクタ706及びセレクタ709の動作を制御する。セレクタ706は、逐次入力される各検出極系21についてのピーク抽出値を複数のレジスタ707のうちのいずれかを選択して出力する。図12の例では、セレクタ706は差分器710のフィードバック信号と、ピーク抽出回路705からの信号の3つの入力に基づき出力信号を4つのレジスタ707に対して選択して出力する。いずれのレジスタ707に格納するかは、デコード/制御回路701からのアドレス信号及び命令信号により指定される。
【0117】
複数のレジスタ707は、検出極系21毎にピーク抽出値をそれぞれ格納する。
【0118】
減算を行う場合、セレクタ709は、NCレジスタ708に外部から入力されたピーク抽出値を第1の出力とし、複数のレジスタ707のいずれかのピーク抽出値を選択して第2の出力とする。セレクタ709は、レジスタ707からの4つの入力とNCレジスタ708からの1つの入力から2つの出力信号を選択する回路である。いずれの2つの信号を出力するかは、デコード/制御回路701からのアドレス信号及び命令信号により指定される。
【0119】
差分器710は、プローブからのピーク抽出値からネガティブコントロールからのピーク抽出値を減算し、演算結果をセレクタ706に出力する。セレクタ706は、入力された演算結果を検出極系21毎に対応するレジスタ707に格納する。これにより、各検出極系21についての演算結果がレジスタ707に保持される。
【0120】
セレクタ709は、このレジスタ707に保持された演算結果を選択してデータ出力としてグローバルデータバス35に送出する。これにより、演算結果がプローブモジュール31’から外部にデータ送出される。
【0121】
これにより、検出極201から検出された電気化学信号に対して電流電圧変換、A/D変換、ピーク抽出、減算を経たデータを取得することができる。
【0122】
さらに判定を行う場合には、セレクタ706及び709の制御手順をデコード/制御回路701が変更して制御信号をセレクタ706及び709に出力することにより簡便に実現できる。
【0123】
例えば各検出極系21毎に得られた演算結果(減算結果)を比較し、検体溶液に含まれるDNAの塩基配列を特定する場合、セレクタ709はレジスタ707に格納された比較の対照とすべき2つの演算結果を差分器710に出力する。差分器710は、この2つの演算結果を減算して差分値を出力する。この差分値の正負を判定することにより、塩基配列を特定することができる。差分値の正負あるいは差分値の正負の判定結果をセレクタ709からデータ出力することにより、コンピュータ1で塩基配列の判定結果を確認することができる。
【0124】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0125】
図2は、複数の検出極系211〜21nに対して1つの対照極系22を配置する例を示したが、これに限定されない。例えば、図13に示すように、検出極系211〜21nの各々に対照極系221〜22nを対応してその近傍に配置してもよい。また、図13に示す例で、検出極系211〜21nとこれに対応する対照極系221〜22nを統合し、検出極201、参照極202、対極203及び対照極204からなる1つの電極系としてもよい。この場合、図3のネガティブコントロールモジュール32内の各種回路は各プローブモジュール311〜31n内に配置される。この場合、検出極201からの信号と対照極204からの信号を選択する信号切替のためのセレクタ等の回路を配置しておけば、各モジュール311〜31n内部で電流測定、平均値算出、減算などの処理を並列に行うことができる。これにより、プローブモジュールで得られるデータからネガティブコントロールで得られるデータを減算する際に、各検出極201近傍の電解液の状態等の測定条件の相違を反映させることができる。
【0126】
また、この図13の例では、各検出極系211〜21nと各対照極系221〜22nの各々に対応してプローブモジュールあるいはネガティブコントロールモジュールが配置される。この場合、各プローブモジュールと各ネガティブコントロールモジュールは1つの共通するグローバルデータバス35により接続される。
【0127】
対照極系221〜22nの各々で得られるデータについて、実空間における位置依存性を試験して、それらの平均値を算出する場合、この共通するグローバルデータバス35によるシリアルなデータ転送及び平均値算出手法のほかに、各対照極系221〜22nに対応するネガティブコントロールモジュール同士を専用の通信線で接続してもよい。これにより、各対照極204で得られたデータを並列に授受できるため、データを授受するための信号線が増加するが、データ授受に必要な時間が短縮される。その結果、平均値算出処理に要する時間を短縮することができる。
【0128】
図3の例では、各プローブモジュール311〜31nとネガティブコントロールモジュール32が1つの共通のグローバルデータバス35に接続されているが、これに限定されるものではない。ネガティブコントロールモジュール32と各プローブモジュール311〜31nの各々を並列に接続する専用の通信線を設けてもよい。
【0129】
また、図4では、電流測定、平均操作、減算操作、判定演算の順に処理する例を示したが、ほんの一例にすぎない。コンピュータ1からデコーダ42に入力する制御信号の制御手順を変更するのみで、これら各処理の順番を代えて実行することができる。また、必ずしも判定演算を必要は無く、減算操作を行った減算結果をコンピュータ1に出力する塩基配列解析チップとしても成立する。
【0130】
また、図3、図5、図7及び図12では、バスを介して各モジュールを接続する場合を示したが、これに限定されない。例えば、各モジュールを並列接続する。そして、複数のモジュールで同時に処理を実行させる場合、それらモジュールを制御するデコーダ等の制御部からブロードキャスト方式により命令や制御信号を送出してもよい。
【0131】
また、上述の実施形態では一塩基多型の型判定に用いる場合を示したが、他の目的にも本装置を利用可能である。
【0132】
例えば、遺伝子発現解析を行う場合、発現の予想される複数の転写産物を検出するためのプローブ群を各々同一基板上に固定化し、検出極として用いる。これら検出極と1つの対照極を用い、各検出極及び対照極の測定を同時に行う。これにより、遺伝子発現解析にも本装置を利用可能である。もちろん、測定の同時性が要求するその他の解析目的にも本装置を利用することはもちろんである。
【0133】
【実施例】
本実施例では、塩基配列検出センサと測定・演算回路を同一基板上に一体集積したDNAチップを用いる。これにより、実現可能性が大幅に向上し、DNAチップの測定における時間差の問題を解決可能である。なお、この実施例では、1つのプローブモジュール31は1つの検出極201を備え、1つのネガティブコントロールモジュール32は1つの対照極204を備える。ただし、1つのプローブモジュール31に複数の検出極201を備えた場合、1つのネガティブコントロールモジュール32に複数の対照極204を備えた場合であっても本発明を適用可能である。
【0134】
実施例の構成を以下に3種類示す。
【0135】
(A)ネガティブコントロールモジュール32が1つあるいは1系列、すなわち複数のモジュールの集合が塩基配列解析チップ2上に設けられた構成。各プローブモジュール31及びネガティブコントロールモジュール32における測定は、一斉に行われなければならない。この系を用いた場合、測定後の検出極同士の比較は任意の組合せに対して行うことができる。
【0136】
(B)複数のプローブモジュール31と1つのネガティブコントロールモジュール32を組み合わせた処理単位を塩基配列解析チップ2上に複数設けた構成。電極における測定は、少なくとも処理単位毎で同時に行われればよい。この解析系を用いてプローブ同士の比較、平均等を後処理として行うときは、その比較や平均等の処理の対象に含まれるプローブの組は同じ処理単位に属する。
【0137】
(C)1つのプローブモジュール31に対し専用のネガティブコントロールモジュール32を割り当てる一対一対応した電極対を配置する構成。少なくとも各電極対毎に同時に測定が行われる。この解析系を用いてプローブ同士の比較、平均等を後処理として行うときは、その比較や平均等の処理の対象に含まれるプローブの組は同時に測定を行う。
【0138】
これら(A)〜(C)に示すモジュールの概念図を図14に示す。図14(a)は実施例(A)の図、図14(b)は実施例(B)の図、図14(C)は実施例(C)の図である。
【0139】
図14(a)に示すように、実施例(A)は、1つのネガティブコントロールモジュール32と、n個のプローブモジュール31からなる電極構造が用いられる。
【0140】
図14(b)に示すように、実施例(B)は、アドレス#0〜#n−1のネガティブコントロールモジュール32と、これら複数のネガティブコントロールモジュール32の各々に対応付けられた複数のプローブモジュール31が配置されている。
【0141】
図14(c)に示すように、実施例(C)は、アドレス#0〜#n−1のn個のネガティブコントロールモジュール32と、このネガティブコントロールモジュール32の各々に1:1で対応したアドレス#0〜#n−1のn個のプローブモジュール31が配置されている。
【0142】
前述の通り、電気化学測定においてはアナログデータ取得、アナログ/デジタル変換、ピーク判定の3つの行為を繰り返し行う。プローブモジュール31同士の比較は一連の測定動作が終了した後実行されるのに対し、ネガティブコントロールモジュール32と各プローブモジュール31の比較すなわち減算は、(1a)アナログデータ取得後アナログ演算により行う。(2a)A/D変換後にディジタル的に行う。(3a)それぞれの電極におけるピークデータを取得した後行う、という3種類が考えられる。(1a)については、対照極204と検出極201が対となっている図14(c)の場合に特に適用の実現性が有る。それ以外はどの場合でも適用可能である。
【0143】
作業のタイミングチャートを図15〜図17に示す。図中「測定+n.c.減算」と記載されているタイミングは、アナログデータ取得、A/D変換、ピーク判定の一連の操作の途中で(1a)あるいは(2a)のいずれかの方法によりネガティブコントロール側とプローブ側からの信号間の減算を行う操作を示す。(3a)の方法によりネガティブコントロールモジュール32とプローブモジュール31との間の差を求める場合には、通常のプローブ間の比較と同様に、随時計算を行うことなる。より詳細には、「測定」には、端子で電流信号を検出し、電流/電圧変換し、A/D変換し、ピーク抽出し、平均値操作する工程の少なくとも1つを含む。また、「比較」は、モジュール間のデータの比較を行うことにより例えば塩基配列を決定するための判定を行う工程に対応する。
【0144】
ただし、(1a)、(2a)、(3a)の選択は、ピーク値検出の精度によって好ましいものが決定される。通常、電気分解を用いた遺伝子解析装置による測定を行う場合、電気分解測定の代表値となるピーク電流値を与えるポテンシオスタット部の入力電圧は、電極を浸漬する挿入剤に対して固有に決定される。よって、ピークを検出する前に検出極と対照極の減算を行っても、ピーク検出の後に減算を行っても、同一の結果が得られる。実際の測定では、ピークを与える入力電圧にばらつきが出る場合がある。このばらつきが大きい場合、ピーク検出を行った後に減算を行う(3a)の方法で行うことが有効である。逆にばらつきが無視できるほど小さい場合、(1a)、(2a)、(3a)のうち計算負荷、消費電力、トランジスタを配置できるチップ面積などの要素を加味して最適なものを選べば良い。したがって、たとえば図12は(3a)の方式であるが、ほんの一例に過ぎず、実施形態としても図12の構成に限定されるものではない。
【0145】
図15に示すように、実施例(A)の場合、ネガティブコントロールモジュール32とプローブモジュール31のすべてにおいて同時に測定及びn.c.減算が行われる必要がある。n.c.減算の工程では、ネガティブコントロールモジュール32は各プローブモジュール31に対して減算データを送出し、各プローブモジュール31はこの減算データを取得し、予め測定しておいた測定データをこの減算データで減算する工程を実行する。減算終了後、任意の2つのプローブモジュール31同士で塩基配列決定のための比較がなされる。比較は、すべてのプローブモジュール31で測定後の同じタイミングで並列に行われてもよいし、図15に示すようにシリアルに行われ、逐次コンピュータ1に比較結果を示すデータが送出されるようにしてもよい。
【0146】
図16に示すように、実施例(B)の場合、互いに減算の対象となる1つの処理単位(図16の例では4つのプローブモジュールと1つのネガティブコントロールモジュール)毎に、測定及びn.c.減算が行われなければならないが、他の処理単位とは同時である必要は無い。また、各処理単位の中のプローブモジュール同士の任意の組合せについて図15の場合と同じ比較工程が実行される。1つの処理単位について見れば、図15の例と同じ測定動作となる。
【0147】
図17に示すように、実施例(C)の場合、1組のネガティブコントロールモジュール32とプローブモジュール31は同時に測定及びn.c.減算が行われる。図17では、各モジュールの対について別個のタイミングで測定及びn.c.減算が行われる場合を示したが、これに限定されない。特に、プローブモジュール31同士で平均や比較などの工程を実行する場合、その平均や比較などの処理の対象となるプローブモジュール31同士は同じタイミングで測定がなされる。
【0148】
ハードウェアの構成として測定と減算を行うことの可能なユニットを多数設けることにより、図15〜図17の測定及び対照極の測定をさらに同時多並列に行うことが可能となる。この場合、測定ブロック間の条件の同一性をさらに高めることができる。
【0149】
サイクリックボルタンメトリにより1.0Vの電圧範囲を100mV/sで掃引する場合、10秒かかることとなる。100個のプローブ電極を使用する場合、本システムを用いずに直列に測定を行ったとすると、全測定時間は1000秒となる。実験データから、この間に10nA程度の差異がヘキストの吸着量の違いによって発生する可能性が有ることが分かる。本システムでは測定の同時性を高めることにより、このような誤差を排除した測定が可能である。
【0150】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、自動で精度の高い塩基配列の検出及び解析を行うことができる塩基配列解析チップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る塩基配列解析装置の一例を示す図。
【図2】同実施形態に係る塩基配列検出チップ表面に設けられた電極構造の一例を示す図。
【図3】同実施形態に係る塩基配列解析チップの回路構成の一例のブロック図。
【図4】同実施形態に係る塩基配列解析チップを用いた電気化学信号検出及び検出データの解析処理のフローチャートの一例を示す図。
【図5】同実施形態に係るプローブモジュールの詳細な構成の一例を示すブロック図。
【図6】同実施形態に係る演算記憶装置による測定動作(s2)の詳細なフローを示す図。
【図7】同実施形態に係る演算記憶装置の詳細な構成の一例を示すブロック図。
【図8】同実施形態に係るピーク値の算出のフローチャートを示す図。
【図9】同実施形態に係る平均操作の詳細なフローチャートを示す図。
【図10】同実施形態に係るモジュール間減算処理のフローチャートを示す図。
【図11】同実施形態に係る読み出し処理のフローチャートを示す図。
【図12】同実施形態に係るプローブモジュールの変形例を示す図。
【図13】同実施形態に係る電極構造の変形例を示す図。
【図14】同実施形態に係るモジュールの概念図。
【図15】同実施形態に係るモジュールのタイミングチャートを示す図。
【図16】同実施形態に係るモジュールのタイミングチャートを示す図。
【図17】同実施形態に係るモジュールのタイミングチャートを示す図。
【図18】セル内の酸化電流と挿入剤浸漬時間の関係を示す図。
【符号の説明】
1…コンピュータ
2…塩基配列解析チップ
11…基板
12…電極
13…セル
21…検出極系
22…対照極系
201…検出極
202,205…参照極
203,206…対極
204…対照極
311〜31n…プローブモジュール
32…ネガティブコントロールモジュール
33…グローバル命令バス
34…グローバルアドレスバス
35…グローバルデータバス
41…インタフェース回路
42…デコーダ
43…グローバル制御回路
51…ローカル制御デコーダ
52…算術論理演算回路
53…汎用レジスタ
54…結果格納専用レジスタ
410…デジタル関数発生器
420…D/A変換器
430…ポテンシオ・スタット
440…A/D変換器
450…演算記憶装置
701…デコード/制御回路
702…ポテンシオ・スタット
703…I/V変換回路
704…A/D変換器
705…ピーク抽出回路
706,709…セレクタ
707,708…レジスタ
710…差分器
Claims (3)
- 基板と、
前記基板上に形成され、検出の対象とする標的塩基配列とは相補的な塩基配列を有するプローブが固定化される複数の検出極と、
前記基板上に形成され、前記標的塩基配列と相補的な塩基配列を有するプローブが固定化されていない対照極と、
前記基板に形成され、前記複数の検出極の電気化学信号を測定する第1測定部と、
前記基板に形成され、前記対照極の電気化学信号を測定する第2測定部と、
前記基板に形成され、第1測定部の第1測定値から第2測定部の第2測定値を減算する減算部と、
前記基板外部からの信号に基づき、第1測定部及び第2測定部の測定を同時に制御し、かつ減算部の減算を制御する制御部と
を具備し、
前記複数の検出極は、少なくとも2つの検出極からなる検出極群の集合からなり、
前記対照極は、少なくとも2つの対照極からなる対照極群の集合からなり、
第1測定部は前記複数の検出極群の各々に対して1つずつ複数設けられ、
第2測定部は前記複数の対照極群の各々に対して1つずつ複数設けられ、
前記制御部は、前記複数の第1測定部の測定を同時に制御し、且つ前記複数の第2測定部の測定を同時に制御する塩基配列解析チップ。 - 前記減算部は、複数の第1測定部の各々に1つずつ複数設けられてなり、
前記制御部は、前記複数の減算部の減算を同時に制御する
請求項1に記載の塩基配列解析チップ。 - 基板と、
前記基板上に形成され、検出の対象とする標的塩基配列とは相補的な塩基配列を有するプローブが固定化される複数の検出極と、
前記基板上に形成され、前記標的塩基配列と相補的な塩基配列を有するプローブが固定化されていない対照極と、
前記基板に形成され、前記複数の検出極の電気化学信号を測定する第1測定部と、
前記基板に形成され、前記対照極の電気化学信号を測定する第2測定部と、
前記基板に形成され、第1測定部の第1測定値から第2測定部の第2測定値を減算する減算部と、
前記基板外部からの信号に基づき、第1測定部及び第2測定部の測定を同時に制御し、かつ減算部の減算を制御する制御部と
を具備し、
前記対照極は複数設けられ、第1測定部は複数の検出極の各々に対して1つずつ複数設けられ、第2測定部は複数の対照極の各々に対して1つずつ複数設けられてなり、前記制御部は、複数の第1測定部及び複数の第2測定部の各々の測定を同時に制御する塩基配列解析チップ。
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