JP3825514B2 - 美白剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚内に存在する糖タンパクである「ラミニン5」からなる美白剤に関する発明である。本剤は、皮膚における美白効果を発揮することができる。
【0002】
【従来の技術】
皮膚や頭皮における代謝を促進させて皮膚や毛髪を若々しく保つことは、皮膚外用剤を使用する究極的な目的の一つである。
そこで、皮膚の代謝促進剤や養毛剤の有効成分として、例えば卵胞ホルモンや副腎皮質ホルモン等のホルモン類が、肌を若返らせ,しわを防ぎ,さらには頭皮における育毛を促す等の効果を付与する目的から採用されている。
しかしながら、これらのホルモン類は多量に使用すると全身的な副作用や皮膚の肥厚化を伴う等の問題点があることも否めなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決すべき課題は、上記のホルモン類を有効成分とする皮膚外用剤に伴いがちな副作用を伴わないで、かつ皮膚の賦活効果等の代謝促進性に優れる成分を見出し、これを用いた皮膚や毛髪を若々しく保つ手段を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、この課題の解決に向けて鋭意検討を行った。その結果、皮膚内に存在する糖タンパクの一種である「ラミニン5」が上記の条件を満たし、これを美白剤としての活用が可能であることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、ラミニン5からなる美白剤(以下、本剤ともいう)を提供する発明である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
A.ラミニン5について:本剤として用いられる「ラミニン5」は、生体から抽出される糖タンパクの一種で、別名で「カリニン(kalinin)」「エピリグリン(epiligrin)」「ニーシン(nicein)」とも呼ばれている。ラミニン5は、少なくとも哺乳動物の皮膚,気管,食道,角膜及び羊膜の基底膜のアンカリングフィラメント(anchoring filaments)に局在することや、これらの皮膚細胞等の培養液中にも放出されることが知られている糖タンパクである。
【0006】
このラミニン5は、400〜495kDa の分子量を有し、α3,β3及びγ2の3本のポリペプチド鎖により構成される。また、ラミニン5中に存在するジスルフィド結合を還元し、ウエスタンブロット法により分離すると、200又は165kDa のα3鎖,140kDa のβ3鎖,155又は105kDa のγ2鎖に分けられる。そして、このラミニン5は、いくつかのドメインからなっており〔例えば、回転シャドウ像により、その両端に球状のドメインを有する107nmの長さのさお状の分子であり、完全な形態では、一端に2つの小さな球状のドメインを有し、他端により大きい球状のドメインを有する非対称構造を呈していることが明らかになっている(Rousselle et al.,1991 )等〕、それぞれのドメインが、ヘパリン,コラーゲン,細胞等との間で作用する特異構造を有している。
【0007】
B.ラミニン5の製造:
このラミニン5は、例えばラミニン5に特異的なモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体をリガンドとして結合したアフィニティクロマトグラフィーにラミニン5を含む画分を接触させて、ラミニン5をこのアフィニティークロマトグラフィーに選択的に結合させて、これを溶出することにより製造することができる。
【0008】
このモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を製造する際の抗原は、ラミニン5が存在することが明らかになっている組織、例えば哺乳動物の皮膚,気管,食道,角膜又は羊膜の抽出物をコラゲナーゼによりVII 型コラーゲンのNC−1小球状領域を消化して、この消化物を抽出精製することにより得ることができる(例えば、Bachinger et al.,J.Biol.Chem.J.265,10095(1990)参照のこと)。
【0009】
抽出精製工程は、ラミニン5の物理的、化学的性質を利用した各種の分離手段を駆使することに行うことができる。例えば硫酸アンモニウム等のタンパク沈澱剤による処理,限外濾過,ゲル濾過クロマトグラフィー,遠心分離,電気泳動,イオン交換クロマトグラフィー,アフィニティークロマトグラフィー,透析等を必要に応じて組み合わせて行うことができる。
【0010】
特に好ましい精製手段の一例としては、精製の一工程中に「▲1▼抽出物(又は消化物)をDEAE−セルロース(例えばDE52,ワットマン社製)と共に低濃度の塩緩衝液(例えば2M 尿素,25mM NaCl,5mM EDTA及び50mMトリス−HCl,pH7.8等)中でインキュベートし、▲2▼この未結合部分を同容量の0.2M NaClを含有する緩衝液でDEAE−セルロースを洗浄し、溶出物質を遠心分離(17,000×g,60分程度)後に分離し、▲3▼この試料を、硫酸アンモニウム沈澱法(50%飽和)によって、10倍に濃縮して、PBS中で透析を行って平衡化させる」工程を入れた精製工程を挙げることができる。
このようにして得られるタンパク質混合物を、上記抗原として用いることができる。
【0011】
なお、このようにして得られたタンパク質混合物に、さらにプロテアーゼ処理等を施したものを上記抗原とすることもできる。
また、上記抗原としては、後述する方法により精製したラミニン5を得た場合には、この精製ラミニン5を用いることは勿論可能であり、さらにこの精製ラミニン5ンを2−メルカプトエタノール等で還元してジスルフィド結合を切断して得られるサブユニットや、トリプシンやキモトリプシン等のペプチド切断剤で切断した精製ラミニン5の断片等をもポリクローナル抗体やモノクローナル抗体を製造する上での免疫抗原とすることができる。
【0012】
ラミニン5に特異的なポリクローナル抗体は、例えば上記の工程に従って製造したラミニン5を免疫抗原として免疫した動物に由来する免疫血清から製造することができる。
【0013】
ここで使用される免疫抗原としてのラミニン5は、特に限定されるものではなく、上記のごとく調製されるラミニン5を用い得ることは勿論のこと、このラミニン5を2−メルカプトエタノール等で還元してジスルフィド結合を切断して得られるサブユニットやトリプシンやキモトリプシン等のペプチド切断剤で切断したラミニン5の断片等をもポリクローナル抗体を製造する上での免疫抗原とすることができる。
【0014】
一方、モノクローナル抗体は、ポリクローナル抗体の場合と同様の方法で、免疫した動物の免疫細胞と動物の骨髄腫細胞とのハイブリドーマを作出し、これによりラミニン5を認識する抗体を産生するクローンを選択し、このクローンを培養することにより製造することができる。
【0015】
また、免疫される動物も特に限定されるものではなく、マウス,ラット等を広く用いることができるが、モノクローナル抗体を製造する場合には、細胞融合に用いる骨髄腫細胞との適合性を考慮して選択することが望ましい。
【0016】
免疫は一般的方法により、例えば上記免疫抗原を免疫の対象とする動物に静脈内,皮内,皮下,腹腔内注射等で投与することにより行うことができる。
より具体的には、上記免疫抗原を所望により通常のアジュバントと併用して、免疫の対象とする動物に2〜14日毎に上記手段により数回投与し、ポリクローナル抗体製造のための免疫血清又はモノクローナル抗体製造のための免疫細胞、例えば免疫後の脾臓細胞を得ることができる。
【0017】
モノクローナル抗体を製造する場合、この免疫細胞と細胞融合する他方の親細胞としての骨髄腫細胞としては、既に公知のもの、例えばSP2/0−Ag14,P3−NS1−1−Ag4−1,MPC11−45,6.TG1.7(以上、マウス由来);210.RCY.Ag1.2.3(ラット由来);SKO−007,GM15006TG−A12(以上、ヒト由来)等を用いることができる。
【0018】
上記免疫細胞とこの骨髄腫細胞との細胞融合は、通常公知の方法、例えばケーラーとミルシュタインの方法(Kohler,G. and Milstein,C.,Nature,256,495(1975))等に準じて行うことができる。
【0019】
より具体的には、この細胞融合は、通常公知の融合促進剤、例えばポリエチレングリコール(PEG),センダイウイルス(HVJ)等の存在下において、融合効率を向上させるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を必要に応じて添加した通常の培養培地中で行い、ハイブリドーマを調製する。
【0020】
所望のハイブリドーマの分離は、通常の選別用培地、例えばHAT(ヒポキサンチン,アミノプテリン及びチミジン)培地で培養することにより行うことができる。すなわち、この選別用培地において目的とするハイブリドーマ以外の細胞が死滅するのに十分な時間をかけて培養することによりハイブリドーマの分離を行うことができる。このようにして得られるハイブリドーマは、通常の限界希釈法により目的とするモノクローナル抗体の検索及び単一クローン化に供することができる。
【0021】
目的とするモノクローナル抗体産生株の検索は、例えばELISA法,プラーク法,スポット法,凝集反応法,オクタロニー法,RIA法等の一般的な検索法に従い行うことができる。
【0022】
このようにして得られるラミニン5を認識する所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培地で継代培養することが可能であり、さらに液体窒素中で長時間保存することもできる。
【0023】
このハイブリドーマからの所望のモノクローナル抗体の採取は、このハイブリドーマを常法に従って培養して、その培養上清として得る方法や、ハイブリドーマをこのハイブリドーマに適合性が認められる動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法等を用いることができる。
【0024】
なお、インビトロで免疫細胞をラミニン5又はその一部の存在下で培養し、一定期間後に上記細胞融合手段を用いて、この免疫細胞と骨髄腫細胞とのハイブリドーマを調製し、抗体産生ハイブリドーマをスクリーニングすることで所望するモノクローナル抗体を得ることもできる(Reading,C.L.,J.Immunol.Meth.,53, 261(1982);Pardue,R.L.,et al.,J.Cell Biol.,96,1149(1983))。
【0025】
また、上記で得られるポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、更に塩析,ゲル濾過法,アフィニティクロマトグラフィー等の通常の手段により精製することができる。
このようにして得られるポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、ラミニン5に特異反応性を有する抗体である。
【0026】
現在報告されているラミニン5に特異的なモノクローナル抗体としては、BM165(Rousselle et al.,1991 ),K140(Sakai et al.,1986 ),GB3(Marinkovich et al.,1993 )等を挙げることができる。また、ポリクローナル抗体としては、抗ラミニン5ウサギ血清(Marinkovich et al.,1992 )等を挙げることができる。
【0027】
このようにして調製したモノクローナル抗体やポリクローナル抗体をリガンドとして担体に結合させて、所望するラミニン5を特異的に結合するアフィニティクロマトグラフィーを調製することができる。
このラミニン5特異的アフィニティクロマトグラフィーの調製方法は、通常公知の方法を用いて調製することができる。
【0028】
すなわち、アガロース,セルロース,ポリアクリルアミド,磁気多孔性ガラスビーズ等の担体表面に、上記のモノクローナル抗体やポリクローナル抗体を結合させることのできる手段を設けて、所望するラミニン5特異的アフィニティクロマトグラフィーを調製することができる。
【0029】
上記抗体を担体表面上に結合させることのできる手段としては、例えば免疫グロブリンを特異的に凝集させることが可能な免疫凝集素の担体粒子表面へのコーティング〔このコーティングは、担体粒子の表面に、アミノプロピル基,臭化シアノ基,カルボキシル基,長鎖アミノアルキル基,アミノアリル基,ヒドラジド基等を導入したリンカーを導入して、これに所望する免疫グロブリン凝集素(例えばプロテインG,プロテインA等)を接触させることにより行うことができる。〕して、この凝集素を介して上記抗体を固定することを挙げることができる。
【0030】
なお、上記抗体を担体表面上に固定する際に、これらの凝集素を予めその表面にコーティングした担体粒子の市販品を用いることも可能である。すなわち例えば、UltraLink (商標)Protein A,G,A/Gシリーズ(フナコシ社製)等を用いることができる。
【0031】
また、上記のリンカーを導入後、これに直接上記抗体を結合させて、所望するアフィニティクロマトグラフィーを調製することができる。
なお、各種のリンカーを予め導入した担体粒子が市販されており、これらの市販品に所望する凝集素をコーティングしたり、上記抗体を固定することが可能である。
【0032】
さらに、架橋用試薬を用いて、担体粒子表面の官能基と抗体凝集素や上記抗体における官能基を架橋させることにより、スペーサーを導入した上記抗体を固定したアフィニティクロマトグラフィーを調製することができる。
【0033】
このようにして調製した、ラミニン5を特異的に結合するアフィニティクロマトグラフィーに、ラミニン5を含む画分を接触させて、その画分中のラミニン5を上記アフィニティークロマトグラフィーに選択的に結合させて、これを溶出することにより製造することができる。
【0034】
ラミニン5を含む画分は、その中にラミニン5が含まれている限り特に限定されないが、可能な限り多くのラミニン5が含まれているものを用いることが好ましく、上記抗体の抗原として調製したものを用いることも可能であり、また上記のラミニン5が存在する組織の培養物を用いることも可能である。
【0035】
例えば、ヒトの包皮のケラチン細胞を通常公知の方法〔Boyce et al.,J.Tiss.Cult.Meth.J.,9,83(1985) 等〕に従って調製して、これを培養した培養培地をプロテーアーゼ活性を最小にしたものを用いることも可能である。
【0036】
このようにして調製したラミニン5を含む画分を、上記のラミニン5を特異的に結合するアフィニティクロマトグラフィーに、ラミニン5を含む画分を接触させて、ラミニン5をこのクロマトグラフィーに特異的に結合させる。そして、この結合物のみを溶出させて、所望する精製されたラミニン5を得ることができる。なお、画分中にラミニン5が存在するか否かは、280nmの吸光度測定を行うことにより特定することができる。
【0037】
なお、このようにして得たラミニン5を、さらに還元処理を施すことにより、ラミニン5を構成するサブユニットを得ることができる。
【0038】
後述する皮膚外用剤中には、上記ラミニン5のみならず、そのサブユニットを配合することも可能である(以下、本明細書においては、特に断らない限りラミニン5及びこのラミニン5のサブユニットを「ラミニン5」と総称する。)。
【0039】
また、さらに遺伝子工学的手法、例えばラミニン5をコードする遺伝子を単離して、それを適切な宿主に導入して、そのラミニン5をコードする遺伝子を導入した宿主が産生する組換えラミニン5を後述する皮膚外用剤中に配合することも可能である。
【0040】
皮膚外用剤において、上述したラミニン5(本剤)を配合することにより、当該皮膚外用剤に美白効果を付与することができる。
【0041】
当該皮膚外用剤における本剤(ラミニン5)の配合量は特に限定されず、少なくとも皮膚外用剤の10−6重量%以上、0.1重量%以下という非常に広い範囲で配合され得る。
【0042】
また、当該皮膚外用剤中には、本発明の所期の効果を損なわない範囲内で、必要に応じて皮膚外用剤一般に用いられている薬剤や基剤成分等を配合することができる。すなわち、紫外線吸収剤,保湿剤,ビタミン類,ホルモン類,アミノ酸類,抗炎症剤,美白剤,収斂剤,清涼剤,各種の動植物抽出物等の薬効成分を、上記ラミニン5と共に当該皮膚外用剤中に配合することができる。
【0043】
また、油脂,ロウ類,エステル油,炭化水素油,シリコーン,界面活性剤,低級アルコール,ステロール類,水溶性高分子,金属イオン封鎖剤,中和剤,pH調整剤,酸化防止剤,抗菌剤,香料,色素,顔料等の基剤成分等もラミニン5と共に当該皮膚外用剤中に配合することができる。
【0044】
本剤は、医薬品、医薬部外品(軟膏剤,歯磨剤等)及び化粧品[洗顔料、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック・マスク等の基礎化粧品;ファンデーション、口紅等のメーキャップ化粧品;口腔化粧品、芳香化粧品、ボディ化粧品等]の形態に広く適用可能である。そして、これらの形態に本剤を用いるべき形態が限定されるものではない。
【0045】
また、剤型も水溶液系、可溶化系、乳化系、粉末系、油液系、ゲル系、軟膏系、エアゾール系、水−油2層系、水−油−粉末3層系等、幅広い剤型を採り得る。
本発明皮膚外用剤の具体的処方については、後述する実施例において記載する。
【0046】
【実施例】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲がこの実施例によって限定的に解釈されるべきものではない。
なお、皮膚外用剤における配合量は、特に断らない限り皮膚外用剤における重量%である。
〔製造例〕ラミニン5の製造
(1)モノクローナル抗体の調製
ヒト胎盤の羊膜から精製したラミニン5(『Marinkovich et al., J.Biol. Chem. 17900-17906, 1992 』の記載に従い製造した)を抗原とし、これをBalb/cマウスにフロインド完全アジュバンドと1:1のエマルジョンとして感作し、フロインドの不完全アジュバンドとの1:1のエマルジョンでブーストした。この感作を行った上記マウスから免疫細胞を分離し、NS−1ミエローマ細胞との細胞融合を行いハイブリドーマを作出した。
【0047】
作出したこれらのハイブリドーマから抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングは、ヒト包皮凍結組織に対する間接蛍光抗体法を用い、真皮表皮ジャンクションの基底膜を染色する抗体産生ハイブリドーマを陽性クローンと判定した。
限界希釈法で抗体産生ハイブリドーマをモノクローンになるようにクローニングした。そして、モノクローンとなった抗体産生ハイブリドーマを大量に培養し、その培養上清からプロテインGセファロースを用いてIgG抗体を精製して、所望するラミニン5に対するモノクローナル抗体を調製した。
【0048】
(2)モノクローナル抗体をリガンドとしたアフィニティクロマトグラムの調製上記(1)で得たラミニン5に対するモノクローナル抗体をCNBr活性化セファロース(ファルマシア社製)に、ファルマシア社のプロトコールに従って共有結合させた。非結合IgGを除いた後に、ゲルをカラムに詰めて、アフィニティカラムを調製した。
【0049】
(3)ラミニン5の製造
ラミニン5は、培養ヒト表皮角化細胞又はヒト有棘細胞癌由来細胞を牛胎児血清を培地重量の10%の割合で含むDMEM培地を用いて培養した。定期的に培養上清を回収し、これに各種タンパク質分解酵素の阻害剤を添加し、冷却し、ラミニン5の分解を阻止した。この培養上清を直接プレカラムであるゼラチンセファロースカラムに通して共存するフィブロネクチンを除去し、次に直列に結合させた前記(2)で調製したアフィニティカラムに通してラミニン5を結合させた。アフィニティカラムに結合しないタンパク質をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗い流した。このアフィニティカラムに結合したラミニン5は、1N酢酸溶液等の溶出剤を用いて溶出し、280nmの吸光度を指標としてタンパクピークを検討し、ピーク周囲に溶出したタンパク質をPBSで透析した。得られたタンパク質を電気泳動法で解析し、その純度を推定した。その結果、95%以上の純度のラミニン5が得られたことが判明した。
以下の試験例及び実施例におけるラミニン5は、この製造例で製造した精製ラミニン5を用いた。
【0050】
皮膚細胞接着促進試験
ラミニン5を配合した皮膚外用剤の皮膚賦活効果を示すために、次の皮膚細胞接着促進効果を、通常の培養シャーレを用いた細胞培養系で試験した。
ヒト皮膚より得た表皮角化細胞を、KGM(Keratinocyte grown medium )培養液に牛脳下垂体エキスを含む培地で培養し、この試験に必要な細胞を得た。
【0051】
ラミニン5を生理食塩水に溶解し、これを細胞培養シャーレに注ぎ入れ、シャーレ表面をラミニン5でコートした。細胞をトリプシンで分散させて単一細胞とし、細胞培養シャーレに1×105 個の細胞を接着させた。3時間5%CO2 インキュベーター内で培養した後、シャーレに接着していない細胞を生理食塩液で洗って除く。その後、シャーレに接着している細胞をトリプシンで分散し、細胞数を計測した。なお、牛血清アルブミンを含む生理食塩水溶液で、細胞培養シャーレをコートしたものをコントロールとした。接着細胞数の多いものほど接着促進効果があるものとする。
【0052】
本試験を行った結果、コントロールにおける接着細胞数は0.18(×105 )であったが、ラミニン5においては0.79(×105 )であった。
その結果、ヒト表皮角化細胞の接着は、ラミニン5により著しく促進され、ラミニン5の皮膚賦活効果の一側面が明らかになった。
【0053】
皮膚細胞運動促進試験
ラミニン5を配合した皮膚外用剤の皮膚賦活効果を示すために、次の皮膚細胞運動促進効果を、通常の培養シャーレを用いた細胞培養系で試験した。
ラミニン5を生理食塩水に溶解し、これを細胞培養シャーレに注ぎ入れ、シャーレ表面をラミニン5をコートした。細胞をトリプシンで分散させて単一細胞とし、細胞培養シャーレに1×105 個の細胞を接着させた。3時間5%CO2 インキュベーター内で培養した後、細胞の運動を顕微鏡下、レーザービデオディスクレコーダーで記録した。1時間当りに細胞が移動した距離をコンピューターで解析した。なお、BSA(Bovine serum albumin)を含むPBSで細胞培養シャーレをコートしたものをコントロールとした。移動距離の多いほど、細胞運動促進効果があるものとする。
【0054】
本試験を行った結果、コントロールにおける細胞の移動距離は、3.4(μm /時間)であったが、ラミニン5では22.8(μm /時間)であった。
その結果、ヒト表皮角化細胞の運動は、ラミニン5により著しく促進され、ラミニン5の皮膚賦活効果の一側面が明らかになった。
【0055】
創傷治癒試験
ラミニン5を配合した皮膚外用剤の皮膚賦活効果を示すために、次の創傷治癒効果試験を行った。
生後70週齢のウイスター系ラットを5匹1群として、毛刈り後、創傷治癒効果試験に供した。ラットは、エーテル麻酔後、正中線に沿って、約2cm背部皮膚を切開し、切開後直ちに切開部をミッヘル縫合し、ラミニン5を10μg /mlの濃度で含む生理食塩水を1日1回、0.1mlずつ10日間連続塗布した。10日後、ラットをエーテル麻酔死させ、縫合針を外し、断面断面1cmとなるように皮膚切片を作製した。
【0056】
張力測定には、テンシロンUTM−4(東洋側器株式会社製)を用い、創傷治癒面切断張力を測定した。コントロールは、生理食塩溶液を塗布した皮膚切片を用いた。
張力が大きい程、切断面が治癒していることを示す。
本試験を行った結果、コントロールにおける平均張力は293(g /cm)であったが、ラミニン5では485(g /cm)であった。
【0057】
その結果、創傷治癒はラミニン5により著しく促進され、ラミニン5の皮膚賦活効果の一側面が明らかになった。上記3試験の結果より、ラミニン5が様々な側面から皮膚賦活効果を有することが明らかにされ、ラミニン5を配合した皮膚外用剤には皮膚賦活作用が付与されることが明らかになった。
【0058】
養毛試験
C57BLマウス5匹を1群とし、マウスの腹部両側から背部にかけて剃毛し、片側にラミニン5を10μg /mlの濃度で含む生理食塩水を塗布し、もう一方にはラミニン5を含まない生理食塩水を塗布した。2週間後に剃毛部に生えてきた毛の長さを測定した。この数値が大きい程、養毛効果に優れている。
結果を第1表に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
次に、以下に示す処方の化粧水を調製して、これについて下記の美白効果試験,肌荒れ改善効果試験,使用性・安全性試験を行った。
【0061】
【0062】
<製法>
精製水にクエン酸,クエン酸ソーダ,グリセリン,ラミニン5、1,3−ブチレングリコールを溶解した。これとは別にエタノールにポリオキシエチレンオレイルアルコール,香料及びメチルパラベンを溶解し、これを前記の水相成分に添加して可溶化して、さらに濾過して、所望する化粧水を得た。
【0063】
美白効果試験
ラミニン5の美白効果を検討するために、実施例1で得た化粧水をメラニン生成抑制効果を検討した。
まず、実施例1で得た化粧水を試料として用い、ラミニン5を配合しないもの(精製水で置換)をブランクとして別に調製し、それぞれにL−チロシン水溶液及びマックルヘイン氏の緩衝液を有効成分とするリニメント剤を添加し、10分間恒温槽に入れた。
【0064】
これに、チロシナーゼ水溶液を添加して攪拌し、分校光度計をセットして475nmにおける吸光度を経時的に測定した。475nmの吸光度が上昇することは、L−チロシンが酸化され、メラニンの前駆体であるドーパクロムが生成していることを示す。
すなわち、ドーパクロムの生成量が少ないことは、メラニン生成抑制効果があることを示す。
【0065】
実施例1の化粧水における、本美白効果試験の結果を第1図に示す。第1図において、本発明に関わる化粧水は、経時的にドーパクロムの生成量がブランクに比べると少なく、この化粧水を用いることによりメラニンの生成が抑制されることが判明した。すなわち、本剤を配合した皮膚外用剤に美白効果が認められることが明らかになった。
【0066】
肌荒れ改善効果試験
実施例1で得た、ラミニン5を含む化粧水とブランク(ラミニン5を精製水で置換)を用いて、ヒトパネルで肌荒れ改善効果試験を行った。
すなわち、女性健常人パネルの顔面の皮膚表面の形態をミリスン樹脂によるレプリカ法を用いて、肌のレプリカを採り、顕微鏡(17倍)で観察する。
皮紋の状態及び角層の剥離状態から、下記第2表に示す基準に基づいて、肌荒れ評価1,2と判定された者(肌荒れパネル)30名を用い、顔面左右半々に、実施例1で得た化粧水とブランク化粧水を1日1回、2週間塗布した。
2週間後、再び上述のレプリカ法で、肌の状態を観察し、下記第3表に示す判定基準に従って評価した。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
使用性・安全性試験
実施例1の化粧水とブランク(ラミニン5を精製水に置換したもの)のそれぞれに対する使用感の官能テストを行った。
その結果を、第4表に示す。
【0070】
【表4】
【0071】
*:使用性試験は、20人の女性パネルに試料となる化粧料を使用させ、この女性パネルの80%が「しっとりしている」と評価した場合のみ、第4表における「しっとりしている」という評価を与えた。なお、同パネルの40%〜80%未満が「しっとりとしている」と評価した場合は「ふつう」で、それよりも「しっとりしている」という評価が少ない場合には「劣る」と判定した。
**:連用試験は、上記の女性パネルに1か月感連用試験をした結果である。
***:動物皮膚刺激テストは、FDA Draizeの方法に従って行った。
【0072】
また、下記の処方において調製した皮膚外用剤(クリーム:実施例2,乳液:実施例3)において、上記実施例1と同様に美白効果試験,肌荒れ改善効果試験及び使用性・安全性試験を行った。その結果、1)実施例2及び実施例3共、美白効果試験においてはドーパクロムの経時的生成抑制作用が認めらることによる美白効果が認められ、2)実施例2及び実施例3共、レプリカ評点が4又は5に殆ど分布して、顕著な肌荒れ改善効果が認められ、3)実施例2及び実施例3共、しっとりとした使用感を伴い、安全性テストも全ての評価項目で「問題なし」又は「安全」であった。なお、後述する実施例3までの皮膚外用剤は、すべて常法で調製した。
【0073】
【0074】
【0077】
【発明の効果】
本発明により、皮膚の美白効果に優れる美白剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】メラニンの前駆体であるドーパクロムが生成量を指標とした美白効果試験の結果を示した図面。
Claims (1)
- ラミニン5からなる美白剤。
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