JP3823308B2 - 半導体デバイス研磨装置及びポリシングパッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体デバイスの研磨装置に関し、特に化学的機械的研磨におけるポリシングパッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体デバイスは集積度を高めるために多層化されるようになってきたが、そのため半導体デバイスの表面の平坦化が低下して表面に段差が生じる場合が出てきた。また、半導体デバイスの製造工程において、微細加工の線幅が細くなると、光リソグラフィの光の波長が短くなるため、開口係数NAも大きくなって、高解像度を得るために焦点深度が浅くなってしまう。
【0003】
上記したように集積度を高めるために多層化された半導体デバイスの製造における半導体デバイスの表面が必ずしも平坦ではないため、半導体デバイスの製造における微細加工の線幅が細くかつ複雑になるに連れて、半導体デバイスの表面に段差が生じるようになってきている。
【0004】
上記段差の存在により、配線切れや局所的な抵抗値の増大を招き、断線による電流容量の低下などをもたらしたり、耐圧劣化やリークの発生を招くという問題が生じる。また、段差の存在により半導体露光装置の焦点深度が実質的に浅くなるため、歩留まり及び信頼性を向上させるために解像度を増大させようとすると、焦点深度がより一層浅くなってしまい、加工が困難であるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
解像度を増大させた微細加工を容易に行い得るためには半導体デバイス側の平坦化が必要であり、例えば特開平7−321076号公報に開示されているように、化学的機械的研磨(CMP法)を用いたものがあり、その構造の一例を図6に示す。
【0006】
図6において、矢印Aに示されるように回転する定盤2上にポリシングパッド11が貼り付けられ、そのポリシングパッド11の上方であってかつ定盤2の回転中心から偏倚した位置で矢印Bに示されるように回転するウエハホルダ8が設けられて、そのウエハホルダ8により、半導体デバイスとしての半導体ウエハ5がポリシングパッド11に対峙するように保持されている。
【0007】
上記半導体ウエハ5をパッキングパッド12を介して圧力機構9によりポリシングパッド11に押し付け、かつ研磨剤供給機構10により研磨剤6をポリシングパッド11上に滴下しながら、定盤2及びウエハホルダ8を上記矢印A及びBに示されるようにそれぞれ回転させることにより、半導体ウエハ5が自転しつつ揺動運動を行うようになり、その表面が研磨される。
【0008】
しかしながら、上記ポリシングパッド11には発泡ウレタン材が用いられており、セリア系スラリーでの加工速度は良好であるが、シリカ系スラリーでの加工速度が遅いという欠点がある。また、荷重がかかるとポリシングパッド11が圧縮変形を起こし易い。さらに、例えばTEGパターンウエハのパターン形状を消滅して平坦化することが困難であるという問題があった。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決して、半導体デバイスの表面の平坦化を向上し得る研磨装置を実現するために、本発明に於いては、回転する定盤上にポリシングパッドを貼り付け、前記定盤の上方にて前記定盤の回転中心から偏倚して回転するホルダにより半導体デバイスをその表面を前記ポリシングパッドに対峙させた状態に保持すると共に、スラリーを前記ポリシングパッド上に供給して前記半導体デバイスの表面を研磨するようにした半導体デバイスの研磨装置であって、前記ポリシングパッドが、前記定盤側に設けられた弾性層と、前記半導体デバイス側に設けられた硬質樹脂層とからなり、前記硬質樹脂層の表面に、前記スラリーを保持し得ると共に前記定盤及び前記ホルダの回転により前記半導体デバイスの表面の全面に前記スラリーが分散するようにガイドするスラリーガイド溝を設け、前記スラリーガイド溝が、前記ポリシングパッドの外周に始点及び終点を有しかつ前記ポリシングパッドの回転中心近傍に折り返し点を有する曲線状をなすものとした。
【0010】
これによれば、表面に段差を有する半導体デバイスの表面を研磨する際に、ポリシングパッドの加工面が硬いことから、その加工面が段差の溝底に接触することなく加工していくことができると共に、スラリーガイド溝の経路長を長くすることができ、スラリーが溝内保持される時間を長くすることができると同時に、溝内のスラリー及び研磨屑の流れを円滑化することができる。
【0011】
また、前記硬質樹脂層が、ABS樹脂材を含むビニル系コポリマー材からなると良い。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に添付の図面に示された具体例に基づいて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明が適用された化学的機械的研磨装置に用いられるポリシングパッド1の要部拡大断面図である。なお、本装置は、従来例で示したものと同様の構造であって良く、その詳しい説明を省略する。
【0014】
図1において、本ポリシングパッド1は、定盤2の上面に貼り付けられており、その定盤2側に設けられた弾性層3と半導体デバイス側に設けられた硬質樹脂層4とを積層してなる。弾性層3としては従来のポリシングパッドに用いられていた発泡ウレタン材や他の発泡性樹脂材であって良く、硬質樹脂層4としては無発泡性高分子材であるABS樹脂材を含むビニル系コポリマー材であると良い。
【0015】
また、加工対象の半導体ウエハ5の表面5aに対峙する硬質樹脂層4の上面には、ポリシングパッド1上に供給されるスラリー6を硬質樹脂層4の全面に分散させるスラリーガイド溝7が設けられている。この溝7を設けることにより、研磨屑の排出や、使用済みスラリー6の排出や、溝7のエッジによる研磨効率を向上することができる。また、スラリー量をウエハ表面5aに均一に分散し、余分なスラリー6を排出することによって研磨面を均一な温度にすることができ、ウエハ表面5aの温度上昇を一定に保つことができるなどの効果があり、その効果を有効にするために、本発明によれば図2に示されるように溝7の形状を工夫している。
【0016】
溝7の形状にあっては、研磨屑や使用済みスラリー6を効率良く排出するために、(1)流路抵抗の少ない緩やかな曲線にしたり、(2)溝7の経路をできるだけ滑らかな曲線にしたり、(3)流れの損失を少なくするために急激な流速変化がないようにすると良い。
【0017】
上記(1)・(2)の要求に対しては、円の伸開線・螺線・サイクロイド曲線・レムニスケートなどが適しているが、特に円の伸開線と対数うずまき線が最も適している。
【0018】
また、上記(3)の要求に対しては、ポリシングパッド1の外周における溝7の形状を、図3に示されるように溝幅bを外周に向かうに連れて拡開して半径方向外向きに開放すると良い。特に、ポリシングパッド1の外周における溝7の開放位置における接線と溝7の経路延長線とのなす角度βが17.5度〜27.5度であると良く、通常は22.5度が良い。なお、スラリーの消費量抑える目的の場合には上記角度βを上記以外の角度にしても良い。
【0019】
上記ポリシングパッド1の外周部における溝7から外方に排出されるスラリー6や研磨屑の流れは、急に大気放出されることから速度変化による損失が発生するので、上記したように拡開形状にすると良い。また、溝7の拡幅部分の経路長Lは、溝幅bに対して2〜3倍程度であると良い。ただし、コストや産業廃棄物対策などの関係でスラリー6の消費量を抑える目的の場合には、逆に溝幅bを狭めると良い。
【0020】
さらに、図2に示されるように溝7の曲線をポリシングパッド1の直径Dに対して左右対称、またはポリシングパッド1の回転中心(図のO)に対して点対称にすることにより、ポリシングパッド1の外周に始点及び終点を有しかつポリシングパッド1の回転中心(図のO)近傍に折り返し点を有する曲線状に形成することができ、溝7の経路長を長くすることができるため、スラリー6の保持時間を向上することができる。なお、図2では説明上、溝7の1経路を示しており、実際には硬質樹脂層4の全面に溝7を複数配設している。
【0021】
すなわち、ポリシングパッド1の外周から溝7内に入り込んだスラリー6は、ポリシングパッド1の回転方向が図2の矢印Aの向きの場合、溝7内を図1の矢印に示されるように流れる。したがって、単なる放射状に設けた溝に対して、溝7内にスラリー6が長く保持されることになり、スラリー消費率が向上して、コストや産業廃棄物対策などに対して有効である。
【0022】
特に、溝7の断面形状を図4に示されるように、内部で拡幅された形状にすることにより、スラリー6を溝7内により一層長く保持することかできる。
【0023】
次に、従来の発泡ウレタン材からなるポリシングパッドを用いた場合と、本発明に基づく積層構造のポリシングパッドを用いた場合とによる加工能率と平坦度との実験結果を以下に示す。加工条件としては、試料に酸化膜付きSiウエハとTEGパターンウエハとを用い、ポリシング装置にはリング式小型ポリシング装置を用い、その定盤の回転数を30rpmとし、加工圧力を4N/cm2とし、研磨時間を1分とし、スラリーにはシリカスラリー(10wt%のSiO2、粒径0.1μm、pH10.6)とセリアスラリー(10wt%のCeO2、粒径0.22μm、pH8.8)とを用いた。また、加工能率(加工速度)の評価方法は干渉式膜厚計を用い、表面粗さにはAFMを用いた。
【0024】
例えば発泡ウレタン材からなる弾性層3の硬度(JIS A)は39であり、ビニル系コポリマー材からなる硬質樹脂層4の硬度(JIS A)は98.5である。一方、従来のポリシングパッドの硬度(JIS A)も82である。
【0025】
上記加工条件で試料を加工した結果、加工速度において、従来のものに対して本発明のものが、シリカスラリーで同程度(約120μm/分)であるがセリアスラリーで2倍以上になった。また、表面粗さも、シリカスラリーで同程度であるがセリアスラリーで小さくなった。なお、このセリアスラリーを用いて高い加工能率が得られるのは、硬質樹脂層4が適度な硬さとぬれ性を有することによる影響が大であると考えられる。
【0026】
さらに、TEGパターンウエハの段差解消過程を、従来の発泡ウレタン材のポリシングパッドを用いた場合と、本発明の積層構造のポリシングパッドを用いた場合とについて図5を参照して以下に示す。図5において、加工前を波線で示し、0.6μm加工後の段差の状態を、従来の場合には想像線で、本発明の場合を実線でそれぞれ示している。図から明らかなように、従来の場合には段差がある程度残ってしまうが、本発明によれば概ね平坦にすることができた。
【0027】
これは、発泡ウレタン材のポリシングパッドの場合にはパターン溝の底部との接触が多く、パターンの形状を保ったまま加工が進むのに対して、硬質のパッドの場合には加工面がパターンの溝底まで接触せず、上部から順次加工されるためであると考えられる。
【0028】
【発明の効果】
このように本発明によれば、ポリシングパッドの表面を硬質樹脂層にすると共に溝によりスラリーの分散を良くしたことから、特にセリア系スラリーによるポリシングにおいて従来の発泡ウレタン材を用いたものに対して2倍以上の高い加工速度が達成され、かつ表面粗さにおいても従来のポリシングパッドよりも小さくすることができ、半導体デバイスの表面の平坦化を向上し得る。また、シリカ系スラリーに対しても、従来に対して何ら劣ることなく研磨することができる。特に、硬質樹脂層がABS樹脂材を含むビニル系コポリマー材からなると良く、上記効果が顕著である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたポリシングパッドの要部拡大断面図。
【図2】本発明に基づく溝の曲線形状を示す平面図。
【図3】図2の矢印III線について見た要部拡大図。
【図4】図2の矢印IV−IV線について見た溝の要部拡大断面図。
【図5】TEGパターンデバイスの段差に対する平坦化加工を示す説明図。
【図6】化学的機械的研磨装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
1 ポリシングパッド
2 定盤
3 弾性層
4 硬質樹脂層
5 半導体ウエハ、5a 表面
6 スラリー
7 溝
8 ウエハホルダ
9 圧力機構
10 研磨剤供給機構
11 ポリシングパッド
12 パッキングパッド
Claims (4)
- 回転する定盤上にポリシングパッドを貼り付け、前記定盤の上方にて前記定盤の回転中心から偏倚して回転するホルダにより半導体デバイスをその表面を前記ポリシングパッドに対峙させた状態に保持すると共に、スラリーを前記ポリシングパッド上に供給して前記半導体デバイスの表面を研磨するようにした半導体デバイス装置であって、
前記ポリシングパッドが、前記定盤側に設けられた弾性層と、前記半導体デバイス側に設けられた硬質樹脂層とからなり、前記硬質樹脂層の表面に、前記スラリーを保持しえると共に前記定盤及び前記ホルダの回転により前記半導体デバイスの表面の全面に前記スラリーが分散するようにガイドするスラリーガイド溝を設け、
前記スラリーガイド溝が、前記ポリシングパッドの外周に始点及び終点を有しかつ前記ポリシングパッドの回転中心近傍に折り返し点を有する曲線状をなし、
前記スラリーガイド溝の始点及び終点は、前記ポリシングパッドの外周に向かうにつれて前記ポリシングパッドの半径方向外向きに拡開していることを特徴とする半導体デバイスの研磨装置。 - 前記スラリーガイド溝の断面形状は、前記ポリシングパッド表面側よりも前記ポリシングパッド内部側で拡幅された形状であることを特徴とする請求項1に記載の半導体デバイスの研磨装置。
- 回転する定盤上に貼り付けられ、スラリーが供給されて化学的機械的研磨を行うポリシングパッドにおいて、
外周に始点及び終点を有し、回転中心近傍に折り返し点を有する曲線状のスラリーガイド溝が形成され、前記スラリーガイド溝の始点及び終点は、外周に向かうにつれて半径方向外向きに拡開していることを特徴とするポリシングパッド。 - 前記スラリーガイド溝の断面形状は、前記ポリシングパッド表面側よりも前記ポリシングパッド内部側で拡幅された形状であることを特徴とする請求項3に記載のポリシングパッド。
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