JP3822946B2 - 二分子膜素子 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、二分子膜素子、例えば、生体の細胞膜に近似した膜構造でタンパク質等を保持するための二分子膜を備え、保持したタンパク質を機能させたり、またその機能を測定する際に利用可能な安定性に優れた二分子膜を有する素子の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、生体の細胞膜と同様な構成の二分子膜を作成することが提案されており、この二分子膜を用いて細胞膜中と同様にタンパク質を機能させてタンパク質機能の研究を行ったり、さらには、二分子膜とタンパク質の機能を利用したバイオ素子の作成等が期待されている。
【0003】
現在のところ報告されている人工の二分子膜を有する素子では、極性基と疎水基とより構成される脂質単分子を用いている。そして、水溶液中に、図11(a)に示されるように中央に穴が設けられたテフロン基板70が直立配置され、このテフロン基板70の穴部分に、図11(b)に示すように互いに極性基を外側に向け、疎水基を内側に向けた2層の脂質単分子膜72が形成され、これによって脂質二分子膜を構成している。
【0004】
ところが、このようにして作成された二分子膜は、互いの分子間力で吸着しているだけであるので、衝撃などにより二分子膜構造がすぐに破壊されてしまう。また、静置状態であっても数時間程度しか図示するような二分子膜構造を維持することができないという問題があった。
【0005】
そこで、より安定性の高い二分子膜の作成を目的として、二分子膜をサポート基板上に形成することが提案されている。図12(a)に示す例では、一方の脂質単分子の極性基を水溶液中に水平配置されたガラス等のサポート基板上に吸着させて単分子膜72を形成し、さらにこの単分子膜72の上に脂質単分子を吸着することによって二層目の単分子膜72を形成して二分子膜を得ている。
【0006】
また、他の例では、図12(b)のように金が形成された基板80の表面に、例えばステアリルメルカプタンを導入し、基板表面に金−S結合によりアルカンチオール単分子膜74を形成し、得られた単分子膜74上に、さらに脂質単分子膜72を吸着させて二分子膜を形成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようにサポート基板を利用して作成した二分子膜であっても、水溶液中に静置した状態で、その二分子膜構造を維持可能な時間は、数時間〜十数時間程度と低い。従って、得られた二分子膜中にタンパク質を入れる等の処理を行うことは困難であり、素子としての実用性に欠ける。このため、より安定性に優れた二分子膜を得ることが求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題を解消するためになされ、より長い時間、二分子膜構造を維持可能な素子を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る二分子膜素子は以下のような特徴を有する。
【0010】
まず、二分子膜素子は、基板上に二分子膜が形成された素子であって、この二分子膜をゲル層で直接又は間接的に覆うことを特徴とする。このようにゲル層で二分子膜を覆うことにより二分子膜の安定性が向上する。また、ゲル層を用いることにより、特に、ゲル層の材料としてハイドロゲルを用いることにより、二分子膜の周囲に水分を固定することが可能となり、例えば、二分子膜や、この膜に導入されたタンパク質を機能させる場合に必要とされる電解質水溶液を二分子膜の周囲に固定し、膜に電解質水分を供給することが可能となる。更に、ゲル層により、二分子膜表面での水系の動きが止められて膜の乱れが防止される。よって、この水分を固定するというゲル層の機能は、結果として、膜の安定化にも貢献する。
【0011】
また、上記構成に加え、さらに、二分子膜とゲル層との間に、高分子膜を形成することを特徴とする。このように高分子膜で二分子膜上を覆い、これを更にゲル層で覆う構成とすることにより、二分子膜の安定性が一段と向上する。高分子膜で覆うことによって膜の安定性が向上するのは、高分子側の単分子膜が極性基を備えるためであると考えられ、高分子膜と対向する単分子膜の極性基と高分子の極性基とが逆の極性を有する場合に、特に、高分子膜側の単分子膜の極性基が上記高分子膜の極性基と強く相互作用するためと考えられる。
【0012】
上述の二分子膜素子において、高分子膜の材料としては、アミノ酸、具体的にはポリリシンが適用されうる。ゲル層の材料としては、糖、具体的にはアガロースゲルが適用されうる。このような材料を高分子膜やゲル層に用いれば、より生体中に近い環境を二分子膜の周囲に作成することができ、例えば、タンパク質を二分子膜内に導入した場合において、そのタンパク質を十分に機能させることが可能となる。
【0013】
次に、上記基板上に形成された二分子膜素子を有する素子が、水系中で直立配置された上記基板の少なくとも上方側に設けられ、二分子膜の膜厚方向に延びて水系における二分子膜の上部を支持するための膜支持部を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記膜支持部は、二分子膜の膜厚以上の長さを有し、この膜支持部により、水系中で直立配置される前記二分子膜の浮き上がりを抑えることを特徴とする。更に、前記膜支持部は、少なくとも前記二分子膜との接触面が非極性材料によって形成されていることを特徴とする。そして、この膜支持部は、基板の上方及び下方の両端部に設けてもよい。
【0015】
また、この二分子膜の水系側が、ゲル層で覆われていることを特徴とする。なお、二分子膜と、ゲル層との間には高分子膜を形成することも可能である。上記ゲル層の材料としては、ハイドロゲルが適用され、また糖が適用される。また、上記高分子膜の材料としてはアミノ酸が用いられることを特徴とする。
【0016】
水系に直立配置される二分子膜素子においては、二分子膜のうち水系側の単分子層が浮力の影響を受けるため、膜上部の脂質単分子膜の脱離がおこり易い。そこで、上述のように膜上部に膜支持部を設けて膜分子の脱離および分子の水系中への流出を防止することにより、二分子膜の安定性をさらに高くすることが可能となる。
【0018】
上述のような二分子膜素子において、上記の素子において用いられている二分子膜は、好ましくは、基板表面の金属に極性基が結合したアルカンチオール単分子膜と、このアルカンチオール単分子膜に疎水基を向けて配置した脂質単分子膜と、により構成されていることを特徴とする。二分子膜の一方の分子膜を基板に結合させることにより、基板表面に極めて安定な第1層目の単分子膜が形成される。従って、この基板表面の1層目の単分子膜に、分子間力によって吸着する2層目の単分子膜(脂質単分子膜)の安定性も向上することとなり、結果として安定な二分子膜が得られることとなる。
【0019】
また、基板として、開口部を有する金属基板若しくは開口部を有し表面に金属が形成された基板や、表面に開口部を有する所定パターンの金属が形成された基板を用い、金属基板又は金属には、二分子膜の基板側の単分子膜と結合する金属材料を用い、二分子膜を上記基板の間隙領域にも形成する構成も適用される。この場合、開口部領域に形成された二分子膜の膜中にタンパク質を導入する。このように開口部を有する金属基板若しくは金属が形成された基板を利用して二分子膜を形成することにより、高い安定性を有する二分子膜が得られるとともに、開口部領域に形成された二分子膜中にタンパク質を後から入れることが容易となる。従って、上記構成を採用することにより、実際に二分子膜素子をバイオ素子として機能させることが容易になる。
【0020】
さらに、本発明の別の構成では、上述のような二分子膜を有する素子において、二分子膜と、ゲル層との間にリポソームが配置されていることを特徴とする。このように二分子膜上に形成されたリポソームをゲル層で覆うことによって、リポソームの置かれる環境をより生体内に近いものとすることができる。従って、リポソームの膜内にタンパク質を導入していれば、そのタンパク質をより安定にかつ正常に機能させることが可能となる。また、ゲル層によって二分子膜およびリポソームを固定できるので、安定性に優れ、長い寿命の二分子膜素子が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について図面を用いて説明する。
【0022】
実施形態1.
[二分子膜素子の構成]
本発明の二分子膜素子は、タンパク質等を保持するための二分子膜を備えている。この二分子膜は、有機分子からなる単分子膜の2層構造からなり、好ましくは脂質単分子膜と、アルキル鎖を有する有機分子からなる単分子膜との二層構造(いわゆる脂質二分子膜)が適用される。
【0023】
図1は、このような二分子膜を備えた素子の本実施形態に係る構成を示している。図1において、ガラス基板10の表面にはAu膜12が形成され、基板13が構成されている。Au膜12の表面には、金と、ステアリルメルカプタン[HS(CH2 )17CH3 ]のメルカプト(−SH)基とが、金−S結合し、この結合によってアルカンチオール[SCn H2n+1:本実施形態では、n=18、S(CH2 )17CH3 )]単分子膜16が形成されている。
【0024】
さらに、アルカンチオール単分子膜16の表面には、脂質、ここでは大豆リン脂質が、分子間力によって、その疎水基をアルカンチオール単分子膜16に向けて吸着しており、脂質単分子膜18が形成されている。そして、上記アルカンチオール単分子膜16と脂質単分子膜18により、生体の細胞膜に構成が類似する二分子膜(BLM:Bilayer Membrene)14が構成されている。
【0025】
本実施形態においては、上記BLM14の表面、すなわち脂質単分子膜18の極性基側に、ゲル状の膜(以下、単にゲル層という)22を形成している。また、脂質単分子膜18の表面とこのゲル層22との間には、極性基を有する高分子膜20が吸着形成されている。ここで、脂質単分子膜18の脂質としては、「正」又は「負」の極性基を備えた脂質や、非極性の脂質が使用可能である。例えば、脂質単分子膜18の脂質として上記極性基が「負」のリン脂質を用いた場合、脂質単分子膜18上に吸着形成されている高分子膜20は、正極性の極性基を有するアミノ酸、ここでは、以下のような化学式(1)[nの平均値=41]で示されるポリ−L−リシンが用いられている。
【0026】
【化1】
このポリ−L−リシンなどのように、脂質単分子膜18中の例えば大豆リン脂質に含まれるホスファチジルセリン(phosphatidylserine)などと反対の極性を有する高分子からなる高分子膜20を脂質単分子膜18の表面に設けると、互いの正負の極性基が相互作用し、また、高分子膜20のポリマー主鎖が脂質単分子膜18の極性基を包み込むような状態になることが考えられる。そして、このような機構によって、BLM14の表面をポリ−L−リシンを利用した高分子膜20で覆ってBLM14を固定する構成とすれば、BLM14の安定性、すなわちBLMの寿命を向上させることが可能となる。また、高分子膜20としてアミノ酸を用いることにより、二分子膜における環境をより生体中に近似した環境とすることが可能となる。なお、本実施形態において、高分子膜20の材料としてアミノ酸を用いているが、この場合高分子膜20には、アミノ酸以外の他の成分も含み得る。
【0027】
また、上記高分子膜20の表面に形成されたゲル層22としては、具体的には糖の一種であるアガロース[化学式:(C6 H10O5 ・C6 H8 O4 )n ]をゲル化したものが用いられている。但し、ゲル層の材料はアガロースには限られず、生体環境に近似し、かつ長時間安定してゲル状態を維持できる材料であればよい。また、生体環境に近似させ、タンパク質を機能させるという観点より、ゲルとしては上述のような含水性のハイドロゲルを用いることが好ましい。このように、高分子膜20表面にさらにゲル層22を設けることによってBLM14をさらに確実に固定でき、BLM14の寿命は、一層向上する。なお、BLM14の表面を直接ゲル層22で覆ってもよい。また本明細書においてゲル層22の材料として糖(アガロースゲル)若しくはハイドロゲルを開いているが、この場合に、ゲル層22には、これら以外の成分も含み得る。
【0028】
図1に示す二分子膜素子は、水溶液中において基板ごと直立配置される。このため、従来の構成、例えば図12(a)、(b)に示すように素子を水中に水平配置した場合と比較すると、浮力の影響により二層目の脂質単分子膜18だけ(図12(a)(b)では、単分子72が膜18に対応)が剥がれてしまうことが防止されている。
【0029】
また、BLM14を直接又は高分子膜20を介して間接的に覆う層として、ゲル層22を用いることにより、BLM14の周囲に膜系電解質溶液を固定することが可能となり、BLM14や、この膜に導入されたタンパク質を機能させる場合に必要とされる電解質水溶液をこれらに供給することが可能となる。さらに、このゲル層22が存在しているために、BLM14の表面では水溶液の動きが止められることから、膜の乱れが防止され、膜の寿命を長くすることができる。
【0030】
具体的には、図12(a)(b)に示すような従来の構成では、数時間〜十数時間程度の寿命の二分子膜しか得られなかったのに対し、図1に示すような二分子膜14は、20時間程度の寿命を有している。
【0031】
[素子の作成方法]
次に、図1に示す二分子膜素子の作成方法の一例について説明する。
【0032】
(1)脂質およびデカン溶液の調整
本実施形態においては、上述のように脂質としてリン脂質、より具他的にはホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)を47%含有する大豆リン脂質(製品名 Sigma type IV-S )を用いており、この大豆リン脂質をKagawa&Rackerの方法に従って精製する。
【0033】
具体的には、以下の手順によって実行可能である。
【0034】
i)まず、リン脂質(10mg)にアセトンを加え、常温で一昼夜放置する。
【0035】
ii)次に、アセトンを捨て、ロータリーエバポレータで約10分間、吸引乾燥する。
【0036】
iii)その後、ジエチルエーテルを少量加え、上記ii)と同様に乾燥処理を施す。
【0037】
iv)上記iii)の処理を数回繰り返し、乾燥後、さらにロータリーポンプで30分間吸引乾燥させる。
【0038】
v)最後に、n−デカン(1ml)加え、精製したリン脂質をデカン液中に溶解する。
【0039】
なお、ここでは脂質としてリン脂質が用いられているが、脂質であればこれには限られない。用いる脂質の種類は、最終的に二分子膜内に導入されるタンパク質との適合性や、その他素子のおかれる環境などによって適宜設定可能である。
【0040】
(2)基板13の作成
生体試料観察用に用いられているカバーガラスを洗浄し、このガラス上に、スパッタ法により、Au膜12を約100nm形成し、基板13を得る。但し、図1に示すガラス基板10はカバーガラスには限られない。なお、成膜されるAu膜12は、必要に応じて開口部を有する所望のパターン(例えば格子状または網目状)にかつ所望の厚さに形成すれば良い。また、Auに代えてAgも適用可能であり、さらに、基板13として金属基板(Au基板、Ag基板)を用いてもよい。但し、Agを金属基板又は基板表面の金属膜として利用する場合、Ag基板又はAg膜が正電位となると電解質溶液中に溶出してしまうため、外部からの電位制御は、Ag電位が正電位とならないように制御する必要がある。
【0041】
(3)二分子膜の形成
i)ステアリルメルカプタン(SM)のエタノール溶液(10mM)を作成し、この溶液中に、上記(2)によって作成した基板13を浸し、約30℃で一昼夜放置する。
【0042】
この放置期間中に、基板表面のAuとステアリルメルカプタンのメルカプト(−SH)基とが反応して金−S結合が起こる。そして、この金−S結合によって、図1のAu膜12表面にアルキル鎖を有する単分子膜、ここではSM単分子膜、すなわちアルカンチオール単分子膜16が形成される。
【0043】
ii)アルカンチオール単分子膜16が形成された基板を所定のセル内に取り付け、上記(1)において調整したリン脂質を含むデカン溶液(濃度:20mg/ml)を、アルカンチオール単分子膜16上に適当量(40μl)滴下し、2分間程度放置する。これにより、アルカンチオール単分子膜16上に図1に示すように脂質単分子膜18が吸着形成される。
【0044】
iii)脂質単分子膜18が形成後、容器内に高分子としてアミノ酸であるポリ−L−リシンを溶かした水溶液を入れる。これにより、ポリ−L−リシンの正極性基(−NH3 )がリン脂質単分子膜18の負極性基に吸着し、高分子膜20としてポリ−L−リシンが脂質単分子膜18を覆って、脂質単分子膜18を固定、保護する。
【0045】
(4)アガロースゲルの調整
i)低溶融点(30℃以下)のゲル(製品名 Agarose, Sigma VII)を数重量%になるように電解質溶液(膜系、すなわち二分子膜を置いて機能させる水溶液に用いているものと同じ)に分散させる。
【0046】
ii)この電解質溶液を加熱しながら撹拌し、一旦沸騰させ、30数℃まで冷やす。
【0047】
iii)高分子膜形成後の素子が置かれるセル内には膜系電解質溶液が入れられており、この膜系電解質溶液を予め30℃以上に加熱し、その後この膜系電解質と、上記ii)で得られたアガロース溶液とを置換する。
【0048】
iv)セル内を満たすアガロース溶液をスターラーを用いて撹拌しながら常温に戻す。このように常温に戻す過程でアガロースがゲル化する。よって、高分子膜20形成後、高分子膜20の表面にアガロースゲル層22が形成されることとなる。
【0049】
以上のような手順により、BLM14の表面に高分子膜20、およびさらにその表面にアガロースゲル層22が形成され、本実施形態の二分子膜素子が得られる。このようにして得られた素子を所定セルにセットし、上記膜系の電解質溶液、例えば[0.1M KCl溶液,pH7.2]中に配置し、二分子膜を機能させる。ここで、この素子は、BLM14の補強材として高分子膜およびアガロースゲル層を設けているので、上述のように従来の二分子膜と比較して寿命の長い二分子膜が得られている。
【0050】
ここで、ハイドロゲルであるアガロースゲルのアガロース濃度は、二分子膜を固定できる範囲において低濃度であることが好ましい。なぜなら、ゲル濃度が高くなるとゲル層内でゲルの網目が多くなって層が固くなり、外部からの衝撃に対する耐性は増加するが、含水率が少なくなり、タンパク質や、二分子膜素子の機能を発揮させるために必要な物質やイオンのゲル層内での動きが妨げられるためである。
【0051】
また、後述するように二分子膜内にタンパク質を導入したり二分子膜にタンパク質を膜内に有するリポソームを吸着させたりして、外部の物質をこれらのタンパク質によって検出する場合には、検出対象物質はゲル層22を通ってタンパク質に到達する必要がある。このような観点からは、ゲル層22は、二分子膜の固定機能が失われない範囲で薄くすることが好ましい。
【0052】
[水系に配置した二分子膜素子の構成]
次に、上記構造の二分子膜素子を用い、この素子を水系にて直立配置した際の二分子膜の寿命をさらに向上させる為の構成を説明する。以下、この水系中の素子構成について図1および図2を用いて説明する。なお、以後、図面の説明に関し、すでに説明した部材と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
[構成]
基板13の表面には、予め金−S結合によってアルカンチオール単分子膜16が形成されており、この基板13が、図2に示すように内部に液溜め34が形成されたテフロンよりなるセル30に取り付けられている。
【0054】
セル30の液溜め34内には、このセル30内に基板13を取り付けた状態において、基板のBLM形成面側に、BLM膜厚方向に向かって延びるように膜支持部32が突設されている。
【0055】
また、セル30の液溜め34には、図1に示した脂質単分子膜18、高分子膜20、アガロースゲル層22を形成するための各種溶液が注入可能となっている。そして、基板13をセル30に取り付けた状態で、上述の手順に沿って各種溶液をこの液溜め34に入れ、膜形成処理を施すことにより、図1に示すような構成の二分子膜素子が基板13の表面に形成される。さらに、素子形成後においては、図2(a)のように、液溜め34には、例えば[0.1M KCl,pH7.2]の電解質溶液40が注入される。
【0056】
次に、膜支持部32の機能について説明する。図2に示されるように、セル30に取り付けられて電解質溶液40に曝された二分子膜素子は、二分子膜14の上部に位置する脂質単分子膜18が浮力の影響を強く受けて、アルカンチオール単分子膜16から脱離しようとする。ここで、図2に示すような膜支持部32が、二分子膜14の上方に存在しなければ、脱離した脂質単分子膜18は、電解質溶液40中に流出してしまう。脂質分子が電解質溶液40中に流出すると、二分子膜14は、その二層目の配列状態が大きく乱れ、膜は急速に壊れてしまう。
【0057】
これに対し、二分子膜14の上方に膜支持部32を突設配置することにより、脂質分子の電解質溶液40中への流出を防止している。なお、実施形態1に示すように、BLM14の表面をさらにアミノ酸の高分子膜20およびアガロースゲル層22で覆ったとしても、これら高分子およびアガロースは、強固な化学結合によって二分子膜上に形成される訳ではない。つまり、単に分子間力や物理的吸着によってBLM14表面に吸着形成されているにすぎないので、これら高分子膜20とアガロースゲル層22を二分子膜で覆う構成により、脱離した脂質分子の溶液中への流出を完全に防止することは難しい。
【0058】
膜支持部32を設けて電解質溶液40中への流出を妨げれば、図2(a)に示すように、BLM14の上部にアルカンチオール単分子膜から脱離した脂質分子がこの膜支持部32の下側に溜まる。そして、BLM14から脱離する脂質分子と膜支持部32の下側に脂質溜まりから供給される脂質分子との間で平衡状態が達成され、これによりBLM14が安定化されると考えられる。
【0059】
膜支持部32のBLM14の膜厚方向への突出量は、膜支持機能を十分発揮させるためには、少なくともBLM14の膜厚(通常のBLM14の膜厚は、6〜7nm)以上とすることが必要である。
【0060】
膜支持部32の形状については、図2(a)に示すように逆L字形状として、BLM14の上方を囲むようにすれば、脂質分子の流出をより確実に防止できる。また、図2(b)のように基板13から遠ざかるにつれて下方に迫り出す形状でもよい。さらに、十分な突出量があれば、図2(c)に示すように単にBLM膜厚方向に延びる矩形形状であってよい。
【0061】
また、セル30およびこのセル30と一体的に形成された膜支持部32の材質は、テフロンとして以上説明しているが、テフロン材料には限られず、各種BLM形成溶液および電解質溶液に対して耐性を有する材料であれば良い。なお、BLM膜に影響を与えないという観点からはこの材料として、少なくともその表面が疎水性(非極性)であることが好ましい。これは、膜の上方において膜支持部表面が極性を示していると、脂質単分子の極性基が膜支持部に引きつけられて脂質単分子膜の配列が乱れる可能性があるからである。
【0062】
[特性評価結果]
次に、膜支持膜を設けた二分子膜素子の特性の評価結果について説明する。なお、この評価においては、金属膜を有する基板13の表面に形成したアルカンチオール単分子膜とこの単分子膜に吸着形成する脂質単分子膜とからなる二分子膜を用いている。
【0063】
また、さらにポリ−L−リシンを含む高分子膜を二分子膜上に形成した構成についても合わせて評価した。
【0064】
まず、上述の手順(1)〜(3)i)を用い、図3に示すように、基板13の金表面にアルカンチオール単分子膜16を形成する。
【0065】
次に、白金(Pt)線38を銀ペースト37を利用してAu膜12に接続する。銀ペースト37を乾燥させた後、エポキシ樹脂36によってPt線38とAu膜12との接続部をコートして補強する。その後エポキシ樹脂36が乾燥硬化するまで放置し、図3に示す試料を得る。
【0066】
試料形成後、これを図2に示すようにセル30にセットし、試料の基板13の表面、すなわちアルカンチオール単分子膜16表面に対して脂質溶液(デカン溶液)を30〜40μlを添加し、この状態で約2分間放置し、アルカンチオール単分子膜16と、溶液中の脂質分子とをなじませる。
【0067】
次に、セル30の液溜め34に電解質溶液40(0.1M KClバッファ液)を注入し、この状態において塩橋を介した銀・塩化銀電極と、基板13のAu膜12を利用した金電極との間の交流インピーダンスを所定時間ごとに測定する。測定結果は図5に示す。また、電解質溶液40を注入後(例えば、注入後10時間経過後)に、液溜め34にポリLリシン(PLL)溶液を注入して、交流インピーダンスを測定した結果は、図6に示す。
【0068】
(測定結果1:基板+アルカンチオール単分子膜+脂質単分子膜)
図4は、二分子膜素子の膜系の等価回路を示している。図4において、C1 はアルカンチオール単分子膜16の固有の容量、すなわち2層目の単分子膜が存在しない状態における容量である。また、C2 は2層目の脂質単分子膜の容量、Rmは二分子膜の膜抵抗である。この等価回路に示されるように二分子膜の1層目の単分子膜16の容量C1と2層目の脂質単分子膜の容量C2とは銀・塩化銀電極と金電極間との間に直列接続され、2つの容量の合成容量、つまり二分子膜容量Cmと、膜抵抗Rmとが、銀・塩化銀電極と金電極間に並列に接続されていることとなる。
【0069】
図5は、100Hzで測定した上記銀・塩化銀電極と金電極間における膜抵抗および膜容量の経時変化を示している。なお、図において、横軸は時間(hr)、左縦軸は膜抵抗Rm(×106Ω)、右縦軸は二分子膜容量Cm(×10-7F)を示している。測定開始(t=0)から(つまり、セル30に電解質溶液40を注入してから)、約40時間が経過するまでの期間t1は、アルカンチオール単分子膜16の表面に存在する脂質膜が徐々に薄膜化していく。そして、この期間t1においては、膜抵抗Rmおよび膜容量Cmのいずれもほぼ一定値ではあるが、例えば脂質デカン溶液の層が薄くなって二分子膜の状態へと近づくため、膜容量Cmが多少上昇する。
【0070】
40〜50時間の期間t2においては、二分子膜状態の領域が増加することにより膜容量Cmは急激に上昇する。
【0071】
ここで、通常の二分子膜の単位面積当たりの各値:特性膜容量[Cm=500nF/cm2 ]と、金電極面積:0.78cm2 を用い、金電極全体に二分子膜が形成されていると仮定して膜容量を算出すると、膜容量Cm=390nFとなる。なお、膜構造によって異なるが、二分子膜の特性膜比抵抗は、例えばRm=200MΩ*cm2 、膜抵抗Rmの値は、例えばRm=256MΩである。
【0072】
上記期間t2の膜容量は最大値でCm=100nFである。また、膜抵抗Rmは、例えばRm=0.1MΩである。従って、上記算出結果とこの膜容量を比較すると、電極面積の約25%が二分子膜となっていることが推測できる。なお、二分子膜化していないところは、二分子膜に比べてその膜厚が非常に大きいと考えられるため、その部分における容量は無視することができる。
【0073】
また、図5において50時間を経過したところで、膜容量Cmは小さくなる。これは、BLMの二層目である脂質単分子膜が剥がれて表面にアルカンチオール単分子膜が露出するためであると考えられる。現実には、アルカンチオール単分子膜の膜容量C1が脂質単分子膜の存在時に比較して5倍程度であるので、2層目の単分子膜が剥離すると、膜容量Cmが上昇することとなる。しかし、図5に示す測定における設定周波数(100Hz)では、実際のコンデンサが動作しないのでこの期間t3においては抵抗成分が減少し、本測定装置における検出電流が装置の測定レンジ外となり、事実上測定不能になるため膜容量Cm値が低下する。
【0074】
このように、基板に金−S結合を利用したアルカンチオール単分子膜と、脂質単分子膜よりなる二分子膜を所定の水系中に直立配置した場合、膜支持部を設けることによってBLMの寿命を20〜40時間程度にすることが可能となる。
【0075】
(測定結果2:基板+アルカンチオール単分子膜+脂質単分子膜+PLL膜)
図6は、図5の系内に、さらにPLL溶液を注入した場合における膜容量の経時変化を示している。なお、測定条件は、図5の場合と同様であり、図6においても、100Hzで測定した上記銀・塩化銀電極と金電極間における膜容量を表している。図において、横軸は時間(hr)、縦軸は二分子膜容量Cm(×10-8F)を示している。
【0076】
図6によると、450時間程度経過するまでの期間は膜容量Cmは安定しており、この期間、二分子膜は、高分子膜に覆われてその二分子膜状態を維持していることがわかる。また、450時間を経過すると、膜容量Cmに上昇がみられる。膜容量Cmが上昇するのは、図5の場合と同様に、チオール単分子膜16の表面上に存在する脂質膜が薄膜化して二分子膜状態の領域が増加するためである。そして、その後、脂質単分子膜の剥離が起こり、図5と同様に現実の膜容量Cmが増大することにより、設定周波数100Hzの条件下では、抵抗成分が小さくなり検出電流が測定レンジを超えるため、図6に示すように膜容量Cmが低下する。
【0077】
以上のことから、基板に金−S結合を利用したアルカンチオール単分子膜と、脂質単分子膜よりなる二分子膜を所定の水系中に直立配置した場合、膜支持部を設け、更に高分子膜を設けることにより、BLMの寿命は更に長くなり、図6における条件においては、450時間程度にすることが可能となる。
【0078】
(二分子膜の寿命の比較例)
上述のような測定を二分子膜の構成を代えてそれぞれ実行したところ、各二分子膜の寿命は次表1のようになった。
【0079】
【表1】
表1において、素子構成(1)は、図2のような膜支持部32を設けず、SM(ステアリルメルカプタン)の単分子膜と脂質単分子膜より形成されたBLMを用い、BLM表面を高分子(PLL)膜、アガロースゲル層で覆うという構成である。そしてこの構成(1)の場合、BLMの寿命は、電気的特性の安定な期間で判断すると、約20時間となっている。これにより、従来のSMの単分子膜と脂質単分子膜のみによってBLMを構成した場合における膜の寿命(長くて十数時間程度)に比較すると、ゲル層を有することにより安定性の高いBLMを有する素子が得られることが明らかである。
【0080】
次に、表1の素子構成(2)〜(4)は、膜支持部を設けた場合の構成である。具体的には構成(2)は、SMの単分子膜と脂質単分子膜とから構成されたBLM、構成(3)は、構成(2)と同様のBLMの表面にPLL膜を形成したもの、構成(4)は、構成(2)と同様のBLMに、PLL膜およびアガロースゲル層を形成した構成である。但し、構成(4)は実際には後述する図10に示すようにPLL膜とゲル層との間にリポソームが配置された構成となっている。これら、構成(2)〜(4)に示すように、膜支持部を設けた場合には、素子構成(2)〜(4)のいずれにおいても、その寿命は、それぞれ(2)20〜40時間、(3)百数十〜数百時間、(4)一ケ月以上、ときわめて長くなっている。従って、水系中において、膜支持部を設けることにより、BLMの安定性が飛躍的に向上することが明らかである。
【0081】
表に示されるように、ゲル層を設けることにより、特に素子構成(4)にあっては、一ケ月以上の寿命を有するBLMが得られており、二分子膜素子として十分な安定性が得られている。即ち、ゲル層により、BLM中にタンパク質を導入して、タンパク質機能を発揮するに必要な安定性が得られている。
【0082】
また、素子構成(2)、(3)、(4)の比較からも明らかなように、ゲル層を設けることにより、素子の寿命は著しく向上している。
【0083】
実施形態2.
本実施形態では、二分子膜を形成する基板を開口部を有する例えば格子状または網目状の構成とし、膜安定性を高めるために、膜支持部を設ける。図7は、このような基板を用いて作成した二分子膜素子の構成例を示している。また、図8(a),(b)は、図7に示す素子において二分子膜中にタンパク質を導入した場合の構成を示しており、具体的には図8(a)は、二分子膜素子の平面の模式的な構造を示し、図8(b)は、この二分子膜素子の断面を示している。なお、図7及び図8に示す基板の厚さは、現実には図示するものより厚く、また基板に形成される開口部の形状は、図示するような形状には限られない。
【0084】
本実施形態2の例では、基板として格子状の金基板50を用いており、図7に示すように、金基板50の表面に、金−S結合によってアルカンチオール単分子膜16が形成されている。また、アルカンチオール単分子膜16の表面にはこれを取り囲むように、膜16に疎水基を向けて脂質(例えばリン脂質)単分子膜18が吸着し、アルカンチオール単分子膜16と脂質単分子膜18よりなる二分子膜が形成されている。
【0085】
また、金基板50の間隙部分52においては、脂質単分子膜18が互いに疎水基を内側に向き合って二分子膜を構成している。そして、脂質単分子膜18の表面、すなわち極性基側には、上述の実施形態と同様に高分子(PLL)膜20、さらにアガロースゲル層22が形成されている。
【0086】
図7に示すように、高分子膜20及びゲル層22によって二分子膜を固定することにより上述のように膜の安定化を図ることができる。更に、二分子膜14の表面側に設けられたゲル層22が、二分子膜14に導入されたタンパク質を機能させる場合に必要とされる電解質水溶液を二分子膜14及びタンパク質54の周囲に固定しつつ、これらに電解質水分を供給することが可能となる。更に、ゲル層22が、二分子膜表面での水系の動きを止めることから膜の乱れを防止することができ、より長い期間、二分子膜構造を維持し、またタンパク質54が機能し得る状態を維持する。
【0087】
金基板50の表面に強固な金−S結合を利用してアルカンチオール単分子膜16を形成すると、金基板50の全面にアルカンチオール単分子膜16が形成されることとなり、アルカンチオール単分子膜16の形成領域に、後からこの単分子膜16を押し退けてタンパク質を導入する余裕が確保しずらい。そこで、基板に開口部を設け、その基板を用いて二分子膜を形成することにより、基板の開口部である間隙部分52の二分子膜は、基板表面に形成された二分子膜の2層目の脂質単分子が疎水基が膜の内側を向くように互いに向かい合った脂質二分子膜となる。このため、形成された二分子膜内に後からタンパク質を導入する際、この間隙部分52における二分子膜にタンパク質を導入することが容易となる。
【0088】
また、これら図8(a)、(b)に示されるように、二分子膜14にタンパク質54を導入する場合、二分子膜14を形成後、先に間隙部分52にタンパク質54を導入する。そして、その後、高分子膜20およびアガロースゲル層22によって二分子膜14およびタンパク質54の表面を覆って二分子膜14及び導入されたタンパク質54を膜の両側から固定する。
【0089】
なお、二分子膜素子は、図2に示すような水系中に直立配置されるため、水系中にて、脂質単分子膜18の浮き上がりを防止するための図2のような膜支持部32を膜上方に設けることにより、一段と素子の寿命を延ばすことが可能となる。
【0090】
また、図7及び図8では金属基板50を用いているが、これには限られず、同様な形状の基板、例えばガラス基板の表面に金属を形成したものを利用してもよい。
【0091】
さらに、上述のように格子状の基板50を用いずに、例えば開口部のない平板状のガラス基板上に、図8(a)のような開口部を有する形状に金属材料をパターニングして二分子膜素子用の基板としてもよい。図9の素子では、このような基板13を利用しており、この基板13上に二分子膜14を作成している。この場合、金属材料は1層目の単分子16と結合する材料(例えばAu、Ag)を用いており、図示されるように金属材料(Au膜12)の存在しない間隙領域には、金−S結合によるアルカンチオール単分子膜16が形成されないこととなる。従って、この領域にタンパク質54を導入することが容易となる。
【0092】
実施形態3.
次に、実施形態1に示す二分子膜素子の他の構成例について図10を用いて説明する。
【0093】
図10において、少なくとも表面に金膜が形成された基板13上にアルカンチオール単分子膜および脂質単分子膜より構成された二分子膜14が形成されている(但し、基板表面の金属膜は図示せず)。本実施形態では、二分子膜14の表面に実施形態1と同様にアミノ酸の高分子(PLL)膜20が設けられ、さらにこの高分子膜20の表面に、タンパク質54を膜内に有するリポソーム60が吸着されている。リポソーム60は、図示されるようにリン脂質単分子膜58の二分子膜構造であり、その外側表面には、リン脂質単分子膜58の極性基(負極性基)が位置している。従って、この脂質単分子膜58の極性基が、高分子であるPLLの正極性基に引きつけられることにより、高分子膜20の表面にリポソームが吸着形成される。また、高分子膜20及びリポソームを覆うようにさらにアガロースゲル層22を形成し、二分子膜14および表面のリポソーム60を固定すれば、素子の安定性を高めることができる。なお、BLM14の二層目として、「正」の極性基を有する脂質を用いて単分子膜を形成すれば、必ずしも、BLM14とリポソームとの間に高分子膜20を介在させる必要はない。そして、このような場合において、高分子膜は、リポソームとアガロースゲル層22との間に形成してもよい。
【0094】
以上のように、基板上に作成した二分子膜14および高分子膜20を利用してその上にリポソームを形成することにより、リポソーム60の環境を生体内に近似したものとすることができ、リポソーム60の安定性を高め、またタンパク質54をより正常かつ安定的に機能させることが可能となる。なお、図10に示す二分子膜素子は水系中におかれることから、実施形態1と同様に膜の上方に膜支持部を設けることにより、一段と膜の安定性を高めることが可能となる。
【0095】
以上説明した各実施形態において、二分子膜(リポソームを含む)に導入されるタンパク質は、用途に応じて選択可能であり、また、基板、二分子膜、高分子膜、ゲル層を構成する材料としては、用いられるタンパク質との適合性および素子が置かれる環境に応じて、適切なものを選択することが好ましい。
【0096】
また、タンパク質として様々な刺激に応じて変化をするものを膜中に導入し、このタンパク質を機能させれば、本発明の二分子膜素子を光センサ、臭いセンサなどの様々なセンサなどに利用することが可能となる。
【0097】
更に、例えば図9の素子のにおいて二分子膜のサポート基板として、図8(a)のマトリクスパターン(50)のように所望のパターンに形成した金属材料(Au膜12)を電極として用いることにより、膜内の特定位置のタンパク質を機能させたり、タンパク質を機能させることによって発生する電気特性の変化などを検出することが可能となる。具体的には、例えば、高度好塩菌などに含まれる光感応性タンパク質などを用いて二分子膜素子を構成し、これを光センサなどに用いた場合、基板上の上記金属を配線として利用することができる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の各二分子膜素子によれば、ゲル層、又はゲル層と高分子膜との組合せ、もしくは膜支持部又は膜支持部とゲル層などとの組合せ等により、形成された二分子膜の安定性を高めることができ、素子としての実用性を格段に向上させることが可能となる。従って、素子にタンパク質を導入し、これを用いてタンパク質機能の研究もしくはタンパク質機能を利用した素子の作成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図2】 本発明の実施形態1に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図3】 本発明の二分子膜素子の特性評価に用いた試料の構成を示す図である。
【図4】 本発明の二分子膜素子の二分子膜の等価回路を示す図である。
【図5】 図3に示す試料を用いて測定した膜抵抗と膜容量の経時変化を示す図である。
【図6】 図3に示す試料を用いセル内に更にPLL溶液を添加した場合の膜容量の経時変化を示す図である。
【図7】 本発明の実施形態2に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図8】 図7に示す二分子膜素子にタンパク質を導入した状態を示す図である。
【図9】 本発明の実施形態2の他の構成例を示す図である。
【図10】 本発明の実施形態3に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図11】 従来の二分子膜素子の構成を示す図である。
【図12】 図11とは別の従来の二分子膜素子の構成を示す図である。
【符号の説明】
10 ガラス基板、12 Au膜、13 基板、14 二分子膜(BLM)、16 アルカンチオール単分子膜、18,58 脂質単分子膜、20 高分子膜、22 ゲル層、30 セル、32 膜支持部、34 液溜め、39 カバーガラス、50 金基板、52 間隙部分、54 タンパク質、60 リポソーム。
【発明の属する技術分野】
本発明は、二分子膜素子、例えば、生体の細胞膜に近似した膜構造でタンパク質等を保持するための二分子膜を備え、保持したタンパク質を機能させたり、またその機能を測定する際に利用可能な安定性に優れた二分子膜を有する素子の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、生体の細胞膜と同様な構成の二分子膜を作成することが提案されており、この二分子膜を用いて細胞膜中と同様にタンパク質を機能させてタンパク質機能の研究を行ったり、さらには、二分子膜とタンパク質の機能を利用したバイオ素子の作成等が期待されている。
【0003】
現在のところ報告されている人工の二分子膜を有する素子では、極性基と疎水基とより構成される脂質単分子を用いている。そして、水溶液中に、図11(a)に示されるように中央に穴が設けられたテフロン基板70が直立配置され、このテフロン基板70の穴部分に、図11(b)に示すように互いに極性基を外側に向け、疎水基を内側に向けた2層の脂質単分子膜72が形成され、これによって脂質二分子膜を構成している。
【0004】
ところが、このようにして作成された二分子膜は、互いの分子間力で吸着しているだけであるので、衝撃などにより二分子膜構造がすぐに破壊されてしまう。また、静置状態であっても数時間程度しか図示するような二分子膜構造を維持することができないという問題があった。
【0005】
そこで、より安定性の高い二分子膜の作成を目的として、二分子膜をサポート基板上に形成することが提案されている。図12(a)に示す例では、一方の脂質単分子の極性基を水溶液中に水平配置されたガラス等のサポート基板上に吸着させて単分子膜72を形成し、さらにこの単分子膜72の上に脂質単分子を吸着することによって二層目の単分子膜72を形成して二分子膜を得ている。
【0006】
また、他の例では、図12(b)のように金が形成された基板80の表面に、例えばステアリルメルカプタンを導入し、基板表面に金−S結合によりアルカンチオール単分子膜74を形成し、得られた単分子膜74上に、さらに脂質単分子膜72を吸着させて二分子膜を形成している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようにサポート基板を利用して作成した二分子膜であっても、水溶液中に静置した状態で、その二分子膜構造を維持可能な時間は、数時間〜十数時間程度と低い。従って、得られた二分子膜中にタンパク質を入れる等の処理を行うことは困難であり、素子としての実用性に欠ける。このため、より安定性に優れた二分子膜を得ることが求められていた。
【0008】
本発明は、上記課題を解消するためになされ、より長い時間、二分子膜構造を維持可能な素子を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る二分子膜素子は以下のような特徴を有する。
【0010】
まず、二分子膜素子は、基板上に二分子膜が形成された素子であって、この二分子膜をゲル層で直接又は間接的に覆うことを特徴とする。このようにゲル層で二分子膜を覆うことにより二分子膜の安定性が向上する。また、ゲル層を用いることにより、特に、ゲル層の材料としてハイドロゲルを用いることにより、二分子膜の周囲に水分を固定することが可能となり、例えば、二分子膜や、この膜に導入されたタンパク質を機能させる場合に必要とされる電解質水溶液を二分子膜の周囲に固定し、膜に電解質水分を供給することが可能となる。更に、ゲル層により、二分子膜表面での水系の動きが止められて膜の乱れが防止される。よって、この水分を固定するというゲル層の機能は、結果として、膜の安定化にも貢献する。
【0011】
また、上記構成に加え、さらに、二分子膜とゲル層との間に、高分子膜を形成することを特徴とする。このように高分子膜で二分子膜上を覆い、これを更にゲル層で覆う構成とすることにより、二分子膜の安定性が一段と向上する。高分子膜で覆うことによって膜の安定性が向上するのは、高分子側の単分子膜が極性基を備えるためであると考えられ、高分子膜と対向する単分子膜の極性基と高分子の極性基とが逆の極性を有する場合に、特に、高分子膜側の単分子膜の極性基が上記高分子膜の極性基と強く相互作用するためと考えられる。
【0012】
上述の二分子膜素子において、高分子膜の材料としては、アミノ酸、具体的にはポリリシンが適用されうる。ゲル層の材料としては、糖、具体的にはアガロースゲルが適用されうる。このような材料を高分子膜やゲル層に用いれば、より生体中に近い環境を二分子膜の周囲に作成することができ、例えば、タンパク質を二分子膜内に導入した場合において、そのタンパク質を十分に機能させることが可能となる。
【0013】
次に、上記基板上に形成された二分子膜素子を有する素子が、水系中で直立配置された上記基板の少なくとも上方側に設けられ、二分子膜の膜厚方向に延びて水系における二分子膜の上部を支持するための膜支持部を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記膜支持部は、二分子膜の膜厚以上の長さを有し、この膜支持部により、水系中で直立配置される前記二分子膜の浮き上がりを抑えることを特徴とする。更に、前記膜支持部は、少なくとも前記二分子膜との接触面が非極性材料によって形成されていることを特徴とする。そして、この膜支持部は、基板の上方及び下方の両端部に設けてもよい。
【0015】
また、この二分子膜の水系側が、ゲル層で覆われていることを特徴とする。なお、二分子膜と、ゲル層との間には高分子膜を形成することも可能である。上記ゲル層の材料としては、ハイドロゲルが適用され、また糖が適用される。また、上記高分子膜の材料としてはアミノ酸が用いられることを特徴とする。
【0016】
水系に直立配置される二分子膜素子においては、二分子膜のうち水系側の単分子層が浮力の影響を受けるため、膜上部の脂質単分子膜の脱離がおこり易い。そこで、上述のように膜上部に膜支持部を設けて膜分子の脱離および分子の水系中への流出を防止することにより、二分子膜の安定性をさらに高くすることが可能となる。
【0018】
上述のような二分子膜素子において、上記の素子において用いられている二分子膜は、好ましくは、基板表面の金属に極性基が結合したアルカンチオール単分子膜と、このアルカンチオール単分子膜に疎水基を向けて配置した脂質単分子膜と、により構成されていることを特徴とする。二分子膜の一方の分子膜を基板に結合させることにより、基板表面に極めて安定な第1層目の単分子膜が形成される。従って、この基板表面の1層目の単分子膜に、分子間力によって吸着する2層目の単分子膜(脂質単分子膜)の安定性も向上することとなり、結果として安定な二分子膜が得られることとなる。
【0019】
また、基板として、開口部を有する金属基板若しくは開口部を有し表面に金属が形成された基板や、表面に開口部を有する所定パターンの金属が形成された基板を用い、金属基板又は金属には、二分子膜の基板側の単分子膜と結合する金属材料を用い、二分子膜を上記基板の間隙領域にも形成する構成も適用される。この場合、開口部領域に形成された二分子膜の膜中にタンパク質を導入する。このように開口部を有する金属基板若しくは金属が形成された基板を利用して二分子膜を形成することにより、高い安定性を有する二分子膜が得られるとともに、開口部領域に形成された二分子膜中にタンパク質を後から入れることが容易となる。従って、上記構成を採用することにより、実際に二分子膜素子をバイオ素子として機能させることが容易になる。
【0020】
さらに、本発明の別の構成では、上述のような二分子膜を有する素子において、二分子膜と、ゲル層との間にリポソームが配置されていることを特徴とする。このように二分子膜上に形成されたリポソームをゲル層で覆うことによって、リポソームの置かれる環境をより生体内に近いものとすることができる。従って、リポソームの膜内にタンパク質を導入していれば、そのタンパク質をより安定にかつ正常に機能させることが可能となる。また、ゲル層によって二分子膜およびリポソームを固定できるので、安定性に優れ、長い寿命の二分子膜素子が得られる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について図面を用いて説明する。
【0022】
実施形態1.
[二分子膜素子の構成]
本発明の二分子膜素子は、タンパク質等を保持するための二分子膜を備えている。この二分子膜は、有機分子からなる単分子膜の2層構造からなり、好ましくは脂質単分子膜と、アルキル鎖を有する有機分子からなる単分子膜との二層構造(いわゆる脂質二分子膜)が適用される。
【0023】
図1は、このような二分子膜を備えた素子の本実施形態に係る構成を示している。図1において、ガラス基板10の表面にはAu膜12が形成され、基板13が構成されている。Au膜12の表面には、金と、ステアリルメルカプタン[HS(CH2 )17CH3 ]のメルカプト(−SH)基とが、金−S結合し、この結合によってアルカンチオール[SCn H2n+1:本実施形態では、n=18、S(CH2 )17CH3 )]単分子膜16が形成されている。
【0024】
さらに、アルカンチオール単分子膜16の表面には、脂質、ここでは大豆リン脂質が、分子間力によって、その疎水基をアルカンチオール単分子膜16に向けて吸着しており、脂質単分子膜18が形成されている。そして、上記アルカンチオール単分子膜16と脂質単分子膜18により、生体の細胞膜に構成が類似する二分子膜(BLM:Bilayer Membrene)14が構成されている。
【0025】
本実施形態においては、上記BLM14の表面、すなわち脂質単分子膜18の極性基側に、ゲル状の膜(以下、単にゲル層という)22を形成している。また、脂質単分子膜18の表面とこのゲル層22との間には、極性基を有する高分子膜20が吸着形成されている。ここで、脂質単分子膜18の脂質としては、「正」又は「負」の極性基を備えた脂質や、非極性の脂質が使用可能である。例えば、脂質単分子膜18の脂質として上記極性基が「負」のリン脂質を用いた場合、脂質単分子膜18上に吸着形成されている高分子膜20は、正極性の極性基を有するアミノ酸、ここでは、以下のような化学式(1)[nの平均値=41]で示されるポリ−L−リシンが用いられている。
【0026】
【化1】
このポリ−L−リシンなどのように、脂質単分子膜18中の例えば大豆リン脂質に含まれるホスファチジルセリン(phosphatidylserine)などと反対の極性を有する高分子からなる高分子膜20を脂質単分子膜18の表面に設けると、互いの正負の極性基が相互作用し、また、高分子膜20のポリマー主鎖が脂質単分子膜18の極性基を包み込むような状態になることが考えられる。そして、このような機構によって、BLM14の表面をポリ−L−リシンを利用した高分子膜20で覆ってBLM14を固定する構成とすれば、BLM14の安定性、すなわちBLMの寿命を向上させることが可能となる。また、高分子膜20としてアミノ酸を用いることにより、二分子膜における環境をより生体中に近似した環境とすることが可能となる。なお、本実施形態において、高分子膜20の材料としてアミノ酸を用いているが、この場合高分子膜20には、アミノ酸以外の他の成分も含み得る。
【0027】
また、上記高分子膜20の表面に形成されたゲル層22としては、具体的には糖の一種であるアガロース[化学式:(C6 H10O5 ・C6 H8 O4 )n ]をゲル化したものが用いられている。但し、ゲル層の材料はアガロースには限られず、生体環境に近似し、かつ長時間安定してゲル状態を維持できる材料であればよい。また、生体環境に近似させ、タンパク質を機能させるという観点より、ゲルとしては上述のような含水性のハイドロゲルを用いることが好ましい。このように、高分子膜20表面にさらにゲル層22を設けることによってBLM14をさらに確実に固定でき、BLM14の寿命は、一層向上する。なお、BLM14の表面を直接ゲル層22で覆ってもよい。また本明細書においてゲル層22の材料として糖(アガロースゲル)若しくはハイドロゲルを開いているが、この場合に、ゲル層22には、これら以外の成分も含み得る。
【0028】
図1に示す二分子膜素子は、水溶液中において基板ごと直立配置される。このため、従来の構成、例えば図12(a)、(b)に示すように素子を水中に水平配置した場合と比較すると、浮力の影響により二層目の脂質単分子膜18だけ(図12(a)(b)では、単分子72が膜18に対応)が剥がれてしまうことが防止されている。
【0029】
また、BLM14を直接又は高分子膜20を介して間接的に覆う層として、ゲル層22を用いることにより、BLM14の周囲に膜系電解質溶液を固定することが可能となり、BLM14や、この膜に導入されたタンパク質を機能させる場合に必要とされる電解質水溶液をこれらに供給することが可能となる。さらに、このゲル層22が存在しているために、BLM14の表面では水溶液の動きが止められることから、膜の乱れが防止され、膜の寿命を長くすることができる。
【0030】
具体的には、図12(a)(b)に示すような従来の構成では、数時間〜十数時間程度の寿命の二分子膜しか得られなかったのに対し、図1に示すような二分子膜14は、20時間程度の寿命を有している。
【0031】
[素子の作成方法]
次に、図1に示す二分子膜素子の作成方法の一例について説明する。
【0032】
(1)脂質およびデカン溶液の調整
本実施形態においては、上述のように脂質としてリン脂質、より具他的にはホスファチジルコリン(phosphatidylcholine)を47%含有する大豆リン脂質(製品名 Sigma type IV-S )を用いており、この大豆リン脂質をKagawa&Rackerの方法に従って精製する。
【0033】
具体的には、以下の手順によって実行可能である。
【0034】
i)まず、リン脂質(10mg)にアセトンを加え、常温で一昼夜放置する。
【0035】
ii)次に、アセトンを捨て、ロータリーエバポレータで約10分間、吸引乾燥する。
【0036】
iii)その後、ジエチルエーテルを少量加え、上記ii)と同様に乾燥処理を施す。
【0037】
iv)上記iii)の処理を数回繰り返し、乾燥後、さらにロータリーポンプで30分間吸引乾燥させる。
【0038】
v)最後に、n−デカン(1ml)加え、精製したリン脂質をデカン液中に溶解する。
【0039】
なお、ここでは脂質としてリン脂質が用いられているが、脂質であればこれには限られない。用いる脂質の種類は、最終的に二分子膜内に導入されるタンパク質との適合性や、その他素子のおかれる環境などによって適宜設定可能である。
【0040】
(2)基板13の作成
生体試料観察用に用いられているカバーガラスを洗浄し、このガラス上に、スパッタ法により、Au膜12を約100nm形成し、基板13を得る。但し、図1に示すガラス基板10はカバーガラスには限られない。なお、成膜されるAu膜12は、必要に応じて開口部を有する所望のパターン(例えば格子状または網目状)にかつ所望の厚さに形成すれば良い。また、Auに代えてAgも適用可能であり、さらに、基板13として金属基板(Au基板、Ag基板)を用いてもよい。但し、Agを金属基板又は基板表面の金属膜として利用する場合、Ag基板又はAg膜が正電位となると電解質溶液中に溶出してしまうため、外部からの電位制御は、Ag電位が正電位とならないように制御する必要がある。
【0041】
(3)二分子膜の形成
i)ステアリルメルカプタン(SM)のエタノール溶液(10mM)を作成し、この溶液中に、上記(2)によって作成した基板13を浸し、約30℃で一昼夜放置する。
【0042】
この放置期間中に、基板表面のAuとステアリルメルカプタンのメルカプト(−SH)基とが反応して金−S結合が起こる。そして、この金−S結合によって、図1のAu膜12表面にアルキル鎖を有する単分子膜、ここではSM単分子膜、すなわちアルカンチオール単分子膜16が形成される。
【0043】
ii)アルカンチオール単分子膜16が形成された基板を所定のセル内に取り付け、上記(1)において調整したリン脂質を含むデカン溶液(濃度:20mg/ml)を、アルカンチオール単分子膜16上に適当量(40μl)滴下し、2分間程度放置する。これにより、アルカンチオール単分子膜16上に図1に示すように脂質単分子膜18が吸着形成される。
【0044】
iii)脂質単分子膜18が形成後、容器内に高分子としてアミノ酸であるポリ−L−リシンを溶かした水溶液を入れる。これにより、ポリ−L−リシンの正極性基(−NH3 )がリン脂質単分子膜18の負極性基に吸着し、高分子膜20としてポリ−L−リシンが脂質単分子膜18を覆って、脂質単分子膜18を固定、保護する。
【0045】
(4)アガロースゲルの調整
i)低溶融点(30℃以下)のゲル(製品名 Agarose, Sigma VII)を数重量%になるように電解質溶液(膜系、すなわち二分子膜を置いて機能させる水溶液に用いているものと同じ)に分散させる。
【0046】
ii)この電解質溶液を加熱しながら撹拌し、一旦沸騰させ、30数℃まで冷やす。
【0047】
iii)高分子膜形成後の素子が置かれるセル内には膜系電解質溶液が入れられており、この膜系電解質溶液を予め30℃以上に加熱し、その後この膜系電解質と、上記ii)で得られたアガロース溶液とを置換する。
【0048】
iv)セル内を満たすアガロース溶液をスターラーを用いて撹拌しながら常温に戻す。このように常温に戻す過程でアガロースがゲル化する。よって、高分子膜20形成後、高分子膜20の表面にアガロースゲル層22が形成されることとなる。
【0049】
以上のような手順により、BLM14の表面に高分子膜20、およびさらにその表面にアガロースゲル層22が形成され、本実施形態の二分子膜素子が得られる。このようにして得られた素子を所定セルにセットし、上記膜系の電解質溶液、例えば[0.1M KCl溶液,pH7.2]中に配置し、二分子膜を機能させる。ここで、この素子は、BLM14の補強材として高分子膜およびアガロースゲル層を設けているので、上述のように従来の二分子膜と比較して寿命の長い二分子膜が得られている。
【0050】
ここで、ハイドロゲルであるアガロースゲルのアガロース濃度は、二分子膜を固定できる範囲において低濃度であることが好ましい。なぜなら、ゲル濃度が高くなるとゲル層内でゲルの網目が多くなって層が固くなり、外部からの衝撃に対する耐性は増加するが、含水率が少なくなり、タンパク質や、二分子膜素子の機能を発揮させるために必要な物質やイオンのゲル層内での動きが妨げられるためである。
【0051】
また、後述するように二分子膜内にタンパク質を導入したり二分子膜にタンパク質を膜内に有するリポソームを吸着させたりして、外部の物質をこれらのタンパク質によって検出する場合には、検出対象物質はゲル層22を通ってタンパク質に到達する必要がある。このような観点からは、ゲル層22は、二分子膜の固定機能が失われない範囲で薄くすることが好ましい。
【0052】
[水系に配置した二分子膜素子の構成]
次に、上記構造の二分子膜素子を用い、この素子を水系にて直立配置した際の二分子膜の寿命をさらに向上させる為の構成を説明する。以下、この水系中の素子構成について図1および図2を用いて説明する。なお、以後、図面の説明に関し、すでに説明した部材と対応する部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0053】
[構成]
基板13の表面には、予め金−S結合によってアルカンチオール単分子膜16が形成されており、この基板13が、図2に示すように内部に液溜め34が形成されたテフロンよりなるセル30に取り付けられている。
【0054】
セル30の液溜め34内には、このセル30内に基板13を取り付けた状態において、基板のBLM形成面側に、BLM膜厚方向に向かって延びるように膜支持部32が突設されている。
【0055】
また、セル30の液溜め34には、図1に示した脂質単分子膜18、高分子膜20、アガロースゲル層22を形成するための各種溶液が注入可能となっている。そして、基板13をセル30に取り付けた状態で、上述の手順に沿って各種溶液をこの液溜め34に入れ、膜形成処理を施すことにより、図1に示すような構成の二分子膜素子が基板13の表面に形成される。さらに、素子形成後においては、図2(a)のように、液溜め34には、例えば[0.1M KCl,pH7.2]の電解質溶液40が注入される。
【0056】
次に、膜支持部32の機能について説明する。図2に示されるように、セル30に取り付けられて電解質溶液40に曝された二分子膜素子は、二分子膜14の上部に位置する脂質単分子膜18が浮力の影響を強く受けて、アルカンチオール単分子膜16から脱離しようとする。ここで、図2に示すような膜支持部32が、二分子膜14の上方に存在しなければ、脱離した脂質単分子膜18は、電解質溶液40中に流出してしまう。脂質分子が電解質溶液40中に流出すると、二分子膜14は、その二層目の配列状態が大きく乱れ、膜は急速に壊れてしまう。
【0057】
これに対し、二分子膜14の上方に膜支持部32を突設配置することにより、脂質分子の電解質溶液40中への流出を防止している。なお、実施形態1に示すように、BLM14の表面をさらにアミノ酸の高分子膜20およびアガロースゲル層22で覆ったとしても、これら高分子およびアガロースは、強固な化学結合によって二分子膜上に形成される訳ではない。つまり、単に分子間力や物理的吸着によってBLM14表面に吸着形成されているにすぎないので、これら高分子膜20とアガロースゲル層22を二分子膜で覆う構成により、脱離した脂質分子の溶液中への流出を完全に防止することは難しい。
【0058】
膜支持部32を設けて電解質溶液40中への流出を妨げれば、図2(a)に示すように、BLM14の上部にアルカンチオール単分子膜から脱離した脂質分子がこの膜支持部32の下側に溜まる。そして、BLM14から脱離する脂質分子と膜支持部32の下側に脂質溜まりから供給される脂質分子との間で平衡状態が達成され、これによりBLM14が安定化されると考えられる。
【0059】
膜支持部32のBLM14の膜厚方向への突出量は、膜支持機能を十分発揮させるためには、少なくともBLM14の膜厚(通常のBLM14の膜厚は、6〜7nm)以上とすることが必要である。
【0060】
膜支持部32の形状については、図2(a)に示すように逆L字形状として、BLM14の上方を囲むようにすれば、脂質分子の流出をより確実に防止できる。また、図2(b)のように基板13から遠ざかるにつれて下方に迫り出す形状でもよい。さらに、十分な突出量があれば、図2(c)に示すように単にBLM膜厚方向に延びる矩形形状であってよい。
【0061】
また、セル30およびこのセル30と一体的に形成された膜支持部32の材質は、テフロンとして以上説明しているが、テフロン材料には限られず、各種BLM形成溶液および電解質溶液に対して耐性を有する材料であれば良い。なお、BLM膜に影響を与えないという観点からはこの材料として、少なくともその表面が疎水性(非極性)であることが好ましい。これは、膜の上方において膜支持部表面が極性を示していると、脂質単分子の極性基が膜支持部に引きつけられて脂質単分子膜の配列が乱れる可能性があるからである。
【0062】
[特性評価結果]
次に、膜支持膜を設けた二分子膜素子の特性の評価結果について説明する。なお、この評価においては、金属膜を有する基板13の表面に形成したアルカンチオール単分子膜とこの単分子膜に吸着形成する脂質単分子膜とからなる二分子膜を用いている。
【0063】
また、さらにポリ−L−リシンを含む高分子膜を二分子膜上に形成した構成についても合わせて評価した。
【0064】
まず、上述の手順(1)〜(3)i)を用い、図3に示すように、基板13の金表面にアルカンチオール単分子膜16を形成する。
【0065】
次に、白金(Pt)線38を銀ペースト37を利用してAu膜12に接続する。銀ペースト37を乾燥させた後、エポキシ樹脂36によってPt線38とAu膜12との接続部をコートして補強する。その後エポキシ樹脂36が乾燥硬化するまで放置し、図3に示す試料を得る。
【0066】
試料形成後、これを図2に示すようにセル30にセットし、試料の基板13の表面、すなわちアルカンチオール単分子膜16表面に対して脂質溶液(デカン溶液)を30〜40μlを添加し、この状態で約2分間放置し、アルカンチオール単分子膜16と、溶液中の脂質分子とをなじませる。
【0067】
次に、セル30の液溜め34に電解質溶液40(0.1M KClバッファ液)を注入し、この状態において塩橋を介した銀・塩化銀電極と、基板13のAu膜12を利用した金電極との間の交流インピーダンスを所定時間ごとに測定する。測定結果は図5に示す。また、電解質溶液40を注入後(例えば、注入後10時間経過後)に、液溜め34にポリLリシン(PLL)溶液を注入して、交流インピーダンスを測定した結果は、図6に示す。
【0068】
(測定結果1:基板+アルカンチオール単分子膜+脂質単分子膜)
図4は、二分子膜素子の膜系の等価回路を示している。図4において、C1 はアルカンチオール単分子膜16の固有の容量、すなわち2層目の単分子膜が存在しない状態における容量である。また、C2 は2層目の脂質単分子膜の容量、Rmは二分子膜の膜抵抗である。この等価回路に示されるように二分子膜の1層目の単分子膜16の容量C1と2層目の脂質単分子膜の容量C2とは銀・塩化銀電極と金電極間との間に直列接続され、2つの容量の合成容量、つまり二分子膜容量Cmと、膜抵抗Rmとが、銀・塩化銀電極と金電極間に並列に接続されていることとなる。
【0069】
図5は、100Hzで測定した上記銀・塩化銀電極と金電極間における膜抵抗および膜容量の経時変化を示している。なお、図において、横軸は時間(hr)、左縦軸は膜抵抗Rm(×106Ω)、右縦軸は二分子膜容量Cm(×10-7F)を示している。測定開始(t=0)から(つまり、セル30に電解質溶液40を注入してから)、約40時間が経過するまでの期間t1は、アルカンチオール単分子膜16の表面に存在する脂質膜が徐々に薄膜化していく。そして、この期間t1においては、膜抵抗Rmおよび膜容量Cmのいずれもほぼ一定値ではあるが、例えば脂質デカン溶液の層が薄くなって二分子膜の状態へと近づくため、膜容量Cmが多少上昇する。
【0070】
40〜50時間の期間t2においては、二分子膜状態の領域が増加することにより膜容量Cmは急激に上昇する。
【0071】
ここで、通常の二分子膜の単位面積当たりの各値:特性膜容量[Cm=500nF/cm2 ]と、金電極面積:0.78cm2 を用い、金電極全体に二分子膜が形成されていると仮定して膜容量を算出すると、膜容量Cm=390nFとなる。なお、膜構造によって異なるが、二分子膜の特性膜比抵抗は、例えばRm=200MΩ*cm2 、膜抵抗Rmの値は、例えばRm=256MΩである。
【0072】
上記期間t2の膜容量は最大値でCm=100nFである。また、膜抵抗Rmは、例えばRm=0.1MΩである。従って、上記算出結果とこの膜容量を比較すると、電極面積の約25%が二分子膜となっていることが推測できる。なお、二分子膜化していないところは、二分子膜に比べてその膜厚が非常に大きいと考えられるため、その部分における容量は無視することができる。
【0073】
また、図5において50時間を経過したところで、膜容量Cmは小さくなる。これは、BLMの二層目である脂質単分子膜が剥がれて表面にアルカンチオール単分子膜が露出するためであると考えられる。現実には、アルカンチオール単分子膜の膜容量C1が脂質単分子膜の存在時に比較して5倍程度であるので、2層目の単分子膜が剥離すると、膜容量Cmが上昇することとなる。しかし、図5に示す測定における設定周波数(100Hz)では、実際のコンデンサが動作しないのでこの期間t3においては抵抗成分が減少し、本測定装置における検出電流が装置の測定レンジ外となり、事実上測定不能になるため膜容量Cm値が低下する。
【0074】
このように、基板に金−S結合を利用したアルカンチオール単分子膜と、脂質単分子膜よりなる二分子膜を所定の水系中に直立配置した場合、膜支持部を設けることによってBLMの寿命を20〜40時間程度にすることが可能となる。
【0075】
(測定結果2:基板+アルカンチオール単分子膜+脂質単分子膜+PLL膜)
図6は、図5の系内に、さらにPLL溶液を注入した場合における膜容量の経時変化を示している。なお、測定条件は、図5の場合と同様であり、図6においても、100Hzで測定した上記銀・塩化銀電極と金電極間における膜容量を表している。図において、横軸は時間(hr)、縦軸は二分子膜容量Cm(×10-8F)を示している。
【0076】
図6によると、450時間程度経過するまでの期間は膜容量Cmは安定しており、この期間、二分子膜は、高分子膜に覆われてその二分子膜状態を維持していることがわかる。また、450時間を経過すると、膜容量Cmに上昇がみられる。膜容量Cmが上昇するのは、図5の場合と同様に、チオール単分子膜16の表面上に存在する脂質膜が薄膜化して二分子膜状態の領域が増加するためである。そして、その後、脂質単分子膜の剥離が起こり、図5と同様に現実の膜容量Cmが増大することにより、設定周波数100Hzの条件下では、抵抗成分が小さくなり検出電流が測定レンジを超えるため、図6に示すように膜容量Cmが低下する。
【0077】
以上のことから、基板に金−S結合を利用したアルカンチオール単分子膜と、脂質単分子膜よりなる二分子膜を所定の水系中に直立配置した場合、膜支持部を設け、更に高分子膜を設けることにより、BLMの寿命は更に長くなり、図6における条件においては、450時間程度にすることが可能となる。
【0078】
(二分子膜の寿命の比較例)
上述のような測定を二分子膜の構成を代えてそれぞれ実行したところ、各二分子膜の寿命は次表1のようになった。
【0079】
【表1】
表1において、素子構成(1)は、図2のような膜支持部32を設けず、SM(ステアリルメルカプタン)の単分子膜と脂質単分子膜より形成されたBLMを用い、BLM表面を高分子(PLL)膜、アガロースゲル層で覆うという構成である。そしてこの構成(1)の場合、BLMの寿命は、電気的特性の安定な期間で判断すると、約20時間となっている。これにより、従来のSMの単分子膜と脂質単分子膜のみによってBLMを構成した場合における膜の寿命(長くて十数時間程度)に比較すると、ゲル層を有することにより安定性の高いBLMを有する素子が得られることが明らかである。
【0080】
次に、表1の素子構成(2)〜(4)は、膜支持部を設けた場合の構成である。具体的には構成(2)は、SMの単分子膜と脂質単分子膜とから構成されたBLM、構成(3)は、構成(2)と同様のBLMの表面にPLL膜を形成したもの、構成(4)は、構成(2)と同様のBLMに、PLL膜およびアガロースゲル層を形成した構成である。但し、構成(4)は実際には後述する図10に示すようにPLL膜とゲル層との間にリポソームが配置された構成となっている。これら、構成(2)〜(4)に示すように、膜支持部を設けた場合には、素子構成(2)〜(4)のいずれにおいても、その寿命は、それぞれ(2)20〜40時間、(3)百数十〜数百時間、(4)一ケ月以上、ときわめて長くなっている。従って、水系中において、膜支持部を設けることにより、BLMの安定性が飛躍的に向上することが明らかである。
【0081】
表に示されるように、ゲル層を設けることにより、特に素子構成(4)にあっては、一ケ月以上の寿命を有するBLMが得られており、二分子膜素子として十分な安定性が得られている。即ち、ゲル層により、BLM中にタンパク質を導入して、タンパク質機能を発揮するに必要な安定性が得られている。
【0082】
また、素子構成(2)、(3)、(4)の比較からも明らかなように、ゲル層を設けることにより、素子の寿命は著しく向上している。
【0083】
実施形態2.
本実施形態では、二分子膜を形成する基板を開口部を有する例えば格子状または網目状の構成とし、膜安定性を高めるために、膜支持部を設ける。図7は、このような基板を用いて作成した二分子膜素子の構成例を示している。また、図8(a),(b)は、図7に示す素子において二分子膜中にタンパク質を導入した場合の構成を示しており、具体的には図8(a)は、二分子膜素子の平面の模式的な構造を示し、図8(b)は、この二分子膜素子の断面を示している。なお、図7及び図8に示す基板の厚さは、現実には図示するものより厚く、また基板に形成される開口部の形状は、図示するような形状には限られない。
【0084】
本実施形態2の例では、基板として格子状の金基板50を用いており、図7に示すように、金基板50の表面に、金−S結合によってアルカンチオール単分子膜16が形成されている。また、アルカンチオール単分子膜16の表面にはこれを取り囲むように、膜16に疎水基を向けて脂質(例えばリン脂質)単分子膜18が吸着し、アルカンチオール単分子膜16と脂質単分子膜18よりなる二分子膜が形成されている。
【0085】
また、金基板50の間隙部分52においては、脂質単分子膜18が互いに疎水基を内側に向き合って二分子膜を構成している。そして、脂質単分子膜18の表面、すなわち極性基側には、上述の実施形態と同様に高分子(PLL)膜20、さらにアガロースゲル層22が形成されている。
【0086】
図7に示すように、高分子膜20及びゲル層22によって二分子膜を固定することにより上述のように膜の安定化を図ることができる。更に、二分子膜14の表面側に設けられたゲル層22が、二分子膜14に導入されたタンパク質を機能させる場合に必要とされる電解質水溶液を二分子膜14及びタンパク質54の周囲に固定しつつ、これらに電解質水分を供給することが可能となる。更に、ゲル層22が、二分子膜表面での水系の動きを止めることから膜の乱れを防止することができ、より長い期間、二分子膜構造を維持し、またタンパク質54が機能し得る状態を維持する。
【0087】
金基板50の表面に強固な金−S結合を利用してアルカンチオール単分子膜16を形成すると、金基板50の全面にアルカンチオール単分子膜16が形成されることとなり、アルカンチオール単分子膜16の形成領域に、後からこの単分子膜16を押し退けてタンパク質を導入する余裕が確保しずらい。そこで、基板に開口部を設け、その基板を用いて二分子膜を形成することにより、基板の開口部である間隙部分52の二分子膜は、基板表面に形成された二分子膜の2層目の脂質単分子が疎水基が膜の内側を向くように互いに向かい合った脂質二分子膜となる。このため、形成された二分子膜内に後からタンパク質を導入する際、この間隙部分52における二分子膜にタンパク質を導入することが容易となる。
【0088】
また、これら図8(a)、(b)に示されるように、二分子膜14にタンパク質54を導入する場合、二分子膜14を形成後、先に間隙部分52にタンパク質54を導入する。そして、その後、高分子膜20およびアガロースゲル層22によって二分子膜14およびタンパク質54の表面を覆って二分子膜14及び導入されたタンパク質54を膜の両側から固定する。
【0089】
なお、二分子膜素子は、図2に示すような水系中に直立配置されるため、水系中にて、脂質単分子膜18の浮き上がりを防止するための図2のような膜支持部32を膜上方に設けることにより、一段と素子の寿命を延ばすことが可能となる。
【0090】
また、図7及び図8では金属基板50を用いているが、これには限られず、同様な形状の基板、例えばガラス基板の表面に金属を形成したものを利用してもよい。
【0091】
さらに、上述のように格子状の基板50を用いずに、例えば開口部のない平板状のガラス基板上に、図8(a)のような開口部を有する形状に金属材料をパターニングして二分子膜素子用の基板としてもよい。図9の素子では、このような基板13を利用しており、この基板13上に二分子膜14を作成している。この場合、金属材料は1層目の単分子16と結合する材料(例えばAu、Ag)を用いており、図示されるように金属材料(Au膜12)の存在しない間隙領域には、金−S結合によるアルカンチオール単分子膜16が形成されないこととなる。従って、この領域にタンパク質54を導入することが容易となる。
【0092】
実施形態3.
次に、実施形態1に示す二分子膜素子の他の構成例について図10を用いて説明する。
【0093】
図10において、少なくとも表面に金膜が形成された基板13上にアルカンチオール単分子膜および脂質単分子膜より構成された二分子膜14が形成されている(但し、基板表面の金属膜は図示せず)。本実施形態では、二分子膜14の表面に実施形態1と同様にアミノ酸の高分子(PLL)膜20が設けられ、さらにこの高分子膜20の表面に、タンパク質54を膜内に有するリポソーム60が吸着されている。リポソーム60は、図示されるようにリン脂質単分子膜58の二分子膜構造であり、その外側表面には、リン脂質単分子膜58の極性基(負極性基)が位置している。従って、この脂質単分子膜58の極性基が、高分子であるPLLの正極性基に引きつけられることにより、高分子膜20の表面にリポソームが吸着形成される。また、高分子膜20及びリポソームを覆うようにさらにアガロースゲル層22を形成し、二分子膜14および表面のリポソーム60を固定すれば、素子の安定性を高めることができる。なお、BLM14の二層目として、「正」の極性基を有する脂質を用いて単分子膜を形成すれば、必ずしも、BLM14とリポソームとの間に高分子膜20を介在させる必要はない。そして、このような場合において、高分子膜は、リポソームとアガロースゲル層22との間に形成してもよい。
【0094】
以上のように、基板上に作成した二分子膜14および高分子膜20を利用してその上にリポソームを形成することにより、リポソーム60の環境を生体内に近似したものとすることができ、リポソーム60の安定性を高め、またタンパク質54をより正常かつ安定的に機能させることが可能となる。なお、図10に示す二分子膜素子は水系中におかれることから、実施形態1と同様に膜の上方に膜支持部を設けることにより、一段と膜の安定性を高めることが可能となる。
【0095】
以上説明した各実施形態において、二分子膜(リポソームを含む)に導入されるタンパク質は、用途に応じて選択可能であり、また、基板、二分子膜、高分子膜、ゲル層を構成する材料としては、用いられるタンパク質との適合性および素子が置かれる環境に応じて、適切なものを選択することが好ましい。
【0096】
また、タンパク質として様々な刺激に応じて変化をするものを膜中に導入し、このタンパク質を機能させれば、本発明の二分子膜素子を光センサ、臭いセンサなどの様々なセンサなどに利用することが可能となる。
【0097】
更に、例えば図9の素子のにおいて二分子膜のサポート基板として、図8(a)のマトリクスパターン(50)のように所望のパターンに形成した金属材料(Au膜12)を電極として用いることにより、膜内の特定位置のタンパク質を機能させたり、タンパク質を機能させることによって発生する電気特性の変化などを検出することが可能となる。具体的には、例えば、高度好塩菌などに含まれる光感応性タンパク質などを用いて二分子膜素子を構成し、これを光センサなどに用いた場合、基板上の上記金属を配線として利用することができる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の各二分子膜素子によれば、ゲル層、又はゲル層と高分子膜との組合せ、もしくは膜支持部又は膜支持部とゲル層などとの組合せ等により、形成された二分子膜の安定性を高めることができ、素子としての実用性を格段に向上させることが可能となる。従って、素子にタンパク質を導入し、これを用いてタンパク質機能の研究もしくはタンパク質機能を利用した素子の作成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態1に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図2】 本発明の実施形態1に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図3】 本発明の二分子膜素子の特性評価に用いた試料の構成を示す図である。
【図4】 本発明の二分子膜素子の二分子膜の等価回路を示す図である。
【図5】 図3に示す試料を用いて測定した膜抵抗と膜容量の経時変化を示す図である。
【図6】 図3に示す試料を用いセル内に更にPLL溶液を添加した場合の膜容量の経時変化を示す図である。
【図7】 本発明の実施形態2に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図8】 図7に示す二分子膜素子にタンパク質を導入した状態を示す図である。
【図9】 本発明の実施形態2の他の構成例を示す図である。
【図10】 本発明の実施形態3に係る二分子膜素子の構成を示す図である。
【図11】 従来の二分子膜素子の構成を示す図である。
【図12】 図11とは別の従来の二分子膜素子の構成を示す図である。
【符号の説明】
10 ガラス基板、12 Au膜、13 基板、14 二分子膜(BLM)、16 アルカンチオール単分子膜、18,58 脂質単分子膜、20 高分子膜、22 ゲル層、30 セル、32 膜支持部、34 液溜め、39 カバーガラス、50 金基板、52 間隙部分、54 タンパク質、60 リポソーム。
Claims (17)
- 基板上に二分子膜が形成された二分子膜素子であって、
前記基板は、水系の中に直立するように配置され、
前記基板の少なくとも上方側に前記二分子膜の膜厚方向に延びて水系における二分子膜の上部を支持するための膜支持部を備えることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項1に記載の二分子膜素子において、
前記膜支持部は、前記二分子膜の膜厚以上の長さを有し、
この膜支持部によって、水系中で直立するように配置される前記二分子膜の浮き上がりを抑えることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項1又は請求項2のいずれかに記載の二分子膜素子において、
前記膜支持部は、少なくとも前記二分子膜との接触面が非極性材料によって形成されていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記二分子膜上にゲル層が形成されていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項4に記載の二分子膜素子において、
前記ゲル層の材料として、糖が用いられていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項4又は請求項5のいずれかに記載の二分子膜素子において、
前記ゲル層の材料として、ハイドロゲルが用いられていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項4〜請求項6のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記ゲル層は、アガロースゲルを含むことを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項4〜請求項7のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記二分子膜、前記ゲル層との間に、更に高分子膜が形成されていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項8に記載の二分子膜素子において、
前記高分子膜の材料として、アミノ酸が用いられていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項8に記載の二分子膜素子において、
前記高分子膜は、ポリリシンを含み、
前記ゲル層は、アガロースゲルを含むことを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項4〜請求項10のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記二分子膜と、前記ゲル層との間に、更にリポソームが配置されていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項8〜請求項10のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記高分子膜上にリポソームが配置され、前記高分子膜及び前記リポソームが前記ゲル層によって覆われていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項1〜12のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記二分子膜は、前記基板の表面上に形成されている金属材料に極性基が結合したアルカンチオール単分子膜と、このアルカンチオール単分子膜に疎水基を向けて配置した脂質単分子膜と、より構成されていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項1〜12のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記基板は、金属基板又は少なくとも表面の一部に金属が形成された基板であり、
前記金属基板又は金属には、前記二分子膜の基板側の単分子膜と結合する金属材料が用いられていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項1〜12のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記基板は、開口部を有する金属基板若しくは開口部を有し表面に金属が形成された基板、又は表面に開口部を備えた所定パターンの金属が形成された基板であり、
前記金属基板又は金属には、前記二分子膜の基板側の単分子膜と結合する金属材料が用いられ、
前記基板又は前記金属の開口部領域に、更に二分子膜が形成され、
この前記開口部領域に形成された二分子膜の膜中にタンパク質が導入されていることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項13〜15のいずれか1つに記載の二分子膜素子において、
前記金属材料は、金又は銀であることを特徴とする二分子膜素子。 - 請求項1〜16のいずれか一つに記載の二分子膜素子において、
前記二分子膜は、タンパク質を保持するための膜であることを特徴とする二分子膜素子。
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