JP3819260B2 - 超電導磁気浮上装置及びそのシステム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非接触支持が必要な様々な高速移動機器、高速回転機器、非接触搬送機器などへ応用される超電導磁気浮上装置及びそのシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
超電導磁気軸受を用いたフライホイール型の電力貯蔵装置は、電力会社など電力供給側における給電負荷の低減や余剰夜間電力の低損失状態での蓄積、さらには夏場の急激な電力需要への電力供給機器としての利用など大規模な利用方法が考えられる。
【0003】
また、変電所レベルあるいは各家庭レベルにおいてエネルギーの有効な貯蔵と消費を行うことによって、将来的には低価格での電力利用を実現できる。
【0004】
従来から提案されている同種の超電導磁気浮上装置として、超電導体と永久磁石とを対向させた構造、高Jc超電導体と低Jc超電導体とを一体化した超電導体と永久磁石とを組み合わせた構造、可動なダンピング材料を用いた構造等がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の超電導磁気浮上装置では、ダンピングを示す構造物を物理的に変位させることにより剛性やダンピングを変更していた。しかし、それらの超電導磁気軸受における剛性やダンピング向上のための機構は、永久磁石内蔵の浮上体と超電導体とのギャップ内に設置する必要があった。この場合、構造が複雑になることやロータの高速回転時での適用が困難であった。
【0006】
また、従来の超電導磁気浮上装置の剛性やダンピングの値は、磁束クリープなどの熱的外乱のため徐々に減少する。これは、超電導体を用いている以上避けられないことである。したがって、従来の超電導磁気浮上装置を用いた場合、超電導磁気浮上装置の剛性やダンピングの値を変化させず、ロータを長期に渡って連続運転することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、浮上体の剛性およびダンピングを調整できる機能を有する超電導磁気浮上装置及びそのシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕超電導磁気浮上装置において、超電導材料からなる固定部と、磁石からなる浮上体とを備え、前記浮上体と固定部とを相対的に水平方向に強制変位させることによって、前記超電導材料表面近傍の磁場を積極的に歪ませて前記浮上体を磁場を歪ませ状態で用いることにより、前記浮上体の剛性を調整できる機能を有することを特徴とする。
【0009】
〔2〕超電導磁気浮上装置において、磁石からなる固定部と、超電導材料からなる浮上体とを備え、前記浮上体と固定部とを相対的に水平方向に強制変位させることによって、前記超電導材料表面近傍の磁場を積極的に歪ませて前記浮上体を磁場を歪ませ状態で用いることにより、前記浮上体の剛性を調整できる機能を有することを特徴とする。
【0010】
〔3〕上記〔1〕又は〔2〕記載の超電導磁気浮上装置において、前記浮上体を垂直方向及び水平方向に浮上支持することを特徴とする。
【0011】
〔4〕上記〔1〕又は〔2〕記載の超電導磁気浮上装置において、前記磁石の数や磁極の向きを変えることによって、剛性やダンピングを任意に変化可能であることを特徴とする。
【0012】
〔5〕上記〔1〕又は〔2〕記載の超電導磁気浮上装置において、前記浮上体を前記固定部に対して相対変位させ、超電導体表面の磁束線を歪ませることによって剛性及びダンピングを任意に変化可能であることを特徴とする。
【0013】
〔6〕上記〔5〕記載の超電導磁気浮上装置において、前記浮上体を前記固定部に対して非接触で相対変位可能であることを特徴とする。
【0014】
〔7〕上記〔1〕又は〔2〕記載の超電導磁気浮上装置において、前記浮上体を前記固定部と常に相対変位させ、剛性およびダンピングの効果を持続させることを特徴とする。
【0015】
〔8〕上記〔7〕記載の超電導磁気浮上装置において、前記浮上体を前記固定部と常に非接触で相対変位させることを特徴とする。
【0016】
〔9〕上記〔1〕又は〔2〕記載の超電導磁気浮上装置において、前記超電導材料が高Jcと低Jcの高温超電導材料であることを特徴とする。
【0017】
〔10〕超電導磁気浮上装置システムにおいて、超電導材料からなる固定部と、磁石からなる浮上体とを備え、前記浮上体と固定部とを相対的に水平方向に強制変位させることによって、前記超電導材料表面近傍の磁場を積極的に歪ませて前記浮上体を磁場を歪ませ状態で用いることにより、前記浮上体の剛性を調整できる機能を有し、かつ前記浮上体の剛性を調整可能な第1の駆動装置と前記浮上体のダンピングを調整可能な第2の駆動装置とを具備することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1〜図3は本発明の第1実施例を示す超電導磁気浮上装置の磁束線の挙動を示す図であり、浮上体を固定部に対して相対変位させ超電導体表面の磁束線を歪ませることによって剛性及びダンピングを任意に変化させることができる。
【0020】
図1は浮上体が変位していない場合の磁束線の様子を示し、図2はその浮上体が水平方向に変位した場合の磁束線の挙動を示し、図3はその浮上体が垂直方向に変位した場合の磁束線の挙動を示している。
【0021】
これらの図に示すように、超電導材料22からなる固定部21に対向して、永久磁石24からなる浮上体23を配置する。磁束線25は永久磁石24から超電導材料22に作用する。
【0022】
図2においては、浮上体23がX方向に変位すると、磁束線25は浮上体23を−X方向に戻すように作用する。また、図3においては、浮上体23が−Y方向に変位すると、磁束線25は浮上体23をY方向に戻すように作用する。
【0023】
このように、超電導材料22表面の磁束線25を歪ませ、超電導磁気浮上装置の剛性およびダンピングの強化を図ることができる。
【0024】
一般に、超電導磁気浮上装置の剛性やダンピングの値は、磁束クリープなどの熱的外乱のため徐々に減少する。しかし、本発明の超電導磁気浮上装置では、浮上体または固定部を常に相対変位させることによって、剛性およびダンピングの効果を常に持続させることができる。また、同一方向のみならず逆方向に強制変位させることによっても、剛性およびダンピングを持続させることができる。
【0025】
したがって、超電導材料特有の磁束クリープなどの熱的外乱による効果低減をなくすことができる。
【0026】
本発明の超電導磁気浮上装置では、浮上体の静止時はもとより回転時においても本効果をロータに与えることができる。回転時には浮上体の振動が大きくなったときだけ本機能を働かせ、振動が治まったら本機能を解除することができる。
【0027】
また、高速回転時でも本機能を作用させることができる。さらにできるだけエネルギー消費が少なくなるように剛性やダンピングを設定することができる。
【0028】
図4は本発明の第2実施例を示す超電導磁気浮上装置の模式図である。
【0029】
この実施例では、図4に示すように、複数の永久磁石34からなる浮上体33となし、超電導材料32を固定部31に組み込み、この固定部31を複数の永久磁石34と対向させて、この永久磁石34を垂直方向および水平方向に浮上支持する構造にした。
【0030】
したがって、永久磁石34の個数や配列を変えることによって、剛性やダンピングを任意に変化させることが容易にできる。
【0031】
図5は本発明の第3実施例を示す超電導磁気浮上装置の模式図である。
【0032】
この実施例では、図5に示すように、固定部41は高Jc超電導材料42と低Jc超電導材料43とからなる超電導材料からなり、その低Jc超電導材料43と対向する複数の永久磁石45からなる浮上体44を配置している。
【0033】
このように、高Jc超電導材料42と低Jc超電導材料43の高温超電導体を用いることにより、超電導磁気浮上装置の剛性やダンピングを更に向上させることができる。
【0034】
図6は本発明の超電導磁気浮上装置システムの構成図である。
【0035】
この図において、51は固定部、52はその固定部51を構成する超電導材料、53は浮上体、54はその浮上体53を構成する永久磁石、55は固定部51の浮上体53と対向する側の表面に配置されるトルクセンサ、56は永久磁石や電磁石などからなる駆動子、57はその駆動子56を駆動し、剛性を調整することができる第1の駆動装置、58は浮上体53の変位センサ、59はダンピング装置(ダンピング制御子)、60はダンピング装置59を駆動する第2の駆動装置である。
【0036】
そこで、超電導材料52からなる固定部51に取り付けられたトルクセンサ55は、超電導材料52からなる固定部51の支持軸受と永久磁石54からなる浮上体53間のトルクを計測し、変位センサ58は、浮上体53の上下変位を計測するものである。
【0037】
また、第1の駆動装置57は、永久磁石(電磁石)などの駆動子56で吸引反発力を発生させるために、駆動子56を左右に変位させ、トルクセンサ55で計測されるトルクを変化させるものである。
【0038】
ダンピング装置59は、浮上体53にダンピングを与えるものであり、低Jc超電導体や金属などのダンピング材料で構成する。
【0039】
第2の駆動装置60は、ダンピング装置59を上下左右に移動させ、ダンピング効果を調整するものである。
【0040】
剛性を高めるため、第1の駆動装置57によって、永久磁石からなる駆動子56を下方に移動し、トルクセンサ55が設定した値を示すようにすることができる。また、駆動子56としては、電磁石を用いて、その電磁石の励磁電流を調整するようにしてもよい。
【0041】
ところで、超電導材料の磁束クリープによって、時間経過とともにトルクが設定値より小さくなる。トルクが設定値より小さくなると、第1の駆動装置57が働き、例えば、磁石からなる駆動子56を更に左右方向に移動させる。このように、剛性が一定になるよう第1の駆動装置57が機能する。
【0042】
浮上体53が下方に移動し、変位センサ58がある値以上(ギャップが小)になると、浮上体53が固定部51などと接触する危険性が生じてくる。この場合、磁石などの駆動子56を左右に移動させると、浮上体53は固定部51の超電導材料52から上方向の力を受けることにより、剛性を一定に保つことができる。
【0043】
そして、トルクセンサ55の値を一定に保つよう第1の駆動装置57を機能させることによって、剛性の値を一定に保つことができる。
【0044】
浮上体53が振動した場合、変位センサ58でその変位を計測する。計測した値が一定値以上になると、第2の駆動装置60が働き、変位が一定値以下になるまでダンピング装置59を変位させる。この場合、ダンピング装置59が低Jc超電導材料の場合は上下方向、金属などのダンピング材料の場合は上下方向にダンピング装置を移動させる。
【0045】
また、振動が治まったことを変位センサ58が検出すると、第2駆動装置60はダンピング効果が小さくなる方向にダンピング装置59を移動させ、エネルギー消費を小さくする。
【0046】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0047】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0048】
(A)浮上体を外部から強制変位させることができる。また、非接触で浮上体に強制変位を与えることができるため、振動を抑えることができる。その振動が抑えられた後は強制変位を解除することができる。
【0049】
(B)浮上体と固定部とを相対的に強制変位させることによって、永久磁石がつくる超電導材料表面近傍の磁場を積極的に歪ませることができる。これにより、浮上体の少しの変位に対しても超電導体表面で大きな磁場変動が生じ、結果的に超電導磁気浮上装置の剛性強化のみならずダンピング効果を同時に向上させることができる。
【0050】
(C)浮上体を外部から非接触で強制変位させることができるため、浮上体静止時はもとより、回転時も磁気浮上の効果を適用でき、振動を抑えた後は、強制変位を解除することができる。
【0051】
(D)更に、高Jc超電導材料だけ、あるいは高Jc超電導材料と低Jc超電導材料を一体化した超電導材料にも適用できるため、その利用は効果的である。
【0052】
(E)本発明によって、本発明の超電導磁気浮上装置を用いたフライホイール型の電力貯蔵装置の実用化を図ることができる。
【0053】
(F)本発明によって、これらのフライホイール型電力貯蔵装置の高速安定回転と低エネルギー損失を実現するため、これら機器の実用化に大きく寄与できる。
【0054】
(G)更に、超電導磁気浮上装置を用いることによってフライホイール型電力貯蔵装置のみでなく、超電導磁気浮上装置を用いた低温機器や低温下で駆動可能なモータなどの多くの分野で、非接触かつエネルギー損失の少ない機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施例を示す超電導磁気浮上装置の磁束線の挙動を示す図(その1)である。
【図2】 本発明の第1実施例を示す超電導磁気浮上装置の磁束線の挙動を示す図(その2)である。
【図3】 本発明の第1実施例を示す超電導磁気浮上装置の磁束線の挙動を示す図(その3)である。
【図4】 本発明の第2実施例を示す超電導磁気浮上装置の模式図である。
【図5】 本発明の第3実施例を示す超電導磁気浮上装置の模式図である。
【図6】 本発明の超電導磁気浮上装置システムの構成図である。
【符号の説明】
21,31,41,51 固定部
22,32,52 超電導材料
23,33,44,53 浮上体
24,54 永久磁石
25 磁束線
34,45 複数の永久磁石
42 高Jc超電導材料
43 低Jc超電導材料
55 トルクセンサ
56 永久磁石や電磁石などからなる駆動子
57 第1の駆動装置
58 変位センサ
59 ダンピング装置(ダンピング制御子)
60 第2の駆動装置

Claims (10)

  1. (a)超電導材料からなる固定部と、
    (b)磁石からなる浮上体とを備え、
    (c)前記浮上体と固定部とを相対的に水平方向に強制変位させることによって、前記超電導材料表面近傍の磁場を積極的に歪ませて前記浮上体を磁場を歪ませ状態で用いることにより、前記浮上体の剛性を調整できる機能を有することを特徴とする超電導磁気浮上装置。
  2. (a)磁石からなる固定部と、
    (b)超電導材料からなる浮上体とを備え、
    (c)前記浮上体と固定部とを相対的に水平方向に強制変位させることによって、前記超電導材料表面近傍の磁場を積極的に歪ませて前記浮上体を磁場を歪ませ状態で用いることにより、前記浮上体の剛性を調整できる機能を有することを特徴とする超電導磁気浮上装置。
  3. 前記浮上体を垂直方向及び水平方向に浮上支持することを特徴とする請求項1又は2記載の超電導磁気浮上装置。
  4. 記磁石の数や磁極の向きを変えることによって、剛性やダンピングを任意に変化可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の超電導磁気浮上装置。
  5. 記浮上体を前記固定部に対して相対変位させ超電導体表面の磁束線を歪ませることによって剛性及びダンピングを任意に変化可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の超電導磁気浮上装置。
  6. 記浮上体を前記固定部に対して非接触で相対変位可能であることを特徴とする請求項5記載の超電導磁気浮上装置。
  7. 記浮上体を前記固定部と常に相対変位させ、剛性およびダンピングの効果を持続させることを特徴とする請求項1又は2記載の超電導磁気浮上装置。
  8. 記浮上体を前記固定部と常に非接触で相対変位させることを特徴とする請求項7記載の超電導磁気浮上装置。
  9. 前記超電導材料が高Jcと低Jcの高温超電導材料であることを特徴とする請求項1又は2記載の超電導磁気浮上装置。
  10. (a)超電導材料からなる固定部と、
    (b)磁石からなる浮上体とを備え、
    (c)前記浮上体と固定部とを相対的に水平方向に強制変位させることによって、前記超電導材料表面近傍の磁場を積極的に歪ませて前記浮上体を磁場を歪ませ状態で用いることにより、前記浮上体の剛性を調整できる機能を有し、かつ前記浮上体の剛性を調整可能な第1の駆動装置と前記浮上体のダンピングを調整可能な第2の駆動装置とを具備することを特徴とする超電導磁気浮上装置システム。
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