JP3816032B2 - Welding wire - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨、橋梁、造船及び自動車等の溶接に広く使用されるアーク溶接用ワイヤに関し、特に、ワイヤ全長に亘って給電チップでの給電安定性が優れており、給電チップ内部における分流安定性が向上し、ヒューム発生量が著しく低減した溶接用ワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
アーク溶接用ワイヤの送給性を向上させる方法としては、ワイヤ表面に滑り性を有する液体潤滑剤を塗布することが一般的である。従来、ワイヤ表面に液体潤滑剤を塗布する方法としては、特開平9−234590に記載されているように、固体潤滑剤をワイヤ表面に押付けて塗布する方法と、特開平8−131919に記載されているように、ローラ式潤滑油塗布装置を使用する方法と、特開平7−276089、特開平7−136796、特開平7−136797に記載されているように、湿式伸線時の潤滑剤としてワイヤ表面に付着させる方法と、伸線の最終スキンパスで塗布する方法と、更に、フェルト等に液体潤滑剤を染み込ませ、そのフェルトをワイヤに押し付けながら付着させる方法とがある。更に、特開昭59−145061、59−145062、59−145077に記載されているように、噴霧方式で油を霧化し、ワイヤ表面に静電気力で付着させる方法と、特開平6−106129に記載されているように、水系液体潤滑剤を回転霧化型静電塗油装置を使用して塗布する方法も開示されている。
【0003】
潤滑剤の種類に関しては特開平06−285678、特開平09−70684、特開平7−24169に記載されているように、MoS2、WS2、PTFE、黒鉛、フッ化黒鉛又は金属石鹸が挙げられる。これらは全てワイヤの送給性を向上し、安定化させる目的で塗布されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の方法で塗布した場合、伸線条件及びワイヤ表面状態の違いにより、ワイヤ長手方向に均一に潤滑剤を残すことはできない。潤滑剤を均一に塗布できないと、溶接時の給電安定性が損なわれ、アークの不安定を引き起こすことにより、ヒューム発生量が増加する等、作業性を損なうという問題点が生じる。また、塗布量が比較的安定する噴霧方式でも、定量搬送ポンプを使用していないためのノズル閉塞及び電極放電の問題から、固体微粒子を分散した油をワイヤ表面に塗布することはできない。また、固体微粒子が分散した油を塗布することができる回転霧化型静電塗油装置を使用しても、シェイピングエアと称する搬送用気流を使用して、容器内部でワイヤ表面に油を吹き付けると、塗布量にばらつきが発生しやすいという難点がある。ワイヤ表面の油付着量のばらつきが大きいと、給電チップとワイヤとの間での給電安定性が損なわれ、溶滴移行形態が不安定となり、ヒューム発生量が増加するという問題点が生じる。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ワイヤ表面に複合潤滑剤がワイヤ周方向及び長手方向の双方について均一に塗布されており、給電安定性が向上し、ヒューム発生量が大幅に低減した溶接用ワイヤを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る溶接用ワイヤは、ワイヤ表面に油成分と固体潤滑剤粒子とが、前記油成分を基油とし、前記固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤の形で、遠心力で吹き飛ばされた前記複合潤滑剤の軌跡とワイヤ軌跡を少なくとも一部で重ねることにより塗布されており、前記油成分は植物油、動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された1種以上であって、その油成分量及び固体潤滑剤粒子量を10m毎に10箇所測定したとき、前記油成分の平均値がワイヤ表面1m2当たり0.1乃至0.4gの範囲にあり、標準偏差が平均値の30%以下であり、前記固体潤滑剤粒子は、その粒子径が0.1〜10μmであるMoS2、WS2、黒鉛及びPTFEからなる群から選択された1種類以上であって、その平均値がワイヤ表面1m2当たり0.002〜0.3gの範囲にあり、標準偏差が平均値の30%以下であると共に、前記油系複合潤滑剤は、固体潤滑剤粒子の基油に対する配合比率が、2乃至50質量%であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る他の溶接用ワイヤは、ワイヤ表面に油成分と固体潤滑剤粒子とが、前記固体潤滑剤粒子を水系溶媒に配合した水系複合潤滑剤の形で、遠心力で吹き飛ばされた前記水系複合潤滑剤の軌跡とワイヤ軌跡を少なくとも一部で重ねることにより塗布された後、前記油成分又は前記油成分を基油として前記固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤の形で、遠心力で吹き飛ばされた前記油系複合潤滑剤の軌跡とワイヤ軌跡を少なくとも一部で重ねることにより前記水系複合潤滑剤に重ねて塗布されており、前記油成分は植物油、動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された1種以上であって、その油成分量及び固体潤滑剤粒子量を10m毎に10箇所測定したとき、前記油成分の平均値がワイヤ表面1m2当たり0.1乃至0.4gの範囲にあり、標準偏差が平均値の30%以下であり、前記固体潤滑剤粒子は、その粒子径が0.1〜10μmであるMoS2、WS2、黒鉛及びPTFEからなる群から選択された1種類以上であって、その平均値がワイヤ表面1m2当たり0.002〜0.3gの範囲にあり、標準偏差が平均値の30%以下であると共に、前記油系複合潤滑剤は、固体潤滑剤粒子の基油に対する配合比率が、2乃至50質量%であることを特徴とする。
【0008】
また、ワイヤ表面のK量をワイヤ10mおきに10箇所測定したとき、そのK量の平均値がワイヤ表面1m2当たり0.002〜0.02gの範囲にあり、標準偏差が平均値の30%以下であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について更に詳細に説明する。先ず、本発明者等はワイヤ表面に存在する潤滑剤の量とヒューム発生量との関係について調査した。この潤滑剤とは、基油に、MoS2、WS2、黒鉛及びPTFEからなる群から選択された1種類以上の固体潤滑剤粒子が分散した油系複合潤滑剤である。その結果、前記油系複合潤滑剤の基油部分(油成分)の量がその平均値でワイヤ表面1m2当たり0.1乃至0.4gの範囲にあり、標準偏差が平均塗布量の30%以下であり、MoS2、WS2、黒鉛及びPTFEからなる群から選択された1種類以上の固体潤滑剤粒子の量がその平均値でワイヤ表面1m2当たり0.002乃至0.3gの範囲にあり、標準偏差が平均塗布量の30%以下に均一に塗布されていると、ヒュームを著しく低減できることを見いだした。基油部分の量がワイヤ表面1m2当たり0.1g未満では、ワイヤに十分な潤滑性を与えることができないため、チップ抵抗が低減せず、ヒューム発生量が低減しない。逆に、基油部分の量がワイヤ表面1m2当たり0.4gを超えて付着していても、チップ抵抗が低減する効果は飽和してしまい、それ以上送給性が更に向上することがないだけでなく、余分な複合潤滑剤がコンジットライナー内部で離脱して堆積し、閉塞物として送給性を損なうと行った問題が生じる。更に、送給ローラで離脱した複合潤滑剤は、送給ローラとワイヤ間の摩擦抵抗を小さくしすぎるために、安定したワイヤ送給を行うことができなくなるといった問題が生じる。
【0010】
また、MoS2、WS2、黒鉛及びPTFEからなる群から選択された1種類以上の固体潤滑剤粒子がワイヤ表面1m2当たり0.002乃至0.3gの範囲にあることが必要である。この固体潤滑剤粒子が0.002g未満では、チップとワイヤとの間の給電が安定しないため、アークが安定せず、目的とするヒューム低減効果が得られない。一方、固体潤滑剤粒子が0.3gを超えると、ワイヤから剥離してコンジットライナー及びチップの内面に堆積する潤滑剤量が増大し、ワイヤ送給性及び給電安定性を阻害するため、アークが安定せず、目的とするヒューム低減効果が得られない。
【0011】
更に、本願発明者等は、ヒューム発生量を低減するためには、複合潤滑剤の量だけでなく、ワイヤ長手方向の複合潤滑剤のばらつきが小さいことが重要であることを見いだした。詳しくは、複合潤滑剤量の基油部分の量と固体潤滑剤粒子の量とをワイヤ10mおきに10箇所測定した場合に、その標準偏差が平均値(平均塗布量)の30%以下であれば、給電安定性が向上し、ヒューム発生量が低減する。複合潤滑剤の基油部分あるいは固体潤滑粒子部分の付着状態が不均一であると、ヒューム発生量の増加が顕著となる。即ち、複合潤滑剤量の標準偏差が30%より大きい場合は、局所的に複合潤滑剤の付着量が多い部分で、チップ抵抗が低下し、逆に、複合潤滑剤の付着量が少ない部分ではチップ抵抗が上がる。この状態で溶接を行うと、溶滴移行が安定せず、ヒューム発生量も増加する。複合潤滑剤の基油あるいは固体潤滑粒子部分の量の標準偏差が平均値の30%を超えるようなバラツキがあると、ワイヤ表面とチップとの間の接触電気抵抗が長手方向にバラツキを生じる結果、給電安定性が阻害される。その結果、チップ抵抗が増大してアークが安定せず、目的とするヒューム低減効果が得られない。
【0012】
なお、複合潤滑剤は、固体潤滑剤粒子の基油に対する配合比率が、2乃至50質量%であることが好ましい。更に、好ましい配合比率は、5乃至30質量%である。配合比率が2質量%未満であると、粒子の分散は容易であるが、十分な給電安定性効果、即ち、ヒューム低減効果は得られない。配合比率が50質量%を超えると、分散安定性が劣化し、ワイヤから剥離しコンジットライナー及びチップ内面に堆積する潤滑剤量が増大し、ワイヤ送給性及び給電安定性を阻害するため、アークが安定せず、目的とするヒューム低減効果が得られない。
【0013】
本発明の油系複合潤滑剤の基油(油成分)と固体潤滑剤粒子とは、夫々独立に塗布量(ワイヤ付着量)を制御できる。即ち、基油に対する固体潤滑剤粒子の配合比が50%以下(好ましくは30%以下)である場合は、基油に対する固体潤滑剤粒子の配合比率を変更したものを調合し、本発明の方法でワイヤに塗布すれば良い。また、基油に対する固体潤滑剤粒子のワイヤ付着量比が50%を超える場合には、予め固体潤滑剤粒子を水溶性の溶媒(水又はアルコール等)に分散した複合溶液を塗布した後、ワイヤ表面を乾燥させ、再度、基油及び/又は固体潤滑剤粒子を本発明の方法で必要量塗布することにより、独立に塗布量(ワイヤ付着量)を制御できる。ワイヤ表面のK量は、0.002乃至0.02g/m2が望ましい。0.002g/m2未満ではアーク安定性改善に寄与するだけのK量ではない。一方、0.02g/m2以上では、コンジットライナーへの堆積量が増加して、ワイヤ詰まりが生ずる等の不具合が起こる。K源としては、基油に混合し塗布する場合には、微粒子が得られ易いホウ酸カリウムが望ましく、水系溶媒に混合し塗布する場合には、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等の水溶性無機塩の化合物が望ましい。
【0014】
本発明のように、複合潤滑剤がワイヤ表面に存在していると、送給抵抗が低減するため、長尺コンジットケーブルを使用した場合又はコンジットケーブルを屈曲した状態で使用した場合等でも、安定したワイヤ送給が可能となるため、アークが安定し、ヒューム発生量が低減する。ヒューム発生量を著しく低減させるためには、更に給電チップにおける給電安定性を向上させることが極めて有効であることを見出した。給電安定性を向上させることによって、ヒューム発生量が劇的に低減できる機構は次のように説明される。
【0015】
図1は溶接用ワイヤ1と給電チップ2との接触状態を模式的に示す。溶接用ワイヤ1は固有の曲率を有しているために、給電チップと一般的に▲1▼、▲2▼、▲3▼の3点で接触する。この上部▲3▼と下部▲1▼との間の距離は20乃至40mmである。
【0016】
給電チップ2は銅主体の合金で形成されているために、溶接用ワイヤ1に比較して電気抵抗が小さい。このため、電流の50%以上は給電チップの下部(先端)▲1▼からワイヤに供給される。残りの50%未満の電流は中央▲2▼又は上部▲3▼からワイヤに供給される。
【0017】
図2は絶縁膜22で3分割した3層分割給電チップ23を試作し、定電流電源27から給電し、シールドガスノズル24からシールドガスを供給しつつ、ワイヤ21と被溶接材26との間にアーク25を形成し、チップ23の下部▲1▼、中央▲2▼、上部▲3▼からワイヤ21に流入する電流をホール素子28により直接測定した。図3(a)、(b)はその分流電流の測定例を示す。この測定結果はYGW16相当の銅めっきなしソリッドワイヤを用いて測定したものである。シールドガスはAr−20%CO2であり、溶接電流は300A、チップ母材間距離は25mmである。図3(a)は本発明の比較例で油及び固体粒子の塗布量にばらつきが多い場合であり、図3(b)は本発明の実施例であって油塗布量が0.22g/m2、塗布量の標準偏差が0.01g/m2、MoS2の塗布量が0.05g/m2、標準偏差が0.0023g/m2の例である。
【0018】
この図3(a)と図3(b)との比較から、複合潤滑剤の塗布の均一性を向上させると、明確に分流電流の安定性が向上する。分流電流が安定化すると、給電チップ先端から母材間の突き出し部におけるジュール発熱が安定化する。具体的には溶滴直上のワイヤ温度が安定化する。
【0019】
また、ワイヤ表面に複合潤滑剤を均一に塗布すると、給電チップにおける機械的な抵抗が減少する。
【0020】
図4はチップ抵抗と送給抵抗の測定方法を示す図である。チップ抵抗の測定は、6m長のトーチ10を使用し、山なりで1ターンさせ、溶接時に給電チップ11がワイヤに引っ張られる荷重(チップ抵抗Tr)、即ち溶接電流を流した場合に発生する機械的抵抗を給電チップ11の直上に取り付けたロードセル12を使用して測定した。同時に、送給ローラ13がワイヤを押し出すに必要な力(送給抵抗Fr)をロードセル14により測定する。ロードセル14には溶接電流を流すことができないために、給電チップ11とロードセル14との間にパワーケーブルを接続し、給電チップ11に直接溶接電流を供給した。同様にシールドガスも供給した。得られたチップ抵抗Trの変動を解析し、チップ抵抗の値からワイヤ給電安定性を評価した。
【0021】
使用したワイヤと溶接条件は図3の分流電流測定の場合と同じである。図5は溶接せずにインチングしたときのチップ抵抗と送給抵抗を示す図であり、(a)は本発明の比較例であり、(b)は本発明の実施例である。溶接を行わないと、塗布にばらつきがあってもなくても、チップ抵抗及び送給抵抗がいずれも差は無い。
【0022】
図6はYGW16相当の銅めっきありのソリッドワイヤを280Aで溶接を行った場合のチップ抵抗と送給抵抗を示し、(a)は本発明の比較例、(b)は本発明の実施例である。図6(a)に示すように、塗布が均一に行われていないワイヤはチップ抵抗の変動が大きく、送給抵抗の変動も大きくなっている。一方、図6(b)に示すように、塗布が均一に行われているワイヤのチップ抵抗はほとんど変動せず、送給抵抗も変動しない。
【0023】
図5に示すように、溶接を行わないと両者に差は無いことから、給電チップにおける機械的な抵抗が送給抵抗を支配している。チップ抵抗が低減することによって送給抵抗が低減する。送給抵抗はチップ抵抗に同期して変化し、送給抵抗はチップ抵抗が約10倍に増幅されている。チップ抵抗が変動するのは、給電チップ内部における分流状態が変動するためである。チップ抵抗が不安定であると、突き出し部におけるワイヤ速度が変動し、ワイヤ溶融速度も変動する。
【0024】
直径が1.2mmのワイヤを280Aで溶接すると、1分間あたりのワイヤ送給量は十数mになる。1.2mm径のワイヤの10mあたりの質量は80g程度であるから、5乃至20g程度のワイヤ表面の複合潤滑剤の基油部分の量、固体潤滑粒子部分の量、及びK量を測定すると、ワイヤ長手方向の付着量のばらつきを評価することができる。この複合潤滑剤の量とばらつきは分流安定性及びチップ抵抗を支配し、更にはヒューム発生量を増減させる。
【0025】
分流電流が不安定であり、ワイヤ溶融速度が不安定になると、溶滴のふらつきが大きくなり、溶融池とワイヤ先端との瞬間短絡が多発してヒュームの発生量が増える。一方、ワイヤ表面に均一に複合潤滑剤を塗布することによって、分流電流及びワイヤ速度が安定化し、ヒューム発生量は著しく減少する。
【0026】
給電安定性を向上させるためには、複合潤滑剤の付着量がワイヤ表面長手方向に均一である必要がある。複合潤滑剤が均一に付着していると、給電チップにおける給電が安定化し、給電チップでの抵抗が低減し、安定化され、送給抵抗が低減し、送給抵抗の変動が少なく、ヒューム発生量を低減することができる。
【0027】
複合潤滑剤をワイヤ表面長手方向に均一に付着させるためには、複合潤滑剤の定量搬送、均一霧化、電圧印加、雰囲気制御が重要となる。
【0028】
<複合潤滑剤の定量搬送>
潤滑粒子が分散した油、潤滑粒子が分散した水溶液、又は油等の複合潤滑剤を定量的に搬送するためには、高精度の定量搬送ポンプが必要となる。ワイヤ速度は一定ではなく、必ず加速部及び減速部があり、この速度変動部にも均一に複合潤滑剤を塗布するためには、時間追従性に優れたポンプが必要となる。具体的には、高精度のギア式ポンプ、スクリュー式ポンプ又はローラ式ポンプ等を用い、ポンプの回転数はワイヤ速度に連動して制御する必要がある。これによって複合潤滑剤の供給量はワイヤ速度と連動して制御することができる。
【0029】
<複合潤滑剤の霧化>
ワイヤ表面に、標準偏差が30%以下になるように均一に複合潤滑剤を付着させるために、塗布方法に関して調査を行ったところ、圧縮空気又は遠心力により複合潤滑剤を霧化して塗布する方法が良いことを見いだした。付着量の制御は、複合潤滑剤の搬送量をワイヤ速度と連動させて制御し、霧化する複合潤滑剤の量を調整し、塗布容器中の複合潤滑剤の霧密度を調整することにより行うことができる。その他の複合潤滑剤の塗布方法としては、伸線時の潤滑剤をワイヤ表面に残留させる方法と、最終スキンパスで塗布する方法と、フェルト等に複合潤滑剤を染み込ませ、このフェルトをワイヤ表面に押付けて複合潤滑剤をワイヤ表面に塗布する方法等もある。しかし、これらの塗布方法では、複合潤滑剤の付着量を均一に塗布することは難しい。このため、前述のごとく、圧縮空気又は遠心力により霧化したワイヤ表面に塗布することが好ましい。
【0030】
油成分に固体潤滑剤粒子が分散した油系複合潤滑剤、又は水系溶媒に固体潤滑剤粒子が分散した水系複合潤滑剤(以下、油系複合潤滑剤と水系複合潤滑剤をまとめて複合潤滑剤ということもある)を、圧縮空気又は遠心力等を利用して極めて均一に霧化し、ワイヤ表面に付着させる方法が良い。定量的に搬送した複合潤滑剤と霧化用の圧縮空気は同軸であることが望ましい。また、遠心力を使用して霧化する場合は、500rpm以上の高速で回転する円錐形状をしたカップ内面に定量搬送した複合潤滑剤を連続的に供給し、この複合潤滑剤を遠心力により霧化する。塗装機等では、シェイピングエアを使用して複合潤滑剤の霧化流を被塗装物に吹き付けるが、高速に走行するワイヤに連続的に塗布するためには、シェイピングエアは使用せず、遠心力で吹き飛ばされた複合潤滑剤の軌跡とワイヤ軌跡を完全に重ねるか、又は部分的に重ねることによって塗布することが好ましい。
【0031】
<複合潤滑剤への高電圧印加>
更に、効率よく塗布するためには、霧化された複合潤滑剤に高電圧を印加し、複合潤滑剤とワイヤとの間の電位差から発生する静電気力を利用することが好ましい。また、本発明者等は、この方法を使用すると、複合潤滑剤の付着効率を良くするだけでなく、塗布の均一性及び複合潤滑剤とワイヤ表面との密着性も向上し、更に印加電圧を調整することにより、複合潤滑剤の付着量も制御することが可能であることを見いだした。
【0032】
即ち、複合潤滑剤に高電圧を加え、複合潤滑剤粒子を帯電させ、ワイヤとの間に静電気力を発生させて、ワイヤに付着させると、付着効率が向上するとともに、付着量の細かい制御が可能となる。霧化された複合潤滑剤粒子が静電気力で反発し、更に微粒子化すると共に、静電気力でワイヤ表面に衝突すると、複合潤滑剤とワイヤ表面の密着性も向上する。
【0033】
<雰囲気制御>
霧化した複合潤滑剤は付着効率を向上させるために、1000cm3乃至5m3程度の容積を有する容器内でワイヤに塗布することが好ましい。更に、静電気力を使用してワイヤに塗布する場合は、この容器をワイヤから完全に絶縁することが好ましい。更に好ましくは、容器内の湿度及び/又は温度、更には複合潤滑剤の温度も一定にし、塗布に関する全ての装置全体を温度制御及び湿度制御すると、塗布精度が向上する。
【0034】
<基油の種類>
また、霧化塗布する複合潤滑剤の成分を検討した結果、油成分としては、植物油、動物油、鉱物油及び合成油からなる群から選択された1種類以上を基油とすると、この基油にMoS2、WS2、黒鉛及びPTFEからなる群から選択された1種類以上の固体粉末潤滑剤を分散させた油系複合潤滑剤の給電安定性の向上効果が優れていることを見いだした。上記油と固体粉末潤滑剤の混合をどのような組合せで行っても、給電安定性を向上させるとともに、ヒュームを低減させる効果に大きな差はなく、良好である。
【0035】
<固体潤滑剤粒子の粒径>
更に、複合潤滑剤と送給性の関係を詳細に調査した結果、固体潤滑剤粒子の粒径が重要であることが分かった。いずれの固体潤滑剤粒子を使用した場合も、その粒径が0.1乃至10μmである場合に、最も送給性を向上させる効果が大きい。粒径が0.1μm未満では送給性を向上する効果が少なく、ヒューム低減効果が少ない。一方、粒径が10μmより大きいとワイヤ表面から脱離し易く、十分な潤滑性能が得られない。加えて、粒子径が10μmを超える固体潤滑剤粒子の場合、基油及び水への分散安定性が極端に悪化し、固体粒子量のバラツキが30%を超えてしまって、本発明の目的を達成することができない。また、ワイヤ表面1m2当たり0.002乃至0.02gのKが存在し、その標準偏差が平均塗布量の30%以下であると、更に一層ヒューム発生量が低減する。
【0036】
<複合潤滑剤量測定>
油系複合潤滑剤量の基油部分の量の測定、油系及び水系複合潤滑剤に含まれる元素の同定、及び固体潤滑剤粒子の粒子径の測定は、以下の方法を用いて行うことができる。
【0037】
油系複合潤滑剤の基油部分の量は、ワイヤ表面を四塩化炭素で洗浄し、赤外吸収法で定量測定する。赤外吸収法で測定する場合には四塩化炭素中に一定量の既知の油、即ち吸収強度と濃度の関係が明らかな油を使用して校正し、相対的な量の変化を測定する。赤外吸収法にて油付着量のばらつきを調べる場合は、ワイヤ10mから5g乃至20gの一定量をサンプリングし、表面の基油量を測定すれば良い。ワイヤ表面に存在する油の絶対量は、ワイヤ100gを四塩化炭素で洗浄する前後での質量変化を測定して求めることができる。
【0038】
複合潤滑剤量、潤滑粒子、及びKの付着量が10m中で同時に測定できない場合は、複合潤滑剤量のばらつきを最初の100mで10回測定し、潤滑粒子の付着量は次の100mで10回測定する。
【0039】
<固体潤滑剤粒子の同定>
ワイヤを有機溶媒(例えば、エタノール、アセトン、石油エーテル等)で洗浄した後、洗浄液をろ紙で濾過し、その後、乾燥する。ろ紙に残った粉末をX線回折解析又は赤外吸収法により結晶性又は分子構造を特定し、化学的分析方によって構成元素の質量比を求め、潤滑粒子の化学組成を決定する。
【0040】
<固体潤滑剤粒子の定量>
「MoS2、WS2」
ワイヤを有機溶媒(例えば、エタノール、アセトン、石油エーテル等)で洗浄した後、洗浄液をろ紙でろ過し、その後、ろ紙を乾燥する。このろ紙を白煙処理によりMoS2、WS2を溶解し、原子吸光法によってMo、Wを定量化する(この量を夫々Mo(a)及びW(a)とする)。エタノール洗浄した後のワイヤを塩酸(HCl:水=1:1)に浸漬溶解し、MoS2、WS2(b)を遊離させる。ろ液をろ紙でろ過した後、白煙処理によってMoS2、WS2を溶解し、原子吸光法によってMo、Wを定量化する(この量を夫々Mo(b)及びW(b)とする)。そして、Mo(a)+Mo(b)と、W(a)+W(b)とを、夫々MoS2及びWS2に換算し、夫々ワイヤ表面積で除することによって、ワイヤ表面1m2当たりのMoS2及びWS2塗布量を求める。
【0041】
「黒鉛」
ワイヤを有機溶媒(例えばエタノール、アセトン、石油エーテル等)で洗浄した後、洗浄液をガラスフィルタで濾過した後、ガラスフィルタを乾燥させる。このガラスフィルタについてそのまま炭素分を測定する(a)。エタノール洗浄した後のワイヤを硝酸(HNO3:水=1:2)に120秒間浸漬し、ワイヤ表面のみを溶解し、ガラスフィルタで濾過した後乾燥させて、このガラスフィルタをそのまま炭素分測定する(b)。使用前のガラスフィルタの炭素分も測定し、ブランク値(c1、c2)として、これを各データより差し引く。ワイヤ中に固溶した炭素分はフィルタには捕集されず、ロ液に溶解する。従って、ワイヤ表面に付着又は埋め込まれた黒鉛のみがフィルタに捕集され、その量は(a)+(b)−(c1)−(c2)となる。これをワイヤ表面積で除することによって、ワイヤ表面1m2当たりの黒鉛塗布量を測定する。
【0042】
「PTFE」
燃焼中和滴定法によりワイヤ表面のフッ素量を定量化し、PTFEに質量換算する。湿酸素雰囲気で、ソリッドワイヤの場合は反応温度を1000℃、フラックス入りワイヤの場合は反応温度を550℃として、フッ素反応ガスを水に吸収させ、NaOH水溶液で滴定し、フッ素量を求める。
【0043】
「Kの定量」
ワイヤのカットサンプルを約20mm乃至30mm長さで20g程度用意する。石英ビーカに塩酸と過酸化水素を混合した液体を注ぎ、この中にカットサンプルを入れて数秒間浸漬した後、カットサンプルを取り出し、残った液体をろ過する。ろ過後の液体中K濃度を原子吸光法で測定し、ワイヤ1m2当たりのK付着量を測定する。
【0044】
<粒径の測定>
走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡を用いて粒径を観察する。
【0045】
<ヒューム発生量の測定>
ヒューム発生量は、JIS−Z3930に準拠して測定する。即ち、図7に示すヒューム捕集装置を使用して、溶接電流280A及び適正電圧で溶接時に発生する全ヒュームを捕集し、単位時間当たりのヒューム発生量を求めた。図7において、捕集箱1に観察窓2が設けられており、更に捕集箱1には試料の差入れ口3と空気孔4が設けられている。そして、捕集箱1内には溶接台5が設置されており、捕集箱1の上部には、捕集用濾紙をセットするサンプラ6が設置されている。このサンプラ6の上部は吸引口へ通じている。このように、フィルタ(濾紙)を捕集箱上部の吸引口に取り付けて捕集前後のフィルタの質量変化を測定することにより、ヒューム発生量を求めた。
【0046】
<複合潤滑剤>
次に、複合潤滑剤の塗布方法について説明する。複合潤滑剤を圧縮空気又は遠心力により均一に霧化し、ワイヤ表面に衝突させることにより、ワイヤ表面に均一に塗布する。
【0047】
更に、塗布の安定性及び付着効率を向上させるために、霧化された複合潤滑剤に電圧を加え、静電気力を利用して塗布を行う。この印加電圧を変えることにより、塗布量を精密に制御することが可能となる。その際に、吹き付け用の潤滑剤搬送空気流を使用しないで、遠心力のみを利用して霧化及び搬送を行うことで、塗布効率良く、且つより均一にワイヤ表面に塗布することができる。
【0048】
複合潤滑剤としては、植物油、動物油、鉱物油又は合成油等の基油にMoS2、WS2、黒鉛、PTFE等を分散させたもの(油系複合潤滑剤)を使用しても良く、MoS2、WS2、黒鉛、PTFE等を水溶液に分散させ(水系複合潤滑剤)、これをワイヤに塗布し、乾燥した後、更に植物油、動物油、鉱物油、合成油等の油成分又はこの油成分に固体潤滑剤粒子を分散させた油系複合潤滑剤をワイヤ表面に塗布しても良い。ワイヤ全長に亘って送給性を向上させるためには、この油成分と固体潤滑剤粒子をワイヤ表面に均一に塗布することが極めて重要である。また、基油としては、植物油、動物油、鉱物油、及び合成油から選択された1種以上であることが望ましく、ワイヤ表面に塗布するMoS2、WS2、黒鉛、PTFEの粒径は0.1乃至10μmとすることにより、噴霧時の霧化性が向上し、ワイヤ表面への付着性及び潤滑性が向上し、ヒューム発生量は低減する。更に、ワイヤ表面にKを均一に塗布することでヒューム発生量が更に低減する。K量はワイヤ10mおきに10箇所、ワイヤ100m相当分を測定したとき、そのK量の平均値がワイヤ表面1m2当たり0.002乃至0.02gの範囲にあり、標準偏差が平均塗布量の30%以下であることが望ましい。
【0049】
【実施例】
以下、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。使用したワイヤは、線径が1.2mmのJISZ3312YGW16の銅めっきあり軟鋼ソリッドワイヤ及びめっき無し軟鋼ソリッドワイヤ、JISZ3313YFW−C50DXの銅めっきあり軟鋼フラックス入りワイヤ及びめっき無しの軟鋼フラックス入りワイヤの4種類である。これらのワイヤに基油と固体潤滑剤粒子からなる油系複合潤滑剤を圧縮空気又は遠心力により霧化し、塗布した。又は、固体潤滑粒子が水に分散した水系複合潤滑剤を圧縮空気又は遠心力により霧化し、ワイヤに塗布、乾燥した後、基油と固体潤滑剤粒子又はK粒子からなる複合潤滑剤を、圧縮空気又は遠心力により霧化し、ワイヤに塗布した。塗布は、最終径でワイヤ表面の伸線潤滑剤を取り除いてから行った。塗布量の調整は、電圧を加えていない場合は、複合潤滑剤の霧化量を、電圧を加えている場合は、霧化量と印加電圧の片方又は両方を変えて行った。
【0050】
以下に、本発明の実施例及び比較例を表1から表4にて説明する。
表1は全て「めっきなし軟鋼用ソリッドワイヤ」を素材に使用した結果であって、実施例No.1乃至No.9はワイヤへの塗布方法として、「請求項2」の「基油+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、一時に塗布する方法で製造したものである。実施例No.1乃至No.5は、圧縮空気で前記複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。また、実施例No.6乃至No.9は回転型静電霧化装置を使用し、遠心力で前記複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。塗布された複合潤滑剤の量のワイヤ長手方向のバラツキが30%以下であれば、ヒューム発生量は従来技術である比較例No.25乃至No.28に比較して、ほぼ半減している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.3,No.4,No.8,No.9のように、油塗布剤へ静電気を印加すれば良い。これらのものは、ヒューム発生量もより低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.2,No.7,No.9)は、前記範囲を外れるものに比べ、若干ではあるがヒューム発生量が低減することがわかる。ここで、実施例No.4はK量が0.07gであって「請求項4」の範囲を外れるのではあるがヒューム発生量は最も少ない。これは、Kのアーク安定化効果によってヒュームは低減するのであるが、過剰なK化合物がコンジットライナーに堆積し、送給性を不安定にするため実用には適さない。
【0051】
表1の実施例No.10乃至No.18はワイヤへの塗布方法として、「請求項3」の塗布方法で製造したものであって、前段工程で固体潤滑剤粒子を配合した水系溶媒の水系複合潤滑剤の形で塗布し、水分乾燥後、前記の「基油+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、2次的に塗布する方法で製造したものである。この塗布方法によれば、固体潤滑剤粒子の被塗布量を1桁近く多くすることができる。ヒューム発生量としては、従来技術である比較例No.25乃至No.28に比較して、ほぼ半減している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.12,No.13,No.14,No.17,No.18のように、油系複合潤滑剤に静電気を印加すれば良い。これらのものは、ヒューム発生量もより低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.11,No.16,No.18)は、前記範囲を外れるものに比べ、若干ではあるがヒューム発生量が低減した結果である。ここで、実施例No.13はK量が0.07gであって「請求項4」の範囲を外れるのではあるがヒューム発生量は最も少ない。これは、Kのアーク安定化効果によってヒュームは低減するのであるが、過剰なK化合物がコンジットライナーに堆積し、送給性を不安定にするため実用には適さなかった例である。
【0052】
表1の比較例No.19乃至No.24は固体潤滑剤粒子の粒子径が請求項1から外れる例である。比較例No.19,No.21,No.23は、粒子径が0.1μm未満であってワイヤ送給性が安定せず、ヒューム発生量も多かった。一方、比較例No.20,No.22,No.24は、粒子径が10μmを超えるものである。固体粒子径が大きいと、基油又は水への分散安定性が極端に悪化し、固体粒子量のバラツキが30%を超えてしまった。更に、ワイヤ表面から固体粒子が脱落し易く、十分なワイヤ潤滑性能が得られないため送給性も極めて不安定であって、ヒューム採取のための溶接ができなかった。
【0053】
表2は全て「めっきなし軟鋼用フラックス入りワイヤ」を素材に使用した結果であって、実施例No.29乃至No.36はワイヤへの塗布方法として、「請求項2」の「基油+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、一時に塗布する方法で製造したものである。その中で、実施例No.29乃至No.32は圧縮空気で前記油系複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。また、実施例No.33乃至No.36は回転型静電霧化装置を使用し、遠心力で前記油系複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。塗布された油系複合潤滑剤の量のワイヤ長手方向のバラツキが30%以下であれば、ヒューム発生量は従来技術である比較例No.45乃至No.49に比較して、約3割減少している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.31,No.32,No.35,No.36のように油系複合潤滑剤に静電気を印加すれば良い。これらのものは静電気を印加していないものに比べ、ヒューム発生量が若干低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.30,No.32,No.34,No.36)は、前記の適正K量範囲を外れるものに比べ、ヒューム発生量がより低減することがわかる。
【0054】
表2の実施例No.37乃至No.44はワイヤへの塗布方法として、「請求項3」の塗布方法で製造したものであって、前段工程で「固体潤滑剤粒子を配合した水系溶媒の水系複合潤滑剤」の形で塗布し、水分乾燥後、前記「基油+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、2次的に塗布する方法で製造したものである。この塗布方法によれば、固体潤滑剤粒子の被塗布量を1桁近く多くすることができる。ヒューム発生量としては、従来技術である比較例No.45乃至No.49に比較して、約3割減少している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.39,No.40,No.43,No.44のように塗布剤へ静電気を印加すれば良い。これらのものは静電気を印加していないものに比べ、ヒューム発生量が若干低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.38,No.40,No.42,No.44)は、前記の適正K量範囲を外れるものに比べ、ヒューム発生量がより低減することがわかる。
【0055】
表3は全て「銅めっき有り軟鋼用ソリッドワイヤ」を素材に使用した結果であって、実施例No.50乃至No.58はワイヤへの塗布方法として、「請求項2」の「基油(油成分)+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、一時に塗布する方法で製造したものである。その中で、実施例No.50乃至No.54は圧縮空気で前記油系複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。また、実施例No.55乃至No.58は回転型静電霧化装置を使用し、遠心力で前記複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。塗布された複合潤滑剤の量のワイヤ長手方向のバラツキが30%以下であれば、ヒューム発生量は従来技術である比較例No.69乃至No.72に比較して、ほぼ半減している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.53,No.54,No.55,No.57,No.58のように油系複合潤滑剤に静電気を印加すれば良い。これらのものは静電気を印加していないものに比べ、ヒューム発生量が若干低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.51,No.56,No.58)は、前記の適正K量範囲を外れるものに比べ、ヒューム発生量がより低減することがわかる。
【0056】
表3の実施例No.59乃至No.67はワイヤへの塗布方法として、「請求項3」の塗布方法で製造したものであって、前段工程で「固体潤滑剤粒子を配合した水系溶媒の水系複合潤滑剤」の形で塗布し、水分乾燥後、前記「基油+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、2次的に塗布する方法で製造したものである。この塗布方法によれば、固体潤滑剤粒子の被塗布量を1桁近く多くすることができる。ヒューム発生量としては、従来技術である比較例No.69乃至No.72に比較して、ほぼ半減している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.61,No.62,No.63,No.66,No.67のように塗布剤へ静電気を印加すれば良い。これらのものは静電気を印加していないものに比べ、ヒューム発生量が若干低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.65,No.67)は、前記の適正K量範囲を外れるものに比べ、ヒューム発生量がより低減することがわかる。
【0057】
表4は全て「銅めっき有り軟鋼用フラックス入りワイヤ」を素材に使用した結果であって、実施例No.73乃至No.80はワイヤへの塗布方法として、「請求項2」の「基油+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、一時に塗布する方法で製造したものである。その中で、実施例No.73乃至No.76は圧縮空気で前記油系複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。また、実施例No.77乃至No.80は回転型静電霧化装置を使用し、遠心力で前記油系複合潤滑剤を霧化し塗布したものである。塗布された複合潤滑剤の量のワイヤ長手方向のバラツキが30%以下であれば、ヒューム発生量は従来技術である比較例No.89乃至No.92に比較して、約3割強減少している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.75,No.76,No.79,No.80のように油系複合潤滑剤に静電気を印加すれば良い。これらのものは静電気を印加していないものに比べ、ヒューム発生量が若干低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.74,No.76,No.78,No.80)は、前記の適正K量範囲を外れるものに比べ、ヒューム発生量がより低減することがわかる。
【0058】
表4の実施例No.81乃至No.88はワイヤへの塗布方法として、「請求項3」の塗布方法で製造したものであって、前段工程で「固体潤滑剤粒子を配合した水系溶媒の水系複合潤滑剤」の形で塗布し、水分乾燥後、前記の「基油+固体潤滑剤粒子を配合した油系複合潤滑剤」を、2次的に塗布する方法で製造したものである。この塗布方法によれば、固体潤滑剤粒子の被塗布量を1桁近く多くすることができる。ヒューム発生量としては、従来技術である比較例No.89乃至No.92に比較して、約3割強減少している。このバラツキ度を抑制するためには、実施例No.83,No.84,No.87,No.88のように塗布剤へ静電気を印加すれば良い。これらのものは静電気を印加していないものに比べ、ヒューム発生量が若干低減した結果になっている。また、K量が「請求項4」の0.002〜0.02gの範囲にあるもの(No.82,No.86)は、前記の適正K量範囲を外れるものに比べ、ヒューム発生量がより低減することがわかる。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ワイヤ表面に油成分及び固体潤滑剤粒子がワイヤ周方向及び長手方向の双方について均一に塗布されているので、給電安定性が向上し、ヒューム発生量を大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接用ワイヤと給電チップとの接触状態を模式的に示す図である。
【図2】絶縁膜で分割した3層分割給電チップを試作し、下部▲1▼、中間▲2▼、上部▲3▼からワイヤに流入する電流を直接測定する方法を示す図である。
【図3】(a)、(b)はその分流電流の測定例を示す図である。
【図4】チップ抵抗と送給抵抗の測定方法を示す図である。
【図5】溶接せずにインチングしたときのチップ抵抗と送給抵抗を示す図であり、(a)は本発明の比較例であり、(b)は本発明の実施例である。
【図6】YGW16相当の銅めっきありのソリッドワイヤを280Aで溶接を行った場合のチップ抵抗と送給抵抗を示し、(a)は本発明の比較例、(b)は本発明の実施例である。
【図7】ヒューム捕集装置を示す図である。
【符号の説明】
1;捕集箱
2;観察窓
3;差入れ口
4;空気孔
5;溶接台
6;サンプラ[0001]
BACKGROUND OF THE INVENTION
The present invention relates to an arc welding wire widely used for welding steel frames, bridges, shipbuilding, automobiles, and the like, and in particular, has excellent power feeding stability with a power feed tip over the entire length of the wire, and stable current distribution within the power feed tip. The present invention relates to a welding wire having improved properties and significantly reduced fume generation.
[0002]
[Prior art]
As a method for improving the feedability of the arc welding wire, it is common to apply a liquid lubricant having slipperiness to the wire surface. Conventionally, as a method of applying a liquid lubricant to the surface of a wire, as described in JP-A-9-234590, a method of applying a solid lubricant by pressing on the surface of a wire, and a method described in JP-A-8-131919 are described. As described in JP-A-7-276089, JP-A-7-136796, and JP-A-7-136797, as described in JP-A-7-276089, JP-A-7-136797 There are a method of adhering to the wire surface, a method of applying by a final skin pass of wire drawing, and a method of impregnating a felt with a liquid lubricant and adhering the felt against the wire. Further, as described in JP-A Nos. 59-145041, 59-145042, and 59-145077, a method of atomizing oil by a spraying method and adhering it to the wire surface by electrostatic force, and JP-A-6-106129 As described, a method of applying an aqueous liquid lubricant using a rotary atomizing electrostatic oiling device is also disclosed.
[0003]
As to the type of lubricant, as described in JP-A-06-285678, JP-A-09-70684, JP-A-7-24169, MoS 2 , WS 2 , PTFE, graphite, fluorinated graphite or metal soap. All of these are applied for the purpose of improving and stabilizing the wire feedability.
[0004]
[Problems to be solved by the invention]
However, when applied by a conventional method, the lubricant cannot be left uniformly in the longitudinal direction of the wire due to differences in wire drawing conditions and wire surface conditions. If the lubricant cannot be applied uniformly, the power feeding stability during welding is impaired, causing arc instability, resulting in a problem that workability is impaired such as an increase in the amount of fumes generated. Further, even in the spray method in which the coating amount is relatively stable, oil in which solid fine particles are dispersed cannot be applied to the wire surface due to the problem of nozzle clogging and electrode discharge because the metering pump is not used. Even if a rotary atomizing type electrostatic oiling device capable of applying oil in which solid fine particles are dispersed is used, air is blown onto the wire surface inside the container using a conveying airflow called shaping air. In addition, there is a drawback in that variations in the application amount are likely to occur. When the variation in the amount of oil adhesion on the wire surface is large, the power feeding stability between the power feeding tip and the wire is impaired, the droplet transfer form becomes unstable, and a fume generation amount increases.
[0005]
The present invention has been made in view of such problems, and the composite lubricant is uniformly applied to the wire surface in both the circumferential direction and the longitudinal direction of the wire, so that the power feeding stability is improved and the amount of generated fume is reduced. It is an object to provide a welding wire that is greatly reduced.
[0006]
[Means for Solving the Problems]
The welding wire according to the present invention is in the form of an oil-based composite lubricant in which an oil component and solid lubricant particles are formed on the wire surface and the oil component is a base oil and the solid lubricant particles are blended. By overlapping the locus of the composite lubricant blown away by centrifugal force and the wire locus at least partially The oil component is one or more selected from the group consisting of vegetable oil, animal oil, mineral oil and synthetic oil, and the oil component amount and solid lubricant particle amount were measured at 10 locations every 10 m. When the average value of the oil component is 1 m on the wire surface 2 MoS having a particle diameter of 0.1 to 0.4 μm, a standard deviation of 30% or less of the average value, and the solid lubricant particles having a particle size of 0.1 to 10 μm 2 ,
[0007]
Another welding wire according to the present invention is in the form of an aqueous composite lubricant in which an oil component and solid lubricant particles are blended with an aqueous solvent on the wire surface. By overlapping the locus of the water-based composite lubricant blown away by centrifugal force and the wire locus at least partially After being applied, in the form of an oil-based composite lubricant in which the oil component or the oil component is used as a base oil and the solid lubricant particles are blended. , By at least partly overlapping the locus of the oil-based composite lubricant blown away by centrifugal force and the wire locus to the water-based composite lubricant The oil component is one or more selected from the group consisting of vegetable oil, animal oil, mineral oil, and synthetic oil, and the oil component amount and the solid lubricant particle amount are 10 locations every 10 m. When measured, the average value of the oil component is 1 m on the wire surface. 2 MoS having a range of 0.1 to 0.4 g per unit, a standard deviation of 30% or less of the average value, and the solid lubricant particles having a particle size of 0.1 to 10 μm 2 ,
[0008]
Further, when the K amount on the wire surface was measured at 10 points every 10 m of wire, the average value of the K amount was 1 m on the wire surface. 2 It is preferably in the range of 0.002 to 0.02 g per unit, and the standard deviation is preferably 30% or less of the average value.
[0009]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Hereinafter, the present invention will be described in more detail. First, the inventors investigated the relationship between the amount of lubricant present on the wire surface and the amount of fume generated. This lubricant means base oil, MoS 2 , WS 2 An oil-based composite lubricant in which one or more kinds of solid lubricant particles selected from the group consisting of graphite and PTFE are dispersed. As a result, the amount of the base oil portion (oil component) of the oil-based composite lubricant is an average value of 1 m of the wire surface. 2 With a standard deviation of 30% or less of the average coating amount, 2 , WS 2 The average amount of one or more types of solid lubricant particles selected from the group consisting of graphite and PTFE is 1 m on the wire surface. 2 It was found that the amount of fume can be remarkably reduced when it is in the range of 0.002 to 0.3 g per unit and the standard deviation is uniformly applied to 30% or less of the average coating amount. The amount of base oil is 1m on the wire surface 2 If the weight is less than 0.1 g, sufficient lubricity cannot be imparted to the wire, so that the chip resistance is not reduced and the amount of fume generation is not reduced. On the contrary, the amount of the base oil portion is 1m on the wire surface 2 Even if it exceeds 0.4 g per contact, the effect of reducing the chip resistance is saturated, and not only the feedability is further improved, but also the excess composite lubricant is added inside the conduit liner. The problem that was caused when it was detached and accumulated and the feeding performance as a clogged material was impaired. Furthermore, since the composite lubricant separated by the feeding roller makes the frictional resistance between the feeding roller and the wire too small, there is a problem that stable wire feeding cannot be performed.
[0010]
MoS 2 , WS 2 One or more types of solid lubricant particles selected from the group consisting of graphite, PTFE, and wire surface 1 m 2 It is necessary to be in the range of 0.002 to 0.3 g per unit. If the solid lubricant particles are less than 0.002 g, the power supply between the tip and the wire is not stable, so the arc is not stable and the intended fume reduction effect cannot be obtained. On the other hand, if the solid lubricant particle exceeds 0.3 g, the amount of lubricant that peels from the wire and accumulates on the inner surface of the conduit liner and the chip increases, and the wire feeding performance and power feeding stability are hindered. It is not stable and the intended fume reduction effect cannot be obtained.
[0011]
Furthermore, the present inventors have found that in order to reduce the amount of fume generation, it is important that not only the amount of the composite lubricant but also the dispersion of the composite lubricant in the wire longitudinal direction is small. Specifically, when the amount of the base oil portion and the amount of the solid lubricant particles in the composite lubricant amount are measured at 10 positions every 10 m of the wire, the standard deviation may be 30% or less of the average value (average coating amount). As a result, the power feeding stability is improved and the amount of fume generation is reduced. If the adhesion state of the base oil portion or the solid lubricant particle portion of the composite lubricant is non-uniform, the increase in the amount of fume generated becomes significant. That is, when the standard deviation of the composite lubricant amount is larger than 30%, the chip resistance is lowered at a portion where the composite lubricant is locally attached in a large amount, and conversely, at a portion where the composite lubricant is attached at a small amount. Chip resistance goes up. When welding is performed in this state, droplet transfer is not stable, and the amount of fume generation increases. If the standard deviation of the amount of the base oil or solid lubricant particles of the composite lubricant exceeds 30% of the average value, the contact electrical resistance between the wire surface and the tip will vary in the longitudinal direction. , Feeding stability is hindered. As a result, the chip resistance increases, the arc is not stabilized, and the intended fume reduction effect cannot be obtained.
[0012]
In the composite lubricant, the blending ratio of the solid lubricant particles to the base oil is preferably 2 to 50% by mass. Furthermore, a preferable blending ratio is 5 to 30% by mass. When the blending ratio is less than 2% by mass, the dispersion of particles is easy, but a sufficient power feeding stability effect, that is, a fume reduction effect cannot be obtained. When the blending ratio exceeds 50% by mass, the dispersion stability deteriorates, the amount of lubricant that peels from the wire and accumulates on the inner surface of the conduit liner and the chip increases, and the wire feeding performance and power feeding stability are hindered. Is not stable, and the intended fume reduction effect cannot be obtained.
[0013]
The base oil (oil component) and solid lubricant particles of the oil-based composite lubricant of the present invention can control the coating amount (wire adhesion amount) independently of each other. That is, when the blending ratio of the solid lubricant particles to the base oil is 50% or less (preferably 30% or less), a blending ratio of the solid lubricant particles to the base oil is changed to prepare the method of the present invention. And apply to the wire. Further, when the wire adhesion amount ratio of the solid lubricant particles to the base oil exceeds 50%, after applying a composite solution in which the solid lubricant particles are previously dispersed in a water-soluble solvent (water or alcohol), the wire By drying the surface and again applying the required amount of base oil and / or solid lubricant particles by the method of the present invention, the application amount (wire adhesion amount) can be controlled independently. The K amount on the wire surface is 0.002 to 0.02 g / m. 2 Is desirable. 0.002 g / m 2 If it is less than K, the amount of K is not sufficient to contribute to improving the arc stability. On the other hand, 0.02 g / m 2 As described above, the amount of deposit on the conduit liner increases, causing problems such as wire clogging. As the K source, potassium borate which is easy to obtain fine particles is desirable when mixed with a base oil and applied, and when mixed with an aqueous solvent and applied, a water-soluble inorganic salt such as potassium bicarbonate or potassium carbonate. These compounds are desirable.
[0014]
When the composite lubricant is present on the wire surface as in the present invention, the feeding resistance is reduced. Therefore, even when a long conduit cable is used or when the conduit cable is used in a bent state, it is stable. Since the wire can be fed, the arc is stabilized and the generation amount of fume is reduced. In order to significantly reduce the amount of generated fumes, it has been found that it is extremely effective to further improve the power feeding stability in the power feeding chip. A mechanism capable of dramatically reducing the amount of fume generation by improving the power feeding stability will be described as follows.
[0015]
FIG. 1 schematically shows a contact state between the
[0016]
Since the
[0017]
FIG. 2 shows a prototype of a three-layer divided
[0018]
From the comparison between FIG. 3A and FIG. 3B, when the uniformity of application of the composite lubricant is improved, the stability of the shunt current is clearly improved. When the shunt current is stabilized, the Joule heat generation at the protruding portion between the base material from the tip of the power feed tip is stabilized. Specifically, the wire temperature immediately above the droplet is stabilized.
[0019]
In addition, when the composite lubricant is uniformly applied to the wire surface, the mechanical resistance of the power supply tip is reduced.
[0020]
FIG. 4 is a diagram showing a method for measuring the chip resistance and the feeding resistance. The chip resistance is measured by using a 6 m
[0021]
The used wire and welding conditions are the same as in the case of the shunt current measurement of FIG. FIGS. 5A and 5B are diagrams showing a tip resistance and a feeding resistance when inching without welding. FIG. 5A is a comparative example of the present invention, and FIG. 5B is an example of the present invention. If welding is not performed, there is no difference in the tip resistance and the feeding resistance regardless of whether the coating is uneven.
[0022]
FIG. 6 shows tip resistance and feeding resistance when a solid wire with copper plating equivalent to YGW16 is welded at 280A, (a) is a comparative example of the present invention, and (b) is an embodiment of the present invention. is there. As shown in FIG. 6A, a wire that is not uniformly coated has a large variation in chip resistance and a large variation in feeding resistance. On the other hand, as shown in FIG. 6B, the tip resistance of the wire on which the coating is uniformly performed hardly fluctuates and the feeding resistance does not fluctuate.
[0023]
As shown in FIG. 5, since there is no difference between the two unless welding is performed, the mechanical resistance in the power feed tip dominates the feeding resistance. By reducing the chip resistance, the feeding resistance is reduced. The feeding resistance changes in synchronization with the chip resistance, and the chip resistance of the feeding resistance is amplified about 10 times. The chip resistance fluctuates because the shunt state in the power feeding chip fluctuates. If the chip resistance is unstable, the wire speed at the protruding portion varies, and the wire melting rate also varies.
[0024]
When a wire having a diameter of 1.2 mm is welded at 280 A, the wire feed amount per minute becomes a few dozen meters. Since the mass per 10 m of the 1.2 mm diameter wire is about 80 g, the amount of the base oil portion, the amount of the solid lubricant particle portion, and the K amount of the composite lubricant on the wire surface of about 5 to 20 g are measured. Variations in the amount of adhesion in the longitudinal direction of the wire can be evaluated. The amount and variation of this composite lubricant dominate the shunt stability and chip resistance, and further increase or decrease the amount of fume generation.
[0025]
If the shunt current is unstable and the wire melting rate becomes unstable, the fluctuation of the droplets increases, and many short-circuits occur between the molten pool and the wire tip, increasing the amount of fumes generated. On the other hand, by uniformly applying the composite lubricant to the wire surface, the shunt current and the wire speed are stabilized, and the amount of fume generation is significantly reduced.
[0026]
In order to improve the power feeding stability, it is necessary that the amount of the composite lubricant adhered is uniform in the longitudinal direction of the wire surface. When the composite lubricant is evenly adhered, the power supply at the power supply tip is stabilized, the resistance at the power supply tip is reduced and stabilized, the feed resistance is reduced, the fluctuation of the feed resistance is small, and fume is generated. The amount can be reduced.
[0027]
In order to uniformly attach the composite lubricant in the longitudinal direction of the wire surface, quantitative conveyance of the composite lubricant, uniform atomization, voltage application, and atmosphere control are important.
[0028]
<Quantitative conveyance of composite lubricant>
In order to quantitatively convey oil in which lubricating particles are dispersed, an aqueous solution in which lubricating particles are dispersed, or a composite lubricant such as oil, a highly accurate quantitative conveying pump is required. The wire speed is not constant, and there is always an accelerating part and a decelerating part, and in order to uniformly apply the composite lubricant to the speed fluctuation part, a pump excellent in time followability is required. Specifically, a high-precision gear pump, screw pump, roller pump, or the like is used, and the rotation speed of the pump needs to be controlled in conjunction with the wire speed. Thereby, the supply amount of the composite lubricant can be controlled in conjunction with the wire speed.
[0029]
<Atomization of composite lubricant>
In order to uniformly apply the composite lubricant to the wire surface so that the standard deviation is 30% or less, an investigation was conducted on the application method. A method of atomizing and applying the composite lubricant by compressed air or centrifugal force Found a good thing. The amount of adhesion is controlled by controlling the conveyance amount of the composite lubricant in conjunction with the wire speed, adjusting the amount of the composite lubricant to be atomized, and adjusting the fog density of the composite lubricant in the coating container. be able to. Other composite lubricant application methods include a method in which the lubricant during wire drawing remains on the wire surface, a method in which the lubricant is applied by the final skin pass, and a felt or the like soaked in the composite lubricant. There is also a method of applying the composite lubricant to the wire surface by pressing. However, with these application methods, it is difficult to uniformly apply the adhesion amount of the composite lubricant. For this reason, as mentioned above, it is preferable to apply to the wire surface atomized by compressed air or centrifugal force.
[0030]
An oil-based composite lubricant in which solid lubricant particles are dispersed in an oil component, or an aqueous composite lubricant in which solid lubricant particles are dispersed in an aqueous solvent (hereinafter referred to as an oil-based composite lubricant and an aqueous composite lubricant collectively May be atomized very uniformly using compressed air or centrifugal force, and attached to the wire surface. The quantitatively conveyed composite lubricant and atomized compressed air are preferably coaxial. In addition, when atomizing using centrifugal force, the composite lubricant quantitatively transported to the inner surface of the conical cup rotating at a high speed of 500 rpm or higher is continuously supplied, and this composite lubricant is atomized by centrifugal force. Turn into. In coating machines, etc., the atomizing flow of composite lubricant is sprayed onto the object to be coated using shaping air. However, in order to apply continuously to the wire running at high speed, the shaping air is not used and centrifugal force is used. It is preferable to apply by completely or partially overlapping the trajectory of the composite lubricant blown away by the wire and the wire trajectory.
[0031]
<High voltage application to composite lubricant>
Furthermore, in order to apply efficiently, it is preferable to apply a high voltage to the atomized composite lubricant and use an electrostatic force generated from a potential difference between the composite lubricant and the wire. In addition, the present inventors not only improve the adhesion efficiency of the composite lubricant, but also improve the uniformity of coating and the adhesion between the composite lubricant and the wire surface, and the applied voltage can be further increased. It has been found that the amount of the composite lubricant attached can be controlled by adjusting.
[0032]
That is, applying a high voltage to the composite lubricant, charging the composite lubricant particles, generating an electrostatic force with the wire and attaching it to the wire improves adhesion efficiency and allows fine control of the amount of adhesion. It becomes possible. When the atomized composite lubricant particles are repelled by electrostatic force and further finely divided, and when they collide with the wire surface by electrostatic force, the adhesion between the composite lubricant and the wire surface is also improved.
[0033]
<Atmosphere control>
Atomized composite lubricant is 1000 cm to improve adhesion efficiency 3 ~ 5m 3 It is preferable to apply the wire in a container having a certain volume. Furthermore, if the electrostatic force is applied to the wire, it is preferable to completely insulate the container from the wire. More preferably, the humidity and / or temperature in the container, and further, the temperature of the composite lubricant is also made constant, and temperature control and humidity control of the entire apparatus relating to application improves the application accuracy.
[0034]
<Type of base oil>
In addition, as a result of examining the components of the composite lubricant to be atomized, if the base oil is one or more selected from the group consisting of vegetable oil, animal oil, mineral oil and synthetic oil, MoS 2 , WS 2 The oil-based composite lubricant in which one or more solid powder lubricants selected from the group consisting of graphite and PTFE are dispersed has been found to have an excellent effect of improving the power feeding stability. Regardless of the combination of the oil and the solid powder lubricant, the power feeding stability is improved and the effect of reducing fume is not significantly different, which is good.
[0035]
<Particle size of solid lubricant particles>
Furthermore, as a result of investigating the relationship between the composite lubricant and the feedability in detail, it was found that the particle size of the solid lubricant particles is important. When any solid lubricant particle is used, the effect of improving the feeding property is the greatest when the particle size is 0.1 to 10 μm. If the particle size is less than 0.1 μm, the effect of improving the feeding property is small and the effect of reducing fume is small. On the other hand, if the particle size is larger than 10 μm, it is easy to detach from the wire surface, and sufficient lubrication performance cannot be obtained. In addition, in the case of solid lubricant particles having a particle diameter exceeding 10 μm, the dispersion stability in the base oil and water is extremely deteriorated, and the variation in the amount of solid particles exceeds 30%. Cannot be achieved. Wire surface 1m 2 When 0.002 to 0.02 g of K exists and the standard deviation is 30% or less of the average coating amount, the amount of generated fume is further reduced.
[0036]
<Measurement of amount of composite lubricant>
Measurement of the amount of the base oil portion of the oil-based composite lubricant amount, identification of elements contained in the oil-based and water-based composite lubricants, and measurement of the particle size of the solid lubricant particles can be performed using the following methods. it can.
[0037]
The amount of the base oil portion of the oil-based composite lubricant is quantitatively measured by the infrared absorption method after the wire surface is washed with carbon tetrachloride. When measuring by the infrared absorption method, a fixed amount of known oil in carbon tetrachloride, that is, an oil whose relationship between absorption intensity and concentration is clear, is calibrated and the change in relative amount is measured. When investigating the dispersion of the oil adhesion amount by the infrared absorption method, a certain amount of 5g to 20g is sampled from the wire 10m and the surface base oil amount is measured. The absolute amount of oil present on the wire surface can be determined by measuring the mass change before and after washing 100 g of wire with carbon tetrachloride.
[0038]
When the composite lubricant amount, the lubricant particles, and the adhesion amount of K cannot be measured simultaneously in 10 m, the dispersion of the composite lubricant amount is measured 10 times in the first 100 m, and the adhesion amount of the lubricant particles is 10 in the next 100 m. Measure once.
[0039]
<Identification of solid lubricant particles>
After the wire is washed with an organic solvent (for example, ethanol, acetone, petroleum ether, etc.), the washing solution is filtered with a filter paper and then dried. The powder remaining on the filter paper is specified for crystallinity or molecular structure by X-ray diffraction analysis or infrared absorption method, the mass ratio of constituent elements is determined by chemical analysis, and the chemical composition of the lubricating particles is determined.
[0040]
<Quantitative determination of solid lubricant particles>
“MoS 2 , WS 2 "
After the wire is washed with an organic solvent (for example, ethanol, acetone, petroleum ether, etc.), the washing liquid is filtered with a filter paper, and then the filter paper is dried. This filter paper is treated with white smoke to produce MoS 2 , WS 2 Is dissolved, and Mo and W are quantified by atomic absorption (this amount is referred to as Mo (a) and W (a), respectively). The wire after washing with ethanol is immersed and dissolved in hydrochloric acid (HCl: water = 1: 1) to obtain MoS. 2 , WS 2 Liberate (b). After filtering the filtrate with filter paper, MoS is treated with white smoke treatment. 2 , WS 2 Is dissolved, and Mo and W are quantified by atomic absorption (this amount is referred to as Mo (b) and W (b), respectively). Then, Mo (a) + Mo (b) and W (a) + W (b) are respectively converted into MoS. 2 And WS 2 1 m of the wire surface by converting each to the wire surface area. 2 MoS per hit 2 And WS 2 Obtain the coating amount.
[0041]
"graphite"
After the wire is washed with an organic solvent (for example, ethanol, acetone, petroleum ether, etc.), the washing liquid is filtered through a glass filter, and then the glass filter is dried. The carbon content of this glass filter is measured as it is (a). Nitric acid (HNO 3 : Water = 1: 2) for 120 seconds, only the wire surface is dissolved, filtered through a glass filter and dried, and the glass filter is directly measured for carbon content (b). The carbon content of the glass filter before use is also measured and subtracted from each data as blank values (c1, c2). The carbon component dissolved in the wire is not collected by the filter but dissolved in the filtrate. Therefore, only the graphite adhered or embedded on the wire surface is collected by the filter, and the amount is (a) + (b)-(c1)-(c2). By dividing this by the wire surface area, the wire surface 1 m 2 The graphite coating amount per unit is measured.
[0042]
"PTFE"
The amount of fluorine on the surface of the wire is quantified by a combustion neutralization titration method, and converted into mass by PTFE. In a wet oxygen atmosphere, the reaction temperature is 1000 ° C. in the case of a solid wire and the reaction temperature is 550 ° C. in the case of a flux-cored wire. The fluorine reaction gas is absorbed in water and titrated with an aqueous NaOH solution to obtain the amount of fluorine.
[0043]
"Quantification of K"
About 20 g of a wire cut sample is prepared with a length of about 20 mm to 30 mm. A liquid in which hydrochloric acid and hydrogen peroxide are mixed is poured into a quartz beaker, and the cut sample is put in the quartz beaker and immersed for several seconds. Then, the cut sample is taken out and the remaining liquid is filtered. The K concentration in the liquid after filtration was measured by atomic absorption spectrometry, and the wire 1m 2 Measure the amount of K deposited per unit.
[0044]
<Measurement of particle size>
The particle size is observed using a scanning electron microscope or a transmission electron microscope.
[0045]
<Measurement of fume generation>
The amount of fume generation is measured according to JIS-Z3930. That is, using the fume collecting apparatus shown in FIG. 7, all the fumes generated during welding were collected with a welding current of 280A and an appropriate voltage, and the amount of fumes generated per unit time was obtained. In FIG. 7, an
[0046]
<Composite lubricant>
Next, a method for applying the composite lubricant will be described. The composite lubricant is uniformly atomized by compressed air or centrifugal force, and is uniformly applied to the wire surface by colliding with the wire surface.
[0047]
Furthermore, in order to improve the stability and adhesion efficiency of application, a voltage is applied to the atomized composite lubricant and application is performed using electrostatic force. By changing this applied voltage, the coating amount can be precisely controlled. In that case, it can apply | coat to a wire surface more efficiently and more uniformly by performing atomization and conveyance using only a centrifugal force, without using the lubricant conveyance airflow for spraying.
[0048]
Complex lubricants include base oils such as vegetable oils, animal oils, mineral oils and synthetic oils, and MoS 2 , WS 2 , Graphite, PTFE, etc. (oil-based composite lubricant) may be used. 2 , WS 2 , Graphite, PTFE, etc. are dispersed in an aqueous solution (aqueous composite lubricant), applied to the wire, dried, and then further oil components such as vegetable oil, animal oil, mineral oil, synthetic oil, etc., or solid lubricant in this oil component An oil-based composite lubricant in which particles are dispersed may be applied to the wire surface. In order to improve the feedability over the entire length of the wire, it is extremely important to apply the oil component and the solid lubricant particles uniformly on the wire surface. The base oil is preferably at least one selected from vegetable oil, animal oil, mineral oil, and synthetic oil, and MoS applied to the wire surface. 2 , WS 2 By setting the particle diameters of graphite and PTFE to 0.1 to 10 μm, atomization during spraying is improved, adhesion to the wire surface and lubricity are improved, and the amount of fumes generated is reduced. Furthermore, the amount of fume generation is further reduced by uniformly coating K on the wire surface. When the K amount is measured at 10 points every 10 m of wire, and the wire equivalent to 100 m is measured, the average value of the K amount is 1 m on the wire surface. 2 Desirably, it is in the range of 0.002 to 0.02 g per unit, and the standard deviation is 30% or less of the average coating amount.
[0049]
【Example】
Examples of the present invention will be described below in comparison with comparative examples that are out of the scope of the present invention. There are four types of wires: JISZ3312YGW16 copper-plated soft steel solid wire and non-plated soft steel solid wire with a wire diameter of 1.2 mm, JISZ3313YFW-C50DX copper-plated soft steel flux-cored wire and unplated soft steel flux-cored wire. is there. An oil-based composite lubricant composed of base oil and solid lubricant particles was atomized to these wires by compressed air or centrifugal force and applied. Alternatively, an aqueous composite lubricant in which solid lubricant particles are dispersed in water is atomized by compressed air or centrifugal force, applied to a wire, dried, and then compressed with a composite lubricant composed of base oil and solid lubricant particles or K particles. Atomized by air or centrifugal force and applied to the wire. Application was performed after removing the wire drawing lubricant on the wire surface at the final diameter. The application amount was adjusted by changing the atomization amount of the composite lubricant when no voltage was applied, and changing one or both of the atomization amount and the applied voltage when the voltage was applied.
[0050]
Examples and Comparative Examples of the present invention will be described below with reference to Tables 1 to 4.
Table 1 shows the results of using “solid wire for mild steel without plating” as the material. 1 to No. No. 9 is manufactured by applying at a time the “oil-based composite lubricant containing the base oil + solid lubricant particles” of “
[0051]
Example No. in Table 1 10 to No. No. 18 is manufactured by the coating method of “
[0052]
In Comparative Example No. 1 in Table 1. 19 to No. 24 is an example in which the particle size of the solid lubricant particles deviates from that of the first aspect. Comparative Example No. 19, no. 21, no. In No. 23, the particle diameter was less than 0.1 μm, the wire feeding property was not stable, and the amount of fumes generated was large. On the other hand, Comparative Example No. 20, no. 22, no. No. 24 has a particle diameter exceeding 10 μm. When the solid particle size was large, the dispersion stability in the base oil or water was extremely deteriorated, and the variation in the amount of solid particles exceeded 30%. Furthermore, since solid particles easily fall off from the surface of the wire and sufficient wire lubrication performance cannot be obtained, the feedability is extremely unstable, and welding for collecting fume cannot be performed.
[0053]
Table 2 shows the results of using “Flux-cored wire for mild steel without plating” as a raw material. 29 to No. No. 36 is manufactured by applying at once the “oil-based composite lubricant blended with base oil + solid lubricant particles” of “
[0054]
Example No. in Table 2 37 to No. 44 is manufactured by the coating method of “
[0055]
Table 3 shows the results of using “solid wire for mild steel with copper plating” as the material. 50 to No. No. 58 is manufactured by a method in which “base oil (oil component) + oil-based composite lubricant containing solid lubricant particles” in “
[0056]
Example No. in Table 3 59 thru | or No. 67 is manufactured by the coating method of “
[0057]
Table 4 shows the results of using “flux-cored wire for mild steel with copper plating” as the material. 73 thru | or No. No. 80 is produced by applying at a time the “oil-based composite lubricant blended with base oil + solid lubricant particles” of “
[0058]
Example No. in Table 4 81 thru | or No. 88 is manufactured by the coating method of “
[0059]
[Table 1]
[0060]
[Table 2]
[0061]
[Table 3]
[0062]
[Table 4]
[0063]
【The invention's effect】
As described above in detail, according to the present invention, the oil component and the solid lubricant particles are uniformly applied to the wire surface in both the circumferential direction and the longitudinal direction, thereby improving the power feeding stability and generating fume. The amount can be greatly reduced.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a diagram schematically showing a contact state between a welding wire and a power feed tip.
FIG. 2 is a diagram showing a method for directly measuring a current flowing into a wire from a lower part {circle around (1)}, an intermediate part {circle around (2)}, and an upper part {circle around (3)} by making a prototype of a three-layer divided power supply chip divided by an insulating film.
FIGS. 3A and 3B are diagrams showing measurement examples of the shunt current. FIGS.
FIG. 4 is a diagram illustrating a method for measuring chip resistance and feeding resistance.
FIGS. 5A and 5B are diagrams showing a tip resistance and a feeding resistance when inching without welding, where FIG. 5A is a comparative example of the present invention, and FIG. 5B is an example of the present invention.
6A and 6B show a chip resistance and a feeding resistance when a solid wire with copper plating equivalent to YGW16 is welded at 280A, FIG. 6A is a comparative example of the present invention, and FIG. 6B is an embodiment of the present invention. It is.
FIG. 7 is a diagram showing a fume collecting device.
[Explanation of symbols]
1; Collection box
2; Observation window
3; Slot
4; Air hole
5; Welding table
6; Sampler
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