JP3815884B2 - 混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、混銑車内張り用の流し込み耐火物の施工用中子に関し、特に、流し込み施工後の中子の脱枠作業を短時間で効率的に行うことが可能で、さらには脱枠作業の安全性を確保することが可能な混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄鋼プロセスにおいて、混銑車は、溶銑を高炉から転炉に運搬するために使用される。
また、十数年前より、溶銑から珪素、硫黄および燐などの不純物を除去するための予備処理にも、混銑車は使用されている。
【0003】
一方、混銑車の内張りは、通常、耐火煉瓦を積み重ねることで施工される。
しかし、近年の煉瓦積み熟練工の不足への対策、省施工コストを目的とし、煉瓦の代替として、流し込み耐火物の利用が検討されている。
従来、流し込み耐火物は、取鍋や高炉出銑樋に使用され、省コストおよび機械化、自動化の達成に寄与している。
【0004】
一方、混銑車内張り用の耐火物の場合、流し込み耐火物は、取鍋などの場合と比較して施工が困難であること、前記した予備処理に使用される浸食性の激しいフラックスに対して耐用性が十分でないことなどの理由で、普及するには至っていない。
特に、混銑車に流し込み施工するためには、型枠として中子を混銑車の受銑口から内部に搬入し、混銑車内で組み立てる必要があり、このことが施工作業効率化の妨げとなっている。
【0005】
混銑車内張り用の耐火物として流し込み耐火物を施工するための中子に関しては、流体を注入した伸縮自在な中子(特公平3-69964 号公報)や、混銑車内の長手軸方向に設置したシャフトを基準にして分割パネルを装着した中子(特開平6-108135号公報)が提案されている。
しかし、前者においては、中子が柔軟なため、中子の位置を十分に固定できず、施工精度に問題がある。
【0006】
また、後者においては、長尺シャフトの両端を基準に中子の位置決めを行うため、施工精度を確保するためには、流し込み施工時の不定形耐火物の土圧に起因するシャフトの撓みを極力抑制する必要がある。
しかし、シャフトの撓みを極力抑制するためには、外部の基準点に対してシャフトを所定位置に支持する支持構造が必要であり、この支持構造とシャフトとの位置関係を精度良く所定の関係に保ち、さらにこのような強度を必要とする重量構造物を狭い混銑車内で組み立てることは容易ではなく、施工精度および省力化の観点で必ずしも満足のいく方法ではなかった。
【0007】
また、混銑車内張り用の耐火物を煉瓦から流し込み耐火物に変更する際、中子の支持構造の挿入に伴い混銑車の設計変更を必要とし、改造費用などが発生する点も問題である。
以上のように、混銑車内張り用の不定形耐火物として流し込み耐火物を施工、補修するための中子およびその付帯構造物においては、中子を混銑車内壁に対し精度良い位置関係に保ち、かつ効率的に組み立て、取外すことが可能な中子あるいはその付帯構造物がなかったのが実状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上の実状に鑑みて、本発明は、施工精度に優れ、流し込み耐火物養生後の中子脱枠作業を、短時間で効率的に、かつ安全に行うことが可能な混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、混銑車回転軸方向であるX方向に垂直な断面において円形である外周と混銑車内部作業空間と相対する内周とから定まる断面形状を有する流し込み耐火物の施工用組立式中子2であって、該中子2が、X方向において輪切り状の複数個のパネル2A〜2Fに分割され、さらに、該分割パネル2A〜2Fのそれぞれが、円周方向において複数個のユニット 2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8 に分割されるとともに、該複数個のユニット 2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8 の少なくとも1個のユニット2D1 が、X方向の両側の側面厚み部に設けた、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパーTXと、円周方向の両縁部に設けた、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパーTLとを有することを特徴とする混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子である。
【0010】
第2の発明は、混銑車回転軸方向であるX方向に垂直な断面において円形である外周と混銑車内部作業空間と相対する内周とから定まる断面形状を有する流し込み耐火物の施工用組立式中子2であって、該中子2が、X方向において輪切り状の複数個のパネル2A〜2Fに分割され、さらに、該分割パネル2A〜2Fのそれぞれが、円周方向において複数個のユニット 2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8 に分割されるとともに、前記輪切り状分割パネルの少なくとも1個2Dにおいて、複数個のユニット 2D1〜2D8 のそれぞれが、X方向の両側の側面厚み部に設けた、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパーTXを有し、さらに該複数個のユニット 2D1〜2D8 の少なくとも1個2D1 が、円周方向の両縁部に設けた、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパーTLを有することを特徴とする混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子である。
【0011】
第3の発明は、混銑車回転軸方向であるX方向に垂直な断面において円形である外周と混銑車内部作業空間と相対する内周とから定まる断面形状を有する流し込み耐火物の施工用組立式中子2であって、該中子2が、X方向において輪切り状の複数個のパネル2A〜2Fに分割され、さらに、該分割パネル2A〜2Fのそれぞれが、円周方向において複数個のユニット 2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8 に分割されるとともに、前記輪切り状分割パネル2A〜2Fの少なくとも1個2Dにおいて、複数個のユニット 2D1〜2D8 のそれぞれが、X方向の両側の側面厚み部に設けた、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパーTXを有し、さらに、前記輪切り状分割パネル2A〜2Fのそれぞれにおいて、前記複数個のユニット 2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8 の少なくとも1個のユニット 2A1〜2F1 が、円周方向の両縁部に設けた、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパーTLを有することを特徴とする混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子である。
【0012】
前記した第1の発明、第2の発明または第3の発明においては、前記円周方向において分割されたユニット 2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8 の円周方向の縁部に、円周方向において隣り合うユニットを連結しかつユニット取り外しの回転軸となる回転軸式連結用部材6を有することが好ましい。
【0013】
また、前記した第1の発明、第2の発明または第3の発明においては、前記円周方向において分割されたユニット2A1 〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8 において、少なくとも1個のユニットが、該ユニット引き抜き用の梃子の荷重点との接続用部材8を有し、少なくとも他の1個のユニットが、梃子の支点を支持、固定する支持・固定用部材9を有することが好ましい。
【0014】
なお、前記した第1の発明、第2の発明または第3の発明においては、中子のX方向における分割数、すなわち前記した輪切り状分割パネルの数は複数であればよく、制限されるものではないが、単重量を軽減し、人手で組み立て可能とするため、3個以上であることが好ましい。
また、前記した第1の発明、第2の発明または第3の発明においては、前記した輪切り状分割パネルの円周方向における分割数、すなわち中子を組み立てた時に外周が同一円上にあるユニットの合計数は複数であればよく、制限されるものではないが、上記と同様に、単重量の軽減のために、3個以上であることが好ましい。
【0015】
さらに、上記した輪切り状分割パネルの円周方向における分割数は、前記した複数の輪切り状分割パネルのそれぞれにおいて、他の輪切り状分割パネルとは独立して任意に設定することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、流し込み耐火物充填用の空隙を隔てて混銑車内壁を覆う流し込み耐火物の施工用組立式中子に関する。
本発明者らは、前記した従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、 [1]中子を、混銑車回転軸方向および円周方向に分割した組立式とする、[2] 分割したユニットに、混銑車回転軸方向抜きテーパーおよび円周方向抜きテーパーを設けることにより、中子脱枠作業工数の削減が可能であることを見出し、本発明に到った。
【0017】
すなわち、本発明の混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子は、本発明の前記した目的達成のために、下記構成(1) 〜(4) とすることが好ましい。
(1):中子を分割した組立式とする。
本発明の目的達成のためには、混銑車内張り用流し込み耐火物の施工用中子は、人力で持ち運べる寸法、重量のユニットに分割した、分割組立式中子であることが好ましい。
【0018】
混銑車の内部は、機械を搬入するには狭く、混銑車外部から大型機械のアームを持ち込む方式も考えられるが、設備コストが過剰にかさみ、工業的には採用が困難である。
また、機械的に精度良く中子を組み立てるためには精密機械が必要となり、この場合も機械の保守の面および設備コスト的に工業的には採用が困難である。
【0019】
したがって、実用可能な方法としては、人力で中子を組み立てる方式が簡便かつ経済的である。
この人力作業を容易に実現するために、本発明においては、分割組立式中子を用いる。
(2):中子の分割方式を、下記の方式とする。
【0020】
▲1▼;中子を、混銑車回転軸方向(=混銑車長手方向)(以下X方向とも記す)において輪切り状の複数個のパネルに分割する(以下、分割された輪切り状のパネルを、輪切り状分割パネルとも記す)。
▲2▼;上記した輪切り状分割パネルのそれぞれを、さらに、円周方向(以下L方向とも記す)において複数個のユニットに分割する。
【0021】
なお、分割された中子の最終の基本単位である上記した分割されたユニットを、以下分割ユニット、または単にユニットと記す。
(3):上記した輪切り状分割パネル、分割されたユニット(=ユニット)に下記のX方向抜きテーパーTXおよびL方向抜きテーパーTLを設ける。
▲1▼;〔X方向抜きテーパー〕
▲1▼−1:複数個の全ユニットのうち少なくとも1個のユニットにX方向抜きテーパーを設けるケース;
X方向およびL方向に分割された複数個の全ユニットのうち少なくとも1個のユニットを、該ユニットのX方向の両側の側面厚み部に、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(以下X方向抜きテーパーとも記す)を有するユニット形状とする。
【0022】
▲1▼−2:輪切り状分割パネルの少なくとも1個について輪切りの全周に渡りX方向抜きテーパーを設けるケース;
本発明については、さらに好ましくは、輪切り状分割パネルの少なくとも1個について輪切りの全周に渡りX方向抜きテーパーを設ける。
すなわち、X方向における輪切りの1セットのユニット、すなわち組み立てた時に外周が同一円上にあるユニットの1セット(以下輪切りの1セットとも記す)が、組み立てた状態において、各ユニットのX方向の両側の側面厚み部に、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(X方向抜きテーパー)を有するようなユニット形状とする。
【0023】
すなわち、輪切り状分割パネルの少なくとも1個を、輪切りの全周に渡り、該分割パネルのX方向の両側の側面厚み部に、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(X方向抜きテーパー)を有するようなユニット形状とする。
上記したX方向抜きテーパーは、好ましくは、相対する混銑車内壁が円筒状であるX方向の輪切り状分割パネルの少なくとも一個に設ける。
【0024】
また、円筒状の混銑車内壁に対応するX方向の位置で中子が3分割以上輪切りに分割されていれば、上記したX方向抜きテーパーは、X方向のほぼ中央部の輪切りの1セットのそれぞれのユニットに設けるのが、より好ましい。
▲2▼;〔L方向抜きテーパー〕
▲2▼−1:複数個の全ユニットのうち少なくとも1個のユニットにL方向抜きテーパーを設けるケース;
本ケースは、さらに下記(A) 、(B) の2ケースに分けられる。
【0025】
▲2▼−1(A) ;
前記した▲1▼−1のX方向抜きテーパーを設けたユニットと同一のユニットを、円周方向(L方向)の両縁部に、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパー(以下L方向抜きテーパーとも記す)を有するようなユニット形状とする。
【0026】
▲2▼−1(B) ;
前記した▲1▼−2のX方向抜きテーパーを有する複数ユニットのうち少なくとも1個のユニットに上記したL方向抜きテーパーを設ける。
▲2▼−2:輪切り状分割パネルのそれぞれにおいて、複数個のユニットのうち少なくとも1個のユニットにL方向抜きテーパーを設けるケース;
X方向の輪切り状分割パネルである輪切りの1セットのそれぞれにおいて、少なくとも1個のユニットが、円周方向(L方向)の両縁部に、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパー(以下L方向抜きテーパーとも記す)を有するようなユニット形状とする。
【0027】
以上詳述した中子の分割方式、中子ユニット(=ユニット)のテーパー形成状況を、後記の図1に示す本発明例を例として、表1〜表3に示す。
表1は、第1の発明に関する1例であり、前記した▲2▼−1(A) に該当する。
表2は、第2の発明に関する1例であり、前記した▲2▼−1(B) に該当する。
表3は、第3の発明に関する1例であり、前記した▲2▼−2に該当する。
【0028】
【表1】
Figure 0003815884
【0029】
【表2】
Figure 0003815884
【0030】
【表3】
Figure 0003815884
【0031】
(4):ユニットに、下記のユニット引き抜き用の部材を設ける。
▲1▼;〔ユニット連結用部材〕
ユニットの円周方向の縁部に、円周方向において隣り合うユニットを連結しかつユニット取り外しの回転軸となる回転軸式連結用部材を設ける。
▲2▼;〔梃子用の接続用部材、支持・固定用部材〕
少なくとも1個のユニットに、該ユニット引き抜き用の梃子の荷重点との接続用部材を設け、少なくとも他の1個のユニットに、梃子の支点を支持、固定する支持・固定用部材を設ける。
【0032】
なお中子の材質としては、合板などの木製材料、鋼鉄、アルミなどの金属材料、ガラス繊維強化プラスチック材料などが使用でき、本発明においては中子の材質は制限されるものではない。
以下、図面により、本発明における[1] 中子の分割方法および中子の構造、[2] 流し込み耐火物の施工方法、[3] 中子の取り外し方法の順に説明する。
【0033】
[1] :中子の分割方法および中子の構造
図1に、本発明の流し込み耐火物の施工用組立式中子の分割方法および構造の一例を、中子の断面図(a) および図(a) のY1−Y1矢視図(b) 、Y2−Y2矢視図(c) により示す。
なお、図1に示す中子の分割方式、中子ユニット(=ユニット)のテーパー形成状況は、前記した表3に示すとおりである。
【0034】
図1において、1は混銑車、2は中子、2A,2B,2C,2D,2E,2F は輪切り状分割パネル、2B1,2B2,2B3,2B4,2B5,2B6,2B7,2B8 、2D1,2D2,2D3,2D4,2D5,2D6,2D7,2D8 は輪切り状分割パネルのユニット(中子の最小分割単位)、2Mは炉口用中子、2M1,2M2 は分割された炉口用中子、3は鉄皮、4は混銑車炉口、5a,5b は中子鏡壁部の板、X方向は混銑車回転軸方向(=混銑車長手方向)、L方向は中子の円周方向(:混銑車円周方向)、TX1 、TX2 はユニットのX方向のテーパー、TXはX方向抜きテーパー、TL1 、TL2 はユニットのL方向のテーパー、TLはL方向抜きテーパー、V1は流し込み耐火物充填用の空隙、V2は流し込み施工時の混銑車内部作業空間を示す。
【0035】
また、tは、X方向に垂直な断面において円形である外周と混銑車内部作業空間V2と相対する内周とから定まる断面形状を有する中子の断面の厚みを示す。
なお、本発明における中子は、X方向に垂直な断面における中子の外周が円形であればよく、内周側の面は突起付き、凹凸付きなど不規則形状でもよいため、上記した中子の厚みtは、場所的に不均一、不規則であってよく、任意に設計可能である。
【0036】
図1に例示する中子2は、混銑車1の内壁の形状に対応して、外表面が円筒状のパネルおよび該円筒状のパネルの両側に接続された外表面が頂部を欠いた部分円錐状のパネル部および該部分円錐状のパネル部の頂部側に接続されたX方向に垂直な円盤形の板から構成されている。
また、図1に例示する中子2は、炉口部形状を整えるための炉口用中子2Mと併せて用いられる。
【0037】
炉口用中子2Mも2分割以上に分割することが、取り外しを容易にするために好ましい。
これらの2種の中子は、一体化することも可能である。
なお、図1に例示する中子2の場合、X方向かつL方向に分割した中子、すなわち中子の最終分割単位である分割ユニット(:ユニット)の数は、6×8=48個である。
【0038】
すなわち、図1の中子2は48個の中子(2Ai,2Bi,2Ci,2Di,2Ei,2Fi)(i=1〜8)および中子鏡壁部の板5a,5b から構成されている。
中子の分割方式は、単純な分割方式であることが好ましく、その場合、組み立ても簡易な方法で行うことができる。
このため、分割方式は、混銑車回転軸方向(X方向)において輪切り状に分割し、さらに、その輪切りの各々をさらに円周方向(L方向)において分割する。
【0039】
このような分割方式とすることにより、流し込み耐火物施工後の中子の分解の際には、X方向またはL方向において一部のユニットを取り外した後は、各ユニットがX方向またはL方向にせりあう力を容易に緩和することができ、中子の解体、回収を容易に行うことができる。
分解作業を容易にするためには、各分割ユニットがせりあう力を緩和することが必要であり、このため、組立式中子の分解時は、先ず、X方向について応力を緩和させるために、一個の輪切りの1セットを取り去ることが好ましい。
【0040】
また、最初に取り去る輪切りの1セットとしては、広い範囲に渡って応力を緩和できる理由で、X方向におけるほぼ中央の一個の輪切りの1セットを選択することが好ましい。
本発明の中子は、さらに、全ユニット(2A1〜2F8)のうち少なくとも1個のユニット(2D1) のX方向の両側の側面部に、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(X方向抜きテーパー)TXが設けられている(第1の発明)。
【0041】
また、本発明の中子は、前記した図1(a) に例示するように、X方向における、好ましくはほぼ中央部の輪切りの1セットの各々のユニット(2D1,2D2,2D3,2D4,2D5,2D6,2D7,2D8 )のX方向の両側の側面部に、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(X方向抜きテーパー)TXが設けられていることが好ましい(第2の発明、第3の発明)。
【0042】
これは、中子を組み立てた状態においては、X方向のユニット同士に応力がかかっており、ユニットを引き抜き易くするためである。
さらに、本発明の中子は、前記した図1(b) に例示するように、X方向の輪切り状分割パネル(2A,2B,2C,2D,2E,2F )である輪切りの1セットのうち少なくとも1セットにおいて、少なくとも1個のユニット(2D1)が、円周方向の両縁部に、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパー(L方向抜きテーパー)TLが設けられている(第1の発明、第2の発明)。
【0043】
さらに、本発明の中子は、前記した図1(b) 、(c) に例示するように、X方向の輪切り状分割パネル(2A,2B,2C,2D,2E,2F )である輪切りの1セットのそれぞれにおいて、少なくとも1個のユニット(2A1,2B1,2C1,2D1,2E1,2F1 )が、円周方向の両縁部に、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパー(L方向抜きテーパー)TLが設けられていることが、より好ましい(第3の発明)。
【0044】
これは、前記したX方向抜きテーパーによって、X方向にせりあう力は緩和できるが、しかし、L方向には未だ応力が残り、ユニットの引き抜きが容易でないためである。
L方向に対しては、1ユニットのみ除去すれば応力は緩和できるため、X方向の輪切り状分割パネルである輪切りの1セットの少なくとも1セット、または各々の1セットにおいて、1ユニットのみにL方向抜きテーパーTLを設ければよいが、2ユニット以上に設けても差し支えない。
【0045】
また、本発明においては、さらに、図2に例示するように、円周方向において分割されたユニットの円周方向の縁部に、円周方向(L方向)において隣り合うユニットを連結しかつユニット取り外しの回転軸となるユニット組み立て・分解用の回転軸式連結用部材6を設けることが好ましい。
回転軸式連結用部材(以下連結用部材とも記す)6を設けることで、ユニット引き抜き作業時に、勢い余ってユニットが飛び出したり、落下するという、不安全性を解消することができる。
【0046】
さらに、片側の連結用部材6を支点にしてその反対側を持ち上げることで、梃子を応用して、ユニット引き抜き作業を容易に行うことができる。
連結用部材6は、ユニット引き抜き作業を終えた後は不要であるので、取り外せる仕組みにすることが好ましい。
連結用部材6は、各ユニットに孔を開け、その孔同士を重ね、そこにボルトなどを通すことで容易に作製することができるが、そのより具体的な構成には制限はない。
【0047】
また、本発明においては、さらには、人力でもより容易に引き抜くことができるように、隣のユニットなど隣接したユニットを支点とするユニット引き抜き用の梃子を利用することが好ましい。
すなわち、例えば、図2に示すように、ユニットの少なくとも1個のユニットが、該ユニット引き抜き用の梃子7の荷重点7aとユニットとの接続用部材8を有し、少なくとも他の1個のユニットが、梃子の支点7bを支持、固定する支持・固定用部材9を有することが好ましい。
【0048】
この場合、L方向で隣接するユニットに設けた支持・固定用部材9を荷重支持点として引き抜くことが好ましい。
なお、図2において、7cは荷重点7aと接続用部材8との接続部材を示す。
接続用部材8としては、フックなど接続部材7cを取り付けることが可能な部材であればその構成は制限されない。
【0049】
上記した梃子用の各部材は、ユニットに固定した構造としても良いし、取り付け、取り外しができる構造としても良い。
以上、本発明の中子の分割方法および構造について説明したが、以下に、本発明の中子を使用した流し込み耐火物の施工方法の好ましい1例について説明する。
【0050】
[2] :流し込み耐火物の施工方法
図3に、本発明に係わる流し込み耐火物施工後、脱枠作業前の混銑車壁面の層構造を模式的に断面図により示す。
図3において、2は中子、3は鉄皮、10は流し込み材(:流し込み耐火物)、11はバックアップ材、12はアンカー、13はアンカーホルダを示す。
【0051】
まず、アンカーホルダ13を利用して、鉄皮3にアンカー12を固定する。
このアンカー12によって、流し込み耐火物施工時の中子2固定用の基準だし、施工後の流し込み耐火物の鉄皮3への支持が可能となる。
アンカー12は、施工する流し込み耐火物と同程度の耐用性を有する耐火物であればいずれも使用でき、流し込み材のプレキャスト品、混銑車用レンガなどが好ましく使用できる。
【0052】
次に、吹き付け材、スタンプ材またはレンガなどバックアップ材11を、鉄皮3内面に内張りする。
この内張りは、そのさらに内側に施工する流し込み耐火物が何らかの理由により滑落したり、亀裂を生じたりして、容器内張りとしての機能を失った場合の鉄皮の保護材となる。
【0053】
また、後工程で施工する流し込み耐火物の支持を補強するために、アンカー構造を持つ永久煉瓦を部分的に使用することが好ましい。
上記した吹き付け材、スタンプ材、レンガなどのバックアップ材は、単独あるいは重ね合わせて使用することができる。
次に、アンカー12を基準として、ユニット2Ai 〜2Fi を用いて混銑車1内部に中子2を組み立てた後、さらに分割された炉口用中子2M1 、2M2 を炉口部に組みつけ、流し込み耐火物を施工する。
【0054】
流し込み耐火物としては、公知のアルミナ、炭化珪素、炭素、スピネル、マグネシアなどの単独または混合物が使用できるが、流し込み耐火物の素材は特に制限されない。
流し込み方法としては、モルタルミキサーなどを使用し、上記に例示した材料に水を添加混合した後、スクイズポンプなどで圧送し、前記したバックアップ材11と中子2の間に混銑車炉口4近辺から流し込み施工を行う。
【0055】
また、単に、高所から自重のみで落し込み、施工することもできる。
施工後、1〜100 時間程度放置し、流し込み耐火物を硬化させる。
次に、硬化終了を確認した後、前記した施工方法、下記の中子の取り外し方法により、中子を分解、取り外し、混銑車外部に取り出す。
[3] :中子の取り外し(脱枠)方法
以下、中子の取り外し方法に関して、前記した本発明例である図1、図2により説明する。
【0056】
中子2の取り外し作業は、混銑車1内部に入り、混銑車回転軸方向(X方向)のほぼ中央部の1個の輪切りの1セットのユニット(2D1,2D2,2D3,2D4,2D5,2D6,2D7,2D8 )、すなわち、X方向の両側の側面部にX方向抜きテーパーTXを設けた輪切り状分割パネル2Dから開始する。
また、この場合、円周方向の両縁部にL方向抜きテーパーTLを設けたユニット2D1 から取り外しを開始する。
【0057】
ユニット2D1 を取り外した後、2D2 〜2D8 を取り外し、輪切り状分割パネル2Dの脱枠を終了する。
以上述べた作業は、適宜混銑車1を回転させることにより、作業を手の届く範囲で容易に行うことができる。
また、引き抜き作業は、ユニットに設けた前記した接続用部材8、支持・固定用部材9を利用し、梃子7により行うことが好ましい。
【0058】
本発明によれば、抜きテーパーの作用により、引き抜きに大きな力を必要としない。
次に、隣の輪切り状分割パネル2Cまたは2Eの脱枠作業に移る。
図1に示す中子の場合、輪切り状分割パネルのそれぞれの1ユニットにL方向抜きテーパーTLを設けているため、容易に引き抜き作業を実行できる。
【0059】
1個のユニットを引き抜いた後は、応力を緩和でき、他のユニットを容易に引き抜くことができる。
また、本発明の好適態様によれば、この引き抜き作業において、円周方向において隣り合うユニットを連結しかつユニット取り外しの回転軸となる組み立て・分解用の回転軸式連結用部材6を利用することにより、より安全かつ効率的に引き抜き作業を実施できる。
【0060】
さらに、本発明の好適態様によれば、これらのユニットのそれぞれに対して、隣のユニットなど隣接した他のユニットを支点とするユニット引き抜き用の梃子7を利用できるので、さらに容易に引き抜き作業を実行できる。
最後に、炉口用中子を2分割し、クレーンを利用して炉外方向へ取り外す。
上記した施工方法で中子を分解、取り外し、混銑車外部に取り出した後、硬化直後の材料中には多量の添加水分が残存しているため、流し込み耐火物材料を加熱、乾燥し、該水分を除去し、内張り用不定形耐火物の全施工工程を完了する。
【0061】
この乾燥工程は、例えば、混銑車1内にバーナーを搬入し、流し込み耐火物材料を加熱することにより行い、通常、5〜100 時間程度が必要である。
乾燥には長時間かける方が材質欠陥の防止には好適であるが、経済的観点より短時間で行う方が好ましい。
以上、本発明の構成、好適態様および作用、効果について説明した。
【0062】
【実施例】
以下、実施例に基づき、本発明の構成、作用、効果を具体的に説明する。
(実施例)
本実施例においては、 250tの受銑能力を有する混銑車内壁に、前記した図1に示す本発明の中子を用い、前記した図3に示す層構造を形成した。
【0063】
すなわち、先ず、流し込み材のプレキャスト材で作製したアンカー12を、ステンレス鋼で作製し、鉄皮3に溶接したアンカーホルダ13に差し込み、固定した。同様に所定数のアンカーを鉄皮3に固定した後、混銑車1内部全面に永久張り用煉瓦をモルタルを用いて敷き詰めた。
ただし、アンカー12周辺にはスタンプ材を施工した。
【0064】
煉瓦固定用のモルタルが乾くのを待って、混銑車1内部にアルミ製の中子2を組み立て、アンカー上に固定した。
中子2は、図1に示す通り、混銑車内鏡壁部の円盤形の板5a、5b2枚と混銑車回転軸方向(X方向)に6分割、円周方向(L方向)に8分割した合計48個のユニット( 2A1〜2A8 、 2B1〜2B8 、 2C1〜2C8 、 2D1〜2D8 、 2E1〜2E8 、 2F1〜2F8 )を使用した。
【0065】
中子2のうち、炉口方向に相当するユニット2C4 には、人の出入りできる開口を設けてあり、中子セット完了後の人の出入りが可能である。
隣り合うユニット同士はボルトによって十分に固定した。
すなわち、鏡壁部の板5a,5b および各ユニット(2Ai,2Bi,2Ci,2Di,2Ei,2Fi) は接触するもの同士をボルトで連結した。
【0066】
各中子ユニットの四隅にはアンカーを配置した。
前記したように、混銑車回転軸方向(X方向)のほぼ中央部の1個の輪切りの1セットのユニット(2D1,2D2,2D3,2D4,2D5,2D6,2D7,2D8 )(8個)には、X方向抜きテーパーTXを設けた。
また、この輪切り状分割パネル2Dについては、引き抜きが容易になるように、X方向の長さを他の輪切り状分割パネル2A,2B,2C,2E,2Fに比べて短くした。
【0067】
さらに、全ての輪切り状分割パネル2A,2B,2C,2D,2E,2F のそれぞれにおいて、各1個のユニット(2A1,2B1,2C1,2D1,2E1,2F1 )(6個)には、L方向抜きテーパーを設けた。
また、この各1ユニット(2A1,2B1,2C1,2D1,2E1,2F1 )については、引き抜きが容易になるように、L方向の長さを、他のユニットに比べて短くした。
【0068】
さらに、各ユニットには図2に示す梃子7用の接続用部材8、支持・固定用部材9を付設した。
なお、図4に示すように、中子2が施工中の土圧に耐えるように、中子2を混銑車内側からアングル14を用いて補強した。
中子2を組み立てた後、ボルテックスミキサー中で所定の流し込み耐火物原料および水を混合し、この混合物を混銑車炉口4より高い位置から、前記した本発明の中子2とバックアップ材11の間に流し込み施工を行った。
【0069】
中子、中子ユニットの仕様などは、流し込み耐火物の施工厚さが150 〜400mm となるように設計した。
なお、使用した流し込み耐火物は、組成が10%SiC −3%C−Al2O3 で、外枠で6.0 %の水を添加したものである。
1日養生した後、中子2を解体し、混銑車1外部に取り除き、常温から900 ℃まで徐々に昇温、保持して4日間をかけて乾燥を完了した。
【0070】
中子の脱枠作業については、図1において各輪切り状分割パネルを2D→2C→2B→2E→2F→2Aの順に、また輪切り状分割パネルの各ユニットの中では、例えば2D1 →2D2 →2D3 →2D4 →2D5 →2D6 →2D7 →2D8 のように、数字の若いユニットから順に脱枠を行った。
また、人が出入りし易いように、混銑車炉口4を横に倒し、例えば、図1(b) 、(c) においてmが上になるように混銑車1を回転させ、輪切り状分割パネル2Dの中子ユニットから脱枠を行った。
【0071】
前記したように、輪切り状分割パネル2Dには、2Cおよび2Eに接するX方向の側面部に、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がったX方向抜きテーパーTXを設け、さらに1個のユニットには、円周方向の両縁部に、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がったL方向抜きテーパーTLを設けてある。
脱枠工事においては、先ず、2D1 のユニットを図2に示す梃子構造によって抜き去った。
【0072】
この結果、抜きテーパーの効果で、容易に中子枠を引き抜くことができた。
さらに加えて、梃子の効果で、勢い余ってユニットで怪我をする危険性を皆無にすることができた。
次に、回転軸式連結用部材(:連結用部材)6を利用して2D2 のユニットを取り去った。
【0073】
連結用部材6は、梃子の原理でユニットの取り外しを容易にするのみならず、図5のユニット2D4 に例示するように、ユニットの落下を防止する効果があり、安全性が高まった。
なお、連結用部材6は、円周方向のユニット接触箇所に、各ユニットそれぞれに2箇所設けた。
【0074】
また、連結用部材6は、ワンタッチボルトで接続する構成とし、中子枠を流し込み材から剥離させたあとは容易に取り外せる仕組みになっている。
次に、例えば図1(b) 、(c) でmの方向が下になるように混銑車を回転させ、図5に例示するように、連結用部材6を利用して数字の若いユニットから順に脱枠した。
【0075】
以上述べた手順に従って、他の中子の輪切りの1セットを2C→2B→2E→2F→2Aの順に取り去った。
これらの中子の輪切りの1セット2A〜2C各々のX方向当接部、2Eと2FのX方向当接部にはX方向抜きテーパーは無いが、図1(c) のユニット2B1 に例示するように、これらの中子の輪切りの1セット2A〜2C,2E,2F のそれぞれについて、1個のユニットに前記したL方向抜きテーパーを設けてあり、各ユニットが、容易かつ迅速に取り外せた。
【0076】
なお、上記した中子の輪切りの1セット2A〜2Fの各々のユニットには、梃子を利用するための接続用部材8、支持・固定用部材9を設けてあるため、取り外し作業時は、梃子の利用により、より容易かつ迅速に作業が進行した。
以上述べた本発明の中子の構成、作用により、本発明によれば、3人で作業した結果、脱枠作業の工数を合計24人×時間とすることができた。
【0077】
また、本発明によれば、本発明における抜きテーパー、梃子構造および回転軸式連結用部材の効果により、脱枠作業を迅速に効率的に行うことが可能であるばかりでなく、安全に行うことができた。
また、本発明によれば、ボーリングによって施工厚みを測定した結果から、流し込み耐火物の施工精度が良好であることが、施工評価実験で分かった。
【0078】
これは、本発明の中子がX方向に輪切り状に分割されているため、アンカーによる中子の基準だしにより混銑車鉄皮との間隔を正確に設定できたためと考えられる。
次に、本発明の中子を用いて流し込み耐火物を施工した混銑車を、実際の操業で400 回受銑と出銑を繰り返した後、耐火物の損耗を調べた。
【0079】
その結果、流し込み耐火物の厚さ減少は、110mm ±25mmの範囲内であり、従来の内張り全面に煉瓦を使用した実績値の典型例と大差の無いものであった。
(比較例)
前記した実施例において、図6に示す中子、すなわち、中子の抜きテーパー、ユニットの連結用部材および梃子用部材を設けない以外は分割数が同じ中子を使用して 250tの受銑能力を有する混銑車内壁に、前記した図3に示す層構造を形成した。
【0080】
本比較例においては、中子に抜きテーパーが無く、中子のセット時には人が出入りし易いように、炉口を横に倒し、図6(b) でmの方向が上になるように混銑車を回転させ、下のユニットから組み立てた。
各ユニット間はボルトで接続したが、最後の最上部のユニットは抜きテーパーが無く、内側からはセットできないので、平板を隣接するユニットと溶接してセットした。
【0081】
各輪切り状分割パネルの内で1ユニットづつこのように溶接固定を行った。
流し込み耐火物施工後のユニットの脱枠時には、中子セット時と同様に、炉口を横に倒し、図6(b) でmの方向が上になるように混銑車を回転させ、溶接で取り付けたユニットを切断してユニットのL方向に競り合う力を緩和して脱枠を行った。
【0082】
その他の施工方法は、実施例と同様に行った。
本比較例においては、各ユニットの脱枠時において、上記のようにL方向へ競り合う力は緩和できたが、X方向への競り合う力は緩和できないため、図7に模式的に示すように、ハンマ31により中子ユニットをX方向(f4 方向)に槌打しつつ、チェーンブロック30で中子ユニットを引き出し、脱枠することが必要であり、6人で作業した結果、合計54人×時間の工数を必要とした。
【0083】
上記した比較例の中子を用いて流し込み耐火物を施工した混銑車を、実際の操業で400 回受銑と出銑を繰り返した後、耐火物の損耗を調べた。
その結果、流し込み耐火物の厚さ減少は、110mm ±25mmの範囲内であり、従来の内張り全面に煉瓦を使用した実績値の典型例と大差の無いものであった。
以上本発明の実施例および比較例について述べたが、本発明の中子を用いることにより、脱枠作業工数が、比較例に対して55%削減でき、大幅な工数の削減が達成可能となった。
【0084】
また、脱枠作業の安全性が著しく改善された。
以上本発明の実施例について述べたが、以上述べた本発明の作用から明らかなように、本発明における中子の分割方式は、図1に示される分割方式に限定されるものでは無く、X方向の分割数、L方向の分割数は任意に設定可能であり、またL方向の分割数も、輪切り状分割パネルのそれぞれにおいて、他の輪切り状分割パネルとは独立に任意に設定することが可能である。
【0085】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、混銑車内張り流し込み耐火物の流し込み施工における施工精度が優れ、流し込み耐火物養生後の中子脱枠作業工数の大幅な削減を達成したばかりでなく、作業の安全性の著しい改善に成功した。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の流し込み耐火物の施工用組立式中子の分割方法および構造の一例を示す中子の断面図(a) 、Y1−Y1矢視図(b) およびY2−Y2矢視図(c) である。
【図2】本発明の流し込み耐火物の施工用組立式中子の一例を示す断面図である。
【図3】耐火物施工後、脱枠作業前の混銑車壁面の層構造を模式的に示す断面図である。
【図4】中子組み立て後の補強用アングル取付け状況の一例を示す中子の側面図(a) およびY3−Y3部断面図(b) である。
【図5】本発明の流し込み耐火物の施工用組立式中子の回転軸式連結用部材の使用法を示す中子の断面図である。
【図6】比較例の流し込み耐火物の施工用組立式中子の分割方法および構造を示す中子の断面図(a) およびY4−Y4矢視図(b) である。
【図7】比較例のユニットの取り外し方法を示す中子の断面図である。
【符号の説明】
1 混銑車
2 中子
2A,2B,2C,2D,2E,2F 、20A,20B,20C,20D,20E,20F 輪切り状分割パネル
2B1,2B2,2B3,2B4,2B5,2B6,2B7,2B8 、2D1,2D2,2D3,2D4,2D5,2D6,2D7,2D8 、20D1,20D2,20D3,20D4,20D5,20D6,20D7,20D8 ユニット(:中子ユニット)
2M 炉口用中子
2M1,2M2 分割された炉口用中子
3 鉄皮
4 混銑車炉口
5a,5b 中子鏡壁部の板
6 回転軸式連結用部材(:連結用部材)
7 ユニット引き抜き用の梃子
7a 荷重点
7b 梃子の支点
7c 接続部材
8 接続用部材
9 支持・固定用部材
10 流し込み材(流し込み耐火物)
11 バックアップ材
12 アンカー
13 アンカーホルダ
14 アングル
30 チェーンブロック
31 ハンマ
X方向 混銑車回転軸方向(=混銑車長手方向)
L方向 中子の円周方向(=混銑車円周方向)
TX1 、TX2 、TL1 、TL2 テーパー
TX X方向抜きテーパー
TL L方向抜きテーパー
f1 ユニット引き抜き方向
f2 ユニット移動方向
f3 チェーンブロックのチェーン移動方向
f4 ハンマ槌打方向(X方向)
V1 流し込み耐火物充填用の空隙
V2 流し込み施工時の混銑車内部作業空間

Claims (5)

  1. 混銑車回転軸方向であるX方向に垂直な断面において円形である外周と混銑車内部作業空間と相対する内周とから定まる断面形状を有する流し込み耐火物の施工用組立式中子(2) であって、該中子(2) が、X方向において輪切り状の複数個のパネル(2A〜2F)に分割され、さらに、該分割パネル(2A〜2F)のそれぞれが、円周方向において複数個のユニット(2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8)に分割されるとともに、該複数個のユニット(2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8)の少なくとも1個のユニット(2D1) が、X方向の両側の側面厚み部に設けた、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(TX)と、円周方向の両縁部に設けた、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパー(TL)とを有することを特徴とする混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子。
  2. 混銑車回転軸方向であるX方向に垂直な断面において円形である外周と混銑車内部作業空間と相対する内周とから定まる断面形状を有する流し込み耐火物の施工用組立式中子(2) であって、該中子(2) が、X方向において輪切り状の複数個のパネル(2A〜2F)に分割され、さらに、該分割パネル(2A〜2F)のそれぞれが、円周方向において複数個のユニット(2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8)に分割されるとともに、前記輪切り状分割パネルの少なくとも1個(2D)において、複数個のユニット(2D1〜2D8)のそれぞれが、X方向の両側の側面厚み部に設けた、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(TX)を有し、さらに該複数個のユニット(2D1〜2D8)の少なくとも1個(2D1) が、円周方向の両縁部に設けた、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパー(TL)を有することを特徴とする混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子。
  3. 混銑車回転軸方向であるX方向に垂直な断面において円形である外周と混銑車内部作業空間と相対する内周とから定まる断面形状を有する流し込み耐火物の施工用組立式中子(2) であって、該中子(2) が、X方向において輪切り状の複数個のパネル(2A〜2F)に分割され、さらに、該分割パネル(2A〜2F)のそれぞれが、円周方向において複数個のユニット(2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8)に分割されるとともに、前記輪切り状分割パネル(2A〜2F)の少なくとも1個(2D)において、複数個のユニット(2D1〜2D8)のそれぞれが、X方向の両側の側面厚み部に設けた、混銑車内部方向に対してX方向の両側に広がった抜きテーパー(TX)を有し、さらに、前記輪切り状分割パネル(2A〜2F)のそれぞれにおいて、前記複数個のユニット(2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8)の少なくとも1個のユニット(2A1〜2F1)が、円周方向の両縁部に設けた、混銑車内部方向に対して円周方向の両側に広がった抜きテーパー(TL)を有することを特徴とする混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子。
  4. 前記円周方向において分割されたユニット(2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8)の円周方向の縁部に、円周方向において隣り合うユニットを連結しかつユニット取り外しの回転軸となる回転軸式連結用部材(6) を有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子。
  5. 前記円周方向において分割されたユニット(2A1〜2A8, 2B1〜2B8, 2C1〜2C8, 2D1〜2D8, 2E1〜2E8, 2F1〜2F8)において、少なくとも1個のユニットが、該ユニット引き抜き用の梃子の荷重点との接続用部材(8) を有し、少なくとも他の1個のユニットが、梃子の支点を支持、固定する支持・固定用部材(9) を有することを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の混銑車内張り流し込み耐火物の施工用組立式中子。
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