図13にディザ法に用いられるディザマトリクスの例を示す。ただし、説明を簡単にするために、2値化のディザ法を例にして説明するが、多値化の場合でも基本的な考え方は同じである。ディザ法では、図13(a)に示すような、例えば0〜15の閾値が位置に応じて設定された4×4のディザマトリクスを用いて16階調の入力画像データの各画素値と閾値との比較を行ない、各画素のオン,オフを決定する。入力画像データが256階調の場合には、図13(b)に示すように、図13(a)のそれぞれの値を16倍した値が閾値として使用される。
しかし、ディザ法では、同一パターンのディザマトリクスを用いて2値化処理を行なっているため、2値化処理を行った画像は規則的な周期パターンが発生し易く、ディザ特有の繰返しのテクスチャが発生するという問題がある。
誤差拡散法は、元画像の各画素を2値化する際に生じた誤差(以下、量子化誤差)を、周辺の未だ2値化されていない画素に配分しながら2値化を行なう方法である。2値化される画素を注目画素とすれば、注目画素の量子化誤差は、注目画素からの相対的位置に応じた重み付けが行なわれた後、注目画素の周辺に位置する2値化処理前の各画素値に加算される。
図14に誤差拡散法に用いられている重み係数マトリクスの例を示す。図14の例では、水平方向(処理方向)をX方向とし、垂直方向をY方向とし、注目画素(IX,IY)を含む2×3の重み係数マトリクスが示されている。重み係数マトリクスは、注目画素(IX,IY)を基準とした各相対的位置(左下隣、下隣、右下隣、右隣)の重み係数を示している。例えば注目画素(IX,IY)と閾値とが比較され、閾値より大きい場合には注目画素(IX,IY)をオン、小さい場合には注目画素(IX,IY)をオフにする。次に、決定されたオン又はオフの画素値と注目画素(IX,IY)の画素値との差分(量子化誤差)を、重み係数マトリクスに基づいて、周辺の2値化処理前の画素へ配分する。ただし、注目画素(IX,IY)の左隣りの画素(IX-1,IY)は注目画素(IX,IY)よりも先に量子化されているため、量子化誤差は配分されない。
例えば、量子化誤差をErrとすれば、注目画素(IX,IY)の右隣の画素(IX+1,IY)、右下隣の画素(IX+1,IY+1)、下隣の画素(IX,IY+1)、左下隣の画素(IX-1,IY+1)には、夫々Err×(7/16)、Err×(1/16)、Err×(5/16)、Err×(3/16)が配分される。
誤差拡散法は、重み係数マトリクスに基づいて量子化誤差を周辺の未処理画素へ配分することにより、2値化された画像にモアレ模様が出にくいなど、ディザ法などと比較して画質が優れているという長所を有する。
しかし、誤差拡散法では、1画素毎に同一マトリクスに基づいて誤差を拡散させるため、ハイライト部分などにワーム(ドットが部分的につながっている部分)が発生するという問題があり、例えば2値化を行なう際の閾値にノイズを加える等の対策がなされている(例えば、非特許文献1参照)。
また、最近では、インクジェットプリンタなどの画像形成装置の性能向上に伴って、2値出力ではなく、3値出力又は4値出力などの多値出力を可能とした画像形成装置も多く、これらの画像形成装置では例えば多値誤差拡散法などの多値化処理が行なわれる。多値誤差拡散法の原理は、基本的には2値化の誤差拡散法と同様であるが、入力画像データを2以上の閾値を用いて量子化し、3値以上の画像データを出力する点で2値化とは相違する。
例えば、濃度が0から255の256階調の画像データに対して4値出力の誤差拡散処理を行なう場合、出力値(閾値処理により量子化された値)を0,85,171,255とし、閾値を42,128,214とすることが可能である。この場合、注目画素の画素値と3つの閾値とを順次比較して出力値が決定される。例えば、閾値42よりも出力値が小さい場合は0に決定され、そうでなければ閾値128よりも出力値が小さい場合は85に決定され、そうでなければ閾値214との比較により出力値は171又は255に決定される。
しかし、4値画像などの多値化画像においては、中間の濃度領域でドットパターンが均一になるため、トーンギャップ(階調が不連続に変化する現象)が発生するという問題がある。例えば出力値が0,85,171又は255の場合、中間濃度部の85,171付近では、同一濃度が集中してトーンギャップが発生し易い。トーンギャップは、複数の閾値で量子化処理を行なっている限りは必ず生じる。例えば、2値出力の場合でも0又は255付近においてトーンギャップが生じるが、多値出力の場合は、人間の目に付き易い中間濃度の出力値が存在するため、中間濃度部のトーンギャップが目立ち易い。中間濃度部のトーンギャップは、中間濃度領域に用いる複数の閾値を適切に選択して量子化処理するというようなアルゴルリズムでは、完全に防ぐことは困難である。
また、上記特許文献1に記載された方法では、予め用意されたハーフトーンスクリーンマトリクスを使用しているため、上述した誤差拡散法又はディザ法などと同様のテクスチャ等の発生が生じるという問題がある。すなわち、上記特許文献1が開示する方法では、ハーフトーンの周波数領域において、上述した従来と同様の方法を用いてハーフトーン処理を行なっているに過ぎない。
さらに上述した夫々の従来技術においては、各色のドットの重なりに対する考慮はされておらず、各色間でドットが重なって紙上に形成されるのみならず、逆にいずれの色のドットも形成されない画素が発生しやすくなり、これに起因して粒状感が悪化し、ザラツキのあるノイジーな画像となる欠点があった。これを回避するためには例えばディザ法では各色毎に異なるディザマトリクスを使用し、又は、各色毎にドットの有無を判定してドット位置をずらすなどの特別な処理が必要になるため、メモリ容量の増加、計算量の増加を招来して計算コストが増加するという問題があった。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重ならないように、前記所定の2つの色成分毎に周波数変換して得られた空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更することで、画質の劣化が人間の目に付き難い変更処理により、夫々の色成分のドットの位置を制御してドット間における重なりを防止し、異なる色成分のドットの重なりによる画質の劣化を低減することが可能な画像処理装置、画像処理方法、画像形成装置、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重なるように、前記所定の2つの色成分毎に周波数変換して得られた空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を同一に変更することで、所望の色成分のドットを重ねて形成することが可能な画像処理装置、画像処理方法、画像形成装置、コンピュータプログラム及び記録媒体を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、周波数変換して得られた空間周波数成分を量子化することで、処理対象である周波数成分のデータ量を削減し、処理負担を低減することが可能な画像処理装置を提供することにある。
本発明に係る画像処理装置は、複数の色成分を有する画像データを空間周波数成分に変換する周波数変換手段と、該周波数変換手段で変換された空間周波数成分に対し、所定周波数領域の空間周波数成分を変更する変更処理を行なう変更手段と、該変更手段で変更処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する逆周波数変換手段と、該逆周波数変換手段で逆変換された画像データの階調数を所定の閾値に基づいて減少させる閾値処理手段とを備える画像処理装置であって、前記変更手段は、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重ならないように、前記所定の2つの色成分の空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更する変更処理を行なうべく構成されていることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、前記所定の2つの色成分のうちの一方はブラックであることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、前記所定の2つの色成分は、シアン及びマゼンタであることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、複数の色成分を有する画像データを空間周波数成分に変換する周波数変換手段と、該周波数変換手段で変換された空間周波数成分に対し、所定周波数領域の空間周波数成分を変更する変更処理を行なう変更手段と、該変更手段で変更処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換する逆周波数変換手段と、該逆周波数変換手段で逆変換された画像データの階調数を所定の閾値に基づいて減少させる閾値処理手段とを備える画像処理装置であって、前記変更手段は、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重なるように、前記所定の2つの色成分の空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を同一に変更する変更処理を行なうべく構成されていることを特徴とする。
本発明に係る画像処理装置は、前記周波数変換手段で変換された空間周波数成分を量子化する量子化手段と、前記変更手段で変更処理が行なわれた空間周波数成分を逆量子化する逆量子化手段とを備え、前記変更手段は、前記量子化手段で量子化された空間周波数成分に対し、所定周波数領域の空間周波数成分を変更するように構成されており、前記逆周波数変換手段は、前記逆量子化手段で逆量子化された空間周波数成分を画像データに逆変換するように構成されていることを特徴とする。
本発明に係る画像処理方法は、複数の色成分を有する画像データを空間周波数成分に変換するステップと、変換された空間周波数成分に対し、所定周波数領域の空間周波数成分を変更する変更処理を行なうステップと、変更処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換するステップと、逆変換された画像データの階調数を所定の閾値に基づいて減少させるステップとを有する画像処理方法であって、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重ならないように、前記所定の2つの色成分の空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更する変更処理を行なうことを特徴とする。
本発明に係る画像処理方法は、複数の色成分を有する画像データを空間周波数成分に変換するステップと、変換された空間周波数成分に対し、所定周波数領域の空間周波数成分を変更する変更処理を行なうステップと、変更処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換するステップと、逆変換された画像データの階調数を所定の閾値に基づいて減少させるステップとを有する画像処理方法であって、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重なるように、前記所定の2つの色成分の空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を同一に変更する変更処理を行なうことを特徴とする。
本発明に係る画像形成装置は、上述した画像処理装置を備え、該画像処理装置で階調を減少させた画像データの形成処理を行なうように構成されていることを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、複数の色成分を有する画像データを空間周波数成分に変換させる手順と、コンピュータに、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重ならないように、前記所定の2つの色成分の変換された空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更する変更処理を行なわせる手順と、コンピュータに、変更処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換させる手順と、コンピュータに、逆変換された画像データの階調数を所定の閾値に基づいて減少させる手順とを実行させることを特徴とする。
本発明に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、複数の色成分を有する画像データを空間周波数成分に変換させる手順と、コンピュータに、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重なるように、前記所定の2つの色成分の変換された空間周波数成分に対し、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を同一に変更する変更処理を行わせる手順と、コンピュータに、変更処理が行なわれた空間周波数成分を画像データに逆変換させる手順と、コンピュータに、逆変換された画像データの階調数を所定の閾値に基づいて減少させる手順とを実行させることを特徴とする。
本発明に係る記録媒体は、上述したコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とする。
本発明による場合は、複数の色成分を有する画像データを、所定の2つの色成分毎に空間周波数成分に変換し、変換した空間周波数成分に対し、前記所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重ならないように、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更する変更処理を行なう。例えば、ブラック成分及び他の色成分の空間周波数成分について、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更する変更処理を行ない、又は、シアン成分及びマゼンタ成分の空間周波数成分について、高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更する変更処理を行なう。変更処理を行なった空間周波数成分を画像データに逆変換する。また、逆変換した画像データの階調数を、所定の閾値を用いて例えば4値化するなどして減少させ、階調数を減少させた画像データを、例えば記録用紙に形成する。
本発明による場合は、複数の色成分を有する画像データを、所定の2つの色成分毎に空間周波数成分に変換し、変換した空間周波数成分に対し、前記所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重なるように、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を同一に変更する変更処理を行なう。変更処理を行なった空間周波数成分を画像データに逆変換する。また、逆変換した画像データの階調数を、所定の閾値を用いて例えば4値化するなどして減少させ、階調数を減少させた画像データを、例えば記録用紙に形成する。
本発明による場合は、周波数変換して得られた空間周波数成分を量子化し、量子化された空間周波数成分に対して、上述した変更処理を行なう。また、変更処理を行なった空間周波数成分を逆量子化し、逆量子化した空間周波数成分を画像データに逆変換し、逆変換した画像データの階調数を、所定の閾値を用いて例えば4値化するなどして減少させ、階調数を減少させた画像データを、例えば記録用紙に形成する。
本発明によれば、所定の2つの色成分毎に周波数変換して得られた空間周波数成分に対して、前記所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重ならないように、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を逆に変更することで、夫々の色成分のドットの位置を制御してドット間における重なりを防止し、異なる色成分のドットの重なりにより生ずる画質の劣化を低減することができる。従って、各色成分のドットの有無を判定し、夫々のドットの位置をずらすような複雑な処理を行なう構成を備えることなく、各色のドットの形成位置を容易に制御し、粒状性を抑制した滑らかで高画質の画像データを生成することができる。
特に、ブラック成分と他の色成分との空間周波数成分について、各色成分の画像のドットが相互に重ならないように変更することにより、ブラックのように、使用された場合に他の色に対して最も影響が高く、ブラックとのドットの重なりが大きな画像劣化の要因になる場合には画質の向上に最も効果的である。また、シアン成分とマゼンタ成分との空間周波数成分について、各色成分の画像のドットが相互に重ならないように変更することにより、シアン及びマゼンタのように、最も使用される頻度の高い色であって、ドットの重なりが発生しやすく、ドットが重なった場合に画像の劣化が起こりやすい色間についても、画質の向上に効果的である。
また、低周波数領域の空間周波数成分は、画像データのおおまかな部分を表しているため、変更を行なった場合人間の目に付き易く、画質の劣化が顕著となる。低周波数領域以外の空間周波数成分は、画像データの細かな部分を表しているため、変更を行なった場合であっても人間の目に付き難く、画質はほとんど低下しない。従って、低周波数領域以外の空間周波数成分を変更することにより、画像データにおけるドットの位置制御を行なうことができるとともに、画像データの出力値付近で発生するトーンギャップの問題を改善し、ディザ法で発生していたテクスチャ及び誤差拡散法で発生していたワームの発生を防止し、品質の良い2値画像又は4値画像などを生成することができる。
本発明によれば、所定の2つの色成分毎に周波数変換して得られた空間周波数成分に対して、所定の2つの色成分の画像のドットが相互に重なるように、全周波数領域のうちの高周波数領域における周波数成分の符号を同一に変更することで、所望の色成分のドットを重ねて形成することが可能となり、例えば、インクジェット方式の画像形成装置を用いた場合に、隣接する他の色のドットへのインクの滲みを防止し、インクの滲みにより生ずる画質の劣化を低減することができる。
本発明によれば、周波数変換して得られた空間周波数成分を量子化し、量子化された空間周波数成分に対して、上述したような変更処理を行なうことにより、処理対象である周波数成分のデータ量を削減することができ、画像処理装置における処理負担を低減することができる。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る階調再現処理装置(画像処理装置)10の一構成例を示すブロック図である。階調再現処理装置10は、入力画像データPi(X,Y)の階調数(例えば256階調)を2値又は4値などに減少させた出力画像データPo(X,Y)を生成する画像処理装置である。ここで、入力画像データPi(X,Y)は、X方向(右方向)及びY方向(下方向)の2次元マトリクス状に配置された画素によって構成された画像データのY番目のライン上のX番目の画素位置における画素データであり、多数の入力画像データPi(X,Y)により2次元画像を構成している。
また、入力画像データPi(X,Y)は、CMYK(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー、K:黒)色成分におけるC成分の画像データPic(X,Y)、M成分の画像データPim(X,Y)、Y成分の画像データPiy(X,Y)、K成分の画像データPik(X,Y)により構成されるカラー画像データである。尚、説明を簡略化するため、以下の説明では、入力画像データPic(X,Y)、Pim(X,Y)、Piy(X,Y)、Pik(X,Y)の夫々をPi(X,Y)で代表している。
従って、後述する空間周波数成分Qj(S,T)は、Qjc(S,T),Qjm(S,T),Qjy(S,T)及びQjk(S,T)により構成されている。同様に、量子化されたQk(S,T)は、Qkc(S,T),Qkm(S,T),Qky(S,T)及びQkk(S,T)により構成され、一部が変更された空間周波数成分Ql(S,T)は、Qlc(S,T),Qlm(S,T),Qly(S,T)及びQlk(S,T)により構成され、逆量子化された空間周波数成分Qm(S,T)は、Qmc(S,T),Qmm(S,T),Qmy(S,T)及びQmk(S,T)により構成され、逆周波数変換された画像データPn(X,Y)は、Pnc(X,Y),Pnm(X,Y),Pny(X,Y)及びPnk(X,Y)により構成され、閾値処理された出力画像データPo(X,Y)は、Poc(X,Y),Pom(X,Y),Poy(X,Y)及びPok(X,Y)により構成されている。
階調再現処理装置10は、入力画像データPi(X,Y)を記憶する画像データ記憶部1、入力画像データPi(X,Y)を空間周波数成分Qj(S,T)に変換する周波数変換部(周波数変換手段)2、空間周波数成分Qj(S,T)を量子化する量子化部(量子化手段)3、量子化した空間周波数成分Qk(S,T)の一部を変更する変更部(変更手段)4、一部が変更された空間周波数成分Ql(S,T)を逆量子化する逆量子化部(逆量子化手段)5、逆量子化された空間周波数成分Qm(S,T)を逆周波数変換する逆周波数変換部(逆周波数変換手段)6、逆周波数変換された画像データPn(X,Y)の閾値処理を行なう閾値処理部(閾値処理手段)66、及び、前記各部の制御を行なう図示しない制御部を備え、閾値処理された出力画像データPo(X,Y)を出力する。尚、量子化部3及び逆量子化部5は必ずしも必要であるとは限らないが、空間周波数成分Qj(S,T)を量子化することにより、階調再現処理装置10による処理負担が軽減される。
画像データ記憶部1には、2次元画像を構成する入力画像データPi(X,Y)が順次格納される。入力画像データPi(X,Y)は、制御部の制御によって、例えば8×8画素を1ブロックとして順次、周波数変換部2へ出力される。周波数変換部2は、ブロック単位で出力された画像データに対し、周波数領域への変換処理(周波数変換)として離散コサイン変換(以下、DCT:Discrete Cosine Transform という)を行なう。尚、周波数変換は、DCTに限ったものではなく、例えば、DWT(Discrete Wavelet Transform:離散ウェーブレット変換)又はDFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)等で行なうこともできる。
周波数変換部2は、画像データ記憶部1から8×8画素を1ブロックとする画像データを受取って、DCT変換を行ない、DCT変換された空間周波数成分(以下、DCT係数という)Qj(S,T)を量子化部3へ送る。本説明においては、2次元画像に対して、最も左上の画素を含むブロックから、右方向(X方向)にブロック単位でDCT変換を行ない、ブロック単位でラインを変更しながら最終的に最も右下の画素を含む最終ブロックまでDCT変換を行なう。
量子化部3は、周波数変換部2から受取ったDCT係数Qj(S,T)に対し、量子化処理を行なう。DCT係数Qj(S,T)は、量子化部3において一定の閾値で除算される。例えば、すべての値を64で除算する。変更部4は、量子化されたDCT係数Qk(S,T)に対し、1ブロック単位で変更を行なう。変更は1ブロック内の全てのDCT係数に対して行なうのではなく、1ブロック内の8×8のDCT係数のうち、一部のDCT係数に対してのみ行なう。
図2及び図3は、DCT係数Qk(S,T)の変更を行なう領域(変更領域)の例を示す図である。画像データをDCT変換して求めたDCT係数Qj(S,T)は、最も左上の直流成分(以下、DC成分という)とそれ以外の交流成分(以下、AC成分という)とを含む。変更部4は、DC成分を含む低周波数側(左上側)の領域に対してはDCT係数の変更は行なわず、DC成分に対して対角に位置する高周波数側(右下側)の領域においてDCT係数の変更を行なう。
図2及び図3の例では、1行目の1〜4列目、2行目の1〜3列目、3行目の1〜2列目及び4行目の1列目を、周波数変更を行なわない非変更領域として破線で示している。また、図2の例では、1行目の8列目、2行目の7〜8列目、3行目の6〜8列目、4行目の5〜8列目、5行目の4〜8列目、6行目の3〜8列目、7行目の2〜8列目及び8行目の1〜8列目を、周波数変更を行なう変更領域として一点鎖線で示している。図3の例では、3行目の3〜8列目、4行目の3〜8列目、5行目の3〜8列目、6行目の3〜8列目、7行目の3〜8列目及び8行目の3〜8列目を変更領域として一点鎖線で示している。尚、変更領域は、DC成分以外の領域に設定することもでき、予め設定された変更領域は、例えば変更部4又は制御部(図示せず)に予め格納しておく。
変更部4は、変更領域の各DCT係数Qk(S,T)を例えば0,1又は−1に置換える(変更する)。図4はDCT係数Qk(S,T)の変更の一例を示す図であり、図4(a)に変更前のDCT係数Qk(S,T)を、図4(b)に変更部4による変更後のDCT係数Ql(S,T)を示している。本実施の形態では、変更部4は、変更領域のDCT係数Qk(S,T)の置換え(変更)方法として、周波数変換され、量子化されたDCT係数Qk(S,T)の夫々と2つの閾値Vth1,Vth2(ただし、Vth1>Vth2)との大小を比較し、比較結果に応じて、DCT係数Qk(S,T)を0、1又は−1に置換える。
図5は閾値Vth1,Vth2との比較に基づくDCT係数Qk(S,T)の変更値の一例を示す図である。図5では、図4(a)に示したブロックのDCT係数Qk(S,T)の7行目の6〜8列目の変更値の例を示しており、変更部4は、DCT係数Qk(S,T)がVth2以下の場合に、Qk(S,T)を−1に置換え、Vth1以上の場合に、Qk(S,T)を1に置換え、Vth1〜Vth2の場合に、Qk(S,T)を0に置換える。尚、変更部4は、C成分のDCT係数Qkc(S,T)、M成分のDCT係数Qkm(S,T)、Y成分のDCT係数Qky(S,T)及びK成分のDCT係数Qkk(S,T)の夫々について、異なる条件での変更処理を行なう。
具体的には、例えば、変更部4は、C(シアン)成分の変更領域におけるDCT係数Qkc(S,T)に対して、
Qkc(S,T)≦Vth2 ならば、−1に置換え、
Vth2<Qkc(S,T)<Vth1 ならば、0に置換え、
Qkc(S,T)≧Vth1 ならば、1に置換える変更処理を行なう。
一方、M(マゼンタ)成分の変更領域におけるDCT係数Qkm(S,T)に対して、
Qkm(S,T)≦Vth2 ならば、1に置換え、
Vth2<Qkm(S,T)<Vth1 ならば、0に置換え、
Qkm(S,T)≧Vth1 ならば、−1に置換える変更処理を行なう。
変更部4は、上述した変更処理後のDCT係数Ql(S,T)を夫々色成分毎に逆量子化部5へ送る。各ブロックの変更処理は、同一パターンの変更となることは殆ど無く、ランダムな変更となる。逆量子化部5は、変更部4で変更処理が行なわれたDCT係数Ql(S,T)に対して、逆量子化を行なう。本説明では、ブロック内の全てのDCT係数Ql(S,T)に64を乗算する。逆周波数変換部6は、逆量子化部5で求めたDCT係数Qm(S,T)に逆周波数変換を行なって、濃度領域データ(画像データ)への変換を行なう。2次元の逆DCT変換は、DCT変換処理の逆変換を行なえばよい。自然画像にDCT変換を行なって、量子化処理(1/64倍)を行なった場合、DCT係数は、例えば図4(a)に示したように、DC成分及び低周波数領域以外は殆ど約−1前後の値から1前後までの大きさの値を持つ分布となる。高周波数領域のデータを0、1、−1に変更した場合、元の画像データに与える影響を最小限に抑えて、濃度空間でのドットの配置を変更できる。
閾値処理部66は、逆周波数変換部6から受取った濃度領域データ(画像データ)Pn(X,Y)を複数の閾値を用いて、多値の濃度データ(出力画像データ)Po(X,Y)に変換する。例えば4値出力の場合は、3つの閾値を用いて、
0<Pn(X,Y)≦42 ならば、Po(X,Y)=0、
42<Pn(X,Y)≦127 ならば、Po(X,Y)=85、
127<Pn(X,Y)≦212 ならば、Po(X,Y)=171、
212<Pn(X,Y)≦255 ならば、Po(X,Y)=255
に変換する。
上述したように、階調再現処理装置10は、画像データ記憶部1に格納された入力画像データPi(X,Y)を周波数領域に変更し、一部に対して変更処理を行なった後、逆周波数変換し、最終的に閾値処理により、全画素について階調数が4値などに減少された出力画像データPo(X,Y)を生成する。
上述した構成の階調再現処理装置10では、変更部4が、量子化部3で量子化されたC(シアン)成分のDCT係数Qkc(S,T)及びM(マゼンタ)成分のDCT係数Qkm(S,T)の変更領域の各DCT係数の符号を逆に変更することによって、逆量子化部5、逆周波数変換部6及び閾値処理部66により生成された画像データに基づく画像におけるドットの重なりが発生しにくくなる。
具体的には、例えば、本発明の階調再現処理装置10において、変更部4が、ある高周波数成分を1に変更し、逆量子化部5、逆周波数変換部6及び閾値処理部66により画像データを生成し、生成された画像データに基づいて、例えば電子写真方式の画像形成装置が画像を形成した場合に、形成された画像が、図6(a)に示すドットパターンを有するとする。図6は説明を簡略化する為に直線状に配列されたドットパターンを示しており、ハッチングを付した1つの円が1つのドットを示している。このような画像データについて、変更部4が、ある高周波数成分を1の代わりに−1に変更し、逆量子化部5、逆周波数変換部6及び閾値処理部66により画像データを生成した場合、図6(b)に示すように、ドットの位置がずれた画像が形成される。
従って、上述したように、シアン(C成分)及びマゼンタ(M成分)のDCT係数Qkc(S,T),Qkm(S,T)に対して、逆の符号の変更値への変更処理を行なうことにより、生成された出力画像データPoc(X,Y),Pom(X,Y)に基づく画像において、一方の色成分の画像(例えばシアンの画像)ではドットの無い画素位置に、他方の色成分の画像(例えばマゼンタの画像)のドットが出現する。また逆に、一方の色成分の画像のドットがある画素位置に、他方の色成分の画像のドットが形成されない場合が多くなり、シアンとマゼンタとの間においてドットの重なりが発生しにくい画像(ドットオフドット画像)が容易に実現でき粒状性のない滑らかな画像を生成することができる。
上述した実施の形態では、C成分及びM成分に関する変更処理についての例を説明したが、他の色に対しても本発明は有効である。図7はCMYK夫々の成分についての変更値を示している。尚、図7(a)にC成分についての変更後のDCT係数Qlc(S,T)を、図7(b)にM成分についての変更後のDCT係数Qlm(S,T)を、図7(c)にY成分についての変更後のDCT係数Qly(S,T)を、図7(d)にK成分についての変更後のDCT係数Qlk(S,T)を夫々示している。
図7で示す変更処理によっては、図7(b)及び図7(d)で示すように、M成分及びK成分について、DCT係数Qlm(S,T),Qlk(S,T)を互いに逆の符号の変更値に変更し、また、図7(a)及び図7(c)で示すように、C成分及びY成分は、相互に異なる変更値に変更する。
尚、最も効果的な色間で符号を反転させて本発明を適用するのが最も有効であり、特にシアン・マゼンタ・イエローを使用して画像を形成する場合では、イエローのドットと他の色成分のドットとの重なりに対しては比較的ラフな制御でよいため、シアンのドットとマゼンタのドットとの重なりに対する制御として本発明を施すのが最も効果的である。一方、上記実施例では逆転させる符号はシアンとマゼンタ或いはマゼンタと黒のように一定であったが、入力される画素の色特性又は濃度特性等によって可変することも可能であって高画質の観点からより望ましい。例えば明るいグリーンの部分では、シアンとイエローのみが使用される為、シアンとイエローに対して、本発明により付加する周波数成分の符号を逆転させることが最も効果的である。さらに濃いグリーンに対して黒が混じる場合は、黒とシアンに対して本発明により付加する周波数成分の符号を逆転させることも効果的である。
尚、本実施の形態における閾値処理部66は、従来技術の同一パターンのマトリクスで閾値処理を繰り返すことは行なっておらず、変更部4で空間周波数成分(DCT係数)における変更処理を行なっているため、従来で問題となっていたトーンギャップなどの発生を改善できる。
上述した実施の形態では、変更領域のDCT係数Qk(S,T)の置換え(変更)方法として、DCT係数Qk(S,T)の夫々と2つの閾値Vth1,Vth2との比較結果に応じて0,1又は−1に置換える方法を採っている。しかし、他の方法として、例えば、量子化された空間周波数成分(DCT係数)Qk(S,T)のDC成分の大きさを判定し、DC成分の大きさに基づいて、0,1又は−1に置換えるようにしてもよい。また、変更領域の各変更部分に対応する変更値(0,1,−1)を複数のテーブル(LUT:Look Up Table )に格納しておき、このLUTを参照することで空間周波数成分の変更を行なってもよい。更に、上述のようなLUTの代わりに、ブルーノイズに基づくLUTを用い、1ブロック全体にブルーノイズを加算することにより空間周波数成分の変更を行なってもよい。
また、上述した実施の形態の変更部4では、変更領域のDCT係数Qk(S,T)を、−1,0又は1に変更しているが、これらに限らず、例えば−1又は0に変更する構成としてもよい。更に、例えばシアン成分については各DCT係数Qlc(S,T)を−1又は0に変更し、マゼンタ成分については各DCT係数Qlm(S,T)を1又は0に変更する構成としてもよく、その他の数字の組み合わせでもよい。尚、上述の実施の形態で示したように、DCT係数Qk(S,T)を、−1,0又は1に変更する変更処理が、より望ましい。
上述した構成の画像処理装置(階調再現処理装置)10は、トナーを使用する電子写真方式の画像形成装置に適用することができる。また、画像処理装置10は、インクを使用するインクジェット方式の画像形成装置にも応用することができる。ここでは説明が煩雑になるためにインクジェット方式の説明は控え、効果の説明だけにとどめる。尚、上述したように、変更部4が、各色成分に対して異なる変更値への変更処理を行なうことにより、ドットオフドット画像を容易に生成できるのは明らかであり、この効果に対する再度の説明も省略する。
ここで、インクジェット方式の画像形成装置では、電子写真方式の画像形成装置とは逆に、ドットの重なりが発生しにくいドットオフドット画像を形成することが望ましくなく、逆にドット同士が重なるドットオンドット画像を形成することが望ましい場合が発生する可能性があり、これについて以下に説明する。
図8はインクジェット方式の画像形成装置により形成したドットパターンの例を示しており、図8は説明を簡略化する為に直線状に配列されたドットパターンを示している。また、ハッチングを付した1つの円が1つのドットを示しており、図8においては、例えば、左から順に黒、イエロー、マゼンダのドットが形成されたドットパターンを示している。このように、黒、イエロー、マゼンダの順でドットを形成する場合、図8(b)に示すように、黒のドットに隣接したイエローのドットにより、黒ドットを形成する黒インクがイエローのドットに流れ出し、マゼンタのドットまで到達し、全体的に画像がにごり、画質の劣化を生じうる場合がある。
従って、本実施の形態の画像形成装置10では、変更部4が、Y成分のDCT係数Qky(S,T)とM成分のDCT係数Qkm(S,T)とに対して、夫々同一の周波数成分に変更して、意図的にY成分のドットとM成分のドットとを重ねたドットオンドット画像を形成することで、イエローインクとマゼンダインクとを重ね合わせることができ、R(赤)画素を形成する一方で黒インクに隣接してイエロードットを形成しないようにし、イエローインクを経由しての黒インクの滲みを防止することができる。
上述したように、ドットの重なりを防止したい色成分間においては、変更部4にて、異なる変更値に変更し、ドットを重ねたい色成分間においては、変更部4にて、同一の変更値に変更することにより、インクジェット方式の画像形成装置を用いる場合であっても、インクの印字順序又は印字速度等を制御する等の処理が一切不要であり、さらにプレーンごとのドットの重なりを判定する必要もなく、容易に画質の劣化を防止した画像データを生成することができる。
(実施の形態2)
図9は本発明に係る画像形成装置70の一構成例を示すブロック図である。本説明では、画像形成装置70は、デジタルカラー複写機として動作する。画像形成装置70は、カラー画像入力装置30、カラー画像処理装置31、カラー画像出力装置32及び操作パネル33を備える。また、図示していないが、画像形成装置70内の各装置の制御を行うCPU(Central Processing Unit)を備えている。
カラー画像入力装置30は、例えばCCD(Charge Coupled Device)を備えており、原稿からの反射光像がCCDにより読み取られ、RGB(R:赤、G:緑、B:青)のアナログ信号が生成される。生成されたRGBアナログ信号は、カラー画像処理装置31へ送られる。カラー画像処理装置31は、A/D(アナログ/デジタル)変換部311、シェーディング補正部312、入力階調補正部313、領域分離処理部314、色補正部315、黒生成下色除去部316、空間フィルタ処理部317、出力階調補正部318、階調再現処理部319及び各部を制御する制御部を備える。階調再現処理部319は、上述した実施の形態1で説明した階調再現処理装置(画像処理装置)10と同様の処理を行なう。
カラー画像処理装置31は、カラー画像入力装置30から受取ったRGBアナログ信号をRGBデジタル信号に変換し、補正処理などの種々の画像処理を行ない、CMYK表色系のデジタルカラー信号を生成し、生成したCMYKデジタル信号の階調数を2値又は4値などに減少させる。2値化又は4値化などされた出力画像データは、図示しない記憶手段に一時的に記憶され、所定のタイミングでカラー画像出力装置32へ出力される。
A/D変換部311は、カラー画像入力装置30からRGBアナログ信号を受取り、受取ったRGBアナログ信号をRGBデジタル信号に変換し、シェーディング補正部312へ送る。シェーディング補正部312は、A/D変換部311から受取ったRGBデジタル信号に対して、カラー画像入力装置30の照明系、結像系、撮像系で生じる各種の歪みを取り除く処理を行なった後、入力階調補正部313へ送る。入力階調補正部313は、シェーディング補正部312から受取ったRGBデジタル信号(RGBの反射率信号)に対して、カラーバランスを整えると共に、カラー画像処理装置31に採用されている画像処理システムが処理し易い濃度信号などに変換し、領域分離処理部314へ送る。
領域分離処理部314は、入力階調補正部313から受取ったRGBデジタル信号の画像内の各画素を、文字領域、網点領域、写真領域の何れかに分離し、分離結果に基づいて、画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号を色補正部315、黒生成下色除去部316、空間フィルタ処理部317及び階調再現処理部319へ出力する。また、入力階調補正部313から受取ったRGBデジタル信号は、そのまま色補正部315へ送られる。
色補正部315は、色再現を忠実に行なうために、入力階調補正部313から送られたRGBデジタル信号を、CMY信号に変換すると共に、不要吸収成分を含むCMY色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く処理を行なった後、黒生成下色除去部316へ送る。黒生成下色除去部316は、色補正部315から受取ったCYM信号の3色の信号(C信号、M信号、Y信号)から黒の信号(K信号)を生成する黒生成を行ない、元のCMY信号から黒生成で得たK信号を差し引いて新たなCMY信号を生成し、CMYKの4色信号(CMYK信号)を空間フィルタ処理部317へ送る。
一般的な黒生成処理として、スケルトンブラックにより黒生成を行なう方法がある。この方法では、スケルトンカーブの入出力特性をy=f(x)、入力されるデータをC,M,Y、出力されるデータをC',M',Y',K'、UCR(Under Color Removal)率をα(0<α<1)とすると、
K’=f{min(C,M,Y)}
C’=C−αK’
M’=M−αK’
Y’=Y−αK’
で表わされる。
空間フィルタ処理部317は、黒生成下色除去部316から受取ったCMYK信号の画像に対し、領域識別信号に基づいてデジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行ない、空間周波数特性を補正して画像のぼやけ又は粒状性劣化を改善する処理などを行なう。また、階調再現処理部319は、領域識別信号に基づいて、CMYK信号の画像データに対して所定の処理を行なう。
例えば、領域分離処理部314によって文字として分離された領域は、特に黒文字或いは色文字の再現性を高めるために、空間フィルタ処理部317が行なう空間フィルタ処理に含まれる鮮鋭強調処理により高周波数の強調量を大きくする。また、階調再現処理部319は、高域周波数の再現に適した高解像度の二値化または多値化処理を行なう。
また、領域分離処理部314によって網点として分離された領域に関しては、空間フィルタ処理部317において、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理が行なわれる。そして、出力階調補正部318では、濃度信号などの信号をカラー画像出力装置32の特性値である網点面積率に変換する出力階調補正処理が行なわれ、階調再現処理部319においては、最終的に画像を画素に分離してそれぞれの階調を再現できるように2値化又は多値化する階調再現処理(中間調生成)が行なわれる。さらに、領域分離処理部314によって写真に分離された領域に関しては、階調再現処理部319において、階調再現性を重視した二値化または多値化処理が行なわれる。
階調再現処理部319で二値化または多値化処理されたCMYK信号(画像データ)は、カラー画像出力装置32へ送られる。カラー画像出力装置32は、カラー画像処理装置31から受取ったCMYK信号に基づいて、紙などの記録媒体上に画像を形成する装置である。例えば、電子写真方式又はインクジェット方式のカラー画像出力装置を用いることが可能である。
操作パネル33は、オペレータがキー操作などにより指示入力を行なうための入力手段である。オペレータの指示は、制御信号として、操作パネル33からカラー画像入力装置30、カラー画像処理装置31及びカラー画像出力装置32へ出力される。オペレータの指示により、カラー画像入力装置30で原稿画像が読み取られ、カラー画像処理装置31によるデータ処理後に、カラー画像出力装置32によって記録媒体上に画像が形成され、デジタルカラー複写機として機能する。以上の処理は図示しないCPUにより制御される。
(実施の形態3)
図10は、本発明に係る画像形成システム71の一構成例を示すブロック図である。この画像形成システム71は、コンピュータ40及びプリンタ41を備える。プリンタ41は、プリンタ機能に加えて、コピー機能、ファクシミリ機能を有するデジタル複合機であってもよい。また、プリンタ41は、電子写真方式又はインクジェット方式の画像形成を行なう。
画像データは、例えばスキャナ又はデジタルカメラからコンピュータ40へ入力され、記憶装置(図示せず)に記憶される。コンピュータ40に入力された画像データは、各種のアプリケーションプログラムを実行して加工・編集等を行なうことが可能である。コンピュータ40は、出力画像データの色補正処理を行なう色補正部45、出力画像データの階調数(例えば256階調)を2値又は4値などに減少させる階調変換処理を行なう階調再現処理部46、及び出力画像データのプリンタ言語への変換を行なうプリンタ言語翻訳部47として動作する。色補正部45では、黒生成下色除去処理なども行なわれる。階調再現処理部46は、上記実施の形態1で説明した階調再現処理装置(画像処理装置)10に相当する。プリンタ言語翻訳部47でプリンタ言語に変換されたデータは、通信ポート44(RS232C、LAN等)を介してプリンタ41へ出力される。
図11はコンピュータ40の一構成例を示すブロック図である。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)51、DRAM等のRAM(Random Access Memory)52、ハードディスクドライブ(以下、ハードディスクと略す)53、フレキシブルディスクドライブ又はCD−ROMドライブ等の外部記憶部54、プリンタ41などとの通信制御を行なう通信ポート44等を備える。また、コンピュータ50は、キーボード又はマウス等の入力部55、表示装置等の表示部56を備える。
CPU51は、上述した各部52〜56及び44の制御を行なう。また、CPU51は、入力部55から受付けたプログラム又はデータ、あるいはハードディスク53又は外部記憶部54から読出したプログラム又はデータ等をRAM52に記憶し、RAM52に記憶したプログラムの実行又はデータの演算等の各種処理を行ない、各種処理結果又は各種処理に用いる一時的なデータをRAM52に記憶する。RAM52に記憶した演算結果等のデータは、CPU51により、ハードディスク53に記憶され、また、表示部56又は通信ポート44から出力される。
CPU51は、上述した色補正部45、階調再現処理部(例えば図1に示す周波数変換部2、量子化部3、変更部4、逆量子化部5、逆周波数変換部6、閾値処理部66などに相当)46、プリンタ言語翻訳部47として動作する。また、ハードディスク53は、画像データを記憶する画像データ記憶部1として動作する。
CD−ROM等の記録媒体59に記録されたコンピュータプログラムを外部記憶部54で読出してハードディスク53又はRAM52に記憶してCPU51に実行させることにより、CPU51を上述した各部として動作させることが可能である。また、LANなどに接続された通信ポート44で他の装置からコンピュータプログラムを受付けてハードディスク53又はRAM52に記憶することも可能である。
記録媒体59は、プログラムを担持可能であって、コンピュータによって直接的又は間接的に読み取り可能な記憶媒体であればよい。例えば、ROM又はフラッシュメモリなどの半導体素子でもよいし、フレキシブルディスク、ハードディスク、MD、磁気テープなどの磁気記憶媒体でもよいし、CD−ROM、MO、DVDなどの光記憶媒体でもよく、その記録方式及び読取方式は問わない。
図12は、階調再現処理手順の一例を示すフローチャートである。ただし、DCTにより周波数変換処理を行なって4値出力画像を得るものとして説明する。また、入力画像データPi(X,Y)はハードディスク53に格納されているものとする。CPU51は、ハードディスク53に記憶されている画像データを、8×8画素を1ブロックとしてRAM52に順次読み出す(S101)。次にCPU51は、読み出した画像データをDCT変換し(S102)、DCT変換処理後のDCT係数Qj(S,T)をRAM52に記憶させる。次に、CPU51は、ブロック内の全てのDCT係数を一定の値(例えば64)で除算して量子化処理を行ない(S103)、除算後のDCT係数Qk(S,T)をRAM52に記憶させる。
CPU51は、量子化(除算)されたDCT係数のうち、変更領域のDCT係数(AC成分)を、0,1又は−1に置換え(変更し)(S104)、変更後のDCT係数Ql(S,T)をRAM52に記憶させる。DCT係数の変更処理は、上述した実施の形態1と同様に行なうことが可能であり、例えば、量子化されたDCT係数Qk(S,T)の夫々と2つの閾値Vth1,Vth2との比較結果に応じて0,1又は−1に置換える。また、各ブロックにおけるDC成分の大きさに基づいて置換えてもよく、変更領域の各変更部分に対応するLUTを用いてDCT係数の変更を行なうことも可能である。
CPU51は、変更後のブロック内の全てのDCT係数Ql(S,T)を、例えば64倍することにより逆量子化処理を行ない(S105)、RAM52に記憶する。また、CPU51は、逆量子化したDCT係数Qm(S、T)を、周波数領域データから濃度領域データ(画像データ)へ逆DCT変換し(S106)、逆DCT変換された画像データPn(X、Y)をRAM52に記憶する。更に、CPU51は、逆DCT変換された画像データPn(X、Y)を複数の閾値を用いて4値画像(出力画像データ)Po(X,Y)に変換する閾値処理を行ない(S107)、RAM52又はハードディスク53に記憶する。上述したS101〜S107により、1ブロックの画像データPi(X,Y)についての閾値処理が完了する。その後、CPU51は、全てのブロックについて閾値処理が完了したか否かを判断し(S108)、全てのブロックの閾値処理が完了していないと判断した場合(S108:NO)、全てのブロックについて、上述したS101〜S107の各処理を繰り返す。
また、全ブロックの閾値処理が終了したと判断した場合(S108:YES)、CPU51は、出力画像データPo(X,Y)をプリンタ言語に変換し、通信ポート44を介してプリンタ41へ送信する。
上述した実施の形態では、コンピュータ40は、本発明のコンピュータプログラムを、該コンピュータプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体から、外部記憶部54を介して取得しているが、電気通信回線に接続される通信インタフェースを備えることにより、電気通信回線を介してダウンロードすることにより取得する構成とすることもできる。