JP3811053B2 - 無線lanシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋内などの一定の区域において、無線通信網を形成する、無線LAN(ローカルエリアネットワーク) システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高度情報化社会への発展に伴って、ビルなどのオフィス内、あるいは工場や倉庫などの構内、一般の住宅内や事務所内等々の屋内、更には、屋内以外の、商店街などのアーケード、駅プラットホーム、空港ターミナル、あるいはテントなどの大型仮設構造物やイベント会場など、一定の区域における無線LAN システム(区域内無線通信網) の使用が拡大しつつある。
【0003】
この無線LAN システムにおいては、無線LAN 親機と、区域内に配置された多数の無線LAN 子機との間で、広い周波数帯域の電磁波を用いて通信が行われる。例えば、個人用簡易無線電話システム(PHS) や中速無線LAN には1.9GHz帯および2.4GHz帯の準マイクロ波帯域が、また高速無線LAN には19GHz 帯の準ミリ波帯域および60GHz 帯のミリ波帯域が、各々割り当てられている。
【0004】
屋内の無線LAN システムの場合を例にとると、屋内においては、通常、机、棚、仕切りや事務機器など、無線LAN の親機と子機との間の電磁波の障害物が多数存在する。このため、障害物を回り込んで到達する電磁波 (信号) の電界強度が減り、送られたデータを復調するために必要なS/N(SN比) が十分得られない。この結果、データの誤り率が増え、再送が行われ、通信の実効速度が低下する。
【0005】
また、電磁波の障害物がなく、屋内の見通しがよかったとしても、壁面、天井面、床面および前記什器や事務機器などによる、電磁波の反射波の影響によって、やはり、送られたデータを復調するために必要なS/N(SN比) が十分得られず、通信速度が遅くなる問題もある。そして、これらの問題は、屋内以外の前記一定の区域における無線LAN システムにおいても、同様に起こりうる。
【0006】
この問題につき、天井の高さ3mで、18m ×6mの広さの、机や椅子が多数配置された室内で、本発明者らが実測したところ、2.4GHz帯の準マイクロ波帯域を使用し、最大で11Mbpsの高速データ通信性能を有する、市販の無線LAN 機を用いた場合、室内の場所によって通信速度が大きくばらつき、場所によっては、通信速度が前記最大値の1/10となることが確認された。
【0007】
このような、無線通信網を形成する際の反射した電磁波の影響 (マルチパスフェージング) に対し、出願人らは、先に、特願2001-171265 号等で、マルチパスフェージングを抑制し、通信の実効速度の低下がないような改良を行った無線LAN システムおよび無線LAN システム用導波装置を提案した。
【0008】
この特願2001-171265 号では、無線通信網を形成する区域内の上方に沿って設けられた導波路と、この導波路に接続された無線LAN 親機と、前記区域内に配置された無線LAN 子機とを有し、前記導波路が複数の分岐回路を有し、この分岐回路に前記区域内に向かう指向性を有する電磁波送受信用アンテナが接続された無線LAN システムとすることを骨子としている。
【0009】
そして、この構成によって、電磁波の障害物が存在した場合でも、無線LAN の親機と子機との間の電磁波通信の障害物とならないようにしている。また、例え電磁波の反射波があっても、その影響が小さくなるようにしている。
【0010】
更に、特願2001-171265 号では、前記分岐回路や無線LAN 子機に設けられた電磁波送受信用アンテナに指向性を持たせることによって、マルチパスフェージング抑制効果を増している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
この技術を用いれば、電磁波通信の障害物によるマルチパスフェージングを確かに抑制できる。しかし、前記導波路が複数の分岐回路を有する無線LAN システムの場合や無線LAN 親機が複数の場合、無線LAN 親機から特定の子機に向けて送信される電磁波は、複数の分岐回路から各々の親局アンテナを通して、子機に到達することとなる。また、複数の無線LAN 親機から送信される複数の電磁波が特定の子機に対応する分岐回路から親局アンテナを通して子機に到達することとなる。
【0012】
このため、無線LAN 親機から特定の子機に至る通信経路が複数存在することなり、これ自体によるマルチパスフェージングの問題を起こし易い。
【0013】
通信に使用する電磁波の周波数が高い場合には、この問題の影響は小さいものの、特に、通信に使用する電磁波の周波数が低い場合に、前記複数通信経路によるマルチパスフェージングの影響を受け易く、高い指向性を得ることが難しいという事態が起こり得る。
【0014】
本発明は、上記の如き事情を改善するためになしたものであって、その目的は、通信に使用する電磁波の周波数が低い場合でも、前記複数通信経路によるマルチパスフェージングを抑制でき、通信の実効速度の低下がない無線LAN システムを提供しようとするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明請求項1 の要旨は、無線通信網を形成する区域内に沿って設けられた導波路と、この導波路に接続された無線LAN 親機と、前記区域内に配置された無線LAN 子機とを有し、前記導波路が複数の分岐回路を有し、この分岐回路を制御するアンテナ制御部を有し、前記分岐回路が各々前記区域内に向かう指向性を有する電磁波送受信用アンテナを接続しており、パケット方式にて前記無線LAN 親機と前記無線LAN 子機との間でデータ通信を行う無線LAN システムであって、特定無線LAN 子機のパケット送付先ネットワークアドレスと当該無線LAN 子機との通信に用いる特定分岐回路とが前記アンテナ制御部にて予め対応づけられており、通信されるパケットのネットワークアドレスに応じて、このアドレスに対応づけられている特定分岐回路を前記アンテナ制御部により選択的に開くようになしたことである。
【0016】
本発明無線LAN システムにおけるパケット方式とは、図5 に示すように、データ通信を行う際に、データX を一定量づつ分割してパケット (小包)Y1 とし、目的地 (無線LAN 子機あるいは無線LAN 親機) まで、何カ所かの交換機( 電磁波送受信用アンテナ) で中継しながら、送信する方式である。パケット (小包)Y1 には、本体のデータX1の他に、宛て先や送信元 (無線LAN 子機あるいは無線LAN 親機などのアドレス) あるいはパケットの順番などを表示したヘッダー (荷札)Z1 がつけられている。このため、パケット方式のデータ通信では、宛て先ごとに専用の通信回線を準備する必要がなく、一本の通信回線 (導波路) で、種々の宛て先 (複数の無線LAN 子機) のパケットを通信することができる特徴がある。
【0017】
このようなパケット方式での通信を前提に、本発明無線LAN システムでは、前記分岐回路にスイッチの役割を待たせ、例えば、通信されるパケット送付先の特定無線LAN 子機に対応する特定分岐回路のみを選択して開くようにしている。このため、無線通信網を形成する際に、無線LAN 親機から送信されている電磁波を、導波路内から選択された特定の親局アンテナのみを通して、子機に到達させることができる。したがって、無線LAN 親機から子機に至る通信経路を一意にすることができ、他の複数の分岐回路からの電磁波による電磁波の影響 (マルチパスフェージング) を抑制乃至無くして、高いS/N で通信することができる。
【0018】
更に、本発明請求項2 のように、前記無線LAN 親機が通信を行う無線LAN 子機のリストを有し、このリストに従って無線LAN 子機を順にポーリングして、親機と各子機間での通信のタイミングを把握し、この把握タイミングに従い、親機と特定子機間での通信中の期間において開く特定分岐回路を前記アンテナ制御部により選択することが好ましい。
【0019】
また、本発明では、前記導波路の装置構成が、請求項3 のように導波管である場合と、請求項5 のようにマイクロストリップ線路である導波管である場合とで、前記分岐回路の好ましい態様が異なる。
【0020】
即ち、前記導波路が導波管である場合には、前記分岐回路の実施態様として、請求項4 のように、前記分岐回路は、棒状のカップリング導体とこのカップリング導体の一端に取り付けられた放射板からなり、前記導波管に設けられた孔に、前記カップリング導体が絶縁材料を介して挿入されるとともに、前記放射板が前記区域内側に指向されており、この放射板の前記区域内側表面にパッチアンテナが形成される一方、制御信号に応じて前記パッチアンテナと前記カップリング導体の放射板接続部との接続を開閉する分岐スイッチが設けられていることが好ましい。
【0021】
一方、前記導波路がマイクロストリップ線路であって、請求項6 のように、マイクロストリップ線路自体が、導体材料からなるグランド層に誘電材料からなる誘電体層と導体材料からなる信号線とを順次積層した構造を有してなるとともに、誘電材料からなる誘電体板と導体材料からなるパッチとを順次積層したパッチアンテナが前記信号線と電気的に結合されている場合には、前記分岐回路の実施態様として、制御信号に応じて前記信号線と前記パッチアンテナとの接続を開閉する分岐スイッチが設けられていることが好ましい。
【0022】
そして、請求項7 のように、前記パッチアンテナが結合部を介して前記信号線と電気的に結合されている場合には、前記分岐回路の実施態様として、前記分岐スイッチが前記結合部と前記パッチアンテナとの接続を開閉するように設けられていることが好ましい。
【0023】
また、前記パッチアンテナが結合部を介して前記信号線と電気的に結合されている場合に、請求項8 のように、前記分岐スイッチが前記信号線内に挿入されており、この分岐スイッチに前記パッチアンテナが電気的に結合されていることも好ましい。
【0024】
本発明は以上のような構成と効果を有するため、請求項9 の要旨のように、前記区域が屋内である、屋内用無線LAN システムに適用されて好適であるが、更に、アーケード、プラットホーム、ターミナル、あるいは大型の仮設構造物や仮設会場などの、構造物内や屋外などの一定の区域に適用されても勿論良い。
【0025】
そして、本発明においては、区域内の電磁波通信の障害物によるマルチパスフェージングを抑制するために、無線LAN 親機と子機とを、無線通信網を形成する区域内の上方に沿って設けられた導波路を介して接続することが好ましい。より具体的には、本発明請求項10の要旨のように、屋内の場合には、建屋などの天井に沿って設けられた導波路を介して接続することが好ましい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、以下に図面を用いて説明する。
実施例1 として、前記導波路が請求項3 のように導波管である場合を以下に示す。先ず、本発明無線LAN システムの前提となる装置 (ハード) 構成例を図3 、4 を用いて説明する。図3 、4 は、この導波管タイプの本発明無線LAN システムを、事務所室内などの屋内に適用した例を示している。ここで、図3 は事務所建屋 (部屋) の斜視図、図4 は図3 のA-A 線断面図である。
【0027】
図3 、4 において、本発明の無線LAN システムは、区域内の上方である、建屋10 (扉16a 、16b を持つ) の天井11に沿って、天井裏の側あるいは天井の屋内側表面に、間隔を開けて2 本設けられた導波管1a、1bと、この導波管1a、1bの端部に、各々接続された無線LAN 親機2a、2bと、屋内に配置された複数の (図では2 個) 無線LAN 子機3a、3b(OA 機器8a、8bに各々接続) とを、基本的に有している。
【0028】
そして、この導波路1a、1bの途中には、屋内 (区域の下方) に向けて開口( 開閉) 自在な分岐スイッチモジュール化され、ON/OFF信号を与えることで、電気的に信号経路を切り換えることができるスイッチデバイスからなる複数の分岐回路5a〜5c、5d〜5fが設けられている。この分岐回路5a〜5cには (分岐回路5d〜5fにも) 、前記区域内に向かう指向性を有する電磁波送受信用 (親局) アンテナ6a〜6cが接続されている。
【0029】
導波管1a、1bの端部(無線LAN 親機と反対側の端部)には、導波管内を通過(行き来)する電磁波が干渉し合ったりして、攪乱されないように、樹脂や無機材料など、電磁波を反射しない公知の材料を充填乃至該材料から構成される、無反射端部 (終端)4a 、4bを各々有する。
【0030】
更に、導波管1a、1bの親機2a、2b側の端部には、同軸- 導波管変換器12a 、12b が各々接続され、そこからケーブル15a 、15b により無線LAN 親機2a、2bのコネクタ端子と接続されている。
【0031】
親局アンテナ6a、6b、6cは、屋内下方 (区域内) に向かい、無線LAN 子機3a、3b (パソコンなどのOA機器8a、8bに各々接続) の子機アンテナ7a、7bに対して、指向性のあるもの、好ましくは指向性の高いものとし、電磁波A 、B の送受信の感度を高め、かつ電磁波の攪乱や障害、屋内で反射した電磁波などの影響を受けにくいようにすることが好ましい。
【0032】
以上の本発明無線LAN システムの基本構成によって、天井11に沿って (無線通信網を形成する区域内の上方に沿って) 設けられた導波路1a、1bを介して、親局アンテナ6a、6b、6cと子機アンテナ7a、7bとの間で、電磁波送受信可能エリアX1、X2、X3と、カバーすべき子機の電磁波送受信用アンテナ7 の電磁波送受信可能エリアY1、Y2が形成され、電磁波A 、B の送受信を行う。
【0033】
ここにおいて、前記図3 、4 の無線LAN システムの基本構成に対し、更に、本発明の特徴である、パケット方式での通信を前提にした、特定無線LAN 子機のパケット送付先ネットワークアドレスと当該無線LAN 子機との通信に用いる特定分岐回路とを対応づける態様を付加した例を、図1 、2 を用いて、以下に説明する。
【0034】
図1 に示すように、無線LAN 子機との通信に用いる分岐回路5a〜5cは、特定無線LAN 子機のパケット送付先ネットワークアドレスと対応づけられるべく、分岐スイッチモジュール化されている。この分岐回路は、スイッチの役割を待ち、特定無線LAN 子機に対応する特定分岐回路が選択的に開閉できる必要がある。このため、分岐回路は、図7 、8 、9 で後述する通り、単なる機械的な開口部ではなく、前記分岐スイッチモジュール化され、ON/OFF信号を与えることで、電気的に信号経路を切り換えることができ、屋内 (区域の下方) に向けて開閉自在なスイッチングデバイスからなる。これによって、例えばON時には信号は終端抵抗に接続し、導波管と親局アンテナとは結合されない。一方、OFF 時には導波管と親局アンテナとが結合される。
【0035】
無線LAN 親機2aにはアンテナ制御部17が接続している。そして、このアンテナ制御部17は、導波管1aに設置された複数の分岐回路 (分岐スイッチモジュール)5a 〜5cに、各々信号線20(20a、20b 、20c)で接続されている。したがって、アンテナ制御部17は、分岐回路5a〜5cを、それぞれ独立に制御することが可能である。また、無線LAN 親機2aには、外部の他の無線LAN システムや通信システムなどと通信する、バックボーンネットワーク19が接続されている。
【0036】
アンテナ制御部17は、予め、無線LAN 子機3a、3b、3cのパケット送付先ネットワークアドレスと、当該無線LAN 子機との通信に用いるべき特定親局アンテナ6a〜6cとの対応関係を子機 (子局) 参照テーブル18として持っている。この子局参照テーブル18は、無線LAN 子機3a、3b、3cを設置する際に、一度テーブル18に登録すれば、無線LAN 子機3a、3b、3cを移動しない限り、再登録する必要はない。
【0037】
ここで、無線LAN 親機2aから特定の無線LAN 子機に対しデータを送信する際、その特定の子機のパケット送付先ネットワークアドレスを指定して、アンテナ制御部17に制御信号9 として送る。制御信号9 を送られたアンテナ制御部17は、前記ネットワークアドレスから無線LAN 子機を特定し、この特定無線LAN 子機に通信を行う際に使用すべき特定の親局アンテナを、前記参照テーブル18を参照して決定する。
【0038】
しかる後に、アンテナ制御部17は、決定した特定親局アンテナに接続する分岐回路のみを信号線20を介してONとし、その他の分岐回路を信号線20を介してOFF とする。これにより、現在、無線LAN 親機2aから送信されている電磁波は、導波管1a内から選択された特定の親局アンテナのみを通して、子機に到達する。したがって、無線LAN 親機2aから子機に至る通信経路を一意に決めることで、マルチパス干渉の問題を解決出来る。
【0039】
無線LAN 親機2aからアンテナ制御部17へ、特定の子機のパケット送付先ネットワークアドレスを制御信号として送る際に、当該子機への通信情報の量や通信時間の情報も制御信号として与えられると、この通信情報の量や通信時間に相当する時間、即ち、他の子機との通信の妨げにならない適当な時間、当該親局アンテナ (分岐回路) をON、その他の親局アンテナ (分岐回路) をOFF とすることができる。
【0040】
なお、アンテナ制御部17は、無線LAN 親機2aから特定の無線LAN 子機に対しデータを送信する際には以上のような制御を行うが、トラフィックが全く無い場合や、無線LAN 子機側から無線LAN 親機2aに通信を行っている場合には、接続している全ての分岐回路をON状態に保つよう制御することが好ましい。
【0041】
以上のような構成とすれば、前記導波路が複数の分岐回路を有する無線LAN システムの場合や無線LAN 親機が複数の場合でも、複数の親局アンテナが同時に導波路に結合することは無い。このため、例えば、図1 の子機3bに対し、無線LAN 親機2aからは、親局アンテナ6bを介した経路A のみを通じてデータが送信され、親局アンテナ6aを介したB のようなマルチパス経路が発生する懸念がない。
【0042】
次に、無線LAN 親機と子機との間の通信制御方式がポーリング方式の場合について以下に説明する。ポーリング方式は、常に親機の合図によって、子機が応答する方式であり、子機より自発的に発信することがない方式である。親機は接続している各子機を一台ずつポーリングし、各子機は親機からのポーリングに対する応答としてのみ送信が可能である。各子機の送信のタイミングは親機の方で常に把握しているので、親機は子機への送信のタイミングは勿論、子機からの応答を期待している期間は、当該子機に対応する分岐回路のみをONとすることができる。したがって、子機から親機への送信時を含めて、通信経路を限定し、使用すべき親局アンテナを限定することで、双方向にマルチパス干渉を回避することが可能となる。
【0043】
図2 を用いて、このポーリング方式の親機と子機との間の通信制御方式について説明する。なお、図2 の各要素の番号は図1 の各要素の番号に対応する。図2 において、親機は、ネットワークに接続する (通信を行う) 子機を登録したポーリングリストを予め有している。親機2aが子機3a宛のデータを持っている時は、親機2aは、子機3aに対するポーリングメッセージ21に続いて、子機3a宛のデータを送信する。子機3aはポーリングメッセージ21のヘッダに付加された子機3aのネットワークアドレスを参照することで、自分宛のポーリングであることを認識し、データを受信する。
【0044】
この際、子機3aが、親機2aまたはその上位のバックボーンネットワーク宛のデータを持っている時は、前記自分宛のデータを受信完了した後、ポーリング応答メッセージ22に続いて前記データを送信する。
【0045】
一方、親機2aは、子機3a宛のデータ送信終了後、一定時間のタイムアウト期間、子機3aから送信データを待つ。このタイムアウト期間終了前に子機から応答があった場合には、ポーリング応答メッセージ22とそれに続くデータを受信する。このポーリング応答メッセージ22には子機3aから親機2aへ送信するデータ長さが付加されているので、これによって親機2aは子機3aからの応答が持続する期間を知ることが出来る。以上の親機2aと子機3aとの通信の間は、親機2aは子機3aの子機3aのネットワークアドレスを前記図1 のアンテナ制御部17に提示する。このため、以上の親機2aと子機3aとの通信の間は、子機3aの配置されている区域に対応する親局アンテナ6a (分岐回路5a) のみをONとすることが出来る。
【0046】
親機2aは子機3aからの受信を終了すると、順に子機3bを同様にポーリングする。この際には、親局アンテナ6b (分岐回路5b) のみが選択されている。
【0047】
そして、ポーリングリストの最後の子機3cがポーリングされた際に、この子機3cが送信すべきデータを持っていない場合、子機3cはこのポーリングに対し応答しない。このため、親機2aは、一定 (最大) 時間のタイムアウト期間、子機3cからの送信データを待った後、再び、ポーリングリストの先頭に登録されている子機3aのポーリングに移る。そして、この手順を繰り返して行う。
【0048】
以上のような構成とすれば、前記導波路が複数の分岐回路を有する無線LAN システムの場合や無線LAN 親機が複数の場合でも、親機が各子機との通信タイミングを把握しているので、各子機と通信を行うのに最適な親局アンテナを選択し、導波路内で生じるマルチパス干渉の問題を起こさずに通信を可能とする。
【0049】
図6 に図1 の実施態様によるマルチパス干渉の試験結果を示す。図6 は、導波路1aとオフィスの区画とのX 方向の相対関係を示し、目隠しで仕切られたオフィスの区画1 〜3 と各区画内の通信状況を、平面的に3 段階( 〇:IP 取得可能、△:IP 取得可能だが応答性が悪い、×:IP 取得不可) で示している。なお、図6 において6a〜6fは導波路1aに周期的に配置された親局アンテナを示し、この部分のみを側面から図示している。
【0050】
今、本発明のパケット方式での通信を行わず、親局アンテナ6a〜〜6f( 分岐回路) 全てをONにして通信を行った場合、上記図6 に示すように、親局アンテナ6aを通じて通信されるオフィスの区画1-1 から1-3 までは、特に通信状況が△乃至×の場所が多い。
【0051】
これに対し、本発明のパケット方式での通信を行い、親局アンテナ6aのみをONにし、他の親局アンテナをOFF 状態として通信を行った場合、オフィスの区画1-1 から1-3 までが全てIP取得可能となった。このことから、オフィスの区画1-1 から1-3 までは、親局アンテナ6a経由でアクセスポイントとの通信を行うパスと親局アンテナ6bなどを経由してアクセスポイントとの通信を行うパスとの間で、マルチパス干渉を起こしやすいことが分かる。また、本発明のパケット方式での通信によって、このマルチパス干渉を防止できることが分かる。
【0052】
次に、前記図3 、4 で説明した、本発明の前提となる無線LAN システムの装置 (ハード) 構成の個々の要素の実施態様について、更に詳述する。
【0053】
先ず、前記分岐回路5a〜5cと親局アンテナ6a〜6cとの具体的な構成例を、図7 、8 、9 に示す。図7 は分岐回路5aの断面図、図8 は図7 における放射板22の裏面を示す平面図、図9 は図8 の回路図である。
【0054】
図7 において、分岐回路5aは、棒状のカップリング導体21とカップリング導体21の一端に取り付けられた放射板22、そして、放射板22の裏面22a に設けられた、図8 で後述する分岐スイッチ27a などからなる。このカップリング導体21は導体材料からなり、前記導波管1aに設けられた孔1 x に、誘電材料からなる絶縁材料24を介して、略垂直に挿入されている。前記放射板22は導体材料からなるグランド層23間に、誘電材料からなる誘電体層25を挟んだ積層構造を有してなる。そして、放射板22は、前記区域内側に指向するべく略水平とされて、カップリング導体21の接続部28と下部のグランド層23において接続されている。
【0055】
図8 に放射板22の裏面22a を示すように、この放射板22の裏面22a ( 区域内側のグランド層23の表面) には、導電材料からなる平板状のパッチアンテナ26と分岐スイッチ27a が設けられている。パッチアンテナ26は分岐スイッチ27a との電気的な結合部26a を有している。分岐スイッチ27a には、制御信号線20a 、カップリング導体21の放射板接続部28、電源供給線29a とが各々接続されている。また、分岐スイッチ27a の非選択側には終端抵抗30a が接続され、前記パッチアンテナ26下部のグランド層23に接続されている。
【0056】
そして、分岐スイッチ27a は、図8 の回路図 (スイッチ動作図) である図9 に示すように、前記制御信号線20を介した、前記アンテナ制御部17からの制御信号に応じて、前記パッチアンテナ26と前記カップリング導体放射板接続部25との接続を開閉する。これによって、例えば、前記図1 のアンテナ制御部17からの制御信号がON状態時には、前記カップリング導体放射板接続部25とパッチアンテナ26とが結合され、導波管1aからの電磁波がパッチアンテナ26から特定子機に向かって放射される。一方、前記アンテナ制御部17からの制御信号がOFF 状態時には、前記カップリング導体放射板接続部25と終端抵抗30a が接続され、導波管1aと親局アンテナであるパッチアンテナ26とは結合されず、電磁波は放射されない。
【0057】
なお、図7 に示した分岐回路5aは、カップリング導体21の軸中心と放射板22の面中心とをずらしている。このように、互いの中心とをずらすことで、パッチアンテナ26から区域内側 (室内) に放射される高周波は、均等には放射されず、対応する子機に対し、強い指向性 (偏向性) を持つことができる。
【0058】
次に、無線LAN 親機2a、2bの配置例を説明する。前記図3 、4 の例では、無線LAN 親機2a、2bの配置を子機3a、3bと同じ屋内としている。しかし、本発明では、無線LAN 親機と子機とを建屋の天井 (区域の上方) に沿って設けられた導波管を介して接続する方式であるため、無線LAN 親機2a、2bの配置を屋内 (区域内) とする必要は必ずしもなく、屋外あるいは子機3a、3bの屋内と仕切られた乃至離れた他の屋内 (区域内) に配置しても良い。
【0059】
次に、導波路の配置例を説明する。本発明においては、導波管やマイクロストリップ線路などの導波路自体は前記天井11のように区域内の上方に必ずしも設ける必要はない。無線通信網を区域内に形成するために好適であれば、例えば、建屋10の壁面等の区域内の側方などに設けても良い。
【0060】
なお、前記図3 、4 の例では導波路 (導波管) を 2本設けているが、このように、導波路を複数設けることにより、複数の異なるチャネルを用いた場合でも、チャネル同士が干渉せず、繰り返して利用でき、伝送速度の向上に寄与する。
【0061】
前記図3 、4 の導波管自体は、ステンレス、鋼、銅、アルミニウムなど、導電性の公知の金属製導波管から構成するのが、電磁波の伝送損失抑制と施工効率からして好ましい。電磁波の伝送損失が抑制できれば、無線電力も有効に活用できることにつながる。
【0062】
なお、導波路自体は、本発明の主旨を阻害しない範囲で、また必要に応じて、後述するマイクロストリップ線路や同軸ケーブルなどのような、導波管以外のマイクロ波伝送路でも良い。本発明では、導波管やマイクロ波伝送路のような簡便な構造の導波路が使用可能である利点もある。この結果、導波路の設置は、天井や照明および空調設備などの、既存の屋内施設を改造することなく、既存の天井裏の側あるいは天井の屋内側表面に、単独で簡便に施工可能である。
【0063】
また、本発明の導波路は、屋内だけではなく、前記構造物内や屋外などの場合でも、区域内の適当な高さの上方の、既存の構造物 (屋根、アーケード、柱、軒、等々) に、あるいは導波路設置用に新たに仮設乃至設置した構造物 (屋根、アーケード、柱、軒、等々) に、簡便に施工可能である。更に、導波路だけでなく、本発明の無線LAN システム自体の施工も容易である。
【0064】
これら導波路のサイズは、無線LAN の使用する周波数に応じて決定する。また、導波路および分岐回路の数、あるいは間隔などの設け方は、屋内での必要無線LAN 子機の数に応じて、子機の電磁波送受信用アンテナの通信範囲を全てのカバーするように設ける。また、図4の屋内の机14a 、14b や書棚13などによる、無線LAN の親機と子機との間の電磁波の遮蔽や反射波の影響を考慮して決定する。例えば、2.4GHz帯と5.2GHz帯の、2 種類の準マイクロ波帯域の無線LAN を使用する場合には、図3 、4 に示したように、2 本の導波路を設ける。
【0065】
これら複数個の導波路を設け、使用するチャネルを変えれば、複数個のチャネルを室内で利用できる。また、広い室内の場合や無線LAN を使用する利用者が多い場合に、個々の通信速度を高めることもできる。
【0066】
次に、親局アンテナを説明する。前記した図3 、4 の例では、親局アンテナ6a、6bを屋内下方に向かって、垂直に配置しているのに対し、親局アンテナの主ビームの放射角度を、屋内の床面に対して、斜め方向としても良い。このような構成および配置とすれば、親局アンテナからの主ビームの半値幅の指向角のビームの一部が、天井面、机、床面などによる反射波などとなっても、これら反射波のビームが、親局アンテナがカバーする子機に入らない点で好ましい。これら反射波のビームは横方向に伝播され、親局アンテナからの斜め方向の主ビームに対し、伝播方向が異なるからである。したがって、屋内の障害物の条件が特に悪くなった場合の、障害物による屋内で反射した電磁波の影響の可能性を無くして、高いS/N での通信を保証することができる。
【0067】
なお、前記図3 、4 において、親局アンテナの各々カバーする区域の弁別を、親局アンテナの周波数を各々異ならしめることで行っても良い。前記親局アンテナの主ビームの床面に対する放射角度の制御と合わせて行うことによっても、更なる弁別が可能である。
【0068】
親局アンテナは、前記パッチアンテナの他、アレイアンテナとして構成しても良い。アレイアンテナとして構成すれば、親局アンテナの主ビームの放射角度を、屋内の床面に対して、斜め方向とできるなど、前記区域内に向かう指向性を有するアンテナとすることができる。また、アンテナの形状も小さくすることができるので、屋内の天井に設置した場合などに、もともとの屋内の照明や景観を阻害しない。
【0069】
前記導波路と前記親局アンテナの放射電界との結合度を可変とし、無線LAN 親機から離れた親局アンテナほど結合度を大きくしても良い。このように、給電される電力が小さくなる、無線LAN 親機から遠方にある親局アンテナほど、結合度を大きくすることにより、親局アンテナごとの電磁波の不均一乃至電力放射の不均一を解消することができる。
【0070】
次に、電磁波の反射波を更に抑制するための好ましい態様を説明する。このための態様として、建屋10の天井11自体を、広い周波数帯域の電磁波を弱く吸収する、電磁波吸収体で構成しても良い。この電磁波吸収体は、前記特開平9-186485号公報などに開示されているような、薄型で積層型の、導電性層や金属磁性体 (粉末) 層からなるなどの公知乃至市販の電磁波低反射材が適宜選択される。なお、天井自体を電磁波吸収体で構成せずとも、天井材表面に、電磁波吸収体を貼る、公知乃至市販の電磁波吸収塗料を塗布する、これらを組み合わせる、などしても良い。
【0071】
次に、実施例2 として、前記導波路 (高周波線路) がマイクロストリップ線路である場合を、図10を用いて、以下に説明する。図10は、本発明の特徴であるパケット方式通信を前提にし、特定無線LAN 子機のパケット送付先ネットワークアドレスと当該無線LAN 子機との通信に用いる特定分岐回路とを対応づける態様を付加した例を示す。なお、導波路が (高周波) マイクロストリップ線路である場合でも、前記した導波管タイプの本発明無線LAN システムと、基本構成や制御方式は同じである。
【0072】
即ち、図10において、建屋10の天井に沿って設けられた導波路であるマイクロストリップ線路31a を介して、後述する具体的構成の分岐回路36a 、36b 、36c 内の各親局アンテナ (パッチアアンテナ) と、屋内に配置された子機群 (端末機群)39a、39b 、39c との間で、電磁波送受信可能エリアと、カバーすべき子機の電磁波送受信用アンテナの電磁波送受信可能エリアが形成され、電磁波の送受信を行う。このマイクロストリップ線路31a の一方の端部は無反射終端器41とされ、他方の端部40に、図示しない同軸ケーブルなどを介して、無線LAN 親機2aが接続されている。
【0073】
ここにおいて、マイクロストリップ線路31a の構造を、図11と12を用いて、以下に説明する。図11はマイクロストリップ線路31a を拡大して示し、図12は図11のA-A 線断面図である。
【0074】
マイクロストリップ線路31a は、図12のように、導体材料からなるグランド層33に、誘電材料からなる誘電体層32と、導体材料からなる信号線34とを順次積層した構造を有してなる。この他、グランド層33の下部に線路貼り付け (取り付け) 用の粘着層を設けても良く、誘電体層32の上部に、更にグランド層を積層するなどの、マイクロストリップ線路31a 自体の変形は、適宜可能である。
【0075】
また、マイクロストリップ線路自体が薄く可撓性を有するため、長尺の板状だけではなく、線路を巻き取った長尺のコイル状などとして、製造、運搬、施工などの取り扱いが容易である。しかも、伝搬される高周波が低損失であるなど、高周波線路としての基本特性に優れている。
【0076】
ただ、マイクロストリップ線路においても、分岐回路乃至パッチアンテナを線路に取り付ける位置 (場所) により、線路で伝送される高周波の減衰量が異なることが必然的に生じる。したがって、これに対応して、各子機との良好な通信性を確保するために、分岐回路乃至パッチアンテナを線路に取り付ける場所 (高周波の減衰量) により、当該分岐回路乃至パッチアンテナと線路との結合度を調節して、最適結合度とすることが必要となる。
【0077】
この結合度の調節は、▲1▼線路の信号線の中心軸に対する前記パッチアンテナの中心軸の相対位置を変える、▲2▼前記したパッチアンテナの放射板と誘電体の材質や厚さなどの条件を調節することにより可能である。
【0078】
また、マイクロストリップ線路において、放射損を小さくするためには、誘電体層32の誘電率を高くすることが好ましい。この誘電率は、誘電体層32を構成する誘電材料自体の誘電率と誘電体層32の厚みから定まる。このため、誘電率が高くなるように誘電材料と誘電体層32の厚みを選択することが好ましい。但し、誘電率が高い材料や誘電体層32の厚みが厚くなるほど可撓性がなくなるので、可撓性が必要な場合には、これを考慮して、最適な材料と誘電体層32の厚みとを選択する。
【0079】
一方、導体損は信号線34の電気伝導度が高いほど大きくなるため、線路に必要な電気伝導度から、信号線34の最適電気伝導度を決定することが好ましい。更に、誘電損は誘電体層32を構成する誘電材料自体によって定まるので、低誘電損材料を選択することが好ましい。例えば誘電損失の目安 (パラメーター) となる誘電正接が0.02以下と低い樹脂誘電材料を単独の組成乃至複数混合した組成として選択、使用することが好ましい。
【0080】
誘電体層2 の幅と厚みは、無線LAN システムに必要な信号の周波数と高周波の損失との関係で、ある程度の幅と厚みは必要である。この点、例えば、オフィスなどの標準的な屋内の無線LAN システムを基準とすると、0.1 〜2.0mm の厚み、幅は10〜50mm程度とすることが好ましい。
【0081】
線路の全体の厚みは、高周波線路の断面積や体積を少なくする目的からして、2mm 以下のできるだけ薄い方が好ましい。したがって前記グランド層3 や信号線4 の厚みも、この目的からして、できるだけ薄い方が好ましい。グランド層3 の厚みは、必要薄板強度を保証できれば、0.2mm 以下の厚みとすることが好ましい。また、グランド層3 の幅は、誘電体層2 を被覆して高周波の損失を抑制するために、上記誘電体層2 の幅に対応したものとする。
【0082】
グランド層33を構成する導電性材料は、銅、アルミニウム、錫、金、ニッケル、ハンダなどの金属、合金や、これらの金属、合金が各々複合、積層、あるいは樹脂基体などにメッキされた種々の態様が良導電性金属材料として、適宜選択される。これらの中でも、薄板に加工容易で、かつ薄板が、上記誘電材料に見合った可撓性を有し、更に必要薄板強度を有する金属材料が好ましい。
【0083】
高周波誘導用の信号線4 も、上記良導電性金属材料の、細線や薄板が選択される。
【0084】
なお、パッチ37を構成する導電性材料は、前記線路のグランド層を構成する前記導電性材料と同じ金属材料が適用できる。また、誘電体38を構成する誘電材料は、前記マイクロストリップ線路の誘電体を構成する低損失な樹脂誘電体材料と同じ材料が選択される。
【0085】
また、分岐回路36の構成も以下に説明する。図11の一態様においては、分岐回路36は、マイクロストリップ線路31a の信号線34の両側に1 個ずつ配置されている。そして、図10に示すように、この図11あるいは後述する図14のような分岐回路が、マイクロストリップ線路31a 上に、距離 (間隔)L1 、L2、L3を置いて、分岐回路36a 〜36c として各々配置されている。
【0086】
分岐回路36は、図11のように、分岐スイッチ27b に接続するパッチ37、電源供給線29を兼ねる制御信号線20b 、回路の信号線34との電気的な結合部35から基本的になる。また、分岐スイッチ27b には、後述する図13に示すように、非選択側に終端抵抗30b が接続されており、図示しないが、マイクロストリップ線路31a のグランド層33に接続されている。パッチ37は導電材料からなる平板状であり、下部の誘電材料からなる誘電体層38と積層されてパッチアンテナを構成する。
【0087】
上記パッチ (アンテナ) の構成によって、マイクロストリップ線路へのアンテナの取り付けや取り外しが容易となる。したがって、オフィスのレイアウトの変更など、無線LAN システムのアンテナ配置の変更が生じた場合でも、マイクロストリップ線路でエリア全体をカバーできている場合には、基本的には、新しいレイアウトに応じて、パッチアンテナの取り付けや取り外しだけで済み、線路自体の設置工事をやり直す必要がない。
【0088】
また、アンテナの結合度、利得等の主要特性に対し、使用する無線周波数の補正が必要な場合なども、パッチアンテナの側の放射板と誘電体の材質や厚さなどの条件を調節する、乃至適応する条件に調節したパッチアンテナを使用することにより簡便に補正できる。
【0089】
そして、分岐回路36における分岐スイッチ27b は、図11の回路図である図13に示すように、制御信号線20b を介した、前記図10のアンテナ制御部17からの制御信号に応じて、前記パッチ37と前記 (信号線34との) 結合部35との接続を開閉する。これによって、例えば前記アンテナ制御部17からの制御信号がON状態時には、結合部35 (マイクロストリップ線路31a ) とパッチ (アンテナ)37 とが結合され、電磁波がパッチ (アンテナ)37 から特定子機に向かって放射される。一方、前記アンテナ制御部17からの制御信号がOFF 状態時には、結合部35は終端抵抗に接続し、導波路であるマイクロストリップ線路31a (信号線34) と親局アンテナであるパッチ (アンテナ)37 とは結合されず、電磁波は放射されない。
【0090】
図14は、分岐回路36の別の態様を示す。図14における分岐回路36a 、36b は、分岐スイッチ27c が信号線34内に直接挿入されており、この分岐スイッチ27c に、前記パッチ (アンテナ)37 が結合部35a 、35b を介して、信号線34と電気的に結合されている。
【0091】
そして、図14の分岐回路36a(36b も同様) における分岐スイッチ27c は、図14の回路図である図15に示すように、制御信号線20c を介した、前記アンテナ制御部17からの制御信号に応じて、前記パッチ37a とマイクロストリップ線路31a の信号線34との接続を開閉する。これによって、例えば、前記アンテナ制御部17からの制御信号が分岐回路36a をON状態にした時には、信号線34とパッチ (アンテナ)37aとが結合されるようになって、パッチ (アンテナ)37aから電磁波が区域内に放射される。一方、OFF 状態時には、マイクロストリップ線路31a の信号線34同士が接続して、信号線34と親局アンテナであるパッチ (アンテナ)37aとは結合されない。したがって、高周波なり信号はそのまま、分岐回路36a を通過して、マイクロストリップ線路31a 上を流れる。
【0092】
ただ、この分岐回路の実施態様では、上記した分岐回路の実施態様と異なり、分岐スイッチを直接信号線34中に挿入している。このため、前記図10のアンテナ制御部17からの制御信号に応じて、上流側の分岐回路36a を選択、結合した場合には、下流側の分岐回路36b 以降には、マイクロストリップ線路31a を通じた高周波なり信号は全く流れない。言い換えると、1 つの分岐回路を選択すると、他の分岐回路からの信号は一切受信できない。例えば、図14の分岐回路36a を選択している時は、例え、他の分岐回路36b 等を選択しても、他の分岐回路36b からの信号は、図10の親機2aには到達しない。このため、この分岐回路の実施態様では、前記図2 で説明したポーリング制御によってのみ使用できる分岐方式となる。
【0093】
一方、この分岐回路の実施態様では、常に、選択した1 つの分岐回路に、図10の親機2aからの全電力が到達し、この全電力が選択された1 つのパッチアンテナから放射されるため、電力の効率が高いという利点がある。例えば、前記図11の結合型の分岐回路の実施態様では、どの分岐回路を選択した場合でも、必ず、各分岐回路で導波路からの電力結合が生じている。このため、結合型の分岐回路では、非選択となった分岐回路では、前記各終端抵抗によって、電力が損失されることとなり、電力の効率が挿入型の分岐回路に比して低くなる。
【0094】
以上のような装置構成において、前記図10に示すように、前記した図1 と同様に、アンテナ制御部17は、予め、無線LAN 子機39a 、39b 、39c のパケット送付先ネットワークアドレスと、当該無線LAN 子機との通信に用いるべき、各分岐回路36a 、36b 、36c に設けたパッチ (アンテナ) との対応関係を子機 (子局) 参照テーブル18として有する。そして、無線LAN 親機2aから特定の無線LAN 子機に対しデータを送信する際、その特定の子機のパケット送付先ネットワークアドレスを指定して、アンテナ制御部17に制御信号9 として送る。制御信号9 を送られたアンテナ制御部17は、前記ネットワークアドレスから無線LAN 子機を特定し、この特定無線LAN 子機に通信を行う際に使用すべき特定の親局アンテナを、前記参照テーブル18を参照して決定する。
【0095】
しかる後に、アンテナ制御部17は、決定した特定親局アンテナに接続する分岐回路 (分岐スイッチモジュール) のみを信号線20(20a〜20c)を介してONとし、その他の分岐回路を信号線20を介してOFF とする。これにより、現在、無線LAN 親機2aから送信されている電磁波は、マイクロストリップ線路31a 内から選択された特定の親局アンテナのみを通して、特定子機に到達する。したがって、無線LAN 親機2aから子機に至る通信経路を一意に決めることで、マルチパス干渉の問題を解決出来る。
【0096】
また、前記導波路が複数の分岐回路を有する無線LAN システムの場合や無線LAN 親機が複数の場合でも、複数の親局アンテナが同時に導波路に結合することは無い。このため、特定子機に対し、無線LAN 親機からは、親局アンテナを介した経路のみを通じてデータが送信され、他の親局アンテナを介したようなマルチパス経路が発生する懸念がない。
【0097】
更に、図10の態様に対し、更に、前記図2 で説明したポーリング方式の親機と子機との間の通信制御方式を用いれば、導波路内で生じるマルチパス干渉の問題を起こさずに通信を可能とする。即ち、前記導波路が複数の分岐回路を有する無線LAN システムの場合や無線LAN 親機が複数の場合でも、親機が各子機との通信タイミングを把握しているので、各子機と通信を行うのに最適な親局アンテナを選択し、導波路内で生じるマルチパス干渉の問題を起こさずに通信を可能とする。また、子機から親機への送信時を含めて、通信経路を限定し、使用すべき親局アンテナを限定することで、双方向にマルチパス干渉を回避することが可能となる。
【0098】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る無線LAN システムであれば、通信に使用する電磁波の周波数が低い場合でも、前記複数通信経路によるマルチパスフェージングを抑制でき、通信の実効速度の低下がない無線LAN システムを提供することができる。また、本発明に係る無線LAN システムは、無線LAN 親機配置の制約などが無く、設置の自由度が高く、施工も容易である。
更に、複数個のチャネルを区域内で利用でき、広い区域や室内の場合や無線LAN を使用する利用者が多い場合にも、個々の通信速度を高めることもできる。そして、用途や必要性に応じて、無線LAN システム系列の規模や数を任意に拡大できる。
このため、無線LAN システムを、屋内だけではなく、屋内以外の屋外、商店街などのアーケード、駅プラットホーム、空港ターミナル、あるいはテントなどの大型仮設構造物やイベント会場などの、一定の区域における無線LAN システムなどにも、導波路を設置できる屋根などの構造物があれば、あるいは無くても新たに簡便に構造物を設けて導波路を設置できる等、適用拡大でき、無線を用いたモバイル通信にも適用できるなど、その工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】導波管を用いた本発明無線LAN システムの一実施態様を示す説明図である。
【図2】図1の無線LAN システムの通信状況を示す説明図である。
【図3】図1の前提となる無線LAN システムの構成を示す斜視図である。
【図4】図3のA-A 線断面図である。
【図5】パケット通信方式を示す説明図である。
【図6】図1 の実施態様によるマルチパス干渉試験結果を示す平面図である。
【図7】本発明無線LAN システムにおける分岐回路の一例を示す、断面図である。
【図8】図7 における放射板22の裏面を示す平面図である。
【図9】図8 の回路図である。
【図10】マイクロストリップ線路を用いた本発明無線LAN システムの別の実施態様を示す説明図である。
【図11】本発明無線LAN システムにおけるマイクロストリップ線路の一例を示す、断面図である。
【図12】図11のA-A 線断面図である。
【図13】図11の回路図である。
【図14】本発明無線LAN システムにおける分岐回路の別の態様を示す平面図である。
【図15】図14の回路図である。
【符号の説明】
1:導波路、2:無線LAN 親機、3:無線LAN 子機、4:導波路端部、
5:分岐回路、6:親局アンテナ、7:子機アンテナ、8 :OA機器、
9:開口、10:建屋、11:天井、12:同軸- 導波管変換器、
13 :書棚、14:机、15:ケーブル、16:扉、17:アンテナ制御部、
18 :参照テーブル、19:バックボーンネットワーク、20:信号線
21 :カップリング導体、22:放射板、23:グランド層、24:絶縁材料、
25 :誘電体層、26:パッチアンテナ、27:分岐スイッチ、
28 :カップリング導体接続部、29:電源供給線、30:終端抵抗、
31 :マイクロストリップ線路、32:誘電体層、33:グランド層、34:信号線、
35 :結合部、36:分岐回路、37:パッチ、38:誘電体層、39:子機、
40 :高周波線路の片端、41:無反射終端器、
Claims (10)
- 無線通信網を形成する区域内に沿って設けられた導波路と、この導波路に接続された無線LAN 親機と、前記区域内に配置された無線LAN 子機とを有し、前記導波路が複数の分岐回路を有し、この分岐回路を制御するアンテナ制御部を有し、前記分岐回路が各々前記区域内に向かう指向性を有する電磁波送受信用アンテナを接続しており、パケット方式にて前記無線LAN 親機と前記無線LAN 子機との間でデータ通信を行う無線LAN システムであって、特定無線LAN 子機のパケット送付先ネットワークアドレスと当該無線LAN 子機との通信に用いる特定分岐回路とが前記アンテナ制御部にて予め対応づけられており、通信されるパケットのネットワークアドレスに応じて、このアドレスに対応づけられている特定分岐回路を前記アンテナ制御部により選択的に開くようになしたことを特徴とする無線LAN システム。
- 前記無線LAN 親機が通信を行う無線LAN 子機のリストを有し、このリストに従って無線LAN 子機を順にポーリングして、親機と各子機間での通信のタイミングを把握し、この把握タイミングに従い、親機と特定子機間での通信中の期間において開く特定分岐回路を前記アンテナ制御部により選択する請求項1に記載の無線LAN システム。
- 前記導波路が導波管である請求項1または2に記載の無線LAN システム。
- 前記分岐回路が棒状のカップリング導体とこのカップリング導体の一端に取り付けられた放射板からなり、前記導波管に設けられた孔に、前記カップリング導体が絶縁材料を介して挿入されるとともに、前記放射板が前記区域内側に指向されており、この放射板の前記区域内側表面にパッチアンテナが形成される一方、制御信号に応じて前記パッチアンテナと前記カップリング導体の放射板接続部との接続を開閉する分岐スイッチが設けられている請求項3に記載の無線LAN システム。
- 前記導波路がマイクロストリップ線路である請求項1または2に記載の無線LAN システム。
- 前記マイクロストリップ線路が、導体材料からなるグランド層に誘電材料からなる誘電体層と導体材料からなる信号線とを順次積層した構造を有してなるとともに、誘電材料からなる誘電体板と導体材料からなるパッチとを順次積層したパッチアンテナが前記信号線と電気的に結合されており、更に、制御信号に応じて前記信号線と前記パッチアンテナとの接続を開閉する分岐スイッチが設けられている請求項5に記載の無線LAN システム。
- 前記パッチアンテナが結合部を介して前記信号線と電気的に結合されており、前記分岐スイッチが前記結合部と前記パッチアンテナとの接続を開閉するように設けられている請求項6に記載の無線LAN システム。
- 前記分岐スイッチが前記信号線内に挿入されており、この分岐スイッチに前記パッチアンテナが電気的に結合されている請求項6に記載の無線LAN システム。
- 前記無線LAN システムが屋内用であり、前記区域が屋内である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無線LAN システム。
- 前記屋内の天井に沿って前記導波路を設けた請求項1乃至9のいずれか1項に記載の無線LAN システム。
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