JP3805897B2 - 多管式貫流ボイラ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、多管式貫流ボイラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の多管式貫流ボイラとしては、図7に示す如く、ボイラ本体42内に同心環状をなす第1及び第2加熱管群45,46を配置して、横断面円形の燃焼室43を内側の第1加熱管群45により囲繞形成すると共に、第1加熱管群45と第2加熱管群46との間に形成される環状空間を燃焼ガス通路44となし、燃焼室43における燃焼火炎による輻射伝熱と燃焼ガス通路44を流動する燃焼ガスGによる接触伝熱(対流伝熱)とによって、加熱管群45,46を構成する各加熱管45a,46a内のボイラ水(缶水)への熱吸収が行なわれるように構成したもの(以下「従来ボイラ」という)が周知である。
【0003】
すなわち、従来ボイラにあって、各加熱管群45,46は、図7に示す如く、外周面に上下方向に延びる帯板状の縦ヒレ45b,46bを突設した複数の加熱管45a…,46a…を環状に配置すると共に隣接する加熱管間を縦ヒレ45b,46bで連結してなる気密構造壁に構成されている。そして、第1加熱管群45で構成される燃焼室43の周壁の所定箇所には、そこに位置する縦ヒレ45b…を切欠することにより燃焼ガス出口43a…が設けられていて、この燃焼ガス出口43a…から燃焼室43で発生する燃焼ガスGが燃焼ガス通路44へと流出されるように工夫されている。また、燃焼ガス通路44の両側壁は第1及び第2加熱管群45,46で構成されるが、第2加熱管群46で構成される燃焼ガス通路44の外側壁は、燃焼ガス出口43a…と径方向に対向する部位で開口され煙道40に連通されていて、燃焼ガス出口43a…から流出された燃焼ガスGが第1及び第2加熱管45a…,46a…に接触しつつ燃焼ガス通路44を流動して、煙道40へと排出されるようになっている。
【0004】
したがって、ボイラ水への熱吸収は、第1加熱管45a…においては、燃焼室43における燃焼火炎による輻射伝熱と燃焼ガス通路44を流動する燃焼ガスGによる接触伝熱とによって行なわれ、第2加熱管46a…においては燃焼ガスGによる接触伝熱のみによって行なわれる。
【0005】
ところで、一般に、ボイラの高効率化,小形化,省エネルギ化を図るには伝熱面での熱伝達率を向上させることが必要であり、特に、輻射伝熱による熱吸収量が燃焼室43に設けられる燃焼器による燃焼方法によって必然的に定まることから、接触伝熱面(対流伝熱面)での熱伝達率を向上させることが極めて重要なポイントとなる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来ボイラにあっては、第1加熱管45a…については、その全面が伝熱面として機能する(縦ヒレ45bが突設された箇所より内側の部分は燃焼火炎による輻射伝熱面として機能し、当該箇所より外側の部分は燃焼ガスGと接触する接触伝熱面として機能する)が、第2加熱管46a…については、その一部が接触伝熱面として機能するにすぎない。すなわち、各第2加熱管46aにおいて、縦ヒレ46bが突設された箇所より内側の部分46cは燃焼ガスGと接触するが、当該箇所より外側の部分46dは燃焼ガスGと接触せず、接触伝熱面として機能しない。
【0007】
このように、従来ボイラは、加熱管群の一部(第2加熱管46aの一部46d)が伝熱面として有効に機能しない構造となっているため、ボイラの高効率化,小形化,省エネルギ化の要請に応えることができないものであった。なお、加熱管45a…,46a…には、一般に、給水予熱器により予熱されたボイラ水が供給されるが、従来ボイラにあっては、かかる給水予熱器がボイラ本体42外に設置されているため、このことによってもボイラの小型化が妨げられていた。
【0008】
また、第2加熱管46aについては、燃焼ガスGに接触する部分46cと接触しない部分46dとの間に大きな温度差(管壁温度差)が生じ、これによる熱応力によって変形,破損する虞れがあり、ボイラ構造が安定しないといった問題もあった。
【0009】
本発明は、このような問題を生じることなく、ボイラの高効率化,小形化,省エネルギ化を図ることができ、構造的にも安定したボイラ機能を発揮しうる多管式貫流ボイラを提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、燃焼室と、燃焼室にその周壁に形成された燃焼ガス出口を介して連通する燃焼ガス通路と、燃焼室の周壁を構成する第1加熱管群と、各第2加熱管の全面に燃焼ガスが接触する状態で燃焼ガス通路に配置された第2加熱管群と、第1及び第2加熱管群の上下端部を連通接続する共通の上部ヘッダ及び下部ヘッダと、前記燃焼ガス通路の周壁を形成する中空構造体から成り、燃焼ガス通路を流動する燃焼ガスとの熱交換により中空構造体内を流通して下部ヘッダへ流入するボイラ水を予熱する給水予熱器とを具備する多管式貫流ボイラにおいて、前記給水予熱器を形成する中空構造体内にボイラ水の流動方向に所定間隔を隔てて並列する複数の仕切壁を設け、隣接する仕切壁に上下に齟齬するボイラ水通過口を形成すると共に、仕切壁の側端部を燃焼ガスとの接触伝熱面から燃焼ガス通路側へ突出させた構成としたことを発明の基本構成とするものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、燃焼室が横断面円形をなすものであり、燃焼ガス通路が燃焼室を囲繞する環状空間であり、燃焼ガス通路の内側壁が燃焼室の周壁たる第1加熱管群で構成されており、燃焼ガス通路の外側壁が給水予熱器に構成されていることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、燃焼室と燃焼ガス通路とが、夫々横断面方形をなして縦列しており、燃焼ガス通路の両側壁が給水予熱器に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載する多管式貫流ボイラ。
更に、請求項4の発明は、請求項1、請求項2又は請求項3の発明において、給水予熱器の内部をボイラ水が、燃焼ガス通路における燃焼ガス流動方向と同一方向又は逆方向に流動するようにしたものであり、請求項5の発明は、請求項1、請求項2又は請求項3の発明において、中空壁構造体の上端部が、これと第1及び第2加熱管との上下方向における熱収縮差を吸収すべく変形しうる屈曲板を介して、上部ヘッダに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図6に基づいて具体的に説明する。
【0013】
図1及び図2は第1の実施の形態を示したものである。この実施の形態における多管式貫流ボイラ(以下「第1ボイラ」という)11 は、図1及び図2に示す如く、ボイラ本体2が横断面円形をなすものであり、ボイラ本体2には、上部に燃焼器(図示せず)を配置した燃焼室3と、燃焼室3に連通する燃焼ガス通路4と、上下方向に延びる複数の第1及び第2加熱管5a…,6a…と、これら加熱管5a…,6a…の上下端部を連通接続する共通の上部ヘッダ7及び下部ヘッダ8と、下部ヘッダ8に供給するボイラ水(缶水)Wを予熱する給水予熱器9とが設けられている。
【0014】
燃焼室3は、図1に示す如く、ボイラ本体2の中心部に第1加熱管群5で囲繞形成された横断面円形のものである。すなわち、燃焼室3の周壁は、円形状に並列配置された複数の第1加熱管5a…からなる第1加熱管群5によって構成されている。各第1加熱管5aは、その外周面に上下方向に延びる帯板状の縦ヒレ5bを突設してなるものであり、隣接する第1加熱管5a,5aは、その間に隙間を生じないように、縦ヒレ5bにより連結されている。第1加熱管群5で構成される周壁の適所には、縦ヒレ5b…を切欠することによって形成された燃焼ガス出口3a…が設けられている。
【0015】
燃焼ガス通路4は、図1に示す如く、燃焼室3を囲繞する環状空間であり、ボイラ本体2の径方向対向部位において、燃焼ガス出口3a…を介して燃焼室2に連通されると共にボイラ本体2に設けた煙道20に接続されている。したがって、燃焼室3で発生した燃焼ガスGは、燃焼ガス出口3a…から燃焼ガス通路4に流入し、燃焼ガス通路4内を流動して煙道20へと流出する。燃焼ガス通路4の両側壁(周壁)の一方である内側壁は、燃焼ガス通路4と燃焼室3とを仕切る気密構造壁であり、燃焼室3の周壁つまり第1加熱管群5によって兼用構成されている。また、燃焼ガス通路4の両側壁の他方である外側壁は、後述する中空壁構造体9a,9bからなる給水予熱器9によって構成されている。
【0016】
第2加熱管群6は、複数の第2加熱管6a…で構成されており、これらの第2加熱管6a…は、相互に連結されておらず全周面に燃焼ガスGが接触する分散形態をなして、燃焼ガス通路4内に配置されている。すなわち、図1に示す如く、複数の第2加熱管6a…を、適当ピッチで第1加熱管群5と同心又は略同心(若干の偏心)をなす一条の円形列形態で、燃焼ガス通路4の幅方向中央部に配置してある。また、煙道20側(燃焼ガス流動経路の下流側)に位置する適当数の第2加熱管6a…には、外周面に環状フィン6b…を突設したフィン付き管が使用されている。
【0017】
上部ヘッダ7及び下部ヘッダ8は、図2に示す如く、ボイラ本体2の上下部に設けられた中空構造体であり、第1及び第2加熱管5a…,6a…の上下端部を連通接続している。各加熱管5a,6aの上下端部は、上部ヘッダ7の下面部を構成する上部管寄せ板7a及び下部ヘッダ8の上面部を構成する下部管寄せ板8aに固着されている。上部ヘッダ7には気水分離器等を備えた蒸気路21が接続されており、下部ヘッダ8には後述の給水路22が接続されている。
【0018】
給水予熱器9は、図1及び図2に示す如く、分解可能な構造をなすものであり、燃焼ガス通路4に沿って円弧状に延びる一対の中空壁構造体9a,9bからなり、両中空壁構造体9a,9bの一端部を煙道20の周壁部(フランジ部)に連結すると共に当該両中空壁構造体9a,9bの他端部同士を連結することによって、燃焼ガス通路4の外側壁(ボイラ本体2の周壁(ケーシング)としても機能する)を構成している。両中空壁構造体9a,9bの一端部(煙道20側の端部)に、夫々、ボイラ水供給源(図示せず)から導いた送水路23及び下部ヘッダ8に導いた給水路22を接続すると共に、両中空壁構造体9a,9bの他端部を連通路24により連通接続してあって、送水路23から一方の中空壁構造体9aに導入されたボイラ水Wが連通路24を介して両中空壁構造体9a,9b内を順次通過した上、給水路22から下部ヘッダ8に供給されるようになっている。各中空壁構造体9a,9bは、図2に示す如く、横幅の狭い(例えば、10mm程度)縦断面矩形状をなす金属箱体であり、燃焼ガス通路4に面する側壁を伝熱面9cに構成して、中空壁構造体9a,9b内を流動するボイラ水Wが燃焼ガス通路4を流動する燃焼ガスGとの熱交換により加熱されるようになっている。
【0019】
各中空壁構造体9a,9bの上下端部は、図2に示す如く、ヘッダ7,8の管寄せ板7a,8aに取り付けられているが、特に、上端部は、中空壁構造体9a,9bと加熱管5a…,6a…との上下方向における熱収縮差(熱歪量差)を吸収すべく変形しうる屈曲板9dを介して、上部ヘッダ7に取り付けられている。すなわち、各中空壁構造体9a,9bの上端部は、これに突設した屈曲板9dを介して、図2に示す如く、上部管寄せ板7aにこれとの間に若干の隙間25を有した状態で取り付けられている。各屈曲板9dは中間部9eを屈曲させたものであり、上下端部を管寄せ板7a,8aに固着された中空壁構造体9a,9bと加熱管5a…,6a…との間の熱収縮差を屈曲部9eの変形により吸収する。なお、各屈曲板9dは中空壁構造体9a,9bの全長に亘って延びる断面一様の帯状板である。
【0020】
以上のように構成された第1ボイラ11 にあっては、給水路23から下部ヘッダ8に供給されたボイラ水Wは、各加熱管5a,6a内を上昇する間において、燃焼室3における燃焼火炎による輻射伝熱と燃焼ガス通路4を流動する燃焼ガスGによる接触伝熱(対流伝熱)とにより加熱されて蒸発を開始し、爾後、気液混合体となって上部ヘッダ7へと上昇していき、蒸気路21へと取り出される。
【0021】
このとき、各第1加熱管5aについては、従来ボイラにおけると同様に、その全面が輻射伝熱面及び接触伝熱面として機能する。一方、各第2加熱管6aについては、その全面が燃焼ガスGと接触して、接触伝熱面として機能することから、第2加熱管6a…による熱伝達率が従来ボイラにおける第2加熱管46a…に比して大幅に向上する。
【0022】
また、加熱管5a…,6a…に供給されるボイラ水Wは給水予熱器9によって予熱されるが、その予熱は燃焼ガス通路4を流動する燃焼ガスGによる接触伝熱(対流伝熱)により行なわれる。すなわち、燃焼ガス通路4の外側壁は給水予熱器9を構成する中空壁構造体9a,9bで構成されていて、その伝熱面9c,9cが燃焼ガスGに接触することから、ボイラ水Wは中空壁構造体9a,9bを通過する間において、燃焼ガスGとの熱交換により加熱(予熱)されることになる。
【0023】
このように、第1ボイラ11 によれば、燃焼室3及び燃焼ガス通路4における伝熱面を最大限有効に活用することができ、ボイラの高効率化,省エネルギ化を図ることができる。
【0024】
また、第1加熱管5aについては勿論、第2加熱管6aについても、上記した如く全面が伝熱面として機能することから、管壁温度が大きく異なる部分が生じず、温度差による熱応力が生じない。ところで、給水予熱器9を構成する中空壁構造体9a,9bと加熱管5a…,6a…とは、構造上、熱収縮量が異なり、それらの間には顕著な熱収縮差が生じることになる。したがって、これらの上下端部が共通のヘッダ8,9つまり管寄せ板8a,9aに連結されていることから、かかる熱収縮差によって、当該連結構造が破損する虞れが生じる。しかし、各中空壁構造体9a,9bの上端部は、上記した如く、上下方向に変形可能な屈曲板9dを介して、上部管寄せ板7aにこれとの間に若干の隙間25を有した状態で取り付けられていることから、上記熱収縮差は屈曲板9dの変形により吸収され、当該連結構造に悪影響を及ぼすことがない。しかも、ボイラ本体2の周壁(ケーシング)は燃焼ガスGに直接触れるものであるが、ボイラ水Wが流動する中空壁構造体9a,9bからなる水冷構造壁に構成されていることから、熱損,焼損するようなことがない。これらのことから、第1ボイラ11 にあっては、熱的要因により構造が不安定となることがなく、構造的にも安定したボイラ機能を発揮することができる。
【0025】
また、加熱管5a…,6a…の全面を伝熱面として機能させることができることから、要求されるボイラ効率が同一であれば、従来ボイラに比して、加熱管の設置数を減少させることができる。しかも、燃焼ガス通路4の周壁(ボイラ本体2の周壁)を給水予熱器9に構成したから、従来ボイラのように給水予熱器をボイラ本体42外に設置する場合に比して、ボイラ全体を大幅に小型化することができる。これらのことから、第1ボイラ11 にあっては、従来ボイラに比して大幅な小型化を実現することができる。
【0026】
また、ボイラ本体2の周壁(ケーシング)でもある給水予熱器9を分解可能な一対の中空壁構造体9a,9bで構成するようにしたから、ボイラの保守,管理も極めて容易となる。しかも、第2加熱管5aとして縦ヒレ付きのもの使用する必要がないことから、伝熱面製作が容易となり、縦ヒレ溶接等による熱変形対策に要する煩わしさもない。
【0027】
また、図3〜図5は第2の実施の形態を示すものであり、この実施の形態における本発明に係る多管式貫流ボイラ(以下「第2ボイラ」という)12 は、図3及び図4に示す如く、ボイラ本体12が前後方向(図3における上下方向)に長尺な横断面矩形をなすものであり、ボイラ本体12には、前後方向に連通状態に縦列する燃焼室13及び燃焼ガス通路14と、上下方向に延びる複数の第1及び第2加熱管15a…,16a…と、これら加熱管15a…,16a…の上下端部を連通接続する共通の上部ヘッダ17及び下部ヘッダ18と、下部ヘッダ18に供給するボイラ水Wを予熱する給水予熱器19とが設けられている。
【0028】
燃焼室13は、図3に示す如く、ボイラ本体12の前部に配して、第1加熱管群15で囲繞形成された横断面矩形のものであり、前端に設けた耐火壁部13bには適宜の燃焼器(図示せず)が配置されている。燃焼室13の周壁は、耐火壁部13bに連なってコ字状に並列配置された複数の第1加熱管15a…によって構成されている。燃焼室13の左右(図3における左右)に位置する第1加熱管15a…は、気密壁構造をなすために、相互に密接した状態で配置されている。なお、かかる気密壁構造は、これらの第1加熱管15a…を、第1ボイラ11 における第1加熱管5aと同様の縦ヒレ付きのものに構成して、その縦ヒレにより相互連結することによっても得ることが可能である。また、燃焼室13の後壁を構成すべく左右に並列する第1加熱管15´a…は、これらを密接させず、左右方向に所定間隔を隔てて配置されており、これらの加熱管15´a…間の隙間を燃焼ガス出口13a…としてある。
【0029】
燃焼ガス通路14は、図1に示す如く、ボイラ本体12の後部側に配して形成された横断面矩形状の空間であり、前端部が燃焼ガス出口13a…を介して燃焼室13に連通されると共に後端部がボイラ本体12に設けた煙道30に接続されている。燃焼ガス通路14の両側壁は、ボイラ本体12の左右側壁(ケーシング)に兼用構成されており、後述する中空壁構造の給水予熱器19によって構成されている。
【0030】
第2加熱管群16は、第1ボイラ11 におけると同様に、これを構成する複数の第2加熱管16a…が相互に連結されておらず且つ燃焼ガス通路14の両側壁に接触しない分散形態(全面が燃焼ガスGに接触しうる形態)をなして、燃焼ガス通路14内に配置されている。すなわち、図3に示す如く、複数の第2加熱管16a…を、適当ピッチで前後方向及び左右方向に並列する形態で、燃焼ガス通路14の全域に配置してある。また、煙道30側(燃焼ガス流動経路の下流側)に位置する適当数の第2加熱管16a…には、外周面に環状フィン16b…を突設したフィン付き管が使用されている。
【0031】
上部ヘッダ17及び下部ヘッダ18は、図4に示す如く、ボイラ本体12の上下部に設けられた中空構造をなすものであり、第1加熱管15a…,15´a…及び第2加熱管16a…の上下端部を連通接続している。各加熱管15a,15´a,16aの上下端部は、上部ヘッダ17の下面部を構成する上部管寄せ板17a及び下部ヘッダ18の上面部を構成する下部管寄せ板18aに固着されている。上部ヘッダ17には気水分離器等を備えた蒸気路31が接続されており、下部ヘッダ18には後述の給水路32が接続されている。
【0032】
給水予熱器19は、図3及び図4に示す如く、燃焼ガス通路14に沿って前後方向に直線状に延びる左右一対の中空壁構造体19a,19bからなり、両中空壁構造体19a,19bの前端部をボイラ本体12の前壁12aに連結すると共に後端部を煙道30の周壁部(フランジ部)に連結することによって、燃焼ガス通路14の両側壁を含むボイラ本体12の両側壁(ケーシング)を構成している。両中空壁構造体19a,19bの前端部に、夫々、下部ヘッダ18に導いた給水路32及びボイラ水供給源(図示せず)から導いた送水路33を接続すると共に、両中空壁構造体19a,19bの後端部を連通路34により連通接続してあって、送水路33から導入された一方の中空壁構造体19bに導入されたボイラ水Wが、当該中空壁構造体19b内を燃焼ガスGの流動方向と同一方向に流動し、更に連通路34を経て、他方の中空壁構造体19a内を当該燃焼ガスGの流動方向と逆方向に流動した上、給水路32から下部ヘッダ18に供給されるようになっている。
【0033】
各中空壁構造体19a,19bは、図3及び図4に示す如く、横幅の狭い(例えば、10mm程度)縦断面矩形状をなす金属箱であり、燃焼ガス通路14に面する側壁を接触伝熱面(対流伝熱面)19cに構成して、中空壁構造体19a,19b内を流動するボイラ水Wが、燃焼ガス通路4を流動する燃焼ガスGとの熱交換により加熱されるようになっている。
【0034】
ところで、小型の多管式貫流ボイラにあっては、一般に、上限機種が蒸発量換算2000kg/hであり、実際の蒸発量は給水温度20℃,蒸気圧7kg/cm2 の条件下で約1684kg/hであり、その2倍程度をレベルコントロールで給水していることから、給水予熱器19内でのボイラ水Wの流速を気泡が滞留しないように1m/s以上となるように工夫しておくことが好ましい。そこで、第2ボイラ12 にあっては、図5に示す如く、各中空壁構造体19a,19b内に、ボイラ水Wの流動方向に所定間隔を隔てて並列する複数の仕切壁19f…を設けると共に、隣接する仕切壁19f,19fに上下に齟齬するボイラ水通過口19g,19gを形成して、ボイラ水Wが上下に蛇行しつつ1m/s以上の流速で流動するように工夫してある。なお、1m/s以上の流速を確保するために、各中空壁構造体19a,19bの横幅は極めて小さくなる(一般に、10mm程度となる)。
【0035】
また、各中空壁構造体19a,19bの上下端部は、図4に示す如く、第1ボイラ11 における中空壁構造体9a,9bと同様構造をなしてヘッダ17,18の管寄せ板17a,18aに取り付けられている。すなわち、各中空壁構造体19a,19bの上端部を、上部管寄せ板17aとの間に若干の隙間35を有した状態で、屈曲部19eを有する屈曲板19dを介して上部管寄せ板17aに取り付けてある。
【0036】
以上のように構成された第2ボイラ12 にあっては、第1ボイラ11 と同様の作用効果が奏せられ、ボイラの高効率化,小型化,省エネルギ化を図ることができ、構造上も安定したボイラ機能を発揮することができる。
【0037】
すなわち、各第2加熱管16aの全面が燃焼ガスGと接触して、接触伝熱面として機能することから、第2加熱管16a…による熱伝達率が大幅に向上する。また、ボイラ水Wの予熱は、燃焼ガス通路14の両側壁を構成する中空壁構造体19a,19bと燃焼ガスGとの接触により効果的に行なわれる。したがって、第2ボイラ12 によれば、燃焼室13及び燃焼ガス通路14における伝熱面を最大限有効に活用することができ、ボイラの高効率化,省エネルギ化を図ることができる。
【0038】
また、各加熱管15a,16aの全面が伝熱面として機能することから、管壁温度差による熱応力が生じない。また、中空壁構造体19a,19bと加熱管5a…,6a…との間の熱収縮差は、屈曲板19dの変形により吸収されて、ヘッダ17,18との連結構造に悪影響を及ぼすことがない。したがって、第2ボイラ12 にあっては、熱的要因により構造が不安定となることがなく、構造的にも安定したボイラ機能を発揮することができる。
【0039】
また、燃焼ガス通路14の両側壁(ボイラ本体12の両側壁(ケーシング))を給水予熱器19に構成したから、給水予熱器をボイラ本体外に設置する場合に比して、ボイラ全体を大幅に小型化することができる。また、ボイラ本体12の周壁でもある給水予熱器19を分解可能な一対の中空壁構造体19a,19bで構成するようにしたから、ボイラの保守,管理も極めて容易となる。
【0040】
なお、本発明は、上記した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。
【0041】
例えば、第2加熱管6a…,16a…の設置数,配置は、要求されるボイラ条件に応じて任意に設定することができる。すなわち、従来ボイラでは、第2加熱管46a…が燃焼ガス通路44の周壁(外側壁)を構成しており、気密壁構造であることが要求されることから、その設置数,配置には一定の制限がある。しかし、本発明に係るボイラ11 ,12 にあっては、第2加熱管6a…,16a…が燃焼ガス通路4,14内に配置されるものであり、相互に連結しておく必要がないものであることから、このような設置数,配置に関する制限はない。したがって、要求されるボイラ条件に応じて、第2加熱管6a…,16a…を千鳥状等の任意の配置形態としておくことができ、その形状(フィンの有無等)も任意に設定することができ、ボイラ条件の異なる広範な用途に供することができる。例えば、温水ボイラ等としても使用することができる。
【0042】
また、第1ボイラ11 の中空壁構造体9a,9bにあっても、第2ボイラ12 における仕切壁19f…と同様の仕切壁を設けることができる。また、仕切壁19f…を設ける場合にあっては、図6に示す如く、各仕切壁19fの側端部を、接触伝熱面19cから燃焼ガス通路14側へと突出させて、接触伝熱面19cとこれに隣接する第2加熱管16a…との間における燃焼ガスGの流動を攪拌させることにより、燃焼ガスGとの接触伝熱効率をより向上させることができる。この場合、図6に示す如く、燃焼ガスGの流動方向における第2加熱管16a…と仕切壁19f…とのピッチを齟齬させておく(例えば、半ピッチ齟齬させておく)ことが好ましい。
【0043】
また、屈曲板9d,19dは、加熱管5a…,6a…,15a…,16a…と中空壁構造体9a,9b,19a,19bとの上下方向における熱収縮差を吸収すべく変形できるものであれば、その形状は任意である。
【0044】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解されるように、本発明の多管式貫流ボイラによれば、第1加熱管については勿論、第2加熱管についてもその全面を伝熱面(接触伝熱面)として機能させることができると共に、燃焼ガス通路の周壁を形成する中空構造体から成る給水予熱器の前記中空構造体の内部に、ボイラ水の流動方向に所定の間隔を隔てて並列する複数の仕切壁を設け、当該仕切壁の側端部を燃焼ガスとの接触伝熱面から燃焼ガス通路側へ突出させて、接触伝熱面とこれに隣接する第2加熱管との間における燃焼ガスの流動を攪拌させることにより、燃焼ガスとの接触伝熱効率をより向上させることが可能となる。その結果、中空構造体から成る給水予熱器でもってボイラ水を燃焼ガスにより予熱できることとも相俟って、冒頭で述べた如き問題を生じることなく、ボイラの大幅な高効率化、小型化、省エネルギ化等を容易に図ることができる。
【0045】
また、本発明の多管式貫流ボイラは、第2加熱管の設置数,配置等をボイラ条件に応じて任意に設定することができ、その自由度が高いことから、極めて広範な用途に供しうるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1ボイラを示す横断平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う縦断正面図である。
【図3】第2ボイラを示す横断平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う縦断正面図である。
【図5】第2ボイラの要部(給水予熱器)を示す一部切欠の斜視図である。
【図6】給水予熱器の変形例を示す要部の横断平面図である。
【図7】従来ボイラを示す横断平面図である。
【符号の説明】
1 …第1ボイラ(多管式貫流ボイラ)、12 …第2ボイラ(多管式貫流ボイラ)、3,13…燃焼室、3a,13a…燃焼ガス出口、4,14…燃焼ガス通路、5,15…第1加熱管群、5a,15a,15´a…第1加熱管、6,16…第2加熱管群、6a,16a…第2加熱管、7,17…上部ヘッダ、8,18…下部ヘッダ、9,19…給水予熱器、9a,9b,19a,19b…中空壁構造体、9c,19c…接触伝熱面(対流伝熱面)、9d,19d…屈曲板、9e,19e…屈曲部、19f…仕切壁、19g…ボイラ通過口、G…燃焼ガス、W…ボイラ水(缶水)。

Claims (5)

  1. 燃焼室と、燃焼室にその周壁に形成された燃焼ガス出口を介して連通する燃焼ガス通路と、燃焼室の周壁を構成する第1加熱管群と、各第2加熱管の全面に燃焼ガスが接触する状態で燃焼ガス通路に配置された第2加熱管群と、第1及び第2加熱管群の上下端部を連通接続する共通の上部ヘッダ及び下部ヘッダと、前記燃焼ガス通路の周壁を形成する中空構造体から成り、燃焼ガス通路を流動する燃焼ガスとの熱交換により中空構造体内を流通して下部ヘッダへ流入するボイラ水を予熱する給水予熱器とを具備する多管式貫流ボイラにおいて、前記給水予熱器を形成する中空構造体内にボイラ水の流動方向に所定間隔を隔てて並列する複数の仕切壁を設け、隣接する仕切壁に上下に齟齬するボイラ水通過口を形成すると共に、仕切壁の側端部を燃焼ガスとの接触伝熱面から燃焼ガス通路側へ突出させた構成としたことを特徴とする多管式貫流ボイラ。
  2. 燃焼室が横断面円形をなすものであり、燃焼ガス通路が燃焼室を囲繞する環状空間であり、燃焼ガス通路の内側壁が燃焼室の周壁たる第1加熱管群で構成されており、燃焼ガス通路の外側壁が給水予熱器に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載する多管式貫流ボイラ。
  3. 燃焼室と燃焼ガス通路とが、夫々横断面方形をなして縦列しており、燃焼ガス通路の両側壁が給水予熱器に構成されていることを特徴とする、請求項1に記載する多管式貫流ボイラ。
  4. 給水予熱器の内部をボイラ水が燃焼ガス通路における燃焼ガス流動方向と同一方向又は逆方向に流動する構成とした請求項1、請求項2又は請求項3に記載の多管式貫流ボイラ。
  5. 中空壁構造体の上端部が、これと第1及び第2加熱管との上下方向における熱収縮差を吸収すべく変形しうる屈曲板を介して、上部ヘッダに取り付けられている請求項1、請求項2又は請求項3に記載の多管式貫流ボイラ。
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