JP3804664B2 - 微細木繊維入り樹脂成形品及び微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法 - Google Patents

微細木繊維入り樹脂成形品及び微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、微細木繊維入り樹脂成形品及び微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法に関するものである。
従来から木質系の廃材を微破砕した木粉(微細木繊維)と樹脂とからなる微細木繊維入り樹脂組成物により建築材を製造することで木質系の廃材のリサイクルを行うことが行われている。
例えば、木粉(微細木繊維)と樹脂とからなる微細木繊維入り樹脂組成物として従来から特許文献1が知られている。
微細木繊維と樹脂とからなる微細木繊維入り樹脂組成物は従来スーパミキサと称される混練機により混練することにより得ていたが、従来の混練機においては微細木繊維の量を多くした高充填の混練が困難であり、樹脂組成物中における微細木繊維の配合割合は50重量%以下であった。このため、上記従来の微細木繊維入り樹脂組成物を押出成形機により押出し成形するに当たり、上記のように微細木繊維の配合割合が少なくて低充填であるため、成形時における保形性が悪く、このため押出成形機に特殊金型を取付け、特殊金型部分で高圧縮化してゆっくりした速度で冷却サイジングし、特殊金型から押出した後、引き取り機により引き取るようにしている。
上記従来例においては、高充填の微細木繊維の混練が困難で、特殊金型が必要であり、しかも、特殊金型内での材料圧縮による寸法変化量が大きく、また、この特殊金型は金型の後半部が冷却部となっており、この方式では冷却に時間がかかるため成形スピードが著しく遅いという問題がある。さらに、上記のように押出し成形時の成形速度が遅いため、微細木繊維の配向度が小さくて、寸法安定性、曲げ強度を向上できないという問題があり、また、微細木繊維の配合割合が50重量%以下の低充填であるため、木質感が得難く、例えば天然の通常使用する木材に比べて釘打ち性能が悪く、また、釘打ちした場合の釘の保持力が弱いという問題がある。また、微細木繊維が低充填であるため、必然的に樹脂量が多くなり、コストが高くなるという問題がある。また、上記のようにして得られた微細木繊維入り樹脂成形品は、微細木繊維の配合割合が50重量%以下の低充填であり、しかも、特殊金型部分で高圧縮されて木繊維部分が圧縮されることにより、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が4〜7%程度であり、寸法安定性が悪いという問題がある。更に、特殊金型部分で高圧縮されて木繊維部分が圧縮されるので比重が高くなる。
また、他の従来例としては上記と同じスーパミキサと称される混練機により混練して得た微細木繊維入り樹脂組物をコニカル2軸押出機に供給して押出し成形することで微細木繊維入り樹脂成形品を製造するものが知られている。
このものはスーパミキサと称される混練機で混練した微細木繊維の配合割合が80〜85重量%の微細木繊維入り樹脂組成物を高い背圧により押出すもので、微細木繊維の配合割合を80〜85重量%の高充填とした場合に混練機で十分な混練ができないが、これをコニカル2軸押出機により高い背圧をかけて押出し成形することで混練を促進し、高充填であるため吐出後の成形物の保形性が良く、冷却サイジングや引取り機を必要としない利点がある。そして、このようにして得られた微細木繊維入り樹脂成形品は微細木繊維が高充填であるため、より天然の木に近い木質感が得られるが、以下に述べるような問題がある。
すなわち、この従来例にあっては、コニカル2軸押出機自体が高価であり、また、コニカル2軸押出機は脱気がし難く、更に、高充填の微細木繊維入り樹脂組成物を高背圧により押出すので、微細木繊維が高圧縮化し、特に、吸湿時の寸法変化量が大きくなるという問題がある。しかも、高充填の微細木繊維入り樹脂組成物を高背圧により押出成形するので、微細木繊維が高圧縮化し、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が4〜7%程度であり、微細木繊維の配合割合が80重量%の場合で比重が1.22程度と高比重となり、釘打ち時に欠けや割れが発生するという問題がある。更に、この従来例にあっては、高充填の微細木繊維入り樹脂組成物を高背圧により押出成形するので、配向度が小さくて、寸法安定性、曲げ強度を向上できないという問題がある。
また、通常、成形直後の成形物は絶乾状態であり、気乾状態まで調湿せずに製品として出荷した場合、建材として施工されると、施工後に吸湿による建材の伸びが起こり、突き上げ等の不都合が発生する。このため、上記の問題を防ぐため通常、絶乾状態の成形物を高温多湿条件下で「養生」を行って気乾状態まで調湿するようになっている。ところが、上記従来例のように高比重の成形物では絶乾状態から気乾状態まで調湿されるのに長い時間を必要とする。このように従来例にあっては、調湿性能が低くて養生期間が長くなるため、生産性が悪く、養生費や保管費などが高くなるという問題がある。
特開2000−44809号公報
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、釘の保持力があり、また、釘打ち時の割れ、欠けがなく、寸法安定性に優れ且つ曲げ強度が高く、調湿性能が高い微細木繊維入り樹脂成形品及び微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するために本発明に係る微細木繊維入り樹脂成形品は、微細木繊維と樹脂との混合物を混練成形した微細木繊維入り樹脂成形品であって、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10〜25%で、且つ、微細木繊維の配合割合が60〜80重量%で、且つ、微細木繊維が1000μmの金網目開きを通過すると共に60μmの目開きに残る範囲に分布するものであり、微細木繊維が配向していることを特徴とするものである。
このように、微細木繊維の配合割合が60〜80重量%であるためより天然の木に近い木質感が得られ、釘打ち性能や釘の保持力を天然の木に近づけることができ、また、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10〜25%であるため、釘打ち時の割れや欠けがなく、また、微細木繊維の配合割合が60〜80重量%で且つ微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10〜25%で且つ微細木繊維が配向しているので、寸法変化量が小さく、十分な曲げ強度が得られるものである。
また、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が20〜25%であることが好ましい。
微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が20〜25%であると、「調湿」性能が高くなり、成形直後の絶乾状態から気乾状態に調湿するための養生時間が短時間でよく、生産性が向上し、養生設備や保管費用などのコストダウンが図れるものである。また、「調湿建材」としての使用が可能となる。
ここで、上記の空隙は主として微細木材繊維周辺に存在するものである。
また、本発明の微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法は、上記の微細木繊維入り樹脂成形品を製造するに当たって、1000μmの金網目開きを通過すると共に60μmの目開きに残る範囲に分布する微細木繊維と樹脂とを微細木繊維が60〜80重量%となるような割合で脱気機能付きパラレル2軸混練機に投入して脱気機能付きのパラレル2軸混練機により混練して成形材料を得て、この成形材料を押出成形機により押し出すと共に引き取り機により引き取ることを特徴とするものである。
このような方法を採用することで、微細木繊維と樹脂とを微細木繊維が60〜80重量%となるような割合で脱気機能付きパラレル2軸混練機に投入して脱気機能付きのパラレル2軸混練機により混練して成形材料を得るので、微細木繊維の配合割合が60〜80重量%の高充填で十分な混練ができ、この微細木繊維を高充填して十分に混練された成形材料を押出成形機により押し出すと共に引き取り機により引き取るので、高圧縮することなく高速で成形が可能となり、微細木繊維の配向度を向上でき、また、高圧縮することなく高速で成形が可能であるため微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率を10〜25%にでき、この結果、釘打ち時の欠けや割れがなく、しかも、寸法変化量が小さく、十分な曲げ強度が得られる微細木繊維入り樹脂成形品を成形できるものであり、また、押出成形機として材料に高圧をかける特別なものが必要でなくて汎用機が使用でき、また、上記のように高速で成形できるので、生産性が向上するものである。
本発明は、上記のように、天然の木に近い木質感が得られ、釘打ち性能や釘の保持力を天然の木に近づけることができ、また、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10〜25%であるため、釘打ち時の割れや欠けがなく、また、微細木繊維の配合割合が60〜80重量%で且つ微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10〜25%で且つ微細木繊維が配向しているので、寸法変化量が小さく、十分な曲げ強度が得られるものである。
本発明の微細木繊維入り樹脂成形品は、微細木繊維と樹脂との混合物を混練成形した微細木繊維入り樹脂成形品である。本発明においては、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10〜25%で且つ微細木繊維の配合割合量が60〜80重量%であり、微細木繊維が高配向となっている。微細木繊維は1000μmの金網目開きを通過し、60μmの目開きに残る範囲に分布するものが使用される。
本発明においては、微細木繊維入り樹脂成形品中における微細木繊維の配合割合を60〜80重量%の高充填としたことで、従来の配合割合が50重量%以下の低充填のものに比べてより木に近い釘打ち性能のものにでき、釘打ちした場合における釘の保持力を向上させることができる。
ここで言う空隙とは主として微細木繊維近傍にあるものを指し、成形材料を押出成形機により押出した時、引取り機により引き取る時、樹脂と微細木繊維の流れ速度に差が生じるため、微細木繊維の周辺に空隙が生じるものであり、発砲した樹脂のそれとは異なるものである。また、微細木繊維中にも材料の特性上、空隙が存在する。そして、本発明においては、これらの微細木繊維近傍にある空隙(さらにこれに加えて微細木繊維中に存在する空隙)が微細木繊維入り樹脂成形品全体に占める割合いを空隙率と定義するもので、微細木繊維が入っていない樹脂成形品における空隙率は0%である。そして、本発明においては微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率を10〜25%、より好ましくは空隙率を20〜25%とする。微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率を10〜25%、より好ましくは空隙率を20〜25%とするのは以下の理由による。
すなわち、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10%未満であると、比重が大きく、釘打ち時の割れ、欠けが発生し、寸法変化量が大きいという問題があり、また、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が25%を越えると比重が小さすぎて、十分な曲げ強度が得られないという問題がある。このため、本発明においては微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率を10〜25%としている。また、本発明のように、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率を10〜25%とすると、従来のように空隙率が4〜7%のもののように高圧縮化されていないため、押出成形により成形したものは配向度が大きく低比重のものとなる。
ここで、空隙率が高くなると下記の表1に示すように「調湿」性能が高くなり、特に、空隙率を20〜25%とすると成形直後の絶乾状態の成形物を養生する養生期間を半日〜1日と短くできるので、生産性を高めることができてより好ましいものである。
下記の表1は、微細木繊維の配合割合(充填率)が70重量%の場合におけるサンプル1(比重1.02、空隙率25%)、サンプル2(比重1.11、空隙率14%)、サンプル3(比重1.13、空隙率12%)、サンプル4(比重1.16、空隙率9%)、60重量%の場合におけるサンプル5(比重1.03、空隙率20%)、サンプル6(比重1.09、空隙率12%)、サンプル7(比重1.12、空隙率8%)の調湿に必要な日数を測定して評価した結果を示すものである。調湿し易さの評価は、「40℃90%RH環境下での養生に必要な日数」及び「気乾飽和状態に達するのに必要な日数」による比較を行った。(尚、気乾飽和状態の目安となる吸湿率を3〜4%とした)
上記各サンプルはいずれも、樹脂としてPPとPEの共重合体としてMFR(メルトフローレート)10程度の市販の「プロックタイプPP」を使用し、微細木繊維としては廃材である「合板とMDFの切削粉」で、1000μmの金網目開きを通過し、60μmの目開きに残る範囲に分布するものを使用し、微細木繊維70重量%、樹脂30重量%の配合割合、又は微細木繊維60重量%、樹脂40重量%の配合割合とし、これを混練したコンパウンドをペレット化して微細木繊維入り樹脂の成形材料を得て、このペレット化した成形材料を単軸の押出成形機により巾55mm、高さ15mm、基材厚3mmの中空で内部に内リブのある形状のものを成形して得たものである。
Figure 0003804664
上記の表1から明らかなように、空隙率が高い程「40℃90%RH環境下での養生に必要な日数」及び「気乾飽和状態に達するのに必要な日数」がいずれも短いことが判る。
また、上記表1から、同じ空隙率では微細木繊維の配合割合が高い程調湿に要する時間が短くなる傾向が見られる。これは例えば、表1において微細木質繊維の配合割合が60重量%以上の範囲において空隙率が12%以上ならば「40℃90%RH環境下での養生に必要な日数」が3日以内であって良好な調湿性能が得られていることを示しており、また、空隙率が20%以上ならば「40℃90%RH環境下での養生に必要な日数」が半日以内できわめて良好な調湿性能が得られていることを示している。特に、微細木繊維の配合割合が60重量%以上で空隙率が20〜25%のものでは「40℃90%RH環境下での養生に必要な日数」が半日以内と大幅に短縮でき、このように調湿に要する時間(養生期間)を大幅に短縮できるので、生産性を高めることができ、また、養生コスト、保管コストを低減できることが判る。
また、微細木繊維の配合割合が60〜80重量%で空隙率が20〜25%の微細木繊維入り樹脂成形品は上記のように調湿性能が高い(例えば図3に示すように合板に匹敵する調湿性能を有している)ので、これを建築材として用いることで、湿気を吸放湿する調湿建材として使用することができる。図3は湿度環境変化(気乾)に伴う含水率変化を示すグラフであり、線イは2類合板の含水率変化を示し、線ロは微細木質繊維の配合割合が70重量%で空隙率25%の微細木繊維入り樹脂成形品の含水率変化を示し、線ハは微細木質繊維の配合割合が70重量%で空隙率14%の微細木繊維入り樹脂成形品の含水率変化を示している。
尚、本発明の微細木繊維入り樹脂成形品には微細木繊維の他に調湿材を混入していっそう吸放湿性が向上していっそう調湿効果を効率的に発揮させることが可能となるものである。
次に、本発明の微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法につき説明する。
すなわち、上記のような空隙率が10〜25%で且つ微細木繊維の配合割合が60〜80重量%であり、微細木繊維が高配向となっている微細木繊維入り樹脂成形品は以下のようにして製造することができる。
まず、微細木繊維と樹脂を微細木繊維が60〜80重量%となるような割合で脱気機能付きパラレル2軸混練機に投入して脱気機能付きパラレル2軸混練機により混練して微細木繊維入り樹脂の成形材料を得る。ここで、微細木繊維としては木材廃材(例えば合板とMDFの廃材)の切削粉を用いることができ、この場合、微細木繊維が1000μmの金網目開きを通過し、60μmの目開きに残る範囲に分布するものを使用する。また、樹脂としてはPPとPEの共重合体(PPとPEのランダム共重合体が好ましい)を用いる。また、微細木繊維と樹脂に加えて必要に応じて相溶化剤などの添加物を混入してもよい。
脱気機能付きパラレル2軸混練機は、スーパミキサと称される混練機や、コニカル2軸押出機に比べて混練性が高く、スクリュー形状のバリエーションが豊富で、混練状態への対応が高く、微細木繊維入り樹脂の混練が効果的に行えるものであり、また、脱気機能付きパラレル2軸混練機には真空脱気や自然脱気等の脱気機能が備えたもので、脱気機能付きパラレル2軸混練機で混練して成形材料としてのコンパウンドを得たり、あるいはコンパウンドから成形材料としてのペレットを得たりする際、微細木繊維の分解が始まる200℃近辺まで温度を上昇させることによりワックスなどの余分なガス成分の脱気が可能となり(木質廃材を粉砕して微細木繊維を得た場合、木質廃材にワックスが含まれていると微細木繊維にもワックスが含まれることになる)、後の押出成形時にガスによる膨れ等の問題が生じない成形材料を得ることができるものである。
上記のように脱気機能付きパラレル2軸混練機により微細木繊維の配合割合が60〜80重量%で良好に混練された成形材料を得て、この成形材料を、汎用の単軸又は2軸の押出成形機を使用し、冷却サイジングを行ない、引取り機を使用する押出成形方式により目的とする微細木繊維入り樹脂成形品を成形するものである。
このように、本発明においては、脱気機能付きパラレル2軸混練機で微細木繊維と樹脂とを混練して成形材料を得るので、微細木繊維の配合が60〜80重量%であっても良好に混練できると共にワックスなどのガス成分を脱気したコンパウンド(ペレット)である成形材料を得ることができ、このため、汎用の押出成形機を使用し、冷却サイジングを行ない、引取り機を使用する押出成形方式で微細木繊維が高充填(60〜80重量%)となった微細木繊維入り樹脂成形品を成形できるものである。この場合、押出成形に使用する成形材料が、脱気機能付きパラレル2軸混練機により高充填の微細木繊維を樹脂と十分に混練してあるので、押出成形の際に従来のように成形材料を高圧縮化する必要がなく、また、微細木繊維が高充填であるため吐出後の保形性を確保できて高速で押出して引取り機で適度なテンションを与えて引き取るという上記の押出成形方式が採用でき、これにより微細木繊維の配向度をきわめて高くすることができるものである。
ここで、本方式によれば、微細木繊維が80重量%を越える成形材料は溶融張力が低くなりすぎて引取り機により引き取るに当たって切れて引き取れなくなるという問題がある。一方、微細木繊維が60重量%未満であると、保形性が悪く、冷却サイジング距離が長くなり、成形速度を落とす必要が出てくるので生産性が悪く、また、微細木繊維の配向度が小さくなり、更に、微細木繊維の充填量が少ないため樹脂量が多くなってコストが上がると共に木質感が得がたくなるという問題がある。このため、本発明においては、微細木繊維の配合割合を60〜80重量%とすることで、溶融状態での引っ張りが可能で、保形性が高く冷却サイジングの距離が短くてすみ、成形速度を速くでき、微細木繊維の配向度をきわめて高くすることができるようになる。
図1は微細木繊維充填率とせん断応力の降伏点との関係を示すグラフであり、保形性の代用特性としての「降伏応力」の変移状態を示すもので、60〜80重量%の充填率とすると保形性が良いことが判る。
なお、本発明において、溶融張力を改善する添加剤を加えて微調整することにより、より成形性を高めることが可能となる。
ところで、微細木繊維入り樹脂成形品における微細木繊維の配向性の測定は「マイクロ波透過状態の角度依存性により配向を測定する方法(以後マイクロ波法)」を適用した。この方法は、従来紙繊維の配向性を測定する方法として知られているが、微細木繊維入り樹脂の成形材料にも適用が可能である。
すなわち、マイクロ波法は、マイクロ波透過強度の角度依存性から配向パターンが得られ、その長軸/短軸の比をもって配向度が計算される。これはMOR値(Microwave Orientasion Ratio)と呼ばれ、これを厚み補正した計算値がMORC値と呼ばれ、このMORC値を配向度とする。そして、上記した本発明の製造方法によれば微細木繊維の配向度(MORC値)が2以上の高配向度の微細木繊維入り樹脂成形品が得られ、このように微細木繊維の配向度がきわめて高くなることで、寸法安定性、曲げ強度が向上するものである。
以下、実施例を説明する。
(実施例1)
樹脂としてPPとPEの共重合体としてMFR(メルトフローレート)40程度の市販の「ランダムタイプPP」を使用し、微細木繊維としては廃材である「合板とMDFの切削粉」で、1000μmの金網目開きを通過し、60μmの目開きに残る範囲に分布するものを使用した。ここで、微細木繊維60重量%、樹脂40重量%の配合割合とした。これらを脱気機能付きパレレル2軸混練機により混練したコンパウンドをペレット化して微細木繊維入り樹脂の成形材料を得た。
このペレット化した成形材料を単軸の押出成形機により巾55mm、高さ15mm、基材厚3mmの中空で内部に内リブのある形状のものを1m/分の成形速度で成形した。
(実施例2)
単軸の押出成形機による押出し成形速度が0.5m/分である以外は実施例1と同様の方法で微細木繊維入り樹脂成形品を成形した。
(比較例1)
樹脂としてPPとPEの共重合体としてMFR(メルトフローレート)40程度の市販の「ランダムタイプPP」を使用し、微細木繊維としては廃材である「合板とMDFの切削粉」で、1000μmの金網目開きを通過し、60μmの目開きに残る範囲に分布するものを使用した。ここで、微細木繊維60重量%、樹脂40重量%の配合割合とした。これらをコニカル2軸押出機に供給して巾55mm、高さ15mm、基材厚3mmの中空で内部に内リブのある形状の微細木繊維入り樹脂成形品を成形した。
(比較例2)
樹脂としてPPとPEの共重合体としてMFR(メルトフローレート)40程度の市販の「ランダムタイプPP」を使用し、微細木繊維としては♯100以下のベイツガの微細木繊維を使用した。ここで、微細木繊維60重量%、樹脂40重量%の配合割合とした。これらをコニカル2軸押出機に供給して巾55mm、高さ15mm、基材厚3mmの中空で内部に内リブのある形状の微細木繊維入り樹脂成形品を成形した。
上記のようにして得た実施例1、実施例2、比較例1、比較例2の各微細木繊維入り樹脂成形品の各物性(微細木繊維の配向性、寸法安定性、強度)を測定した結果を下記の表2に示す。
Figure 0003804664
上記表2から明らかなように、実施例1、実施例2のものは比較例1、比較例2に比べて配向性が高く、寸法安定性に優れ、曲げ強度も優れていることが判る。
次に、上記表2に示す寸法安定性能を長尺サイズ(ここでは2m)に当てはめた結果を図2に示す。ここで、温度環境変化を夏場の40℃から冬場の5℃の差(Δ35℃)とし、湿度環境変化を絶乾状態から40℃、90%の恒量状態までとした。
微細木繊維入り樹脂成形品は建築用の建材や家具等の材料として使用できるが、建築用の建材や家具の材料として使用するには(特に、建築用の内装部材として使用するには)寸法変化を抑える必要があり、この寸法変化量の目標目安としては合板程度が望ましいものである。しかして、図2から明らかなように、微細木繊維の配向度(MORC値)が2以上の高配向度である実施例1、実施例2のものは寸法変化が合板以下となり、今まで難しいとされていた内装部材としての使用が可能となるものである。
微細木繊維充填率とせん断応力の降伏点との関係を示すグラフである。 MORC値と寸法変化量との関係を示すグラフである。 湿度環境変化(気乾)に伴う含水率変化を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 微細木繊維と樹脂との混合物を混練成形した微細木繊維入り樹脂成形品であって、微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が10〜25%で、且つ、微細木繊維の配合割合が60〜80重量%で、且つ、微細木繊維が1000μmの金網目開きを通過すると共に60μmの目開きに残る範囲に分布するものであり、微細木繊維が配向していることを特徴とする微細木繊維入り樹脂成形品。
  2. 微細木繊維入り樹脂成形品の空隙率が20〜25%であることを特徴とする請求項1記載の微細木繊維入り樹脂成形品。
  3. 空隙が主として微細木材繊維周辺に存在することを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の微細木繊維入り樹脂成形品。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれかの項に記載の微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法であって、1000μmの金網目開きを通過すると共に60μmの目開きに残る範囲に分布する微細木繊維と樹脂とを微細木繊維が60〜80重量%となるような割合で脱気機能付きパラレル2軸混練機に投入して脱気機能付きのパラレル2軸混練機により混練して成形材料を得て、この成形材料を押出成形機により押し出すと共に引き取り機により引き取ることを特徴とする微細木繊維入り樹脂成形品の製造方法。
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