JP3799965B2 - 電極反応状態評価用セル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応状態評価用セル、特に、電極反応状態評価用セルに関する。
【0002】
【従来の技術】
電池、メッキあるいは電解などの電気化学反応を利用した技術分野において、電極の反応状態の研究・解析を実施するための方法として、サイクリックボルタモメトリー法や回転リングディスク電極法等の電気化学的手法が開発されている。ところが、この種の電気化学的手法は、電極の反応に付随して発生する電位(電圧)と電流との2次的なデータを利用して電極の反応状態を解析するものであるため、解析作業に高度の専門知識が要求されるものの、電極の表面において実際に進行している電気化学反応現象を視覚的に捉えることができない欠点がある。
【0003】
このため、最近では、電気化学反応が進行中の電極の表面状態をリアルタイムで視覚的に評価するための装置、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)や走査型トンネル顕微鏡(STM)などの走査型プローブ顕微鏡(SPM)類を応用した電気化学SPM装置および走査型電気化学顕微鏡、並びに上記表面状態をグラフ形態で評価するためのその場X線回折装置等の各種装置が提案されている(例えば、特開平2−284015号公報、特開平5−232081号公報参照)。これらの装置を用いて電気化学反応中の電極の表面状態を観察する場合は、電解液中に評価対象であるサンプル電極(試験電極)と、その対極となる対向電極とを配置し、両電極の間に通電して電気化学反応を進行させる。そして、その状態において、試験電極の表面で探針、X線またはレーザー等の物理変化情報検出手段を走査させ、当該物理変化情報検出手段が電気化学反応により試験電極の表面状態が変化するに従って受ける物理的情報(例えばトンネル電流)を検出して画像処理し、電気化学反応中の試験電極における表面状態を視覚的に表現している。
【0004】
ところで、上述のような観察時において、試験電極の電気化学反応は、試験電極をセルに装着して実施している。ここで用いられるセルは、通常、試験電極を配置するための配置部位を有しかつ電解液を貯留するための開放型の貯留室を備えたセル本体と、当該セル本体に配置された、電解液中において試験電極に対して電気化学反応を進行させるための対向電極とを主に備えている。このようなセルを用いて目的の電気化学反応を進行させる場合は、先ず、セル本体の配置部位に試験電極を配置し、その状態で貯留室内に電解液を注入する。そして、この状態で試験電極と対向電極との間に通電し、電気化学反応を進行させる。
【発明が解決しようとする課題】
上述のようなセルにおいて、電気化学反応が進行した場合、試験電極の表面には、電気化学反応の結果生じた気泡が付着する場合がある。特に、試験電極に対して比較的大きな電流を流した場合、試験電極の表面にはこのような気泡が付着し易い。この場合、物理変化情報検出手段として、試験電極表面を走査しながらトンネル電流や原子間力等の物理変化を検知可能な探針を用いると、当該探針の作動が気泡の影響を受け、試験電極表面における物理変化を正確に捉えることができず、電気化学反応中の試験電極の表面状態を観察するのが実質的に不可能になる。また、物理変化検出手段として、X線やレーザー光を活用したものを用いる場合、試験電極に付着した気泡により測定精度が低下する可能性がある。特に、試験電極に付着している気泡は、球面形状をしているため、そこに入射したX線やレーザー光を反射したり散乱したりし、測定誤差の原因となる。
【0005】
本発明の目的は、電気化学反応中等の試験電極表面に付着した気泡を除去することができる、電解液を貯留するための開放型の貯留室を備えた電極反応状態評価用セルを実現することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電極反応状態評価用セルは、電解液中において電気化学反応中の試験電極の状態を物理変化情報検出手段を用いて評価するために、試験電極に対して電解液中で電気化学反応を進行させるためのものであり、試験電極を配置するための配置部位を有しかつ電解液を貯留可能な開放型の貯留室、および貯留室に向けて形成されかつ電解液を出し入れするための液路を備えたセル本体と、セル本体に配置されかつ電解液中において試験電極に対して電気化学反応を進行させるための対向電極とを備えている。ここで、液路は、配置部位において電解液が流動するよう貯留室に対して電解液を出し入れ可能に設定されている。
【0007】
このような電極反応状態評価用セルにおいて、セル本体の液路は、例えば、配置部位と平行に電解液が流動するよう電解液を出し入れ可能に設定されている。または、当該液路は、例えば、配置部位に向けて電解液が流動するよう電解液を出し入れ可能に設定されている。または、当該液路は、例えば、貯留室内において、電解液が渦流を形成しながら流動するよう電解液を出し入れ可能に設定されている。
【0008】
本発明の他の見地に係る電極反応状態評価用セルは、同様に、電解液中において電気化学反応中の試験電極の状態を物理変化情報検出手段を用いて評価するために、試験電極に対して電解液中で電気化学反応を進行させるためのであり、試験電極により液密に封口可能な開口を有し、かつ当該開口が試験電極により封口された際に電解液を貯留するための開放型の貯留室を形成可能なセル本体と、セル本体に配置されかつ電解液中において試験電極に対して電気化学反応を進行させるための対向電極とを備えている。セル本体は、貯留室に向けて形成された、上記開口において電解液が流動し得るよう電解液を出し入れするための液路を有している。
【0009】
【作用】
本発明の電極反応状態評価用セルを用いて試験電極の電気化学反応中の状態を評価する場合は、セル本体の配置部位に試験電極を配置し、貯留室内に電解液を貯留する。この状態で試験電極と対向電極との間に電流を流すと、電解液中において試験電極と対向電極との間で電気化学反応が進行することになるが、この際、試験電極に電気化学反応による気泡が付着した場合は、貯留室に対して液路を通じて電解液を出し入れする。ここで出し入れされた電解液は、試験電極の配置部位において流動し、試験電極に付着した気泡を除去する。
【0010】
また、本発明の他の見地に係る電極反応状態評価用セルを用いて試験電極の電気化学反応中の状態を評価する場合は、セル本体の開口を試験電極により封口し、それにより形成される貯留室内に電解液を貯留する。この状態で試験電極と対向電極との間に電流を流すと、電解液中において試験電極と対向電極との間で電気化学反応が進行することになるが、この際、試験電極に電気化学反応等により生じた気泡が付着した場合は、貯留室に対して液路を通じて電解液を出し入れする。ここで出し入れされた電解液は、試験電極により封口された開口において流動し、試験電極に付着した気泡を除去する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1を参照して、本発明の電極反応状態評価用セルを用いた電気化学走査型原子間力顕微鏡装置(以下、“EC−AFM装置”と称す)の概略構成を説明する。図において、EC−AFM装置1は、当該EC−AFM装置1に対して着脱可能でありかつ試験電極2を装着可能な電極反応状態評価用セル3と、検出装置4(物理変化情報検出手段の一例)と、電気化学制御装置5とを主に備えている。
【0012】
図2および図3(図2のIII−III断面図)を参照して、電極反応状態評価用セル3を説明する。なお、各図は、板状の試験電極2を装着した状態の電極反応状態評価用セル3を示している。図において、電極反応状態評価用セル3は、検出装置4の後述する探針部20を内部に配置可能ないわゆる開放型セルであり、セル本体10、対向電極11および隔離膜12を備えている。
【0013】
セル本体10は、通常、導電性を示さずかつ後述する評価方法において用いる電解液と反応しない材料、例えばABS樹脂、PP樹脂またはガラス等の材料からなる直方体状の部材であり、上面および底面の中心部にそれぞれ開口13a,13bを有しかつ上下方向に貫通する円管状の貫通孔13を備えている。この貫通孔13は、セル本体10の底面側の開口13b(配置部位の一例)の周囲において、耐食性の弾性材料からなるOリング14を備えており、Oリング14に対して試験電極2を当接した場合、開口13bが液密に封口され、電解液を貯留するための貯留室15を形成し得る。
【0014】
また、セル本体10の1つの側面において、底面近傍には、貫通孔13内に向けて水平に形成された、後述する参照電極27(図1参照)を挿入するための電極挿入孔16が形成されている。また、セル本体10の他の側面において、底面近傍には、貫通孔13内に向けて水平に形成された、電解液を出し入れするための液路17が形成されている。
【0015】
対向電極11は、環状の帯状に形成されており、貫通孔13の内周面において、底面側の開口13bから一定の間隔dを維持しつつ、開口13bと平行に配置されている。なお、対向電極11の材質は、特に限定されるものではないが、通常、金属、金属酸化物および炭素のうちの1つ、特にこれらの多孔質体を用いて形成されているのが好ましい。
【0016】
隔離膜12は、イオン透過性を有する例えば不織布からなり、対向電極11の内周面上に、すなわち、貫通孔13により形成され得る貯留室15内に向けた対抗電極11の表面部分に配置されている。
【0017】
検出装置4は、探針部20、レーザーヘッド21、受光器22および制御装置23を主に備えている。探針部20は、電極反応状態評価用セル3の貫通孔13(すなわち、貯留室15)内に配置可能であり、カンチレバー24と、その先端において下方に向けて(すなわち、開口13bに向けて)装着されたプローブ25とを備えている。カンチレバー24は、バネ性を有する撓み性の部材であって移動装置26により支持されており、この移動装置26により、貫通孔13内を3次元方向に自由に微動し得るように設定されている。一方、プローブ25は、試験電極2の表面部分の原子間力を感知するためのセンサーであり、カンチレバー24により支持されつつ、移動装置26により、開口13bを封口している試験電極2の表面部分上を走査し得る。
【0018】
レーザーヘッド21は、探針部20のカンチレバー24に向けてレーザー光を照射するためのものであり、電極反応状態評価用セル3の上方に配置されている。また、受光器22は、カンチレバー24において反射するレーザーヘッド21からのレーザー光(反射レーザー光)を受光し、その際にカンチレバー24の撓み量に従って生じる反射レーザー光の位置ずれを検出するためのものであり、電極反応状態評価用セル3の上方に配置されている。
【0019】
制御装置23は、カンチレバー24の移動装置26、レーザーヘッド21および受光器22に接続されており、これらの動作を制御すると共に、受光器22により検出された反射レーザー光の位置ずれ情報を演算処理し、試験電極2の表面状態を画像で表示し得るように構成されている。
【0020】
電気化学制御装置5は、試験電極2、電極反応状態評価用セル3に配置された対向電極11および後述する参照電極27に対して接続可能に設定されており、参照電極27において測定される電位を基準として試験電極2および対向電極11の電位を制御すると共に、両電極2,11間に流れる電気化学電流を検出するためのものである。
【0021】
次に、上述のEC−AFM装置1による、試験電極2の電気化学反応状態評価方法を説明する。
先ず、EC−AFM装置1において、図1に示すように、電極反応状態評価用セル3を水平に配置し、そのセル本体10の底部に装着されたOリング14に対して板状の試験電極2を当接して開口13bを液密に封口する。この際、試験電極2は、図示しないクリップやボルト等を用いてセル本体10に固定するのが好ましい。また、セル本体10の電極挿入孔16から貫通孔13内に参照電極27を挿入し、当該電極挿入孔16を液密に封鎖する。なお、ここで用いられる参照電極は、電気化学分野で一般に用いられているものであり、特に限定されるものではないが、例えば、標準水素電極(RHE)、飽和カロメル電極(SCE)、水銀−塩化水銀電極および水銀−硫酸水銀電極などである。因みに、参照電極27は、セル本体10とは別に配置し、電極挿入孔16内に満たした電解液に対して接続(液絡)してもよい。
【0022】
このようにして試験電極2および参照電極27が装着された電極反応状態評価用セル3は、試験電極2、対向電極11および参照電極27のそれぞれが電気化学制御装置5に接続される。
【0023】
次に、開口13bを試験電極2で封口することにより形成される、セル本体10の貯留室15内に、開口13aから電解液を注入する。この際、電解液は、対向電極11の全体を浸漬できる程度に注入する。これにより、試験電極2と対向電極11とは、電解液中において通電可能に対向することになる。
【0024】
なお、検出装置4の探針部20は、電解液が注入された貯留室15内において、プローブ25が試験電極2の表面に接触しないよう近接して配置する。
【0025】
次に、電気化学制御装置5を作動させ、試験電極2と対向電極11との間に通電する。これにより、試験電極2において、開口13bを封口している部位(封口部位)では、電気化学反応が進行することになる。ここで、対向電極11は、開口13bから一定の間隔dを維持しながら環状に配置されており、その結果、試験電極2の封口部位の中心部から対向電極11の環状の各部までの距離が等しくなるため、試験電極2の封口部位内の各部の電位分布や電流分布が概ね均一になり得る。このため、この電極反応状態評価用セル3では、試験電極2の封口部位全体において、略均一に電気化学反応を促進させることができる。
【0026】
上述のような電気化学反応の進行中において検出装置4を作動させ、移動装置26によりカンチレバー24を微動させながらプローブ25を試験電極2の封口部位で走査すると、プローブ25は、電気化学反応により試験電極2の表面で生じている原子間力の変化に追従して微動し、カンチレバー24を撓ませる。このときの撓み量は、カンチレバー24により反射する、レーザーヘッド21からの反射レーザー光の位置ずれ情報として受光器22により検出される。制御装置23は、受光器22により検出された位置ずれ情報に基づいて所定の演算処理を実行し、試験電極2の表面で生じている電気化学反応状態をリアルタイムで画像として表示する。これにより、試験電極2の表面で生じている電気化学反応状態を観察、測定し、評価することができる。
【0027】
上述のような電極反応状態評価方法において、試験電極2における電気化学反応が進行すると、試験電極2の表面において、電気化学反応により生じたガスによる気泡が付着する場合がある。この場合は、マイクロシリンジや注射器などを用い、液路17から貯留室15内に電解液を注入したり、貯留室15から電解液の一部を吸引して取り出す。これにより、貯留室15内の電解液は、図3に矢印で示すように開口13bにおいて試験電極2と概ね並行に流動し、試験電極2の表面に付着した気泡を除去することができる。
【0028】
従って、試験電極2の表面を走査中の探針部20は、そのような気泡による影響を受けて誤動作するのが防止され、試験電極2の表面で進行中の電気化学反応により生じる物理変化情報(電極表面の形態変化情報、例えば原子間力の変化情報)を正確にかつ安定に検出してすることができる。
【0029】
なお、電気化学反応の進行に伴い、対向電極11においてガスが発生する場合もあるが、このガスは、対向電極11の表面に配置された隔離膜12により試験電極2方向への移動が阻止され得るので、試験電極2の表面に付着する可能性は小さい。
【0030】
[他の実施の形態]
(1)上述の実施の形態に係る電極反応状態評価用セル3において、液路17の形態は適宜変更されてもよい。例えば、図4(図3に相当する図:図3に相当する部位には同じ符号を付している)に示すように、液路17は、セル本体10の側面において、開口13bに向けて下方に傾斜して形成されていてもよい。この場合、液路17をから電解液を注入すると、電解液は、図4に矢印で示すように貯留室15内において液路17の傾斜方向の延長線上を流れ、開口13bにおいて試験電極2の表面に行き当たるように流動する。この結果、試験電極2の表面に付着した気泡は、そのような電解液の流れにより除去され得る。
【0031】
また、液路17は、図5および図6(それぞれ図2および図3に相当する図:各図において、図2および図3に相当する部位には同じ符号を付している)に示すように、セル本体10の底面近傍において、その側面から貫通孔13の接線方向に水平に形成されていてもよい。この場合、液路17を経由して電解液を出し入れすると、電解液は、貯留室15内において貫通孔13の内周面に沿って流れ、貯留室15内の開口13b付近において、図5に矢印で示すように試験電極2の表面で流動する渦流を形成し得る。この結果、試験電極2の表面に付着した気泡は、そのような電解液の流れにより除去され得る。
【0032】
なお、この場合の液路17は、貫通孔13の接線方向に水平に形成されていればよく、例えば図7(図5に相当する図:図5に相当する部位には同じ符号を付している)に示すように変形されていてもよい。
【0033】
(2)上述の実施の形態に係る電極反応状態評価用セル3では、対向電極11を貫通孔13の内周面に環状に配置したが、対向電極11は、セル本体10に対して他の状態で配置されていてもよい。例えば、図8および図9(図8のIX−IX断面図)に示すように(各図において、図2および図3に対応する部位には同じ符号を付している)、対向電極11を4つの三角柱状の対向電極片11a、11b、11c、11dにより構成し、これらの対向電極片11a、11b、11c、11dを、それぞれセル本体10の各隅角部において開口13b(配置部位)から均等な距離を隔てて配置すると共に相互に導電体18を用いて接続し、液路17をセル本体10の1つの隅角部から貫通孔13内に向けて水平に形成した場合も、本発明を同様に実施することができ、上述の実施の形態に係る電極反応状態評価用セル3の場合と同様の効果を達成することができる。この場合、隔離膜12は、図8および図9に示すように、各対向電極片11a、11b、11c、11dの表面に個別に配置するのが好ましい。
【0034】
(3)上述の各実施の形態に係る電極反応状態評価用セル3おいては、セル本体10の底面に開口13bを設け、当該開口13bを封口するように試験電極2を装着するようにしているが、図10(図3に相当する図:図3に相当する部位には同じ符号を付している)に示すように、セル本体10を貯留室15を有する有底の容器状に形成し、その底部に区画を設けて試験電極2を配置するための配置部位10aを形成してもよい。
【0035】
この場合、配置部位10aを形成する区画の形状は、特に限定されるものではないが、配置部位10aに配置された試験電極2の各部における電位分布や電流分布が均一になるよう設定するのが好ましい。より具体的には、例えば、対向電極11が上述のような環状の場合、配置部位10aはそれに対応した環状に形成するのが好ましい。なお、液路17は、図10に示す形態の他、上述の他の実施の形態の場合のような各種の形態に変更することができる。
【0036】
(4)上述の実施の形態において、液路17は、セル本体10の外側の開口部分と貯留室15側の開口部分とで口径が異なるように形成されていてもよく、この場合も同様の効果を達成することができる。
【0037】
(5)上述の各実施の形態では、セル本体10に1つの液路17を形成し、当該液路17を通じて電解液の一部を出し入れするように構成したが、セル本体10に液路17を2つ形成し、一方の液路17を電解液の注入用、他方の液路17を電解液の排出用として利用し、貯留室15内において常時電解液が流動するよう構成した場合も本発明を同様に実施することができる。
【0038】
(6)上述の実施の形態では、物理変化情報検出手段として、EC−AMF装置用の検出装置を用いた場合を例に説明したが、物理変化情報検出手段として、他の手段、例えば、走査型トンネンル顕微鏡用の検出装置、走査型電気化学顕微鏡用の検出装置、X線回折用の検出装置、レーザー光を用いた検出装置などを利用することもできる。
【0039】
【実施例】
上述の実施の形態に係る電極反応状態評価用セル3(図2および図3に示すもの)を上述の実施の形態で説明したEC−AMF装置1に適用し、また、参照電極27として水銀−硫酸水銀電極を用い、電解液中における試験電極2の電極反応状態を評価した。なお、試験電極2には平板状の金属鉛を使用した。また、電解液として濃度が15重量%の硫酸水溶液を用いた。
【0040】
ここでは、先ず、試験電極2に対し、参照電極27に対して−1,400mVの電位を30分間印加し、試験電極2の表面を還元処理した。なお、ここで印加した電位は、希硫酸電解液中において、金属鉛電極の表面から水素ガスが発生する電位であるため、還元処理後の試験電極2の表面には、水素ガスの気泡が大量に付着していた。したがって、そのままの状態では、EC−AMF装置1による電極反応状態の評価は不可能であった。
【0041】
これに対し、貯留室15内の電解液の一部を、マイクロシリンジを用いて液路17から抜き取り、続いてそのまま再度液路16から貯留室15内に注入すると、開口13b部分で試験電極2と並行に電解液が流動し、試験電極2の表面に付着した気泡が除去された。この結果、試験電極2の表面は、EC−AMF装置1による評価が可能な状態に設定された。
【0042】
上述のようにして気泡が除去された試験電極2と対向電極11との間に、参照電極27に対して−1,200mVから−800mVの範囲まで50mV/分の速度で電位を走査しながら通電し、その間に試験電極2の表面で生じる電気化学反応を調べた。この際、試験電極2は、電位が−940mV付近のときにおいて対向電極11との間で約10mAの電流が流れ、反応していることが確認されたが、その反応前(走査電位が−983mV〜−940mVの範囲)および反応後(走査電位が−940mV〜−897mVの範囲)の両方において、それぞれ図11および図12に示すように、試験電極2表面での反応状態を高精度で視覚的に観察(評価)することができた。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係る電極反応状態評価用セルは、セル本体が上述のような液路を有しているため、電気化学反応中の試験電極の表面に付着した気泡を除去することができ、各種の物理変化情報検出手段を用いて電気化学反応中の試験電極の状態を正確に評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る電極反応状態評価用セルが採用されたEC−AMF装置の概略構成図。
【図2】前記電極反応状態評価用セルの平面図。
【図3】図2のIII−III断面図。
【図4】他の実施の形態に係る電極反応状態評価用セルの図3に相当する図。
【図5】さらに他の実施の形態に係る電極反応状態評価用セルの平面図。
【図6】図5のVI−VI断面図。
【図7】さらに他の実施の形態に係る電極反応状態評価用セルの平面図。
【図8】さらに他の実施の形態に係る電極反応状態評価用セルの平面図。
【図9】図8のIX−IX断面図。
【図10】さらに他の実施の形態に係る電極反応状態評価用セルの図3に相当する図。
【図11】実施例で評価した試験電極の反応前の電気化学走査型原子間力顕微鏡画像。
【図12】実施例で評価した試験電極の反応後の電気化学走査型原子間力顕微鏡画像。
【符号の説明】
2 試験電極
3 電極反応状態評価用セル
4 検出装置
10 セル本体
10a 配置部位
11 対向電極
13b 開口
15 貯留室
17 液路
Claims (5)
- 電解液中において電気化学反応中の試験電極の状態を物理変化情報検出手段を用いて評価するために、前記試験電極に対して前記電解液中で前記電気化学反応を進行させるための電極反応状態評価用セルであって、
前記試験電極を配置するための配置部位を有しかつ前記電解液を貯留可能な開放型の貯留室と、前記貯留室に向けて形成された、前記電解液を出し入れするための液路とを備えたセル本体と、
前記セル本体に配置された、前記電解液中において前記試験電極に対して前記電気化学反応を進行させるための対向電極とを備え、
前記液路は、前記配置部位において前記電解液が流動するよう前記貯留室に対して前記電解液を出し入れ可能に設定されている、
電極反応状態評価用セル。 - 前記液路は、前記配置部位と平行に前記電解液が流動するよう前記電解液を出し入れ可能に設定されている、請求項1に記載の電極反応状態評価用セル。
- 前記液路は、前記配置部位に向けて前記電解液が流動するよう前記電解液を出し入れ可能に設定されている、請求項1に記載の電極反応状態評価用セル。
- 前記液路は、前記貯留室内において、前記電解液が渦流を形成しながら流動するよう前記電解液を出し入れ可能に設定されている、請求項1に記載の電極反応状態評価用セル。
- 電解液中において電気化学反応中の試験電極の状態を物理変化情報検出手段を用いて評価するために、前記試験電極に対して前記電解液中で前記電気化学反応を進行させるための電極反応状態評価用セルであって、
前記試験電極により液密に封口可能な開口を有し、かつ前記開口が前記試験電極により封口された際に前記電解液を貯留するための開放型の貯留室を形成可能なセル本体と、
前記セル本体に配置された、前記電解液中において前記試験電極に対して前記電気化学反応を進行させるための対向電極とを備え、
前記セル本体は、前記貯留室に向けて形成された、前記開口において前記電解液が流動し得るよう前記電解液を出し入れするための液路を有している、
電極反応状態評価用セル。
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