JP3799838B2 - 飛翔体警戒装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、航空機に搭載され、自機に向かって接近飛行する誘導飛翔体等の飛行物体の存在を検知し、自機に対する警報を出力する飛翔体警戒装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
まず、従来の飛翔体警戒装置について説明する。図6は従来の飛翔体警戒装置の一例を示す構成図である。図6において、1は紫外線センサ、2は紫外線光学系、3はショートパスフィルタ、4はイメージインテンシファイア、5は光電面、7はビデオアンプ、8は信号処理機、9は表示装置である。
【0003】
図6に示す従来の飛翔体警戒装置は上記のように構成され、以下のように動作する。本装置が搭載された航空機にむけて例えば地対空誘導飛翔体等の飛行物体が発射されると、この飛翔体に初期加速、または飛行中の推力、もしくはその両者を与える推進燃料の燃焼火炎から紫外線が放射される。この紫外線が前記紫外線センサ1に到達すると、紫外線は紫外線光学系2および光路中に設置されているショートパスフィルタ3によりイメージインテンシファイア4の光電面に集光、結像される。ショートパスフィルタ3は光学系に入射する紫外光の内、特定の波長帯域の光のみがイメージインテンシファイア4の光電面5に到達するよう不要な波長帯域の光を遮断する。光電面5に当たった光入力はいったん光電子に変換され、イメージインテンシファイア4により数万倍程度に増幅されてイメージインテンシファイア後端に設けられた蛍光面にあたり、再び光出力となって光像として出力される。イメージインテンシファイア4の出力光は2次元CCDに入力され、電気信号となって出力される。出力されたビデオ信号はビデオアンプ7により増幅され、信号処理機8に送られる。信号処理機8においてはCCD出力画像信号の中から、閾値を越えた探知信号候補を抽出し、例えば信号強度の時間変化など予め信号処理機内に備えられたデータを参照し、誘導飛翔体であるかどうかの判断を行う。また、目標の方向情報変化、信号強度、および自機の速度等等から、自機に接近している飛翔体であるかどうかを判定し、探知信号として、ミサイル脅威警報、脅威の方位情報、および地上から発射された誘導飛翔体の場合、自機高度から概算距離を算出し、ヘッドアップディスプレイ等の機体内の表示装置9に警報表示を出力する。紫外線センサでは、オゾン層により吸収され地上に太陽の放射光がほとんど到達しない、いわゆるソーラブラインドの波長帯域を検出のための波長帯域に選ぶことによって、ほとんど背景から放射される雑音光がなくなるため、誤警報率の低い検出を行うことができるという特徴がある。
【0004】
図7はこの従来装置の覆域の例を示す図である。紫外線センサ1を4個備え、各センサが90度の覆域を有し、全体で搭載母機の周囲360度に渡る覆域をカバーして接近する飛翔体の存在を検知する。図7において(a)は側面図、(b)は下面図である。同一の番号は同一部分を示す。10は紫外線センサ1、11は紫外線センサ2、12は紫外線センサ3、13は紫外線センサ4、14は紫外線センサ1の覆域、15は紫外線センサ2の覆域、16は紫外線センサ3の覆域、17は紫外線センサ4の覆域である。紫外線センサ1、紫外線センサ2、紫外線センサ3、紫外線センサ4はそれぞれ搭載母機に対して右側前方、右側後方、左側後方、左側前方のほぼ90度の範囲を覆域としている。図7(a)において横破線でハッチングした部分は紫外線センサ1の覆域を示している。
【0005】
図8は従来の飛翔体警戒装置の他の一例を示す構成図である。図において、7〜9は図6と同じ部分を示す。赤外線センサ18は、赤外窓19、視軸回転機構20、回転補正プリズム21、赤外線光学系22、赤外線検知器23、視軸指向ミラー24から成る。
【0006】
図8に示す従来の飛翔体警戒装置は上記のように構成され、以下のように動作する。すなわち、外部からの赤外線入射光は赤外窓19を透過し、視軸指向ミラー24に導かれ、赤外線光学系22を透過して赤外線検知器23上に集光、結像される。本装置においては視軸回転機構20が回転することにより本機構の回転部分に搭載されている赤外窓19と視軸指向ミラー24が指向すべき方向に向けられ、その方向の画像情報を赤外線検知器23上に得ることができる。この際、指向のための回転運動により、赤外線検知器23上に結像される像も回転するが、回転補正プリズム21によって赤外線検知器面上の像が回転しないよう回転方向に補正される。電気信号となって出力されたビデオ信号はビデオアンプ7により増幅され、信号処理機8に送られる。信号処理機8では上述の紫外線センサで行われるのと同様に次の処理を行う。出力信号の中から、閾値を越えた探知信号候補を抽出し、例えば信号強度の時間変化など予め信号処理機内に備えられたデータと参照し、誘導飛翔体であるかどうかの判断を行う。また、目標の方向情報変化、信号強度、および自機の速度等等から、自機に接近している飛翔体であるかどうかを判定し、探知信号として、ミサイル脅威警報、脅威の方位情報、および地上から発射された誘導飛翔体の場合、自機高度から概算距離を算出し、ヘッドアップディスプレイ等の機体内の表示装置9に警報表示を出力する。赤外線センサの場合は例えば比較的飛翔距離の長い空対空誘導飛翔体等の飛行物体が自機に対して発射された場合、これを検知する能力に優れるという特徴がある。
【0007】
図9はこの従来装置の覆域の例を示す図である。(a)は上面図、(b)は側面図である。赤外線センサを2個備え、各センサが180度の覆域を有し、全体で搭載母機の周囲360度に渡る覆域をカバーしている。図において、25は赤外線センサ1、26は赤外線センサ2、27は赤外線センサ1の覆域、28は赤外線センサ2の覆域である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の飛翔体誘導装置には以下のような問題がある。第1の問題点は、例えば地対空誘導飛翔体等の飛行物体が自機に対する脅威となるのは、当然、自機の飛行高度が誘導飛翔体の射程より低い場合であって、しかも、このような誘導飛翔体が自機に向けて発射される場合は、誘導飛翔体が発射されてから命中するまで、自機が誘導飛翔体の射程内に入っているとすれば、自機の飛行高度は誘導飛翔体の射程に比べて十分低い高度であると考えられる。したがって、紫外線センサを用いた飛翔体警戒装置では、このような地対空の誘導飛翔体は、紫外線センサの探知限界距離内で発射されることが多く、探知可能である場合が多い。しかし、例えば空対空誘導飛翔体のような飛行物体については紫外線センサの探知限界距離外から発射される場合が多く、しかも放射強度の著しい初期加速を与える推進燃料の燃焼火炎は発射後特定期間のみ放射されるため、十分遠方から発射された飛翔体は紫外線センサの探知限界距離内に接近した時に初期加速を与える推進燃料の燃焼火炎の放射がすでに完了し探知が難しくなるという問題がある。
【0009】
また、このような問題を回避するために赤外線センサを用いた場合は、空対空誘導飛翔体のような飛行物体に対しては、ある程度探知距離を長くすることができ、また、これらの飛翔体はほぼ水平方向より飛来するため、背景も空であり、地上背景に比べて一様でクラッタも少ないため、誤警報率を小さくすることもできる。しかし、この場合でも地対空誘導飛翔体のように地上から発射される飛翔体に対しては背景が地上の風景であるため、クラッタが多く、紫外線センサに比べると誤警報率も高いという問題があった。
【0010】
第2の問題点は、紫外線センサでカバーすべき覆域を1台のセンサでカバーする場合、その覆域が広くなるにしたがって、設計上、紫外線光学系の実現の難易度が高まり、例えば光学系の中に含まれるレンズ枚数が増加するため、そのことによる透過率の低下を招き、その結果、探知距離の低下等の弊害が生じた。また、光学系の画角が大きくなるほど、歪曲収差が大きくなるため、検知される目標方向にも大きな角度誤差が生ずるという問題があった。
【0011】
第3の問題点は、視軸回転機構を有する赤外線センサを1台設置し、自機の周囲全周をその覆域にしようとする場合、搭載する機体上の位置にかかわらず、覆域内の一部が機体の胴体、主翼、または尾翼等に遮られ、警戒できる領域がかなり限られるという問題があった。
【0012】
第4の問題点は、紫外線センサを自機の上方もしくは下方にその視野を設定して設置した場合、自機が単純な水平飛行を行っている時は、設置したセンサは常に上方もしくは下方をその覆域に納め目的とする警戒をすることができる。しかし、自機が旋回等の運動を行う場合には、機体の姿勢が変化し、予め設定したセンサの視野が、警戒の目的に必要な上方もしくは下方をその視野内に納められなくなってしまうという問題があった。この問題は特に戦闘機等のように運動能力の高い航空機で顕著であり、機体が上下いかなる方向を向く可能性もあるため、自機の周囲全方向を紫外線センサの覆域に納めなければならないという問題があった。元来このような問題を避け、機体の姿勢が変化しても所望の上方もしくは下方の決められた範囲を警戒するためには、センサ1台ごとの視野を広くしておく等の必要があるが、このことは決められた画素数で広い範囲を見ようとするために1画素に割り当てられる角度範囲が広くなり、その結果、センサとしての角度分解能を粗く設定しなければならない。角度分解能を粗くすることは、さらに、1画素よりも小さな目標を検知する場合、S/Nが低下する。すなわち、目標からの放射レベルがノイズレベルに比較して相対的に低くなり、このため、探知距離は短くなるという問題があった。
【0013】
この発明は係る課題を解決するためになされたものであり、遠方から飛来する空対空の飛翔体および地上から発射される地対空の飛翔体を正確に検知する飛翔体警戒装置を得ることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
第1の発明による飛翔体警戒装置は、航空機に搭載され、自機に接近し燃焼火炎を噴出する飛翔体の像を検出する光波センサと、前記光波センサの出力を受け取り、前記飛翔体の存在を検知し、自機に対する警戒信号を出力する信号処理機を有する飛翔体警戒装置において、前記光波センサとして前記飛翔体の像を検出する赤外線センサと前記飛翔体の燃焼火炎を検出する紫外線センサの両方を有し、絶対水平または自機に対して水平な方向を含む上方の領域を前記赤外線センサでの覆域とし、鉛直下方または自機に対する下方を中心とした円錐体形状の領域を前記紫外線センサの覆域とするものである。
【0015】
第2の発明による飛翔体警戒装置は、第1の発明において、前記紫外線センサとして、前記紫外線センサの覆域を網羅するように機体下方に少なくとも4つ以上配置された凝視型紫外線センサを有するものである。
【0016】
第3の発明による飛翔体警戒装置は、第1の発明において、前記赤外線センサとして、前記赤外線センサの覆域を網羅するように機体上方を少なくとも2つ以上配置され、視軸を可動させる走査型赤外線センサを有するものである。
【0017】
第4の発明による飛翔体警戒装置は、第1の発明において、前記赤外線センサとして、前記赤外線センサの覆域を網羅するように機体上方に少なくとも4つ以上配置された凝視型赤外線センサを有するものである。
【0018】
第5の発明による飛翔体警戒装置は、第1の発明において、直行する2軸の回りに自由に回転する視軸可動機構と、前記視軸可動機構の内部に搭載されたジャイロと、前記ジャイロの出力を用いて視軸を安定化させるための駆動信号を視軸可動機構に出力する信号処理機からなる視軸安定化装置を有し、前記視軸安定化装置の視軸可動機構の内部に前記紫外線センサを搭載したものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
以下、この発明に係る飛翔体警戒装置の実施の形態1を図1において説明する。実施の形態1においては紫外線センサ4個、赤外線センサ2個を備え、図において29は赤外線センサ覆域で、斜めの破線でハッチングした部分である。自機の上方45度、下方15度の全周の覆域を走査型赤外センサ1台でカバーしている。30は紫外線センサ覆域で、紫外線センサ4個で下方の150度コーンの覆域をカバーしている。150度という角度は主として地上から発射される誘導飛翔体等を警戒する上で十分な角度として設定されるべきものであって、実施の形態1においては1例として150度にしてあるが、この角度は対象とする誘導飛翔体の射程、飛行パターンおよび自機の飛行高度、飛行速度等を勘案して決定される。図において縦の破線でハッチングした部分30bは、この150度コーンのうち、右側前方のセンサがその四角い検知器の画面に映し込む領域を機体を中心とする球面上において示したものである。赤外線センサ覆域29と紫外線センサ覆域30は例えば紫外線センサの覆域を下方180度の領域に増やすことにより、オーバーラップさせることも可能である。また、逆に赤外線センサの覆域を例えば上方30度、下方30度の範囲としてもよい。このように赤外線センサ、紫外線センサの受け持つ覆域は、主に水平および上方を赤外線センサ、下方を紫外線センサとさえすれば、搭載する機体の種別や想定する脅威対象や飛翔体警戒装置のシステムコンセプトによりその境界の覆域を自由に設定することができる。
【0020】
また、この実施の形態の紫外線センサは、図6に示す従来の装置の例と同じ構成をもち、各構成品は同様の機能を有する。また、この実施の形態の赤外線センサは、図8に示す従来の装置の例と同じ構成をもち、各構成品は同様の機能を有する。
【0021】
また、この実施の形態の飛翔体警戒装置は上記のように構成され、以下のように動作する。すなわち、外部からの赤外線、または紫外線の放射は従来の装置と同様、ビデオ信号として信号処理機8に送られる。信号処理機8においては探知信号候補を抽出し、自機に接近している飛翔体であるかどうかを判定し、各種探知信号をヘッドアップディスプレイ等の機体内の表示装置9に警報表示を出力する。比較的飛翔距離の長い空対空誘導飛翔体等の飛行物体等が自機に対して発射され、自機上方および水平の赤外線センサの覆域から自機に接近する場合は、赤外線センサによってこれを検知し、自機に対する警戒信号を出力する。
【0022】
また、一方、地上より例えば地対空誘導飛翔体等の飛行物体が、自機に向かって発射された場合、紫外線センサが誘導飛翔体が噴射する推進燃料の燃焼火炎を検知することにより、自機に接近する飛翔体の存在を検知し、自機に対する警戒信号を出力する。
【0023】
実施の形態2.
図2はこの発明に係る飛翔体警戒装置の実施の形態2を示す図である。以下、この発明に係る飛翔体警戒装置の実施の形態2を図2において説明する。図2において6〜8、22、23は図8に付した同番号部分と同じ機能を有する部分である。凝視型赤外線センサ31は、赤外線光学系22、赤外線検知器23、バンドパスフィルタ32、ビデオアンプ7、信号処理機8、表示装置9から成る。
【0024】
また、この実施の形態の飛翔体警戒装置は上記のように構成され、以下のように動作する。すなわち、自機にむけて例えば空対空誘導飛翔体等の飛行物体が発射されると、初期加速、または飛行中の推力、もしくはその両者を与える推進燃料の燃焼火炎から放射される赤外線は赤外線光学系22および光路中に設置されているバンドパスフィルタ32により赤外線検知器23上に集光、結像される。バンドパスフィルタ32は赤外線光学系22に入射する赤外光の内、検知に必要な特定の帯域の光のみが赤外線検知器面上に到達するよう不要な帯域の光を遮断する。検知器面に当たって電気信号となって出力される。ビデオアンプ7により増幅され、信号処理機8に送られる。信号処理機8においては探知信号候補を抽出し、自機に接近している飛翔体であるかどうかを判定し、各種探知信号をヘッドアップディスプレイ等の機体内の表示装置9に警報表示を出力する。
【0025】
また、この実施の形態の飛翔体警戒装置の覆域は実施の形態1とほぼ同様である。図3はこの実施の形態の飛翔体警戒装置の覆域を示す図である。9、29、30は図1と同様の部分を示す。赤外線センサを4台具備し、各々のセンサは機軸方向から時計回りに右側45度前方、右側45度後方、左側45度後方、左側45度前方を中心とし、縦、横それぞれ約90度の画角の視野を有する。各センサは俯仰方向におよそ15度水平より上方を向いている。図においてハッチングを施した内部の部分29bは右側45度前方のセンサがその四角い検知器の画面に映し込む領域を機体を中心とする球面上において示したものである。1センサで水平方向を基準として上方および下方の特定の範囲の覆域をカバーしようとする場合には、例えば主翼や尾翼などが遮蔽となって視野が狭くなっていたが、この実施の形態の例のように凝視型赤外線センサを複数個設置するという考え方により、主翼や尾翼等に視野が遮られない位置を選んでそれぞれのセンサを設置することができる。赤外線センサは紫外線センサと同数設置して同じ旋回方向の上下に対応する視野を分担させることも可能である。
【0026】
実施の形態3.
図4はこの発明に係る飛翔体警戒装置の実施の形態3を示す図である。以下、この発明に係る飛翔体警戒装置の実施の形態3を図4において説明する。図4において1は図6に付した同番号部分と同じ機能を有する紫外線センサ、33は俯仰軸、34は旋回軸、35は視軸可動機構、36はジャイロ、37は制御系信号処理機、38はこれらのものをすべて内包する視軸安定化装置である。
【0027】
この実施の形態の飛翔体警戒装置は上記のように構成され、紫外線センサ1の動作は従来の技術と同様である。俯仰軸33と旋回軸34は互いに直行しており、視軸可動機構35はこれらの2軸の回りに自由に回転する。ジャイロ36は前記視軸可動機構35の内部に搭載されており、紫外線センサ1の慣性系に対する角度を検出し、その検出結果を制御系信号処理機37に出力する。制御系信号処理機37は前記ジャイロ36の出力を用いて角度誤差を計算し、その角度誤差信号を増幅し、前記視軸可動機構35の駆動信号を出力する。視軸安定化装置38はこれらの働きの結果、視軸の安定が図られ、機体が様々な角度で飛行運動をしても、一定の方向を見続ける。
【0028】
この実施の形態の飛翔体警戒装置の覆域は実施の形態1とほぼ同様である。図5はこの実施の形態の飛翔体警戒装置の搭載の例を示す図である。(a)は機体を斜め下方から見た図、(b)および(c)は機体を正面から見た図である。機体の4箇所に機体を基準として4つの方向に分けた領域を各視軸安定化装置に搭載された紫外線センサが受け持つ。図5(b)および図5(c)において紫外線センサの覆域を示している。(b)では機体は水平に飛行しており、紫外線センサは基準の位置を指向することによって機体の下方をカバーしている。機体が図5(c)に示すように飛行中傾いた姿勢になっても視軸安定化装置38の働きによって一定の方向を指向し続け、結果として所定の下方の範囲を警戒し続けることができる。なお、同様の構成は赤外線センサに対して適用することも可能である。
【0029】
【発明の効果】
この発明は、以上に説明したように構成されているので、以下のような効果がある。
【0030】
第1の発明によれば、例えば地対空誘導飛翔体等の飛行物体が自機に向けて発射された場合、飛来する方向は通常紫外線センサの覆域内であり、探知限界距離内で低い誤警報率で探知することができる。一方、例えば空対空誘導飛翔体のような飛行物体が発射された場合はほぼ水平方向より飛来するため、赤外線センサの覆域の内部であり、紫外線センサに比較してより長い探知距離を得ることができる。このようにそれぞれのセンサの特徴を生かし、その覆域を分けることにより、飛翔体の探知をより正しく早期に行うことができ、それだけ対処する時間も長くとることができる。
【0031】
また、第2の発明によれば、紫外線センサを複数設けることにより、紫外線センサ全体として広い覆域をカバーすることができ、また、紫外線光学系も設計が比較的容易でレンズ枚数の増加による透過率や、探知距離の低下等の弊害を避けることができる。また、視軸回転機構が不要であるため、小型なセンサを実現することができ、搭載母機上に多数設置することが容易である。このため、紫外線センサでカバーする覆域を広く取ることが容易である。
【0032】
また、第3の発明によれば、走査型赤外線センサを複数設けることにより、1センサでは例えば主翼や尾翼などが遮蔽となって視野が狭くなるような場合でも、主翼や尾翼等に視野が遮られない位置を選んでそれぞれのセンサを設置することができる。結果として、赤外線センサでカバーできる覆域を広く取ることができる。また、走査型センサを複数設けることにより、1センサで360度捜索する場合に比べ、2センサの場合は探索範囲はその半分の約180度ですみ、したがって、同じ捜索速度で捜索を行う場合は1センサに比べて2センサの方が捜索周期を概念的に約半分に短くすることができる。通常、目標は捜索周期ごとに検知され、1回前の捜索周期間に検知した目標と同じ目標であることを認識するための同定処理を行うが、1回捜索してから次の捜索までの時間が短いほど目標の移動距離も小さく、自機の姿勢変化も小さくてすみ、このため、同定処理が容易で、高速で移動する目標や、自機の姿勢が急激に変化する場合にも比較的容易に継続して目標を捕捉することができる。また、捜索周期が速いことにより、目標を初回探知した後、比較的早い段階で目標の運動情報を把握できるので、より適切な対処手段を判断するための時間的余裕が長くとれるという利点がある。
【0033】
また、第4の発明によれば、凝視型赤外センサを複数搭載することにより、第3の発明同様、主翼や尾翼等に視野が遮られない位置を選んでそれぞれのセンサを設置することができ、赤外線センサでカバーできる覆域を広く取ることができる。また、凝視型センサは走査型センサで行うような機械的走査を行わず、捜索時間は赤外線検知器の読み出しのフレームレートによるため、第3の発明に比べさらに捜索時間を短くすることができる。また、これに加えて、一般に凝視型センサは赤外線検知器の受光面において露光時間を長くとることが可能なため、走査型センサより感度が高く、その結果、赤外線センサによりカバーすべき覆域の範囲内で飛来する飛翔体に対する探知距離を第3の発明よりもさらに長くすることができる。
【0034】
また、第5の発明によれば、視軸安定化装置に紫外線センサを搭載したことにより、搭載母機が様々な角度で飛行しても同じ方向を見続けることができる。その結果、母機に搭載された複数の紫外線センサのカバーする覆域が母機から見て常に下方とさせることができる。また、センサ1台ごとの視野を広くしておく必要もないためセンサとしての角度分解能を粗くすることなく、探知距離も短くならずにすむ。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の飛翔体警戒装置の実施の形態1を示す図である。
【図2】 この発明の飛翔体警戒装置の実施の形態2を示す図である。
【図3】 この発明の飛翔体警戒装置の実施の形態2を示す図である。
【図4】 この発明の飛翔体警戒装置の実施の形態3を示す図である。
【図5】 この発明の飛翔体警戒装置の実施の形態3を示す図である。
【図6】 従来の飛翔体警戒装置の一実施例を示す図である。
【図7】 従来の飛翔体警戒装置の一実施例を示す図である。
【図8】 従来の飛翔体警戒装置の一実施例を示す図である。
【図9】 従来の飛翔体警戒装置の一実施例を示す図である。
【符号の説明】
1 紫外線センサ、2 紫外線光学系、3 ショートパスフィルタ、4 イメージインテンシファイア、5 光電面、6 2次元CCD、7 ビデオアンプ、8 信号処理機、9 表示装置、10 紫外線センサ1、11 紫外線センサ2、12 紫外線センサ3、13 紫外線センサ4、14 紫外線センサ1の覆域、15 紫外線センサ2の覆域、16 紫外線センサ3の覆域、17 紫外線センサ4の覆域、18 走査型赤外センサ、19 赤外窓、20 視軸回転機構、21 回転補正プリズム、22 赤外線光学系、23 赤外線検知器、24 視軸指向ミラー、25 赤外線センサ1、26 赤外線センサ2、27 赤外線センサ1の覆域、28 赤外線センサ2の覆域、29 赤外線センサ覆域、30 紫外線センサ覆域、31 凝視型赤外線センサ、32 バンドパスフィルタ、33 俯仰軸、34 旋回軸、35 視軸可動機構、36 ジャイロ、37 制御系信号処理機、38 視軸安定化装置。

Claims (5)

  1. 航空機に搭載され、自機に接近し燃焼火炎を噴出する飛翔体の像を検出する光波センサと、前記光波センサの出力を受け取り、前記飛翔体の存在を検知し、自機に対する警戒信号を出力する信号処理機を有する飛翔体警戒装置において、前記光波センサとして前記飛翔体の像を検出する赤外線センサと前記飛翔体の燃焼火炎を検出する紫外線センサの両方を有し、絶対水平または自機に対して水平な方向を含む上方の領域を前記赤外線センサでの覆域とし、鉛直下方または自機に対する下方を中心とした円錐体形状の領域を前記紫外線センサの覆域とすることを特徴とする飛翔体警戒装置。
  2. 前記紫外線センサは、前記紫外線センサの覆域を網羅するように機体下方に少なくとも4つ以上配置された凝視型紫外線センサを有することを特徴とする請求項1記載の飛翔体警戒装置。
  3. 前記赤外線センサは、前記赤外線センサの覆域を網羅するように機体上方を少なくとも2つ以上配置され、視軸を可動させる走査型赤外線センサを有することを特徴とする請求項1記載の飛翔体警戒装置。
  4. 前記赤外線センサは、前記赤外線センサの覆域を網羅するように機体上方に少なくとも4つ以上配置された凝視型赤外線センサを有することを特徴とする請求項1記載の飛翔体警戒装置。
  5. 直行する2軸の回りに自由に回転する視軸可動機構と、前記視軸可動機構の内部に搭載されたジャイロと、前記ジャイロの出力を用いて視軸を安定化させるための駆動信号を視軸可動機構に出力する信号処理機からなる視軸安定化装置を有し、前記視軸安定化装置の視軸可動機構の内部に前記紫外線センサを搭載したことを特徴とする請求項1記載の飛翔体警戒装置。
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