JP3799459B2 - アモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、部分的に結晶化してアモルファス母相中に微細な結晶相が析出しており、あるいは全体的に結晶化しており、かつ結晶化した部分の結晶粒径がたとえば50nm以下のナノメータスケールである構造材料、熱電材料、磁性材料および超電導体のような非平衡材料として用いられる大型のアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術と発明の課題】
従来、ガス中蒸着法により作製した活性な表面をもちかつ粒径が5〜20nmである結晶化セラミックス超微粒子を、これを作製した装置内で高圧で焼結することにより、結晶粒径がナノメータスケールであるバルク状セラミックスを製造する試みがある。しかしながら、この方法で製造されるバルク状セラミックスは小さな質量の試験片にすぎず、しかも最大相対密度は約90%であって必要な高密度化も達成されていない。したがって、得られた焼結体の機械的強度が不足して機械加工を施すことができない。さらに、セラミックス超微粒子の表面活性を保持し、実使用に適した大型の焼結体をつくるには大きな圧縮荷重を負荷することのできる装置を必要とするので、コストが高くなり、量産性のある方法としての展開は困難である。
【0003】
そこで、ゾルーゲル法などの化学的方法により作製した粒径が5〜20nmである結晶化セラミックス超微粒子を用いて加圧焼結法により、結晶粒径がナノメータスケールであるバルク状セラミックスを製造する試みがあるが、セラミックス超微粒子表面が活性でなく、また高密度化のために必要な高温での焼結に起因する結晶粒の粗大化を阻止できない。また、上述したようなセラミックス超微粒子を用いて放電焼結法やマイクロ波焼結法により焼結体を製造しても、得られた焼結体の結晶粒径は約200nm程度になり、強度や機能が結晶粒径がマイクロメータスケールである従来のセラミックスと同じであり、大幅な特性の改善につながらない。
【0004】
また、アモルファスセラミックス粉末を用いて焼結体を作製することが、粘性流動を利用した低温での緻密化および結晶化による組織・構造制御の点から有利であることが判明している。そのため、従来は、ゾルーゲル法で作製したアモルファスセラミックス粉末を用い、熱間等方圧プレス法(以下、HIPという)により焼結体を製造する試みがあるが、ゾルーゲル法で作製したアモルファスセラミックス粉末は、その表面が不活性であるとともに、不均質なアモルファスとなっているので、低温での粘性流動を利用できず、その結果製造される焼結体の結晶化部分は結晶粒径50nmとなるものの、この焼結体の相対密度は90%と小さくなる。したがって、得られた焼結体の機械的強度が不足して機械加工を施すことができない。
【0005】
この発明の目的は、上記問題を解決し、ほぼ完全に緻密化しかつ結晶化した部分の結晶粒径が50nm以下であり、高速超塑性や超強靭性を実現できるアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明による第1のアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法は、不活性ガス雰囲気中、真空雰囲気中、窒素ガス雰囲気中あるいはアンモニア雰囲気中でのメカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法により製造されたアモルファスセラミックス粉末のみからなる粉末を、パルス放電焼結法によりアモルファスセラミックスが部分的または全体的に結晶化するように、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上の過冷液体で現れる粘性流動、あるいは結晶化により生じたナノメータスケールの結晶粒の超塑性を利用して焼結し、結晶化した部分の結晶粒径を50nm以下にすることを特徴とするものである。
【0007】
上記の第1の方法において、パルス放電焼結法は、矩形波のパルスやオン−オフ型の整流を使用することにより、粉末間で起こる放電現象を利用したものであり、粉末表面を清浄化しかつ粉末間の接合部分であるネックを人工的に形成でき、その後のネックの拡大により緻密化を促進することができる。すなわち、矩形波のパルスを印加した後高周波の交流を重畳した直流を印加すること、あるいはオン−オフ型の整流を印加することにより体積流動等を促進させると、低圧力により完全緻密化させることができる。
【0008】
この発明による第2のアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法は、不活性ガス雰囲気中、真空雰囲気中、窒素ガス雰囲気中あるいはアンモニア雰囲気中でのメカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法により製造されたアモルファスセラミックス粉末のみからなる粉末を、マイクロ波焼結法あるいはミリ波焼結法によりアモルファスセラミックスが部分的または全体的に結晶化するように、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上の過冷液体で現れる粘性流動、あるいは結晶化により生じたナノメータスケールの結晶粒の超塑性を利用して焼結し、結晶化した部分の結晶粒径を50nm以下にすることを特徴とするものである。
【0009】
上記第2の方法において、マイクロ波焼結法あるいはミリ波焼結法は、2.4〜100GHzの電磁波を使用することにより、誘導加熱の原理で粉体を加熱するものであり、電界下で緻密化を促進させることができる。さらに、焼結時にガス圧や一軸加圧を負荷することが好ましい。
【0010】
この発明による第3のアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法は、不活性ガス雰囲気中、真空雰囲気中、窒素ガス雰囲気中あるいはアンモニア雰囲気中でのメカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法により製造されたアモルファスセラミックス粉末のみからなる粉末を、加圧焼結法によりアモルファスセラミックスが部分的または全体的に結晶化する温度および時間で、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上の過冷液体で現れる粘性流動、あるいは結晶化により生じたナノメータスケールの結晶粒の超塑性を利用して焼結し、結晶化した部分の結晶粒径を50nm以下にすることを特徴とするものである。
【0011】
上記第3の方法において、加圧焼結法としては、HIP、ホットプレス法、熱間押出法等が挙げられる。
【0012】
上記の3つの方法において、メカニカルアロイング法またはメカニカルグライディング法は、たとえばボールミルのような装置を用いて行うものである。すなわち、アモルファスセラミックスを構成する元素や酸化物の混合粉末や、最終組成を有するセラミックス粉末をミルの容器に入れ、不活性ガス雰囲気中、真空雰囲気中、窒素ガス雰囲気中あるいはアンモニア雰囲気中でアジテータや容器を所定時間回転させることによりアモルファスセラミックス粉末を得ることができる。このメカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法は、上述のように不活性ガス雰囲気中や真空雰囲気中や窒素ガス雰囲気中やアンモニア雰囲気中で行われるとともに、破壊と冷間圧接や微視鍛造の繰返しにより粉末表面が常に新表面となるので、これらの方法により製造されたアモルファスセラミックス粉末の表面は活性である。
【0013】
上記3つの方法において、パルス放電焼結法、マイクロ波焼結法あるいはミリ波焼結法、および加圧焼結法のさいの温度および時間は、使用するアモルファスセラミックス粉末を加熱した場合の温度と結晶化時間との関係を調べておき、その結果からアモルファスセラミックス相が部分的または全体的に結晶化を起こして結晶相が析出し、しかも析出した結晶の量およびサイズが所望のものとなるような温度および時間の条件を予め求めておくことにより決定する。
【0014】
また、この発明の3つの方法は、すべてのアモルファスセラミックス粉末に適用できる。
【0015】
【発明の効果】
この発明の3つの方法によれば、メカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法により製造された微細粉末のアモルファスセラミックス粉末を使用し、アモルファス相が部分的または全体的に結晶化するように焼結するので、結晶化された部分の結晶粒径が5〜50nmである大型の高密度セラミックス焼結体を、低圧力、低温度および短時間で成形することが可能となる。すなわち、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上の過冷液体で現れる粘性流動、あるいは結晶化により生じたナノメータスケールの結晶粒の超塑性を利用して低圧力、低温度および短時間で大型の高密度セラミックス焼結体を成形することが可能となる。
【0016】
また、この発明の3つの方法によれば、低圧力で大型の高密度焼結体を製造することができるので、高圧を付与するための特別の装置を必要とせず、装置のコストが安くなる。
【0017】
さらに、製造された焼結体は高密度であることから、室温付近での強靭性や熱電特性が優れたものとなるとともに、機械的強度が増大して機械加工が施すことが可能になる。特に、結晶化した部分の結晶粒径が30nm以下の場合には、高体積率の不規則構造の粒界もつ高密度焼結体となることから、実用化が可能な高速での超塑性変形を利用して、空隙の発生なく所望形状にニアネットシェイプ加工できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施例を比較例とともに説明する。
【0019】
実施例1
ZrO2 粉末とAl2 O3 粉末とを、ZrO2 粉末80原子量%、Al2 O3 粉末20原子量%となるように混合し、得られた混合粉末3gを、遊星型ボールミルを用いて200時間メカニカルアロイング処理して、固相アモルファス化し、平均粒径50nmの超微粒子アモルファスセラミックス粉末をつくった。ついで、このアモルファスセラミックス粉末を、内径10mmの黒鉛ダイ内に入れ、10kgf/mm2 の圧力を負荷して1308K、1323K、1333Kおよび1473Kの各温度で12分間パルス放電焼結法により焼結を行い、焼結体を成形した。
【0020】
得られた全ての焼結体はそれぞれ全体的に結晶化しており、その相対密度を測定したところ、いずれの焼結体も100%となって完全緻密化していた。すなわち、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上ではアモルファスセラミックスは過冷された液体で粘性流動が起こり、この粘性流動を利用していずれの焼結体も相対密度が100%となって完全緻密化するのである。しかも上記ガラス温度は結晶化セラミックスの融点に比べてかなり低温である。焼結温度と相対密度との関係を図1に示す。
【0021】
また、これらの焼結体の中央部の断面を光学顕微鏡で観察したところ、空孔、ボイド、クラック等の不連続な欠陥は見られなかった。
【0022】
また、1308Kで焼結した焼結体をX線回折法により調べたところ正方晶のブロードな回折線が得られ、この回折線から17nmの結晶粒径を有することが分かった。さらに、この焼結体の表面に、ビッカース硬度計を用いて圧痕を形成したところ圧痕の回りに塑性変形の盛り上りが見られ、このことから機械加工が可能であることが分かった。
【0023】
また、1323Kで焼結した焼結体に圧縮試験を施したところ200%の変位が観察された。
【0024】
実施例2
ZrO2 粉末とAl2 O3 粉末とを、ZrO2 粉末80原子量%、Al2 O3 粉末20原子量%となるように混合し、得られた500gの混合粉末をメデイア攪拌型ボールミルを用いて、メカニカルアロイング処理して、固相アモルファス化し、平均粒径500nmの超微粒子アモルファスセラミックス粉末をつくった。ついで、このアモルファスセラミックス粉末を用い、40kgf/mm2 の静水圧力を室温で負荷して冷間静水圧プレス法により、直径20mm、高さ30mmの円柱状体を成形した。ついで、この円柱状体を、アルゴン雰囲気中において、1273K、1323K、1473K、1573Kおよび1673Kの各温度で20分間、28GHzのミリ波を用いたミリ波焼結法により焼結を行い、焼結体を成形した。
【0025】
得られた焼結体は全体的に結晶化しており、その相対密度を測定したところ、いずれも98%以上に高密度化していた。また、これらの焼結体の中央部の断面を光学顕微鏡で観察したところ、空孔、ボイド、クラック等の不連続な欠陥は見られなかった。
【0026】
また、1273Kで焼結した焼結体を電子顕微鏡により調べたところ20nmの結晶粒径が観察された。さらに、この焼結体の表面に、ビッカース硬度計を用いて圧痕を形成したところ圧痕の回りに塑性変形の盛り上りが見られ、このことから機械加工が可能であることが分かった。
【0027】
また、1323Kで焼結した焼結体に引張試験を施したところ200%以上の変位が観察された。
【0028】
実施例3
ZrO2 粉末とAl2 O3 粉末とを、ZrO2 粉末80原子量%、Al2 O3 粉末20原子量%となるように混合し、得られた500gの混合粉末をメデイア攪拌型ボールミルを用いて、メカニカルアロイング処理して、固相アモルファス化し、平均粒径500nmの超微粒子アモルファスセラミックス粉末をつくった。ついで、このアモルファスセラミックス粉末を缶内に真空封入し、HIPにより、圧力20kgf/mm2 、温度1373K、時間20分の条件で焼結体を成形した。
【0029】
得られた焼結体は全体的に結晶化しており、その相対密度を測定したところ、99%以上にほぼ完全緻密化していた。また、これらの焼結体の中央部の断面を光学顕微鏡で観察したところ、空孔、ボイド、クラック等の不連続な欠陥は見られなかった。さらに、この焼結体を電子顕微鏡により調べたところ20nmの結晶粒径が観察された。
【0030】
比較例
ゾル−ゲル法により作製したZrO2 80原子量%、Al2 O3 20原子量%の組成を有する平均粒径15nmの結晶化セラミックス粉末を缶内に真空封入し、HIPにより、圧力14kgf/mm2 、時間40分で種々の温度で焼結体を成形した。得られた焼結体は全体的に結晶化していた。
【0031】
また、得られた焼結体の相対密度を測定したところ焼結温度1570Kの焼結体は相対密度は100%となっていたが、この焼結体を電子顕微鏡により調べたところ200nmの結晶粒径が観察された。また、1570Kよりも低い焼結温度の焼結体の相対密度はかなり小さくなっていた。焼結温度と相対密度との関係を図1に示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1および比較例における焼結温度と相対密度との関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 不活性ガス雰囲気中、真空雰囲気中、窒素ガス雰囲気中あるいはアンモニア雰囲気中でのメカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法により製造されたアモルファスセラミックス粉末のみからなる粉末を、パルス放電焼結法によりアモルファスセラミックスが部分的または全体的に結晶化するように、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上の過冷液体で現れる粘性流動、あるいは結晶化により生じたナノメータスケールの結晶粒の超塑性を利用して焼結し、結晶化した部分の結晶粒径を50nm以下にすることを特徴とするアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法。
- 不活性ガス雰囲気中、真空雰囲気中、窒素ガス雰囲気中あるいはアンモニア雰囲気中でのメカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法により製造されたアモルファスセラミックス粉末のみからなる粉末を、マイクロ波焼結法あるいはミリ波焼結法によりアモルファスセラミックスが部分的または全体的に結晶化するように、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上の過冷液体で現れる粘性流動、あるいは結晶化により生じたナノメータスケールの結晶粒の超塑性を利用して焼結し、結晶化した部分の結晶粒径を50nm以下にすることを特徴とするアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法。
- 不活性ガス雰囲気中、真空雰囲気中、窒素ガス雰囲気中あるいはアンモニア雰囲気中でのメカニカルアロイング法やメカニカルグライディング法により製造されたアモルファスセラミックス粉末のみからなる粉末を、加圧焼結法によりアモルファスセラミックスが部分的または全体的に結晶化する温度および時間で、アモルファスセラミックスに特有のガラス温度以上の過冷液体で現れる粘性流動、あるいは結晶化により生じたナノメータスケールの結晶粒の超塑性を利用して焼結し、結晶化した部分の結晶粒径を50nm以下にすることを特徴とするアモルファスセラミックス粉末製高密度焼結体の製造方法。
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