JP3798038B2 - 赤外線吸収材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、肉眼で視認することは実質的にできないが、赤外線を吸収することにより、光学的に識別可能なコードパターン及び見知マーク等のマークを形成するための素材として用いられる赤外線吸収性の材料に関する。さらに本発明は、前記赤外線吸収性の材料を用いたインキ及び不可視パターンに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光学読み取りを利用したコードパターンとしてのバーコードが、主として物流管理システムのために広く利用されている。例えば、POS(販売時点管理)システム用のJANコードや配送伝票、荷分け伝票、納品用のバーコードタグなどの光学的データキャリアとして、バーコードは広く用いられている。
【0003】
これら従来のバーコードの光学読み取り用の光源光として650nm、800nm又は950nm付近に発光波長を持つ半導体レーザー又は発光ダイオードが主として用いられている。そのため、光源光の波長域が制約されるために、バーコードは、可視光領域に吸収帯のあるカーボンブラックを用いたインキ、又はシアン・グリーン系統の赤色/赤外波長域に吸収特性を持つインキにより印刷、又はプリントされている。
【0004】
又、バーコードの印刷の方式は、活版、オフセット、フレキソ、グラビア又はシルク印刷等で、主として、ソース・マーキングと呼ばれる大量印刷に適用される。バーコードのプリントの方式は、ドットインパクト、熱転写、ダイレクトサーマル、電子写真、インクジェットプリント等で、主として、インストア・マーキングと呼ばれる個別印刷、或いは、小ロットの情報コードラベルの製造に適用されている。
【0005】
しかし、こうした可視の情報コードはデザイン上の制約を印刷物にもたらすとしてこれを排除する要求が強い。そこで、可視光領域に吸収帯を持たないインキを印刷又はプリントすることにより情報コードを透明化し、目視での判定を困難にしようとする試みがなされている。
【0006】
こうした透明化の試みの1つとして、可視光線領域外の赤外線を主に吸収するインキを用いて、赤外線パターンを形成することが知られている〔例えば特開昭63−116286号、特開平3−154187号、特開平3−227378号、特開平3−275389号、特開平4−70349号、特開平5−93160号参照〕。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来用いられている赤外線領域に吸収域をもつ色素は、シアニン色素、フタロシアニン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ジルオール系色素、トリフェニルメタン系色素などがある。しかし、これらは600nm以上の波長領域に吸収帯を持つためにシアンカラーであるか、または可視領域(380nm〜700nm)に30〜40%の吸収があるために、若干赤みがかったクリーム色を呈している。よって、完全に透明なバーコードを形成することができなかった。さらにはこれらの色素は染料である為に、IDキャリアとしての耐光性が期待できないという欠点もあった。また、赤外線吸収顔料としてシアンフィルターガラスを用いるものもあるが、この場合、ガラスはCu2+イオンを含んでおり、550nmから吸収が始まるためにシアンカラーを呈していた。
【0008】
このような現状から、透明な不可視バーコードを提供するために、赤外線は吸収するが、可視光線は吸収しない材料の提供が望まれている。そこで本発明の目的は、赤外領域にのみ吸収を持ち、可視光領域では吸収を行わない新たな素材を提供することにある。即ち、本発明は、肉眼では視認不可能であり、かつ赤外線吸収特性、耐候性、耐光性、インキ化特性、印刷適性、プリント適性及び耐候性に優れた赤外線吸収材料及びこの材料を用いたインキを提供することを目的とする。
【0009】
ところで、赤外線吸収コードパターンとは別の分野においても、赤外線吸収性の材料を使用できる分野がある。例えば、オーバー・ヘッド・プロジェクター(OHP)用の透明シートに、光学的検知方法を用いた複写機にて画像を形成するに際して、この透明シートの紙送りタイミング等の設定のために、透明シートの縁端部に検知マークが設けられる。光学的検知は例えばLEDとフォトトランジスタを組み合わせて行われ、検知マークとして赤外線吸収性の材料を用いることができると考えられる。
【0010】
ところが、従来は、例えば特開平3−99878号公報に記載されているように、検知マークは不透明な材料から形成されていた。しかし、不透明な検知マークは、OHPで目的とする画像とともに映し出されてしまい、映し出された画像を見にくくするという欠点があった。そこで、透明ではあるが、光学的に検知し得る検知マークが提供されれば、このような欠点は解消される。
【0011】
そこで、本発明の別の目的は、透明OHPシートに付すことができる透明な検知マークを提供するために、赤外線は吸収するが、可視光線は吸収しない材料を提供することにある。即ち、赤外線を吸収することにより光学的に検知可能であり、しかも可視光線を吸収しないことにより透明である検知マークを提供できる材料及びこの材料を用いたインキを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イッテルビウムと酸との塩(但し、YbPO4 を除く)からなることを特徴とする赤外線吸収材料に関する。
【0013】
本発明の赤外線吸収材料は、イッテルビウムと酸との塩からなる。イッテルビウムとの塩を形成する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、過塩素酸、炭酸等の無機酸及び酢酸、ニコチン酸等の有機酸を挙げることができる。イッテルビウムとの塩を形成する酸は、安定な塩を形成することが好ましい。そのような観点からは、イッテルビウム塩は、硫酸イッテルビウムや酢酸イッテルビウムであることが好ましい。また、これらの塩は、場合により結晶水を有するものであることもできる。
【0014】
本発明の赤外線吸収材料は、インキ用の顔料として用いられるという観点から、粒子径は、0.01〜10μmの範囲とすることが適当である。粒子径は、可視光に対する透明性という観点及びインキビヒクルへの分散性という観点からは、10μm以下であることが適当である。一方、粒子径は、小さくなる程、製造は難しくなり、また、一次粒子結晶の変性を防止する等の観点から、0.01μm以上であることが適当である。さらに、可視光領域での透明性及び近赤外線領域での吸収特性を考慮すると、本発明の赤外線吸収材料の粒子径は、特に、0.05〜0.2μmの範囲及び0.5〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0015】
本発明の赤外線吸収材料は、酸化イッテルビウム(Yb2 O3 )微粉末を酸水溶液に混合し、必要により加熱して酸化イッテルビウムを溶解し、酸塩の水溶液を作製する。そして、不溶解分があれば、濾過等により除去した後に、水溶液を冷却するか、あるいはアルコールを混合し、極性を下げたりして酸塩の溶解度を下げることにより、再結晶して酸塩の微粒子を得るか、若しくは溶媒成分を蒸発乾固することにより、目的物であるイッテルビウム酸塩を得ることができる。得られる塩は、常法により乾燥することができる。尚、冷却の速度や還流条件を制御することにより、粒子径を調整することができる。また、得られた塩の粒子は、粉砕等を施すことにより、粒子径を調整することもできる。粉砕としては、粉砕時に容器等を冷却する方法、不活性ガス中での粉砕やキシレントルエン等の有機溶剤中での粉砕等を挙げることができる。
【0016】
Yb塩粒子中のYb3+は、イオン状態で赤外領域に、Yb3+の 2F7/2 → 3F5/2 の遷移に基づく吸収帯を持つ。さらに、この吸収は、遷移金属イオンによる着色と異なり、ブロードとならず可視領域吸収を有しないために着色しない。
【0017】
このような特性を有する本発明の赤外線吸収材料は、例えば、図1に示すように約975nmをピークとする赤外領域の照射光を際立って吸収するが、400〜700nmの可視領域には吸収を有さない。従って、本発明の赤外線吸収材料を用いたインキ等によってバーコードを形成すると、吸収を行うバーの部分(印刷部)と、反射を行うスペースの部分(非印刷部)の間に、照射赤外光の吸収/反射の反射光の濃淡が形成され、バーコードのシグナルを読み取ることができるが、肉眼で視認することはできない。さらに、本発明の赤外線吸収材料を用いたインキ等によって検知マークを形成すると、吸収を行う検知マーク(印刷部)と、反射を行う非印刷部の間に、照射赤外光の吸収/反射の反射光の濃淡が形成され、検知マークが認識されるが、肉眼で視認することはできない。
【0018】
本発明の赤外線吸収材料を、マークのうちでもコードパターンの印刷に適したプリント方式である、オフセット印刷、熱転写プリント、インジェクトプリント、電子写真式プリント用の、オフセットインキ、熱転写リボンインキ、インクジェットインキ、トナーインキの顔料として用いる場合には、上記本発明の赤外線吸収材料は、平均粒子径が0.01μm〜0.1μmであり、最大粒子径が1μm以下である粉末であることが好ましい。上記方式により得られる印刷膜厚もしくはプリント膜厚が通常約1〜2μmであり、最大でも3μm程度であることから、赤外線吸収材料の平均粒子径を上記範囲のサブミクロンオーダーとすることにより、印刷ムラを抑制することができるからである。また、検知マークをグラビア印刷するためのグラビアインキにおいても同様である。
【0019】
さらに、インキ特性を考慮すると、バインダー成分が無極性のオフセットインキ、熱転写リボンインキ、トナーインキに対しては、赤外線吸収材料の粉末の表面に親油性コートを施して、インキバインダーへの赤外線吸収材料粒子の分散性を向上させることが好ましい。分散性を向上させることにより、形成したマークの読み取りを良好に行うことができる。
【0020】
即ち、オフセット印刷においては印刷中にインキから赤外線吸収材料粉末が析出したり、赤外光の吸収部分が印刷されない抜けの状態の発生を防止することができる。また、熱転写リボンにおいては、均一なコート層のリボンコーティングを得ることができ、プリント時に転写不良が発生することを防止することができる。さらに、電子写真式プリントのトナーにおいても、トナーインキの赤外線吸収材料粉末の含有状態を均一に保つことができ、安定な吸収レベルを有するマークを得ることができる。
【0021】
赤外線吸収材料表面改質のためコーティング法の代表例を以下に列記する。
(a)コーティング
コーティングは界面活性剤的な役割を果たす。具体的例としては、例えば脂肪酸(低分子・高分子鎖)、脂肪酸塩類、及びワックスなどの分散剤を用いる事ができる。特に、フッ燐酸塩脂肪酸を用いたコーティング剤をコーティングした赤外線吸収材料をインキ化し、印刷することにより赤外線吸収パターン印刷部及び検知マーク印刷部への印刷ムラは著しく改善することができる。また、コーティング剤をインキビヒクル中に分散し、その中に赤外線吸収材料を混合することによっても、コーティングすることができ、かつビヒクル中への分散も可能である。
【0022】
(b)カップリング剤
カップリング剤は、赤外線吸収材料と強固に結合し、ポリマーとも反応する。具体例としては、シラン化合物、チタン化合物、金属キレート化合物などを挙げることができる。
(c)重合性モノマー
低分子量のモノマー又はオリゴマーを赤外線吸収材料表面に反応させ、非可逆層をつくる。具体例としては、重合性有機酸、反応性オリゴマー等を挙げることができる。
【0023】
本発明のオフセット及び活版インキにおいて、ビヒクルを構成する樹脂としては、一般的には、蛋白質、ゴム、セルロース類、シエラック、コパル、でん粉、ロジン等などの天然樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等の熱可塑性樹脂、レゾール型フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂などがあげられる。さらにビヒクル中に、必要に応じて、印刷皮膜の柔軟性・強度安定化のための可塑剤、粘度調整、乾燥性のための溶剤、さらに乾燥、粘度、分散性、各種反応剤等の助剤を適宜添加することができる。
【0024】
但し、形成されたマークが油脂成分により汚染物質を吸着することが望ましくないことから、好適には、常温で液体の油脂成分を用いない光重合硬化型もしくは電子線硬化型インキを用いて形成する。これらインキの硬化物の主成分はアクリル系樹脂である。従って、上記インキはアルキルモノマーを含有するものであり、具体的には、市販されている以下のアクリルモノマーを挙げることができる。
【0025】
単官能アクリレートとしては、2- エチルヘキシルアクリレート、2- エチルヘキシルEO付加物アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2- ヒドロキシエチルアクリレート、2- ヒドロキシプロピルアクリレート、2- ヒドロキシエチルアクリレートのカプロラクトン付加物、2- フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート、ノニルフェノールEO付加物にカプロラクトン付加したアクリレート、2- ヒドロキシ- 3- フェノキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フルフリルアルコールのカプロラクトン付加物アクリレート、アクリロイルモルホリン、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、4,4- ジメチル- 1,3- ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレート、3- メチル- 5,5- ジメチル- 1,3- ジオキソランのカプロラクトン付加物のアクリレートなどが用いられ得る。
【0026】
一方、多官能アクリレートとしては、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのカプロラクトン付加物ジアクリレート、1,6- ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、ヒドロキシピバルアルデヒドとトリメチロールプロパンのアセタール化合物のジアクリレート、2,2- ビス〔4- (アクリロイロキシジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2- ビス〔4- (アクリロイロキシジエトキシ,フェニル〕メタン、水添ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物のジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物トリアクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加物トリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート・ペンタアクリレート混合物、ジペンタエリスリトールの低級脂肪酸およびアクリル酸のエステル、ジペンタエリスリトールのカプロラクトン付加物アクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、2- アクリロイロキシエチルホスフェートなどが用いられ得る。
【0027】
これらの樹脂又はモノマーからなるインキは無溶剤性で、電磁波や電子線照射により連鎖的重合反応を起こして硬化する。このうち、紫外線照射型のものについては、光重合開始剤と、必要に応じて増感剤および助剤として、重合禁止剤、連鎖移動剤などを添加する。
【0028】
光重合開始剤としては、1)直接光分解型としてアリールアルキルケトン、オキシムケトン、アシルホスフィンオキシド等、2)ラジカル重合反応型としてベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体等、3)カチオン重合反応型としてアリールジアゾニウム塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、アリールアセトフェノン等があり、その他に4)エネルギー移動型、5)光レドックス型、ならびに6)電子移動型のものが用いられ得る。
【0029】
また、電子線硬化型のものについては、前述した紫外線照射型と同様な樹脂又はモノマーを用いて、光重合開始剤を必要とせず、必要に応じて各種助剤が添加され得る。
【0030】
インクジェットインキは、本発明の赤外線吸収材料粉末及び上記ビビクル以外に水及び水性有機溶媒を含有するものであることができる。水は、イオン交換水以上の純度であればよい。
【0031】
水溶性有機溶媒は、インキの乾燥防止及び浸透性付与を目的とし、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンの如き多価アルコール類:N−アルキルピロリドン類:酢酸エチル、酢酸アミルの如きエステル類:メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールの如き低級アルコール類:メタノール、ブタノール、フェノールのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物の如きグリコールエーテル類等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒は、上記溶媒例に限定されるものではなく、溶媒の吸湿性、保湿性、染料溶解性や浸透性、インキの粘度や氷点などを考慮して、適宜、単独もしくは複数で使用される。これらの水溶性有機溶媒の使用料は、インキの0.1〜70重量%の範囲が好ましい。
【0032】
インクジェット記録装置のシステムに要求される諸条件を満たすために、必要に応じて、インキの成分として従来から知られている添加物を添加することも可能である。これらの添加物としては、pH調製剤としてのアルコールアミン類、アンモニウム塩類、金属水酸化物:比抵抗調製剤としての有機塩類、無機塩類:酸化防止剤:防腐剤:防カビ剤:金属封鎖剤としてのキレート剤等が挙げられる。
【0033】
上記組成に加えて、噴封ノズル部の閉塞やインキ吐出方向の変化などが生じない程度に、ポリビニルアルコール、ポリビニルビロリドン、カルボキシメチルセルロース、スチレンアクリル酸樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等の水溶性樹脂を添加することもできる。
【0034】
熱転写リボンインキ並びに検知マークを印刷するためのグラビアインキ及びスクリーンインキには、本発明の赤外線吸収材料粉末以外に、ビビクルとして合成樹脂、ワックス、および必要に応じて溶剤や着色剤を配合して調製する。合成樹脂は、サーマルヘッドの電圧、融点などを考慮した上で適当なものを単独または混合して用いる。具体例をあげれば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブチン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロースプラスチック、ニトロセルロース、ポリアセタールなどである。ワックスは、ミツロウ、触ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワクス、カルナバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、キャンデリラワックス、ベトロラクタム、マイクロクリスタリンワックスなどから適宜選択して用いることができる。
【0035】
溶剤は、熱転写リボンインキ組成物を通常の印刷方法で塗布できるインキとする場合に用いる。ベンゼン、キシレン、トルエン、トリクレン、ホワイトスピリット、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、シクロヘキサノンなどがその例である。特に、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、キシレンおよびトルエンが用いられることが好ましい。
【0036】
上記熱転写リボンインキをベースフィルム上に設けた熱転写シートとすることができる。ベースフィルムの材料には、常用のものを使用すればよい。具体的には、ポリエスチル、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネートなどのプラスチックのフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類を使用することができる。
【0037】
電子写真方式の場合のトナーインキの構成成分は本発明の赤外線吸収材料粉末、ビビクル、必要に応じて帯電制御剤、オフセット防止剤、外添剤(流動化剤)からなる。ビビクルはポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、スチレン−ブタジェン系共重合体、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂を挙げることができる。接触帯電性は、アミノ基などの電子供与性の置換基を含むものは正帯電を帯びやすく、フッ素、カルボキシル基などの電子受容性置換基を有するものは負帯電を帯びやすい。
【0038】
帯電制御剤は正帯電用にはニグロシン系染料、第4級アンモニウム系化合物など、負帯電トナーにはアルキルサルチル酸の金属錯体、アゾ系含金属錯体などが用いられる。その他添加剤として、熱ロール定着のオフセット防止剤として低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンなどが用いられる。
【0039】
さらに本発明のインキには、組成物中に非可逆性を有する消色性着色剤を含有させることができる。この場合の消色性着色剤は、可視光域において可視状態を維持し、消色のための操作、たとえば近赤外線の照射などの操作によって非可逆的に不可視状態に変化する着色剤である。このような消色性着色剤を含有するインキ組成物でコードパターンを形成すると、印刷画像を肉眼で識別することが可能であり、印刷精度を向上させることができる。その後、消色操作を行うことによって、コードパターンを不可視状態に変化させることができる。
【0040】
具体例としては、下記構造式、で示される消色性着色剤IR820B(昭和電工製)やシアニン系色素とテトラブチルアンモニウム・ブチルトリフェニルボレートなどの有機ホウ素アンモニウム塩を共存することにより近赤外光を吸収して両者がカップリングし、不可逆的に透明になるものがある。
【0041】
【化1】
【0042】
本発明の赤外線吸収材料は、例えば、図1に示すように約975nmに鋭い吸収を示す。そこで、この赤外線吸収材料を用いて形成したコードパターン又は検知マークに、照射光源として、例えば半導体レーザーのパルス状の赤外光又は発光ダイオードの赤外発光に対して900nm以下の光及び1000nm以上の光を吸収するバンドパスフィルターをコーティングしたレンズ等を受光センサー側に取り付けて赤外線を照射すると、鋭い吸収シグナルとして識別できる。
【0043】
本発明は、前記赤外線吸収材料を用いた不可視パターン及び不可視情報パターンを包含する。ここで、パターンは非情報パターン及び情報パターンを包含する。非情報パターンとしては検知マーク等を挙げることができる。また、情報パターンとしては、コードパターンを挙げることができる。コードパターンとしては、バーコードを例示でき、バーコードは1次元のバーコード以外に2次元コード等であってもよい。特に本発明では、高い解像度が得られることから、2次元コードに有効である。
【0044】
又、検知マークとは、光学的検知方法を用いた複写機にて画像を形成する際に、光学的に検知されない透明シートの紙送りタイミング等の設定のために設けられるマークである。検知マークの形状や検知マークを設ける透明シート上の位置については、特に制限はない。例えば、特開昭58−106550号、同58−105157号、同59−7367号及び特開平3−99878号公報に記載されているような、検知マークが挙げられる。
【0045】
【実施例】
以下本発明を実施例に基づいてさらに説明する。
【0046】
実施例1
酸化イッテルビウム(Yb2 O3 )粉末1モル当量を少量の希塩酸(10wt%純正化学)に加熱溶解した。放冷後、希硫酸(20wt%純正化学)3モル当量を加えて良く混合した。次いで、過剰量のエタノールを添加して結晶を沈殿させた。得られた沈殿物を吸引濾過し、塩化物イオンがなくなるまで(濾液に硝酸銀を添加して白濁しなくなるまで)エタノールで洗浄した。洗浄後、風乾してYb2 (SO4 )3 ・nH2 Oが得られた。得られた結晶は吸湿性もなく、安定に存在した。
【0047】
上記で得られた結晶の分光反射率を測定した結果を図1に示す。その結果、近赤外領域に約50%の吸収を有していた。尚、測定は、島津製作所製自記分光光度計UV3101PCを用い、硫酸バリウムの反射率を100%として行った。さらに、上記で得られた結晶を粒度分布計(Photal粒度分布測定装置PAR−III)により粒子径の測定を行った。その結果を図2に示す。図2の結果から、この結晶中には、0.6μm程度の一次粒子と12μm程度の二次粒子とが混在することが分かる。この結晶をアトライターにてワックス及びキシレン溶媒と共に粉砕する(条件:1mm径ガラスビーズ)ことにより、0.6μm程度の微粒子分散インキを得ることができた。このインキは、熱転写インクリボン用のグラビアインキ顔料として適していた。
【0048】
実施例2
酸化イッテルビウム(Yb2 O3 )粉末1モル当量を酢酸水溶液(50wt%純正化学)6モル当量に加え、120℃で2時間還流を行い、イッテルビウムの酢酸塩の沈殿物を得た。得られた沈殿物を90℃で五酸化二リン(P2 O5 )上で真空乾燥した。その結果、Yb(CH3 COO)3 ・nH2 Oが得られた。得られた結晶は吸湿性もなく、安定に存在した。
上記で得られた結晶の分光反射率を実施例1と同様にして測定した。結果を図3に示す。その結果、近赤外領域に約45%の吸収を有していた。
【0049】
実施例3
実施例1で得た粉末4重量部を、アクリレートオリゴマー3重量部、アクリレートモノマー6重量部、ワックス3重量部及び増感剤0.5重量部からなるオフセットビヒクルにロールミルにより添加混合して、オフセット用インキを調製した。このインキを常法によりコート紙上にバーコードをオフセット印刷した。
【0050】
得られたバーコードは、肉眼では認識できなかった。このバーコードを光源として赤外発光ダイオード(SHARP、GL480)を用い、受光部としてCCDリニアセンサ(SONY、ILX503)を用いて、読み取り試験を行った。その結果、バーコード情報を読み取ることができた。さらに、得られたバーコードは、100時間のアーク灯による紫外線照射劣化試験、並びに弱酸及び弱アルカリによる薬品劣化試験の後にもバーコード情報を読み取ることができ、耐候性に優れたものであった。
【0051】
実施例4
実施例1で得た粉末3重量部を、ワックス5重量部とガラスビーズアトライターにて攪拌して得たインクリボンインキを、4μmの厚さのPETフィルムにグラピアコートしてインクリボンを得た。このインクリボンを用いて常法によりコート紙上にバーコードを印刷した。
【0052】
得られたバーコードは、肉眼では認識できなかった。さらに、このバーコードを光源として赤外発光ダイオード(SHARP、GL480)を用い、受光部としてCCDリニアセンサ(SONY、ILX503)を用いて、読み取り試験を行った。その結果、バーコード情報を読み取ることができた。
【0053】
実施例5
実施例1で得た粉末5.0重量部を、アクリルレジン2.4重量部、硝化綿6.4重量部、イソプロピルアルコール13.0重量部、変性エタノール15.9重量部、酢酸エチル31.9重量部及びプロピレングリコールモノプロピルエーテル5.4重量部とガラスビーズアトライターにて攪拌してグラビアインキを得た。得られたインキを、100μmの厚さのPETシートの縁端部にグラビア印刷して、光学的検知マークを有する透明OHPシートを得た。このOHPシートのグラビア印刷した検知マークの部分も透明であった。
【0054】
得られた透明OHPシートを光感応型シート検知装置付の複写機でプリントテストを行った。その結果、シートの検知性及び紙送り性ともに良好であった。さらに、画像を形成したシートは、検知マークの部分が透明であることから、OHPでの使用時の画像も見やすいものであった。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、可視光領域に吸収を有さず、975nm付近の赤外領域に鋭い吸収ピークを有し、赤外線吸収コードパターンや赤外線吸収検知マーク等の赤外線吸収マークの形成用として優れた材料及びインキ素材を提供することができる。
特に本発明の赤外線吸収材料は、光源として赤外発光ダイオードやガリウム・砒素半導体レーザーを用いた場合、吸収ピーク付近の波長が光源光のピーク波長に大変近く、さらに、受光素子であるフォトダイオードの分光感度特性が吸収特性とほぼ一致することから、近赤外吸収特性を信号として利用し易いという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1で得た結晶の分光反射率のスペクトルを示す。
【図2】 実施例1で得た結晶の粒度分布を示す。
【図3】 実施例2で得た結晶の分光反射率のスペクトルを示す。
Claims (5)
- 硫酸イッテルビウム又は酢酸イッテルビウムからなることを特徴とする赤外線吸収材料。
- 975nm近傍に吸収ピークを有する請求項1記載の赤外線吸収材料。
- 請求項1又は2に記載の赤外線吸収材料の粉末及びビヒクルを含有するインキ。
- 請求項1又は2に記載の赤外線吸収材料を含有する不可視パターン。
- 請求項1又は2に記載の赤外線吸収材料を含有する不可視情報パターン。
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