JP3796105B2 - 光導波路と半導体受光素子との接続構造 - Google Patents

光導波路と半導体受光素子との接続構造 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に形成された光導波路と同じ基板上に配置された半導体受光素子とにおける、光導波路によって伝搬させる光を半導体受光素子に高い結合効率で受光させるための、光導波路と半導体受光素子との接続構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光回路基板や光電気回路基板等においては、基板上に形成された光導波路により伝搬される伝搬光を同じく基板上に配置した半導体受光素子に光接続して受光させるために、種々の光導波路と半導体受光素子との接続構造が用いられている。
【0003】
従来の光導波路と半導体受光素子との接続構造の例を図3および図4にそれぞれ断面図で示す。図3に示す構造では、基板31上に半導体受光素子32が固定されて配置され、その上に下部クラッド部33・コア部34・上部クラッド部35から構成される光導波路36が形成されている。なお、コア部34はその周囲を下部クラッド部33および上部クラッド部35により取り囲まれてクラッド部中に配設されている。この接続構造においては、同図中に破線の矢印で示したように、入射端37から光導波路36に入射された光が光導波路36のコア部34を伝搬して、その伝搬光が半導体受光素子32の近傍で漏れ出した漏れ出し光を半導体受光素子32に受光させるという光学的な接合方法がとられていた。
【0004】
また、図4に示す方法では、基板41上に、図3における光導波路36と同様に下部クラッド部42・コア部43・上部クラッド部44から構成される光導波路45が形成され、同図中に破線の矢印で示したように、入射端46から光導波路45に入射された光が光導波路45のコア部43を伝搬し、この伝搬光が光導波路45を斜めに切り欠いた他端側の反射面47で全反射して上方に出射される。これに対し半導体受光素子48は光導波路45の反射面47上に固定されて配置されており、反射面47で全反射して上方に出射された光を受光することによって光導波路45と半導体受光素子48との光学的な結合が行なわれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図3に示す従来の接続構造では、伝搬光は本来コア部34中を伝搬するものであり、また半導体受光素子32が光導波路36による光伝搬方向に対して直交する方向に配置されるために、充分な光量の漏れ出し光を半導体受光素子32に入射させることが困難であり、結合効率が低くなるという問題点がある。また、結合効率を高めるには半導体受光素子32の受光領域を光伝搬方向に長くして大きくする必要があり、この場合は光回路の小型化に対して障害となるという問題点がある。
【0006】
一方、図4に示す従来の接続構造では、光導波路45の反射面47を用いることによって高い結合効率が得られるが、反射面47の角度や平坦性が光結合率に大きく影響するためにその精密な制御が難しく、さらに、光導波路45に対して反射面47を加工するために光回路の作製工数が増えて生産性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板上に形成された光導波路とこの基板上で光導波路の近傍に配置された半導体受光素子とについて、高い結合効率でもって光導波路の伝搬光を半導体受光素子に受光させることができる光導波路と半導体受光素子との接続構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造は、基板上に形成された、クラッド部とこのクラッド部中のコア部とを有する光導波路による伝搬光を、前記基板上で前記光導波路の近傍に配置された半導体受光素子に受光させるための光導波路と半導体受光素子との接続構造であって、前記光導波路は前記コア部に金属を前記クラッド部よりも多く含有したシロキサン系ポリマであって、加熱を行なうとさらに重合が進んでより多くのシロキサン結合が生成されて屈折率が小さくなるものから成り、前記光導波路の前記半導体受光素子近傍における前記コア部と前記クラッド部との屈折率差を、前記コア部および前記クラッド部を加熱することにより小さくして、前記コア部から漏れ出させた前記伝搬光を前記半導体受光素子に受光させるようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造は、基板上に形成された、クラッド部とこのクラッド部中のコア部とを有する光導波路による伝搬光を、前記基板上で前記光導波路の近傍に配置された半導体受光素子に受光させるための光導波路と半導体受光素子との接続構造であって、前記光導波路は前記コア部に金属を前記クラッド部よりも多く含有したシロキサン系ポリマであって、伝搬光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成して屈折率が小さくなるものから成り、前記光導波路の前記半導体受光素子近傍における前記コア部と前記クラッド部との屈折率差を、前記コア部および前記クラッド部に伝搬光よりも高エネルギーの光を照射することにより小さくして、前記コア部から漏れ出させた前記伝搬光を前記半導体受光素子に受光させるようにしたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造によれば、基板上に形成された、クラッド部とこのクラッド部中のコア部とを有する光導波路による伝搬光を、基板上で光導波路の近傍に配置された半導体受光素子に受光させるための光導波路と半導体受光素子との接続構造であって、光導波路はコア部に金属をクラッド部よりも多く含有したシロキサン系ポリマであって、加熱を行なうとさらに重合が進んでより多くのシロキサン結合が生成されて屈折率が小さくなるもの、あるいは伝搬光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成して屈折率が小さくなるものから成り、半導体受光素子の近傍における光導波路のコア部とクラッド部との屈折率差を、コア部およびクラッド部を加熱することによって、あるいはコア部およびクラッド部に伝搬光よりも高エネルギーの光を照射することによって、他の部分における光導波路のコア部とクラッド部との屈折率差よりも小さくしたことにより、その半導体受光素子近傍での光導波路における伝搬光の閉じ込めが弱まって、電磁場である伝搬光の振幅の分布が半導体受光素子の近傍で広いガウス型の分布となって拡がり、コア部から漏れ出すこととなる。したがって、光導波路のモードフィールド径が大きくなり、半導体受光素子近傍における光導波路についてそのコア部から離れたところでの電界の強度が相対的に強くなることからコア部から伝搬光が多く漏れ出すことになり、基板上の光導波路の近傍で伝搬光の伝搬方向に対して直交する方向に配置された半導体受光素子に十分な光量の伝搬光を受光させることができ、光導波路と半導体受光素子との結合効率を高めることができる。
【0013】
また、本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造によれば、光導波路がシロキサン系ポリマから成り、コア部に金属をクラッド部よりも多く含有したものとしたことから、この光導波路の半導体受光素子近傍の部分を局所的に加熱することにより、この近傍のコア部およびクラッド部の屈折率を変化させて両者の屈折率差を小さくすることが容易にかつ精度よく行なえるので、これによって、半導体受光素子近傍における伝搬光の漏れ出し量を十分に増加させ、半導体受光素子との結合効率を高めることができる。また、コア部およびクラッド部に伝搬光よりも高エネルギーの光を照射することにより、この近傍のコア部およびクラッド部の屈折率を変化させて両者の屈折率差を小さくすることが容易にかつ精度よく行なえるとともに、光学特性が良好で化学的な安定性や耐久性・耐候性にもすぐれた良質の光導波路を形成することができるので、これによっても、半導体受光素子近傍における伝搬光の漏れ出し量を十分に増加させ、半導体受光素子との結合効率を高めることができる。
【0014】
このように、本発明によれば、従来のように光導波路の端面を斜めに切り欠いた反射面を作製する必要がなく、光導波路に対する局所的な加熱のみの比較的容易な方法により、高い結合効率をもつ光導波路と半導体受光素子との接続構造を実現することができる。
【0015】
本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造においては、半導体受光素子の近傍以外の部分における光導波路のコア部とクラッド部との屈折率差は、伝搬光の外部への漏れが少なく、また多モードの群遅延差による分散が少なくなるためには0.2%から1.5%程度としておくことが好ましく、さらに外部の光ファイバとの接続時のマッチングを良くするためには0.25%〜0.6%が好適である。
【0016】
これに対して、半導体受光素子近傍の部分における光導波路のコア部とクラッド部との屈折率差は、その規格化伝搬定数が約10%以上小さくなる変化を示すように小さくしておくことが好ましい。このように屈折率差を小さくすることにより、伝搬光に対する閉じ込めが弱くなって漏れ出し光が多くなり、半導体受光素子に対して十分な光量の漏れ出し光を入射させて受光させることができる。
【0017】
また、本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造によれば、光導波路のクラッド部の厚さは、コア部周辺のクラッド部も伝搬光の伝搬する領域であることから、伝搬光を低損失に伝搬するためにはコア部のサイズの1.5倍程度の厚さとしておくことが好ましい。例えば、シングルモードの光導波路においてはコア部のサイズは約5μm以上、例えば約5μm〜8μmが一般的であるので、これに対するクラッド部の厚さは約7.5μm以上、例えば約7.5μm〜12μmとしておくことが好ましい。
【0018】
そして、半導体受光素子近傍の部分における光導波路に対しては、半導体受光素子の近傍におけるモードフィールド径を大きくし、かつ光接続損失を小さくするためには、半導体受光素子の受光部に漏れ出し光が達する前のコア部とクラッド部との屈折率差を小さく変化させる部分の長さを長くとり、屈折率差の変化を緩やかなものとしておく方がよい。一方、光信号を伝搬させることを目的とする通常の光導波路部分では、伝搬光の閉じ込めを十分にして放射損失の少ない状態にするために、コア部とクラッド部との屈折率差を変化させないことが望ましい。したがって、光信号を伝搬させることを目的とする通常の光導波路部分におけるコア部とクラッド部との屈折率差に応じて、半導体受光素子近傍において屈折率差を変化させる部分の範囲を長くしたり短くしたりする必要があるが、一般的な光回路の光導波路においては、伝搬光の閉じ込めと漏れ出しとを適正に両立させるためには、半導体受光素子近傍において屈折率差を変化させ始める部分から半導体受光素子の受光部までの長さは、約3mm以下としておくことが望ましい。
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造を詳細に説明する。
【0020】
図1および図2は、それぞれ本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造の実施の形態の例を示す断面図である。
【0021】
図1に示す例では、基板11上に半導体受光素子12上が固定されて配置され、その上に下部クラッド部13a・コア部14a・上部クラッド部15aから構成される光導波路16が形成されている。半導体受光素子12の近傍の光導波路16においては、半導体受光素子12近傍のコア部14bと半導体受光素子12近傍の下部クラッド部13bおよび上部クラッド部15bとの屈折率差を、コア部14aと下部クラッド部13aおよび上部クラッド部15aとの屈折率差と比較して小さくしてある。この結果、入射端17から光導波路16に入射された光を光導波路16のコア部14を伝搬させると、この伝搬光は半導体受光素子12の近傍で漏れ出しが増大し、この漏れ出し光を半導体受光素子12に高い結合効率で受光させることができるものとなる。
【0022】
また、図2に示す例では、基板21上に半導体受光素子22上が固定されて配置され、その上に下部クラッド部23a・コア部24a・上部クラッド部25から構成される光導波路26が形成されている。半導体受光素子22の近傍の光導波路26においては、半導体受光素子22近傍のコア部24bと半導体受光素子22近傍の下部クラッド部23bとの屈折率差を、コア部24aと下部クラッド部23aの屈折率差と比較して小さくしてある。そして、半導体受光素子22近傍のコア部24bと半導体受光素子22近傍の上部クラッド部25との屈折率差は、この半導体受光素子22近傍以外の部分と同様に、コア部24bと下部クラッド部23bとの屈折率差と比較して大きくなっている。この結果、入射端27から光導波路26に入射された光が光導波路26のコア部24を伝搬するとき、この伝搬光は半導体受光素子22の近傍において上部への漏れ出しは減少し、下部への漏れ出しは増大することとなり、この下部への漏れ出し光を半導体受光素子22に高い結合効率で受光させることができるものとなる。
【0023】
ここで、本発明に用いる光導波路としては、半導体受光素子近傍のクラッド部および/またはコア部について、局所的にその屈折率を変化させることができ、しかも生産性に優れる光学材料を使用することが好ましい。特に、クラッド部にシロキサン系ポリマを用い、コア部に金属、例えばチタン(Ti)を含有したシロキサン系ポリマを用いた光導波路とすれば、ポリマ膜を形成する際の熱処理による重合反応によってより多くのシロキサン結合が生成されて強固な膜が形成されるものであるが、膜を形成した後にも、十分な熱量で加熱を行なうとさらに重合が進んでより多くのシロキサン結合が生成され、同時に有機官能基が分解除去されるため、膜の屈折率を小さくすることができることから、本発明の接続構造にとって好適なものとなる。なお、この加熱により屈折率が小さくなる変化は、金属含有シロキサン系ポリマの方が金属アルコキシドを添加しないものよりも大きく、また金属アルコキシドの添加量が多いシロキサン系ポリマの方が少ないものよりも大きいため、これらを組み合わせてコア部およびクラッド部を形成し、その半導体受光素子近傍のコア部およびクラッド部を局所的に加熱することによって、この加熱部のコア部とクラッド部との屈折率差を所望通りに小さくすることができる。
【0024】
このような光導波路に好適に使用されるシロキサン系ポリマとしては、基本的にポリマの骨格にシロキサン結合が含まれている樹脂であればよく、例えばポリフェニルシルセスキオキサン・ポリメチルフェニルシルセスキオキサン・ポリジフェニルシルセスキオキサン等がある。また、コア部に含有させる金属としてはチタン(Ti)に限られるものではなく、ゲルマニウム(Ge)・アルミニウム(Al)・エルビウム(Er)等も使用できる。これらの金属を含有したコア部を形成するには、その金属アルコキシドを添加したシロキサン系ポリマ膜形成用溶液を基板上で熱重合させて金属含有シロキサン系ポリマ部を形成し、これを所望の形状・寸法に加工すればよい。さらに、クラッド部に用いるシロキサン系ポリマにも上記と同様の金属を含有させてもよく、その場合はコア部との含有量の差により屈折率差を設けるようにすればよい。
【0025】
半導体受光素子近傍におけるコア部とクラッド部との屈折率差を小さくする手段・方法としては、赤外線ランプの照射光を集光して加熱する等の方法がある。光導波路がシロキサン系ポリマから成る場合には、100℃〜400℃程度の加熱で屈折率を変化させることができるため、基板に対して加熱によるダメージを与えることもほとんどなく、屈折率差を容易に制御できて、伝搬光を漏れ出させて半導体受光素子に高い結合効率で受光させることができる。
【0026】
また、赤外線ランプの他にも、光導波路の半導体受光素子近傍のみをスポット的に必要な温度に加熱することができる加熱源であれば、種々の光源あるいは熱源を用いることができる。例えば、集光したハロゲンランプや赤外線レーザ・可視光、あるいは小型ヒータ等が使用可能である。そして、加熱温度の制御は、例えば赤外線レーザ光を利用する場合であれば、その赤外線レーザ光のパワーと照射時間とを制御することによって行なうことができる。
【0027】
ここで、シロキサン系ポリマを例にとって、コア部およびクラッド部の加熱に対する屈折率の変化の様子の例を図5に線図で示す。図5において、横軸は加熱温度、縦軸は屈折率を表し、白四角はチタン含有シロキサン系ポリマの屈折率のTE成分の実測値を、黒丸はチタン含有シロキサン系ポリマの屈折率のTM成分の実測値を、黒四角はシロキサン系ポリマの屈折率のTE成分の実測値を、白丸はシロキサン系ポリマの屈折率のTM成分の実測値を示しており、実線はTEモードの漸近線を、破線はTMモードの漸近線を示している。
【0028】
図5に示すように、コア部およびクラッド部の屈折率は加熱温度に対してそれぞれ直線的に変化しており、所定の温度まで加熱することによって図中の2本の実線間および破線間の間隔で表されるようにコア部とクラッド部との屈折率差も変化することとなる。そして、この例の場合では、より高い温度で加熱することで屈折率差が徐々に小さくなっており、このようにして屈折率差を小さくした部分を半導体受光素子近傍に設けることにより、伝搬光の漏れ出しを増大させ、半導体受光素子に高い結合効率で受光させることができる光導波路と半導体受光素子の接続構造を作製することができる。
【0029】
また、本発明における光導波路に用いる、伝搬光より高エネルギーの光の照射により屈折率が変化する光学材料としては、具体的には光照射により膜材料の分解や重合、あるいは色中心の生成等の膜材料の構造に変化を生じ、これにより屈折率が変化する材料、特に光照射量とともに屈折率が小さくなる傾向を有する材料を用いればよい。
【0030】
このような光学材料としては、伝搬光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成し、それによって屈折率が小さくなる傾向を有するシロキサン系ポリマを用いることが好ましい。
【0031】
このようなシロキサン系ポリマにより光導波路を形成するには、シリコン原子にOH基およびメチル基等のアルキル基やフェニル基等の有機成分が末端基として付帯したモノマーあるいはオリゴマーと、光反応型の重合促進剤、ならびに有機溶媒から成るシロキサンポリマ膜形成用溶液を下部クラッド部が形成された基板上に塗布した後に光照射を行ない、脱水重合もしくは脱アルコール重合によりシロキサン結合を形成し、その後、加熱処理によって膜中に残留した溶媒や重合促進剤、また水やアルコール等の重合の際の副生成物等を膜外へ排出することによって得られたシロキサン結合を主骨格とするシロキサン系ポリマ膜を形成し、これに所望のコア部またはクラッド部の形状となるようにパターニング加工を施せばよい。このとき、シロキサン系ポリマ膜を形成する方法としては、スピンコート法やディップコート法・スプレーコート法・ローラーコート法・真空蒸着法等を用いればよい。また、このシロキサン系ポリマ膜形成用溶液に用いる上記モノマーあるいはオリゴマーはその種類が単一種でも複数種でもよく、その末端基のメチル基やフェニル基等の有機成分はH原子がハロゲン化あるいは重水素化されていてもよい。
【0032】
このような光学材料で形成した光導波路のコア部に対し、下部クラッド部および上部クラッド部は、それぞれコア部よりも小さな屈折率を有する光学材料により形成する。これら下部クラッド部および上部クラッド部には、コア部と同様に伝搬光より高エネルギーの光照射により屈折率が変化し、光照射量の増加につれて屈折率が所定範囲内で小さくなる光学材料からなり、コア部よりも小さな屈折率を有するものを用いて形成してもよい。特に、コア部を上記のシロキサン系ポリマにより形成した場合には、同様のシロキサン系ポリマにより形成することにより、光学特性が良好で化学的な安定性や耐久性・耐候性にも優れた良質の光導波路を形成することができる。
【0033】
なお、上部クラッド部は必ずしも必要なものではなく、光導波路の仕様によっては、下部クラッド部およびコア部が大気あるいは真空に曝されていてもよい。
【0034】
ここで、伝搬光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成することによって得られるシロキサン系ポリマを例にとって、コア部の光照射量に対する屈折率の変化の様子の例を図6に線図で示す。
【0035】
図6において、横軸は膜形成の際の光照射量(単位:mJ/cm2)であり、縦軸は得られたシロキサン系ポリマ膜の屈折率である。また、図中の黒点は測定結果を示している。ここで、照射した光には、伝搬光よりも高エネルギーの光として、重合促進剤に対して有効なエネルギー成分を有する高圧水銀ランプの紫外光を用いた。
【0036】
図6より分かるように、膜形成の際の光照射量を多くしていくと、光照射当初はシロキサン結合の形成が促進されて強固なシロキサン骨格が形成され、シロキサン系ポリマ膜の屈折率は所定の値まで一旦急激に大きくなる。そして、シロキサン系ポリマ膜の屈折率は材料の特性に応じてある光照射量で最大となり、その後、光照射量の増加につれて、さらにシロキサン結合の形成が進み、材料の特性に応じた所定の値を下限値として屈折率が小さくなっていく。
【0037】
こうした特性を有するシロキサン系ポリマを光導波路のコア部として用いた場合には、伝搬光よりも高エネルギーの光をマスクの開口部から照射すると、コア部の屈折率は光照射された変化領域において小さくなり、従って、コア部と下部クラッド部の屈折率差が小さくなって、半導体受光素子近傍におけるモードフィールド径を大きくすることができる。
【0038】
また、下部クラッド部および上部クラッド部にもコア部と同様のシロキサン系ポリマを用いた場合は、下部クラッド部および上部クラッド部にコア部よりも相対的に多くの照射量の光を照射することによって、クラッド部の屈折率をコア部の屈折率よりも小さくして光導波路を形成すればよい。
【0039】
この場合、光導波路に伝搬光よりも高エネルギーの光をマスクの開口部から照射することにより、コア部と下部クラッド部および上部クラッド部の屈折率は、この光が追加されて照射された領域において、コア部の屈折率は図6のグラフに示した光照射量が比較的少ない領域におけるように減少し、下部クラッド部および上部クラッド部の屈折率は図6のグラフに示した光照射量が比較的多い飽和領域近傍におけるようにあまり減少しない。その結果、コア部と下部クラッド部および上部クラッド部との屈折率差が小さくなり、半導体受光素子近傍のモードフィールド径を大きくすることができる。
【0040】
本発明において、光導波路の半導体受光素子近傍のコア部とクラッド部との屈折率差を小さくするために使用される、伝搬光よりも高エネルギーの光としては、伝搬光として一般的に近赤外光や赤外光が用いられていることから、通常はこれらより波長が短く高エネルギーの可視光や紫外光、あるいはX線等を使用することとなる。このような伝搬光よりも高エネルギーの光を半導体受光素子の近傍に開口部を有するフォトマスクを通して照射することによって、あるいは焦点を絞って直接に照射することによって、この照射部のコア部とクラッド部との屈折率差を所望通りに小さくすることができる。
【0041】
なお、光導波路における半導体受光素子近傍で屈折率差を小さくした部分とそれ以外の部分との境界は、この境界で段階的すなわち急激な屈折率の変化がある場合にはその屈折率の変化による界面での反射が生じてしまい、また、モードフィールド径が急激な変化をもって接続されるとモードフィールド径の不整合による接続損失が大きくなる問題が発生することとなる。したがって、境界での急激な屈折率差の変化を小さくするために、光照射による加熱によって屈折率差を変化させる際には、その光照射の中心部からその周囲にかけて徐々に温度が低くなるような加熱方法または加熱条件を選び、また、高エネルギーの光の照射によって屈折率差を変化させる際にも、その光照射の中心部からその周囲にかけて徐々に光照射量が少なくなるような照射方法または照射条件を選び、境界付近に緩やかな屈折率差の変化を生じさせるようにしておくことが好ましい。
【0042】
【実施例】
次に、本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造について具体例を説明する。
【0043】
〔例1〕
図1に示すように、InGaAsから成るPIN型の半導体受光素子12が配置されたGaAs基板11上に、クラッド部13a・13b・15a・15bがシロキサン系ポリマから成り、コア部14a・14bがチタン含有シロキサン系ポリマから成るステップインデックス型の光導波路16を形成した。光導波路16の各部の厚さは、下部クラッド部13a・13bを8μm・コア部14a・14bを5μm・上部クラッド部15a・15bを8μmとした。半導体受光素子12の受光部の大きさは、直径20μm・厚さ5μmとした。この光導波路16の半導体受光素子12の近傍にスポット径が2.4mmの赤外線ランプの照射光を照射することによって、この半導体受光素子12近傍のコア部14bおよびクラッド部13b・15bを加熱して、この部分のコア部14bとクラッド部13b・15bとの屈折率差を他の部分におけるコア部14aとクラッド部13a・15aとの屈折率差に対して変化させて小さくした。このときの赤外線ランプのパワーは30W、照射時間は3秒とした。この条件は、照射光による照射部分を約300℃まで加熱したことに相当する。
【0044】
その結果、光導波路16は、上部クラッド部15aおよび下部クラッド部13aのシロキサン系ポリマの屈折率がn1=1.442、コア部14aのチタン含有シロキサン系ポリマの屈折率がn2=1.453で、両者の屈折率差はΔn=0.7%であったが、赤外線ランプの照射光により加熱した後の半導体受光素子12近傍における上部および下部クラッド部15b・13bの屈折率はn1’=1.441、半導体受光素子12近傍のコア部14bの屈折率はn2’=1.4456に変化し、両者の屈折率差はΔn=0.3%と小さくなった。
【0045】
これについて、加熱部の中心で光導波路16に垂直に基板11を切断し、入射面17側から光導波路16に光を入射して切断部の端面におけるモードフィールド径を測定したところ、7.2μmとなっており、伝搬光の漏れ出しが広がっていることが確認できた。
【0046】
〔例2〕
〔例1〕の比較例として、〔例1〕と同様にして、InGaAsから成るPIN型の半導体受光素子が固定されたGaAs基板上に、クラッド部がシロキサン系ポリマから成り、コア部がチタン含有シロキサン系ポリマから成るステップインデックス型の光導波路を形成した。これについても〔例1〕と同様に、光導波路の各部の厚さは、下部クラッド部を8μm・コア部を5μm・上部クラッド部を8μmとし、半導体受光素子の受光部の大きさは直径20μm・厚さ5μmとした。
【0047】
この比較例については、赤外線ランプによる半導体受光素子近傍への光の照射は行なわなかった。したがって、光導波路における上部クラッド部および下部クラッド部のシロキサン系ポリマの屈折率はn1=1.442、コア部のチタン含有シロキサン系ポリマの屈折率はn2=1.453で、両者の屈折率差はΔn=0.7%である。
【0048】
これについて、〔例1〕において加熱した同じ箇所で光導波路に垂直に基板を切断し、入射面側から光を入射して、切断部端面におけるモードフィールド径を測定した結果、5.5μmとなった。
【0049】
この結果、〔例2〕に対して〔例1〕の切断部端面におけるモードフィールド径は、5.5μmに対して7.2μmへと1.7μm大きくなったことが分かる。したがって、本発明の接続構造においては、半導体受光素子の近傍のモードフィールド径が大きくなっていることからその近傍での光導波路の伝搬光の閉じ込めが弱まっており、伝搬光の漏れ出しが増加していることが分かる。そして、この結果から、本発明の接続構造によれば、半導体受光素子近傍における光導波路についてそのコア部から離れたところでの電界の強度が相対的に強くなることが分かり、基板上の光導波路の近傍で伝搬光の伝搬方向に対して直交する方向に配置された半導体受光素子に十分な光量の伝搬光を受光させることができ、光導波路と半導体受光素子との結合効率を高めることができることが確認できた。
【0050】
〔例3〕
図1に示すように、InGaAsから成るPIN型の半導体受光素子12が配置されたGaAs基板11上に、クラッド部13a・13b・15a・15bがシロキサン系ポリマから成り、コア部14a・14bがチタン含有シロキサン系ポリマから成るステップインデックス型の光導波路16を形成した。
【0051】
この例では、シリコン原子にOH基とメチル基およびフェニル基とが末端基として付帯したモノマーと、光反応型の重合促進剤と、有機溶媒とから成るシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコートにより塗布し、100℃/30分間の加熱を行ない、有機溶媒を蒸発させた。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に1500mJ/cm2の光照射量で照射して150℃/60分間の加熱処理を行ない、膜厚15μm・屈折率1.4367のシロキサン系ポリマ膜からなる下部クラッド部13a・13bを形成した。
【0052】
次に、この下部クラッド部上に、下部クラッド部を形成した際に用いたシロキサン系ポリマ膜形成用溶液をスピンコート法により塗布し、100℃/30分間の加熱処理を行ない、有機溶媒を蒸発させて、コア部14a・14bおよびクラッド部15a・15bを形成するためのシロキサン系ポリマ膜からなる層を形成した。その層の厚さは5μmとした。その後、高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に100mJ/cm2の光照射量で照射した。
【0053】
さらに、コア部となる領域の部分を遮光するフォトマスクを用いて、光導波路のクラッド部になる部分(コア部と同じ層でコア部の両側の横クラッド部に相当)に高圧水銀ランプの紫外光を基板全面に1500mJ/cm2の光照射量で照射した。
【0054】
次に、屈折率が1.4367で膜厚が10μmの、光照射でほとんど屈折率が変化しないシロキサン系ポリマを上部クラッド部15a・15bとしてコア部の上に形成した。
【0055】
以上により、屈折率が1.4367で厚さが15μmのクラッド部上に、屈折率が1.440で高さが5μmのコア部と、屈折率が1.4367でコア部と同じ層に形成されたクラッド部、および屈折率が1.4367で厚さが5μmの上部クラッド部を有する光導波路16を作製した。
【0056】
このようにして作製した光導波路16の半導体受光素子12の近傍に、開口部分を有するフォトマスクを用いて、高圧水銀ランプの紫外光で400mJ/cm2の光照射量を行なった。その結果、半導体受光素子12の近傍における光導波路16のコア部14bの屈折率は1.4380に、半導体受光素子12の近傍における下部クラッド部13b・上部クラッド部15bおよびコア部14bと同じ層でコア部14bの両側に形成された横クラッド部の屈折率は1.4360に変化し、図1に示す屈折率変化領域の間でコア部14bおよび下部クラッド部13b・上部クラッド部15b・横クラッド部が光導波路作製時の屈折率から徐々に変化することによって、コア部14bおよびクラッド部13b・15bの屈折率差が徐々に小さくなり、伝搬光の漏れ出しを約0.5dB増加させることができた。そして、この結果から、半導体受光素子12近傍における光導波路16についてそのコア部14bから離れたところでの電界の強度が相対的に強くなり、本発明の接続構造によれば、基板11上の光導波路16の近傍で伝搬光の伝搬方向に対して直交する方向に配置された半導体受光素子12に十分な光量の伝搬光を受光させることができ、光導波路16と半導体受光素子12との結合効率を高めることができることが確認できた。
【0057】
なお、以上はあくまで本発明の実施の形態の例示であって、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や改良を加えることは何ら差し支えない。例えば、半導体受光素子の近傍の光導波路のコア部とクラッド部との屈折率に分布を与えて、半導体受光素子に近づくほど屈折率差を小さくし、伝播損失を抑えるなどとしてもよい。
【0058】
また、上記の実施例では基板にGaAs基板を使用したが、これはGaAs基板に限るものでなく、例えばシリコン基板やAlNセラミックス基板・Al23セラミックス基板・ガラスセラミックス基板等を用いることもできる。
【0059】
また、半導体受光素子としては、図1および図2に示したように基板上に直接固定して配置したものの他にも、基板あるいは基板上に形成した光回路中に埋設されるように形成されたいわゆる埋め込み型の半導体受光素子を用いてもよく、光導波路の上部クラッド部の上面側に受光部をコア部側に向けて載置固定して配置された通常の半導体受光素子を用いてもよい。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明の光導波路と半導体受光素子の接続構造によれば、基板上に形成された、クラッド部とこのクラッド部中のコア部とを有する光導波路による伝搬光を、基板上で光導波路の近傍に配置された半導体受光素子に受光させるための光導波路と半導体受光素子との接続構造であって、光導波路はコア部に金属をクラッド部よりも多く含有したシロキサン系ポリマであって、加熱を行なうとさらに重合が進んでより多くのシロキサン結合が生成されて屈折率が小さくなるもの、あるいは伝搬光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成して屈折率が小さくなるものから成り、光導波路の半導体受光素子近傍におけるコア部とクラッド部との屈折率差を、コア部およびクラッド部を加熱することにより、あるいはコア部およびクラッド部に伝搬光よりも高エネルギーの光を照射することにより小さくして、コア部から漏れ出させた伝搬光を半導体受光素子に受光させるようにしたことから、半導体受光素子近傍での光導波路における伝搬光の閉じ込めが弱まってコア部から漏れ出し、光導波路のモードフィールド径が大きくなってそのコア部から離れたところでの電界の強度が相対的に強くなることから伝搬光が多く漏れ出すことになるため、基板上の光導波路の近傍で伝搬光の伝搬方向に対して直交する方向に配置された半導体受光素子に十分な光量の伝搬光を受光させることができ、光導波路と半導体受光素子との結合効率を高めることができる。
【0061】
また、本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造によれば、光導波路がシロキサン系ポリマから成り、コア部に金属をクラッド部よりも多く含有したものとしたことから、この光導波路の半導体受光素子近傍の部分を局所的に加熱することにより、または伝搬光よりも高エネルギーの光を局所的に照射することにより、この近傍のコア部およびクラッド部の屈折率を変化させて両者の屈折率差を小さくすることが容易にかつ精度よく行なえるとともに、光学特性が良好で化学的な安定性や耐久性・耐候性にもすぐれた良質の光導波路を形成することができるので、これによって、半導体受光素子近傍における伝搬光の漏れ出し量を十分に増加させ、半導体受光素子との結合効率を高めることができる。
【0062】
以上により、本発明によれば、基板上に形成された光導波路とこの基板上で光導波路の近傍に配置された半導体受光素子とについて、高い結合効率でもって光導波路の伝搬光を半導体受光素子に受光させることができる光導波路と半導体受光素子との接続構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造の実施の形態の例を示す断面図である。
【図2】本発明の光導波路と半導体受光素子との接続構造の実施の形態の例を示す断面図である。
【図3】従来の光導波路と半導体受光素子との接続構造の例を示す断面図である。
【図4】従来の光導波路と半導体受光素子との接続構造の他の例を示す断面図である。
【図5】シロキサン系ポリマから成るクラッド部および金属含有コア部の加熱温度に対する屈折率変化の様子を示す線図である。
【図6】シロキサン系ポリマから成る光学材料の光照射量に対する屈折率の変化の様子の例を示す線図である。
【符号の説明】
11、21・・・・・基板
12、22・・・・・半導体受光素子
13a、23a・・・下部クラッド部
13b、23b・・・半導体受光素子近傍の下部クラッド部
14a、24a・・・コア部
14b、24b・・・半導体受光素子近傍のコア部
15a、25・・・・上部クラッド部
15b・・・・・・半導体受光素子近傍の上部クラッド部
16、26・・・・・光導波路

Claims (2)

  1. 基板上に形成された、クラッド部と該クラッド部中のコア部とを有する光導波路による伝搬光を、前記基板上で前記光導波路の近傍に配置された半導体受光素子に受光させるための光導波路と半導体受光素子との接続構造であって、前記光導波路は前記コア部に金属を前記クラッド部よりも多く含有したシロキサン系ポリマであって、加熱を行なうとさらに重合が進んでより多くのシロキサン結合が生成されて屈折率が小さくなるものから成り、前記光導波路の前記半導体受光素子近傍における前記コア部と前記クラッド部との屈折率差を、前記コア部および前記クラッド部を加熱することにより小さくして、前記コア部から漏れ出させた前記伝搬光を前記半導体受光素子に受光させるようにしたことを特徴とする光導波路と半導体受光素子との接続構造。
  2. 基板上に形成された、クラッド部と該クラッド部中のコア部とを有する光導波路による伝搬光を、前記基板上で前記光導波路の近傍に配置された半導体受光素子に受光させるための光導波路と半導体受光素子との接続構造であって、前記光導波路は前記コア部に金属を前記クラッド部よりも多く含有したシロキサン系ポリマであって、伝搬光よりも高エネルギーの光の照射によりシロキサン結合を形成して屈折率が小さくなるものから成り、前記光導波路の前記半導体受光素子近傍における前記コア部と前記クラッド部との屈折率差を、前記コア部および前記クラッド部に伝搬光よりも高エネルギーの光を照射することにより小さくして、前記コア部から漏れ出させた前記伝搬光を前記半導体受光素子に受光させるようにしたことを特徴とする光導波路と半導体受光素子との接続構造。
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