JP3795649B2 - トンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、プラスチックシートやゴムシート等からなる防水シートをトンネルの周面へ取付ける際に用いる赤外線照射装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、地山を掘削してなる鉄道車両用トンネルおよび自動車用トンネル等は、その横断面形状がほぼ蒲鉾状に形成されることが多い。この種のトンネルに対する防水施工は、その底部を除く周面に、防水シートの裏面に緩衝材を接合したシート防水材を配設する手法が一般的であり、地山からの湧水等は緩衝材および防水シートを介して、トンネルの両側部へ導かれ底面に排水される。
【0003】
従来、このシート防水材のトンネル周面への取付けは、図1に示すような、手作業で行われている。すなわち、トンネルT内に配置した雛壇状の台車20上において、作業者がシート防水材21をトンネル周面へ押付けている間に、別の作業者が押さえプレート22を、シート防水材21の緩衝材の側端部に設けた防水シートとの非接合部分に当て、この押さえプレート22の上から釘を地山側に打って固定する、作業を、トンネルの頂部から下方へ順次行うことによって、シート防水材21がトンネル周面へ取り付けられる。以上の作業が終了したならば、同様の作業を、先のシート防水材の取り付け領域に隣接して行い、隣接するシート防水材の防水シート側端相互を溶着機にて接合することによって、シート防水材の取付けはトンネルの長手方向へと進められる。
【0004】
ところで、近年の交通量の増加に対処するために、鉄道の複々線化や道路の複数車線化が推進されるのに伴い、従来に比べて拡幅されたトンネルが必要となってきている。例えば、在来のトンネルの上記周面の長さ(以下、周長という)が20m程度であったものを、40m程度にまで拡げた、大断面を有するトンネルが施工されている。
【0005】
このような大断面トンネルの防水施工においては、その周長の増大に応じて、在来のものよりも大きなサイズの防水シートが当然必要になる。しかしながら、図1に示した従来の防水シートの取付け方法では、サイズ、そして重量が増加した防水シートを直接作業者が扱わなくてはならないため、作業者の負担が増大する結果、作業の安全性の低下、さらに作業速度の低下が問題となっていた。とりわけ、在来の防水シートの複数枚を工場で接合して一体化した、幅広かつ長大の防水シートは、人力によってトンネル周面に押しつけることは不可能であり、新たな施工方法の提案が待たれている。
【0006】
そこで、発明者は、とくに大断面トンネルに対しても、簡単かつ確実に、しかも優れた施工性の下で、防水シートの取付けを実現し得る手法を、先に特願平9−308635号明細書において提案した。
【0007】
すなわち、この手法は、防水シートを取付けるトンネルの周面に、合成樹脂製の取付具を周方向に所定の間隔にて複数固着したのち、トンネル周面に沿って配置したアーチ状レール上に、トンネル周面の頂部からその両側へ延在する長さの防水シートを展開し、次いで防水シートを載せたアーチ状レールを押し上げて、防水シートをトンネル周面に予め固着した各取付具に押付け、その後、防水シートの外側から取付具に向けて、防水シートは透過する赤外線を照射し、取付具の防水シートとの接触面を加熱溶融して取付具を防水シートに溶着し、防水シートをトンネル周面に取付けることを特徴とするものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、取付具を防水シートに溶着するには、防水シートを取付具に押付けながら防水シートの外側から取付具に向けて赤外線を照射する作業が不可欠であり、この作業に専用の赤外線照射装置が必要となる。すなわち、この発明の目的は、赤外線を利用して取付具を防水シートに溶着する作業に有利に適合する、赤外線照射装置を新たに提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の要旨構成は、次の通りである。
1.防水シートを取付けるトンネル周面の複数箇所に間隔を置いて配置した、合成樹脂製の取付具に、防水シートを押付けながら、該防水シート側から赤外線を照射して取付具の表面を加熱溶融し、取付具に防水シートを固着する際に用いる、赤外線照射装置であって、赤外線の照射源および該照射源から照射される赤外線の均等な照射分布を導く反射板をそなえ、該反射板の開口をプロテクトガラスにて覆って成ることを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
【0011】
2.上記1または2において、プロテクトガラスに接触させて配置した冷却水管を有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
【0012】
3.上記1または2において、プロテクトガラスの内表面上に配置した温度センサーおよび、該温度センサーにて測定したプロテクトガラスの温度に基づいて、プロテクトガラスの温度を該ガラスに防水シートが溶着する温度未満とする、照射源の出力制御手段を有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
【0013】
4.上記1ないし3のいずれかにおいて、防水シートに反射板の開口縁を当接したときにオンとなるリミットスイッチを有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
【0014】
5.上記1ないし4のいずれかにおいて、赤外線照射装置を扱う際の把手にグリップスイッチを有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
【0015】
【発明の実施の形態】
さて、この発明の赤外線照射装置を適用する、トンネル周面への防水シートの取付け方法について、図2〜8を参照して詳しく説明する。
例えばEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)からなる防水シート1をトンネル2周面に取り付けるには、地山3に設けたトンネル2の周面に一次覆工コンクリート4を薄く密着させたのち、ここに防水シートの自動展張機能付きの台車5を配置し、この台車5を用いて作業を行う。
【0016】
まず、図3に示す、合成樹脂製の防水シートの取付具6を、一次覆工コンクリート4の周方向に所定の間隔で複数並べた列がトンネルの長手方向に複数列となる配置で固着する。この作業は、台車5上にて、例えばコンクリート釘打ち機などを用いて適宜行う。取付具6は、合成樹脂製の円盤であり、その中央部の凹所に釘打面7を有し、この釘打面7の周囲に防水シートの接合面8を設けて成る。
なお、取付具6は、トンネル周面において、1〜2個/m2 程度の密度となる配置で、一次覆工コンクリート4上に、図4に示すように、釘打面7へ釘9を打付けることによって固着する。
【0017】
その後、防水シート1の長さ方向の両端を長さ中心に向かって巻いて2つのコイルを繋いだ状態に収納した、いわゆる眼鏡巻きにした防水シート1を、台車5に昇降装置10を介して設置した、トンネル周面の頂部の両側で均等に防水シート1を支持するのに十分な周長のアーチ状レール11の頂部付近に、例えばリフトなどを利用して配置する。次いで、収納状態の防水シート1をアーチ状レール11上に展開する。
【0018】
このアーチ状レール11は、その頂点の両側に均等に延びる長円弧部分と、その両側に各々配置された短円弧部分の集合であり、各円弧部分が昇降装置10によってトンネル周面に対して進退可能である。とくに、広幅の防水シート1を取り付けるために、図5に示すように、2本のアーチ状レール11をトンネル長手方向に並列に配置して使用することが好ましい。
【0019】
次いで、図6に示すように、アーチ状レール11を昇降装置10にて押し上げて防水シート1をトンネル周面に押付ける。この状態にて、防水シート1は、予め固着した各取付具6と接触する。その後、図7に示すように、防水シート1の外側から赤外線12を取付具6に向けて照射する。この赤外線12は防水シート1を透過させて取付具6に到達させることが肝要である。そして、取付具6の接合面8を選択的に加熱溶融して接合面8を防水シート1に溶着し、防水シート1を取付具6に固定する。この作業を、各取付具6に対して行うことによって、防水シート1をトンネル周面の周方向の複数点、さらに図8に示すように、トンネル長手方向の複数点において固定することができる。なお、取付具6の位置は、防水シート1を透明または半透明のものとすることによって、容易に確認され、赤外線を取付具6に向けて確実に照射できる。
【0020】
なお、取付具6を防水シート1に確実に溶着するために、取付具6は、合成樹脂材中に赤外線吸収剤を配合して作製することが有利である。例えば、合成樹脂材として上記EVAを使用し、赤外線吸収剤としてカーボンブラックを0.01〜20wt%配合したものが有利に適合する。
また、赤外線は防水シート1を透過して取付具6に到達させる必要があり、そのためには、波長が1.0 〜2.5 μmの範囲の赤外線を用いることが好ましい。
【0021】
ここで、図7に示したように、防水シート1の外側から赤外線12を取付具6に向けて照射する際に用いる、赤外線照射装置について、図9を参照して詳しく説明する。なお、同図(a) は正面図、同図(b) は側断面図および同図(c) は背面図である。
すなわち、赤外線照射装置13は、例えばハロゲンランプなどの赤外線の照射源14、この照射源14から照射される赤外線を反射して外部へ均等な照射分布として導く反射板15および、該反射板 15 の開口 16 を覆うプロテクトガラス 17 を基本構造とし、さらに該プロテクトガラス17に接触させて、その周端縁に沿って配置した冷却水管18をそなえて成る。該冷却水管18は、反射板15の背面に設置した、照射源14および反射板15の冷却に供する冷却水路19を介して、装置背面に設けた冷却水導入口20および同導出口21と連結し、装置外部から冷却水を冷却水管18に循環供給してプロテクトガラス17を冷却する仕組みとなっている。
【0022】
反射板15は、有底円筒形状であり、放物面鏡を構成する内底面および内側面における赤外線の反射成分が、反射板15の開口16において均等な分布となる、内面を有する。すなわち、反射板15の開口16出側の径方向における赤外線の照射分布を、図10に示すように、開口16付近において周端域とその内側との温度差が小さくなるため、取付具6に赤外線を照射した際に取付具6を均一に加熱することができる。
【0023】
また、赤外線照射装置13の照射源14への通電は、装置背面で把手を兼ねるグリップスイッチ22、そして装置正面のプロテクトガラス17の周囲に設けたリミットスイッチ23により行う。すなわち、グリップスイッチ22は、図11に示すように、作業者が手で握った際にオンとなるように作動し、このグリップスイッチ22をオンにするともに、リミットスイッチ23もオンとしたときに初めて、照射源14へ通電する安全設計とした。なお、リミットスイッチ23は、図11に示すように、赤外線照射装置13を防水シート1の背面に取付具6が位置する部分に押付け、プロテクトガラス17が防水シート1に接触した際に作動しオン状態となる。
【0024】
さらに、赤外線照射装置13には、プロテクトガラス17の内表面上に配置した温度センサー24および、該温度センサー24にて測定したプロテクトガラス17の温度に基づいてプロテクトガラス17の温度を防水シート1がプロテクトガラス17に溶着する温度未満とする、照射源の出力制御手段となる、例えばプログラマブルコントローラー25を有する。
【0025】
次に、赤外線照射装置13の作動および出力制御の手順について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップS1 にてプログラマブルコントローラー25に設けた電源スイッチをオンに、そしてステップS2 にて赤外線照射装置13背面の安全スイッチ26をオンにしたのち、ステップS3 にてグリップスイッチ22の開閉およびステップS4 にてリミットスイッチ23の開閉を判断し、ともにオンであると判定したならば、初めて照射源14へ通電する。すなわち、ステップS5 にて照射源14に高出力を与える処理を行って赤外線の照射を開始する。そして、ステップS6 にて、赤外線の照射過程において上記温度センサー24で検出したプロテクトガラス17の温度が温度Td をこえたと判断した場合は、ステップS7 にて照射源14での出力を低い領域に切り換える処理を行う。一方、プロテクトガラス17の温度が温度Td 以下である場合は、そのまま高出力での赤外線照射を続行する。
【0026】
ここで、温度Td は、プロテクトガラス17に防水シート1が溶着する温度未満の温度範囲の上限であり、プロテクトガラス17の温度をこの温度Td に保持することによって、プロテクトガラス17に防水シート1が溶着するのを回避しつつ、取付具6に適切な加熱を行うことができる。ちなみに、温度Td は、防水シート1の融点、プロテクトガラス17の防水シート1との接触時間、取付具6の溶着温度などに基づいて、算出すればよい。
【0027】
次いで、ステップS8 にて、再び温度センサー24で検出したプロテクトガラス17の温度と温度Td との対比を行って、プロテクトガラス17の温度が温度Td 以下になった場合は、ステップS5 に戻って、照射源14に高出力を与える。一方、プロテクトガラス17の温度が温度Td をこえている場合は、そのまま低出力での赤外線照射を続行する。
【0028】
以上で述べた出力制御を行うことによって、プロテクトガラス17の温度はほぼTd に保持され、プロテクトガラス17に防水シート1が溶着することなく、取付具6のみを加熱溶融して取付具6を防水シート1に溶着することができる。
【0029】
なお、赤外線照射装置13を防水シート1に押付けて赤外線を照射し、取付具6を防水シート1に溶着したのち、該装置13を防水シート1から離すのを容易にするため、プロテクトガラス17の外表面にフッ素コーティングを施すことが、好ましい。
【0030】
【発明の効果】
この発明によれば、赤外線を利用して、トンネル周面に固着した取付具を防水シートに溶着する作業、すなわち防水シートを取付具に押付けながら防水シートの外側から取付具に向けて赤外線を照射する作業に適した、赤外線照射装置が提供されるから、簡単かつ確実に、しかも優れた施工性の下で、防水シートの取付けを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の防水シートの取付け方法を示す模式図である。
【図2】この発明の防水シートの取付け手順を示す模式図である。
【図3】防水シートの取付具を示す図である。
【図4】取付具をトンネル周面へ固着した状態を示す図である。
【図5】アーチ状レールによる防水シートの支持態様を示す図である
【図6】この発明の防水シートの取付け手順を示す模式図である。
【図7】防水シートを取付具に溶着する手順を示す模式図である。
【図8】取付具に溶着した防水シートを示す断面図である。
【図9】この発明の赤外線照射装置を示す図である。
【図10】赤外線の照射分布を示す図である。
【図11】赤外線照射装置の使用態様を示す図である。
【図12】赤外線照射装置における出力制御の手順を示す図である。
【符号の説明】
1 防水シート
2 トンネル
3 地山
4 一次覆工コンクリート
5 台車
6 取付具
7 釘打面
8 接合面
9 釘
10 昇降装置
11 アーチ状レール
12 赤外線
13 赤外線照射装置
14 照射源
15 反射板
16 開口
17 プロテクトガラス
18 冷却水管
Claims (5)
- 防水シートを取付けるトンネル周面の複数箇所に間隔を置いて配置した、合成樹脂製の取付具に、防水シートを押付けながら、該防水シート側から赤外線を照射して取付具の表面を加熱溶融し、取付具に防水シートを固着する際に用いる、赤外線照射装置であって、赤外線の照射源および該照射源から照射される赤外線の均等な照射分布を導く反射板をそなえ、該反射板の開口をプロテクトガラスにて覆って成ることを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
- 請求項1において、プロテクトガラスに接触させて配置した冷却水管を有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
- 請求項1または2において、プロテクトガラスの内表面上に配置した温度センサーおよび、該温度センサーにて測定したプロテクトガラスの温度に基づいて、プロテクトガラスの温度を該ガラスに防水シートが溶着する温度未満とする、照射源の出力制御手段を有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
- 請求項1ないし3のいずれかにおいて、防水シートに反射板の開口縁を当接したときに照射源へ通電するリミットスイッチを有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
- 請求項1ないし4のいずれかにおいて、赤外線照射装置を扱う際の把手にグリップスイッチを有することを特徴とするトンネル周面への防水シートの取付けに用いる赤外線照射装置。
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