JP3795413B2 - 画像形成方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータ等のデジタル信号から赤外線レーザを走査することにより直接製版できる、いわゆるダイレクト製版可能なネガ型画像形成材料に適用し得る画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年におけるレーザの発展は目覚しく、特に近赤外から赤外線に発光領域をもつ、高出力かつ小型のものが容易に入手できるようになった。これらのレーザは、コンピュータ等のデジタルデータにより直接印刷版を製版する(Computer to Plate:以下、適宜、CTPと省略する)際の記録光源として非常に有用である。例えば波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザは、他の波長領域に比べて出力が高いために有用である。従って、このようなレーザに対し、感応性の高い画像形成材料、即ち、レーザ照射により現像液に対する溶解性が大きく変化する画像形成材料への要望が近年高まっている。
【0003】
このような画像形成材料として、ラジカル付加重合反応を利用した画像形成材料が提案されており、通常、画像様にレーザ露光した後にアルカリ水溶液で現像し、画像が形成される。その場合露光後加熱処理を施し、その後現像を行う方式と加熱処理を施さず露光後直ちに現像を行う方式が提案されている。前者は自動現像機に加熱オーブンを取り付ける必要があるため、設備の大型化、コストアップとなる欠点がある。一方後者は加熱によるラジカル重合の促進が十分でないために露光部の硬化が進みにくく、その結果耐刷性が加熱タイプに比較して低い欠点がある。しかし加熱オーブンを必要としないユーザーメリットが大きいため、非加熱方式が待望されている。
非加熱方式で十分な耐刷性を付与する手段としては現像工程での画像部のダメージをできるだけ低減することが望ましい。例えば、特開平8−108621号公報には、光重合性組成物を用いたネガ型の画像形成材料が開示され、pHが12.5を超える強アルカリ性水溶液が用いられている。このような高いpHの現像液は、画像部へのダメージが大きく耐刷性が不十分になる問題点があった。したがって、できるだけ低いpH値で画像部へのダメージを低減すると同時に非画像部が充分に現像できる現像液を用いることで、版材性能を最も高く引き上げることが可能になる。
【0004】
現像液の観点からみると、近年の環境への対応からできるだけ現像廃液を少なくすることが要望されている。そのため、現像補充液のアルカリ濃度を上げ、現像使用液とのpH差を広げることで、現像廃液の量を低減させることが可能になるが、その補充量が僅かに変動すると、現像使用液のpHが大きく影響を受けることになるためpHを一定に保つことが困難になる。現像液中のアルカリを消費する要因は、現像液中に混入する感光性組成物中の成分に加え、炭酸ガス、その他、版材にアルミニウム基板を使用した場合その溶解に伴うものが考えられる。したがってこのいずれかの寄与を少なくできれば、現像補充液のpHをいたずらに上げなくとも廃液低減が見込める。
従来よりバッファーとして使用される珪酸塩を現像液中に含有させておくことで、珪酸化合物がアルミニウム表面へ吸着するので、アルカリを消費する原因の1つであるアルミ溶解を抑制することができ、延いては現像廃液の量の低減につながる。しかし、現像液のpHが低い状態では珪酸化合物がゲル化を引き起こし現像カスの要因となるという問題があった。
従って、ネガ型画像形成材料を現像処理するにあたり、現像液のpH値を比較的低くして画像部へのダメージを低減させて解像力も充分なものとしながら、現像廃液の排出量及び現像カスの発生を抑えることが求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、赤外線レーザを用いて記録するネガ型画像形成材料からの画像形成方法において、加熱処理を必要とせずに充分な画像強度及び解像力を達成する画像形成方法を提供することにある。さらに詳しくは、露光後加熱処理を施さずとも、耐刷性に優れた画像を形成し解像力にも優れ、現像液補充による廃液を著しく低減しかつ現像浴内に蓄積する現像カスを著しく低減可能にし、長期間安定に処理をすることができる画像形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ネガ型画像形成材料と現像液との物性に着目し、鋭意研究の結果、現像液にアルカリ珪酸塩を含ませ且つ特定のノニオン界面活性剤を現像液に含有させておくことで、pH値が比較的低い条件においても充分に非画像部が現像可能で、珪酸塩起因のゲル化が生じないということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
従って本発明は、支持体上に(A)ラジカル発生剤、(B)ラジカル重合性化合物、(C)赤外線吸収剤、及び(D)バインダーポリマーを含有する画像記録層を設けてなるネガ型画像形成材料を、赤外線レーザで画像露光後、アルカリ珪酸塩及び芳香族環を有するノニオン界面活性剤を含有するアルカリ現像液を用いて現像することを特徴とする画像形成方法である。
本発明の画像形成方法によれば、炭酸ガスの影響を受けにくい比較的に低いpH状態においても現像性に優れ、画像部へのダメージ低減による耐刷性向上、また現像廃液量を著しく低減できることがわかった。また、芳香族環を有するノニオン界面活性剤は画像記録層の不溶成分の分散向上剤としても作用するため、長期の処理においても現像槽内に蓄積する現像カスを著しく低減できることがわかった。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の画像形成方法を詳細に説明する。
先ず、本発明の画像形成方法に用いるアルカリ現像液について説明する。
〔現像液〕
本発明の画像形成方法で用いる現像液は、少なくともアルカリ珪酸塩及び芳香族環を有するノニオン界面活性剤を含有するアルカリ水溶液である。そのpH値はpH10.0〜12.0が適当であり、好ましくは10.0〜11.0である。
使用するアルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどがある。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0009】
上記アルカリ水溶液は、珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す。)との混合比率、及び濃度の調整により、現像性を容易に調節することができる。本発明の現像液では、SiO2/M2Oモル比を0.75〜6.0の範囲にすることが適当であり、好ましくは1.0〜5.0である。SiO2/M2Oモル比が0.75未満であると、アルカリ強度が強くなっていくため、平版印刷版原版の支持体として汎用のアルミニウム板などをエッチングしてしまうといった弊害を生ずることがあり、6.0を超えると現像性が低下することがある。
【0010】
現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、二酸化ケイ素(SiO2)換算で0.1〜3質量%が適当であり、好ましくは0.5〜2質量%である。この濃度が0.1質量%に満たないと現像性、処理能力が低下することがあり、一方3質量%を超えると沈殿や結晶を生成しやすくなり、さらに廃液時の中和の際にゲル化しやすくなり、廃液処理に支障をきたすことがある。
【0011】
アルカリ珪酸塩と組み合わせて用いる塩基として、従来より現像液にアルカリ剤として用いられる公知のものから適宜選択することができる。
該アルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム、リン酸二ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸アンモニウムなどの無機アルカリ剤、クエン酸カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0012】
さらにモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も好適に挙げることができる。
これらのアルカリ剤は単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。また、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどもそれ自身に緩衝作用があるので好ましい。アルカリ剤の組み合わせとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムといったアルカリ金属水酸化物と炭酸ナトリウム、炭酸カリウムといった炭酸塩との組み合わせが好ましく用いられる。
【0013】
(芳香族環を有するノニオン界面活性剤)
本発明で使用する現像液中に含める芳香族環を有するノニオン界面活性剤としては以下の式で表されるものがある。
式:X−Y−O−(A)n−(B)m−H
(式中、Xは芳香族環を表し、Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、A及びBは互いに異なる基であって、−CH2CH2O−又は−CH2CH(CH3)O−のいずれかを表し、n、mは0又は1〜100の整数を表し、但しnとmは同時に0ではない。)
上記式中、Xの芳香族基としてフェニル基、ナフチル基、アントラニル基などが挙げられる。これらの芳香族基は置換基を有していてもよい。式中、A及びBがともに存在するとき、ランダムでもブロックの共重合体でもよい。
【0014】
これらの化合物にはさらに具体的に、下記一般式(I−A)および(I−B)で示されるものがある。
Figure 0003795413
【0015】
(上記式中、R1、R2はそれぞれ水素原子又は炭素原子数1〜100の有機基を表し;p、qはそれぞれ1又は2を表し;Y1、Y2はそれぞれ単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;r、sはそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しrとsは同時に0ではなく、r′、s′はそれぞれ0又は1〜100の整数を表し、但しr′とs′は同時に0ではない。)
pが2を表しR1が炭素原子数1〜100の有機基であるとき、R1は同一でも異なっていてもよくR1が一緒になって環を構成していてもよく、また、qが2を表しR2が炭素原子数1〜100の有機基であるとき、R2は同一でも異なっていてもよくR2が一緒になって環を構成していてもよい。
【0016】
上記炭素原子数1〜100の有機基の具体例には、飽和でも不飽和でよく直鎖でも分岐鎖でもよい脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基など、その他に、アルコキシ基、アリーロキシ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、ポリオキシアルキレン鎖、ポリオキシアルキレン鎖が結合している上記の有機基などがある。上記アルキル基は直鎖でも分岐鎖でもよい。
【0017】
好ましいR1、R2としては、水素原子又は炭素原子数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アルキルカルバモイル基、アシルオキシ基又はアシルアミノ基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖、炭素原子数6〜20のアリール基、繰り返し単位数5〜20程度のポリオキシアルキレン鎖が結合しているアリール基などがある。
【0018】
一般式(I−A)及び(I−B)の化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数は好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムでもブロックの共重合体でもよい。
【0019】
一般式(I−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
一般式(I−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ホリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
芳香族環を有するノニオン界面活性剤は現像液中に、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
現像液における上記ノニオン界面活性剤の含有量は、現像液中1〜20質量%が適当であり、より好ましくは2〜10質量%である。ここで添加量が少なすぎると、現像性低下および感光層成分の溶解性低下を招き、逆に多すぎると、印刷版の耐刷性を低下させる。
以下に一般式(I−A)又は(I−B)で示されるノニオン界面活性剤の例を示す。
【0020】
【化1】
Figure 0003795413
【0021】
【化2】
Figure 0003795413
【0022】
【化3】
Figure 0003795413
【0023】
現像液にはキレート剤を含有させてもよい。キレート剤としては、例えば、Na227、Na533、Na339、Na24P(NaO3P)PO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2一ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度およびその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
【0024】
また、本発明の画像形成方法に使用される現像液は、上記一般式(I−A)および(I−B)で示されるノニオン界面活性剤以外に、さらに以下に記すその他の界面活性剤を加えてもよい。
その他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ペンチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ヘキシルナフタレンスルホン酸ナトリウム、オクチルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、ドデシルスルホン酸ソーダ等のアルキルスルホン酸塩類、ジラウリルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸エステル塩類等のアニオン界面活性剤:ラウリルベタイン、ステアリルベタイン等のアルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性界面活性剤が使用可能であるが、特に好ましいのはアルキルナフタレンスルホン酸塩類等のアニオン界面活性剤である。
これら界面活性剤は単独、もしくは組み合わせて使用することができる。また、これら界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1から20質量%が好ましい。
【0025】
本発明の画像形成方法に使用される現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下の様な成分を併用することができる。例えば安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の有機溶剤;この他、キレート剤、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
【0026】
上記の現像液は、露光されたネガ型画像形成材料の現像液および現像補充液として用いることができ、自動現像機に適用することが好ましい。自動現像機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。
【0027】
本発明の画像形成方法は、支持体上に(A)ラジカル発生剤、(B)ラジカル重合性化合物、(C)赤外線吸収剤、及び(D)バインダーポリマーを含有する画像記録層を設けてなるネガ型画像形成材料に適用するものである。この画像形成材料は、画像記録層として(A)ラジカル発生剤、(B)ラジカル重合性化合物、(C)赤外線吸収剤、及び(D)バインダーポリマーを含有する層を備えている。このような画像形成材料は赤外線レーザによる画像様露光により、露光部の(C)赤外線吸収剤が光熱変換し、発生した熱により(A)ラジカル発生剤が分解してラジカルを発生し、このラジカルにより(B)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含む画像記録層が硬化して画像部を形成する。その後、先に述べたアルカリ現像液で現像することで、硬化していない未露光の記録層が除去され、非画像部を形成するものである。
【0028】
画像記録層の各構成成分について、順次説明する。
[(A)ラジカル発生剤]
本発明において用いられるラジカル発生剤は、(C)赤外線吸収剤と組み合わせて用い、赤外線レーザを照射した際にラジカルを発生する化合物をさす。ラジカル発生剤としては、オニウム塩、トリアハロメチル基を有するS−トリアジン、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物及びボレート塩が挙げられる。オニウム塩が高感度であり、好ましい。オニウム塩としては、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
本発明において好適に用いられるオニウム塩は、下記一般式(1)〜(3)で表されるオニウム塩である。
【0029】
Figure 0003795413
【0030】
式(1)中、Ar11とAr12は、それぞれ独立に、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11-はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、カルボン酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびスルホン酸イオン等の対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、カルボン酸イオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0031】
式(2)中、Ar21は、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基または、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0032】
式(3)中、R31、R32及びR33は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、または炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
【0033】
好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0034】
【化4】
Figure 0003795413
【0035】
【化5】
Figure 0003795413
【0036】
【化6】
Figure 0003795413
【0037】
【化7】
Figure 0003795413
【0038】
【化8】
Figure 0003795413
【0039】
本発明において用いられるラジカル発生剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、さらに360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、画像形成材料の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0040】
これらのラジカル発生剤は、画像記録層塗布液の全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で画像記録層塗布液中に添加することができる。添加量が0.1質量%未満であると感度が低くなり、また50質量%を越えると印刷時非画像部に汚れが発生する。これらのラジカル発生剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、これらのラジカル発生剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
【0041】
[(B)ラジカル重合性化合物]
本発明に使用されるラジカル重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマーおよびその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類があげられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基や、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との付加反応物、さらに、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類およびチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0042】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであるラジカル重合性化合物の具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0043】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0044】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0045】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149号各公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0046】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0047】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0048】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(4)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
一般式(4)
CH2=C(R41)COOCH2CH(R42)OH
(ただし、R41およびR42は、HまたはCH3を示す。)
【0049】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0050】
さらに、特開昭63−277653,特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0051】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートをあげることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌 vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0052】
これらのラジカル重合性化合物について、どのような構造を用いるか、単独で使用するか併用するか、添加量はどうかといった、使用方法の詳細は、最終的な記録材料の性能設計にあわせて、任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上がこのましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものが良く、さらに、異なる官能数・異なる重合性基を有する化合物(例えば、アクリル酸エステル系化合物、メタクリル酸エステル系化合物、スチレン系化合物等)を組み合わせて用いることで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や、疎水性の高い化合物は感度や膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、画像記録層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上化合物の併用によって、相溶性を向上させうることがある。また、支持体、オーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。画像記録層中のラジカル重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましく無い相分離が生じたり、画像記録層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、記録層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
これらの観点から、ラジカル重合性化合物の好ましい配合比は、多くの場合、組成物全成分に対して5〜80質量%、好ましくは20〜75質量%である。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、ラジカル重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0053】
[(C)赤外線吸収剤]
本発明の画像形成方法では、赤外線レーザにて画像記録するため、画像記録層に赤外線吸収剤を含めることが必須である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、ラジカル発生剤が分解し、ラジカルを発生する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760nmから1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
【0054】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、例えば特開平10−39509号公報の段落番号[0050]〜[0051]に記載のものを挙げることができ、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
【0055】
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0056】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。
【0057】
また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
【0058】
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。さらに、シアニン色素が好ましく、特に下記一般式(5)で示されるシアニン色素が最も好ましい。
【0059】
【化9】
Figure 0003795413
【0060】
一般式(5)中、X1は、ハロゲン原子、X2−L1またはNL23を示す。ここで、X2は酸素原子または、硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示し、L2及びL3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い芳香族炭化水素基を示す。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていても良く、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていても良く、置換基を有していても良い炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていても良く、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z1-は、対アニオンを示す。ただし、R1〜R8のいずれかにスルホ基が置換されている場合は、Z1-は必要ない。好ましいZ1-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、トリフルオロメチルスルホン酸イオン、およびアリールスルホン酸イオンである。
【0061】
好適に用いることのできる一般式(5)で示されるシアニン色素の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0062】
【化10】
Figure 0003795413
【0063】
【化11】
Figure 0003795413
【0064】
【化12】
Figure 0003795413
【0065】
【化13】
Figure 0003795413
【0066】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0067】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。これらの顔料の詳細は、特開平10−39509号公報の段落番号[0052]〜[0054]に詳細に記載されており、これらを本発明にも適用することができる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0068】
画像記録層中における、上述の染料又は顔料の含有量としては、画像記録層の全固形分質量に対し、0.01〜50質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、さらに染料の場合には、0.5〜10質量%が最も好ましく、顔料の場合には、1.0〜10質量%が最も好ましい。
前記含有量が、0.01質量%未満であると、感度が低くなることがあり、50質量%を超えると、平版印刷版用原版とした場合の非画像部に汚れが発生することがある。
【0069】
[(D)バインダーポリマー]
画像記録層にさらにバインダーポリマーを添加することが膜性向上の観点から好ましい。バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。このような「線状有機ポリマー」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像あるいは弱アルカリ水現像を可能とするために、水あるいは弱アルカリ水可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、画像記録層を形成するための皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水あるいは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。このような線状有機ポリマーとしては、側鎖にカルボン酸基を有するラジカル重合体、例えば特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、すなわち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0070】
特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシル基を側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、好適である。
【0071】
また、特公平7−120040号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号等に記載される酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
【0072】
さらにこの他に水溶性線状有機ポリマーとして、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また硬化皮膜の強度を上げるためにアルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
【0073】
本発明で使用されるポリマーの重量平均分子量については好ましくは5000以上であり、さらに好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1000以上であり、さらに好ましくは2000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、さらに好ましくは1.1〜10の範囲である。
【0074】
これらのポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよいが、ランダムポリマーであることが好ましい。
【0075】
本発明で使用されるバインダーポリマーは単独で用いても混合して用いてもよい。これらポリマーは、画像記録層塗布液の全固形分に対し20〜95質量%、好ましくは30〜90質量%の割合で画像記録層中に添加される。添加量が20質量%未満の場合は、画像形成した際、画像部の強度が不足する。また添加量が95質量%を越える場合は、画像形成されない。またラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と線状有機ポリマーは、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
【0076】
[その他の成分]
画像記録層には、さらに必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、酸化チタンなどの顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像記録層塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0077】
また、塗布液の調製中あるいは保存中においてラジカル重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、画像記録層の摩擦係数を下げ、キズを防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体や1−ドコサノールのようなアルコール等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像記録層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.1質量%〜約10質量%が好ましい。
【0078】
また、画像記録層塗布液中には、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号や特開平3−208514号に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号、特開平4−13149号に記載されているような両性界面活性剤を添加することができる。
【0079】
非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、N−テトラデシル−N,N−ベタイン型(例えば、商品名アモーゲンK、第一工業(株)製)等が挙げられる。
上記非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤の画像記録層塗布液中に占める割合は、0.05〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0080】
さらに、画像記録層塗布液中には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤が加えられる。例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル等が用いられる。
【0081】
本発明で用いる画像形成材料を製造するには、通常、画像記録層塗布液に必要な上記各成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布すればよい。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−3−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独又は混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0082】
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像記録層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、平版印刷版原版についていえば一般的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす画像記録層の皮膜特性は低下する。
【0083】
(酸素遮断性保護層)
ネガ型画像形成材料の画像記録層上には、水溶性ビニル重合体を主成分とする酸素遮断性保護層を設けてもよい。
酸素遮断性保護層に含まれる水溶性ビニル重合体としては、ポリビニルアルコール、およびその部分エステル、エーテル、およびアセタール、またはそれらに必要な水溶性を有せしめるような実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するその共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールとしては、71〜100%加水分解され、重合度が300〜2400の範囲のものが挙げられる。具体的には、株式会社クラレ製PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体が挙げられる。その他有用な重合体としては、ポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアラビアゴム等が挙げられ、これらは単独または、併用して用いても良い。
【0084】
この酸素遮断性保護層を塗布する際用いる溶媒としては、純水が好ましいが、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類を純水と混合しても良い。そして塗布溶液中の固形分の濃度は1〜20重量%が適当である。
この酸素遮断性保護層にはさらに塗布性を向上させるための界面活性剤、皮膜の物性を改良するための水溶性の可塑剤等の公知の添加剤を加えても良い。
水溶性の可塑剤としては、たとえばプロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等がある。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーなどを添加しても良い。
その被覆量は、乾繰後の重量で約0.1g/m2〜約15g/m2の範囲が適当である。より好ましくは1.0g/m2〜約5.0g/m2である。
【0085】
[支持体]
本発明で用いる画像形成材料において前記画像記録層を塗布可能な支持体としては、寸度的に安定な板状物であり、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記の如き金属がラミネート若しくは蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられる。
【0086】
本発明で用いる画像形成材料に使用する支持体としては、軽量で表面処理性、加工性、耐食性に優れたアルミニウム板を使用することが好ましい。この目的に供されるアルミニウム材質としては、JIS 1050材、JIS 1100材、JIS 1070材、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金。Al−Mg−Si系合金などが挙げられる。
【0087】
アルミニウム板は表面に粗面化処理等の表面処理を行い、画像記録層を塗布して平版印刷版原版とすることができる。粗面化処理には、機械的粗面化、化学的粗面化、電気化学的粗面化が単独又は組み合わせて行われる。また、表面のキズ付き難さを確保するための陽極酸化処理を行ったり、親水性を増すための処理を行うことも好ましい。
【0088】
以下に支持体の表面処理について説明する。
アルミニウム板を粗面化するに先立ち、必要に応じ、表面の圧延油を除去するための例えば界面活性剤、有機溶剤またはアルカリ性水溶液などによる脱脂処理が行われてもよい。アルカリの場合、次いで酸性溶液で中和、スマット除去などの処理を行ってもよい。
【0089】
次いで支持体と画像記録層の密着性を良好にし、かつ非画像部に保水性を与えるため、支持体の表面を粗面化する、いわゆる、砂目立て処理がなされている。この砂目立て処理法の具体的手段としては、サンドブラスト等の機械的砂目立て方法があり、またアルカリまたは酸あるいはそれらの混合物からなるエッチング剤で表面を粗面化処理する化学的砂目立て方法がある。また、電気化学的砂目立て方法、支持体材料に、粒状体を接着剤またはその効果を有する方法で接着させて表面を粗面化する方法や、微細な凹凸を有する連続帯やロールを支持体材料に圧着させて凹凸を転写する粗面化方法等公知の方法を適用できる。
【0090】
これらのような粗面化方法は複数を組み合わせて行ってもよく、その順序、繰り返し数などは任意に選択することができる。前述のような粗面化処理すなわち砂目立て処理して得られた支持体の表面には、スマットが生成しているので、このスマットを除去するために適宜水洗あるいはアルカリエッチング等の処理を行うことが一般的に好ましい。
【0091】
アルミニウム支持体の場合には、前述のような前処理を施した後、通常、耐摩耗性、耐薬品性、保水性を向上させるために、陽極酸化によって支持体に酸化皮膜を形成させる。
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては多孔質酸化皮膜を形成するものならばいかなるものでも使用することができ、一般には硫酸、リン酸、蓚酸、塩酸、硝酸あるいはこれらの混酸が用いられる。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。陽極酸化の処理条件は用いる電解質により種々変わるので一概に特定し得ないが、一般的には電解質の濃度が1〜80%溶液、液温は5〜70℃、電流密度5〜60A/dm2、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分の範囲にあれば適当である。陽極酸化皮膜の量は1.0g/m2以上が好適であるが、より好ましくは2.0〜6.0g/m2の範囲である。陽極酸化皮膜が1.0g/m2未満であると耐刷性が不十分であったり、平版印刷版の非画像部に傷が付き易くなって、印刷時に傷の部分にインキが付着するいわゆる「傷汚れ」が生じ易くなる。
【0092】
前記陽極酸化処理を施された後、前記アルミニウムの表面は、必要に応じてシリケート処理等の親水化処理が施される。
このようなアルミニウム支持体は陽極酸化処理後に有機酸またはその塩による処理または、画像記録層塗布の下塗り層を適用して用いることができる。
【0093】
なお支持体と画像記録層との密着性を高めるための中間層を設けてもよい。密着性の向上のためには中間層は、ジアゾ樹脂や、ホスホン酸またはリン酸化合物、あるいはアルミニウムアルコキシドのようなアルミニウム化合物等を用いても良い。中間層の厚さは任意であり、露光した時に、上層の画像記録層と均一な結合形成反応を行い得る厚みでなければならない。通常、乾燥固体で約1〜100mg/m2の塗布割合がよく、5〜40mg/m2が特に良好である。支持体表面に以上のような処理或いは、下塗りなどが施された後、支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報記載の有機高分子化合物および特開平6−35174号記載の有機または無機金属化合物を加水分解および重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。
【0094】
以上のようにして、本発明に用いるネガ型画像形成材料を作成することができる。この画像形成材料は、赤外線レーザで記録できる。また、紫外線ランプやサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。本発明においては、波長760nmから1200nmの赤外線を放射する固体レーザ及び半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。画像形成材料に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。
【0095】
画像形成材料はレーザにより露光した後、先に詳細に述べた現像液にて現像される。
現像処理された画像形成材料は、所望により水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体を含む不感脂化液で後処理されたのち、平版印刷版として使用される。
【0096】
近年、製版・印刷業界では製版作業の合理化及び標準化のため、印刷用版材用の自動現像機が広く用いられている。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部からなり、印刷用版材を搬送する装置と各処理液槽とスプレー装置とからなり、露光済みの印刷版を水平に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像処理するものである。また、最近は処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロール等によって印刷用版材を浸漬搬送させて処理する方法も知られている。このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じて補充液を補充しながら処理することができる。また、電気伝導度やpHをセンサーにて感知し、自動的に補充することもできる。
また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
【0097】
以上のようにして得られた平版印刷版は所望により不感脂化ガムを塗布したのち、印刷工程に供することができるが、より一層の高耐刷力の平版印刷版としたい場合には、後露光やバーニング処理が施される。平版印刷版をバーニングする場合には、バーニング前に特公昭61−2518号、同55−28062号、特開昭62−31859号、同61−159655号の各公報に記載されているような整面液で処理することが好ましい。その方法としては、該整面液を浸み込ませたスポンジや脱脂綿にて、平版印刷版上に塗布するか、整面液を満たしたバット中に印刷版を浸漬して塗布する方法や、自動コーターによる塗布等が適用される。また、塗布した後でスキージ又はスキージローラーで、その塗布量を均一にすることは、より好ましい結果を与える。整面液の塗布量は一般に0.03〜0.8g/m2(乾燥重量)が適当である。
【0098】
整面液が塗布された平版印刷版は必要であれば乾燥された後、バーニングプロセッサー(例えば、富士写真フイルム(株)より販売されているバーニングプロセッサー:BP−1300)等で高温に加熱される。この場合の加熱温度及び時間は、画像を形成している成分の種類にもよるが、100〜300℃の範囲で1〜20分の範囲が好ましい。
【0099】
バーニング処理された平版印刷版は、必要に応じて適宜、水洗、ガム引き等の従来行なわれている処理を施こすことができるが、水溶性高分子化合物等を含有する整面液が使用された場合にはガム引きなどのいわゆる不感脂化処理を省略することができる。
【0100】
本発明の画像形成方法によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機等にかけられ、多数枚の印刷に用いられる。
【0101】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、勿論本発明の範囲は、これらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
[支持体の作製]
厚さ0.30mmのアルミニウムウエッブ(材質1050)を、トリクロロエチレン洗浄して脱脂した後、ナイロンブラシと400メッシュのパミストン−水懸濁液を用い、その表面を砂目立てし、よく水で洗浄した。
このアルミニウムウエッブを25%水酸化ナトリウム水溶液(45℃)中に9秒間浸漬し、エッチングを行い水洗した後、さらに2%HNO3水溶液中に20秒間浸漬して水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は、約3g/m2であった。
次いで、電解質溶液に7%硫酸を用い、電流密度15A/dm2により、前記アルミニウムウエッブ上に3g/m2の直流陽極酸化被膜を設けた。
【0102】
[画像記録層の形成]
下記画像記録層塗布液を前記下塗り層を形成した支持体上に、ワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて120℃で45秒間乾燥して画像記録層を形成し、実施例1の平版印刷版用原版[P−1]を得た。乾燥後の塗布量は2.0g/m2であった。
尚、下記ポリマー(PB−1)は、メタクリル酸、アクリルアミドおよびベンジルメタクリレートの共重合体を合成した後、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートと、塩基およびヨウ化カリウム存在下で反応させることにより合成した。組成モル比は、15:30:15:40であり、重量平均分子量は10万であった。
【0103】
<画像記録層用塗布液[P−1]>
・オニウム塩[OS−7] 0.25g
・重合性化合物[RM−1] 0.60g
・赤外線吸収剤[IR−13] 0.06g
・ポリマー[PB−1] 1.40g
・ビクトリアピュアブルーのナフタレンスルホン酸塩 0.04g
・1−ドコサノール 0.01g
・重合禁止剤 0.005g
(イルガノックス1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)
・フッ素系界面活性剤 0.03g
(メガファックKF309、大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 10g
・γ−ブチロラクトン 5g
・メタノール 7g
・1−メトキシ−3−プロパノール 5g
【0104】
なお、上記画像記録用塗布液に用いた各化合物の構造式を以下に示す。
【0105】
【化14】
Figure 0003795413
【0106】
[現像液の評価]
版材供給装置(SA−L8000)、露光装置(Luxel T−9000CTP)、コンベア(T−9000 Conveyor)、自動現像機(LP−1310H)、ストッカー(ST−1160)より成る富士写真フイルム(株)CTP出力システムを用いた。自動現像機の現像処理槽に、下記組成の各現像液を仕込み、30℃に保温した。自動現像機の第二浴目には、水道水を仕込み、第三浴目には、FN−6(富士写真フイルム(株)製):水=1:1希釈したフィニッシングガム液を仕込んだ。
【0107】
以下の現像液及び現像補充液に使用した品名:2K珪酸カリ及び A珪酸カリは、日本化学工業(株)製の珪酸カリウムの商品名である。
現像液の調製
以下の化合物を水に溶解し各現像液を調液した。
[現像液1](pH=10.0、SiO2/M2Oモル比=約3.6)
式Y−1の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に珪酸カリウム(JIS 2K珪酸カリ)を1質量%添加してpH10.0とした現像液。
[現像液2](pH=11.0、SiO2/M2Oモル比=約3.0)
式Y−1の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に珪酸カリウム(JIS A珪酸カリ)を1質量%添加してpH11.0とした現像液。
[現像液3](pH=12.0、SiO2/M2Oモル比=約2.0)
式Y−1の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に珪酸カリウム(JIS A珪酸カリ)を1質量%、水酸化カリウムを添加してpH12.0とした現像液。
【0108】
[現像液4](pH=10.0、SiO2/M2Oモル比=約3.6)
式Y−1の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%、珪酸カリウム(JIS 2K珪酸カリ)を1質量%、炭酸カリウム0.2質量%、炭酸水素カリウム0.5質量%を添加してpH10.0とした現像液。
[現像液5](pH=10.0、SiO2/M2Oモル比=約3.6)
式Y−2の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に珪酸カリウム(JIS 2K珪酸カリ)を1質量%添加してpH10.0とした現像液。
[現像液6](pH=10.0、SiO2/M2Oモル比=約3.6)
式Y−3の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に珪酸カリウム(JIS 2K珪酸カリ)を1質量%添加してpH10.0とした現像液。
【0109】
次に、平版印刷版用原版[P−1]を、版材供給装置に装填し、全自動で連続して、露光、上記現像液1〜6で現像処理し、ストッカーへ排出した。露光時の解像度は2400dpiで175線で、網点を0.5〜99.5%の範囲で変更し行った。得られた平版印刷版[P−1]の網点の形成状況を、ルーペを用い目視にて観察した。その結果、0.5%〜99.5%のすべての網点が形成されていた。また、得られた平版印刷版[P−1]についてマン・ローランド社製R201型印刷機で、大日本インキ社製GEOS G墨(N)を使用して印刷したところ、現像液1、2、4、5、6で処理したものは印刷枚数が10万枚で印刷不良が発生し、現像液3で処理したものは印刷枚数が9万枚で印刷不良が発生した。
【0110】
〔実施例2〕
[現像液の補充量、経時性の評価]
現像補充液の調製
上記現像液1、4及び5のぞれぞれに対応する現像補充液を調液した。
[現像補充液1](pH=11.0、SiO2/M2Oモル比=約3.0)
式Y−1の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に珪酸カリウム(JIS A珪酸カリ)を1質量%添加してpH11.0とした現像補充液。
[現像補充液4](pH=10.0、SiO2/M2Oモル比=約3.6)
式Y−1の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%、珪酸カリウム(JIS 2K珪酸カリ)を1質量%、炭酸カリウム0.5質量%、炭酸水素カリウム0.2質量%を添加してpH10.5とした現像補充液。
[現像補充液5](pH=11.0、SiO2/M2Oモル比=約3.0)
式Y−2の界面活性剤5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に珪酸カリウム(JIS A珪酸カリ)を1質量%添加してpH11.0とした現像補充液。
【0111】
実施例1と同様にして、現像液1、4、5を各々、自動現像機の現像処理槽に仕込んだ後、平版印刷版用原版[P−1]を1000m2、3週間かけて現像処理し、実施例1と同様にして、画像形成の変化を確認した。得られた平版印刷版[P−1]の網点の形成状況を、ルーペを用い目視にて観察した。その結果、現像液1、4、5のいずれにおいても処理10m2時、500m2時、1000m2時全てにおいて0.5%〜99.5%のすべての網点が形成されていた。pHを安定に保つために各々現像補充液1、4、5で補充を行った。その際要した補充量は、現像補充液1が60cc/m2、現像補充液4が40cc/m2、現像補充液5が60cc/m2であった。さらにそのまま1週間放置した後、現像液を抜いてタンク内のカスの堆積状況を観察した。現像液1、4、5のいずれにおいても現像カスの堆積はなかった。
【0112】
〔比較例1〕
上記現像液に代えて下記処方の比較現像液1を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型平版印刷版[P−1]を得て比較例1とした。
[比較現像液1](pH=10.0)
ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)5質量%、、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に水酸化カリウムを添加してpH10.0とした現像液。
[比較現像補充液1](pH=11.0)
ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)5質量%、、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に水酸化カリウムを添加してpH11.0とした現像液。
【0113】
平版印刷版用原版[P−1]を、実施例1と同様にして画像形成した。この際得られた平版印刷版[P−1]の網点の形成状況を、ルーペを用い目視にて観察した。その結果、2%〜90%までしか網点は形成されなかった。また非画像部に一部残膜が発生した。実施例1と同様にして印刷したところ、印刷枚数が7万枚で印刷不良が発生し、一部汚れも発生した。
【0114】
実施例2と同様にして比較現像液1の経時性を評価した。平版印刷版用原版[P−1]を100m2、3週間かけて比較現像液1にて現像処理し、実施例1と同様にして、画像形成の変化を確認した。得られた平版印刷版[P−1]の網点の形成状況を、ルーペを用い目視にて観察した。その結果、処理10m2時は2%〜99.5%の網点が形成され、500m2時、1000m2時においては2%〜98.5%の網点が形成されていた。したがって現像処理が進行するに従い網点シャドー部の再現性が劣化することがわかった。pHを安定に保つために比較現像補充液1で補充を行った。その際要した補充量は120cc/m2であった。さらにそのまま1週間放置した後、現像液を抜いてタンク内のカスの堆積状況を観察した。比較現像液1について著しい現像カスの堆積が認められた。
【0115】
〔比較例2〕
上記現像液に代えて下記処方の比較現像液2を用いた以外は、実施例1と同様にしてネガ型平版印刷版[P−1]を得て比較例2とした。
[比較現像液2](pH=12.5)
ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に水酸化カリウムを添加してpH12.5とした現像液。
[比較現像補充液2](pH=13.3)
ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム(アニオン界面活性剤)5質量%、エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩(キレート剤)0.2質量%に水酸化カリウムを添加してpH13.3とした現像液。
【0116】
平版印刷版用原版[P−1]を、実施例1と同様にして画像形成した。この際得られた平版印刷版[P−1]の網点の形成状況を、ルーペを用い目視にて観察した。その結果、5%〜99.5%の網点が形成され、0.5%と1%、2%、3%、4%の小さな網点は形成されなかった。また、実施例1と同様にして印刷したところ、印刷枚数が4万枚で印刷不良が発生した。
実施例2と同様にして比較現像液2の経時性を評価した。平版印刷版用原版[P−1]を100m2、3週間かけて比較現像液2にて現像処理し、実施例1と同様にして、画像形成の変化を確認した。得られた平版印刷版[P−1]の網点の形成状況を、ルーペを用い目視にて観察した。その結果、処理10m2時は5%〜99.5%の網点が形成された。pHを安定に保つために比較現像補充液2で補充を行った。その際要した補充量は210cc/m2であった。さらにそのまま1週間放置した後、現像液を抜いてタンク内のカスの堆積状況を観察した。比較現像液2について著しい現像カスの堆積が認められた。
【0117】
【発明の効果】
本発明によれば、赤外線レーザ光を用いて記録することによりコンピューター等のデジタルデータから直接記録可能なネガ型画像形成材料に適用し得る、優れた画像形成方法を提供することができる。詳しくは、露光後、版に加熱処理を施さずとも、画像形成性に優れ且つ耐刷性の高い平版印刷版を作製できる画像形成方法を提供できる。また、本発明によれば、現像廃液量を著しく低減できることがわかった。さらに、画像記録層の不溶成分の分散向上剤としても作用するため、長期の処理においても現像槽内に蓄積する現像カスを著しく低減でき、長期間安定に現像処理可能な画像形成方法を提供することができる。

Claims (1)

  1. 支持体上に(A)ラジカル発生剤、(B)ラジカル重合性化合物、(C)赤外線吸収剤、及び(D)バインダーポリマーを含有する画像記録層を設けてなるネガ型画像形成材料を、赤外線レーザで画像露光後、アルカリ珪酸塩及び芳香族環を有するノニオン界面活性剤を含有するアルカリ現像液を用いて現像することを特徴とする画像形成方法。
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