JP3791602B2 - 成分割合を求める方法 - Google Patents
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Description
【産業の属する技術分野】
本発明は、成分割合を求める方法に関する。より詳細には、本発明は、例えば、カレーパン、中華マンの主要な原料として用いる豚挽肉などの食肉の脂身分の割合等、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルの一成分の割合を求める方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
カレーパン、中華マンの主要な原料として用いる豚挽肉などの食肉の脂身分の割合等、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルの一成分の割合をより正確に求める方法が必要である。例えば、カレーパン、中華マンの主要な原料として豚挽肉を大量に使用する場合、豚挽肉の組成、すなわち赤肉と脂身分の割合は一定になるように、例えば8:2という比率で決めているため、原料肉中の赤肉と脂身分の割合を正確に把握して、所要の豚肉を選定することが必要である。
【0003】
従来、成分割合を求める方法について、種々の方法があるが、製造現場で測定するには、(1)サンプルの中では各成分は均一に入っていることはなく、試料の量が少ないと測定値が全体の値を示さない、(2)工場内で測定するには危険な有機溶媒や特別な装置、特別な器具等が必要であり不適切である、(3)測定をおこなうため、一定の訓練が必要である、(4)測定時間が長く、サンプルの中の成分割合が判った時には出荷済みの場合もある、(5)測定後のサンプルは再度使用できない等の問題点がある。
【0004】
例えば、獣肉の脂身分の割合の測定について、(a)特開昭55−75649号があり、被測定試料の所定量を脂肪分不溶性液体に入れ、この試料の比重差又は比容積によって脂身度を測定する方法であって、実施例では、試料の豚肉の塊をそのまま水中に入れて、その水位の上昇する具合により、脂身度を測定している。また、食肉の脂身の割合を測定する一般的な従来方法として、(b)エーテル抽出法(=ソックスレー法)や(c)バブコック法がある。
エーテル抽出法(=ソックスレー法)は、粉砕したり、薬品等で前処理した試料を専用装置によりエーテルに抽出し、次いでエーテルを蒸留して乾燥させ、抽出された脂質を計量する。バブコック法は、過塩素酸−酢酸混液により試料肉の脂肪を分散、遊離させ、さらに遠心分離して脂肪層の量を読み取る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の(a)の方法は、獣肉のサンプルをそのまま水などの液体中に直接入れて測定する方法であるため、該サンプルの表面部分が若干、液体中に剥離してしまうおそれがあり、また、該サンプルの表面の凹凸に気泡がつく等により、測定値に誤差が生じやすい。さらにまた、水などの液体中にそのまま入れるため、サンプルを食品として利用することが困難である。
また、上記の(b)の方法は、サンプル中の脂質の割合を正確に求めうるが、食肉の一部をサンプルとして採取して測定した数値から、食肉全体の脂質の割合を求めることになるため、例えば、サンプルの採取が偏っていたり、その採取する量が少なすぎる場合、食肉全体の脂身の割合を正確に求めることができない。サンプルは粉砕、薬品処理などを行うため、食品として利用できない。また、専門的知識や熟練を要するし、時間がかかる(通常、半日程度)点も問題である。また、上記の(c)の方法は、上記(b)と同様に、食肉の一部をサンプルとして採取して行うため、やはり不正確である。サンプルは薬品処理し、遠心分離されるため、食品として利用できない。専門的知識や熟練を要するし、時間がかかる(最低1時間)。
【0006】
通常、原料挽肉の割合のチェックは目視でおこなうが、簡単に脂身分の割合が判る手段が開発されたとすると、原料肉の品質チェックや製品の品質向上に寄与すると考えられる。
本発明は、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルの成分割合を求める方法、特に豚挽肉などの獣肉の脂身を迅速に測定する方法の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルを真空包装して液体中で計量した重量値と、液体に入れないで計量した重量値とから、該サンプルの比重値を算出し、該比重値に基づいて、サンプルの成分割合を求める方法である。
【0008】
また、本発明は、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルを真空包装して液体中で計量した重量値と、液体に入れないで計量した重量値とから、該サンプルの比重値を算出し、該比重値を一定の計算式に代入してサンプルの一成分の割合を求める、サンプルの成分割合を求める方法である。
【0009】
より具体的には、本発明は、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルを真空包装して液体中で計量した重量値と、液体に入れないで計量した重量値とから、該サンプルの比重値を算出し、該比重値を下記の計算式に代入してサンプルの一成分の割合を求める、サンプルの成分割合を求める方法である。
【数1】
(当該一成分の割合)
={(サンプルの比重値)−(当該一成分以外の比重値)}
÷{(当該一成分の比重値)−(当該一成分以外の比重値)}
×100
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルを真空包装して液体中で計量した重量値と、液体に入れないで計量した重量値とから、該サンプルの比重値を算出し、該比重値に基づいて、サンプルの成分割合を求める方法であり、ここで、真空包装は、少なくとも液体中で重量を計量するときに行えばよく、液体に入れないで重量を計量するときは、真空包装してもしなくてもどちらでもよい。
例えば、液体中で計量するときに真空包装し、液体に入れないで計量するときには真空包装しないようにしたときは、包装材の重量分を引き算して液体中の重量値を求めて、比重値を算出すればよい。
【0011】
また、本発明は、比重の異なる複数の成分から構成されるサンプルを真空包装して液体中で計量した重量値と、液体に入れないで計量した重量値とから、該サンプルの比重値を算出し、該比重値を一定の計算式に代入して、サンプルの一成分の割合を求める方法でもあり、例えば、前記計算式が下記であることを特徴とする。
【0012】
【数2】
(当該一成分の割合)
={(サンプルの比重値)−(当該一成分以外の比重値)}
÷{(当該一成分の比重値)−(当該一成分以外の比重値)}
×100
【0013】
本発明の対象となるものとしては、比重の異なる複数の成分から構成されるものであれば、特に限定されない。ただ、液体中に沈める時に内部に空気を多く含有しているとその分だけ比重が小さく測定されて不正確となるため、本発明は、真空包装した場合に内部に空洞部分があまりない、内部が密な食品について有効である。例えば、魚肉や牛肉、豚肉等の食肉について、その赤身(蛋白質を主とする成分)と脂身(脂肪を主とする成分)の割合を求める場合に、特に、本発明の方法が有効である。
対象となるサンプルの各成分の比重値は、各成分ごとに比重計等を用いて実測してもよいし、各成分について記載された文献を参照してもよい。より正確な数値を求めるためには実測することが望ましい。
【0014】
本発明においては、対象となるものの一部又は全部をサンプルとして用いるが、より正確な数値を求めるためには、全部を用いる方が望ましい。また、対象となるものの一部を用いる場合も、より正確な数値を求めるために、なるべく多くの箇所からまんべんなく、また、なるべく多くの量を採取してサンプルとして用いることが望ましい。
【0015】
本発明においては、サンプルの重量値を液体中で計量し、液体に入れずに計量した重量値とから、該サンプルの比重値を算出する。
液体としては、取り扱いやすく、一般的に入手が容易であることから、水を用いることが望ましい。例えば、水を用いた場合、サンプルの比重値は以下の計算式で求められる。
【0016】
【数3】
(サンプルの比重値)
=(水に入れずに計量した重量値)
÷{(水に入れずに計量した重量値)−(水中で計量した重量値)}
【0017】
本発明においては、液体中におけるサンプルの重量値の計量を、サンプルを真空包装して液体中で行う。
サンプルの真空包装は、例えば、サンプルを樹脂製包装袋にいれて、包装袋内部が真空になるように減圧した状態でシールして行う。内部に空気が残らないように十分に減圧することが望ましいが、減圧しすぎると、逆に、問題を生じることもあり、例えば、サンプルの水分が減少しすぎるおそれがあり、また、大気圧でサンプル自体が潰されるおそれがあり、さらには、減圧下の袋内部でサンプル中に含まれる水分が沸騰してしまうことによりサンプルが損傷するおそれがある。
したがって、減圧は、−940〜−1000hPa で行うことが望ましく、−960〜−980hPaで行うことがより望ましい。
【0018】
サンプルと液体との温度差が大きいと、サンプルを液体中に入れたときに、サンプルとなる食品の体積が変化して、計量した重量値が不正確となるおそれがあるため、サンプルと液体との温度差はなるべく少ない方がよく、両者の温度差を±10℃以内とすることが望ましく、±5℃以内とすることがより望ましい。
【0019】
【作用】
液体中における該サンプルの重量の計量を該サンプルを真空包装した状態で行うことから、サンプルの表面に気泡がつく等による誤差がほとんどなく、かなり精度の高い測定が可能である。
数分〜10数分程度と、測定時間が短く、現場へのフィードバックが早い。
サンプルは真空包装されて液体に入れるため、重量計量後もそのまま利用できる。サンプルが無駄にならないことから、測定する単位を大きくすることができ(食品全体をそのままサンプルとすることもできる)、その意味で精度の高い測定が可能である。
専門的知識や熟練は不要なので、誰でも同様に正確に測定できる。
【0020】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0021】
実施例1
サンプルとして豚挽肉、液体として水を使用した。
豚挽肉の脂身と赤身とを混ぜ合わせて、それぞれの割台がおよそ10:90となるように1〜5、15:85となるように6〜10、20:80となるように11〜15、25:75となるように16〜20、30:70となるように21〜25、35:65となるように26〜30、40:60となるように31〜35のサンプルを作った。
全てのサンプルにつき、比重値と、脂身の割合を求めた結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
〔具体的な手順〕
1.サンプルを、図1に示される計量器により、水に入れない場合と水中の場合との重量を測定して、これらの測定値かららサンプルの比重を求める。
(1)サンプルを樹脂製包装材に入れて、−970hPaで減圧してシールすることにより、真空包装する。
(2)真空包装したサンプルを計量台に載せて、水にいれない場合の重量を測定する。
(3)水中で、上記(2)のサンプルの重量を測定する。
(4)(2)、(3)の測定値を以下の計算式に代入して、サンプルの比重を求める。
【0024】
【数4】
(サンプルの比重)
=(包装したサンプルの重量−包装材の重量)
÷(包装したサンプルの重量−水中での包装したサンプルの重量
−包装材の重量÷包装材の比重)
なお、上記(1)〜(3)の作業を行う条件として、サンプルの温度は5℃〜10℃、水の温度は5℃〜10℃とする。
【0025】
2.樹脂製包装材と赤身と脂身については、一般的に知られている比重値を用いてもよいが、上記サンプルの場合と同様に図示される計量器により水に入れない場合と水中の場合との重量を実測して以下の計算式で比重を予め求めることが望ましい。
【数5】
(包装材の比重値)
=(水に入れずに計量した重量値)
÷{(水に入れずに計量した重量値)−(水中で計量した重量値)}
【数6】
(赤身又は脂身の比重)
=(包装した重量−包装材の重量)
÷(包装した重量−水中での包装した重量−包装材の重量÷包装材の比重)上記の計算式により求めたところ、包装材の比重値は0.956、赤身の比重値は1.068、脂身の比重値は0.943であった。
【0026】
3.以下の計算式に上記で求めた各数値を代入して、サンプルの脂身の割合を求める。
【数7】
(サンプルの脂身の割合)
={(サンプルの比重値)−(赤身の比重値)}
÷{(脂身の比重値)−(赤身の比重値)}
×100
【0027】
〔結果〕
表から、本発明方法により求めたサンプルの脂身の割合は、実測した場合の割合と大変高い正の相関が認められ(相関係数は0.998)、本発明方法が極めて正確であることがわかった。
なお、本実施例でサンプルとして使用した豚挽肉は、真空包装して水に入れただけであるため、そのまま再使用が可能である。
【0028】
【発明の効果】
測定時間が短く、現場へのフィードバックが早い獣肉の脂身の迅速簡単な測定法を提供することができる。また、サンプルが無駄にならないことから、測定する単位を大きくすることができ(食品全体をそのままサンプルとすることもできる)、その意味で精度の高い測定が可能である。専門的知識や熟練は不要なので、誰でも同様に正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で使用した計量器を説明する図面である。
Claims (2)
- 食肉サンプルを真空包装し該食肉サンプルとの温度差を、±10℃以内とした液体中で計量した重量値と、液体に入れないで計量した重量値とから、該食肉サンプルの比重値を算出し、該比重値を下記の計算式に代入して食肉サンプルの一成分の割合を求める、食肉サンプルの成分割合を求める方法。
(当該一成分の割合)
={(食肉サンプルの比重値)−(当該一成分以外の比重値)}
÷{(当該一成分の比重値)−(当該一成分以外の比重値)}
×100 - 前記食肉サンプルの一成分が脂身である請求項1の食肉サンプルの成分割合を求める方法。
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