JP3791176B2 - ボールバランサ及びボールバランサを装着した遠心分離機 - Google Patents

ボールバランサ及びボールバランサを装着した遠心分離機 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は鉛直の回転軸を有する回転機械の自動バランサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から自動バランサには、例えば特開昭56−130249号公報に記載されているように、環状ケース内に液体を移動可能に封入した液体バランサや、環状ケース内に鋼球を移動自在に収納したボールバランサがある。図11と図12に従来のボールバランサの例を示す。ボール21の数は環状ケース40内の全周の30%から60%充填されており、高速回転時にボールがアンバランス質量15の反対側に移動してアンバランス量を補正し、回転軸の振動を抑制する効果がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
回転機械の一例である遠心分離機は、試料を入れたロータを高速回転して試料に高遠心加速度を与え、高密度の試料を半径方向外側の層に、低密度の試料を半径方向内側の層に分離させる機械である。また、回転の加速時や減速時に急速に速度を変化させると試料が攪拌され、密度の差に従って分離した液状の試料が混合されてしまうため、速度をゆっくり変化させ、試料の混合を防止している。遠心分離機は高速で回転するため、ロータが振れる共振回転数を超えて運転しており、前記共振回転数を加速時や減速時にゆっくり通過させると、共振時の振動が大きくなるため、ロータを駆動する駆動部と筐体間には、共振時の振動を少なくするためのダンパが設けられている。しかし、アンバランスが過大な状態で運転すると、ダンパだけでは振動が吸収しきれず、ロータの共振時に大きな振動や騒音を発生したりする。また、ある程度のアンバランスがあり、共振回転数を超えた高速回転数で長時間運転すると、ロータが偏心して回転するので、回転軸の曲げ荷重や回転軸用軸受の荷重が大きくなり、回転軸や軸受の早期破損を引き起こす結果となる。よって、従来からロータの対面の試料の質量バランス調整を行い、少ないアンバランス状態で運転を行うよう注意している。このバランス調整は試料の量を調整したり補正錘を追加変更等を行う等していたため、分離前のこの種の作業に時間を要していた。
【0004】
一般に、共振回転数(ロータを含む回転系の固有振動数とロータの回転数が一致する回転数)においては、上記したように振動が大きくなることが知られているが、加えて、共振回転数以下の回転数においては、回転系の重心位置がロータ中心より回転中心から遠い位置に位置し、共振回転数以上の回転数においては、位相が180°ずれるため、回転系の重心位置がロータ中心より回転中心側に位置することが知られている。
【0005】
従って、遠心分離機に上記の従来のボールバランサを用いて運転すると、ロータが振動する共振回転数に達する以前(共振回転数以下の回転数)では、試料のアンバランスと同じ方向に振れてゆっくり加速しているため、試料のアンバランス質量の方向にボールが移動することになり、結果として、このボールがアンバランスを更に大きくするよう働いてしまう。それ故、結果的には、このボールバランサが無い場合よりボールバランサが有る場合のほうが共振時の振動が大きくなり、外箱に接触したり騒音が大きくなったりするという欠点を有している。
【0006】
しかし、共振回転数を過ぎて高速回転(共振回転数以上の回転数)になると、ロータは試料のアンバランスとは反対方向に振れるため、ボールが試料のアンバランスの反対方向に移動することになり、結果として、このボールがアンバランス質量が小さくなるようバランスを自動調整し、ロータの振動は急激に少なくなり、ボールバランサの効果を発揮することができる。しかし、高速回転時のロータの振動を更に小さくしようとすると、製作における誤差により、ボール表面やボールが転動する面に僅かな凹凸があり、前記凹凸によりボールの動きが悪くなり、ボールによるバランスの自動調整後の残留アンバランスが小さくならない欠点を有している。なお、残留アンバランス量とは、静止時の初期アンバランス量から自動バランスのアンバランス質量の補正量を差し引いた量を示す。
【0007】
また、試料の許容アンバランス量(静止時の初期アンバランス量のことで、強度や振動の設計上、高速回転時の残留アンバランス量が許容限度となる量)を大きくするため、ボールの全質量や環状ケースの直径を大きくすると、試料のアンバランス量が少ないときでもボールバランサにより共振時の振動が大きくなる。すなわち、従来のボールバランサはボールバランサにより共振時の振動が大きくなるので、ボールの全質量や環状ケースの直径を大きく出来ず、自動バランスのアンバランス質量の補正量を大きく出来ないという欠点を有している。
【0008】
即ち、図11や図12に示すような従来のボールバランサは、共振回転数以上の回転数では、ボール21表面やボールが転動する環状ケース40の面に僅かな凹凸35により、バランスの自動調整後の残留アンバランスが小さくならないという欠点があり、共振回転数や共振回転数以下の回転数においては、逆に振動を大きくする方向にボールバランサが働くという欠点を有するものであった。
【0009】
本発明は、遠心分離機のように回転数をゆっくり変化させる回転機械にアンバランス質量が存在する状態で運転しても、ロータの共振時にロータの振動が過度に大きくならず円滑に運転でき、高速回転時にアンバランス質量の補正量を大きくし、さらにボール表面やボール転動面に僅かな凹凸があっても、バランス自動調整後の残留アンバランスを小さくし、ロータの振動を小さくできる自動バランサを得ることを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
鉛直の回転軸を中心とする円筒を有し、前記円筒内に複数のボールを内蔵し、該ボールの移動によってバランスを自動調整するボールバランサにおいて、前記円筒の内面の略中央部に最大直径位置を有し、前記最大直径位置の半径(R1)とボールの半径(R2)の比率(R1/R2)と、前記円筒の円筒中心から回転中心までの距離(e)と、前記円筒内の凹みの半幅(a)との関係を、1+e/a>(R1/R2)としたことで達成される。
【0011】
さらに前記最大直径位置の半径と前記ボールの半径の比率(R1/R2)を11.4以下としたことで達成される。
さらに前記円筒の高さを、前記複数のボールが高さ方向に少なくとも2列の千鳥配列に並ぶことが可能な高さとし、ロータの共振回転数を越えてから前記ボールが少なくとも2列の千鳥配列になることにより達成される。
【0012】
さらに前記円筒の内面を前記最大直径位置を有する樽型形状としたことで達成される。
また前記円筒の内面を前記最大直径位置より上部は、回転軸と平行な直線としたことで達成される。
【0013】
駆動モータと、該駆動モータと連結する回転軸と、該回転軸に装着され、且つ、試料を内蔵する容器が装着されるロータを有した遠心分離機において、鉛直の回転軸を中心とする円筒を有し、前記円筒内に複数のボールを内蔵し、前記円筒の内面の略中央部に最大直径位置を有し前記最大直径位置の半径(R1)とボールの半径(R2)の比率(R1/R2)と、前記円筒の円筒中心から回転中心までの距離(e)と、前記円筒内の凹みの半幅(a)との関係を、1+e/a>(R1/R2)としたボールバランサを装着した遠心分離機によって達成される。
【0014】
さらに前記最大直径位置の半径と前記ボールの半径の比率(R1/R2)を11.4以下としたボールバランサを装着した遠心分離機によって達成される。
さらに前記円筒の高さを、前記複数のボールが高さ方向に少なくとも2列の千鳥配列に並ぶことが可能な高さとし、ロータの共振回転数を越えてから前記ボールが少なくとも2列の千鳥配列になるボールバランサを装着した遠心分離機によって達成される。
【0015】
さらに、前記円筒の内面を前記最大直径位置を有する樽型形状としたボールバランサを装着した遠心分離機によって達成される。
また、前記円筒の前記最大直径位置より上部は、回転軸と平行な直線としたボールバランサを装着した遠心分離機によって達成される。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明となる実施例を図面を参照して本発明を説明する。図1は回転機械の例である遠心分離機に本発明のボールバランサの一実施例を取り付けた図である。遠心分離機の外箱1の内部のベース2と駆動モータ3を固着したブラケット4間にスプリング5を取り付け、駆動モータ及びロータ等の回転部を支持する。前記スプリング5の外周にゴム管6を圧入し、スプリング5とゴム管6によりばね作用と減衰作用を与える。前記ブラケット4に対し軸受で回転自在に支持された回転軸7の上部にロータ8を装着し、また回転軸7の下端はモータ軸と連結し、駆動モータ3の回転力をロータ8に伝達する。前記ロータ8には試料を入れるためのバケット9をピン10により回動自在に取り付け、ロータ上部に前記回転軸7から延長した雄ねじ11にバランサボディ20を固定し、バランサボディ20内にボール21を収納する。前記バランサボディ20の円筒の半径R1と前記ボール21の半径R2の比率(R1/R2)を11.4以下となるようなバランサボディ20とボール21の寸法比として、高速回転時にボール表面やボール転動面の凹凸を乗り越えてボールを移動可能とする。バランサボディ20、ロータ8及びバケット9は、外箱に固定されたチャンバ12とドア13で囲まれた空間で回転し、ロータ停止時にドア13を開け、分離する試料をバケットから出し入れする。図1は高速回転時の状態で、遠心力によりバケット9が水平に広がり、試料のアンバランス質量15の反対側にボール21が移動し、アンバランスを補正する。すなわち、アンバランス質量15によって移動した重心を、回転軸7上にボール21の作用により戻す。
【0017】
遠心分離機のような回転機械ではモータ3やロータ8の質量と慣性モーメント、及びスプリング5とゴム管6によるばね定数と減衰係数により決まる、ロータ8が振動する共振回転数があり、高速回転機械は前記共振回転数を越えて運転するので、共振回転数時の振動を押さえるため、減衰係数を適正化している。
【0018】
図2にボールバランサの詳細と低速回転時のボールの状態を示す。前記バランサボディ20は、回転軸7と同心で、内面が下部内径から上部内径にかけて徐々に直径を大きくした樽状の円筒22と、円筒の下部に連接した底24と、円筒22の上端に円筒より直径の小さい止め部25を設ける。また、バランサボディ20には中央に回転軸7と中心を一致して固定する雌ねじ28を設け、止め部25の上部に空気穴29を有するバランサカバ26を止めねじ27で固定する。前記樽状の円筒22の最大直径の位置23より上側の止め部25と、最大直径の位置23より下側の底24間の距離はボールが千鳥配列で並ぶことを可能とする高さとし、円筒の高さ(即ち、底24から止め部25までの高さ)はボール直径の約1.4倍〜2倍以上とする。また、底24はボールが1個入る幅とし、ボール21は概ね同一直径の球状体で円筒22下部の内周全体に充填する数を入れる。ボールの材質は鋼球や高密度の合成樹脂、高密度のゴム等で、バランサボディ20内部にグリースや潤滑油を適量入れ摩耗や錆を防止する。
【0019】
低速回転時のボール21に働く荷重を図2を用いて示すと、重力Fgと遠心力Frであり、その合力Ftによりボール21は円筒と底の両面に押しつけられ、円筒22下部全周囲にボール21が存在するのでボール21によるアンバランスは発生しない。低速回転時には、合力Ftと水平との角度S2が円筒22下部のボール接触部の傾斜角S1より大きく、ボールは円筒22下部で底24に接しているが、回転数が高速になると遠心力Frが大きくなり、角度S2が前記円筒22下部の傾斜角S1より小さくなると、ボールは底24を離脱する。角度S2の関係式は
tan(S2)=g/(r×ω2) … 式(1)
ω=2×π×n … 式(2)
なお、gは重力加速度(9.8m/s2)、rは回転中心とボール中心の距離(m)、ωは回転角速度(rad/s)、πは円周率、nは回転数(1/s)である。
【0020】
なお、振動の振幅は円筒の内径に比較して小さく回転中心と円筒中心の距離が小さいので、rは円筒中心とボール中心の距離として計算しても誤差が少ない。
【0021】
すなわち、式(1)で求めた角度S2が傾斜角S1と等しくなる回転数を超えるとボール21が底24から離脱し上に移動するので、円筒22下部の内径とボール接触部の傾斜角S1を設定することにより、ボール21が上に移動開始する回転数を決めることができ、ボール21によるアンバランスの発生しない回転数範囲が決まる。ボール21が上に移動開始する回転数をロータ8が振動する共振回転数より高く設定することにより、ロータ8の共振時にボールバランサの影響が発生しない構造とすることができる。
【0022】
図3は、高速回転時、ボール21が底24から離脱し、円筒22下部を上昇した直後の状態説明図である。回転数がロータ8の共振回転数を過ぎているので、回転中心が回転部の重心近傍になるので、回転中心P2はアンバランス質量により円筒中心P1とずれを発生し、円筒中心P1からアンバランス質量15側に移動する。各ボール21に発生する遠心力Frは回転中心P2を中心に発生するので、遠心力Frは円筒22を垂直に押す垂直分力Fvと円筒22の壁面を水平に動かす水平分力Fhに分けられる。各ボール21に作用する水平に動かす力Fhにより、ボール21は円筒をアンバランス質量15の反対側に移動し、各ボール21が密着する。
【0023】
図4は、図3の詳細説明図で、ボール22の1個に発生する荷重を示したものである。共振回転数の数倍以上の高速回転時の回転中心P2と円筒中心P1の距離eはアンバランス量に比例した大きさで略偏重心量である。JIS規格(JIS−B−0905)につりあいよさの等級が示されているが、一例として、回転速度3000rpmで、つりあいよさの等級6級の偏重心量は(0.05〜0.13)×10~3mと小さな値である。しかし、図1の遠心分離機のように、ロータ8や駆動モータ3の回転部をばねやダンパで支持する構造では、JIS規格のつりあいよさの等級で示される偏重心量の2倍程度の大きさまで許容できるようになっている。ボール21によるバランス修正を行うには、前記JIS規格に示される偏重心量でボール21が移動する必要がある。図4はボール21が円筒22の小さな凹み(全幅2a)35上を転がっている状態である。前記ボール21が凹み35を越えて移動するには、遠心力Frと垂直分力Fvのなす角度K2が、ボール21の中心P3と凹み35の半幅のなす角度K3より大きくなければならない。角度K2が角度K3より小さければ、ボール21は凹み35上に停止し、ボールバランスの機能を果たさない。ここで角度K2と角度K3の関係式を求めると、
K2={e/(R1−R2)}×sin(K1) 式(3)
K3=a/R2 式(4)
なお、eは回転中心P2と円筒中心P1の距離(m)、R1は円筒の半径(m)、R2はボールの半径(m)、K1は回転中心P2と円筒中心P1とボール中心P3のなす角度(rad)、aは凹み35の半幅(m)である。
【0024】
即ち、式(3)より、円筒中心P1と回転中心P2を結ぶ軸線上である角度K1=0と角度K1=π付近は、sin(K1)=0なので角度K2がほぼ0となり、水平分力Fhは発生しない。円筒中心P1と回転中心P2を結ぶ軸線と直角な位置である角度K1=0.5×π付近は、略sin(K1)=1となるので水平分力Fhが発生し、連続して接触している隣のボール21に前記角度K1=0.5×π付近で発生した水平分力Fhが伝達し、角度K1=π付近のボール21を水平に押し付ける力が発生する。
【0025】
式(3)と式(4)より、sin(K1)=1として、ボール21が凹み35を乗り越えるための、円筒22の半径R1とボール21の半径R2の関係式を求めると、
1+e/a>(R1/R2) 式(5)
ここで、回転中心P2と円筒中心P1の距離eをJIS規格6級に示される偏重心量とするとe=0.13×10~3m、凹み35の半幅は加工精度によって変化するが実機の凹凸を測定するとa=0.025×10~3m程度であり、式(5)に代入すると、6.2>(R1/R2)が得られる。また、遠心分離機のように、ロータ8や駆動モータ3の回転部をばねやダンパで支持する構造では偏重心量の2倍の大きさまで許容できるので、e=0.26×10~3mとして、11.4>(R1/R2)が得られる。即ち、円筒の半径R1はボールの半径R2の6.2倍以下とすることにより、凹みの半幅aが0.025×10~3m程度でもJIS規格6級に示される偏重心量にバランス修正することが可能である。なお、図1に示す遠心分離機のように、駆動モータ3及びロータ8等の回転体をばねとダンパで支持する構造では、ベース2と振動発生部を振動絶縁しているので、JISで示されているアンバランス量より大きなアンバランスまで許容できるので、円筒22の半径R1とボール21の半径R2の比率(R1/R2)を11.4以下とすることができる。
【0026】
図5は、図3の円筒22の中心P1からアンバランス質量15の反対側の円筒22を見た展開図で、合力Ftと水平との角度S2と円筒22の傾斜角が釣り合う位置30までボール21全体が上昇し、各ボール21に作用する水平に移動する力Fhにより各ボール21が密着し、更に円筒22を上昇する過程において各ボール21の転がり摩擦の差により数個のボール21が他のボール21に対し上または下方向にずれた状態である。ボール21に作用する水平に移動する力Fhにより、ボール21間には反力Fpが作用し、数個のボール21が上下にずれていると、反力Fpにより上にずれたボール21を更に上に押し上げる分力Fuが発生し、下にずれたボール21を更に下に押し下げる分力Fdが発生する。分力Fuと分力Fdによりボール21は千鳥配列に並び、水平に移動する力Fhによりボール21はアンバランス質量15の反対側に移動する。
【0027】
図6は高速回転時のボール21の状態で、アンバランス質量15の反対側にボール21が千鳥配列に並んでいる。ボール21がアンバランス質量15の反対側に移動することは、円筒22の中心P1と回転中心P2の距離によって発生するボールを水平に移動させる力Fhと、ボール21がボール21表面や円筒22内面の凹凸を乗り越える力と、円筒22の樽型の曲率半径によって発生する上下にずれたボール21を円筒22の傾斜角が釣り合う位置30に水平一列に戻す力が釣り合うまで自動的に行われる。従って、円筒22の曲率半径を大きくすることにより、上下にずれたボール21を円筒22の傾斜角が釣り合う位置30に水平一列に戻す力が小さくなり、多くのボール21がアンバランス質量15の反対側に移動するので、円筒22の中心P1と回転中心P2の距離が小さくなり、高速回転時のロータの振動が小さくなる。
【0028】
一例として最大直径位置23の直径が110mmで円筒22の樽型の曲率半径を200mmとしたバランサボディ内に、直径22mmのボール21を入れ、円筒22とボール21の半径比(R1/R2)を5として、毎分3000回転で高速回転試験をした結果、ボールバランサ無しに比べてこのようなバランサを付けた場合、高速回転時の振動は約5分の1以下になった。
【0029】
前記円筒22の半径R1とボール21の半径R2の比率(R1/R2)を11.4以下と小さくすると、ボールの表面や円筒22の内面の凹凸を乗り越えやすく、アンバランス時のボール21の動きが良くなり、図11と図12の従来のボールバランサの高速回転時のボールの移動にも有効に働き、高速回転時の残留アンバランス量を小さくすることができる。
【0030】
図7は遠心分離機をゆっくり加速した時の回転数の上昇とロータの振幅変化を記録したものである。曲線Aはロータに入れた試料にアンバランス質量を付加し、本発明によるボールバランサを装着しない従来の遠心分離機を運転した時の曲線で、ロータ8と駆動モータ3の質量やスプリング5やゴム管6のばね定数等によって決まるロータの共振回転数n1で最も振幅が大きいが、共振回転数を超えても振幅の大きい状態が続いている。この場合、低速回転時は、ロータ8の振幅による騒音及び、回転軸や軸受の荷重は小さいが、高速回転時のロータ8の振幅が大きな状態は回転軸や軸受に大きな荷重が発生し、騒音も大きく、回転軸や軸受の早期損傷や破損を招くことになる。
【0031】
曲線Bはロータに入れた試料に曲線Aと同程度のアンバランス質量を付加し、図11に示す従来のバランサを取り付けて運転した時の曲線で、共振回転数n1で振幅が大きくなり共振点を乗り越えられない。曲線Cは試料のバランス調整を行ってアンバランスを少なくし、図11の従来のバランサを取り付けて運転した時の曲線で、共振回転数n1でボールが移動してアンバランスを付けた場合より振幅が大きくなっているが、共振回転数を超えると振幅が急激に小さくなっている。しかし、ボール21や環状ケース40の凹凸が少し大きいと、高速回転時の振動が曲線C´のように大きくなり、ボールバランサが働いた後の振動を小さくできないことがある。すなわち、従来のバランサは共振回転数以上の高速回転数領域ではロータの振幅を小さくする効果があるが、その振動低減効果はボール21や環状ケース40内面の凹凸により悪くなることが有る。また、共振回転数ではロータの振幅を大きくする悪影響がある。
【0032】
図8は本発明のボールバランサを装着した遠心分離機において、ロータに入れた試料に図7の曲線Aと同程度のアンバランス質量を付けて運転した時の回転数の上昇とロータの振幅変化を記録したものである。回転開始からボール21が底24を離脱する回転数n2の範囲の振幅は、図7の曲線Aのバランサのない遠心分離機を運転した場合と略同じである。回転数n2より高速回転になると、ボール21が樽状の円筒22内面に上昇し更にアンバランス位置の反対側に移動して、バランスが良くなり振幅が減少する。更に高速回転すると、重力に対する遠心力の比率が大きくなり、ボールが釣り合う位置に移動する力が大きくなり、ロータ8の振幅がさらに小さくなる。
【0033】
図9と図10は本発明の他の実施例で、図9は低速回転時、図10は高速回転時の状態図である。前記樽状の円筒22において、円筒22下部の縦断面の円弧に対し、上部円筒31の縦断面を回転軸と平行な直線とした構造で、上部円筒31の高さはボール直径の約1.4倍以上で、ボール21が2列以上の千鳥配列に並ぶことを可能とする高さを有している。ボール21が底24から離脱する回転数をロータ8の共振回転数n1より高くなるように円筒22下部の内径と傾斜角S1を設定し、ロータ8の共振時にボールバランサの影響が発生しない構造とする。円筒22下部は、傾斜角S1と円筒内面の最大直径位置31を滑らかに結ぶ円弧とし、ボールバランサを小型とするため円弧の曲率半径を小さくする。
【0034】
図10に高速回転時の状態を示し、本実施例の特徴を説明する。高速回転時、ボール21は上部円筒31に上昇し、回転軸と平行な直線の面上にあり、図2の実施例で発生した樽型の曲率半径によって発生する上下にずれたボール21を円筒面の傾斜角が釣り合う位置に水平一列に戻す力を、図10の実施例では重力だけにして小さくすることが出来る。すなわち、高速回転時、千鳥配列で上下にずれたボール21を水平一列の位置に戻す力が重力だけとなるので、ボール21に作用する水平に移動し千鳥配列にする力Fhに比べ、千鳥配列を水平一列に戻す力が相対的に小さくなり、ボール21がアンバランス質量の反対側に移動しやすくなる。これより、残留アンバランス量が小さくなり、高速回転時のロータ8の振動が図2の実施例より小さくなる。
【0035】
遠心分離機には、図1の例のように試料をいれるバケット9が回転数によって角度変動するロータや、試料を入れる穴の角度が固定のロータ等があるが、ロータの種類は何れでも、アンバランス発生部の近傍に、本発明のボールバランサを設ければ、試料にアンバランスがあっても高速回転時の振動は少なくすることが出来るので、試料の質量バランス調整を省くことが出来る。よって、分離前作業の時間が短縮される。
本発明のボールバランサを回転機械のアンバランスが発生するロータの近傍に取り付ける。前記ボールバランサは、鉛直の回転軸を中心とする円筒と、前記円筒の下部に連接する底と、下部円筒の内周全体に充填したボールで構成され、前記円筒の半径R1と前記ボールの半径R2の比率(R1/R2)を11.4以下となるような円筒とボールの寸法比として、高速回転時にボール表面やボール転動面の凹凸を乗り越えてボールを移動可能とする。また、前記円筒の軸方向の高さはボール直径の約1.4倍〜2倍以上で、高速回転時にボールが複数列(2列以上)の千鳥配列に並ぶ事が出来る円筒高さを有する。前記円筒は、底と連接する下部内径から上部内径にかけて徐々に直径を大きくした樽状の円筒で、前記底と連接した下部円筒は下面が狭い傾斜面となり、ボールに発生する遠心力により、ロータの共振回転数より高速回転時にボールが前記底から離脱するよう、前記傾斜面の内径と傾斜角を設定する。
この傾斜角の作用により、ロータの共振回転数より低い回転数の時に、ボールは下部円筒の内周全体に充填されているため、ロータに挿入された試料のアンバランス量に関わらず、ボールによるアンバランスは発生しない。
また、回転数が遠心分離機のロータが振れる共振回転数より高速になると、ボールが底から離れ傾斜面を上昇し、各ボールの高さがわずかに変化する。更に、ロータの共振回転数より高速で回転しているので、回転中心が円筒中心からアンバランス質量側に移動し、ボールにはアンバランス質量の反対側に水平に移動する力が発生する。前記水平に移動する力と各ボールの高さのばらつきにより、ボールはボール表面やボール転動面の凹凸を乗り越えて上下に交互に移動して千鳥配列になり、アンバランス質量の反対側に集まる。ボールの集まる数は、ボール表面やボール転動面の凹凸を乗り越えてボールを水平に移動させる力と、円筒内面の樽型の曲率半径によって発生する上下にずれたボールを水平一列に戻す力が釣り合うまで自動的に行われ、回転軸に対する試料のアンバランス質量のモーメントが各ボールのモーメントの合力により補正され、円筒中心と回転中心が近くなり、振動が小さくなる。
すなわち、ロータの共振回転数以下の低速回転時はボールが下部円筒の全周に充填されているため、ボールによるアンバランスは発生せず、共振回転数以上の高速回転時は、円筒を上昇したボールがボールや円筒面の凹凸を乗り越えて、アンバランス質量の反対側に千鳥配列になって集まり、試料のアンバランスを補正する。前記樽状の円筒内のボールは底から離脱後、回転数の増加につれてボールが徐々に上昇するので、ボールの急激な移動がなく、ボールの衝突音が小さい特徴をも有する。
また、減速時にロータの共振回転数に近づくと、ボールは底に近づき、共振回転数時には底が全ボールで充填される。これより、加減速時とも、アンバランスが存在しても共振回転数時に振動が過大にならず、また高速回転時には自動バランスが働き、振動が小さい回転機械とすることが出来る。
また、前記樽状の円筒において、下部円筒の縦断面は円弧とし、上部円筒の縦断面を回転軸と平行な直線とした構造とすると、次の現象により高速回転時のアンバランス補正能力を高めることが出来る。すなわち、ボールの集まる最終の位置は、ボールをボール表面やボール転動面の凹凸を乗り越えて水平に移動させる力と、円筒内面の上下にずれたボールを水平一列に戻す力が釣り合うまで自動的に行われるので、高速回転時のボールを上部円筒の直線の面上に上昇させ、水平一列の位置に戻す力を重力だけに小さくし、ボールがアンバランス質量の反対側に移動しやすくする。これより、高速回転時のアンバランス補正量が大きくなり、高速回転時のロータの振動が小さくなる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、ロータに入れた試料にアンバランスがあって、回転数をゆっくり変化させても、ロータが振れる共振回転数でボールが円筒下部全周にあるので、ボールバランサによるアンバランスは発生せず、ロータの振動は過度に大きくならない。また、高速回転時のボールは、ボール表面や円筒内面の凹凸を乗り越えことが容易で、アンバランス質量の反対側の円筒に千鳥配列に集まり易く、ロータの振動を小さく押さえることができ、回転軸や軸受の荷重が小さくなる。よって、試料の質量バランス調整を省くことができるので分離前作業の時間が短縮され騒音が低く長寿命の遠心分離機とすることが出来る。
【0037】
従来のボールバランサは、ボール一列の環状ケース内のボールでバランス補正するが、本発明のボールバランサは、円筒の高さが高く、千鳥配列の2列以上にに並んでバランス補正するので、最大補正バランス量が従来のボールバランサの2倍以上とバランス補正範囲が広くなり、小型のバランサとすることが出来る。
【0038】
また、内面が樽状の円筒において、下部円筒の縦断面の円弧に比べ、上部円筒の縦断面が回転軸と平行な直線としたボールバランサは、高速回転時、ボールは上部円筒の直線の面上にあり、ボールに作用する水平に移動し千鳥配列にする力に比べ、千鳥配列を水平一列に戻す力が相対的に小さくなり、ボールがアンバランス質量の反対側に移動しやすくなり、アンバランス補正量が大きくなり、高速回転時のロータの振動が更に小さくなる。
【0039】
また、ロータの種類は何れでも、アンバランスの発生する部分の近傍に本発明のボールバランサを設ければ、試料にアンバランスがあっても高速回転時の振動は少なくすることが出来るので、試料の質量バランス調整を省くことが出来る。よって、分離前作業の時間が短縮される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のボールバランサの一実施例を遠心分離機に取り付けた状態の縦断面図。
【図2】 図1のボールバランサの低速回転時の状態を示す縦断面図。
【図3】 図1のボールバランサのボールの動きを示す平面図。
【図4】 図1のボールバランサのボールに働く荷重を示す平面図。
【図5】 図1のボールバランサのボールの動きを示す展開図。
【図6】 図1のボールバランサの高速回転時の状態を示す縦断面図。
【図7】 ボールバランサが無い遠心分離機及び、従来のボールバランサを用いた遠心分離機を回転した時のロータの振幅を示す図。
【図8】 本発明のボールバランサを用いた遠心分離機を回転した時のロータの振幅を示す図。
【図9】 本発明のボールバランサの他の実施例の低速回転時の状態を示す縦断面図。
【図10】 図9の実施例の高速回転時の状態を示す縦断面図。
【図11】 従来のボールバランサの例を示す横断面図。
【図12】 従来のボールバランサの例を示す縦断面図。
【符号の説明】
7は回転軸、8はロータ、15はアンバランス質量、20はバランサボディ、21はボール、22は樽状の円筒、24は底、31は回転軸と平行な直線の円筒、35は凹凸部である。

Claims (10)

  1. 鉛直の回転軸を中心とする円筒を有し、前記円筒内に複数のボールを内蔵し、該ボールの移動によってバランスを自動調整するボールバランサにおいて、
    前記円筒の内面の略中央部に最大直径位置を有し、前記最大直径位置の半径(R1)とボールの半径(R2)の比率(R1/R2)と、前記円筒の円筒中心から回転中心までの距離(e)と、前記円筒内の凹みの半幅(a)との関係を、1+e/a>(R1/R2)としたことを特徴とするボールバランサ。
  2. 前記最大直径位置の半径と前記ボールの半径の比率(R1/R2)を11.4以下としたことを特徴とする請求項1記載のボールバランサ。
  3. 前記円筒の高さを、前記複数のボールが高さ方向に少なくとも2列の千鳥配列に並ぶことが可能な高さとし、ロータの共振回転数を越えてから前記ボールが少なくとも2列の千鳥配列になることにより、バランスを自動調整することを特徴とする請求項1又は2記載のボールバランサ。
  4. 前記円筒の内面を前記最大直径位置を有する樽型形状としたことを特徴とする請求項1記載のボールバランサ。
  5. 前記円筒の内面を前記最大直径位置より上部は、回転軸と平行な直線としたことを特徴とする請求項1記載のボールバランサ。
  6. 駆動モータと、該駆動モータと連結する回転軸と、該回転軸に装着され、且つ、試料を内蔵する容器が装着されるロータを有した遠心分離機において、
    鉛直の回転軸を中心とする円筒を有し、前記円筒内に複数のボールを内蔵し、前記円筒の内面の略中央部に最大直径位置を有し、前記最大直径位置の半径(R1)とボールの半径(R2)の比率(R1/R2)と、前記円筒の円筒中心から回転中心までの距離(e)と、前記円筒内の凹みの半幅(a)との関係を、1+e/a>(R1/R2)としたボールバランサを装着した遠心分離機。
  7. 前記最大直径位置の半径と前記ボールの半径の比率(R1/R2)を11.4以下としたことを特徴とする請求項6記載の遠心分離機。
  8. 前記円筒の高さを、前記複数のボールが高さ方向に少なくとも2列の千鳥配列に並ぶことが可能な高さとし、ロータの共振回転数を越えてから前記ボールが少なくとも2列の千鳥配列になることにより、バランスを自動調整することを特徴とする請求項6記載の遠心分離機。
  9. 前記円筒の内面を前記最大直径位置を有する樽型形状としたことを特徴とする請求項6記載の遠心分離機。
  10. 前記円筒の前記最大直径位置より上部は、回転軸と平行な直線としたことを特徴とする請求項5記載の遠心分離機。
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