JP3788443B2 - 電力線搬送通信用の信号注入抽出装置および電力線搬送通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力線搬送通信に用いる信号注入抽出装置に関し、より特定的には、電力線の導体に非接触の状態で高周波信号を注入し、または非接触の状態で電力線から高周波信号を抽出する高周波信号注入抽出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、非接触の状態で電力線に交流電流などの電気信号を注入し、または電力線から電気信号を抽出するために、強磁性体のコアを用いたトランス構造の装置が用いられている。図8は特許文献1に記載の従来の信号注入抽出装置の構成を概念的に示す斜視図である。図8に示すように、信号注入抽出装置100は、電力線101の周りを囲むように配置された強磁性体コア102を備えている。高周波信号を注入または抽出するために、強磁性体コア102として高い透磁率を有しかつ高い周波数の領域で低損失の特性を示すフェライトコアが用いることが多い。環状の強磁性体コア102は電力線への着脱を容易にするために半割れ構造にするなど、一体構造でなくてもよい。強磁性体コア102の外周面の周囲には信号注入抽出用巻線103が配置されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−319815号公報
【0004】
信号注入抽出装置100を用いて電力線101に高周波信号を注入する場合には、巻線103に注入したい信号として高周波電流を流す。巻線103に流れる高周波電流によって強磁性体コア102の内部には磁束が生じ、この磁束と強磁性体コア102の透磁率に応じて、電力線101に高周波電流が誘導されることにより、高周波信号が注入される。
【0005】
また、図8に示される装置100を用いて電力線101に流れる高周波電流すなわち高周波信号を抽出する場合は、電力線101に流れる高周波電流によって強磁性体コア102内に磁束が発生し、この磁束と強磁性体コア102の透磁率に応じて巻線103に誘導される高周波電流すなわち高周波信号を抽出する。
【0006】
電力線搬送通信システム(以下PLCと呼ぶ。)は、商用周波数(一般的には50Hzまたは60Hz)の商用電流が流れる電力線に、通信信号としての高周波信号(数kHzから高いものでは数十MHz以上に及ぶ)を重畳して通信を行うものである。このようなPLCは、専用の通信回線を使用することなく、各家屋等に引き込まれた既設の電力線(配電線あるいは電灯線とも呼ばれる。)を利用して、大容量のデータ送受信が出来るシステムとして注目されている。
【0007】
PLCでは商用電流の流れる既設の電力線に高周波信号を注入し、また逆に高周波信号と商用電流の重畳した電力線から高周波信号だけを通信信号として抽出する必要がある。この場合、信号の注入抽出装置にとっては、商用電流は商用周波数の信号として高周波信号と同様に作用する。すなわち、例えば信号の抽出において抽出される信号は、コアや巻線の周波数特性による大きさの差はあるものの、商用周波数の成分と高周波成分が重畳した信号となる。
【0008】
PLCにおける高周波信号の注入抽出に前述のような強磁性体コアと巻線を用いた信号注入抽出装置を適用する場合、電力線に流れる商用電流の大きさと、電力線に重畳されて流れる高周波信号電流の大きさが桁違いに異なるために問題が生じる。
【0009】
電力線からの信号抽出を例に説明する。電力線に流れる電流によって電力線の周囲に生じる磁界によって、強磁性体コア内には磁束が生じる。この磁束をうち消す向きに巻線に電流が誘導されることにより、結果として電力線に流れる電流と同じ信号が巻線から抽出されることになる。ここで、抽出される信号の大きさは巻線の構成により異なる。電力線には大きな商用電流信号と微弱な高周波信号が重畳されて流れているため、強磁性体コアと巻線とによって決まる周波数特性が双方の信号に対して同じ感度特性であれば、抽出される信号は同じ比率の重畳信号として検出される。通信のためには高周波信号だけを抽出したいのであるから、信号注入抽出装置にはフィルターを設ける等により周波数特性を持たせて、低周波である商用周波信号をカットし、高周波信号のみを通す工夫がなされて使用される。
【0010】
ところが、この構成においては強磁性体コアの飽和特性が問題となる。強磁性体コアには飽和特性があり、コア中に一定以上の磁束が生じると、それ以上の磁束が誘起されないという磁気飽和が起こる。上述の通り、商用電流信号と高周波信号には大きなレベル差があるため、商用電流信号によって磁気飽和が生じると、それにさらに加えて高周波信号に対応する磁束がコア内に生じることが出来ず、結果として巻線に高周波信号が抽出されないという問題がある。
【0011】
このため、磁気飽和を生じにくくする工夫として、閉じた環状である強磁性体コアに切れ目(ギャップ付きコアとも呼ばれる。)を入れる方法や、本願発明者等の考案による磁界キャンセル用巻線を用いる方法(特許文献1)などが提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらの方法では商用電流信号による磁束飽和を抑制する効果と共に、必要な高周波信号の損失も大きくなるという不都合を伴う。すなわち高周波信号に対しても磁束を小さくする効果が生じ、注入抽出される信号の大きさが小さくなる(別な言い方をすれば、高周波信号に対する結合損失が大きい)のである。また、商用電流の有無や大きさによって磁束飽和が生じたり生じなかったりするために、注入抽出される高周波信号のレベルが変動するという問題があった。
【0013】
このような問題の解決のため、本願発明では強磁性体コアの磁気飽和を抑制し、かつ高周波信号の結合損失が小さい信号注入抽出装置を提供する。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本願発明では複数相の交流電流が流れる電力線への高周波信号の注入抽出を対象としており、複数相交流電流を通電するための一組の複数の電力線の周囲を取り囲むように配置された環状強磁性体コアと、環状強磁性体コアの中心孔を貫通するように当該環状強磁性体コアの外周面に配置された信号注入抽出用巻線とを備える信号注入抽出装置とした。
【0015】
複数相交流電流とは、n相(nは2以上の自然数)の位相の電流を一組とする交流電流であり、一般的に用いられているのは単相交流(相数が2つ)あるいは三相交流である。電力線は相数に対応する本数を一組に構成されており、各電力線には単相の場合は位相が180度異なる電流、三相の場合は位相がそれぞれ120度異なる電流が流れる。これらの一組の電力線がまとめて中心孔を貫通するように電力線の周囲を囲むコアを設けると、各電力線を流れる電流により生じる磁界によってコア内に誘起される磁束は、互いに位相の異なる電流による磁束によって打ち消し合って理想的にはゼロとなるため、磁気飽和によって高周波信号の注入抽出が出来なくなるという問題が生じないという効果がある。
【0016】
高周波信号は、コアに設けた信号注入抽出用巻線を介して、一組の各電力線のそれぞれに同相の信号として注入抽出される。
【0017】
また、複数相交流電流を通電するための一組の複数の電力線の、それぞれの電力線の周囲を囲むように配置された複数の環状強磁性体コアと、該複数の環状強磁性体コアの少なくとも一つの環状強磁性体コアの中心孔を貫通するようにコアの外周面に配置された信号注入抽出用巻線と、上記複数の環状強磁性体コアのうちの少なくとも2つの環状強磁性体コアの中心孔を貫通するような閉曲線を形成する打ち消し用巻線とを備える信号注入抽出装置としてもよい。(請求項1)
【0018】
この構成によれば、環状強磁性体コア(以下、単に「コア」と呼ぶ。)に生じた磁束が互いにうち消されることによって磁気飽和の発生が抑制され、磁気飽和によって高周波信号の注入抽出が出来なくなるという問題が生じ難くなるという効果がある。この場合、複数相一括でコアを設ける場合に比べてコアが2つあるいは3つと複数必要になるが、各コアを小さくできるメリットがある。また、電力線が互いに間隔をおいて配置されているなどの理由で、一括して貫通するようにコアを設けることが接地場所やコアの大きさの点で困難な場合には特に効果的である。
【0019】
打ち消し用巻線は互いに隣り合う2つのコアの中心孔を貫通するように設け、その貫通の方向は、それぞれのコアに生じる磁束によって誘導される電流の向きが互いに逆方向になるように配置するのが効果的である。(請求項2)
【0020】
各相電流は位相の異なる同一周波数の電流であり、それぞれ隣り合うコアが貫通した打ち消し用巻線には位相の異なる電流が重畳して誘導される。全相の電流を重畳すると互いにうち消しあうことにより理想的には大きさはゼロになることから、コアへの当該交流電流により生じる磁束が打ち消されることになる。その結果磁気飽和が生じなくなるのである。
【0021】
信号注入抽出用巻線は、各コアに個別に設けても、1本の曲線を構成するように1本の信号注入抽出用巻線が複数のコアの中心孔を通るように外周面に配置される形態にしても良い。いずれの場合でも、信号注入抽出用巻線は、各相の電力線に高周波信号が同相で注入抽出される向きに配置されることが必要である。(請求項3)
【0022】
これは、例えば信号の注入の場合を例にすると、信号注入抽出用巻線に流れる高周波信号電流によって各コアに生じる磁束が同相であり、かかる磁束によって打ち消し用巻線に誘導される高周波電流が同じ打ち消し用巻線を貫通する他のコアに生じた磁束によって誘導される高周波電流と、互いに打ち消し合うことを意味する。したがって高周波電流に対しては打ち消し用巻線は、注入抽出を妨げることがないのである。
【0023】
また信号注入抽出用巻線は、いずれか1相のコアのみに設けてもよい。この場合でも、磁気飽和が抑制された結果として、信号注入抽出用線によって注入あるいは抽出される高周波信号は商用周波数の交流電流の影響を受けることがないという効果は同様に得られる。高周波信号電流に対しても打ち消し用巻線が注入抽出を阻害する向きに作用することになる不利益はあるが、打ち消し用巻線が他のコアをも貫通する形態で設けられていることにより、高周波信号に対するインピーダンスが比較的高くなり、高周波信号の注入抽出が阻害される程度は大きくはない。全体の装置構成が比較的簡素化出来るメリットを重視する場合には、この構成が好ましい。
【0024】
以上のような信号注入抽出装置を用いて、複数相交流電流を通電するための一組の電力線のうち、少なくとも1本の電力線を伝送路として利用するPLCとすれば、電力線を流れる商用電流の大きさによる通信品質への影響を低減し、かつ通信信号の注入抽出損失を低減した電力線搬送通信システムとすることが可能である。(請求項4)
【0025】
【実施の形態】
(実施の形態1)
配電用の交流電流は一般に単相あるいは三相の複数相交流電流であり、配電線は各相電流を流すための一組の電力線で構成されている。以下、三相交流を例に説明するが、n相の場合に一般化して考えることが可能である。
【0026】
図1は、三相交流を通電する一組の電力線が貫通するようにコアを設けた構成を、電力線の延線方向に垂直な断面方向の断面図で示したものである。三相交流を通電する3本の電力線110、120、130は、それぞれ導体と絶縁体を主な構成要素として構成された一般的な電力線である。3本の電力線が貫通するように環状強磁性体コア20が設けられている。当該コアの外周面には信号注入抽出用巻線30が設けられており、通信装置40につながっている。ここでコアの外周面に巻線を設けるとは、環状コアの中心孔を少なくとも1回は貫通するように線を配置することを言い、巻数すなわちコアの中心孔を貫通する回数は信号注入抽出の所望の感度に応じて設計可能である。コアは電力線に沿う方向(図の紙面垂直方向)に奥行き長さを持つが、その長さは任意に設計可能である。また、各断面寸法は適用する電力線の寸法に合わせて設計可能である。コアの材質はフェライトや鉄が用いられるが、一般に強磁性体と呼ばれる材料であれば特に限定されるものではない。
【0027】
3本の電力線には、商用周波数の交流電流であって、360度を相数の3で等分した120度ずつ位相が異なり、大きさのほぼ等しい商用電流が流れている。それぞれの商用電流により電力線の周囲には磁界が形成され、コア20内に磁束が誘起される。1本の電力線を流れる商用電流によって誘起される磁束のみを考えると、正弦波形状で時間的に変化する交流磁束であり、コアの飽和特性によっては磁束が飽和する場合もあり得る。しかし、他相の電力線を流れる電流に起因する磁束がそれに重畳されるために、磁束は互いに打ち消し合わされ、理想的にはゼロとなる。理想的には、というのは、各電力線のインピーダンス特性等の要因により各相の商用電流の大きさが厳密には一致していなかったり、位相差が厳密には120度からずれている場合もあり得るためであり、本発明の説明においては理想的な状態を考えればよい。
【0028】
かかる状態において、通信装置40からの高周波信号を信号注入抽出用巻線30に通電すれば、高周波信号電流によってコア内に磁束が誘起され、当該磁束によって各電力線には高周波信号電流が誘導される(信号注入)。逆に、電力線に重畳して流れる高周波信号電流によって電力線の周囲に生じる磁界によりコア20には磁束が誘起され、当該磁束によって信号注入抽出用巻線30には高周波信号が誘導されるのである(信号抽出)。
【0029】
なお、電力線は絶縁体の外周に導電体からなる遮蔽層を有している場合があり、遮蔽層は接地されていることが多い。遮蔽層は導体を流れる電流により外部に生じる磁界を遮蔽するための層であるため、遮蔽層の外側では磁界が非常に微弱になっている。したがって、遮蔽層を有する電力線において上記の説明におけるコアを設置する部分は各電力線の遮蔽層を除去した部分である。例えば、電力線の接続箱、変圧器、開閉器等の接続部分近傍では遮蔽層が除去されていたり、また除去可能な部分が多い。また、遮蔽層は各相の電力線に個別に設けられている場合と、3相を一括して3本の導体を取り囲む形で設けられている場合があるが、いずれであっても適用には問題ない。
【0030】
通信装置において高周波信号を注入抽出するための2つの端子の内の1端は接地側として電力線の遮蔽層に接続されることが多い。その意味で図1では接地80を図示している。したがって、電力線に注入された信号は、電力線と遮蔽層の間で電力線をあたかも通信用の同軸ケーブルのように伝搬することになる。遮蔽層を有しない電力線の場合に、接地に相当する別な接地電線を併設してもよい。この場合には高周波信号は各電力線と接地電線間を伝搬する。
【0031】
(実施の形態2)
図2は本発明の別な形態を説明するものである。図2では3本の電力線110,120,130のそれぞれが個別に貫通するように3つのコア21,22,23が設けられている。また、隣り合うコアが貫通するような曲線を描いて打ち消し用巻線51,52,53がそれぞれ設けられている。打ち消し用巻線はn相の交流電流ではn×(n−1)/2の組み合わせ本数だけ構成可能であるが、3相交流(n=3)の場合は3本となる。また、各コアには通信装置40につながる信号注入抽出用巻線31,32,33が個別に設けられている。図では信号注入抽出用巻線の一端は接地につながるように記載しているが、通信装置40の信号入出力端での接地と電気的にはつながっており、図1の場合と同じように信号注入抽出用巻線は通信装置を介して閉曲線を構成している。
【0032】
電力線110を流れる商用電流により電力線の周囲には磁界が形成され、コア21内には磁束が誘起される。同様にコア22,23にもそれぞれ電力線120,130を流れる商用電流によって磁束が誘起される。それぞれに誘起される磁束は、正弦波形状の交流磁束であり、これだけを考えるとコアの飽和特性によっては磁束が飽和する場合もあり得る。しかし、隣り合うコアを打ち消し巻線51,52,53でそれぞれ結合することによって、位相の異なる磁束により、誘起される電流が打ち消し合うように作用し、各コア内に商用電流によって誘起された磁束は飽和し難くなるのである。
【0033】
かかる状態において、通信装置40からの高周波信号を信号注入抽出用巻線31,32,33に通電すれば、高周波信号電流によってコア内に磁束が誘起され、当該磁束によって各電力線には高周波信号電流が誘導される(信号注入)。逆に、電力線110、120,130に重畳して流れる高周波信号電流によって電力線の周囲に生じる磁界によりコア21,22,23には磁束が誘起され、当該磁束によって信号注入抽出用巻線31,32,33には高周波信号が誘導されるのである(信号抽出)。なお、図2において遮蔽層につながる接地側はそれぞれ接地記号にて表現した。ここで、高周波信号は、各コアに対して同位相で磁束を生じる方向に巻く必要がある。同位相方向に巻くことにより、打ち消し巻線によって打ち消されることを免れるのである。この原理について、上述の商用電流による磁束の打ち消しと合わせて簡単のために単相交流で図示説明する。
【0034】
図3は高周波信号の注入抽出において打ち消し巻線が影響しないことを説明する図である。単相交流を流す2本の電力線110,120が貫通するようにコア21,22が設けられ、2つのコアを結合する打ち消し巻線51が設けられている。高周波信号の信号注入抽出用巻線31、32は、2つのコアに同位相で信号を注入抽出できるように巻かれている。同位相にという意味は、高周波信号電流によってコアに誘起される磁束が電力線に誘導する電流の向きが同じ向きになるようにということである。図3では、通信装置40から流される高周波信号電流は巻線31への電流iAと巻線32への電流iBに分流する。iAによりコア21には磁束φAが誘起され、またiBによってコア22には磁束φBが誘起される。図ではφAとφBの向きはいずれも時計回りの方向であり、これらの磁束から電力線に誘導される電流は図の手前側から奥側に向かう方向となる。
【0035】
この場合の打ち消し巻線51の作用を説明する。磁束φAにより打ち消し巻線51には、φAを打ち消そうとする向きに電流IAが誘導される。また磁束φBによっても同様に巻線51に電流IBが誘導される。電流IAの向きと、電流IBの向きは、図のように逆方向となるため、結果として51には電流が流れない。したがって、コア内の磁束φAおよびφBを打ち消そうとする磁束は生じず、高周波信号電流は阻害されることなく電力線に注入されるのである。電力線に重畳していた高周波電流を抽出する場合も誘導の関係が逆になるだけで同じ考え方となる。
【0036】
次に図4において商用電流によりコア内に生じる磁束が打ち消され、磁束の飽和が生じないことを説明する。電力線とコアおよび打ち消し巻線の構成は図3の場合と同様であり、通信装置および信号注入抽出用巻線は記載していない。一組の電力線110および120に流れる単相交流電流は位相が180度異なる正弦波電流である。図ではこれを電流の向きで示しており、電力線110の電流j1の向きが図の奥から手前方向、電力線120を流れる電流j2は手前から奥方向とした。この場合、j1により誘起されるコア内の磁束φ1は図の矢印のように反時計方向であり、同様にj2により誘起される磁束φ2は図のごとく時計方向である。打ち消し巻線51にはφ1およびφ2によって、それぞれを打ち消す向きに電流I1とI2が誘導される。これらの誘導電流I1とI2は同じ向きであるため、結果として、打ち消し巻き線内には、I1+I2の誘導電流が流れることになる。従って、かかる誘導電流によってそれぞれのコア21,22内にはφ1およびφ2を打ち消す向きの磁束が生じ、磁束が打ち消されることで磁束の飽和が抑制されるのである。
【0037】
以上の図3および図4での説明を合わせることで、商用電流による磁束を打ち消して磁束の飽和を抑制し、かつ高周波電流は打ち消すこと無く注入抽出が出来ることになる。説明は単相交流について行ったが、三相になっても考え方は同様であり、全相の電流が重畳することによる打ち消しの効果を得ることが可能である。
【0038】
(実施の形態3)
次に、図5は別な実施の形態を示した図である。図2と比べて信号注入抽出用巻線の構成が異なるのみで、その余の構成は同じである。図2と同じ符号を用いており、説明は省略する。
【0039】
信号注入抽出用巻線30は1本であり、各コアの中心孔を順に通るような閉曲線を描くように配置されている。ここで重要なことは、各コアに対して信号が同位相になる向きに配置されていることである。これにより、図3にて説明した場合と同様に、注入あるいは抽出される信号はそれぞれの打ち消し巻線によって打ち消されてしまうことなく、注入抽出が可能になるのである。
【0040】
図2のように各コアに個別に信号注入抽出用巻線を設ける場合に比べて構成が簡素化出来るメリットがある。
【0041】
(実施の形態4)
図6はさらに別な実施の形態を示した図である。図2と比べて信号注入抽出用巻線の構成が異なるのみで、その余の構成は同じである。図2と同じ符号を用いており、説明は省略する。
【0042】
信号注入抽出用巻線30は1本であり、複数のコアの内の1つのコアの中心孔のみを通るような閉曲線を描くように配置されている。したがって、信号が注入抽出できるのは1本の電力線(図では電力線130)のみである。電力線搬送通信においては、必ずしも全ての電力線を信号伝送に用いる必要は無いため、このような構成も可能である。この場合でも商用電流による磁束の飽和を抑制する効果を得ながら、通信を行うことができる。
【0043】
この場合、図3にて説明したような高周波信号電流が打ち消し巻線によって打ち消し合うことを免れることは出来ないが、打ち消し巻線51,52,53および他のコア21,22と共に形成される磁気回路により、高周波信号に対するインピーダンスは大きくなり、そのためコア23内の高周波信号に対応した磁束を打ち消そうとする磁束の損失が大きくなることで、高周波信号の注入抽出において受ける損失が小さくなるという効果がある。さらに図2や図5のように各コアを信号注入抽出用に用いる場合に比べて構成が簡素化出来るメリットがある。
【0044】
(実施の形態5)
図7は、上記のような信号注入抽出装置を利用したPLCのシステム構成例を説明するために、2地点間での通信として説明する図である。信号注入抽出装置としては図6にて説明した構成のものを例示に用いたが、もちろん他の実施の形態による信号注入抽出装置を用いた場合でもよい。
【0045】
図7の構成を説明する。電力線は3本が1組となって三相交流の商用電流を流すものである。説明の便宜上、各ケーブルの遮蔽層210,220,230とそれらに覆われる導体と絶縁体からなる部分110,120,130を分けて示している。電力線の任意の一地点には通信装置40と信号注入抽出装置90が設けられる。信号注入抽出装置90はそれぞれの電力線に設けられたコア21,22,23と、それらを連結するように設けられた打ち消し巻線51,52,53、および通信装置40からの高周波通信信号を流す信号注入抽出用巻線30から構成されている。一方電力線の他の地点には通信装置41と信号注入抽出装置91が設けられている。信号注入抽出装置91の説明は省略する。信号注入抽出用巻線の一端は遮蔽層220に接続されており、かかる遮蔽層は接地されている。
【0046】
上記の構成において、通信装置40から通信装置41へ信号を伝送する場合を説明する。通信装置40は伝送したい高周波信号電流を信号注入抽出用巻線30に流す。信号注入抽出用巻線30に流れた電流によってコア23中に誘起された磁束によって、それを打ち消す向きに電力線120には高周波信号電流が誘導によって流れる。ここで、信号注入抽出装置90は既に説明したように3つのコアとそれらを連結する打ち消し巻線によって構成されているため、商用電流によって磁束飽和が生じることが無く、高周波信号の注入が商用電流の大きさに影響されることは無い。
【0047】
信号は電力線120とその遮蔽層220によって構成される同軸ケーブルを伝搬し、信号注入抽出装置91の地点に至る。信号注入抽出装置91では電力線120を流れる高周波信号によりコアに磁束が誘起され、かかる磁束を打ち消す向きに信号注入抽出用巻線31に高周波信号電流が生じるため、通信装置41が当該高周波信号を受信することが出来る。ここでも信号注入抽出装置91は3つのコアとそれらを連結する打ち消し巻線によって構成されているため、商用電流によって磁束飽和が生じることが無く、高周波信号の注入が商用電流の大きさに影響されることは無い。
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、商用電流信号による磁束飽和を抑制することによって商用電流の大きさに影響を抑制し、また高周波信号に対する結合損失は小さいPLC用の信号注入抽出装置およびそれを利用した電力線搬送通信システムを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態として信号注入抽出装置の構成を概念的に示す図である。
【図2】この発明の異なる実施の形態として信号注入抽出装置の構成を概念的に示す図である。
【図3】この発明の原理の一つとして高周波信号電流と磁束の関係を概念的に説明する図である。
【図4】この発明の原理の一つとして商用周波電流と磁束の関係を概念的に説明する図である。
【図5】この発明の別な実施の形態として信号注入抽出装置の構成を概念的に示す図である。
【図6】この発明のさらに別な実施の形態として信号注入抽出装置の構成を概念的に示す図である。
【図7】本発明の信号注入抽出装置を用いた電力線搬送通信システムの構成を説明する概念図である。
【図8】従来の信号注入抽出装置を概念的に示す図である。
【符号の説明】
20,21,22,23 環状強磁性体コア
30,31,32,33 信号注入抽出用巻線
40,41 通信装置
51,52,53 打ち消し用巻線
80 接地
90,91 信号注入抽出装置
100 信号注入抽出装置
101 電力線
102 強磁性体コア
103 信号注入抽出用巻線
110,120,130 電力線
210,220,230 遮蔽層
Claims (4)
- 複数相交流電流を通電するための一組の複数の電力線の、それぞれの電力線の周囲を囲むように配置された複数の環状強磁性体コアと、該複数の環状強磁性体コアの少なくとも一つの環状強磁性体コアの中心孔を貫通するように該環状強磁性体コア外周面に配置された信号注入抽出用巻線と、上記複数の環状強磁性体コアのうちの少なくとも2つの環状強磁性体コアの中心孔を貫通するような閉曲線を形成する打ち消し用巻線とを備える電力線搬送通信用の信号注入抽出装置。
- n相(nは2以上の自然数)の相からなる交流電流を通電するための一組の複数の電力線の、それぞれの電力線の周囲を囲むように配置されたn個の環状強磁性体コアから任意に選ばれる2つの環状強磁性体コアからなるn×(n−1)/2個の環状強磁性体コアの組み合わせにおいて、前記打ち消し用巻線は、それぞれの組み合わせを形成する2つの環状強磁性体コアの中心孔を貫通するような閉曲線で構成されたn×(n−1)/2本の巻線であって、当該2つの環状強磁性体コア内に誘起される磁束によって前記打ち消し用巻線に誘導される電流の向きが互いに同方向になるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電力線搬送通信用の信号注入抽出装置。
- 前記信号注入抽出用巻線は、前記複数の電力線に同位相で信号が注入できるように設けられていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電力線搬送通信用の信号注入抽出装置。
- 複数相交流電流を通電するための一組の電力線のうち、少なくとも1本の電力線を伝送路として利用し、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の信号注入抽出装置を用いて信号の注入または抽出をすることを特徴とする電力線搬送通信システム。
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