JP3787911B2 - 画像信号の符号化/復号化装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、画像データの高能率符号化の一つであるフラクタル符号化に適用される画像信号の符号化/復号化装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、画像の持つ自己相似性という冗長度を取り除くことによって、画像圧縮を行うフラクタル符号化が提案されている。画像の一部分の画像パターンに注目すると、同じ画像内に良く似た画像パターンが異なったスケールで存在する性質を部分的自己相似性という。フラクタル符号化は、符号化対象画像をm×nのレンジブロックに分割する。そして、各レンジブロックに対して変換を求める。この変換は、それぞれ適当に決められるドメインブロックの画素値を取り出し、縮小、回転等の簡単な線形変換を画素値に施したもので、レンジブロック内の画素を置き換える処理である。フラクタル符号化は、レンジブロックの画像パターンを正確に近似する変換を決定することである。
【0003】
より具体的には、1フレームの画像を8×8画素のレンジブロックに分割し、また、16×16画素のドメインブロックが設定される。変換要素としては、4種類のもの(縮小変換、回転変換、鏡像変換、輝度変換)が設定され、また、これらの組合せの変換を含めて、合計8種類の変換が使用される。縮小変換は、4画素の値の平均をとって、水平、垂直の長さをそれぞれ1/2 に縮小するものである。回転変換は、0°、90°、180°、270°の反時計方向の回転である。鏡像変換は、左右を入れ替える処理である。輝度変換は、平均値分離後ゲインを乗じ、振幅方向に縮小する処理である。この変換の処理を一般式で表したものを以下に示す。
【0004】
【数1】
Figure 0003787911
【0005】
ドメインブロックに対する上述の変換を行った後、レンジブロックとの相似性をブロックマッチングによって見いだし、ドメインブロックの位置情報である、ベクトルおよび上式のパラメータ(すなわち、サーチ範囲内の位置、回転の角度、左右反転したかどうか)の伝送を行うことによって、情報量の圧縮がなされる。
【0006】
復号側では、初期画像からドメインブロックを切り出し、受信されたパラメータを用いて変換を行った結果をレンジブロックとして初期画像に張りつけ、それによって画像の更新を行う。この操作を繰り返し行うことで、除々に解像度のある復元画像を生成する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
かかるフラクタル符号化においては、画像における部分自己相似性をより簡単に見いだすために、前処理として平均値分離操作などを行なって、適当にゲインを変化させることで正規化処理を行ない、線形変換を行なって、マッチング演算を行なっている。より具体的には、符号化の最初のステップにおいて、レンジブロックの平均値を求め、各画素の値から平均値を減じたものを探索のターゲットデータとし、また、ドメインブロックのデータの平均値を求め、これを各データから減じている。しかしながら、平均値の分離に伴い、計算量が増大するという問題があった。
【0008】
従って、この発明の目的は、フラクタル符号化において、ADRC符号化という非常に簡単な正規化手段を用いることで、ゲインを変化させて反復する必要がなくなり、全体として計算量を削減することが可能な画像信号の符号化/復号化装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、この発明は、入力画像をm×nの大きさの第1のブロックに分割する手段と、
入力画像を第1のブロックと同一または異なる大きさのM×Nの第2のブロックに分割する手段と、
第1のブロックの画像データに対してADRC符号化を行う手段と、
第2のブロックの画像データに対してADRC符号化を行なう手段と、
第2のブロックのADRC符号化データの量子化データに対して、相異なる複数の線形変換を施す手段と、
第1のブロックと、複数の線形変換のそれぞれの線形変換後の第2のブロックとを、画面内で第2のブロック位置をずらせながらブロックマッチングを行なうことによって相似性のあるブロック位置と変換パラメータを決定する手段と、
ブロック位置情報と変換パラメータと第1のブロックのADRC符号化により生じたダイナミックレンジ、最大値、最小値のうちの二つの情報とを、第1のブロックのデータに代えて伝送する手段と
からなることを特徴とする画像信号の符号化装置である。
【0010】
また、この発明は、上述の符号化装置に対する復号化装置であって、入力画像をm×nの大きさの第1のブロックに分割し、入力画像を第1のブロックと同一または異なる大きさのM×Nの第2のブロックに分割し、第1のブロックの画像データに対してADRC符号化を行い、第2のブロックの画像データに対してADRC符号化を行ない、第2のブロックのADRC符号化データの量子化データに対して、相異なる複数の線形変換を施し、第1のブロックと、複数の線形変換のそれぞれの線形変換後の第2のブロックとを、画面内で第2のブロック位置をずらせながらブロックマッチングを行なうことによって相似性のあるブロック位置と変換パラメータを決定し、ブロック位置情報と変換パラメータと第1のブロックのADRC符号化により生じたダイナミックレンジ、最大値、最小値のうちの二つの情報とを、第1のブロックのデータに代えて伝送するようにした画像信号の符号化装置に対する復号化装置において、
受信した第2のブロックの位置と変換パラメータと第1のブロックのADRC符号化により生じたダイナミックレンジ情報とを格納するメモリ手段と、
メモリ手段に格納された第2のブロックの位置情報に基づいて、任意の初期画像から個々の第1のブロックに対応した第2のブロックを切り出し、切り出された第2のブロックをADRC符号化する手段と、
変換パラメータを使用してADRC符号化のデータに対して線形変換を行う線形変換手段と、
メモリ手段に格納されたダイナミックレンジ情報とを使用して、線形変換手段の出力をADRC復号する手段と、
ADRC復号により生成された画像データにより初期画像を更新し、復号化画像を形成するメモリ手段とからなることを特徴とする画像信号の復号化装置である。
【0011】
ADRC符号化によりレンジブロック(第1のブロック)およびドメインブロック(第2のブロック)の両者の画像データをレベル方向に正規化し、正規化されたドメインブロックのデータに対して種々の線形変換を行う。この線形変換後のドメインブロックのデータとレンジブロックのデータとの間で、ブロックマッチングを行い、相似性を見いだす。レンジブロックおよびドメインブロックの両者のデータをレベル方向に正規化しているので、ゲイン補正を考える必要がなくなり、計算量を減少できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。まず、符号化について説明する。図1にこの発明によるエンコーダのブロック図を示す。入力端子1からのディジタル画像信号がレンジブロック化回路2およびドメインブロック化回路4に供給される。レンジブロック化回路2およびドメインブロック化回路4に対してADRCエンコーダ3およびADRCエンコーダ5がそれぞれ接続される。
【0013】
レンジブロック化回路2では、入力画像信号が2次元の(m×n)、例えば8×8画素の大きさのレンジブロックに分割され、レンジブロック毎にADRCエンコーダ3によって、ADRC符号化が行なわれる。ADRC符号化は、ブロック毎に画素値の最大値MAX、最小値MINを検出し、最大値MAXおよび最小値MINの差である、ダイナミックレンジDRを求め、ダイナミックレンジDRとビット数から決定される量子化ステップ幅によって、最小値MINを減じた修正入力画素値を元の量子化ビット数(8ビット)より少ない固定のビット数(例えば4ビット)で再度量子化するものである。符号化の結果である、ダイナミックレンジDR、最小値MINがパラメータメモリ8に送られ、各画素の量子化データQrが差分の2乗和を計算する演算回路7に送られる。ダイナミックレンジ情報としては、ダイナミックレンジDR、最大値MAX、最小値MINのうちの二つを伝送すれば良い。
【0014】
一方、ドメインブロック化回路4は、上記レンジブロックに対応したサーチ範囲(計算時間を抑えるために、例えば水平、垂直ともに−7〜+8画素程度)の中から、2次元の(M×N)、例えば16×16画素程度の大きさのドメインブロックを切り出し、ADRCエンコーダ5により、ADRCエンコーダ3と同様のADRC符号化を行なう。
【0015】
ADRCエンコーダ5からのドメインブロックの符号化出力の中の量子化データQdに対して、次の線形変換回路6において、縮小変換(縦横それぞれ1/2)、回転(0°、90°、180°、270°)、反転(左右反転)などの操作が行なわれ、最終的な画素単位の量子化データQd´が差分の2乗和を計算する演算回路7に送られる。線形変換回路6においてなされる処理は、座標変換処理である。なお、線形変換回路6における変換パラメータは、パラメータメモリ8に供給され、パラメータメモリ8に記憶される。
【0016】
差分の2乗和を計算する演算回路7においては、レンジブロックとドメインブロックの画素単位の差分(Qr−Qd´)が計算され、この差分の2乗値のブロック内での総和が計算され、計算された差分の2乗値の総和が評価値テーブル9に送られ、評価値としてテーブル9に格納される。なお、評価値としては、差分の絶対値和等を用いることができる。
【0017】
次に、線形変換回路6において、パラメータを変更して変換処理を行い、同様にして差分の2乗値の総和を求め、これを評価値テーブル9に格納する。この動作を全てのパラメータに対して行ない、サーチ範囲内で1つのドメインブロックの位置に対する計算を終了する。一例として、下記に挙げる8種類のパラメータが使用される。
【0018】
第1のパラメータ: 1/2の縮小
第2のパラメータ: 1/2の縮小および左右反転
第3のパラメータ: 1/2の縮小および90°回転
第4のパラメータ: 1/2の縮小および180°回転
第5のパラメータ: 1/2の縮小および270°回転
第6のパラメータ: 1/2の縮小、90°回転および左右反転
第7のパラメータ: 1/2の縮小、180°回転および左右反転
第8のパラメータ: 1/2の縮小、270°回転および左右反転
【0019】
次に、サーチ範囲内でドメインブロックの切り出しを少し(例えば1画素)ずらして行ない、上記と同様な評価値の演算を全ての変換パラメータに対して行ない、サーチ範囲内で1画素ずつ動かした位置のドメインブロックを切り出し、全ての演算を終了する。
【0020】
全ての演算が終了すると、評価値テーブル9に格納されている評価値の中から最小値を検出し、その最小値を生じさせる、ドメインブロックの位置、変換パラメータ(回転角度、左右反転の有無)を決定する。このようにして、ブロックマッチング法によりレンジブロックと相似な画像が探し出される。そして、パラメータメモリ8に格納されていたレンジブロックのダイナミックレンジDR、最小値MINとともに符号化データとして出力端子12に取り出される。
【0021】
以上の一連の符号化動作が、各レンジブロックについてなされ、画像フレーム全体にわたって符号化動作が行なわれる。伝送されるデータは、各4ビットの位置情報x、yと、変換パラメータの3ビット(回転に関する2ビットと反転に関する1ビット)と、ダイナミックレンジDRの8ビットと、最小値MINの8ビットである。従って、1画素が8ビットのデータの場合では、8×8×8=512ビットの原データが27ビットに圧縮することができる。なお、制御回路11に関しては詳説しないが、各回路ブロックでの動作がスムーズに行なえるように、各種の制御信号を発生したり、メモリのアドレスを発生する。
【0022】
図2は、レンジブロック化およびドメインブロック化の一例を示すものである。1枚(例えば1フレーム)の画像が8×8の大きさのレンジブロックへ分割される。例えば720画素×480ラインの有効画像がレンジブロックに分割されることによって、90×60のレンジブロックが形成される。画像の左上のコーナーから水平方向へ順次増加する番号iと、垂直方向に順次増加する番号jとによって、各レンジブロックの番号Bijが規定される。
【0023】
ドメインブロックは、図2に示すように、16×16のサイズとされる。ドメインブロックの画素データをADRC符号化した量子化データQdを線形変換し、線形変換で得られた量子化データQd´がサーチ範囲内で1画素ステップで動かされる。サーチ範囲は、一例として図3に示すように、水平および垂直方向のそれぞれで、(−8〜+7)の範囲と規定される。このサーチ範囲の位置を水平方向では、k(−8〜+7)の番号で規定し、垂直方向では、l(−8〜+7)の番号で規定する。従って、サーチ範囲内のある位置のドメインブロックは、Dklで規定される。
【0024】
図4は、符号化処理を示すフローチャートである。ステップST1では、i=0,j=0とされ、次のステップST2において、(i≧90)かどうかが決定される。そうでない場合では、ステップST3に処理が移り、レンジブロック化がされる。すなわち、j=0の90個のレンジブロック化が最初になされる。最初のレンジブロックB00がステップST4においてADRC符号化される。
【0025】
00のレンジブロックからB890 のレンジブロックまでのADRC符号化が終了すると、ステップST2の決定の結果が肯定となり、処理がステップST5に移る。ステップST5は、(j≧60)かどうかを決定する。若し、そうであるならば、1フレームの処理が完了したことになる。ステップST5の決定が否定であるならば、jの値が+1される(ステップST6)。そして、ステップST3のレンジブロック化がなされる。このようにして、全てのレンジブロックB00からB8959のADRC符号化がなされる。
【0026】
ステップST4に続くステップST7において、サーチ範囲内のドメインブロックの位置が初期位置(k=−8、l=−8)とされる。ステップST8において、(k≧8)かどうかが決定される。そうでない場合では、処理がステップST9に移り、ドメインブロック化がなされる。最初のドメインブロック化によって、ドメインブロックD-8-8が形成される。次のステップST10においてドメインブロックDklがADRC符号化される。
【0027】
ADRC符号化で生じた量子化データQdがステップST11において縮小される。縦横のブロックサイズがそれぞれ半分とされ、8×8のサイズとされる。この縮小がされたドメインブロックをDkl´と表す。次のステップST12では、回転操作の回転角度Rが0とされる。つまり、縮小のみの変換操作がドメインブロックの量子化データに対してなされる。次の決定のステップST13では、R≧360°かどうかが決定される。このステップST13の結果が否定の場合では、処理がステップST14に移る。
【0028】
このステップST14では、角度Rの回転操作がなされる。R=0の場合では、回転操作がされないことである。回転操作、または回転操作および反転操作がなされたドメインブロックをDkl´´と表す。ステップST15において、Dkl´´とBijとの画素同士の差分が演算され、差分の2乗和が求められる。これが評価値として評価値テーブルに格納される。R=0の場合では、縮小の操作がされたドメインブロックとレンジブロックとの間の評価値が求められ、テーブルに格納される。
【0029】
ステップST16において、ドメインブロックDkl´´の左右反転操作がなされる。そして、ステップST17において、Dkl´´とBijとの画素同士の差分が演算され、差分の2乗和が求められる。これが評価値として評価値テーブルに格納される。R=0の場合では、縮小および反転の操作がなされたドメインブロックとレンジブロックとの間の評価値が求められ、テーブルに格納される。
【0030】
次のステップST18において、回転角度が+90°され、ステップST13の決定のステップに処理が戻る。そして、R≧360°ならば、ステップST14、ST15、ST16、およびST17の処理がなされ、求められた評価値が評価値テーブルに格納される。さらに、回転角度Rが+90°され、同様の処理が繰り返される。回転角度が0から開始して、90°、180°、270°のそれぞれについて、上述と同様の処理がなされる。
【0031】
一例として、ドメインブロックD-8-8について、前述したような8種類の変換パラメータについての評価値が求められる。すなわち、第1のパラメータ( 1/2の縮小)、第2のパラメータ( 1/2の縮小および左右反転)、第3のパラメータ( 1/2の縮小および90°回転)、第4のパラメータ( 1/2の縮小および180°回転)、第5のパラメータ( 1/2の縮小および270°回転)、第6のパラメータ( 1/2の縮小、90°回転および左右反転)、第7のパラメータ( 1/2の縮小、180°回転および左右反転)、および第8のパラメータ( 1/2の縮小、270°回転および左右反転)についての評価値がそれぞれ求められる。
【0032】
一つのドメインブロックDklについて、第1〜第8のパラメータのそれぞれについての評価値が求められると、ステップST13の決定の結果が肯定となり、ステップST19に処理が移り、kの値が+1される。言い換えると、サーチ範囲内でドメインブロックの位置が水平方向で1画素シフトされる。そして、ステップST8に処理が戻り、上述したように、シフトされた位置のドメインブロックについての縮小、回転、左右反転の操作がなされ、8個の変換パラメータに関しての評価値が求められる。この評価値も評価値テーブルに格納される。
【0033】
サーチ範囲内で、ドメインブロックの位置が水平方向に1画素ずつシフトされ、ステップST8において、k≧8にまで到達すると、ステップST20に処理が分岐する。ステップST20では、l≧8かどうかが決定される。すなわち、サーチ範囲の最も下側の位置にまで到達したかどうかが決定される。そうでない場合には、ステップST21において、lの値が+1され、k=−8に初期化される。そして、処理がステップST9(ドメインブロック化)に戻る。
【0034】
このステップST9以降の処理は、上述したものと同様である。ステップST20およびST21を介することによって、サーチ範囲内のドメインブロックの垂直方向の位置が1ライン下側にシフトされ、そのライン上でkの値がインクリメントされることによって、水平方向にドメインブロックの位置がシフトされ、各位置において評価値が計算される。
【0035】
ステップST20において、l≧8の関係が成立すると、処理がステップST22に移る。このステップST22では、評価値テーブルに格納されている複数の評価値(上述したように差分の2乗和)の中の最小値を検出する。最小値が検出されると、次のステップST23において、検出された最小値と対応して符号化データが作成される。符号化データは、ドメインブロックのダイナミックレンジDRおよび最小値MINと、評価値の最小値を生じさせる、ドメインブロックの位置(kおよびlの値)およびパラメータである。
【0036】
求められたレンジブロックBijの符号化データが伝送され(ステップST24)、ステップST25において、iの値が+1され、次のレンジブロックについての符号化処理を行うために、処理がステップST2に戻る。ステップST2において、i≧90が満たされ、ステップST5において、j≧60が満たされることによって、1フレームの全ブロックの処理が終了する。
【0037】
次にデコーダについて説明する。図5にこの発明によるデコーダの一実施例のブロック図を示す。上記符号化動作において作成された符号化データが伝送路を通じて伝送され、入力端子21に供給される。この受信された符号化データがパラメータメモリ22に格納される。
【0038】
一方、フレームメモリFM0には、何らかの初期画像(一様でもランダムでもよい)が設定されており、パラメータメモリ22のドメインブロックの切り出し情報(位置情報x、y)をもとにドメインブロック(16×16画素)の切り出しが行なわれ、ドメインブロック化回路23から切り出されたドメインブロックのデータが出力される。このドメインブロックのデータがADRCエンコーダ24に供給され、ADRC符号化が行なわれる。
【0039】
ADRCエンコーダ24の出力中の量子化データのみが線形変換回路25に供給される。線形変換回路25に対しては、パラメータメモリ22からの変換パラメータが与えられ、線形変換回路25は、この変換パラメータに応じて縮小変換、回転、反転などの線形変換を切り出されたドメインブロックに対して施す。線形変換回路25からの変換後の量子化データとパラメータメモリ22からのダイナミックレンジDR、最小値MINがADRCデコーダ26に供給され、復号動作が行なわれる。もとの画素情報に復元されたデータはレンジブロックとしてフレームメモリFM0に書き込まれる。
【0040】
同様にして、次のレンジブロックに対応する符号化データの復号動作が行なわれ、1フレーム全体にわたって復号が終了した時点で、再度復号化動作を行なうよう、反復動作が行なわれる。この反復動作を収束させるための判定は、前回の復号結果をフレームメモリFM1に格納しておき、フレームメモリFM0との画素単位の差分の2乗和を演算回路27により計算し、比較回路28においてこれをあるしきい値THと比較することで実現する。すなわち、フレーム間差分の2乗和がしきい値THより大であるときは、未だ収束してないものと決定され、復号動作が繰り返される。
【0041】
反復動作を続行することが決定したならば、フレームメモリFM0のデータはフレームメモリFM1にコピーされる。フレーム間差分の2乗和がしきい値TH以下であるならば、収束したものと決定され、反復動作を終了する。この場合は、フレームメモリFM0のデータは復号画像として出力端子29から外部に出力される。制御回路30は、パラメータメモリ22からのパラメータを受け取ってドメインブロックの切り出しを制御したり、比較回路28の比較出力を受け取って反復動作を行うかどうかの制御を行う。
【0042】
図6は、この発明の一実施例の復号動作を示すフローチャートである。最初のステップST31では、フレームメモリFM0およびFM1が初期化される。次のステップST32において、1フレームの符号化データを受信する。レンジブロックの番号iおよびjを共に0とする(ステップST33)。ステップST34において、受信したデータ中のドメインブロックの位置情報に従ってドメインブロックを切り出す。復号しようとするレンジブロックBijと対応して切り出されたドメインブロックをDijと表す。
【0043】
このドメインブロックDijがADRC符号化される(ステップST35)。ADRC符号化で発生した符号化データ中の量子化データのみが縮小される(ステップST36)。また、ステップST37(回転操作)、ステップST38(左右反転操作)が受信されたパラメータに従ってなされる。そして、ステップST39において、変換操作後のドメインブロックのデータが受信されており、パラメータメモリ22に格納されているダイナミックレンジDRおよび最小値MINのデータを使用してADRC復号される。ADRC復号によりレンジブロックBijの復号データが得られ、この復号データがフレームメモリFM0のレンジブロックBijの位置に格納される。
【0044】
この実施例では、図2に示したように、水平方向のレンジブロックの番号iの最大値が89であり、垂直方向のレンジブロックの番号jの最大値が59である。従って、ステップST40に続くステップST41において、i≧90が成立するかどうかが決定され、そうでない場合には、ステップST42において、iの値が+1され、処理がステップST34に戻る。ステップST41の結果が肯定の場合では、ステップST43において、j≧60が成立するかどうかが決定される。そうでない場合には、ステップST44において、jの値が+1され、処理がステップST34に戻る。
【0045】
ステップST43の決定の結果が肯定の場合では、フレームメモリFM0に蓄えられている今回の復号画像と、フレームメモリFM1に蓄えられている前回の復号画像との差分の2乗和Sが計算される(ステップST45)。この2乗和SがステップST46においてしきい値THと比較される。S>THであるならば、未だ収束していないと決定され、処理がステップST47に移る。ステップST47では、フレームメモリFM0に蓄えられている復号画像がフレームメモリFM1にコピーされる。そして、処理がステップST32に戻り、復号動作が繰り返される。この反復動作は、S≦THとなるまで継続される。そして、この条件が成立すると、ステップST48において、フレームメモリFM0の復号画像を出力し、復号動作が終了する。
【0046】
次に、図7を参照してこの発明によるデコーダの他の実施例を示す。21で示す入力端子に対して、上述した符号化により作成されたデータが供給され、パラメータメモリ22に格納される。図5に示すデコーダの一実施例と対応する構成要素に対しては、同一の参照符号を付し、その説明は、重複を避けるために省略する。図5の構成と相違する点の一つは、パラメータメモリ22の出力(受信された変換パラメータ)を係数ROM31に供給することである。
【0047】
係数ROM31からの変換係数が線形変換回路25に供給される。係数ROM31には、変換パラメータと対応する実際の変換式の係数が格納されている。一般的に、変換によって発生した画素の位置が格子状のグリッドにのらないものも発生する。この問題を解決するためのひとつの方法としては、変換後の画像の解像度をもとのものより高くする。係数ROM31には、変換のための係数とともに、解像度を高くするような係数が格納されている。この係数は、予め学習によって獲得される。
【0048】
また、線形変換回路25からの変換後の量子化データがクラス分類回路32および遅延回路33に供給される。遅延回路33を介された変換後の量子化データとクラス分類回路32からのクラス情報とがADRC適応復号回路34の入力端子41および42にそれぞれ供給される。ADRC適応復号回路34の一部を図8に示す。
【0049】
入力端子41からのクラス情報が係数ROM44にアドレスとして供給される。係数ROM44には、予め学習によって獲得された係数が格納されている。クラス情報としては、復号しようとする注目画素の量子化データQiの周辺の量子化データの値、または量子化データの圧縮した値の分布のパターンを使用することができる。係数ROM44から読出された複数の係数が積和演算回路45に供給される。積和演算回路45では、復号しようとする量子化データQiの周辺の同一ブロック内の複数の量子化データと、複数の係数の積和演算(線形1次結合式)によって、補正値δを発生する。この補正値δが加算回路46に供給される。
【0050】
加算回路46では、量子化データQiに対して補正値δが加算され、補正後の量子化データQi´(=Qi+δ)が生成され、出力端子43に取り出される。図示を省略しているが、出力端子43に対しては、通常のADRC復号回路と同様に、逆量子化回路、最小値を加算する回路、ブロック分解回路が接続されている。補正値δを加算した量子化データQi´をADRC復号した時の復号値と真値(原画素値)との誤差の自乗和が最小となるように、係数ROM44に格納される係数が予め学習によって獲得される。
【0051】
上述したADRC適応復号回路34によれば、復号値の原画素値との誤差を小とすることができる。従って、復号されたデータである、レンジブロックの復元誤差もより小さくすることができる。このレンジブロックのデータがフレームメモリFM0に書込まれる。次々とレンジブロックの復号処理を行い、フレーム全体の復号動作が終了すると、再度復号動作がなされ、この反復動作が収束するまで繰り返されるのは、上述した一実施例と同様である。
【0052】
なお、この発明の実施例においては、2次元のブロックを構成するようにしたが、3次元のブロックを構成してもよい。この場合、圧縮率は向上するが計算時間が増大する。
【0053】
また、符号化の際に、差分の2乗和の最小値をしきい値判定し、最小値がしきい値より大きい場合には、レンジブロック、ドメインブロック共により小さいサイズのブロックへ細分化することも可能である。このような階層的な符号化は、圧縮率が若干落ちるが、復号画質が向上する。
【0054】
さらに、レンジブロック、ドメインブロックの大きさを任意の大きさとし、任意の縮小、拡大変換、および回転、反転を伴わせてマッチングを行なうようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
この発明では、レンジブロックおよびドメインブロックのデータをADRC符号化によりレベル方向に正規化している。これによって、相似性のある画像を見つける符号化の処理を簡単化(演算量の低減、処理時間の短縮化等)することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例のエンコーダの構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の一実施例におけるレンジブロックおよびドメインブロックを説明するための略線図である。
【図3】この発明の一実施例におけるサーチ範囲の説明に用いる略線図である。
【図4】この発明によるエンコーダの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】この発明の一実施例におけるデコーダの構成を示すブロック図である。
【図6】この発明によるデコーダの動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明によるデコーダの他の実施例の構成を示すブロック図である。
【図8】デコーダの他の実施例におけるADRC適応復号回路の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
3、5、24・・・ADRCエンコーダ、6、25・・・線形変換回路、7、27・・・差分の2乗和を計算する演算回路、10・・・評価値の最小値を検出する回路、FM0、FM1・・・フレームメモリ、31・・・係数ROM、34・・・ADRC適応復号回路

Claims (5)

  1. 入力画像をm×nの大きさの第1のブロックに分割する手段と、
    上記入力画像を上記第1のブロックと同一または異なる大きさのM×Nの第2のブロックに分割する手段と、
    上記第1のブロックの画像データに対してADRC符号化を行う手段と、
    上記第2のブロックの画像データに対してADRC符号化を行なう手段と、
    上記第2のブロックのADRC符号化データの量子化データに対して、相異なる複数の線形変換を施す手段と、
    上記第1のブロックと、上記複数の線形変換のそれぞれの線形変換後の上記第2のブロックとを、画面内で上記第2のブロック位置をずらせながらブロックマッチングを行なうことによって相似性のあるブロック位置と変換パラメータを決定する手段と、
    上記ブロック位置情報と上記変換パラメータと上記第1のブロックのADRC符号化により生じたダイナミックレンジ、最大値、最小値のうちの二つの情報とを、上記第1のブロックのデータに代えて伝送する手段と
    からなることを特徴とする画像信号の符号化装置。
  2. 入力画像をm×nの大きさの第1のブロックに分割し、上記入力画像を上記第1のブロックと同一または異なる大きさのM×Nの第2のブロックに分割し、上記第1のブロックの画像データに対してADRC符号化を行い、上記第2のブロックの画像データに対してADRC符号化を行ない、上記第2のブロックのADRC符号化データの量子化データに対して、相異なる複数の線形変換を施し、上記第1のブロックと、上記複数の線形変換のそれぞれの線形変換後の上記第2のブロックとを、画面内で上記第2のブロック位置をずらせながらブロックマッチングを行なうことによって相似性のあるブロック位置と変換パラメータを決定し、上記ブロック位置情報と上記変換パラメータと上記第1のブロックのADRC符号化により生じたダイナミックレンジ、最大値、最小値のうちの二つの情報とを、上記第1のブロックのデータに代えて伝送するようにした画像信号の符号化装置に対する復号化装置において、
    受信した上記第2のブロックの位置と上記変換パラメータと上記第1のブロックのADRC符号化により生じたダイナミックレンジ情報とを格納するメモリ手段と、
    上記メモリ手段に格納された上記第2のブロックの位置情報に基づいて、任意の初期画像から個々の第1のブロックに対応した上記第2のブロックを切り出し、切り出された上記第2のブロックをADRC符号化する手段と、
    記変換パラメータを使用して上記ADRC符号化のデータに対して線形変換を行う線形変換手段と、
    上記メモリ手段に格納された上記ダイナミックレンジ情報とを使用して、上記線形変換手段の出力をADRC復号する手段と、
    上記ADRC復号により生成された画像データにより上記初期画像を更新し、復号化画像を形成するメモリ手段とからなることを特徴とする画像信号の復号化装置。
  3. 請求項1に記載の符号化装置において、
    上記線形変換を施す手段は、縮小、拡大、回転、反転、等の空間的に第2のブロックの画像を座標変換する手段であることを特徴とする装置。
  4. 請求項2に記載の復号化装置において、
    上記線形変換手段は、上記線形変換のパラメータに従って予め学習した係数を用いて線形変換を行うことを特徴とする画像信号の復号化装置。
  5. 請求項2に記載の復号化装置において、
    上記ADRC復号する手段は、復号しようとする注目画素の周辺の量子化データに基づいてクラス分類を行い、クラス情報を発生する手段と、予め学習により獲得された係数が格納されたメモリと、上記クラス情報をアドレスとして上記メモリから読出された係数と複数の量子化データの線形1次結合により補正値を発生する演算手段と、上記補正値によって上記注目画素の量子化データを補正し、補正後の量子化データを逆量子化する手段とからなることを特徴とする画像信号の復号化装置。
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