JP3787077B2 - 塗床層の形成方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、水分を多く含有する床面等に適用できる塗床層の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、建築物、工場、倉庫等の屋内床面、あるいは一般歩道、歩道橋、プラットホーム等の屋外床面に対し、塗床材による塗装を施し、美観性、防塵性、耐薬品性等の機能を付与することが行われている。
このような床面に塗床材を塗装する場合は、一般に、下地に対する被膜形成性や密着性が良好な下塗材を塗装した後に、前述のような機能を付与する塗床材を施している。この際用いられる下塗材としては、湿気硬化形ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系が主であり、これらはコンクリート表面を非常に強固にすることができ、塗床材との密着性を高め、得られた塗床層はシール性にも非常に優れたものである。
しかしながら、塗装の対象となる床面が水分を多く含む下地であると、このようなシール性の良好さがかえって災いして、逃げ場を失った水分が、局所的に被膜をその背面から押し上げ、経時的に被膜に膨れ、浮き、剥れ等を生じるおそれがある。このため、水分を多く含む下地に対し、上述のような塗床材を適用することは困難であった。
このような問題に対し、粒子径の大きな骨材(通常数ミリ〜十数ミリ)を少量の樹脂で結合させたタイプの通気性塗床材が提案されている(例えば、特開昭53−83315号公報等)。しかしながら、このような通気性塗床材においては、形成された床表面に骨材による凹凸が現れてしまい、平滑性の高い床面を得ることは困難である。また、通気性を有すると同時に、水をも通してしまう性質を有するため、水の染み込みの防止が要求される床面には適用できないという欠点もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の塗床材が有するこのような問題点に鑑みなされたもので、含水下地に対し適用することができ、その表面が平滑で水を通しにくい性質を有する通気性塗床層を得ることを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような問題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の親水性樹脂、撥水剤、及び骨材を特定比率で含有する塗床材を塗付することが有効であることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は下記の塗床層の形成方法に係るものである。
1.床面に対し、
(A)親水性樹脂、
(C)撥水剤、
(D)平均粒子径1000μm以下の骨材、
を含有し、(A)成分と(C)成分との固形分体積比率が100:0.5〜100:20であり、単位体積当たりの骨材比率が55〜80体積%の被膜を形成する塗床材を塗付することを特徴とする塗床層の形成方法。
2.(A)成分が、親水性反応硬化型樹脂であることを特徴とする1.に記載の塗床層の形成方法。
3.(A)成分が、(a)主剤及び(b)硬化剤からなる2液反応硬化型樹脂であり、これらの少なくとも一方が水溶性化合物または水分散性化合物であることを特徴とする1.または2.に記載の塗床層の形成方法。
4.(A)成分が、(a)成分が自己乳化型エポキシ樹脂、(b)成分が自己乳化型ポリアミン化合物であることを特徴とする3.に記載の塗床層の形成方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0007】
[親水性樹脂]
親水性樹脂(以下「(A)成分」という)は、骨材((D)成分)の結合材としてはたらくとともに、本発明塗床層に通気性を付与するために重要な役割を果たす成分である。
本発明の(A)成分は、その硬化被膜が親水性を有するものである。(A)成分単独の被膜がこのような親水性を有さない場合は、十分な通気性及び背面水拡散性が得られず、膨れ、浮き、剥れ等が発生しやすくなることから、含水下地への適用が困難となる。
具体的に、(A)成分は、その硬化被膜の水に対する接触角が70度以下(好ましくは65度以下)の被膜を形成するものであることが望ましい。なお、硬化被膜の水に対する接触角は、樹脂をアルミニウム板に0.125mmの厚みで塗付し、温度20℃、相対湿度65%雰囲気下にて72時間乾燥させた後に、接触角計で測定される値である。
この(A)成分は、親水性を有する限り各種の樹脂を使用することができ、硬化形態としては、乾燥硬化型樹脂、反応硬化型樹脂のいずれであってもよい。このうち、(A)成分が反応硬化型樹脂である場合は、膨れ防止性、強度、付着性、耐摩耗性等において十分な物性を得ることができ、好適である。反応硬化型樹脂としては、1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、強度、付着性等を考慮すると2液タイプのほうが好ましい。
【0008】
(A)成分としては、(a)主剤(以下「(a)成分」という)、及び(b)硬化剤(以下「(b)成分」という)からなる2液反応硬化型樹脂で、これらの少なくとも一方が水溶性化合物または水分散性化合物であることが望ましい。このような態様では、(a)成分と(b)成分とを混合することで、これらの一方が疎水性であっても、親水性を高くすることが可能となり、含水下地への適性を高めることもできる。
水分散性化合物としては、エマルション型化合物、強制乳化型化合物、自己乳化型化合物等があげられる。これらの中で、含水下地への適性、形成される塗床材層の耐水性等を考慮すると、自己乳化型化合物が好適に用いられる。
【0009】
(a)成分、(b)成分の組合せとしては、例えば、エポキシ−アミン、ポリオール−イソシアネート、カルボキシル−エポキシ、カルボキシル−金属イオン、カルボキシル−カルボジイミド、カルボキシル−オキサゾリン、カルボニル−ヒドラジド等があげられる。このうち、エポキシ−アミン、ポリオール−イソシアネート等の組み合わせが好適に用いられる。
【0010】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂等、あるいはこれらをポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等で変性したもの等をあげることができる。
【0011】
アミン化合物としては、例えば、例えば脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドアミン、複素環状アミンなど、またはこれらの変性物などが使用できる。
【0012】
ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、フェノールレジンポリオール、エポキシポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリエステル−ポリエーテルポリオール、ウレア分散ポリオール、カーボネートポリオール等があげられる。
【0013】
イソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等のイソシアネートモノマーをアロハネート、ビウレット、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等により、誘導体化したもの、及びそれらの混合物等を使用することができる。
【0014】
(a)成分と(b)成分の混合比率は、それぞれの反応性官能基の当量比が100:10〜400となるように配合されることが望ましい。
【0015】
本発明では、優れた通気性、背面水拡散性、強度、付着性、耐摩耗性等が得られることから、特に、(a)成分が自己乳化型エポキシ樹脂、(b)成分が自己乳化型ポリアミン化合物であることが望ましい。
【0016】
[撥水剤]
本発明では、撥水剤(以下「(C)成分」という)が含まれることにより、塗床層が優れた通気性を維持しつつ、その表面において水を通しにくくすることができる。
(C)成分としては、例えば、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、アクリル・エチレン共重合体ワックス等のワックス系撥水剤;シリコーン樹脂、ポリジメチルシロキサン、アルキルアルコキシシラン等のエマルション、あるいはこれらを複合したエマルション等のシリコン系撥水剤;パーフロロアルキルカルボン酸塩、パーフロロアルキルリン酸エステル、パーフロロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のフッ素系撥水剤、等が挙げられる。
本発明においてはシリコン系撥水剤が好ましく用いられ、この中でも特にシリコーン樹脂含有エマルションが好適である。
【0017】
(A)成分と(C)成分との混合比率は、その固形分体積比率が100:0.5〜100:20、好ましくは100:1〜100:10である。(C)成分がこれより多い場合は、衝撃等によって骨材が脱離しやすくなる。(C)成分が少ない場合は、表面からの水を通しやすくなる傾向となる。
【0018】
[骨材]
本発明に用いる骨材(以下「(D)成分」という)は、その平均粒子径が1000μm以下であることが必要である。特に通気性の高い床面を形成させる場合には、(D)成分の平均粒子径は50〜1000μm、さらには100〜800μmとすることが望ましい。平均粒子径が1000μmより大きい場合は平滑性の高い床面を形成することができない。
【0019】
(D)成分としては、平均粒子径が上記範囲内であれば、特に限定されず、天然品、人工品のいずれも使用することができる。具体的には、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、寒水石、カオリン、クレー、陶土、チャイナクレー、珪藻土、タルク、バライト粉、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、カーボンブラック、珪砂、砂利、ガラスビーズ、樹脂ビーズ、金属粒、あるいは岩石、ガラス、陶磁器、焼結体、コンクリート、モルタル、プラスチック、ゴム等の破砕品等が挙げられる。このような骨材に着色を施したものも使用することができる。様々な色の骨材を適宜混合することにより、意匠性を高めることもできる。
【0020】
本発明では、形成される被膜において単位体積当たりの骨材比率が55〜80体積%、好ましくは60〜75体積%となるように(D)成分を配合する。この比率が55体積%より少ないと、通気性や背面水拡散性が低下する傾向となる。80体積%より多いと、骨材が取れやすくなり、十分な強度が得られず、付着性が低下したり、表面からの水を通しやすくなる傾向となる。
なお、本発明における単位体積当たりの骨材比率は、下記式にて理論的に算出される値であり、空隙は除外されるものである。
【0021】
【数1】
【0022】
本発明の塗床材においては、上述の成分の他、通常塗床材に使用可能な添加剤、例えば、繊維、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、増粘剤等を使用することもできる。
【0023】
[形成方法]
本発明は、建築物、工場、倉庫等の屋内床面、あるいは一般歩道、歩道橋、プラットホーム等の屋外床面に対し適用することができる。
特に、本発明は、含水率の高い床面に対しても適用することができるものである。また、本発明の方法によって形成された塗床層においては、下地床面の含水率が上昇しても、膨れ、浮き、剥れ等が発生せず、初期の外観を維持することができる。
【0024】
本発明では、このような床面に対し、必要に応じ、下地補修、下地処理等を行った後、上述の塗床材を金ごて等を用いて均一に塗付することにより塗床層が形成できる。樹脂として、水溶性化合物または水分散性化合物を用いた場合は、水を用いて希釈することが可能となり、環境面においても好ましいものである。
【0025】
塗床層の乾燥膜厚は、通常0.3mm以上、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは2〜4mmである。本発明では2mm以上の厚膜で塗装を行っても、通気性能を十分に発揮することができる。具体的には、JIS K5400「塗料一般試験方法」8.17によって測定される水蒸気透過度が、乾燥膜厚2mmにおいて200g/m2・24h以上、さらには500g/m2・24h以上となる被膜を得ることができる。
また、このような厚膜で塗装を行った場合は、下地が微細な凹凸を有していても、平坦で均一な床面を形成することができる。
塗床材の乾燥は常温にて行えばよいが、加熱することもできる。
【0026】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0027】
(実施例1)
表1に示す原料のうち、樹脂としては、樹脂2と樹脂4とを混合したもの(混合重量比2:3)を用いた。この樹脂をアルミニウム板に0.125mmの厚みで塗付し、温度20℃、相対湿度65%雰囲気下(以下、標準状態という)にて72時間乾燥させた後、硬化被膜の水に対する接触角を接触角計「CA−DT」(協和界面科学社製)で測定したところ、その接触角は60度であった。
上記樹脂混合物に対し、表1に示す撥水剤を、樹脂と撥水剤の固形分体積比率が100:1.4となるように加え、さらに、表1に示す骨材2を、被膜の単位体積当たりの骨材比率が62体積%となるように混合して、塗床材1を得た。この塗床材1について下記の方法にて試験を行った。
【0028】
【表1】
【0029】
○水蒸気透過度
離型紙を貼ったガラス板の上にろ紙を置き、このろ紙上に乾燥膜厚が2mmとなるように塗床材を塗付し、標準状態で1週間養生を行った。養生後、塗床材が塗付されたろ紙を剥がし、その水蒸気透過度をJIS K5400 8.17によって測定した。評価は、水蒸気透過度が500g/m2・24hr以上のものを○、200〜500g/m2・24hrのものを△、200g/m2・24hr未満のものを×とした。
【0030】
○表面遮水性試験
150×150×6mmのスレート板に、乾燥膜厚が2mmとなるように塗床材を塗付し、標準状態において7日間養生したものを試験体とした。
作製した試験体の表面に、標準状態においてスポイドで水を約10mlスポットした後、経時的にその状態を観察した。評価は、6時間後に水が残っているものを○、1〜6時間後に水がなくなったものを△、1時間後に水がなくなったものを×とした。
【0031】
○背面水拡散性試験
離型紙上に、乾燥膜厚が2mmとなるように塗床材を塗付し、標準状態において7日間養生後、150×150mmの大きさに切り出したものを試験体とした。
切り出した試験体を裏返し、標準状態において、試験体の背面にスポイドで水を約10mlスポットした後、経時的にその状態を観察した。評価は、1時間後に水がなくなったものを○、1〜6時間後に水がなくなったものを△、6時間後に水が残っているものを×とした。
【0032】
○耐衝撃性試験
70×70×20mmの標準モルタルの表面に、乾燥膜厚が2mmとなるように塗床材を塗付し、標準状態において7日間養生したものを試験体とした。
砂を敷き詰めた上に、作製した試験体の塗装面を上に向け置き、塗装面より30cmの高さから1kgの鉄球を落下させ、被膜の状態の変化を目視にて観察した。
このとき被膜に異常が認められないものを○、異常(骨材の離脱、被膜の割れ、剥離等)が認められるものを×、として評価を行った。
【0033】
○仕上り性
300×300×6mmのスレート板に、乾燥膜厚が2mmとなるように塗床材をコテ塗り施工し、硬化後の被膜の仕上り性を観察した。
評価は、平滑な仕上りとなるものを○、やや平滑性に欠けた仕上りとなるものを△、明らかに凹凸が認められるものを×、とした。
【0034】
結果を表2、3に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
塗床材1によって得られた被膜は、いずれの試験においても優れた結果を得ることができた。
【0038】
(実施例2)
表2に示すように樹脂、撥水剤、骨材を組み合わせた塗床材2を用いて、実施例1と同様にして試験を行った。塗床材2によって得られた被膜は、いずれの試験においても優れた結果を得ることができた。
【0039】
(実施例3)
表2に示すように樹脂、撥水剤、骨材を組み合わせた塗床材3を用いて、実施例1と同様にして試験を行った。塗床材3によって得られた被膜は、背面水拡散性を除きいずれの試験においても優れた結果を得ることができた。
【0040】
(比較例1〜20)
表2に示すように樹脂、撥水剤、骨材を組み合わせた各塗床材を用いて、実施例1と同様にして試験を行ったが、いずれも実施例に比べ不十分な結果となった。
【0041】
【発明の効果】
本発明によれば、水分を多く含む下地に対して塗床層を形成することができる。形成される塗床層は、十分な通気性を有しており、またその表面は平滑で水を通しにくい性質を有するものである。
Claims (4)
- 床面に対し、
(A)親水性樹脂、
(C)撥水剤、
(D)平均粒子径1000μm以下の骨材、
を含有し、(A)成分と(C)成分との固形分体積比率が100:0.5〜100:20であり、単位体積当たりの骨材比率が55〜80体積%の被膜を形成する塗床材を塗付することを特徴とする塗床層の形成方法。 - (A)成分が、親水性反応硬化型樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の塗床層の形成方法。
- (A)成分が、(a)主剤及び(b)硬化剤からなる2液反応硬化型樹脂であり、これらの少なくとも一方が水溶性化合物または水分散性化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗床層の形成方法。
- (A)成分が、(a)成分が自己乳化型エポキシ樹脂、(b)成分が自己乳化型ポリアミン化合物であることを特徴とする請求項3に記載の塗床層の形成方法。
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