JP3786357B2 - マーキング用樹脂組成物及びマーキング方法 - Google Patents

マーキング用樹脂組成物及びマーキング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分及び透明樹脂を含有するマーキング用樹脂組成物に関する。
また、本発明は、該樹脂組成物を成形して所望形状の樹脂成形体として、これに活性エネルギー線を照射することにより、該樹脂成形体に文字やイラスト等の模様を付与するマーキング方法にも関する。
更に、本発明は、(1)活性エネルギー線発生部、(2)活性エネルギー線の照射部を移動させるための駆動部、並びに(3)(1)及び(2)を制御して、活性エネルギー線の照射量を調節し、適宣な位置に照射するためのコンピュータ制御部を備えた、該方法に用いるマーキング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂成形品又は樹脂で被覆された成形品の表面に所望の文字やイラスト等のマーキングをすることは広く行われており、前記マーキング方法として種々の方法が知られている。例えば、塗料を使用してマーキングする方法は最も一般的であるが、加工費が高く、溶剤による環境汚染が懸念され、マーキング精度にも限界がある。また、最近では、簡便かつ効率的にマーキングを行う方法として、レーザー光の照射によるマーキングが盛んに行われている。このレーザー光の照射によるマーキング方法は、文字やイラスト状にレーザー光を照射した部分が熱エネルギーにより変色し、光の散乱によって文字やイラストが識別できるというものである。
【0003】
例えば、特開平9−302236号公報には、ロイコ色素、発色補助成分及び熱可塑性樹脂からなる樹脂組成物を、成形後、レーザー光を照射することにより、レーザーマーキングが可能であることが開示されている。しかしながら、混練時の熱により発色成分の反応が起こるため、発色成分が限定され、発色の自由度が制約される。
また、特開平11−92632号公報には、発色剤として銅系化合物及びニッケル系化合物を含むエポキシ樹脂にレーザー光を照射することにより、樹脂成形品の表面にレーザーマーキングする技術が開示されているが、この場合は黒色のマーキングに限られている。
特開平8−120133号公報には、ゴム強化ビニル系樹脂にチタンブラック等の化合物を配合した有彩色のレーザーマーキングが可能な樹脂組成物が開示されているが、この場合は樹脂が、ゴム強化ビニル系樹脂に限られており、その応用展開に制約がある。
【0004】
一方、特公平7−69524号公報には、透明な樹脂にレーザー光等を照射して樹脂の内部にマーキングを施す技術が開示されているが、この場合は焼け焦げによる内部加工に限られるという問題があり、その技術の応用展開に制約がある。一般にそのような透明樹脂にレーザー光等を照射した場合には、マーキングできないことが多く、レーザー光の出力を相当大きくしないとマーキングに必要な光エネルギーを得ることが困難であった。
この問題を避けるために、2色成形やインサート成形等により、有彩色の模様を透明樹脂の内部に施す方法が提案されているが、高度な手段を必要とする上に、新デザイン毎に金型を製作しなくてはならないため期間やコストが掛かり、また多様なデザインに対応できないという問題点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、透明性の高いマーキング可能な樹脂組成物を提供することである。より具体的には、低出力の活性エネルギー線でマーキング可能な、透明性の高いマーキング用樹脂組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、該樹脂組成物からなる樹脂成形体に、鮮明で高速且つ高精度の文字やイラスト等の模様を、簡単に素早くマーキングする方法及び装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討した結果、活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分と透明樹脂を含有する樹脂組成物からなる樹脂成形体に、活性エネルギー線を照射することにより、鮮明で高速且つ高精度のマーキングが可能であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
即ち、本発明は、活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分及び透明樹脂を含有し、活性エネルギー線を照射することにより、マーキング可能な樹脂組成物であって、その際、マーキング成分が、有機遷移金属化合物、有機遷移金属化合物及び少なくとも1個のNC=S基を有する化合物、又は有機遷移金属化合物及び無機酸化物微粒子からなる群から選択されることを特徴とする前記樹脂組成物である。更に詳しくは、有機遷移金属化合物が、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、コバルトオクタカルボニル、クロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジカルボニルニッケル、シクロペンタジエニル(トリエチルホスフィン)銅(I)、クロロトリフェニルホスフィン金(I)、ローダミン B グラン 00329、ローダミン B ベース 40809、銅(II)i−ブチレート、ジクロロ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)及びメチルトリオキソレニウム(VII)からなる群から選択され、少なくとも1個のNC=S基を有する化合物が、チオ尿素、1、3−ジメチルチオ尿素、1、3−ジエチル−2−チオ尿素及びジメチルジチオカルバミン酸亜鉛からなる群から選択され、無機酸化物微粒子が、アルミナであるマーキング用樹脂組成物である。
また、本発明は、該樹脂組成物からなる樹脂成形体に、活性エネルギー線を照射することにより、該樹脂組成物にマーキングする方法及び装置も含む。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる透明樹脂としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタラート、ABS、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリブチレンテレフタラート等の熱可塑性樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、グアナミン樹脂及びメラミン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、これらの中でも特に、JIS−K−7105による光線透過率が50%以上である樹脂が好ましい。これらの樹脂は、透明性を損なわない範囲であれば、1種単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。また、必要に応じて公知の添加剤や充填剤等を加えることができる。添加剤としては、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、老化防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。充填剤としては、炭酸カルシウム、カーボンブラック、タルク、シリカ、マイカ、クレー、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、ガラス繊維等の公知の充填剤が挙げられる。
【0010】
本発明において活性エネルギー線とは、化学反応又は物理的変化を促進するエネルギー線であり、例えば、Nd:YAG(波長1064nm)、Nd:YAG第三高調波(波長355nm)、YVO4、YLF等の固体レーザー、半導体レーザー、炭酸ガスレーザー、水銀ランプ等が含まれる。
また本発明において活性エネルギー線に対して感応するとは、上記活性エネルギー線の照射を受けた際に、そのエネルギーにより化学反応を起こして発色し又は物理的変化を起こして変形することをいう。
本発明の樹脂組成物に含まれるマーキング成分は、活性エネルギー線に対して感応し、透明樹脂中に溶融混練できるものが好ましい。マーキング成分としては、有機遷移金属化合物、有機遷移金属化合物及び少なくとも1個のNC=S基を有する化合物、又は有機遷移金属化合物及び無機酸化物微粒子のいずれかを挙げることができる。
【0011】
本発明で用いられる有機遷移金属化合物の具体例としては、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、コバルトオクタカルボニル、クロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジカルボニルニッケル、シクロペンタジエニル(トリエチルホスフィン)銅(I)、クロロトリフェニルホスフィン金(I)、ローダミン B グラン 00329、ローダミン B ベース 40809、銅(II)i−ブチレート、ジクロロ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)又はメチルトリオキソレニウム(VII)である。少なくとも1個のNC=S基を有する化合物の具体例としては、チオ尿素、1、3−ジメチルチオ尿素、1、3−ジエチル−2−チオ尿素又はジメチルジチオカルバミン酸亜鉛である。無機酸化物としては、アルミナが好ましく、特に平均粒子径0.04μm〜0.80μmのアルミナが好ましい。
【0012】
本発明で用いることができる他のマーキング成分としては、遷移金属ハロゲン化物及びアルカリ金属ハロゲン化物が挙げられる。遷移金属ハロゲン化物の具体例としては、塩化銀(I)、アルカリ金属ハロゲン化物の具体例としては、ヨウ化カリウムが挙げられる。
更に、本発明で用いることができる他のマーキング成分としては、炭酸カルシウム又はカーボンブラックが挙げられる。
【0013】
これらのマーキング成分は、樹脂組成物に対し0.001〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、前記各成分を、例えば、押し出し機、ニーダー、ミキサー、ロール等の混練機を用いて均一に混合し(例えば、溶融混練する)、次いで、押し出し成形機、射出成形機、圧縮成形機等の慣用の成形機を用いて、各種成形品にすることができる。そして、これらの成形品に活性エネルギー線を照射することにより、マーキングを施すことができる。
【0015】
本発明のマーキング用樹脂組成物から成形されたフィルム又はシートを、透明な樹脂又はガラスに、貼り合わせ又は挟み込んで積層体とすることもできる。このような積層体とすることで、本樹脂組成物の用途が広がり、更には耐候性や機械的特性の向上が期待できる。
【0016】
本発明の樹脂組成物からなる樹脂成形体に、鮮明で高速且つ高精度の文字やイラスト等の模様を、簡単に素早くマーキングする方法及び装置について、最良の実施形態を図面に基づいて以下に詳述する。
【0017】
本発明におけるマーキング方法は、活性エネルギー線に対し感応するマーキング成分及び透明樹脂を含有する樹脂組成物を成形し、この樹脂成形体のマーキング部位に、活性エネルギー線の照射量を調節しながら照射して、マーキングと移動を繰り返して、該樹脂成形体に各種の文字やイラスト等をマーキングさせるようにしたものである。
マーキングを行うための活性エネルギー線の照射手段としては、水銀ランプやNd:YAG、YVO4、YLF等の固体レーザー、半導体レーザー、炭酸ガスレーザー等などが使用できるが、非接触でかつマーキング速度が速く、自動化、工程管理が容易なことからレーザー光を用いることが好ましい。それらの中でも、近赤外波長領域にあるレーザー光を用いて、照射量を調節することにより、樹脂成形体に様々なマーキングを施すことができる。樹脂、マーキング成分及び添加剤等の種類や量にもよるが、例えば、Nd:YAGレーザー(波長1064nm)を用いた場合、照射量を7.0〜9.0kW/cmとすることにより、該樹脂成形体の内部にカラーマーキングを施すことが可能である。レーザー光の照射量を内部カラーマーキング時の約1.5倍(10.0〜14.0kW/cm)とすることにより、該樹脂成形体の内部に白色マーキングを施すことが可能である。また、レーザー光の照射量を内部白色マーキング時の約3倍(20.0〜27.0kW/cm)とすることにより、該樹脂組成物の表面に白色凸状マーキングを施すことが可能である。この白色凸状マーキング部位の盛り上がり高さを利用して、該樹脂成形体の表面に点字加工を施すことも可能である。
【0018】
本発明におけるマーキング装置は、活性エネルギー線発生部、活性エネルギー線照射部を移動させるための駆動部、並びに前記活性エネルギー線発生部及び前記駆動部を制御して、活性エネルギー線の照射量を調節し、適宣な位置に照射するためのコンピュータ制御部を備え、該樹脂成形体に各種の文字やイラスト等をマーキングするようにしたものである。
【0019】
(1)活性エネルギー線発生部は、赤外波長領域又は紫外波長領域で強い発光を持つ活性エネルギー線を発生し、安価で且つパルス動作の可能なものから選定される。活性エネルギー線としては、例えば、Nd:YAG(波長1064nm)、Nd:YAG第三高調波(波長355nm)、YVO4、YLF等の固体レーザー、半導体レーザー、炭酸ガスレーザー等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも特に、Nd:YAGを代表とする固体レーザーは、Qスイッチモードにより高いピークを得られるので、本発明のマーキング方法及び装置に最適である。
上記のようなレーザー光を照射してマーキングを行う場合、レーザーをQスイッチモードで、繰返し周波数1〜100KHz、好ましくは1.0〜3.0KHz、平均出力20W以下で動作させ、樹脂成形体に集中照射し、レーザー光の焦点をスキャン速度100〜300mm/secで移動させマーキングする。
【0020】
(2)活性エネルギー線照射部を移動させるための駆動部は、複数のミラーをガルバノメータにより駆動して活性エネルギー線照射部を移動させるものでもよいし、マーキング対象物である樹脂成形体を固定したステージを駆動することにより活性エネルギー線照射部を移動させるものでもよい。
【0021】
(3)前記(1)及び(2)を制御して、活性エネルギー線の照射量を調節し、樹脂成形体の適宣な位置に照射するためのコンピュータ制御部は、PCIバスを備えたパソコンNCなどを用いることができる。
【0022】
図1は、本発明の一実施例のマーキング装置を示す装置図である。このマーキング装置の主な構成は、レーザー発振器を含む活性エネルギー線発生部1、ガルバノメータのスピンドルに保持されたY軸ミラー2、Y軸ミラー2を駆動するためのガルバノメータ3、X軸ミラー4、X軸ミラー4を駆動するためのガルバノメータ5、45°のベンダーミラー6及びf−θレンズ7からなる活性エネルギー線の照射部を移動させるための駆動部、8はマーキング対象物である樹脂成形体、9は図示しないケーブルにより接続された、活性エネルギー線照射量を調節して適宣な位置に照射するためのコンピュータ制御部である。10は活性エネルギー線の光路、11はY軸ガルバノメータ3の回転方向、12はX軸ガルバノメータ5の回転方向を示している。
【0023】
図2は、本発明の一実施例の活性エネルギー線照射部分を拡大したものである。10−1及び10−2は活性エネルギー線の光路10に沿って入射する活性エネルギー線の外形を示すもので、f−θレンズ7に平行に入射した活性エネルギー線は集光されて、更に樹脂成形体の内部で屈折し、集光される。13は、集光された活性エネルギー線によるマーキング領域である。その集光径bは、f−θレンズの焦点距離、レーザー光の直径、その広がり角度などにより決定される。内部マーキング部位13の中心から樹脂成形体の表面までの深さaは、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離cを調節することにより、所望の値に設定できる。また、短焦点の固定光学レンズを用いた場合、活性エネルギー線を更に急激に集光させることが可能であり、X−Y−Z移動テーブルとの組合せにより、三次元的マーキングが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
全ての実施例に用いるマーキング装置は、レーザー発振器を含む活性エネルギー線発生部、ガルバノスキャナによる駆動部及びf−θ光学系による焦点制御機構を有するものである。
〔実施例1〕
ポリメタクリル酸メチル(光透過率92%)100重量部、チオ尿素(HNCSNH)0.10重量部及び臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)(C3630BrNiP)0.05部を、混練機により220〜240℃で溶融混練して、樹脂中にチオ尿素及び臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)を十分に分散し、ペレット状の樹脂組成物を作成した。
更に、キートップ形状の金型を装着した射出成形機にて、この樹脂組成物をキートップ形状に成形し、樹脂成形体を得た。
このようにして得られた樹脂成形体に、波長1064nmのNd:YAGレーザーを用いて、擬似マルチビームモード、Q−SW繰返し周波数1.0kHz、平均出力2.5W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離159.0mm、マーキング部位への照射量約8.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、図3の如き鮮明な黄色のカラーマーキングを樹脂成形体の内部に施すことができた。このマーキング部位は、樹脂成形体内部に上下方向の範囲を有し、成形体表面への突出は認められなかった。
更に、Q−SW繰返し周波数3.0kHz、平均出力3.4W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離159.0mm、マーキング部位への照射量約12.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、樹脂成形体の内部に白色マーキングを施すこともできた。
【0025】
〔実施例2〕
ポリメタクリル酸メチル(光透過率92%)100重量部、1、3−ジメチルチオ尿素((CHNH)CS)0.10重量部及び臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)(C3630BrNiP)0.05部を、混練機により220〜240℃で溶融混練して、樹脂中に1、3−ジメチルチオ尿素及び臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)を十分に分散し、ペレット状の樹脂組成物を作成した。
更に、平版金型を装着した射出成形機にて、この樹脂組成物を75mm×50mm×2mmの形に成形し、樹脂成形体を得た。
このようにして得られた樹脂成形体に、波長1064nmのNd:YAGレーザーを用いて、擬似マルチビームモード、Q−SW繰返し周波数1.0kHz、平均出力2.5W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離159.0mm、マーキング部位への照射量約8.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、図4の如き鮮明な黄色のカラーマーキングを樹脂成形体の内部に付与することができた。
更に、Q−SW繰返し周波数3.0kHz、平均出力9.3W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離159.0mm、マーキング部位への照射量約24.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、図4の如き樹脂成形体の表面に白色凸状マーキングを施すこともできた。
【0026】
〔実施例3〕
ポリメタクリル酸メチル(光透過率92%)100重量部、ヨウ化カリウム0.05部及び塩化銀(I)0.05重量部を、混練機により220〜240℃で溶融混練して、樹脂中にヨウ化カリウム及び塩化銀(I)を十分に分散し、ペレット状の樹脂組成物を作成した。
更に、平版金型を装着した射出成形機にて、この樹脂組成物を70mm×50mm×2mmの形に成形し、樹脂成形体を得た。
このようにして得られた樹脂成形体に、波長355nmのNd:YAG第三高調波レーザーを用いて、シングルビームモード、Q−SW繰返し周波数1.0kHz、平均出力2.5W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離254.0mm、マーキング部位への照射量約8.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、鮮明な紫色のカラーマーキングを樹脂成形体の内部に付与することができた。
【0027】
〔実施例4〕
ポリメタクリル酸メチル(光透過率92%)100重量部、モリブデンヘキサカルボニル(Mo(CO))0.05重量部を、混練機により220〜240℃で溶融混練して、樹脂中にモリブデンヘキサカルボニルを十分に分散し、ペレット状の樹脂組成物を作成した。
更に、平版金型を装着した射出成形機にて、この樹脂組成物を70mm×50mm×2mmの形に成形し、樹脂成形体を得た。
このようにして得られた樹脂成形体に、波長355nmのNd:YAG第三高調波レーザーを用いて、シングルビームモード、Q−SW繰返し周波数1.0kHz、平均出力2.5W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離254.0mm、マーキング部位への照射量約8.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、鮮明な黄色のカラーマーキングを樹脂成形体の内部に付与することができた。このマーキング部位は数十分後には完全に消色し、繰り返しマーキングを施すことが可能であった。
【0028】
〔実施例5〕
ポリメタクリル酸メチル(光透過率92%)100重量部、ローダミン B グラン 00329 0.05重量部を、混練機により220〜240℃で溶融混練して、樹脂中にローダミン B グラン 00329を十分に分散し、ペレット状の樹脂組成物を作成した。
更に、平版金型を装着した射出成形機にて、この樹脂組成物を70mm×50mm×2mmの形に成形し、樹脂成形体を得た。
このようにして得られた樹脂成形体に、波長355nmのNd:YAG第三高調波レーザーを用いて、シングルビームモード、Q−SW繰返し周波数1.0kHz、平均出力2.5W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離254.0mm、マーキング部位への照射量約8.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、鮮明なピンク色のカラーマーキングを樹脂成形体の内部に付与することができた。
【0029】
〔実施例6〕
ポリメタクリル酸メチル(光透過率92%)100重量部、ローダミン B ベース 40809 0.05重量部を、混練機により220〜240℃で溶融混練して、樹脂中にローダミン B ベース 40809を十分に分散し、ペレット状の樹脂組成物を作成した。
更に、平版金型を装着した射出成形機にて、この樹脂組成物を70mm×50mm×2mmの形に成形し、樹脂成形体を得た。
このようにして得られた樹脂成形体に、波長355nmのNd:YAG第三高調波レーザーを用いて、シングルビームモード、Q−SW繰返し周波数1.0kHz、平均出力2.5W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離254.0mm、マーキング部位への照射量約8.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、鮮明なピンク色のカラーマーキングを樹脂成形体の内部に付与することができた。
【0030】
〔実施例7〕
モリブデンヘキサカルボニルの換わりに、カーボンブラック0.001重量部を用いる以外は、実施例4と同様にして樹脂成形体を調製した。
このようにして得られた樹脂成形体に、波長1064nmのNd:YAGレーザーを用いて、擬似マルチビームモード、Q−SW繰返し周波数3.0kHz、平均出力3.4W、スキャン速度100mm/s、f−θレンズと樹脂成形体との間の距離159.0mm、マーキング部位への照射量約12.0kW/cmの条件でレーザー光を照射することにより、樹脂成形体の内部に白色マーキングを施すことができた。
【0031】
〔実施例8〜26〕
マーキング成分及び透明樹脂を、表1に示す割合で、実施例2と同様の方法により樹脂成形体を得た。レーザー光の照射も実施例2に準じて行った。
【表1】
Figure 0003786357
いずれの樹脂成形体も、レーザー光の照射により良好なマーキングを施すことができた。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、活性エネルギー線照射によりマーキング可能な透明性の高い樹脂組成物を提供することができ、更に、該樹脂組成物を成形して所望形状の樹脂成形体として、これに活性エネルギー線を照射することにより、該樹脂成形体に鮮明で高速且つ高精度の文字やイラスト等の模様をマーキングする方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のマーキング装置を示す装置図である。
【図2】本発明の一実施例の活性エネルギー線の照射部分を拡大したものである。
【図3】本発明の実施例1によるキートップ形状の樹脂成形体内部にマーキングを施したものである。
【図4】本発明の実施例2による平板状樹脂成形体の内部にカラーマーキング、表面に白色凸状マーキングを施したものである。
【図5】本発明の樹脂組成物からなるフィルム状成形体を、ガラス板で挟み込んで積層成形体とし、内部にマーキングを施したものの横断面図である。
【符号の説明】
1 活性エネルギー線発生部、2 Y軸ミラー、3 Y軸ミラーを駆動するためのガルバノメータ、4 X軸ミラー、5 X軸ミラーを駆動するためのガルバノメータ、6 45°のベンダーミラー、7 f−θレンズ、8 樹脂成形体、9 コンピュータ制御部、10 活性エネルギー線の光路、11 ガルバノメータ3の回転方向、12 ガルバノメータ5の回転方向、13 内部マーキング部位、14 白色凸状マーキング、15 ガラス板

Claims (10)

  1. 活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分及び透明樹脂を含有するマーキング用樹脂組成物であって、
    ーキング成分が、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、コバルトオクタカルボニル、クロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジカルボニルニッケル、シクロペンタジエニル(トリエチルホスフィン)銅(I)、クロロトリフェニルホスフィン金(I)、ローダミン B グラン 00329、ローダミン B ベース 40809、銅(II)i−ブチレート、ジクロロ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)及びメチルトリオキソレニウム(VII)からなる群から選択される有機遷移金属化合物からなることを特徴とするーキング用樹脂組成物。
  2. 活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分及び透明樹脂を含有するマーキング用樹脂組成物であって、
    ーキング成分が、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、コバルトオクタカルボニル、クロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジカルボニルニッケル、シクロペンタジエニル(トリエチルホスフィン)銅(I)、クロロトリフェニルホスフィン金(I)、ローダミン B グラン 00329、ローダミン B ベース 40809、銅(II)i−ブチレート、ジクロロ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)及びメチルトリオキソレニウム(VII)からなる群から選択される有機遷移金属化合物と、チオ尿素、1、3−ジメチルチオ尿素、1、3−ジエチル−2−チオ尿素及びジメチルジチオカルバミン酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1個のNC=S基を有する化合物とからなることを特徴とするーキング用樹脂組成物。
  3. 活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分及び透明樹脂を含有するマーキング用樹脂組成物であって、
    ーキング成分が、クロムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、コバルトオクタカルボニル、クロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、臭化ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジカルボニルニッケル、シクロペンタジエニル(トリエチルホスフィン)銅(I)、クロロトリフェニルホスフィン金(I)、ローダミン B グラン 00329、ローダミン B ベース 40809、銅(II)i−ブチレート、ジクロロ(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(O)及びメチルトリオキソレニウム(VII)からなる群から選択される有機遷移金属化合物と、アルミナとからなることを特徴とするーキング用樹脂組成物。
  4. 活性エネルギー線に対して感応するマーキング成分及び透明樹脂を含有するマーキング用樹脂組成物であって、
    ーキング成分が、遷移金属ハロゲン化物と、アルカリ金属ハロゲン化物とからなることを特徴とするーキング用樹脂組成物。
  5. 前記遷移金属ハロゲン化物が、塩化銀(I)であり、前記アルカリ金属ハロゲン化物が、ヨウ化カリウムであることを特徴とする請求項4に記載のマーキング用樹脂組成物。
  6. 前記マーキング成分が、樹脂組成物に対し0.001〜10重量%であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のマーキング用樹脂組成物。
  7. 前記透明樹脂が、少なくとも50%以上の光線透過率を有する熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のマーキング用樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7の何れか一項に記載のマーキング用樹脂組成物からなる樹脂成形体に、活性エネルギー線を照射することにより、該樹脂成形体にマーキングを行うことを特徴とするマーキング方法。
  9. 活性エネルギー線が、赤外波長領域にあるレーザー光であることを特徴とする請求項8に記載のマーキング方法。
  10. 活性エネルギー線が、紫外線であることを特徴とする請求項8に記載のマーキング方法。
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