JP3786119B2 - 貼り紙・落書き防止用粉末状塗料添加剤および塗料 - Google Patents
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Description
この発明は粉末状塗料添加剤および塗料に関し、さらに詳しくは、各種の塗料に適量添加することによって、その塗膜表面における貼り紙や落書きを効果的に防止することができる粉末状塗料添加剤およびこれを添加した塗料に関するものである。
従来より、街路地等の電柱や建造物への貼り紙および落書きを防止する方法として、例えば特許文献1または2に示すように、塗料にパラフィン系(ワックス)やシリコン系の物質をワニスや骨材等とともに混入させて、それらが塗膜表面に滲み出るようにする方法や、塗膜に凹凸を強制的に付加したり或いはガラスビーズ等を配合して塗膜表面の接触面積を少なくする方法、或いはそれらを併用したフィルムを貼る方法、特許文献3に示すように、下塗り塗料を用いて被塗面に凹凸状塗膜を形成した後、湿気硬化形ポリシロキサン樹脂をビヒクル成分として含有するクリヤ−塗料を用いて上塗塗膜を形成する方法などが知られている。
特開昭53−031739号公報
特開昭60−106864号公報
特開平10−216619号公報
しかしながら、上記従来の各方法においては、屋外で使用した場合に、紫外線の影響を受けて貼り紙防止機能が徐々に低下するという問題点を有し、さらにシリコン系材料を用いる場合には、コストアップを招くという問題点、またフィルムを用いる場合には、電柱や建造物に備わる金具等の付属品に対して適用するのが困難であるなどの問題点があった。さらに、落書きに対しては、何れの方法においても、落書きし難くなるという点で一定の効果が得られるものの、その効果は必ずしも満足できるものではなかった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、各種の塗料に適量添加することによって、その塗膜表面における貼り紙や落書きを効果的に防止することができる上に、塗膜の耐候性等の諸物性を改善することができ、材質の異なる種々の被塗装物に対しても良好な付着性をもたらすことができる経済性に優れた粉末状塗料添加剤およびこれを添加した塗料を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特公平2−52942号公報に記載の製造方法に従って製造した三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末原料に対して、シリコーン樹脂離型剤、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂およびジメチルポリシロキサン構造を有する所定粘度のシリコーンオイルを所定の割合で配合してその混合物を乾燥(脱溶剤)することにより、前記三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末表面を改質することができ、この表面改質された粉末(粉末状塗料添加剤)を各種の塗料に適量添加することによって、その塗膜表面における貼り紙や落書きを効果的に防止できることを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明に係る粉末状塗料添加剤は、a)重合脂肪酸とポリアミン類との反応によって得られる有機溶剤に可溶の重合脂肪酸ポリアミド樹脂と、分子構造中に水酸基を有し有機溶剤に可溶のフッ素樹脂と、これら重合脂肪酸ポリアミド樹脂およびフッ素樹脂の硬化剤として機能する有機溶剤に可溶のポリイソシアネートとを、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤中で反応させて、その反応硬化物を粉砕することにより得られる三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末100質量部に対して、b)シリコーン樹脂離型剤5〜20質量部、c)ジメチルポリシロキサン構造を有する粘度30〜100mm2/s(25℃)のシリコーンオイル5〜20質量部、およびd)湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂10〜20質量部を混合し、その混合物を乾燥してなることを特徴とするものである。
なお、本発明における粘度は、いずれも25℃における粘度を表す。
また、本発明に係る塗料は、上記粉末状塗料添加剤を、塗膜の固形分比率として10〜50質量%含有することを特徴とするものである。
なお、本発明における粘度は、いずれも25℃における粘度を表す。
また、本発明に係る塗料は、上記粉末状塗料添加剤を、塗膜の固形分比率として10〜50質量%含有することを特徴とするものである。
本発明によれば、塗膜表面における貼り紙や落書きを効果的に防止することができるのに加えて、塗膜の耐候性や耐摩耗性等の諸物性を改善することができ、材質の異なる種々の被塗装物に対しても良好な付着性をもたらすことができる。しかも、本発明においては、高価なシリコーンを、三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の表面改質剤として使用するのみで、その使用量も僅かであることから、従来のように高コストになることもなく、安価に、貼り紙および落書き防止用の粉末状塗料添加剤および塗料を提供することができる。
本発明に係る粉末状塗料添加剤は、上述したように、a)三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末に、その表面改質剤として、b)シリコーン樹脂離型剤、c)ジメチルポリシロキサン構造を有する所定粘度のシリコーンオイル、d)湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂を所定の割合で混合して、その混合物を乾燥することにより得られるものである。
a)の三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末は、重合脂肪酸とポリアミン類との反応によって得られる有機溶剤に可溶の重合脂肪酸ポリアミド樹脂と、分子構造中に水酸基を有し有機溶剤に可溶のフッ素樹脂と、これら重合脂肪酸ポリアミド樹脂およびフッ素樹脂の硬化剤として機能する有機溶剤に可溶のポリイソシアネートとを、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤中で反応させて、その反応硬化物を粉砕することにより得られるポーラス状の粉末である。
このa)の粉末の製造に用いる重合脂肪酸ポリアミド樹脂は、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸のような不飽和脂肪酸を熱重合して得られる一般にダイマー酸と呼ばれる重合脂肪酸に、例えばエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなどのエチレンジアミン同族体、また例えばプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンのようなアルキレンジアミン類、また例えばフエニレンジアミン、キシリレンジアミンのような芳香核を有するジアミン類、その他イソホロンジアミンなどのポリアミン類を反応させて得られるポリアミド樹脂であり、有機溶剤に溶解するものである。
a)の粉末の製造に用いるフッ素樹脂は、分子構造中に活性の水酸基を有し、平均分子量が20000〜80000、フッ素含有量が20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%であり、キシレン等の有機溶剤に溶解する含フッ素共重合体である。また、ポリイソシアネートは、上記重合脂肪酸ポリアミド樹脂およびフッ素樹脂の硬化剤として従来から周知の物質であり、通常イソシアネート基含有量が5質量%以上のものが用いられる。かようなポリイソシアネートとしては、脂肪族、環状脂肪族、芳香族ジイソシアネート類の単量体、二量体、三量体およびこれらの付加物の中から適宜選ぶことができる。
上記三原料の反応溶剤となるイソシアネート基に対して不活性な有機溶剤とは、上記重合脂肪酸ポリアミド樹脂、水酸基含有フッ素樹脂、およびポリイソシアネートの三原料を共通に溶かし、かつポリイソシアネートと反応しない有機溶剤を意味し、例えばトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、メチルイソブチルケトンなどのケトン類等が挙げられる。
上記三原料を有機溶剤中で反応させることにより、数分以内に反応系は硬化する。得られた反応硬化物はわずかに弾性を帯び、吸蔵する有機溶剤によってわずかに湿潤した感触をもつ嵩高のオカラ状外観を呈しているが、凍結乾燥などの手段を用いることなくそのままの状態で、ボールミルのような単純な粉砕手段を用いて、常温下で、粒径1〜100μm程度の微粉末にまで乾式粉砕することができる。
なお、上記三原料の使用割合としては、重合脂肪酸ポリアミド樹脂40〜70質量%、水酸基含有フッ素樹脂5〜30質量%およびポリイソシアネート15〜50質量%の割合が反応硬化物の粉砕および塗料添加剤としての添加効果の点から好ましい。
b)のシリコーン樹脂離型剤は、シリコーン樹脂を用いた離型剤として従来から周知の物質であり、かようなシリコーン樹脂離型剤としては、例えば、焼き付け型離型剤として市販されている「SEPA−COAT」(信越化学工業株式会社製商品名)等を使用することができる。この「SEPA−COAT」は、シリコーン樹脂を酢酸エチル等の溶剤で希釈したもので、不揮発分が20%となっている。
c)のシリコーンオイルは、シロキサン結合(Si−O−Si)とメチル基とからなるジメチルポリシロキサン構造を有するシリコーンオイルであり、粘度30〜100mm2/sのものが用いられる。このシリコーンオイルは、塗膜表面の離型性(塗膜表面に貼り紙や落書きを付着し難くする性能)に大きく寄与するもので、その粘度が30mm2/sより小さいと、三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末に保持され難くなって、上記離型性が十分に付与されなくなる。一方、粘度が100mm2/sより大きいと、上記離型性は良くなるが、表面改質後の粉末どうしの分離性が悪くなる。
d)の湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂としては、例えば、大日本インキ化学工業株式会社製の第3級アミノ基含有アクリル樹脂「A−9510」(商品名)を主剤、エポキシ基含有シリコン化合物「FZ−521」(商品名)を硬化剤とする湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂等が市販品として入手できる。この湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂は、b)のシリコーン樹脂離型剤とともに反応系を構成し、その反応生成物が三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末に付着してシリコーンオイルを粉末に封じ込める働きをすることにより、粉末の分離性および離型性の発現に影響を与えるものと考えられる。
a)の三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末原料に配合する表面改質剤の割合は、粉末原料100質量部に対して、b)のシリコーン樹脂離型剤5〜20質量部、c)のシリコーンオイル5〜20質量部、d)の湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂10〜20質量部が採用できる適正な範囲である。
すなわち、b)のシリコーン樹脂離型剤の配合量は、5質量部未満であると塗膜表面の離型性が悪くなり、20質量部を超えると粉末の分離性が悪くなるため好ましくない。また、c)のシリコーンオイルの配合量は、5質量部未満であると離型性が現れず、20質量部を超えると粉末の分離性が悪くなるので好ましくない。そして、d)の湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂の配合量は、離型性への直接的影響は少ないが、10質量部未満では、三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末にシリコーンオイルを押さえ込むだけの付着力に欠け粉末からの剥離が見られる。また、20質量部を超えると固まりになり、粉末の分離性及び離型性の発現に影響を与えることから、採用できない。
a)の三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の原料粉末を、上記b)のシリコーン樹脂離型剤、c)のシリコーンオイルおよびd)の湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂からなる表面改質剤により改質するに際しては、a)の原料粉末に、b)、c)、d)を所定の割合となるように混合する。この混合物には、原料粉末に対する表面改質剤の含浸性を向上させるために、必要に応じて粘度調整用として酢酸ブチルなどの溶剤を添加してもよい。次いでこの混合物を減圧乾燥して溶剤を除去し、乾燥物を軽くほぐすことにより、表面改質された粉末状の三フッ化ポリウレタン樹脂組成物からなる塗料添加剤を得ることができる。
上記の方法により表面改質された粉末状塗料添加剤は、顔料等を配合しなければ、透明塗料用の添加剤として使用することができ、指定された各色の顔料あるいは染料等を配合すれば、着色塗料用の添加剤として使用することができる。また、この粉末状塗料添加剤は、常温乾燥形、焼付乾燥形、反応形および水系の各種塗料に添加して使用することができる。この粉末状塗料添加剤を用途に合わせた塗料に添加することで、電柱や建造物の素地面等をはじめ、それらに備わる金具等の付属品に対しても、刷毛塗り、ローラー塗り、吹付塗装など、様々な塗装方法の中から適切な塗装方法を自由に選択することができる。被塗装物の材質についても、例えば、木材、コンクリート、ステンレス等の各種金属、メッキ面、プラスチック、塗装面など、それぞれの材質に応じた塗料に添加することによって、あらゆる材質のものに、貼り紙および落書き防止機能を付与することができる。
この粉末状塗料添加剤によれば、被塗装物に応じた塗料に適量添加することによって、塗膜の表面全体に亘って、粒状の微小な凹凸が均一に形成されると同時に、シリコーンによる水も油も弾く、離型性(不粘着性)が塗膜表面に付与されることとなり、その結果、貼り紙は勿論のこと落書きもできない塗膜を形成することができる。また、塗膜の耐候性や耐摩耗性等の諸物性を改善することができ、材質の異なる種々の被塗装物に対しても良好な付着性をもたらすことができる。しかも、高価なシリコーンは、粉末状塗料添加剤の表面改質剤として使用するのみで、その使用量も僅かであることから、貼り紙および落書き防止用の塗料にかかるコストを抑制することもできる。
粉末状塗料添加剤の塗料中への添加量は、塗膜の固形分比率として10〜50質量%となるように設定することが好ましい。これは、固形分比率が10質量%未満であると、貼り紙・落書き防止機能を発揮することができず、50%を超えると塗料中のワニス分比率の低下により塗膜の光沢が悪くなるためである。
以下に実施例を挙げてこの発明をさらに詳述する。
[原料粉末の製造および表面改質]
先ず、三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の原料粉末を下記の方法により製造した。
ダイマー酸とポリエチレンポリアミンの縮合によって得られる重合脂肪酸ポリアミド樹脂(富士化成工業株式会社製、商品名「トーマイド215−X」)のキシレン溶液(不揮発分70%)100質量部、水酸基含有フッ素樹脂(旭硝子株式会社製、商品名「ルミフロンLF100」)のキシレン溶液(不揮発分50%)20質量部、およびキシレン10重量部を混合した微黄色透明溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体のキシレン溶液(不揮発分75%)50質量部を室温、オープン状態で、攪拌しながら数回に分けて分割投入した。直ちに発熱反応が起こって反応系は硬化し、温度は約60℃を示した。反応に要した時間は数分である。生成した反応硬化物は僅かに弾性を帯びた淡黄褐色の、嵩高のオカラ状を呈していた。これを磁製ボールミルで約30時間粉砕したのち篩分けして粒径1〜100μmの白色原料粉末130質量部を得た。
次いで、この原料粉末に、表面改質剤として、シリコーン樹脂離型剤、シリコーンオイル、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂および溶剤を所定の割合で配合して、その混合物を減圧乾燥することにより、原料粉末の表面改質を行った。
[原料粉末の製造および表面改質]
先ず、三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の原料粉末を下記の方法により製造した。
ダイマー酸とポリエチレンポリアミンの縮合によって得られる重合脂肪酸ポリアミド樹脂(富士化成工業株式会社製、商品名「トーマイド215−X」)のキシレン溶液(不揮発分70%)100質量部、水酸基含有フッ素樹脂(旭硝子株式会社製、商品名「ルミフロンLF100」)のキシレン溶液(不揮発分50%)20質量部、およびキシレン10重量部を混合した微黄色透明溶液に、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体のキシレン溶液(不揮発分75%)50質量部を室温、オープン状態で、攪拌しながら数回に分けて分割投入した。直ちに発熱反応が起こって反応系は硬化し、温度は約60℃を示した。反応に要した時間は数分である。生成した反応硬化物は僅かに弾性を帯びた淡黄褐色の、嵩高のオカラ状を呈していた。これを磁製ボールミルで約30時間粉砕したのち篩分けして粒径1〜100μmの白色原料粉末130質量部を得た。
次いで、この原料粉末に、表面改質剤として、シリコーン樹脂離型剤、シリコーンオイル、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂および溶剤を所定の割合で配合して、その混合物を減圧乾燥することにより、原料粉末の表面改質を行った。
[表面改質剤の配合量に関する検討]
シリコーン樹脂離型剤には、信越化学工業株式会社製の「SEPA−COAT」(商品名):不揮発分20%を用いた。シリコーンオイルには、信越化学工業株式会社製の「KF96−50」(商品名)を用いた。このシリコーンオイルの粘度は50mm2/s、不揮発分は100%である。また、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂(以下の表1〜表4中には「湿気硬化シリコン」と略記する)には、大日本インキ化学工業株式会社製の第3級アミノ基含有アクリル樹脂「A−9510」(商品名)を主剤、エポキシ基含有シリコン化合物「FZ−521」(商品名)を硬化剤として、主剤10質量部に対して硬化剤1質量部を配合した混合液(不揮発分51%)を用いた。溶剤には、含浸性を向上させるための粘度調整用として、酢酸ブチルを主成分とする溶剤を用いた。
シリコーン樹脂離型剤には、信越化学工業株式会社製の「SEPA−COAT」(商品名):不揮発分20%を用いた。シリコーンオイルには、信越化学工業株式会社製の「KF96−50」(商品名)を用いた。このシリコーンオイルの粘度は50mm2/s、不揮発分は100%である。また、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂(以下の表1〜表4中には「湿気硬化シリコン」と略記する)には、大日本インキ化学工業株式会社製の第3級アミノ基含有アクリル樹脂「A−9510」(商品名)を主剤、エポキシ基含有シリコン化合物「FZ−521」(商品名)を硬化剤として、主剤10質量部に対して硬化剤1質量部を配合した混合液(不揮発分51%)を用いた。溶剤には、含浸性を向上させるための粘度調整用として、酢酸ブチルを主成分とする溶剤を用いた。
シリコーン樹脂離型剤の配合量を種々に変えたときの「粉末の分離性」および「離型性の発現」の評価結果を表1に示す。なお、「粉末の分離性」は、表面改質後の粉末(減圧乾燥により溶剤を除去した後の粉末)を指先で揉みほぐした際に、表面改質前の状態に簡単に戻れば○、少し固いが戻れば△、戻らない場合は×とした。また、「離型性の発現」は、表面改質した粉末をアクリルラッカー(透明)に塗膜固形分25質量%になるように配合し、塗膜形成後にセロハン製粘着テープを貼って剥離し、剥離のしやすさを調べる離型性試験を行うことにより確認した。試験の結果、離型性が特に優れるものは◎、離型性が明白なものは○、離型性が感じられるものは△、離型性がない場合は×とした。
表1からわかるように、「粉末の分離性」は、シリコーン樹脂離型剤の配合量が少ないほど良く、配合量を0〜20質量部(試験No.1、2、3、4、5)としたときには良好な結果が得られ、配合量を25質量部(試験No.6)としたときには、粉末の戻りが悪く、良好な結果が得られなかった。一方、「離型性の発現」は、シリコーン樹脂離型剤の配合量が多いほど良く、配合量を5〜25質量部(試験No.2、3、4、5、6)としたときに良好な結果が得られ、配合量を0質量部(試験No.1)としたときには、離型性が現れなかった。以上の結果から、シリコーン樹脂離型剤の配合量は、粉末原料100質量部に対して、5〜20質量部が適正な範囲であることが判明した。
次に、シリコーンオイルの配合量を種々に変えたときの「粉末の分離性」および「離型性の発現」の評価結果を表2に示す。
表2からわかるように、「粉末の分離性」は、シリコーンオイルの配合量が少ないほど良く、配合量を0〜20質量部(試験No.7、8、9、10、11)としたときには良好な結果が得られ、配合量を25質量部(試験No.12)としたときには、粉末の戻りが悪く、良好な結果が得られなかった。一方、「離型性の発現」は、シリコーンオイルの配合量が多いほど良く、配合量を5〜25質量部(試験No.8、9、10、11、12)としたときに良好な結果が得られ、配合量を0質量部(試験No.7)としたときには、離型性が現れなかった。以上の結果から、シリコーンオイルの配合量は、粉末原料100質量部に対して、5〜20質量部が適正な範囲であることが明らかとなった。
次に、シリコーンオイルの粘度(分子量)を種々に変えたときの「粉末の分離性」および「離型性の発現」の評価結果を表3に示す。ここでは、粘度の異なるシリコーンオイルとして、「KF96−20」、「KF96−30」、「KF96−50」、「KF96−100」、「KF96−200」(何れも信越化学工業株式会社製商品名)を用いた。’KF96−’に続く数字は25℃における粘度を表しており、例えば、「KF96−20」の粘度は20mm2/sである。粘度が高くなるほど分子量も大きくなる。なお、不揮発分は何れも100%である。
表3からわかるように、「粉末の分離性」は、シリコーンオイルの粘度が小さくなるほど良く、粘度を20〜100mm2/s(試験No.13、14、15、16)としたときには良好な結果が得られ、粘度を200mm2/s(試験No.17)としたときには、粉末の戻りが悪く、良好な結果が得られなかった。一方、「離型性の発現」は、シリコーンオイルの粘度が大きくなるほど良く、粘度を30〜200mm2/s(試験No.14、15、16、17)としたときには良好な結果が得られ、粘度を20mm2/s(試験No.13)としたときには、粉末に保持され難くなるためか、良好な結果が得られなかった。以上の結果から、シリコーンオイルの粘度は、30〜100mm2/sが採用できる適正な範囲であり、50〜100mm2/sが好ましい範囲であることが判明した。
次に、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂の配合量を種々に変えたときの「粉末の分離性」、「離型性の発現」および「粉末への付着性」の評価結果を表4に示す。「粉末への付着性」については、減圧乾燥により溶剤を除去する工程において、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂の粉末への付着性を観察した際に、付着不十分で剥離が見られる場合または固まりになる場合は×、特に問題がない場合は○とした。なお、固まった場合は「粉末の分離性」も当然悪くなる。
表4からわかるように、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂の配合量は、離型性への直接的影響は少ないが、5質量部程度(試験No.18)では、「粉末への付着性」が悪く剥離が見られる。また、25質量部以上(試験No.22)では固まりになり、「粉末の分離性」及び「離型性の発現」に影響を与えることが分かる。したがって、湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂の配合量は、10〜20質量部が採用できる適正な範囲と考えられる。
[粉末状塗料添加剤の塗料中への添加量に関する検討]
次に、表4の試験No.20と同じ配合の粉末状塗料添加剤を、塗膜の固形分比率として5、10、25、40、50、59質量%となるように、アクリルラッカー(透明)に添加して、それぞれの塗料により塗膜を形成した。アクリルラッカーには、大日本インキ化学工業株式会社製の常温乾燥形アクリル樹脂「52−204」(商品名):不揮発分45%を使用した。
次に、表4の試験No.20と同じ配合の粉末状塗料添加剤を、塗膜の固形分比率として5、10、25、40、50、59質量%となるように、アクリルラッカー(透明)に添加して、それぞれの塗料により塗膜を形成した。アクリルラッカーには、大日本インキ化学工業株式会社製の常温乾燥形アクリル樹脂「52−204」(商品名):不揮発分45%を使用した。
各固形分比率の塗膜に対する機能性評価試験の結果を表5に示す。なお、「粘着テープ試験」では、スコッチメンディングテープ(住友スリーエム株式会社製商品名)(幅18mm、長さ20mm)を試験面の塗膜に親指で力強く押しつけ、親指を上げたときにテープが塗膜から剥がれて親指に付いたら◎、塗膜上のテープに息を吹き付けたときにテープが塗膜面から吹き飛ばされたら○、テープを塗膜上に置いてもテープが付着しない場合は△、テープを塗膜上に置いたときに僅かでもテープが付着する場合は×とした。「両面テープ試験」では、日東電工株式会社製のゴム接着用両面テープ(幅18mm、長さ20mm)を使用して、「粘着テープ試験」と同様に評価した。「油性インキ試験」では、ゼブラ株式会社製の油性マッキー黒(商品名)を使用して塗膜面に文字を書いたときに、文字が玉になって書けない場合は◎、文字が布で綺麗に拭き取れる場合は○、文字が薄く残る場合は△、文字を拭き取れない場合は×とした。「吹き付け塗装性」は、口径1.2mmのスプレイガンにより吹付圧250kPaで塗装して、霧化状態を目視観察し、問題なく吹き付け塗装ができれば○とした。「塗膜の状態」は、乾燥した塗膜表面について、ツブツブ面発現の適切性、光沢の程度等を目視観察し、塗膜として問題がなければ○、不適当である場合は×とした。
表5からわかるように、粉末状塗料添加剤の固形分比率として10質量%を超えたところから貼り紙・落書き防止機能を発揮し、40質量%以上では満足なデータが得られた。しかし、固形分比率が50質量%を超えると塗料中のワニス分比率の低下により塗膜の光沢が悪くなり好ましくない。以上の結果から、粉末状塗料添加剤の固形分比率が10〜50質量%となるように塗料中に添加することが適切であると考えられる。
[粉末状塗料添加剤の各種塗料への適合性に関する検討]
次に、表4の試験No.20と同じ配合の粉末状塗料添加剤を、塗膜の固形分比率として約40質量%となるように、各種塗料(水溶性塗料(透明)、アクリルラッカー(透明・クリーム)、焼付形アルキド塗料(黒)、2液形ポリウレタン(白))に添加して、それぞれの塗料により塗膜を形成した。
次に、表4の試験No.20と同じ配合の粉末状塗料添加剤を、塗膜の固形分比率として約40質量%となるように、各種塗料(水溶性塗料(透明)、アクリルラッカー(透明・クリーム)、焼付形アルキド塗料(黒)、2液形ポリウレタン(白))に添加して、それぞれの塗料により塗膜を形成した。
水溶性塗料(透明)には、大日本インキ化学工業株式会社製の常温乾燥用の油変性アルキド樹脂塗料「S−346」(商品名):不揮発分65%を使用した。アクリルラッカーには、大日本インキ化学工業株式会社製の常温乾燥形アクリル樹脂「52−204」(商品名)を使用した。このアクリルラッカーの不揮発分は、透明が45%、クリーム色が65%である。また、焼付形アルキド塗料には、大日本インキ化学工業株式会社製の「ベッコゾール1308」(商品名):不揮発分50%を使用した。2液形ポリウレタンには、大日本インキ化学工業株式会社製の「ポリオールD−161」(商品名)を主剤、「ポリイソシアネートD−750」(商品名)を硬化剤として使用した。この2液形ポリウレタンの不揮発分は75%である。
以上の各塗料を用いて形成した塗膜に対する機能性評価試験の結果を表6に示す。
表6からわかるように、本発明に係る粉末状塗料添加剤は、常温乾燥形の水系塗料、ラッカー、焼付乾燥形塗料、反応形塗料の何れとも適合し、貼り紙・落書き防止機能を発揮することが確認された。また、透明および顔料各色にも問題なく使用することができた。
Claims (2)
- a)重合脂肪酸とポリアミン類との反応によって得られる有機溶剤に可溶の重合脂肪酸ポリアミド樹脂と、分子構造中に水酸基を有し有機溶剤に可溶のフッ素樹脂と、これら重合脂肪酸ポリアミド樹脂およびフッ素樹脂の硬化剤として機能する有機溶剤に可溶のポリイソシアネートとを、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤中で反応させて、その反応硬化物を粉砕することにより得られる三フッ化ポリウレタン樹脂組成物の粉末100質量部に対して、b)シリコーン樹脂離型剤5〜20質量部、c)ジメチルポリシロキサン構造を有する粘度30〜100mm2/s(25℃)のシリコーンオイル5〜20質量部、およびd)湿気硬化形シリコン・アクリル樹脂10〜20質量部を混合し、その混合物を乾燥してなることを特徴とする貼り紙・落書き防止用粉末状塗料添加剤。
- 請求項1に記載の粉末状塗料添加剤を、塗膜の固形分比率として10〜50質量%含有することを特徴とする貼り紙・落書き防止用塗料。
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