JP3782870B2 - 高級脂肪酸塩の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱安定剤、滑剤、金属石鹸等として有用な高級脂肪酸塩の製造方法に関するもので、より詳細には、大量の排水を生じることなしに、高純度でしかも着色のない高級脂肪酸塩を、高い生産性を以て製造しうる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属石鹸に代表される高級脂肪酸塩の製造法には、溶融法と湿式法とが知られている。溶融法とは、溶融高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物とを直接反応させる方法である。一方湿式法には、高級脂肪酸のアルカリ金属塩或いはアンモニウム塩と無機金属塩との湿式での反応により、高級脂肪酸塩を生成させる複分解法と、高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物等とを酢酸等の触媒の存在下に湿式で反応させる直接法とが知られている。
【0003】
特開昭64−71836号公報には、脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物とを、要すれば10重量%迄の水の存在下に、反応させる脂肪酸石鹸の連続的製法であって、20乃至150℃の温度に加熱された溶融脂肪酸を機械的に回転させ、管状反応器の反応域に輸送し、多価金属の酸化物乃至水酸化物等を脂肪酸と逆方向に機械的に回転させ、脂肪酸または反応域の回転軸線付近に導入し、脂肪酸及び多価金属の酸化物乃至水酸化物の混合物を管状反応器の反応域に通し、0.5乃至50秒間反応させ、脂肪酸の回転により混合物を機械的に輸送し、反応域の出口で脂肪酸石鹸を回収する方法が記載されている。
【0004】
また、特開平1−299247号公報には、金属石鹸を複分解法で連続的に製造するに際し、高級脂肪酸のアルカリ金属塩或いはアンモニウム塩の水溶液と無機金属塩とを、別々に、混合機の回転子に直接供給して両者を瞬時に混合させた後、反応生成物を直ちに混合機から排出させることを特徴とする金属石鹸の連続製造法が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述した溶融法では、タンク内の撹拌された溶融脂肪酸に多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末を徐々に添加し、撹拌下に反応させる方法が採用されているが、粉末原料は液中でダマになりやすく、反応を妨げ、かつ反応終了までに長時間を要するため、反応溶融物の熱による着色が避けられないという不都合がある。
【0006】
一方、直接法として、脂肪酸として粉末脂肪酸を用い、この粉末脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物とを高速混合機で撹拌し、粉末状態で反応を行う方法があるが、粉末脂肪酸はコスト的に高く、しかも反応性を高めるためには、脂肪酸を微粒子の形にすることが必要であるが、このような微粉末の脂肪酸を得ることは工業的に困難であり、決して実用性の高い製造方法とはいえない。
【0007】
一方、湿式法では、比較的高品質の金属石鹸が得られるとしても、反応に多量の水を必要とし、反応装置が大型化するとともに、多量の排水を排出するという点で不満足なものである。特に、複分解法では、金属石鹸と共に無機塩類が副生し、この塩類の挟雑を防止するためには洗浄が不可欠であり、このため、排水の量が一層多くなるという問題がある。この問題は、熱可塑性樹脂用熱安定剤として有用なステアリン酸鉛のような鉛塩の製造の場合には、致命的な欠点ともなるものである。
【0008】
また、従来の製法は、反応にかなり長時間を必要とし、また反応の完結性の尺度となる最終反応物の酸価あるいは遊離脂肪酸の値も概して高く、その純度や品質においても未だ十分満足しうるものではなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、溶融脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物との混合が均一且つ微細に行われる結果として、両者の反応が短時間の内に一様に行われ、その結果として、大量の排水を生じることなしに、高純度でしかも着色のない高級脂肪酸塩を、高い生産性を以て製造しうる方法を提供するにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、溶融高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末とを、化学量論的量で、分散部と滞留部とを備えたピンミル中に供給し、該高級脂肪酸の融点以上の温度で且つ3乃至30秒間混合して、溶融高級脂肪酸が連続相及び多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末が微細な分散相となった予備混合物を調製し、該予備混合物を溶融混合機に供給して、溶融条件下で反応させて高級脂肪酸塩を連続的に製造することを特徴とする高級脂肪酸塩の製造方法が提供される。
本発明において、
1.予備混合物の調製を、前記高級脂肪酸の融点乃至(該融点+40℃)の比較的低い温度で行うこと、
2.予備混合物の調製を、特に5乃至10秒間の比較的短い時間で行うこと、
3.予備混合物の調製を、ピンミルの回転数が500乃至2000rpm、特に800乃至1200rpmの高速回転数で行うこと、
4.前記ピンミルとしてピンが植え付けられたローターを有するものを使用し、ローターの上側の中心に溶融高級脂肪酸を供給すると共に、その周囲に多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末を供給して、ローターの上面で両者を分散させ、ローターの側面乃至下面にこの分散体を滞留させて両者の混合を行うこと、
が好ましい。
予備混合物の高級脂肪酸塩への生成反応は、溶融混合機中で溶融条件下に行われるが、この反応は、120乃至180℃の温度で0.5乃至5分間行うのがよい。
【0011】
【発明の実施形態】
[作用]
本発明では、高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物とを反応させるに先立って、溶融高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末とを、化学量論的量で、混合機中に供給して、溶融高級脂肪酸の連続相中に多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末が微細な分散相となった予備混合物を調製することが顕著な特徴である。
【0012】
溶融高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末との反応においては、反応の均一性及び反応の迅速性の上で、両者の混合状態が極めて重要であることが分かった。即ち、本発明においては、図1に示すとおり、溶融高級脂肪酸の連続相1中に多価金属の酸化物乃至水酸化物の粒子2が均一且つ微細に分散させた予備混合物3を形成させることにより、以後の反応が極めて均一に且つ迅速に進行するのである。
【0013】
この予備混合物において、多価金属の酸化物乃至水酸化物粒子2の分散粒径は、一般的にいって、多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末の1次粒径乃至2次粒径の範囲内であり、多価金属の酸化物乃至水酸化物粉末のだまは存在しないことが了解されるべきである。尚、本明細書において、1次粒径とは電子顕微鏡で測定される粒径を意味し、2次粒径とは、レーザ回折法で測定される粒径を意味する。溶融高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末とがだまを形成しやすい理由は、多価金属の酸化物乃至水酸化物粒子の溶融高級脂肪酸の濡れ性が悪いことが原因と考えられるが、本発明においては、分散部と滞留部とを備えたピンミルを使用することにより、溶融高級脂肪酸中に多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末がその粒子の状態で分散し、前述した分散構造の形成が可能となるのである。
【0014】
本発明の予備混合物においては、高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物との反応が実質的に生じていないようにすることが均一且つ微細な分散を可能にするために重要である。反応が実質的に生じていないとは、多価金属の酸化物乃至水酸化物粒子と溶融高級脂肪酸との界面では、反応が生じていても、内部にまでは反応が及んでいないことを意味する。両者の反応が進んでいる状態では、系の粘度が上昇し、均一な分散は期待できないし、作業性も悪化する。
【0015】
この意味で、予備混合物の調製を、前記高級脂肪酸の融点以上、特に前記高級脂肪酸の融点乃至(該融点+40℃)の比較的低い温度で行い、また、予備混合物の調製を3乃至30秒間、特に5乃至10秒間の比較的短い時間で行うことが重要となる。作業性の観点及びコゲ付き(着色)防止の観点から、上記融点乃至(該融点+40℃)の温度範囲内で調製を行うことが好ましい。さらに使用する高級脂肪酸やコスト面から、一般に40〜90℃の範囲で調製を行う場合が多い。
【0016】
[原料]
本発明において、高級脂肪酸としては、炭素数6〜22の脂肪酸、たとえばカプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸(融点:44.2℃)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸(融点:69.6℃)、アラキジン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、あるいはこれらの混合物等が使用される。これらの脂肪酸は、勿論牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸のように混合脂肪酸であってもよい。特に、ステアリン酸及びラウリン酸が好適なものである。
【0017】
多価金属の酸化物乃至水酸化物としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛、リチウム、アルミニウム、銅、鉄、コバルトなどの酸化物乃至水酸化物を挙げることができる。
これらの多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末は、前述した2次粒径測定法で測定して、0.1乃至30μm、特に1乃至10μmの粒径を有することが望ましい。
【0018】
[予備混合物の調製]
本発明の予備混合物を調製するための混合機は、比較的低温でしかも著しく短時間で予備混合物を調製するために、分散部と滞留部とを備えたピンミルを使用して、ピンミルの回転数が500乃至2000rpm、特に800乃至1200rpmの高速回転数で行うことが好ましい。
【0019】
前記ピンミルとしてピンが植え付けられたローターを有するものを使用し、ローターの上側の中心に溶融高級脂肪酸を供給すると共に、その周囲に多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末を供給して、ローターの上面で両者を分散させ、ローターの側面乃至下面にこの分散体を滞留させて両者の混合を行うことが最も好ましい。
【0020】
本発明に使用する好適なピンミルの断面を示す図2において、このピンミル10は、大まかにいって、駆動軸11と、駆動軸に軸承されたローター12と、ローターを収容するケーシング13とから成っている。ケーシング13の上面には、中心に溶融高級脂肪酸の供給口14とその周囲の多価金属の酸化物乃至水酸化物粉末の供給口15とが設けられており、ケーシング13の下方には、予備混合物の排出口16が設けられている。更に、ケーシング13には、補助成分の供給口17、18も設けられている。
【0021】
ローター12は上面19、側面20及び下面(下向きテーパ面)21からなる逆円錐台の形状をしており、上面19には1次分散ピン22が植え付けられており、下面21には2次分散ピン23が設けられている。また、側面20には、ケーシング13に設けられた固定ピン24と噛み合う剪断ピン25が植え付けられている。
【0022】
ローター12と一体に回転する下向きに末広がりのシュート26及びスクレーパー27が設けられており、シュート26の上部は、溶融高級脂肪酸の供給口14の下端28と回転可能に嵌合している。スクレーパー27はケーシング13と粉末供給口15との接続コーナ部29とスライド可能となっている。シュート26の下方中央部には溶融高級脂肪酸の受け部30があり、この受け部の側壁31には溶融高級脂肪酸の吐出スリット32が形成されており、その下面には突起33が形成されている。
【0023】
この装置においては、ローター12の上面19上に分散部34が形成され、ローター12の下面21に滞留部35が形成される。
【0024】
前述した分散構造の予備混合物は、次のように形成される。即ち、溶融高級脂肪酸は、供給口14を経て、受け部30に流入し、突起33に衝突して、吐出口スリット32を経て分散部34に薄膜状に流出する。一方、多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末は、供給口15及びシュート26を経て薄膜状の溶融高級脂肪酸上に散布される。散布された粉末を載せた溶融高級脂肪酸は、分散部34の高速回転する1次分散ピン22により剪断され、一次分散が行われる。
【0025】
この1次分散体は、固定ピン24と回転する剪断ピン25とにより剪断撹拌され、滞留部35に流出する。滞留部35においては、高速回転する2次分散ピン23による剪断撹拌を受けて、最終予備混合物となり、排出口16を経て装置外に排出される。
【0026】
この予備混合操作は、前述した温度でしかも前述した著しく短時間で行われることが特徴である。
【0027】
本発明において、溶融高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末との供給割合は、目的とする高級脂肪酸塩の化学量論的割合であるべきであり、勿論目的とする高級脂肪酸塩は、正塩である場合もあるし、例えば2塩基性ステアリン酸鉛のような塩基性塩であってもよい。
【0028】
[後反応]
予備混合物の高級脂肪酸塩への生成反応は、溶融条件下に行う。
【0029】
具体的には、溶融状態にある予備混合物をニーダー等の加熱された連続式の溶融混合機に供給し、120乃至180℃の温度で0.5乃至5分間反応させ、高級脂肪酸塩を連続的に製造することができる。反応が完結させた後、生成物を溶融状態で取り出し、冷却スチールベルトやスプレーで冷却固化させつつ成形し、製品とする。この方法は比較的融点が低く、かつ溶融粘度の低い金属石鹸の製造に適する。
【0032】
【実施例】
本発明を次の例で説明する。尚、以下の実施例中、実施例3及び4は、本発明の範囲外の参考例である。
【0033】
各実施例で用いられる試験は下記の方法により行った。
(1)金属石鹸の金属含有量測定
試料金属石鹸を下記の量はかり取り、ジエチルエーテルで浸し、6N硝酸5mlと水100mlを加え、40〜60分加熱、溶解し冷却する。更に、下記の試薬を入れ撹拌後、エリオクロム・ブラックTを3〜5滴加え、M/20EDTA標準溶液が紫色から青色になるまで滴定し、金属含有量を算出する。
(2)遊離脂肪酸量測定
試料1gを三角フラスコにはかり取り、エチルエーテルとエチルアルコールの混合液(1:1)約30mlを加えてよく振り混ぜた後、約30分間放置し乾燥濾紙でこし、前記混合液でよ洗浄する。濾液と洗液をあわせ、これにフェノールフタレイン溶液(1%)を指示薬としてN/20エチルアルコール性水酸化カリウム標準溶液を用いて滴定し、薄ピンク色が30秒以上続いた時を終点とする。
Figure 0003782870
(3)融点測定
微量融点測定装置(PM−S3型:柳本製作所製)にて測定した。
【0034】
(実施例1)
平均分子量280、温度80〜90℃の溶融ステアリン酸を毎時286kg、粉末一酸化鉛を同118kgにて、蒸気ジャケットにより約120℃に加温されたローター回転数約1000rpm(外周速度約12m/s )の図2に示す連続混合型ピンミルに定量的に供給し、5〜10秒の滞留時間を経て連続的に排出された予備混合物を、直に、蒸気ジャケットにより約170℃にに加温された、ローター回転数約150rpm、外周速度約3m/s の連続溶融混練機に導入し、約30秒の滞留時間を経て排出させたところ、極めて着色の少ない淡黄色透明の溶融ステアリン酸鉛が得られた。これを固化、粉砕し分析した結果、Pb含有量27.7%、遊離脂肪酸分0.2%、融点は108℃であった。
【0035】
(実施例2)
実施例1と同様の溶融ステアリン酸を毎時325kg、酸化亜鉛を同49kg、及び混合物全体量に対して0.4%の酢酸を実施例1と同様の条件下で混合処理し、排出された予備混合物を直ちに実施例1と同条件に設定した連続溶融混合機に導入し、約1分の滞留時間を経て排出させたところ、乳白色の溶融ステアリン酸亜鉛が得られた。これを固化粉砕し、分析した結果、Zn含有量10.7%、遊離脂肪酸分%、 融点は121℃であった。
【0036】
(実施例3)
溶融ステアリン酸を毎時286kg、粉末一酸化鉛を同318kgを、実施例1と同様の条件下で処理し、得られた溶融混合物を一旦冷却、固化した後、アトマイザー粉砕機にて粉砕し、粉末状の予備混合物を得た。
次に、得られた混合物から100gを取り、水5g、酢酸0.3gと一緒に容量1Lのジューサーミキサーに入れ攪拌を行った。開始10分後に5g、更にその10分後に5gの水を追添加して攪拌を続けたところ、攪拌開始60分後に僅かに黄味を帯びたPb含有量49.1%、遊離脂肪酸分0.5%、水分3.0%、融点220℃以上の粉末状二塩基性ステアリン酸鉛が得られた。
反応中の仕込物の温度は50〜60℃であった。
更にこれを60℃、−500mmHgの減圧下にて20分乾燥したところ、残留水分は0.1%となった。
【0037】
(実施例4)
溶融ステアリン酸を毎時325kg、水酸化カルシウムを同44kg、及び混合物全体量に対して0.2%の酢酸を実施例1と同様の条件下で処理し、得られた予備混合物を一旦冷却、固化した後、アトマイザー粉砕機にて粉砕し、粉末状の精密混合物を得た。
次に、得られた混合物から100gを取り、水5gと一緒に容量1Lのジューサーミキサーに入れ、攪拌を行った。開始10分後に水2gを追添加し、更に攪拌を続けたところ、攪拌開始30分後にCa含有量6.8%、水分2.6%、遊離脂肪酸分0.7%、 融点155℃の白色粉末状のステアリン酸カルシウムが得られた。
反応中の混合物の温度は50〜60℃であった。
【0038】
(実施例5)
平均分子量214、温度80〜90℃の工業用溶融ラウリン酸を毎時325Kg、酸化亜鉛を同62Kg、及び混合物全体量に対して0.4%の酢酸を実施例1と同様の条件下で混合処理し、排出された予備混合物を直ちに実施例1と同条件に設定した連続溶融混合機に導入し、約1分の滞留時間を経て排出させたところ、乳白色のラウリン酸亜鉛が得られた。これを固化粉砕し分析した結果、Zn含有量13.6%、遊離脂肪酸0.4%、融点は113℃であった。
【0039】
(比較例1)
実施例1と同様のステアリン酸715Kgを加熱、撹拌可能な反応槽に投入し150℃に昇温した後、溶融物温度を150〜160℃に保温しながら一酸化鉛(PbO)295Kgを30分かけて徐々に添加、終了後、更に30分間熟成を行い溶融法によるステアリン酸鉛を得た。
反応物は熱履歴により茶色に変色し、また反応槽底部には未反応の一酸化鉛(PbO)が相当量観察された。
【0040】
(比較例2)
反応槽に水600Kg、一酸化鉛(PbO)150Kg、酢酸を適量懸濁させ50℃に昇温する。
これとは別の反応槽に水400Kgを貼り込み、撹拌80℃に昇温させた後、ステアリン酸135Kgを投入し、さらに酢酸と等量程度のアンモニア(NH40H)を添加し脂肪酸アンモニウム塩とする。
一酸化鉛懸濁反応槽に脂肪酸アンモニウム塩を約30分かけて注加し、終了後、更に30〜60分の熟成を行い反応を終了する。
反応終了スラリーは濾過、乾燥、更に粉砕行程を経て湿式法によるステアリン酸鉛を得る。
反応終了後反応槽には多量の排水が発生し処理に苦慮した。
【0041】
(比較例3)
平均分子量280の粉末ステアリン酸(平均粒径200μm)47.4gと一酸化鉛(PbO)52.6gを連続混合型ピンミルの代わりにジューサーミキサーで10分間予備混合を行った後、水5g、酢酸0.3gを添加、撹拌し90分間反応し、黄色の反応物を得た。
得られた反応物は濃黄色を呈し、未反応脂肪酸量を表す遊離脂肪酸量が2.9%であった。
【0042】
【表1】
Figure 0003782870
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、予備混合物を用いることにより、高級脂肪酸塩を製造する際に反応性が向上し、溶融脂肪酸の溶解潜熱を無駄にすることなく、時間とエネルギーの節約となる。また、未反応物が減少し、より完全反応に近づく。
融点と溶融粘度の低い金属石鹸においては、溶融混合物を直にニーダー等、適当な溶融混練機に導入することにより、極めて着色の少ない金属石鹸を連続的、且つ容易に得ることができ、従来よりもより高塩基度のものが得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】予備混合物を説明する概念図である。
【図2】本発明に用いられるピンミルを示す断面図である。
【符号の説明】
1 溶融高級脂肪酸
2 多価金属の酸化物乃至水酸化物粒子
3 予備混合物
10 ピンミル
11 駆動軸
12 ローター
13 ケーシング
14 溶融高級脂肪酸の供給口
15 多価金属の酸化物乃至水酸化物粉末の供給口
16 予備混合物の排出口
17、18 補助成分の供給口
19 ローター上面
20 ローター側面
21 ローター下面
22 1次分散ピン
23 2次分散ピン
24 固定ピン
25 剪断ピン
26 シュート
27 スクレーパー
28 供給口下端
29 粉末供給口接続コーナ部
30 受け部
31 受け部の側壁
32 吐出スリット
33 突起
34 分散部
35 滞留部

Claims (4)

  1. 溶融高級脂肪酸と多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末とを、化学量論的量で、分散部と滞留部とを備えたピンミル中に供給し、該高級脂肪酸の融点以上の温度で且つ3乃至30秒間混合して、溶融高級脂肪酸が連続相及び多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末が微細な分散相となった予備混合物を調製し、該予備混合物を溶融混合機に供給して、溶融条件下で反応させて高級脂肪酸塩を連続的に製造することを特徴とする高級脂肪酸塩の製造方法。
  2. 予備混合物の調製を、ピンミルの回転数が500乃至2000rpmの回転数で行う請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記ピンミルとしてピンが植え付けられたローターを有するものを使用し、ローターの上側の中心に溶融高級脂肪酸を供給すると共に、その周囲に多価金属の酸化物乃至水酸化物の粉末を供給して、ローターの上面で両者を分散させ、ローターの側面乃至下面にこの分散体を滞留させて両者の混合を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 溶融混合機での反応を120乃至180℃の温度で0.5乃至5分間行う請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。
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