JP3779800B2 - 顆粒糖製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、顆粒糖の製造方法に関し、さらに詳しくは、乾燥仕上げ工程が簡略化された顆粒糖の製造方法に関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、健康食品志向の高まりと共に、ほとんど純粋な蔗糖である精製糖(上白糖、グラニュー糖など)は、栄養的に偏っているとの認識を持つ消費者が増加し、その消費量が年々減少している。一方、風味や栄養成分を残した黒糖や三温糖、あるいは栄養成分やミネラルを強化した糖などが好まれる傾向にある。そこで、原料糖液(例えば甘蔗汁)が持つ栄養的に価値のあるグルコースやフルクトースなどの還元糖、カルシウム、カリウム、マグネシウムに代表される豊富なミネラル成分、健康維持に有効であるビタミンなど様々な微量成分を含有する砂糖製品が希望されている。
【0003】
さらに、一般家庭では、取り扱いやすく、また溶解しやすい砂糖製品を所望する場合が多く、さらに、食品を製造販売する者にとっても、流動性がよく、また固結しにくい顆粒糖が好まれる。固結とは、砂糖が固まった状態になることをいい、流動性もなくなることから、砂糖製品の商品価値を低下させる大きな要因である。よって、固結し難いというのは非常に好ましい特徴である。
【0004】
このような風味や栄養成分を残した健康食品としての機能をもった顆粒糖を、低コストで製造するという課題がなお残されている。
【0005】
砂糖の製造工程は、主として糖シロップを調製する工程、濃縮工程、結晶化工程、乾燥仕上げ工程よりなるが、特に従来の煎糖、造粒、顆粒化等により固形化した結晶化工程後の、乾燥仕上げ工程が十分行われていないと、製品保存中に固結の問題が起こり、製品価値を失ってしまう。
【0006】
乾燥仕上げ工程は通常、第1にドライヤーによる乾燥工程、第2にクーラーによる冷却工程、第3にホッパーによる熟成工程の3工程よりなる。具体的には、乾燥工程とは、砂糖製品の水分を下げ固結を防止するために、ドライヤーで乾燥する工程である。例えばグラニュー糖の場合、遠心分離機から排出されてきたときの水分量は0.6〜1.5重量%であるが、これを約50〜75℃のドライヤーで乾燥後、水分量を0.02重量%ぐらいになるまでまで乾燥をおこなう。ここでドライヤーで乾燥せず、砂糖製品をホッパーに直接投入すると、水分量のばらつきによって固結がおこる可能性が高い。
【0007】
次いで、冷却工程とはドライヤーで乾燥させた砂糖製品をクーラーで冷却し、約35〜45℃まで下げる工程である。ここで冷却工程なしにドライヤーで乾燥させた砂糖製品をホッパーに直接投入すると、保有している熱により、および/または一部の残存している水分により固結してしまう可能性が高い。
【0008】
熟成工程とは、冷却した砂糖製品を、さらに水分の面で安定化させ固結を防ぐために、ホッパーで均一化する工程である。通常クーラーで冷却した砂糖製品を、乾燥空気が吹き込まれているホッパー中で熟成し、砂糖の内部に取り込まれている固結の原因となる水分の除去を行う。この熟成後、製品として袋詰めされ出荷される。
【0009】
乾燥工程で使用するドライヤーとしては、流動層乾燥機、気流乾燥機、回転乾燥機等が良く知られている。また、冷却工程で使用するシュガークーラーとしては、回転型ドラムクーラー、真空式ベルトクーラー等が知られている。しかしながら、どの機械においても設備費用がかかり、新規に製造設備を設置する場合には、製品コストのアップにもつながり得る。
【0010】
このように、乾燥仕上げ工程は、ドライヤー、クーラー、ホッパーと設置すべき機械が多く、乾燥や冷却のための膨大な設備費用がかかるため、大きなコストアップにつながる要因が多い。これまで、乾燥方法の改良についてはいくつか試みがある。例えば、流動層乾燥機で乾燥後、ホッパーで熟成する方法(特公平1-16480 号公報);ドラム乾燥機で乾燥させる方法(特公昭55-9200 号公報);回転乾燥機で乾燥させる方法(特開昭60-256399 号公報);結晶機を長時間連続的に使用して乾燥させる方法(特開昭57-138400 号公報)。これらの方法はいずれも、乾燥機を用いたり、または結晶機を長時間運転して乾燥させているので、工業的生産効率がよくない、製造した顆粒糖の物理的性質がよくない(粒度分布が広い、流動性が悪い、固結しやすいなど)といった問題があった。このように、これまで、製品の品質を保持しつつ、乾燥仕上げ工程の簡略化に着目して製造方法を改良するという報告はなく、よりコストの低い乾燥仕上げ工程が望まれていた。
【0011】
本発明は、風味や栄養成分を含む、しかも取扱いが容易な顆粒糖を、より低いコストで製造する方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、顆粒糖の製造方法において、濃縮工程に入る糖シロップの純糖率を87.0〜95.1重量%に調整し、濃縮後の糖シロップを強い剪断力を施与しつつ固形化して顆粒糖を得ると、設備費のかかるドライヤーおよびクーラーを使用すること無く、ホッパーを用いた工程(従来の熟成工程に相当する)のみに乾燥仕上げ工程を簡略化できること、およびかくして得られた顆粒糖は風味や栄養成分がそのまま残った健康食品としての機能をもち、かつ流動性に優れ、固結しにくいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は、糖シロップを調製する工程、濃縮工程、結晶化工程、乾燥仕上げ工程を含む顆粒糖の製造方法において、
糖シロップを調製する工程を経て得られた、濃縮工程に入る前の糖シロップの純糖率を87.0〜95.1重量%に調整しておくこと、
結晶化工程が、強い剪断力を施与しつつ固形化して顆粒糖を得る工程であること、および
乾燥仕上げ工程が、結晶化工程から得られた顆粒糖を、底部から乾燥空気を送り込んでいるホッパー内に送り込むことによって乾燥させる工程であること
を特徴とする顆粒糖製造方法を提供する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の顆粒糖製造方法は、糖シロップを調製する工程、濃縮工程、結晶化工程、乾燥仕上げ工程を含む、従来公知の顆粒糖製造方法を改良し、工程短縮したものである。本発明の方法では、糖シロップの純糖率を特定範囲にしたこと、強い剪断力を施与しつつ結晶化を行ったことにより、ドライヤーおよびクーラーを用いる工程を省略し、ホッパーを用いるだけで乾燥仕上げを行うことができる。
糖シロップを調製する工程および濃縮工程は当分野で慣用の工程操作を行う。本発明の方法においては、糖シロップを調製する工程を出て、濃縮工程に至る糖シロップの純糖率を87.0〜95.1重量%、好ましくは90.0〜95.1重量%に調整することが必要である。蔗糖が後の工程で分解されるため、このように純糖率を調整しておくと、製品(顆粒糖)の純糖率は、86.0〜93.1重量%、好ましくは89.0〜93.1重量%になる。純糖率が高すぎると、風味や栄養成分が欠けたものとなる。さらに乾燥仕上げ工程において、固形化した顆粒糖を水分および温度が高いままホッパー内に入れると、純糖率が高いためにホッパー内で固結する危険性が大きいため、本来の目的であるホッパー内で直接乾燥することが出来る顆粒糖を製造することが出来ない。また、純糖率が低すぎると、結晶化工程において例えば高速回転バドル付横型連続結晶機での連続生産の生産速度が低下するとともに、機械の内部への固形物の付着が著しくなる。また、次の乾燥仕上げ工程でも、乾燥空気の送風量が多くなり、乾燥時間がかかるようになる。するとホッパーを大きくしたり、あるいはホッパーの数を増やしたりすることが必要となり、その結果、コスト増加につながる。
【0015】
なお純糖率は、「製糖便覧」(精糖技術研究会編、1962年6月30日発行、朝倉書店)記載のスペンサー法により測定した糖度から、次式(1):
【0016】
【数1】
純糖率=(糖度/固形分濃度)×100 (1)
により求めた値である(なお固形分濃度の単位は%(重量/重量)である)。
【0017】
該糖シロップとしては、より具体的には、甘蔗汁に、蔗糖および/または蔗糖液を加えて純糖率が87.0〜95.1重量%になるように調整した糖シロップを用いるが、その重量比は、甘蔗汁の純糖率に依存する。上記純糖率にするためには、通常、甘蔗汁の固形分重量の顆粒糖重量に対する割合[すなわち(甘蔗汁の固形分重量)/(顆粒糖重量)×100 ]が30〜70重量%になるようにする。
【0018】
本発明において「甘蔗汁」という語は、甘蔗(さとうきび)を圧搾して得られる圧搾汁または、甘蔗を浸出して得られる浸出汁を意味する。
【0019】
蔗糖および/または蔗糖液は、その種類、形状等は特に限定されず、原料糖、グラニュー糖、上白糖(以上、結晶糖)、ファインリカー(液糖)等を1種類以上使用できる。
【0020】
上記のような純糖率の糖シロップは、糖シロップを調製する工程において、例えば甘蔗汁を石灰乳の添加・加熱による清浄工程を経た後、これに蔗糖および/または蔗糖液を添加して得る方法、あるいは甘蔗汁を濾過した後、pHを5.0〜6.0に調整し、これに蔗糖および/または蔗糖液を添加して得る方法により得ることができる。最終的に得られる顆粒糖の品質が良い(着色が抑制され、風味や栄養成分が残っている)ので汎用性があることから、後者の方法(石灰清浄を行わない)がより好ましい。糖シロップを調製する工程は、好ましくは次のようにして行う。すなわち、まず、石灰清浄は行わず、甘蔗汁を異物除去のために濾過する。濾過の手法としては、食品工業で広く使用されているスクリーン濾過、ケイソウ土濾過、精密濾過、限外濾過等の手段が挙げられる。なかでも限外濾過が好ましく、分画分子量が150,000 以下、より好ましくは30,000〜150,000 の限外濾過を行うのが、特に好ましい。限外濾過の方法としては、例えば管型限外濾過、プレート式限外濾過、スパイラル限外濾過、中空糸型限外濾過等が好ましく使用できる。
【0021】
純糖率の高い糖シロップを得る場合には濾過を行わなくても後の固形化が可能であるが、上記したような特定の純糖率の糖シロップとする場合には、例えば高速回転バドル付横型連続結晶機を用いた、後の結晶化工程において、効率的かつ安定的生産をはかるために、上記限外濾過を行うのが好ましい。濾過を行わない場合のこのような不都合は、甘蔗由来の高分子量の不純物または懸濁物質(例えば多糖類、色素など)等の存在によるものと推測される。
【0022】
濾過処理した甘蔗汁のpHは、原料甘蔗の品種に依存して、pH4.8〜5.8の範囲になるが、後の濃縮工程における砂糖の分解を防ぐために、好ましくはpH5.0〜6.0に調整する。pHが低すぎると加熱時の蔗糖の分解が著しくなって、固形糖を精製するのが困難になる傾向があり、またpHが高すぎると、後の濃縮の際に風味が変化して黒糖のような風味に変化してしまったり、着色が進む傾向がある。
【0023】
pHを調整した甘蔗汁の純糖率を、先に述べたように、蔗糖および/または蔗糖液を用いて、87.0〜95.1重量%に調整する。かくして得られた糖シロップを次の濃縮工程に進める。
【0024】
濃縮工程は、好ましくは次のようにして行う。すなわち、3段階のプレート式熱交換機(2段階の減圧濃縮および1段階の常圧濃縮)を用いて順次、糖シロップを濃縮すると、効率よくかつ蔗糖の分解および着色を抑えて濃縮できる。また、3段階のプレート式熱交換機を用いる方法は、第1段階で発生した蒸気を第2段階でまた再利用することができるので、1段階のみのプレート式濃縮機や1段階のみで減圧濃縮機を用いて糖シロップを濃縮するより、蒸気エネルギーを有効利用することができる。3段階のプレート式熱交換機での濃縮を行うには、例えば、前工程からの糖シロップ(純糖率が87.0〜95.1重量%)を、まず1番目のプレート式熱交換機で、ブリックス度(Bx)を約Bx28から約Bx40まで加熱濃縮する。減圧下で、ベーパーセパレーターにて濃縮液を蒸気と分離し、この濃縮液を次の2番目のプレート式熱交換機に送り、約Bx40から約Bx65まで、加熱濃縮する。一方、初めのベーパーセパレーターにて分離された蒸気は、第2番目のプレート式熱交換機のスチームサイトに供給される。さらに、第2段階で得た濃縮液を、減圧下で、ベーパーセパレーターにて蒸気と分離し、この濃縮液を最後のプレート式熱交換機で約Bx65から約Bx93まで、加熱濃縮する。得られた濃縮液は、常圧下でベーパーセパレーターにて蒸気と分離する。この約Bx93にまで濃縮した糖シロップを結晶化工程に送り、固形化を行う。後の結晶化工程において、特に高速回転バドル付横型連続結晶機を用いる場合、固形化を良好に行うためには、濃縮工程において、Bxが90.5〜95.3程度まで濃縮を行うことが好ましい。濃縮が進んでいないと、すなわちBxが低いと、高速回転バドル付横型連続結晶機を使用して固形化することが困難となる場合があり、また濃縮が進みすぎると、すなわちBxが高いと高速回転バドル付横型連続結晶機に入る前に流れが悪くなり、その結果、固形化が起こり、配管が詰まるなどの問題が起こり得る。
【0025】
後の結晶化工程において、高速回転バドル付横型連続結晶機を用いた場合には、その固形化の条件に大きく影響するので、最後のプレート式熱交換機による濃縮後のBxを上記範囲にするための条件について、あらかじめ検討しておくのが好ましい。すなわち、常圧下における糖液の液温とBxの関係はよく知られているため、この換算表をもとにして、最後のプレート式熱交換機の濃縮の出口温度(ベーパーセパレーターの入り口の温度)から、高速回転バドル付横型連続結晶機に入る前のBxを求めることができる。例えばBxを93にして高速回転バドル付横型連続結晶機に送り込みたい場合には、換算表から、プレート式熱交換機の濃縮の出口温度を約127℃にすればよい。このように、最後のプレート式熱交換機の濃縮の出口温度、すなわち、ベーパーセパレーターの入り口の温度を監視することにより、濃縮後のBxを直接測定することなく、効率よく濃縮工程を行うことが出来る。また、上記した甘蔗汁のpH調節、糖シロップの濃縮の処理方法を用いることにより、加熱濃縮した糖シロップの蔗糖の分解および着色を最小限に抑え、かつ、結晶化工程に適したBxまで短時間で濃縮できる。
【0026】
濃縮後の糖シロップは、次に結晶化工程に進められる。本発明においては、結晶化工程は、強い剪断力を施与しつつ固形化を行うことが必要である。強い剪断力を施与しつつ固形化を行う手段としては、例えば万能混合撹拌機、ナウタミキサー、エクストルーダー、ニーダー、コロイドミル、高速回転パドル付横型連続結晶機等が挙げられる。なかでも、高速回転パドル付横型連続結晶機が好ましい。高速回転パドル付横型連続結晶機は、連続混合・分散機を結晶機として応用したもので、代表的な機械としてはタービュライザーが挙げられる。
【0027】
高速回転パドル付横型連続結晶機による結晶化は、好ましくは次のようにして行う。高速回転パドル付横型連続結晶機には、加熱した乾燥空気を導入する。加熱した乾燥空気の相対湿度はRH10%以下であり、高速回転パドル付横型連続結晶機を顆粒糖1トン/時間の排出速度で運転したときの乾燥空気の風量は、9〜30Nm3 /分(高速回転パドル付横型連続結晶機を顆粒糖1トン/時間の排出速度で運転したときに、1分間に送り込む空気の風量をNm3 単位で表した)に設定される。上記の相対湿度で、かつ上記の風量にすると、高速回転パドル付横型連続結晶機から出てきた際の顆粒糖の水分を2.5重量%以下に抑えることができる。このため、高速回転バドル付横型連続結晶機からでてきた顆粒糖の水分を均一にしかも低く抑えることが出来るので、次の乾燥仕上げ工程を良好に行うことができる。また、加熱した乾燥空気の温度は、60℃以上が好ましく、より好ましくは82〜88℃である。加熱した乾燥空気の温度が低すぎると、十分な結晶化が起こる前に乾燥空気によって冷却されてアメ化が起こり、高速回転パドル付横型連続結晶機の内部にアメ状のものが付着する。それによって負荷がかかり、機械が停止してしまうおそれがある。また、低すぎる温度の乾燥空気の存在によって、結晶化熱による水分の蒸発が不十分となる。さらに、固形化の際に発生した蒸気が気体として結晶機外へ出られず、凝縮して水分となってしまう。そのため、顆粒糖は、高速回転パドル付横型連続結晶機の出口より、クリーム状になって出てくる。一方、乾燥空気の温度が高すぎても、乾燥が進みすぎ、アメ化現象や蔗糖の分解および着色の問題が生じる。また、風味も失われてしまう。また、高速回転パドル付横型連続結晶機の周速(すなわち、パドル線速度)は、一般に25〜45m/秒、好ましくは粒度分布をそろえるために30〜40m/秒である。周速が小さすぎると、剪断力が弱くなり、完全な固形化に至らず、クリーム状となって高速回転パドル付横型連続結晶機から出てくる傾向があるので、生産できない。また周速が大きすぎると、固形化した糖の形状が顆粒状というよりむしろ細かい粉状になる傾向がある。このように細かい粉状のものは、次の乾燥仕上げ工程において、ホッパー内で、乾燥空気を吹き込むことにより粉塵が立ちやすく、操作性が悪い。さらに、使用時に粉塵が立つ、流通段階で固結してしまい商品価値を失う等の問題がある。
【0028】
従来顆粒糖を製造するのに使用されてきた濃縮および結晶化方法としては、例えばプレート式蒸発機、コロイドミル(またはホモジナイザー)コンベアベルト、粗砕機を組み合わせるいわゆる変換による方法(特公昭55-9200 号公報)、急速撹拌による方法(特開昭52-120137 号公報)、衝撃混合による方法(特開昭57-138400 号公報)、連続スクリュー押出機による方法(特開昭60-256399 号公報)および減圧濃縮機ビータークリスタライザー、粉砕機を組み合わせた方法(米国特許第3194682 号明細書)等がある。このような方法によって得た顆粒糖は、その後のホッパーのみの乾燥仕上げ工程に適さず、次のような不都合がある。すなわち、顆粒糖の粒径が粗く、粒度分布が広いために均一に乾燥できない。粒度分布が広いために流動性が悪く、ホッパー内で直接乾燥仕上げ工程を行うには適していない。水分が多すぎるため乾燥するのに時間がかかるなどである。さらに、これらの方法は、長期間、連続的に工業的規模で製造するには向いていない。なお、特公平1-16480 号公報では、純糖率97.1〜99.9重量%の糖シロップを高速回転パドル付横型連続結晶機を使用して工業的規模で顆粒糖を製造しているが、このような高い純糖率の顆粒糖では、本発明の乾燥仕上げ工程においては、ホッパー内で固結してしまう危険性が高い。
【0029】
結晶化工程を経て得られた顆粒糖を、次の乾燥仕上げ工程に送る。結晶化工程において固形化した顆粒糖を、乾燥仕上げ工程におけるホッパーへ輸送するために、通常コンベアを使用する。このコンベアは、顆粒糖を輸送する間に顆粒糖から発生される蒸気を効率よく除去する手段を有しているのが好ましい。そのような蒸気の効率良い除去は、通風(空気の吸引または押込み)により行うことができる。空気の量を加減することにより、運ばれる顆粒糖の水分を調節することができる。このようなコンベアとしては、例えばスクリューコンベア、振動コンベア、コンティニュアスフローコンベア、ベルトコンベア等が使用できる。顆粒糖は好ましくは、乾燥仕上げ工程のホッパーに入る直前の水分量を2.0重量%以下にされる。
【0030】
次に、乾燥仕上げ工程について説明する。前記結晶化工程からの顆粒糖は、約110〜120℃の温度を有するが、ホッパーまでコンベアにて輸送され、この輸送中に顆粒糖から発生される蒸気が効率よく除去され、また顆粒糖自身の放熱により約100℃まで冷える。本発明においては、この顆粒糖を、コンベアから、従来のドライヤーやクーラーを経由することなく、乾燥空気を底部から送り込んでいるホッパーに導入し、ホッパー内で直接、乾燥、冷却、熟成を行う。ホッパーに送り込まれる乾燥空気の温度は好ましくは約40〜50℃であり、相対湿度は、この温度において、好ましくはRH35%以下である。顆粒糖は、ホッパー内で、水分量1.3重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、かつ好ましくは0.4重量%以上になるまで乾燥される。顆粒糖を上記水分量にするために、乾燥空気の相対湿度をRH35%以下にする必要がある。なお、コンベアからホッパーに入る直前の顆粒糖の水分量は、ホッパー内の固結を防止するために、2.0重量%以下であることが好ましい。
【0031】
本発明において使用されるホッパーとしては、シュガービン、サイロ、貯槽、ビンなどと呼ばれているものが使用される。
【0032】
本発明の方法により得られる顆粒糖は、色価がAI2000以下であるため、従来の含蜜糖製品(黒糖、赤糖など)に比べて広い用途に使用することが可能となり、適用できる食品の範囲を限定せず汎用性を持つことができる。
【0033】
なお、色価(AI)は、「製糖便覧」(精糖技術研究会編、1962年6月30日発行、朝倉書店)の記載にしたがい、次のようにして求めたものである:
試料を水に溶解して、約25%(重量/重量)の被検液を調製した後、pH7.0にし、これについて、ブリックス度(Bx)をBx測定用屈折計を用いて測定した。次に、分光光度計を用いて、前記被検液(pH7.0)の560nmにおける吸光度(ABS)を求めた。これらの測定値から、次式(2):
【0034】
【数2】
AI=(1000×ABS ×100 )/(b×Bx×g) (2)
(ここで、ABS は吸光度であり;bは分光光度計のセルの光路長さ(cm)であり;Bxはブリックス度(g/g)であり;gは被検液の比重(g/ml)である)
により、AIを求めた。
【0035】
本発明の方法により得られる顆粒糖の水分量は、1.3重量%以下、好ましくは0.9重量%以下である。水分量が多すぎると経時的な着色や風味の低下を抑制することができなくなる。しかしながら、水分量が低すぎる条件で乾燥すると、長い乾燥処理の間にさとうきびの自然な風味が減少してしまうといった理由から、水分量は0.4重量%以上であるのが好ましい。なお、水分は、75℃で3時間の減圧乾燥法により測定した値である。
【0036】
本発明の方法により得られる顆粒糖は、非常に好ましい特徴を兼ね備えた顆粒糖である。すなわち、粒度分布が狭く、また変動係数が小さい。さらに、顆粒糖に非結晶部分(いわゆる蜜部分)が、非常に安定した状態で存在する。よって、流動性にも優れており、固結しにくい。使用面において取り扱いが容易であると共に保存性がよく、製造面、特に包装工程においても作業性が良い。
【0037】
【作用】
本発明の方法では、糖シロップの純糖率を特定範囲にしたこと、強い剪断力を施与しつつ結晶化を行ったことにより、ドライヤーおよびクーラーを用いる工程を省略し、ホッパーを用いるだけで乾燥仕上げを行うことができる。例えば特公平1-16480 号公報では、加圧式薄膜濃縮機と高速回転パドル付横型連続結晶機の組合せた方法が開示されているが、ここで用いる糖シロップは、純糖率が高い (97.1〜99.9%)ので、高速回転パドル付横型連続結晶機を出た後スクリューコンベアからホッパーに導入すると、ホッパー内で固結してしまう可能性が高く、乾燥を行うことが困難である。また、そのような製品は、保存中に固結する可能性が高い。
【0038】
一方、煎糖(グラニュー糖、三温糖など)や本発明の方法によらない造粒法で固形化した砂糖製品は、純糖率の如何にかかわらず、ホッパー内で直接乾燥する方法では、ホッパー内で固結してしまう。
【0039】
本発明を以下の実施例においてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
【実施例】
以下においては、製品の分析は、「製糖便覧」(精糖技術研究会編、1962年6月30日発行、朝倉書店)記載の原料糖の分析方法に従い、水分は75℃で3時間の減圧乾燥法、純糖率はスペンサー法により測定した糖度の値から前記式(1)に従って求め、還元糖はメチレンブルー法、灰分は硫酸灰分法により測定し、また色価(AI)は、前記したように、Bx(ブリックス度)と、560nmにおける吸光度(ABS)とから、前記式(2)に従って求め、BxはBx測定用屈折計により、pHはpH計により測定した。
【0041】
なお、以下では、特に記載しない限り、%は重量%である。
【0042】
実施例1
1.糖シロップを調製する工程
甘蔗を圧搾機にて搾汁した甘蔗汁(Bx21.2、純糖率84.5%、pH5.5)中の大きな異物を、スリットサイズ0.1mmのスクリーンで除いた後、プレートヒーターで約70℃になるまで加熱後、ついで分画分子量が10万の管型限外濾過(ダイセル化学工業(株)製、MH−25型、有効面積2m2 ×30本)により濾過処理をした。この濾過した甘蔗汁(Bx19.8,純糖率84.5)に、蔗糖液であるファインリカー(Bx58.0、純糖率99.3%)を混合し、ブレンドタンクにて糖シロップ(Bx28.0,純糖率91.2%)を調整した。
2.濃縮工程
次に、この糖シロップを、1番目のプレート式熱交換機で、Bx28.0からBx40.0まで、加熱濃縮した。減圧下で、ベーパーセパレーターにて濃縮液を蒸気と分離し、この濃縮液を次の2番目のプレート式熱交換機に送り、Bx40からBx65まで、加熱濃縮した。さらに減圧下で、ベーパーセパレーターにて濃縮液を蒸気と分離し、この濃縮液を3番目のプレート式熱交換機でBx65からBx93まで、加熱濃縮した。常圧下で、ベーパーセパレーターにて、このBx93の濃縮液を蒸気と分離した。なお、この際のBxの測定は、常圧下における糖液の液温とBxの関係の換算表から求めた。すなわち、3番目のプレート式熱交換機の濃縮の出口温度(ベーパーセパレーターの入り口の温度)が約127℃であったことから、Bx93の値を得た。
3.結晶化工程
このBx93までに濃縮した糖シロップを、高速回転パドル付横型連続結晶機(タービュライザー、ホソカワミクロン(株)製、800rpm、30 インチパドル)に導入し、固形化させた。この際の高速回転パドル付横型連続結晶機の運転条件は、周速は32m/秒、結晶機中に導入する加熱した乾燥空気の相対湿度は4.5%(温度約85℃)、風量は12Nm3 /分(高速回転パドル付横型連続結晶機を顆粒糖1トン/時間の排出速度で運転したときの乾燥空気の風量)であるように調整した。このような条件下のもとに濃縮した糖シロップは、高速回転パドル付横型連続結晶機内部の回転するパドルにより、強力な剪断力を受け、一気に固形化した。かくして、約1.1t/時間の生産能力で顆粒糖を製造することが出来た。この際の高速回転パドル付横型連続結晶機から出てきた際の顆粒糖の温度は約110〜120℃であり、また純糖率は90.6、水分は2.0%であった。
4.乾燥仕上げ工程
工程3で得られたこの顆粒糖を、スクリューコンベアー(顆粒糖から発生する蒸気を通風(空気の吸引および押込み)によって、効率的に除去する構造を有する)を経由して、温度約45℃(相対湿度25%)、顆粒糖30トン当たり15m3 /分の乾燥空気が吹き込まれているホッパー内へ導入した。なお、スクリューコンベアーからホッパーへ入る際の顆粒糖の温度は約100℃、水分量は、1.5%であった。さらに、ホッパー内での乾燥仕上げ工程、すなわち乾燥、冷却、熟成工程は、顆粒糖の水分が充分平衡水分に達するまで、すなわち24時間かけて行なった。熟成後の顆粒糖の水分は0.8%であった。引き続き粒径を揃えるために、篩別機(16メッシュの網を有する)で篩別し、その篩下を顆粒糖製品(A)とした。
5.製品の特性
かくして得られた顆粒糖は、純糖率90.6%、水分0.8%、色価(AI)1030であり、甘蔗本来の自然な風味を有する、黄白色の顆粒糖であった。この顆粒糖は、流動性に優れ、また固結しにくいという優れた特徴を有していた。
比較例1
得られる糖シロップの純糖率を85.8%に調整したこと以外は、実施例1の工程1と同様にして糖シロップの調製を行なった。次いで、実施例1の工程2〜3を繰り返した。ところが、工程3において、タービュライザーからは固形化しきれているものと、一部固形化しきれていないものが同時に出てくると共に、タービュライザー内部での固形物の付着が著しくなったため、タービュライザーでの生産速度が徐々に低下した。また、このように固形化が不完全なものを、次の工程4に進め、スクリューコンベアからホッパーに入れると、固結が起こりやすくなると共に、乾燥仕上げ工程が実施例1と比較して長くなり、また、製品として満足できるものが得られなかった。このように、純糖率が低い場合、連続的な工業的生産が困難であることがわかった。
【0043】
比較例2
得られる糖シロップの純糖率を95.7%に調整したこと以外は、実施例1の工程1と同様にして糖シロップの調製を行なった。次いで、実施例1の工程2〜3を繰り返した。固形化した顆粒糖を工程4に進め、スクリューコンベアからホッパーに入れると、ホッパー内で固結を起こしやすく、安定して乾燥仕上げ工程を行うことができなかった。なお、スクリューコンベアからホッパーへ入る際の顆粒糖の温度は約100℃、水分量は1.5重量%であった。このように、純糖率が高いと、乾燥仕上げ工程において顆粒糖がホッパー内で固結しやすいことがわかった。また、この顆粒糖は、保存中にも固結が起こりやすかった。
【0044】
比較例3
実施例1の工程1〜3を繰り返した。次に、実施例1の工程4(ホッパーによる乾燥、冷却および熟成)の代わりに、従来の乾燥仕上げ工程(ドライヤーによる乾燥、クーラーによる冷却およびホッパーによる熟成)を行なった。すなわち、工程3から得られた顆粒糖(温度40〜45℃、水分量0.9重量%)を、約60〜70℃の温風が吹き込まれている流動層乾燥機(不二パウダル(株)製、MDD−3000N)にて、製品水分を0.7%になるまで乾燥後、クーラーで顆粒糖の温度が約30〜35℃になるまで冷却し、顆粒糖の水分が充分平衡水分に達するまで、ホッパーにて熟成を24時間おこなった。熟成が終わった後、引き続き粒径を揃えるために、篩別機で篩別し、顆粒製品(B)とした。
【0045】
かくして得られた顆粒糖は、純糖率90.5%、水分0.7%、色価(AI)1120であり、甘蔗本来の自然な風味を有する、黄白色の顆粒糖であった。
【0046】
試験例
実施例1で得た顆粒製品(A)と比較例3で得た顆粒製品(B)について、荷重試験をおこなった結果、以下の表1に示すような違いがみられた。
【0047】
なお、荷重試験の方法は、次のようにして行なった:製品AおよびBをそれぞれ製品用小袋(OP20μm/PE60μm)に2袋づつ詰め、小袋4枚分の面積に120kgの荷重(20kgの大袋で12段積みの一番下に相当)をかけ、1ヶ月目と2ヶ月目に取り出して状態をみることとした。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の結果から、本発明の方法(ホッパーによる1工程)で乾燥仕上げを行なった顆粒糖製品は、従来の方法(乾燥、冷却および熟成の3工程)に比較して、工程が簡略化され、設備費用が少なくなっただけではなく、乾燥方法の違いにより、製品の物性においても差がみられた。すなわち、本発明の方法により得られた顆粒糖製品と、従来の方法により得られた顆粒糖製品とは、ほとんど変わらない水分量でありながら、従来の方法により得られた顆粒糖は、製造後2ヶ月の荷重試験において、本発明の方法により得られた顆粒糖に比べわずかではあるが固結をし始めていた。
【0050】
本発明による方法は、顆粒糖を乾燥空気によってゆっくりと乾燥する。顆粒糖は、周囲を蜜膜(蜜部分)で覆われた1つ1つの結晶から構成されているが、このようなゆっくりとした乾燥により、ミクロ的には、それぞれの蜜膜中の蔗糖の結晶化が充分に促され、安定化した状態となる。またマクロ的には、顆粒糖全体として、非結晶部分(蜜部分)が局在化することなく均一で安定な状態になり、かつ非結晶部分の量を最小にするという効果がある。このように、顆粒糖全体が均一化した状態では、顆粒糖中での水分の移行が起こりにくいため、固結が生じにくい。それに対して、従来の方法では、ドライヤーによって顆粒糖表面にある結晶を急激に乾燥するため、顆粒糖の内部に存在する蜜膜中の蔗糖の結晶化を促すことができず、非結晶部分が多く、かつ安定した状態となっていない。そのため、保存中にこの非結晶部分の水分が蔗糖の再結晶を促すため、周りの顆粒糖を巻き込みながら固結を起こしてしまうと推定される。
【0051】
このように、乾燥仕上げ工程をホッパーによる1工程で行うと、乾燥後の顆粒糖に非結晶部分が非常に安定した状態で存在するので、従来の乾燥方法(3工程)に比較して顆粒糖製品が固結しにくいことが予測される。
【0052】
応用例1
ここでは、本発明の方法の工程4において、ホッパー内の乾燥空気の相対湿度と顆粒糖製品の水分量との関係および、顆粒糖製品の水分量と固結性との関係を調べた。その結果から、顆粒糖製品の最適水分量を求め、さらに、そのような水分量を得るために、ホッパーに入る前の顆粒糖の最適水分量について検討した。
(1)相対湿度の検討
実施例1の工程1〜3を繰り返した。工程3で固形化した顆粒糖を、スクリューコンベアーを経由して、ホッパーに導入した。なお、スクリューコンベアからホッパーに入る際の顆粒糖の温度は約100℃、水分量は1.6重量%であった。ホッパーには、温度約45℃で、かつ相対湿度がそれぞれ25、30,35、40、45、50または60%の空気を底部から送り込んだ。顆粒糖の水分が充分平衡水分に達するまで、すなわち24時間かけて乾燥仕上げ工程をおこなった。乾燥空気の相対湿度と、乾燥仕上げ工程後の顆粒糖の水分量との関係を次の表に示す。
【0053】
【表2】
(2)荷重試験
(1)で得た(a)から(g)の製品についてそれぞれ荷重試験をおこなったところ、以下の結果が得られた。
【0054】
なお、荷重試験の方法は、比較例3と同様にして行なった。
【0055】
【表3】
上記の結果から、製品保存中の固結を考慮すると、顆粒糖製品は、ホッパー内で1.3重量%以下に乾燥されることが好ましいことがわかった。
(3)ホッパーに入る前の顆粒糖の水分量の検討
実施例1の工程1〜2を繰り返した。工程3において、実施例1と同様の条件の高速回転パドル付横型連続結晶機にて固形化した顆粒糖について、余分なベーパーを吸引しているスクリューコンベアーを経由して、ホッパーに入る直前の水分量を、2.5、2.0、1.6、1.3、または1.0%に調整した。これらの顆粒糖のホッパー内での状態を観察し、その結果を以下の表に示した。なお、ホッパーの底部から送る乾燥空気の条件は、実施例1と同一であった。
【0056】
【表4】
上記の結果より、ホッパーによる乾燥仕上げ工程を行う上で、ホッパーに入る前の顆粒糖の水分量は2.0重量%以下、より好ましくは1.6重量%以下であることが、本発明による乾燥仕上げ工程を実施する上で好ましいことがわかった。
【0057】
応用例2
ここでは、実施例1で行なった限外濾過の最適条件について検討した。
【0058】
実施例1の工程1において、管型限外濾過(ダイセル化学工業(株)製、有効膜面積2m2 ×3本)の分画分子量をそれぞれ1万、3万、4万、10万、15万または50万にして、甘蔗汁の濾過処理をした。この濾過処理した甘蔗汁にファインリカーを混合し、ブレンドタンクにてそれぞれの純糖率が91.0%になるように糖シロップを調整した。これらの糖シロップを工程2において、プレート式熱交換機を用いてBx93になるまで濃縮した後、ベーパーセパレーターで蒸気と濃縮溶液とを分離した。次に、工程3において高速回転パドル付横型連続結晶機(タービュライザー、ホソカワミクロン(株)製、2800 rpm、8インチパドル、周速29.8m/秒)を用いて固形化を行った。次いで、工程4において、ホッパーにて乾燥仕上げを行った。工程3および4の条件は実施例1と同一であった。
【0059】
【表5】
このように、分画分子量が15万以下の管型限外濾過膜を用い濾過処理をした甘蔗汁を用い高速回転パドル付横型連続結晶機を使用して固形化した場合、全量固形化できることがわかった。さらに、ホッパーによる乾燥も問題なく行うことが出来た。しかしながら、生産速度は、管型限外濾過膜の分画分子量が3万未満の場合、甘蔗汁の濾過速度が遅くなることにより、生産速度が落ちることがわかった。
【0060】
また、分画分子量が15万より大きい管型限外濾過膜を用い濾過処理をした甘蔗汁を用い、高速回転パドル付横型連続結晶機を使用して固形化した場合、一部固形化ができない場合があった。すなわち、分画分子量15万を超える管型限外濾過膜を用い濾過処理をした場合には、固形化を阻害する甘蔗由来の高分子不純物及び懸濁物質が、なお含まれているためであると推定される。
【0061】
応用例3
ここでは、高速回転パドル付横型連続結晶機を使用する場合に、周速の最適範囲の検討を行なった。
【0062】
実施例1の工程3において、高速回転パドル付横型連続結晶機の周速を15、20、25、30,35、40,45、または50m/秒に変更した以外は、実施例1の各工程を繰り返した。顆粒糖が結晶機を出た直後の様子およびホッパー内での乾燥状態を観察した。
【0063】
【表6】
上記表6の結果より、結晶化工程において、高速回転パドル付横型連続結晶機の周速は25〜45m/秒が好ましいことがわかった。周速が小さすぎる(20m/秒)と、剪断力が弱くなり、完全な固形化に至らない。また、周速が大きすぎる(50m/秒)と、固形化した糖の形状が顆粒状というよりむしろ細かい粉状になり、さらにこの細かい粉状のものは、次の乾燥仕上げ工程においてホッパー内で乾燥空気を送ることにより、粉塵が立ちやすく、操作性が悪い。
【0064】
なお、周速を30〜40m/秒にした場合、粒度分布がそろう傾向にあるため乾燥仕上げ工程の都合上、または流動性、固結の面からも、より好ましい。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、従来の顆粒糖製造方法において、砂糖製品の品質を決定する重要な工程である乾燥仕上げ工程、すなわちドライヤー、クーラーおよびホッパーの3工程をホッパーの工程のみに簡略化することができた。ドライヤーおよびクーラーが不要なので、諸設備費の節約、設置面積の縮小が可能である。さらに、本発明の方法により得られた顆粒糖は、甘蔗由来の風味や栄養成分を含み、着色しにくく、しかも流動性がよく、固結しにくいなど取扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で使用した、本発明の方法を実施するための装置および主な製造工程である。
【符号の説明】
1 甘蔗汁
2 スクリーン
3 プレートヒーター
4 限外濾過
5 ブレンドタンク
6 プレート式熱交換機
7 ベーパーセパレーター
8 高速回転パドル付横型連続結晶機
9 ドライングコンベアー
10 ホッパー
11 乾燥空気
12 篩別機
13 製品
Claims (10)
- 糖シロップを調製する工程、濃縮工程、結晶化工程、乾燥仕上げ工程を含む顆粒糖の製造方法において、
糖シロップを調製する工程を経て得られた、濃縮工程に入る前の糖シロップの純糖率を87.0〜95.1重量%に調整しておくこと、
結晶化工程が、強い剪断力を施与しつつ固形化して顆粒糖を得る工程であること、および
乾燥仕上げ工程が、結晶化工程から得られた顆粒糖を、底部から乾燥空気を送り込んでいるホッパー内に送り込むことによって乾燥させる工程であること
を特徴とする顆粒糖製造方法。 - 濃縮工程に入る前の糖シロップが、甘蔗汁を分画分子量が30,000〜150,000 の限外濾過を行った後、蔗糖および/または蔗糖液を添加して純糖率87.0〜95.1重量%に調整することにより得られたものである請求項1記載の方法。
- 結晶化工程において、強い剪断力を施与しつつ固形化して顆粒糖を得ることを、高速回転パドル付横型連続結晶機を用いて行う請求項1または2記載の方法。
- 濃縮工程を出た糖シロップのブリックス度(Bx)が、Bx90.5〜Bx95.3である請求項3記載の方法。
- 結晶化工程において、高速回転パドル付横型連続結晶機の周速が25〜45m/秒である請求項3または4項記載の方法。
- 結晶化工程において、高速回転パドル付横型連続結晶機に加熱した乾燥空気を導入し、該加熱した乾燥空気の相対湿度がRH10%以下であり、かつ、高速回転パドル付横型連続結晶機を顆粒糖1トン/時間の排出速度で運転したときの乾燥空気の風量が9〜30Nm3 /分である請求項3〜5のいずれか1項記載の方法。
- 結晶化工程において固形化した顆粒糖を、乾燥仕上げ工程におけるホッパーへ輸送するためにコンベアが使用され、該コンベアは、該顆粒糖を輸送する間に該顆粒糖から発生される蒸気を通風により効率よく除去する手段を有し、該顆粒糖は、ホッパーに入る直前の水分量を2.0重量%以下にされる請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
- 乾燥仕上げ工程における乾燥空気が、温度40〜50℃および相対湿度RH35%以下である請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
- 乾燥仕上げ工程において、顆粒糖を水分量0.4〜1.3重量%に乾燥する請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
- 乾燥仕上げ工程において、顆粒糖を水分量0.4〜0.9重量%に乾燥する請求項9記載の方法。
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