JP3775778B2 - 膜ろ過装置の逆洗方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、膜ろ過装置の逆洗方法の改良に関するものであって、特に、化学成分を添加した逆洗方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
膜ろ過は、無数の微細なろ過孔を有する膜を用いて、原水に含まれる懸濁物質を分離除去する固液分離技術であり、上下水処理、食品、医薬品分野の処理などに広く用いられている。
この膜ろ過では、ろ過操作の進行に伴い、原水側膜面上にろ過ケーキ層が形成され、ろ過抵抗が増大してろ過性能が低下する。ある程度のろ過抵抗の増大のうちは、ろ過圧力を増やすことでカバーできるが、通常は、適宜なろ過時間に応じて、ケーキ層を除去して膜性能を回復させるため膜洗浄を行う。
【0003】
この膜洗浄には、一部のRO膜、NF膜を除き、膜のろ過水側から原水側に向けて洗浄水を通過させて、原水側膜面の形成されたケーキ層を剥離させ、除去するいわゆる逆圧洗浄(普通は逆洗と略称する)が利用されている。この逆洗は、膜性能を確実に回復させ、膜性能の安定維持、薬品洗浄周期を延長できる効果、さらには膜そのものの寿命の長期化といった観点から重要な操作とされている。
【0004】
この逆洗に使用される洗浄水としては、一般的に浄水やこのろ過膜装置のろ過水自体が用いられるが、洗浄効果を高める目的などから所定の洗浄薬品を添加した洗浄水を用いる場合もある。
例えば、高分子中空糸膜などを用いた上水用ろ過装置の場合では、原水水質によって多少異なるが、一般に次亜塩素酸ナトリウムを数十ppm添加した洗浄水を用いている。この次亜塩素酸ナトリウムのような酸化性薬品は、金属成分の酸化作用、有機成分の分解作用に寄与して、ケーキ層を効果的に除去できるという利点が認められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところがこのような、洗浄薬品を含む洗浄水を用いた逆洗においては、所定のろ過性能を発揮するに必要、最低限の洗浄薬品を添加しているにもかかわらず、逆洗排水中に相当量の洗浄薬品が有効成分を保有したままの状態で排出されていて、洗浄薬品が無駄になっていることが分かった。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、添加した洗浄薬品を有効に作用させるようにするとともに、洗浄薬品の使用量を低減することが可能となる膜ろ過装置の逆洗方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の問題は、
膜ろ過装置のろ過水側に洗浄化学成分を最大10ppm含む洗浄水を導入し、この洗浄水を前記膜の少なくともケーキ層に接する膜面まで浸透させる浸透ステップ、この洗浄水を前記膜の膜面まで浸透させた段階で、洗浄水のろ過膜内の移動を停止させ、洗浄水を実質的に原水側領域に送り込むことなく前記膜に浸透させた状態を1〜10分の範囲の時間保持する保持ステップ、および前記保持ステップ終了後、洗浄化学成分を含まない洗浄水でろ過膜からケーキ層を剥離させ除去し洗浄する逆圧洗浄を行う逆洗ステップを少なくとも含む、ろ過膜上のケーキ層を剥離、除去するための一連のステップからなることを特徴とする膜ろ過装置の逆洗方法によって解決することができる。
【0007】
また、本発明は、次の形態に具体化することができる。
(1)前記洗浄化学成分が酸もしくはアルカリ性化学成分、またはオゾンなどの酸化性化学成分である形態。
(2)前記保持ステップにおいて、原水の水質に応じて予め設定した時間、洗浄水を前記膜に浸透させた状態を保持する形態。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の膜ろ過装置の逆洗方法に係る実施形態について、図1、2を参照しながら説明する。
膜ろ過装置2は、内部に配置したろ過膜21によって、原水側領域22とろ過水側領域23に区分されている。そして、例えば、クロスフロー形式のろ過操作では、原水槽11からポンプ12によって原水が原水側領域22に導入され、ついで返送経路14によって原水槽11に返送され循環する間に、原水側領域22の原水は、所定のろ過圧力のもとでろ過膜21を通じてろ過水となって、ろ過水側領域23に移動し、次いでろ過水槽32に誘導される。そして、原水中の懸濁物質はろ過膜面上にケーキ層21aを形成することになる。
【0009】
そして、本発明は、このようなろ過操作が進行してろ過抵抗が増大した段階で、予め定めたタイミングあるいは適時に実施される逆洗方法であって、本発明の特徴とするところは、少なくとも次の各ステップを行う点にある。
(1)浸透ステップ:ろ過を停止し、膜ろ過装置2のろ過水側領域23に洗浄化学成分を含む洗浄水を導入する。図1では、洗浄水槽31に洗浄化学成分を含む洗浄水を準備しておき、ここからポンプ33もしくは圧縮空気によって洗浄水を膜モジュールのろ過水側領域より送水すればよい。洗浄薬品としては、酸もしくはアルカリ性薬品から選択され、例えば、アルカリ性薬品では次亜塩素酸ナトリウムが適当であり、その濃度は、従来法の場合より低濃度でよく、原水水質やろ過時間の相違によるろ過ケーキ層の形成状態により異なるが最大でも10ppmまででよい。または、オゾンなどの酸化性化学成分を溶解させて同様に用いることができる。
【0010】
本発明では、前記洗浄水の導入の態様に、先ず第1の具体的な特徴がある。すなわち、この導入された洗浄水をして、前記ろ過膜21の少なくともケーキ層21aに接する膜面まで浸透させ、ろ過膜21全体に満遍なく充満させるところにある。
そこで、この浸透ステップでは、ろ過圧力(原水側圧力‐ろ過水側圧力)を上回る圧力で洗浄水を導入する必要がある。ろ過水側領域23への導入に関しては圧力による管理が好ましく、ポンプを利用した導入の他に、圧縮空気を利用した導入法がより好ましい。
また、この浸透ステップでは、予め算出しておいた膜モジュールのろ過水側領域分の洗浄水を導入すればよく、更に洗浄水が原水側排出口13から流れ出るのが認められるまで洗浄水を送り込むようにしてもよい。なお、洗浄水は、少なくとも膜面上のケーキ層に到達すればよい為、原水側領域22に充満させる必要はまったくない。
【0011】
(2)保持ステップ:本発明の第2の具体的な特徴であって、この洗浄水のろ過膜内の移動を停止させ、前記ろ過膜21に浸透させた状態を所定時間保持するステップである。この目的には、洗浄水の送り込み圧力を低下させ、洗浄水のろ過膜21内の移動を実質的に停止すればよい。そして、この保持ステップの処理時間は、原水の水質によって大きく変動するのであるが、1〜10分の範囲で選択されるが、より好ましくは、原水の水質やろ過時間ごとに予め最適の処理時間を実験的に確認して設定しておくのがよい。
【0012】
(3)洗浄ステップ:前記保持ステップ終了後、洗浄化学成分を含まない洗浄水で逆圧洗浄を行い、ろ過膜からケーキ層を剥離させ除去し、ろ過膜を洗浄するステップであり、従来法の逆洗と特に変わるところはない。逆洗圧力は膜により異なるが、例えばセラミックMF膜の場合、500kPa程度の圧力である。この場合、図1では、洗浄水槽31を閉じ、ろ過水槽32を開いて洗浄化学成分を含まない洗浄水として利用すればよい。
【0013】
次に、本発明に基づく実施例と逆洗操作のみを行う従来例の結果を図2および後記の表1に示す。
表1に示す試験条件で逆洗を繰り返しに伴うろ過抵抗値(水温25℃、膜ろ過流束1m3/m2/日に換算したろ過圧力)の上昇動向については、図2の曲線La、曲線Lbに示す。ここで、曲線Laは従来例、曲線Lbは本発明であり、試験日4/4〜6/3までの43日間のろ過抵抗の1日当たり上昇率は、従来例の0. 4kPa/日に対して、本発明ではその1/2である0. 2kPa/日に止まる結果となり、定期的に行う薬品洗浄を行うタイミングを約2倍に延長することが可能となった。また、洗浄化学成分の使用量は、洗浄化学成分を含む洗浄水の使用量総量が減少したことと、成分濃度が低下したことを合わせて、約1/4にまで減少させることができた。
【0014】
このように洗浄効果が向上する理由は、前記浸透ステップにおいて、洗浄化学成分を含む洗浄水をろ過膜21全体に満遍なく充満させ、保持ステップで所定時間保持されるので、例えば酸化性化学成分を用いた場合は、ろ過膜21全体と膜面に接するケーキ層21aにまで酸化作用などを十分に及ぼす時間が与えられるから、ケーキ層の剥離、除去に及ぼす効果を高めるものと考えられる。
【0015】
【表1】
Figure 0003775778
Figure 0003775778
【0016】
【発明の効果】
本発明の膜ろ過装置の逆洗方法は、以上に説明したように構成されているので、添加した酸化性化学成分などの洗浄薬品を有効に作用させるようにするとともに、洗浄化学成分の使用量を低減でき、薬品の浪費を防止できる。また、膜面とケーキ層との境界に有効に作用するので逆洗効果も向上し、薬品洗浄の周期や膜寿命の長期化に大きく寄与するという優れた効果がある。よって本発明は従来の問題点を解消した膜ろ過装置の逆洗方法として、その工業的価値は極めて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の逆洗方法を説明するためのフローモデル図。
【図2】試験例を示すグラフ。
【符号の説明】
11 原水槽、12 ポンプ、13 原水側排出口、14 返送経路、2 膜ろ過装置、21 ろ過膜、21a ケーキ層、22 原水側領域、23 ろ過水側領域、31 洗浄水槽、32 ろ過水槽、33 ポンプ。

Claims (3)

  1. 膜ろ過装置のろ過水側に洗浄化学成分を最大10ppm含む洗浄水を導入し、この洗浄水を前記膜の少なくともケーキ層に接する膜面まで浸透させる浸透ステップ、この洗浄水を前記膜の膜面まで浸透させた段階で、洗浄水のろ過膜内の移動を停止させ、洗浄水を実質的に原水側領域に送り込むことなく前記膜に浸透させた状態を1〜10分の範囲の時間保持する保持ステップ、および前記保持ステップ終了後、洗浄化学成分を含まない洗浄水でろ過膜からケーキ層を剥離させ除去し洗浄する逆圧洗浄を行う逆洗ステップを少なくとも含む、ろ過膜上のケーキ層を剥離、除去するための一連のステップからなることを特徴とする膜ろ過装置の逆洗方法。
  2. 前記洗浄化学成分が酸もしくはアルカリ性化学成分またはオゾンなどの酸化性化学成分である請求項1に記載の膜ろ過装置の逆洗方法。
  3. 前記保持ステップにおいて、原水の水質に応じて予め設定した時間、洗浄水を前記膜に浸透させた状態を保持する請求項1に記載の膜ろ過装置の逆洗方法。
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