JP3774263B2 - 石炭燃料成型体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭燃料成型体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭採掘場において採掘される、例えば褐炭、亜瀝青炭、亜炭等の低品位炭は、内部に多数の細孔を有すると共に、表面に吸湿性のカルボキシル基や水酸基を有しているため、間隙水を含めて含水量が25〜65重量%と多く、発熱量が小さいため燃料としては不利である。さらに引火温度が低いと共に、細孔により比表面積が大きいため、風化や輸送中の形状変化等により自然発火しやすく、輸送や貯蔵が困難である。このため従来より輸送時のハンドリング性を向上させる方法(特開昭56−2394号)や、自然発火性を抑える方法(特開平2−298586号)が提案されている。
【0003】
このうち前者は、採掘された褐炭をスラリ−化し、採掘場から集積場へは水スラリ−の状態で輸送し、次いで脱水処理を行なった後造粒して脱水乾燥させ、集積場から先は造粒球状物の状態で輸送することにより、風化による自然発火、乾燥による塵の発生や飛散等を抑え、輸送時のハンドリング性を向上させるものである。
【0004】
また後者は、粉砕後の粒状炭を炭種に応じた含水量にまで乾燥させて乾燥石炭を生成し、その後蒸発により乾燥石炭から所望の熱量を取り去る量の水を乾燥石炭に噴霧し、この噴霧した水を蒸発させることにより前記乾燥石炭を冷却する方法であり、この方法により得られる粒状炭は自然発火性がかなり抑えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上述の方法では、乾燥させて含水量を低下させているものの、乾燥だけでは固有水分や表面のカルボキシル基等を取り除くことは困難であるため、含水量は依然として多い。また輸送中や貯蔵中に吸湿して形状崩壊したり風化することがあり、これらが原因となって自然発火を起こすこともあった。
【0006】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、含水量を低下させると共に、形状崩壊や自然発火を抑えた石炭燃料成型体を製造する方法を提供することにある。
【0007】
【発明を解決するための手段】
請求項1の発明は、低品位炭を湿式粉砕して、粒径1000μm以下の粉砕炭を得る工程と、前記粉砕炭を270℃以上の熱水と接触させて改質炭を得る工程と、前記改質炭を乾燥する工程と、乾燥した改質炭を圧縮して石炭燃料成型体を得る工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の発明において、乾燥した改質炭に木粉を混合してから圧縮して石炭燃料成型体を得ることを特徴とする。請求項3の発明は、請求項1記載の発明において、粉砕炭を熱水と接触させる時間は5分以上であることを特徴とする。請求項4の発明は、請求項1又は3記載の発明において、乾燥した改質炭を圧縮する際の圧力は2トン/cm2 以上であることを特徴とする。請求項5の発明は、請求項2記載の発明において、木粉を混合した乾燥した改質炭を圧縮する際の圧力は2トン/cm2 以上であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明方法を実施する石炭燃料成型体の製造装置の一形態を示す構成図である。図中14は湿式粉砕機であり、この上流側には粗砕機12、フィ−ダ11aを介してホッパ11が設けられると共に、貯水槽13が設けられている。また湿式粉砕機14の下流側には粉砕スラリ−貯槽15を介して供給スラリ−貯槽16が設けられている。この供給スラリ−貯槽16の下流側には予熱器21、加熱器22を介して改質反応器23が設けられており、改質反応器23の下流側には冷却器24、圧力調整部25、改質炭スラリ−貯槽26を介して脱水機31が設けられている。脱水機31で分離された排水51は廃棄される。脱水機31の下流側には乾燥機32が設けられ、その下流側には例えば改質炭貯槽33、ホッパ41、フィ−ダ41aを介して成型機42が設けられている。
【0010】
このような石炭燃料成型体の製造装置では、先ずホッパ11からフィ−ダ11aを介して粗砕機12に低品位炭例えば、褐炭、亜瀝青炭、亜炭等を投入して、粗粉砕する。ここで前記低品位炭は例えば17%程度の固有水分を有する。続いて粗粉砕された低品位炭を貯水槽3からの水と共に湿式粉砕機14に投入して湿式粉砕し、粒径1000μm以下の粉砕炭とする。
【0011】
次いで粉砕炭を含む粉砕スラリ−を粉砕スラリ−貯槽15に貯留する。この後例えばスラリ−濃度25重量%の粉砕スラリ−を粉砕スラリ−貯槽15から供給スラリ−貯槽16に送り、予熱器21にて例えば150℃程度に予熱した後、加熱器22にて例えば270℃程度に加熱しながら改質反応器23に送り、例えば270℃以上に5分以上加熱することにより、スラリ−中の粉砕炭をスラリ−中の270℃以上の熱水とを接触させる(熱水処理)。
【0012】
ここで改質反応器23内は熱水の温度が高温であるため高圧とする。また改質反応器23は温度維持のため熱媒トレ−スを施してある。従って高温高圧状態下でスラリ−中の粉砕炭の間隔水と固有水分の一部が除去されると共に、その細孔が潰され、さらに表面のカルボキシル基や水酸基の一部が除去されて、粉砕炭は改質炭に改質される。また粉砕炭のワックス分が改質炭の冷却時に表面近くにしみ出て疎水性になる。つまり粉砕炭が不可逆的脱水されたことになる。
【0013】
続いて得られた改質炭を含む改質炭スラリ−を冷却器24に送り、例えば90℃程度まで冷却した後、圧力調整部25にて一旦圧力を下げ、気液分離してから改質炭スラリ−貯槽26に送って、ここに貯留する。次いで改質炭スラリ−を脱水機31に送り、ここで水と改質炭とを分離した後、改質炭のみを乾燥機32に送り、ここで乾燥する。このように乾燥した改質炭を一旦改質炭貯槽33に貯留した後、ホッパ41、フィ−ダ41aを介して成型機42に投入し、ここで例えば2トン/cm2 の圧力で圧縮することにより、所定の形状例えばア−モンド型に成型し、石炭燃料成型体を得る。
【0014】
以上において粉砕炭の粒径は1000μm以下とすることが望ましい。粒径が1000μmより大きいと、粉砕炭の固有水分は除去することができるが、熱水処理反応が十分に進行しないため、粉砕炭を十分に改質することができず、この結果粉砕炭中に成型後の形状変化に悪影響を及ぼす物質が残留している可能性が大きくなるからである。
【0015】
また熱水処理の熱水の温度は270℃以上であることが望ましい。温度が270℃より低いと粉砕炭の固有水分の除去が不十分になるからである。さらに熱水処理の処理時間は5分以上とすることが望ましい。処理時間が5分より少ないと固有水分があまり除去されないからである。さらにまた成型時の圧力は2トン/cm2 以上とすることが望ましい。圧力が2トン/cm2 より小さいと圧壊強度や落下に対する強度が小さくなるからである。なおこれらの条件は後述する実施例の実験結果より決定されたものである。
【0016】
このような石炭燃料成型体の製造方法では、粉砕炭を熱水処理して改質炭を得、この改質炭を圧縮して成型体を製造しているので、固有水分が少なく、形状崩壊や自然発火を起こしにくい石炭燃料成型体を得ることができる。即ち改質炭は改質により固有水分が除去されると共に、細孔が潰されて比表面積が減少しているため付着水が少なく、さらに表面の吸湿性のカルボキシル基や水酸基の一部が除去されるので、これらにより吸湿される水分量も減少する。
【0017】
従ってこのような改質炭を成型して得た石炭燃料成型体は固有水分が少くなると共に、吸湿性も低下する。このように固有水分の量が少ないと発熱量の大きい燃料が得られると共に、吸湿性の低さによる膨潤性の低下とも合わせて形状崩壊が起りにくくなる。また改質炭は上述のように改質前の低品位炭に比べて比表面積が大幅に減少しているので、個々の改質炭の表面エネルギ−は改質前のものに比べてかなり小さくなる。このため改質炭から得られる石炭燃料成型体は全体として表面エネルギ−が大幅に小さくなるため、これに応じて自然発火が起こりにくくなる。さらに石炭燃料成型体は形状崩壊しにくいため、風化等の形状崩壊が原因となる自然発火も起りにくくなる。この結果輸送時や貯蔵時のハンドリング性が向上し、燃料としての有用になり、さらに低品位炭の有用性が高まることから、現在ほとんど未利用の低品位炭の有効利用を図ることができる。
【0018】
以上において本発明で用いられる石炭燃料成型体は木粉を含むものであってもよく、このように木粉を含めると、低品位炭のみの場合に比べて強度を大きくすることができる。この場合木粉の含有量は20%程度であることが望ましい。
【0019】
【実施例】
以下に本発明の実施条件を決定するために行った実施例を比較例と共に記載する。
(実施例)
1.褐炭(オ−ストラリア産ロイヤング、固有水分14.7%、灰分1.5%、カルボキシル基起因6.3%O(酸素))、亜瀝青炭A(インドネシア産アサムアサム、固有水分18.5%、灰分1.6%、カルボキシル基起因3.8%O(酸素))、亜瀝青炭B(インドネシア産ブラウ、固有水分12.9%、灰分1.2%、カルボキシル基起因2.5%O(酸素))の30%スラリ−を夫々調製し、湿式粉砕機にてスラリ−中の低品位炭を所定の粒径の粉砕炭とした後、内容積5リットルの撹拌式オ−トクレ−ブ内にて、熱水の温度、処理時間を変えて熱水処理を行った。熱水処理後、改質炭を分離して乾燥させた後、成型機にて2トン/cm2 の圧力で圧縮しア−モンド型の石炭燃料成型体を得た。
【0020】
得られた改質炭の固有水分と灰分とを測定すると共に、石炭燃料成型体を日光や雨風が直接当たらない室内で大気中に保管し、6か月後の形状変化(暴露試験)を確認した。この結果を、褐炭については表1(実施例1〜5、比較例1、2)に、亜瀝青炭Aについては表2(実施例11〜16、比較例11〜13)に、亜瀝青炭Bについては表3(実施例21〜24、比較例21〜24)に夫々示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003774263
【0022】
【表2】
Figure 0003774263
【0023】
【表3】
Figure 0003774263
【0024】
これらの結果からいずれの低品位炭においても、粉砕炭の粒径が1000μm以上の場合には、改質炭の固有水分はある程度除去されるものの、成型後の石炭燃料成型体に形状変化が生じることが確認された(比較例11、21)。また熱水処理時の熱水の温度が270℃より低い場合(265℃、256℃)には、固有水分があまり除去されず、しかも成型後の石炭燃料成型体に形状変化が生じることが確認された(比較例1、12、22、23)。さらに熱水処理の処理時間が5分より短い場合には、固有水分およびカルボキシル基があまり除去されず、しかも成型後の石炭燃料成型体に形状変化が生じることが確認された(比較例2、13、24)。従って改質条件は、低品位炭を粒径1000μm以下の粉砕炭とすること、粉砕炭を270℃以上の熱水で熱水処理することであることが確認された。
【0025】
またこの実験結果から、他の条件が同じあれば熱水温度が高いほど改質炭の固有水分量が少なくなることが推察され、さらに他の条件が同じであれば、粉砕炭の粒径が小さく、熱水処理の時間が長いほど改質炭の固有水分量が少なくなることが推察される。
【0026】
2.亜瀝青炭(インドネシア産アサムアサム)の粉砕炭(粒径1000μm以下)を300℃の熱水で10分熱水処理した後、分離して大気中で乾燥させて得た改質炭を圧力を変えて圧縮して成型した各石炭燃料成型体について、圧壊試験、落下試験と暴露試験を行った(実施例31〜33)。また前記亜瀝青炭の粉砕炭(粒径1000μm以下)を改質炭とせずに原炭のまま、実施例と同様に成型して得た各成型体についても同様の試験を行った(比較例31〜33)。
【0027】
さらに実施例と同条件で得た前記亜瀝青炭の改質炭に木粉を改質炭の1/4量混合した混合粉についても同様の試験を行ない(実施例34、35)、前記亜瀝青炭の粉砕炭を改質炭とせずに原炭のまま木粉と混合した混合粉を、実施例と同様に成型して得た各成型体についても同様の試験を行った(比較例34〜36)。この結果を表4に示す。表中圧壊試験については、石炭燃料成型体が破壊した時の圧壊強度を示してあり、落下試験については2mの高さから落下させ、破壊したときの回数の平均値を示してある。
【0028】
【表4】
Figure 0003774263
実施例31〜33では、暴露試験の結果から、改質炭とした後成型して得た石炭燃料成型体は成型圧力に拘らず形状崩壊は起こらないことが確認され、圧壊試験の結果からは成型圧力を2トン/cm2 以上とすると、圧壊強度が格段に大きくなるので、成型圧力は2トン/cm2 以上であることが望ましいことが認められた。一方比較例31〜33では、暴露試験の結果から改質炭とせずに原炭のまま成型して得た石炭燃料成型体は、成型圧力に拘らず形状崩壊が起こることが確認された。
【0029】
また亜瀝青炭と木粉との混合粉の場合には、亜瀝青炭に比べて原炭のまま成型した場合でも圧壊試験や落下試験の結果から強度が大きくなることが確認されたものの、暴露試験の結果成型体表面に亀裂が入ることが認められた(比較例34〜36)。改質炭と木粉とを混合した後に成型した場合には、圧壊強度がかなり大きいと共に、落下回数も格段に多くなることから強度が非常に大きく、さらに暴露試験の結果形状崩壊は起こらないことが確認され(実施例34、35)、このように亜瀝青炭の改質炭と木粉との混合粉に対しても本発明方法は有効であることが認められた。なお改質炭から得た石炭燃料成型体については自然発火は見られなかった。
【0030】
【発明の効果】
本発明によれば、固有水分が少なく、形状崩壊や自然発火が起りにくい石炭燃料成型体を得ることができ、このため発熱量が大きく、輸送時や貯蔵時の取扱い成型体に優れた石炭燃料成型体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する石炭燃料成型体の製造装置の一形態を示す構成図である。
【符号の説明】
14 湿式粉砕機
23 改質反応器
31 脱水機
32 乾燥機
42 成型機

Claims (5)

  1. 低品位炭を湿式粉砕して、粒径1000μm以下の粉砕炭を得る工程と、
    前記粉砕炭を270℃以上の熱水と接触させて改質炭を得る工程と、
    前記改質炭を乾燥する工程と、
    乾燥した改質炭を圧縮して石炭燃料成型体を得る工程と、
    を含むことを特徴とする石炭燃料成型体の製造方法。
  2. 乾燥した改質炭に木粉を混合してから圧縮して石炭燃料成型体を得ることを特徴とする請求項1記載の石炭燃料成型体の製造方法。
  3. 粉砕炭を熱水と接触させる時間は5分以上であることを特徴とする請求項1記載の石炭燃料成型体の製造方法
  4. 乾燥した改質炭を圧縮する際の圧力は2トン/cm2 以上であることを特徴とする請求項1又は3記載の石炭燃料成型体の製造方法。
  5. 木粉を混合した乾燥した改質炭を圧縮する際の圧力は2トン/cm2 以上であることを特徴とする請求項2記載の石炭燃料成型体の製造方法。
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