JP3773231B2 - アークランプの高輝度化方法及びその方法を利用するアークランプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アークランプの高輝度化方法及びその方法を利用するアークランプに関する。更に詳述すると、本発明は、プラズマの高圧化により高輝度化を図るアークランプの高輝度化方法及びその方法を利用するアークランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
高輝度アークランプとしては、キセノンショートアークランプや超高圧水銀ランプのようにガスが封入されているものと、渦流安定化アークランプのようにガスが連続的に供給されるものとが知られている。これらの高輝度アークランプの輝度は105cd/cm2 に達している。
【0003】
キセノンショートアークランプは、点灯時の封入ガス圧が20〜50気圧で無点灯時の封入ガス圧が数気圧であり、30W〜30kWのものが市販されている。また、超高圧水銀ランプは、点灯時の水銀蒸気圧が10〜50気圧であり50W〜2kWのものが市販されている。さらに、渦流安定化アークランプは管の内部に水とアルゴンガスを旋回させて流すことでアークを封じ込めていると共に、点灯時の平均圧力が7気圧であり、50kW〜300kWのものが市販されている。
【0004】
これらの高輝度アークランプを更に高輝度化するためには、ガスの圧力を高くするか、または投入電力を大きくする等の方法により、プラズマの高圧高温化を図ることが考えられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した高輝度アークランプのガス圧を高くしたり投入電力を大きくすることによりプラズマを高圧高温化すると、過剰な熱及び圧力が管及び電極に負担を掛けてしまうので、アークランプの寿命が短くなってしまう。また、キセノンショートアークランプ等のように管にガスを封入しているランプでは、発光に寄与するガスの粒子数には限度があるので、ガス圧を高くしても高輝度化に限界がある。一方、渦流安定化アークランプのように管にガスが連続的に供給されるランプでは、発光部でガスが流動するので高圧化は困難である。
【0006】
そこで、本発明は、管や電極に負担を掛けずに高輝度化できるアークランプの高輝度化方法及びその方法を利用するアークランプを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、一対の電極部材間でアーク放電することにより発光するアークランプを高輝度化する方法において、電極部材間で複数の方向から気体を吹き付けて衝突させ高圧化する澱み領域を形成し、この澱み領域にプラズマを生成するようにしている。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、管内に配置された一対の電極部材間でアーク放電することにより発光するアークランプにおいて、電極部材間に向けて気体を吹き出すと共に、吹き出した気体が電極部材間で衝突して高圧化する澱み領域を形成する複数の気体噴出手段と、澱み領域から衝突した後の気体を外側へ拡散させて管の外へ排出する排気手段を備え、澱み領域にプラズマを生成するようにしている。
【0009】
したがって、気体の衝突する領域、即ち澱み領域でプラズマが高圧化するので、アークランプの高輝度化を図ることができる。また、衝突した気体は直後に拡散して排気手段例えば大気開放の排気経路を経て排気されるので、澱み領域のみが高圧化されて他の部分は澱み領域よりも低圧となる。このため、管の圧力負担を減らすことができる。さらに、投入電力が一定の場合、アークが周りの高速流に吹き消されないように電極部材間での電圧を上昇させることにより相対的に電流が低減するので、電流に大きく依存する電極部材の損耗量を抑制することができる。
【0010】
また、請求項2記載のアークランプの高輝度化方法では、衝突する気体は超音速流であり、澱み領域に非可逆断熱圧縮によるプラズマを生成するようにしている。更に、請求項4記載のアークランプでは、気体噴出手段はラバルノズルを有し、超音速流の気体を吹き出して澱み領域に非可逆断熱圧縮によるプラズマを生成するようにしているので、気体噴出手段から超音速流の気体を吹き出すことができる。
【0011】
したがって、気体の衝突する澱み領域の近傍で衝撃波が発生して非可逆断熱圧縮が起きる。また、衝撃波の通過により気体の温度と密度が急激に増加するので、澱み領域の気体の解離及び電離が促進されてプラズマ化及びプラズマの高圧高温化を図ることができる。よって、澱み領域でのプラズマの輝度が高くなり、アークランプの高輝度化を図ることができる。
【0012】
更に、請求項5記載の発明は、請求項3または4記載のアークランプにおいて、電極部材が気体噴出手段の内方に配置され、電極部材の周りに気体が導入されてアークを囲繞する噴流が形成されるようにしている。この場合、電極部材は、その周囲を流れる気体によって熱が奪われ、冷却される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。図1に、本発明のアークランプの高輝度化方法を利用するアークランプ1の一実施形態を示す。このアークランプ1は、一対の電極部材2,2間でアーク放電することにより発光するものである。そして、アークランプ1は、電極部材2,2間に向けて気体Gを噴出する複数の気体噴出手段3,3を備えている。気体Gとしては、例えばアルゴンガス等のアークランプ1の封入ガスとして従来から使用されるものを使用する。
【0014】
気体噴出手段3は、一対の電極部材2,2の間に向けて気体Gを噴出させるもので、各気体噴出手段から噴出される気体Gを電極部材2,2間で衝突させるように対向配置されている。ここで、両気体噴出手段3,3は、各々噴射する気体が電極部材2,2の間で衝突する際に澱み領域4を形成するに充分な間隔を開けて対向配置されている。これら気体噴出手段3,3の間隔は、余りに狭いと澱み領域4の高圧気体Gにより気体噴出手段3,3からの気体Gが減速する虞がある反面、余りに広いと気体Gが衝突する前に拡散したり軸方向から外れて衝突せずにすれ違う虞があると考えられる。よって、これら気体噴出手段3,3の間隔は、これらの問題が生じない範囲で設定される。
【0015】
澱み領域4では、気体噴流の衝突によってその部分の雰囲気が局部的に高圧化され、プラズマが生成される。本実施形態の場合、気体噴出手段3は電極部材2を内蔵しその周りに気体を高速で流すノズル7を有するプラズマトーチ(以下、気体噴出手段をプラズマトーチと呼ぶ)が採用されており、各先端面5,5の間で澱み領域4を形成するように対向配置されている。プラズマトーチ3の先端側の開口には、ラバルノズル7が形成され、流路6に吹き込まれた気体Gがラバルノズル7で超音速流に増速されてから噴出されるように設けられている。このため、流路6に吹き込まれた気体Gはラバルノズル7から噴射された直後に相手側プラズマトーチ3から同様に噴射された噴流と正面衝突することによりトーチ先端面5,5間に澱み領域4を形成してプラズマを高圧化するので、アークランプ1の高輝度化を図ることができる。
【0016】
また、アークランプ1は、両プラズマトーチ3の少なくとも先端部分と澱み領域4とを囲繞する石英製の内管8と、該内管8の更に外側を囲繞する外管9と、プラズマトーチ3の周囲にフランジ状に一体形成されて内管8及び外管9の両端部を嵌合して保持する保持部10とを備えている。そして、内管8と外管9との間で気体例えば陰極用気体Gを流通させる流路12が形成され、プラズマトーチ3と内管8との間で澱み領域4から拡散した排気ガスEを通過させる流路14がそれぞれ形成されている。そして、保持部10の内管8を保持する部分には、内管8の内壁に沿って排気ガスEをアークランプ1の外部に排出する排気口15が形成されている。したがって、澱み領域4の高圧気体Gは衝突後にプラズマトーチ3,3の先端面5,5の間を外径方向に拡散して、内管8に沿って該内管8とプラズマトーチ3の間の流路14を経て排気口15からアークランプ1の外部に排出される。このため、気体が衝突して生じた澱み領域4だけが高圧となり、内管8にかかる圧力は澱み領域4よりも低く抑えられる。また、高圧気体Gは澱み領域4からプラズマトーチ3,3の先端面5,5の間を経て内管8に沿った流路14を流通することにより高圧気体Gの衝突後の排気経路が形成されているので、高圧気体Gが互いに確実に衝突し合って澱み領域4を安定して形成することができる。尚、保持部10と内管8及び外管9の各嵌合部分には、シールリング11が設けられて気密が図られている。本実施形態の場合、流路14と排気口15とで排気手段が構成されているが、これに特に限定されず、澱み領域4よりも相当低圧な領域を形成する全ての手段が実施可能である。
【0017】
また、保持部10の外管9を保持する部分には、外管9の内側の流路12をアークランプ1の外部に連通する出入口13o,13iが形成されている。これら排気口15及び出入口13o,13iは、プラズマトーチ3を中心にして例えば等角度毎に多数形成している。さらに、内管8と外管9との間の流路12の出口13oと陰極側プラズマトーチ3の流路6とは、図示していない連結管などで連結され、内管8と外管9との間の流路12を通過した気体Gが出口13oから一旦排出されて再び陰極側プラズマトーチ3の流路6へ供給されるように設けられている。このため、内管8を介して流路12を流れる気体Gと内管8の内側を流れる排気ガスEとの間で熱交換して内管8の内側の熱を逃がして熱負荷を軽減すると同時にプラズマトーチ3に吹き込む気体Gの予熱を行うことができる。したがって、アークランプ1の発光効率を向上させることができる。
【0018】
尚、両電極部材2,2は各ラバルノズル7と同軸上に対向配置されている。このため、両電極部材2,2間でアーク放電を行うと、発生したアークはラバルノズル7の内部を通過する。ここで、澱み領域4では気体Gが高圧であるので、アークが高輝度に発光する。この光は石英製の内管8及び外管9を透過してアークランプ1の外部に達する。これにより、アークランプ1の発光を行うことができる。
【0019】
以上のように構成されたアークランプ1によると、使用時には、各プラズマトーチ3,3から気体Gとして例えばアルゴンガスが噴射される。そして、両電極部材2,2間にアークを発生させてプラズマを生成する。このとき、澱み領域4の圧力が増加すると共に気流の噴射を受け、更にラバルノズル7中でアークの周囲を高速気流が通過するので、アーク柱の径が収縮されてプラズマの温度が高くなり、アークランプ1の高輝度化を図ることができる。
【0020】
ここで、ラバルノズル7により気体Gを超音速流に加速するようにすると、澱み領域4の近傍で衝撃波が発生して非可逆断熱圧縮が生ずる。衝撃波が発生することにより気体Gの温度及び密度が急激に増加するので、澱み領域4の気体Gの解離及び電離が促進されてプラズマ化及びプラズマの高圧高温化を図ることができる。よって、アークランプ1の高輝度化を図ることができる。
【0021】
そして、衝突後の気体Gはプラズマトーチ3の外径方向に拡散する。この気流の影響によりアーク柱は円盤状になる。また、拡散時には排気Eはプラズマトーチ3や内管8と接触して温度を下げながら排出される。このため、内管8等への熱負荷は一様に分散されて負担を緩和することができる。
【0022】
上述したように本実施形態のアークランプ1によれば、アーク柱の径が収縮されてプラズマの温度が高くなるので、アーク柱電位傾度の増加を図ることができる。このため、従来と同等の光量とするための入力電流を小さくすることができるので、電極部材2や内管8等への熱負荷を低減できると共に電源の小型化を図ることができる。よって、アークランプ1の高輝度化及び長寿命化を図ることができる。
【0023】
また、衝突した気体Gは直後に澱み領域4から拡散するので、澱み領域4のみが高圧化して他の部分は澱み領域4よりも低圧になる。このため、内管8の圧力負担を減らすことができるので、アークランプ1の長寿命化及び小型化を図ることができる。
【0024】
さらに、電極部材2を内蔵したプラズマトーチ3を採用しているので、気体Gが電極部材2の周囲を通過する際に電極部材2から熱を奪い取る。このため、電極部材2の熱負荷を低減することができる。しかも、投入電力を一定にした場合はアークが気体Gの高速流に吹き消されないように電極部材2,2間での電圧を上昇させることにより相対的に電流が低減するので、電流に大きく依存する電極部材2の損耗量を抑制することができる。よって、アークランプの長寿命化を図ることができる。
【0025】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態ではプラズマトーチ3の先端部にラバルノズル7を形成して噴出気体Gを超音速化できるようにしているが、これには限られず気流の高速化を図れる先細ノズルのような他の形状のノズルであっても、気流の高速化により澱み領域4の高圧化を図ることができる。また、場合によってはノズルそのものを設けなくても良い。例えば、プラズマトーチ3に気体Gを吹き込む時点で気流を高速化しておくことにより、澱み領域4の高圧化を図ることができる。
【0026】
さらに、上述の実施形態では内管8と外管9との間の流路12に供給気体Gを通してランプ内の熱で予熱してからプラズマトーチ3に供給するようにしているが、これには特に限られず、外管9を設けずに直接気体Gをプラズマトーチなどの気体噴出手段に供給するようにしても良い。この場合でも、澱み領域4に気体Gを噴射してアークランプ1の高輝度化を図ることができる。
【0027】
さらに、上述した各実施形態では気体Gとしてアルゴンガスを使用しているが、これには限られずアークランプ1の封入ガスとして使用される既知のまたは新規のものを使用しても良い。さらには、気体Gをプラズマとして噴射するようにしても良い。
【0028】
また、本実施形態では、気体噴出手段3として電極部材2を内蔵するプラズマトーチが採用されているがこれに特に限定されず、電極部材2とは別の独立した気体噴出手段を採用するようにしても良い。この場合、電極部材2,2同士を結ぶ線と斜交する線上に気体噴出手段3,3を対向させて配置し、あるいは斜めに向かい合わせて配置し、電極部材2,2間に気体Gを噴射して電極部材2,2間で衝突させるようにしても良い。更には、一方にプラズマトーチを、他方に電極部材と気体噴出手段とが別々に構成されたものとを組み合わせ、プラズマトーチに対して他方の電極部材を正対させると共に気体噴出手段を斜めに向き合うように配置して電極部材間で気体噴流が衝突するように構成しても良い。この場合、プラズマトーチと対向する気体噴出手段は、1つでも良いが、2つを反対側のプラズマトーチを含めて等間隔で配置することによって噴流の衝突がバランスのとれたものと成るようにすることが好ましい。また、電極部材2とは別に構成された3本以上の気体噴出手段を用い、それを等間隔で配置してそれらの中心で噴流を衝突させるようにしても良い。
【0029】
さらに、本実施形態では、アークランプ1に内管8と外管9とを設けて澱み領域4の高圧気体Gを案内するようにしているが、これには限られずこれらの管8,9を設けずに澱み領域4の高圧気体Gをプラズマトーチ3,3の先端面5,5の間を経て直接大気に解放するようにしても良い。この場合でも、澱み領域4でプラズマを高圧化することができるので、アークランプ1の高輝度化を図ることができる。
【0030】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、請求項1記載のアークランプを高輝度化する方法及び請求項3記載のアークランプによれば、気体の衝突する澱み領域でプラズマが高圧化するので、アークランプの高輝度化を図ることができる。また、衝突した気体は直後に拡散して排気されるので、澱み領域のみが高圧化されて他の部分は澱み領域よりも低圧となる。このため、管の圧力負担を減らすことができる。よって、アークランプの高輝度化及び長寿命化を図ることができる。
【0031】
また、投入電力を一定にした場合はアークが周りの高速流に吹き消されないように電極部材間での電圧を上昇させることにより相対的に電流が低減するので、電流に大きく依存する電極部材の損耗量を抑制することができる。よって、アークランプの長寿命化を図ることができる。
【0032】
また、請求項2記載のアークランプの高輝度化方法及び請求項4記載のアークランプによれば、プラズマを更に高圧高温化できるので、アークランプをより高輝度化することができる。
【0033】
更に、請求項5記載のアークランプによれば、電極部材がその周囲を流れる気体によって熱が奪われて冷却されるので、電極部材の熱負荷を低減することができ、電極部材の寿命を長くできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のアークランプの一実施形態を示す中央縦断面側面図である。
【符号の説明】
1 アークランプ
2 電極部材
3 気体噴出手段(プラズマトーチ)
4 澱み領域(気体の衝突する領域)
7 ラバルノズル
G 気体
Claims (5)
- 一対の電極部材間でアーク放電することにより発光するアークランプを高輝度化する方法において、前記電極部材間で複数の方向から気体を吹き付けて衝突させ高圧化する澱み領域を形成し、この澱み領域にプラズマを生成することを特徴とするアークランプの高輝度化方法。
- 衝突する前記気体は超音速流であり、前記澱み領域に非可逆断熱圧縮によるプラズマを生成することを特徴とする請求項1記載のアークランプの高輝度化方法。
- 管内に配置された一対の電極部材間でアーク放電することにより発光するアークランプにおいて、前記電極部材間に向けて気体を吹き出すと共に、吹き出した前記気体が前記電極部材間で衝突して高圧化する澱み領域を形成する複数の気体噴出手段と、前記澱み領域から衝突した後の前記気体を外側へ拡散させて前記管の外へ排出する排気手段とを備え、前記澱み領域にプラズマを生成することを特徴とするアークランプ。
- 前記気体噴出手段はラバルノズルを有し、超音速流の前記気体を吹き出して前記澱み領域に非可逆断熱圧縮によるプラズマを生成することを特徴とする請求項3記載のアークランプ。
- 前記電極部材は前記気体噴出手段の内方に配置され、前記電極部材の周りに前記気体が導入されて前記アークを囲繞する噴流が形成されることを特徴とする請求項3または4記載のアークランプ。
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