図11は、従来の赤外線撮像装置の構成で、従来の赤外線撮像装置の機能を示す目的で主要な構成要素を、機構的な物は模式的に、電気的な物はブロック図で図示したものである。
図11において、1は赤外線検知器、2aはイメージ・レンズ系、3aは水平スキャナ、4b及び4cは温度基準熱源、5aはアフォーカル・レンズ系、6aは熱源導入光学系、7は画像処理系、8は熱源温度制御系である。
該赤外線検知器1は、主として、水銀・カドミウム・テルル(HgCdTe)によって代表される赤外線検知素子11、循環冷却器やジュール・トムソン冷却器などの冷却器12、真空容器13、該真空容器13に設けられたゲルマニウム(Ge)などによる赤外線を透過する窓14によって構成される。
尚、赤外線検知素子11を冷却器12を備えた真空容器13中に設置して80K(Kは絶対零度を基準とする温度の単位で、英国のケルビン卿に因んで“ケルビン”と呼ばれる
温度の単位であるが、“°”は付けずに標記する。)程度の極低温で赤外線検知素子を動作させるが、これは、赤外線が照射されていない状態で赤外線検知素子が生成する電気信号(これを暗電流と呼ぶ。)を抑圧して、赤外線検知素子が赤外線を受けて生成する電気信号の信号対雑音比を向上させるためである。
該イメージ・レンズ系2aについては、イメージ・レンズ系第三レンズ26のみを図示している。
該水平スキャナ3については、水平走査ミラー31、水平スキャナ制御用角度検出器32及び光学式角度検出器34aを図示している。
該温度基準熱源4b及び4cは、主として、ペルチエ素子によるサーモ・モジュール41、該サーモ・モジュール41によって温度を制御される温度基準板42、該サーモ・モジュール41が吸熱する熱量と発熱する熱量の和の熱量の放熱効率を高めるために設けられる放熱フィン43、該放熱フィン43から効率よく放熱させるために設けられるファン44によって構成される。
該アフォーカル・レンズ系5aについては、対物レンズ・ユニット51とリレー・レンズ系第二レンズ522のみを図示している。
該熱源導入光学系6aについては、熱源導入レンズ系61と反射ミラー62を図示している。
該画像処理系7aは、該赤外線検知器1が検出した赤外線強度に応じて出力する電気信号を増幅する増幅器71、該増幅器71の出力を受けて該水平スキャナ制御用角度検出器32及び該光学式角度検出器34の出力を参照して信号処理する信号処理回路72a、該信号処理回路が出力する画像信号に対して表示のための処理を加える画像処理回路73及び画像を表示する陰極線管や液晶ディスプレイなどによるモニタ74によって構成される。
該熱源温度制御系8は、高温側の温度基準板の温度を算出して対応する電圧を出力する高温側指令電圧生成回路81、低温側の温度基準板の温度を算出して対応する電圧を出力する低温側指令電圧生成回路81a、該信号処理回路72で検出した高温側温度基準板の温度を対応する電圧に変換する高温側検出電圧生成回路82、該信号処理回路72aで検出した低温側温度基準板の温度を対応する電圧に変換する低温側検出電圧生成回路82a、該高温側指令電圧生成回路81の出力から該高温側検出電圧生成回路82の出力を減算する加算回路83、該低温側指令電圧生成回路81aの出力から該低温側検出電圧生成回路82aの出力を減算する加算回路83a、該加算回路83の出力を電力増幅する電力増幅器84、該加算回路83aの出力を電力増幅する電力増幅器84aによって構成される。
図11の構成は、概ね下記のように動作して測定対象物体が放射する赤外線を画像化して表示する。
まず、被測定物体が放射する赤外線は対物レンズ・ユニット51を経由してアフォーカル・レンズ系5aに導かれてアフォーカル第一結像面aに結像される。
この、被測定物体が放射する赤外線がアフォーカル第一結像面aに結像される範囲が有効走査領域b(これについては、後で図14乃至図16によって詳細に説明する。)である。
アフォーカル第一結像面a上に結像された赤外線は、リレー・レンズ・ユニット第二レンズ522を経由して水平走査ミラー31に導かれて反射され、イメージ・レンズ系2aを経由して赤外線検知器1に導かれ、赤外線検知素子11上に結像される。
赤外線検知素子11によって生成された電気信号は増幅器71を経由して信号処理回路72aに導かれ、赤外線検知素子毎のばらつきを補正された後画像処理回路73において水平走査ミラー31での走査によって形成された2次元画像からモニタ74での走査方式に合致する2次元画像に変換され、最後に該モニタ74において表示される。
一方、温度基準板42が放射する赤外線は熱源導入光学系6aを経由してアフォーカル第一結像面上aの無効走査領域c(これについては、後で図14乃至図16によって詳細に説明する。)からアフォーカル・レンズ系5aに導入され、水平走査ミラー31によって反射されてイメージ・レンズ系2aに導かれて、被測定物が放射する赤外線を計測していない時に赤外線検知器1の赤外線検知素子11上に結像される。
赤外線検知素子11によって生成された電気信号は増幅器71に導かれて増幅され、信号処理回路72aにおいて赤外線検知素子毎のばらつきを補正され、以降は測定対象物体が放射する赤外線画像と同様に処理されてモニタ74に表示される。
さて、測定対象の物体が放射する赤外線量に対応する電気信号から、信号処理回路72はシーン温度平均値を算出し、該シーン温度平均値を基準に2つの温度基準板に設定する温度を算出する。
こうして算出された高温側の温度基準板の温度と低温側の温度基準板の温度情報は、それぞれ、高温側指令電圧生成回路81と低温側指令電圧生成回路81aに供給され、温度基準板に設定する温度に対応する電圧が生成される。
又、該信号処理回路72aは、温度基準板が放射する赤外線強度によって温度基準板の温度を無効走査領域において計測する。
こうして計測された高温側の温度基準板の温度と低温側の温度基準板の温度は、それぞれ、高温側検出電圧生成回路82と低温側検出電圧生成回路82aに供給され、検出温度に対応する電圧が生成される。
該高温側指令電圧生成回路81の出力電圧と該高温側検出電圧生成回路82の出力電圧の差を該加算回路83によって求めて、電力増幅器84を介して高温側の温度基準板の温度を制御するサーモ・モジュールに温度制御信号として供給する。
同様に、該高温側指令電圧生成回路81aの出力電圧と該高温側検出電圧生成回路82aの出力電圧の差を該加算回路83aによって求めて、電力増幅器84aを介して低温側の温度基準板の温度を制御するサーモ・モジュールに温度制御信号として供給する。
即ち、該熱源温度制御系8は負帰還によって温度基準板の温度を制御している。
又、水平スキャナ制御用角度検出器32及び光学式角度検出器34aが走査角を検出して出力するパルスを信号処理回路72に供給して、画像処理及び表示の基準信号とする。
ここまでにおいて従来の赤外線撮像装置の構成と大まかな動作を説明した。
以下においては、図11に示した従来の赤外線撮像装置の構成の主要構成要素について詳細に説明する。
図12は、1次元赤外線検知素子の代表的な素子配列を示す図である。
図12に示しているものが図11における赤外線検知素子11であり、基板111の上に複数の単位赤外線検知素子112が水平走査方向に対して垂直に整列配置されている。
そして、図12においては、奇数番目の単位赤外線検知素子(図では奇数領域と標記している。)と偶数番目の単位赤外線検知素子(図では偶数領域と標記している。)が異なる位置に整列している例を示している。
尚、図12においては基板111上の配線パターン及び赤外線検知素子から外部に引き出す配線などは図示を省略している。
さて、赤外線検知素子はシリコン(Si)のような単結晶半導体ではなく、水銀(Hg)、カドミウム(Cd)及びテルル(Te)の混合融液から析出して形成されるHgCdTe合金の平板から切り出して得る素子である。
従って、HgCdTe合金の平板の組成は、析出したHgCdTe合金の平板と混合融液との接触界面における水銀、カドミウム及びテルルの組成によって決まるが、混合融液内の接触界面における水銀、カドミウム及びテルルの組成は析出が進むにつれて水銀、カドミウム及びテルルの組成が変化するのに加えて、接触界面内の位置によっても水銀、カドミウム及びテルルの組成が異なるのが実情である。
従って、混合融液から析出したHgCdTe合金の平板の組成はミクロには一定ではない。
このために、混合融液から析出したHgCdTe合金の平板から切り出された単位赤外線検知素子の間には特性のばらつきがあり、各々の単位赤外線検知素子が同じ強度の赤外線を検出しても出力の電気信号にはばらつきが生ずる。
図13は、赤外線検知素子の出力のばらつきで、2つの赤外線検知素子間(図では、素子No.1、素子No.2と標記している。)の出力のばらつきを説明するものである。
図13において、横軸はシーン温度、縦軸は赤外線検知素子の電気出力(図では、素子出力と標記している。)である。
赤外線検知素子は、図13に示す如く、シーン温度に対して非直線な特性を持っている。
そして、赤外線検知素子毎に同一温度における電気出力の絶対値のばらつき(これがオフセットである。)と、同一温度における非直線カーブの傾き(これが感度である。)のばらつきがある。
この感度のばらつきとオフセットを放置して温度測定をすると、当然測定結果には誤差が含まれ、赤外線撮像装置の測定確度の低下の原因になる。
この誤差を抑圧するために、温度測定開始前又は温度測定中に機械的に均一な赤外線放射面を有する異なる温度の2つの温度基準板から放射される赤外線を入射光路中に短時間挿入し、各々の赤外線検知素子の電気出力を計測して赤外線検知素子毎の定常偏差を補正する。
これが2点補正である。
即ち、温度をシーン平均温度の上下(図では、Δt1 、Δt2 と標記されている温度幅である。)に追従制御された2つの温度基準板が出力する赤外線を赤外線検知器に導入して全ての単位赤外線検知素子に同一温度の物体が放射する赤外線を検知させ、赤外線検知素子毎の感度と赤外線検知素子間のオフセットを補正する。
そして、2つの温度基準板の設定温度差が大きいとその内側で誤差が大きくなり、2点の温度差が小さいとその外側で誤差が大きくなる。
高精度の赤外線撮像装置においては、通常上記Δt1 、Δt2 を数℃に設定する。
又、測定対象物体によってシーン平均温度が大幅に変動すると、赤外線検知素子の非直線特性によってオフセットと感度の定常偏差が変動する。
この変動を抑圧するために、シーン平均温度の変化を含めて温度基準板の温度を制御するようにしている訳である。
ところで、2点補正を温度測定前に行なう方式と、温度測定中に行なう方式がある旨記載したが、温度測定中に赤外線撮像装置を構成する回路の特性や温度基準板の温度等にドリフトが生ずると測定誤差の原因になるので、高精度な赤外線撮像装置においては温度測定中に機械的に均一な赤外線放射面を有する異なる温度の2つの温度基準板から放射される赤外線を入射光路中に短時間挿入し、各々の赤外線検知素子の電気出力を計測して赤外線検知素子毎の定常偏差を温度変動の影響も含めて補正する無効走査領域方式が採用されることが多い。
これで、ほぼリアル・タイムで赤外線検知素子毎の感度の偏差とオフセットを補正することができるので、温度測定の精度と確度を高く保つことができるからである。
さて、図12の如き1次元赤外線検知素子の視野を、水平スキャナによって水平走査ミラーを1次元赤外線検知素子が整列している方向と垂直な方向に一定速度で走査することによって2次元画像を得る。
図14は、2次元画像を得るための水平スキャナの走査波形である。
1回の走査では一定方向に一定速度で走査するが、必要な視野角の範囲で走査を繰り返すためにフライ・バックさせる必要があるので、走査波形は図14に示す如く鋸歯状波様になる。
このうち、2次元画像の生成を行なう有効走査領域(図11でbと標記している領域である。)は右上がりの傾斜の中で一定速度で走査している直線部に対応する。
一方、全走査領域の中で有効走査領域の外側の領域が無効走査領域(図11でcと標記している領域である。)である。
上記の、温度測定中に機械的に均一な赤外線放射面を有する異なる温度の2つの温度基準板から放射される赤外線を入射光路中に短時間挿入し、各々の赤外線検知素子の電気出力を計測して赤外線検知素子ごとの定常偏差を補正する無効走査領域方式とは、この無効走査領域において異なる温度の2つの温度基準板から放射される赤外線を入射光路中に挿入する方式である。
そして、無効走査領域方式によって2点補正が正確に行なわれるためには、無効走査領域において温度基準板42が出力する基準の赤外線を計測している時には赤外線検知素子11は有効走査領域を通る測定対象の赤外線を受けてはならない。
一方、有効走査領域を通る測定対象が放射する赤外線を計測している時には赤外線検知素子11は温度基準板42が放射する赤外線を受けてはならない。
即ち、無効走査領域と有効走査領域とが干渉しないことが絶対的に必要である。
図15は、従来の水平走査範囲と反射ミラーの位置を示す図である。
図15(イ)は、赤外線検知素子の大きさを無視できる場合の有効走査領域である。
赤外線検知素子の大きさを無視することができるとしているから、有効走査領域は視野角の範囲に等しくなる。
図15(ロ)は、赤外線検知素子の大きさを考慮した場合の有効走査領域である。
尚、図15(ロ)以降の、長方形をたがいちがいにつないだ形状のものは図12に示した赤外線検知素子を表し、各々の長方形が図12に示した赤外線検知素子における奇数領域の赤外線検知素子と偶数領域の赤外線検知素子の列を表しており、上に出ている方が奇数領域の赤外線検知素子、下に出ている方が偶数領域の赤外線検知素子である。
まず、奇数領域の赤外線検知素子と偶数領域の赤外線検知素子の境界が図15(イ)の視野角のところまで走査された状態(正確に表現すると、アフォーカル第一結像面上の赤外線検知素子の投影像が図15(ロ)の破線で示された位置まで走査された状態)を考えると、奇数領域の赤外線検知素子はまだ視野角の全ての画像の取り込みを完了していないのに対して、偶数領域の赤外線検知素子は既に視野角全ての画像の取り込みを完了している。
従って、視野角から奇数領域の赤外線検知素子の大きさNだけ外側まで走査して初めて視野角全ての画像の取り込みが完了する。
即ち、赤外線検知素子の大きさを考慮した場合の有効走査領域は、図15(ロ)に示す如く、視野角に奇数領域の赤外線検知素子の大きさNを加えた領域になる。
図15(ハ)は、反射ミラーの設置可能位置である。
従来は、赤外線検知素子が有効走査領域の外側に更に赤外線検知素子の大きさNだけとった領域まで走査されていると考えて、そこから温度変動も含んだ水平スキャナの走査角の誤差Zと温度変動も含んだ反射ミラーの寸法誤差Sを見込んで反射ミラーの設置位置としていた。
図15(ニ)は、温度基準熱源データ取り込み開始位置である。
図15(ニ)に示す如く、赤外線検知素子の投影像が反射ミラーの領域内に、温度変動も含んだ反射ミラーの寸法誤差Sだけ入ったところから温度基準熱源のデータの取り込みを開始する。
図15(ホ)は、温度基準熱源データ取り込み終了位置である。
図15(ホ)に示す如く、所要角度Hだけ走査して所要サンプル数のデータを取得して温度基準熱源データの取り込みを終了する。
従って、水平スキャナは有効走査領域に加えて、
N+Z+2S+SD+H
で決まる無効走査領域を走査することになる。
図16は、従来の水平走査ミラーの所要振角で、上記のことを再度表現しなおしたものである。
即ち、従来の水平走査ミラーの振角は
有効走査領域+N+Z+2S+SD+H
である。
しかも、赤外線検知素子の投影像の大きさ自体も温度変動するので、図15及び図16における赤外線検知素子の大きさにはそれも考慮する必要がある。
図17は、赤外線検知素子の投影像の大きさの変動を説明する図で、図17(イ)は、アフォーカル第一結像面での光束の断面図、図17(ロ)は、アフォーカル第一結像面での投影像の大きさである。
図17(イ)において、実線は常温時の光束の断面図、破線は温度変動時の光束の断面図である。
このように、アフォーカル第一結像面での光束の直径が温度によって変動するのは、アフォーカル・レンズ系を構成するレンズの焦点距離が温度変動したり、アフォーカル・レンズ系自体の光路長が温度変動するためである。
ここで、アフォーカル第一結像面での投影像の大きさとは、図17(イ)においてdで示した方向から見た投影像の大きさのことであり、図17(ロ)は、常温時の光束がアフォーカル第一結像面上で大きさWの像を結ぶのに対して、温度変動時の光束はアフォーカル第一結像面上で大きさW’の像を結ぶことを示している。
かくの如く、赤外線検知素子のアフォーカル第一結像面での投影像の大きさは温度変動するので、これを考慮して無効走査領域を設定する必要がある。
次に、図18は、図11において符号34aを付して示した従来の光学式角度検出器の構成で、水平走査ミラー31及び該水平走査ミラー31上に設けられる水平スキャナ制御用角度検出器32も併せて、概略を図示してある。
尚、図18は従来の光学式角度検出器を、該光学式角度検出器の光軸中心を含む水平な面で切った時の断面図である。
図18において、340は該光学式角度検出器34の筐体、341は発光ダイオード(通常LEDと呼ばれる物である。)、342は該発光ダイオード341の出力光を平行光にするコリメータ・レンズ、343は該コリメータ・レンズ342の出力光を折り返すために反射させる反射ミラー、344はフォト・ダイオード、345は該水平走査ミラー31の角度が該反射ミラー343の反射光の光軸に対して45°の時に反射光を該フォト・ダイオードの受光面に集光する集光レンズ、346aは該発光ダイオード341と該フォト・ダイオード344にバイアスを供給すると共に、該水平走査ミラーが45°の時に反射する光を受けて該フォト・ダイオード344が出力するパルスを図11の信号処理回路72に供給する制御基板である。
又、該水平スキャナ制御用角度検出器32の出力も図11の信号処理回路72aに供給される。
即ち、図示されていない水平スキャナが有効走査領域と無効走査領域の境界を走査する時刻に出力されるパルスが信号処理回路72に供給される。
尚、該筐体340への該発光ダイオード341、該コリメータ・レンズ342、該反射ミラー343、該フォト・ダイオード344、該集光レンズ345の固定手段及び該制御基板346の実装手段の説明は必要がないので省略する。
又、水平走査ミラー31及び水平スキャナ制御用角度検出器32についても、装着手段の説明は必要ないので省略する。
図19は、従来の画像データ取り込み信号と温度基準熱源データ取り込み信号を示す図である。
図19(イ)は、水平スキャナの走査波形を水平スキャナ制御用角度検出器で検出した電気信号の波形である。
実際には鋸歯状波様の波形の最高及び最低付近では丸みを帯びた波形になる(図14参照)が、図示を簡単にするために、丸みを取り除いて完全な鋸歯状波で図示している。
図19(イ)において、実線で示した波形が常温での水平スキャナ制御用角度検出器で検出した電気信号の波形で、2点鎖線で示した波形が環境温度変動の影響を受けた水平スキャナ制御用角度検出器で検出した電気信号の波形である。
図19(ロ)は、光学式角度検出器34の出力で、図18におけるフォト・ダイオード344が水平走査ミラーの走査角度が45°であることを検出して出力するパルスである。
図19(ハ)は、水平スキャナ制御用角度検出器32の出力で、水平スキャナ制御用角度検出器32が水平スキャナが有効走査領域と無効走査領域の境界を走査していることを検出して出力するパルスである。
上記2つの角度検出器が出力する図19(ロ)と図19(ハ)のパルスを基準信号として画像データの取り込みと温度基準熱源データの取り込みを行なう。
即ち、光学式角度検出器が水平スキャナの角度が光軸に対して45°であることを検出して出力するパルスのうち、走査角度が増加中に出力されるパルスCを基準に、所定の時間TCを経過した時刻に画像データの取り込みを開始する。
この時刻は、水平スキャナが無効走査領域における走査から有効走査領域における走査に入る時刻で、走査速度は設計上判っているので時間TCの設定は可能である。
尚、フライ・バック中にも水平スキャナの角度が光軸に対して45°になり、光学式角度検出器34はこの時刻でもパルスDを出力するが、走査角が減少していることを検出する比較器の出力によってこのパルスDをマスクすることは容易にできるので、画像データ取り込みタイミングを誤ることはない。
一方、水平スキャナ制御用角度検出器32が出力するパルスを使って温度基準熱源データの取り込みを制御する。
温度基準熱源は高温側と低温側の2個あるので、温度基準熱源データの取り込みタイミングは2つ必要である。
これは、有効走査領域から無効走査領域に移行するタイミングで生成されるパルスを第一の温度基準熱源のデータの取り込みパルスとし(図では、符号Eを付している。)、有効走査領域から無効走査領域に移行するタイミングで生成されるパルスを第二の温度基準熱源のデータの取り込みパルスとすれば(図では、符号Fを付している。)よい。
尚、水平スキャナ制御用角度検出器32は上記E及びFのパルス以外に、有効走査領域と無効走査領域間を移行するタイミングにパルスを出力するが、上記と同様な原理でマスクすることができるので、温度基準熱源データの取り込みタイミングを誤ることはない。
図20は、温度基準熱源と温度基準熱源導入光学系及び反射ミラーの構成を模式的に示す図で、図20(イ)は温度基準熱源と温度基準熱源導入光学系及び反射ミラーの構造を示す。
尚、図20(イ)は、温度基準熱源導入光学系の光軸中心を含む水平な平面で温度基準熱源導入光学系及び温度基準熱源を切った断面図である。
又、図20(ロ)は図20(イ)においてeの方向から見た反射ミラー及び反射ミラー固定台のe矢視図、更に、図20(ハ)は図20(ロ)においてfの方向から見た反射ミラー及び反射ミラー固定台のf矢視図である。
図20において、41はサーモ・モジュール、42は温度基準板、43は放熱フィン、44はファンで、温度基準熱源を構成する。
ここで、該サーモ・モジュール41はペルチエ素子でできており、電流を印加することによって2面あるセラミック面の一方の面から吸熱し、もう一方の面から放熱する。
そして、電流の方向を変えることによってヒータとしても冷却機として使用することができる。
該サーモ・モジュール41は、自身が発熱する熱量と吸熱する熱量の和の熱量を放熱側から放熱することによってその性能を発揮する。
該放熱フィン43及びファン44は該サーモ・モジュール41からの放熱効果を高めるために使用されている。
又、図20において、523はアフォーカル・レンズ系を構成する鏡筒、61は熱源導入光学系を構成する熱源導入レンズ系、62は熱源導入光学系を構成する反射ミラー、63は該反射ミラーを固定する反射ミラー固定台である。
更に、631は該反射ミラー固定台63を該鏡筒523に固定するねじ、632は該反射ミラー固定台63を構成する第一のブロック、633は該反射ミラー固定台63を構成する第二のブロック、634は該反射ミラー固定台を構成する第三のブロック、635及び636はねじである。
まず、該反射ミラー62は該反射ミラー固定台63を介して該アフォーカル・レンズ系を構成する鏡筒523にねじ止め固定されている。
そして、該反射ミラー62の温度変動による寸法の変動と、該反射ミラー固定台の取り付け位置の誤差を吸収するために、該第一のブロック632と該第二のブロック633は図20(ロ)のgに示すあり溝で嵌合しており、紙面に垂直な方向に位置調整ができるようになっており、同様な目的で該第二のブロック633と該第三のブロック634は図20(ハ)のhに示すあり溝で嵌合しており、紙面に平行な方向に位置調整ができるようになっている。
尚、該ネジ635は熱源導入光学系の光軸に平行な方向での位置調整後に該第二のブロックと該第三のブロックを固定し、該ネジ636は熱源導入光学系の光軸に垂直な方向での位置調整後に該第位置ブロックと該第二のブロックを固定する。
図1は、本発明の赤外線撮像装置の構成(その1)で、赤外線撮像装置の構成を一部簡略化しながら実体図的に示す図である。
又、図2は、本発明の赤外線撮像装置の光学系の構成である。
更に、図3は、本発明の赤外線撮像装置の構成(その2)で、本発明の赤外線撮像装置の機能を示す目的で主要な構成要素を、機構的な物は模式的に、電気的な物はブロック図で図示したものである。
まず、図1において、1は赤外線検知器、2はイメージ・レンズ系、3は水平スキャナ、4及び4aは温度基準熱源、5はアフォーカル・レンズ系である。
該イメージ・レンズ系2については、イメージ・レンズ系第一レンズ21、垂直走査ミラー23、折り返しミラー25、イメージ・レンズ系第三レンズ26、該イメージ・レンズ系第一レンズ21の位置調整をするモータ27及び該モータ27による該イメージ・レンズ系第一レンズ21の移動量を計測するポテンショ・メータ28を図示している。
尚、イメージ・レンズ系第一レンズの位置調整のための制御系は図示を省略している。
該水平スキャナ3については、水平走査ミラー31、水平走査駆動部33、3点型光学式角度検出器34を図示している。
アフォーカル・レンズ系5は、対物レンズ・ユニット51、リレー・レンズ・ユニット52に分けられる。
該対物レンズ・ユニット51には、中視野レンズ511、広視野レンズ512が設けられていて視野切替ができるようになっており、更に、該対物レンズ・ユニット51の位置を調整するためのモータ513及び該対物レンズ・ユニット51の移動量を計測するポテンショ・メータ514が設けられている。
尚、該対物レンズ・ユニットの位置調整のための制御系は図示を省略している。
又、リレー・レンズ・ユニット52については、リレー・レンズ・ユニット第一レンズ521、リレー・レンズ・ユニット第二レンズ522、鏡筒523を図示している。
そして、画像処理系も図示を省略している。
本発明の赤外線撮像装置の光学系の構成を示す図2において、1は赤外線検知器、2はイメージ・レンズ系、3は水平スキャナ、4及び4aは温度基準熱源、5はアフォーカル・レンズ系である。
該赤外線検知器1については赤外線検知素子11のみを図示している。
該イメージ・レンズ系2については、イメージ・レンズ系第一レンズ21、遮蔽板22、垂直走査ミラー23、イメージ・レンズ系第二レンズ24、折り返しミラー25、イメージ・レンズ系第三レンズ26を図示している。
該水平スキャナ3については、水平走査ミラー31、3点型光学式角度検出器34を図示している。
アフォーカル・レンズ系5は、対物レンズ・ユニット51、リレー・レンズ・ユニット52に分けられる。
該対物レンズ・ユニット51には、511は中視野レンズ、512は広視野レンズ512が備えられていて視野切替ができるようになっている。
又、リレー・レンズ・ユニット52については、リレー・レンズ・ユニット第一レンズ521、リレー・レンズ・ユニット第二レンズ522を図示している。
そして、図1において図示しているモータ513によって該対物レンズ・ユニット51は図2にAで示した方向に位置調整をされる。
又、図1において図示しているモータ27によって該イメージ・レンズ系第一レンズ21は図2にBで示した方向に位置調整される。
尚、位置調整機構については後に詳述する。
又、図2のB方向の寸法に余裕があれば、垂直走査ミラー23、折り返しミラー25は不要で、イメージ・レンズ系第三レンズ26と赤外線検知器をB方向の延長線上に配置すればよい。
又、図2のB方向と垂直な下方向の寸法に余裕があれば、折り返しミラー25は不要で、イメージ・レンズ系第三レンズ26と赤外線検知器をB方向に垂直な、紙面の下側に配置すればよい。
即ち、図1又は図2に示す配置にしているのは、光路長は同じでありながら光学系の構成をコンパクトにするためである。
本発明の赤外線撮像装置の機能を示す目的で主要な構成要素を、機構的な物は模式的に、電気的な物はブロック図で図示した図3において、1は赤外線検知器、2はイメージ・レンズ系、3は水平スキャナ、4及び4aは温度基準熱源、5はアフォーカル・レンズ系、6は熱源導入光学系、7は画像処理系、8は熱源温度制御系、9はレンズ位置制御系である。
該赤外線検知器1は、主として、水銀・カドミウム・テルル(HgEdTe)によって代表される赤外線検知素子11、循環冷却器やジュール・トムソン冷却器などの冷却器12、真空容器13、該真空容器13に設けられたゲルマニウム(Ge)などによる赤外線を透過する窓14によって構成される。
尚、赤外線検知素子を冷却器12を備えた真空容器13中に設置して80K程度の極低温で赤外線検知素子を動作させるが、これは、暗電流を抑圧して、赤外線検知素子が生成する電気信号の信号対雑音比を高めるためである。
該イメージ・レンズ系2については、イメージ・レンズ系第三レンズ26のみを図示している。
該水平スキャナ3については、水平走査ミラー31、及び3点式光学式角度検出器34を図示している。
該温度基準熱源4及び4aについては、ペルチエ素子によるサーモ・モジュール41、該サーモ・モジュール41によって温度を制御される温度基準板42を図示している。
該アフォーカル・レンズ系5については、対物レンズ・ユニット51とリレー・レンズ・ユニット第二レンズ522を図示している。
該熱源導入光学系6については、熱源導入レンズ系61と反射ミラー62を図示している。
該画像処理系7は、該赤外線検知器1が検出した赤外線強度に応じて出力する電気信号を増幅する増幅器71、該増幅器71の出力を受けて該光学式角度検出器34の出力を参照して信号処理する信号処理回路72、該信号処理回路が出力する画像信号に表示するための処理を加える画像処理回路73及び画像を表示する陰極線管や液晶ディスプレイなどによるモニタ74によって構成される。
該熱源温度制御系8は、該温度基準板の高温側の温度を算出して対応する電圧を出力する高温側指令電圧生成回路81、該温度基準板の低温側の温度を算出して対応する電圧を出力する低温側指令電圧生成回路81a、該信号処理回路72で検出した高温側温度基準板の温度情報を対応する電圧に変換する高温側検出電圧生成回路82、該信号処理回路72で検出した低温側温度基準板の温度情報を対応する電圧に変換する低温側検出電圧生成回路82a、該高温側指令電圧生成回路81の出力から該高温側検出電圧生成回路82の出力を減算する加算回路83、該低温側指令電圧生成回路81aの出力から該低温側検出電圧生成回路82aの出力を減算する加算回路83a、該加算回路83の出力を電力増幅する電力増幅器84、該加算回路83aの出力を電力増幅する電力増幅器84aによって構成される。
最後に、レンズ系位置制御系9は、温度センサ91及び制御回路92によって構成される。
図3の構成は、概ね下記のように動作して赤外線画像を表示する。
まず、被測定物が放射する赤外線は対物レンズ・ユニット51を経由してアフォーカル・レンズ系5に導かれてアフォーカル第一結像面aに結像される。
この、被測定物が放射する赤外線がアフォーカル第一結像面aに被測定物が放射する赤外線が結像される範囲が有効走査領域bである。
アフォーカル第一結像面a上に結像された赤外線は、リレー・レンズ・ユニット第二レンズ522を経由して水平走査ミラー31に導かれて反射され、イメージ・レンズ系2を経由して赤外線検知器1に導かれ、赤外線検知素子11上に結像される。
そして、赤外線検知素子11が赤外線強度に対応して生成した電気信号は増幅器71を経由して信号処理回路72に導かれ、赤外線検知素子毎のばらつきを補正された後画像処理回路73において水平走査ミラー31による走査方式からモニタ74に合致する走査方式に変換され、最後にモニタ74において表示される。
一方、温度基準板42が放射する赤外線は熱源導入光学系6を経由してアフォーカル第一結像面a上の無効走査領域cからアフォーカル・レンズ系5に導入され、水平走査ミラー31によって反射されてイメージ・レンズ系2に導かれて、測定対象物体が放射する赤外線を計測していない時に赤外線検知器1の赤外線検知素子11に結像される。
そして、赤外線検知素子11によって生成された電気信号は増幅器71に導かれて増幅され、信号処理回路72において赤外線検知素子毎のばらつきを補正される。
そして、信号処理回路72は測定対象物体の温度であるシーン温度の平均値を算出し、該シーン温度平均値の上下に設定する温度基準板の温度を算出する。
こうして算出された高温側の温度基準板の温度情報と低温側の温度基準板の温度情報は、それぞれ、高温側指令電圧生成回路81と低温側指令電圧生成回路81aに供給され、温度基準板に設定する温度に対応した電圧が生成される。
又、該信号処理回路72は、測定対象物体の温度を測定していない時に温度基準板が放射する赤外線強度に対応する電気信号によって温度基準板の温度を計測している。
計測された高温側の温度基準板の温度情報と低温側の温度基準板の温度情報は、それぞれ、高温側検出電圧生成回路82と低温側検出電圧生成回路82aに供給され、検出温度に対応した電圧が生成される。
該高温側指令電圧生成回路81の出力電圧と該高温側検出電圧生成回路82の出力電圧の差を該加算回路83によって求めて、該電力増幅器84を介して高温側の温度基準板の温度を制御するサーモ・モジュールに温度制御信号として供給する。
同様に、該低温側指令電圧生成回路81aの出力電圧と該低温側検出電圧生成回路82aの出力電圧の差を該加算回路83aによって求めて、該電力増幅器84aを介して低温側の温度基準板の温度を制御するサーモ・モジュールに温度制御信号として供給する。
即ち、該熱源温度制御系8は負帰還によってサーモ・モジュールの温度を制御することによって温度基準板の温度を制御している。
又、3点型光学式角度検出器33が水平走査ミラーの走査角を検出して出力するパルスを信号処理回路72に供給して、画像表示の基準信号とする。
最後に、レンズ系位置調整制御系9では、温度センサ91が温度変動を検出して、検出した温度変動量を該制御回路92に供給する。
該制御回路92は受信した温度変動量をアドレスとして読み出し専用メモリから読み出すという手法で、該対物レンズ・ユニット51及び該イメージ・レンズ系第一レンズ系21に必要となる位置調整量を求めて該モータ27及び該モータ513を駆動する。
そして、該ポテンショ・メータ28及び該ポテンショ・メータ514の出力を取り込んでサーボ系を構成して該対物レンズ・ユニット51及び該イメージ・レンズ系第一レンズ21の位置調整を正確に行なう。
ここまでにおいて、図1乃至図3に示した本発明の赤外線撮像装置の構成と大まかな動作を説明した。
以下においては、図1乃至図3に示した本発明の赤外線撮像装置の主要構成要素について詳細に記載して、本発明の赤外線撮像装置について説明する。
ただ、1次元赤外線検知素子の素子配列、単位赤外線検知素子の間の感度特性のばらつき、単位赤外線検知素子の間のオフセット、2点補正による感度とオフセットの補正、及び、シーン平均温度の変化を含めた2点補正の温度基準板の温度制御、高精度な赤外線撮像装置においては温度測定中に機械的に均一な赤外線放射面を有する異なる温度の2つの温度基準板から放射される赤外線を入射光路中に短時間挿入し、各々の赤外線検知素子の電気出力を計測して赤外線検知素子毎の偏差を温度変動の影響も含めて補正する無効走査領域方式が採用されることが多いことについては、従来の赤外線撮像装置の説明において詳細に記載したので、ここでは記載を省略する。
さて、無効走査領域方式によって2点補正が正確に行なわれるためには、無効走査領域において温度基準板が放射する基準の赤外線を計測している時には赤外線検知素子11は有効走査領域を通る測定対象の赤外線を受けてはならない。
一方、有効走査領域において測定対象物体が放射する赤外線を計測している時には有効走査領域を通る測定対象が放射する赤外線を計測している時には赤外線検知素子11は温度基準板が放射する赤外線を受けてはならない。
即ち、無効走査領域と有効走査領域とが干渉しないことが必要であるということは、本発明においても同じことである。
ここでは、無効走査領域と有効走査領域が干渉しないということ自体の説明は必要がないにしても、従来の技術とは異なる無効走査領域の設定の考え方について説明しておく。
図4は、従来の水平走査範囲と反射ミラーの位置を示す図である。
図4(イ)は、赤外線検知素子の大きさを無視できる場合の有効走査領域である。
赤外線検知素子の大きさを無視することができるとしているから、有効走査領域は視野角の範囲に等しくなる。
しかし、実際の赤外線検知素子は有限の大きさを持たないと受光する赤外線を、その強度に対応する電気信号に変換することはできない。
従って、現実にある赤外線検知素子の大きさを考慮しないで有効走査領域を設定することは無意味である。
図4(ロ)は、赤外線検知素子の大きさを考慮した場合の有効走査領域である。
尚、図4(ロ)以降の、2つの長方形の一辺をずらして接触させた形状のものは図12に示した赤外線検知素子を表している。
ここで、各々の長方形が図12に示した赤外線検知素子における奇数領域の赤外線検知素子と偶数領域の赤外線検知素子を表しており、上に出ている方が奇数領域の赤外線検知素子、下に出ている方が偶数領域の赤外線検知素子である。
まず、奇数領域の赤外線検知素子と偶数領域の赤外線検知素子の境界が図4(イ)の視野角の範囲まで走査された状態(正確に表現すると、赤外線検知素子の投影像が図4(ロ)の破線で示された位置まで走査された状態)を考えると、奇数領域の赤外線検知素子はまだ視野角の全ての画像の取り込みを完了していないのに対して、偶数領域の赤外線検知素子は既に視野角全ての画像の取り込みを完了している。
従って、視野角から奇数領域の赤外線検知素子の大きさNだけ外側まで走査して初めて視野角全ての画像の取り込みが完了する。
即ち、赤外線検知素子の大きさを考慮した場合の有効走査領域は、図4(ロ)に示す如く、視野角の範囲に奇数領域の赤外線検知素子の大きさNを加えた領域になる。
図4(ハ)は、画像上の走査不要領域である。
図4(ハ)に示す位置まで赤外線検知素子の投影像を走査した時に初めて奇数番目の赤外線検知素子は画像の取り込みを完了するが、この時には既に偶数番目の赤外線検知素子はそれよりNだけ内側で画像の取り込みを完了している。
従って、図4(ハ)における偶数番目の赤外線検知素子の位置(図4(ハ)においてNという赤外線検知素子の大きさを示している位置)は画像上は走査しなくてもよい領域(これを走査不要領域と呼ぶことにする。)である。
従って、上記走査不要領域を含んで有効走査領域とし、その外側を無効走査領域とする必要性はない。
この点が本発明における無効走査領域の設定の考え方の特徴である。
図4(ニ)は、反射ミラーの設置位置である。
本発明においては、上記有効走査領域の端から温度変動も含んだ水平スキャナの走査角の誤差Zと温度変動も含んだ反射ミラーの寸法誤差Sを見込んだ位置を反射ミラーの設置位置とする。
図4(ホ)は、温度基準熱源データ取り込み開始位置である。
図4(ホ)に示す如く、赤外線検知素子の投影像が反射ミラーの領域内に、温度変動も含んだ反射ミラーの寸法誤差Sだけ入ったところから温度基準熱源のデータの取り込みを開始することは本発明においても同じである。
図4(ヘ)は、温度基準熱源データ取り込み終了位置である。
図4(ヘ)に示す如く、所要角度Hだけ走査して所要サンプル数のデータを取得して温度基準熱源データの取り込みを終了することは本発明においても同じである。
従って、水平スキャナは有効走査領域に加えて、Z+2S+SD+Hで決まる無効走査領域を走査すればよいことになる。
図5は、本発明の水平走査ミラーの所要振角で、上記のことを再度表現しなおしたものである。
即ち、本発明の水平走査ミラーの振角は有効走査領域+Z+2S+SD+Hである。
ただし、この振角はアフォーカル・レンズ系の光軸から一方に走査した時の振角である。
上記の如く水平走査ミラーの振角を上記Nだけ小さくできることは、実際の赤外線撮像装置において水平走査ミラーの振角の縮減率5%に対応する。
これは、限界に近い設計をしている赤外線撮像装置においては大きな効果である。
図6は、水平走査ミラーの振角と水平走査ミラーの大きさの関係を示す図である。
図6(イ)は、振角0(振角は45°を原点とする。)の場合である。
この時には、光束の直径をGとすると、水平走査ミラー面上での光束の長径は√2Gとなる。
図6(ロ)は、水平走査ミラーを所要の最大振角α°まで振った場合である。
この時には、光束の直径をGとすると、水平走査ミラー面上での光束の長径は
G×Sin(45°+α°)
となる。
ここで、Sin は三角関数の正弦関数である。
今、現実の所要最大振角α°に対して上記5%程度の振角増だけを考慮して水平走査ミラー面上での光束の長径の増加、即ち、水平走査ミラーの大きさの増加を試算しても、約4%となる。
これも、限界に近い設計をしている赤外線撮像装置においては大きな値である。
即ち、水平走査ミラーの振角を縮減することによって水平走査ミラー自体の大きさを縮減できる。
しかも、図17によって説明したように、赤外線検知素子の投影像の大きさ自体も温度変動するので、図4及び図5における赤外線検知素子の大きさにはそれも考慮する必要がある。
つまり、実際には振角を大きく設定しなければならない他の要因もあるので、振角を縮減できることは更に大きな効果をもたらす。
この赤外線検知素子の投影像の大きさの変化の主原因は、温度変動に伴うアフォーカル・レンズ系とイメージ・レンズ系を構成するレンズの焦点距離の変動及び温度変動に伴うアフォーカル・レンズ系とイメージレンズ系の寸法の変動である。
従って、赤外線検知素子の投影像の大きさの変化を抑圧するには、温度変動に伴うアフォーカル・レンズ系とイメージ・レンズ系を構成するレンズの焦点距離の変動及び温度変動に伴うアフォーカル・レンズ系とイメージレンズ系の寸法の変動を抑圧すればよい。
これには、図2に示したように、アフォーカル・レンズ系のレンズの位置をAの方向に調整し、イメージ・レンズ系のレンズの位置をBの方向に調整すれば、アフォーカル第一結像面aの前方の焦点距離の変動とアフォーカル第一結像面aの後方の焦点距離の変動の双方を補正することができる。
図7は、本発明のレンズ位置調整のための構成を示す図で、構造は模式的に示し、制御系はブロック図で示したものである。
尚、図7では、一応図1におけるイメージ・レンズ系第一レンズ21の位置調整を意識して図示しているが、図1における対物レンズ・ユニット51の位置調整についても同様な構成で可能である。
又、構造的にはイメージ・レンズ系第一レンズ21と対物レンズ・ユニット51の位置調整が最も簡単であるが、アフォーカル・レンズ系とイメージ・レンズ系の他のレンズの位置調整も技術的には不可能ではない。
又、図7は、イメージ・レンズ系の光軸中心を含む水平な平面でイメージ・レンズ系を切った断面図である。
図7において、21はイメージ・レンズ系第一レンズ、29はイメージ・レンズ系の鏡筒である。
又、211は該イメージ・レンズ系第一レンズを装着固定するレンズ鏡筒、212はレンズ鏡筒回り止めピン、291は回転フレーム、292は該回転フレーム291と該鏡筒29の間に設けられるねじ機構、293はボール・ベアリング、294及び294aは歯車、295及び295aは該歯車294及び294aとかみ合う歯車、513は該鏡筒29を移動させることで該イメージ・レンズ系第一レンズ21を移動させるモータ、514は該イメージ・レンズ系第一レンズ21の移動量を計測するポテンショ・メータである。
又、91は図3におけるレンズ位置制御系9を構成する温度センサ、92は図3におけるレンズ位置制御系9を構成する制御回路である。
そして、該制御回路92は、読み出し専用メモリ部921、加算回路922及び電力増幅器923を備えている。
まず、レンズ位置調整のための構造について説明する。
イメージ・レンズ系第一レンズ21はレンズ鏡筒211に装着固定されている。
該レンズ鏡筒211は鏡筒29とレンズ鏡筒回り止めピン212の部分で嵌合しており、該レンズ鏡筒回り止めピン211によってレンズ鏡筒211と鏡筒29は互いに回転しないように固定されている。
又、該レンズ鏡筒211は該ボール・ベアリング293の部分で該回転フレーム291と結合しており、該レンズ鏡筒211と該回転フレーム291は互いに回転可能になっている。
該回転フレーム291のの周囲には歯車295が設けられており、該歯車295はモータ513に結合された該歯車294及び該ポテンショ・メータ514に結合された歯車294aと噛み合っており、該歯車294の回転を該回転フレームの前進、後退に変換し、該回転フレーム291の前進、後退を該歯車294aの回転に変換するようになっている。
次にレンズ位置制御系とレンズ位置調整のための構造とを総合して説明をする。
温度センサ91は環境温度の変動を検出し、通常アナログ量としての電圧を出力する。
読み出し専用メモリ部921は、入力側にアナログ・デジタル変換回路を備えており、該アナログ・デジタル変換回路でデジタル変換された電圧値は読み出し専用メモリ(通常ROMと標記されるものである。)にアドレスとして供給され、該読み出し専用メモリからデジタル変換された電圧値に対応するレンズ位置の移動量のデジタル値が読み出される。
読み出されたデジタル量の電圧値は、該読み出し専用メモリ部921の出力側に備えられているデジタル・アナログ変換回路によってアナログ量としての電圧値に変換されて出力される。
該読み出し専用メモリ部921から出力された電圧はレンズ位置指令電圧として該加算回路922の一方の端子に供給される。
一方、該回転フレーム291の前進、後退は歯車295から歯車294aに伝えられて該ポテンショ・メータ514を回転させる。
該ポテンショ・メータ514は自身の回転角に対応した電圧を出力するが、この電圧出力が該加算回路922のもう一方の入力端子に帰還電圧として供給され、上記レンズ位置指令電圧との差が求められる。
該加算回路922が出力する上記レンズ位置指令電圧と上記帰還電圧との差の電圧が電力増幅器923に供給され、実際に該モータ513を駆動して該歯車294を回転させ、該歯車294の回転が該歯車295に伝えられて該回転フレーム291の前進、後退に変換される。
即ち、該温度センサ91、該制御回路92、該モータ513、該歯車294、該歯車295、該歯車294a、該歯車295a、該ポテンショ・メータ514によって構成される負帰還ループによって該イメージ・レンズ系第一レンズ21の位置の調整が行なわれる。
図7の構成の利点は、負帰還ループによってレンズ位置の調整を行なうために、レンズ位置の調整確度が高いことである。
しかし、レンズ位置の調整機構は図7に示したものだけではなく、モータ513、ポテンショ・メータ514と制御回路92を取り除いて、モータの代わりに手動の回転機構を取り付け、ポテンショ・メータ514の代わりに該回転フレームの移動距離を示す目盛りを付けておくという簡易な構造でもよい。
特に、上記回転機構にはマイクロメータに適用される如き微細ピッチのねじ機構を適用すれば、大きな回転角を小さな移動距離に変換することができるので、移動距離を正確に制御することが可能である。
尚、この場合には、図7の読み出し専用メモリ部921の代わりに環境温度の変動に対する回転フレームの移動距離を算出した表を準備しておく必要がある。
そして、上記の如きマニュアルでレンズの位置を調整する機構の利点は、赤外線撮像装置の構造を複雑化しないことと、赤外線撮像装置自体の寸法と重量を軽減できることである。
上記自動制御又はマニュアルのいずれの手段によっても、レンズの位置を調整することによってレンズ系の焦点距離の温度変動を抑圧することができるので、赤外線検知素子の投影像の大きさの増加を抑圧することが可能になり、水平走査ミラーの振角を縮減することができる。
これにより、水平スキャナの駆動力の増加を抑圧することが可能になり、水平スキャナの大きさと重量を縮減することができる。
よって、赤外線撮像装置自体の大きさと重量の縮減が可能になる。
図8は、本発明の3点型光学式角度検出器で、水平走査ミラーも併せて図示している。
尚、図8は、該3点型光学式角度検出器の光軸中心を含む水平な平面で該3点型光学式角度検出器を切った断面図である。
図8において、31は水平走査ミラーである。
尚、後述する3点型光学式角度検出器によって、水平走査ミラーが有効走査領域と無効走査領域の境界を走査していることを検出してパルスを出力するので、本発明においては水平スキャナ制御用角度検出器は不要になる。
又、340は図1又は図2における3点型光学式角度検出器34の筐体、341は発光ダイオード、342は該発光ダイオードの出力光を平行光にするコリメータ・レンズ、343は該コリメータ・レンズ342の出力光を折り返すために反射させる反射ミラー、344、344a、344bはフォト・ダイオード、345は該水平走査ミラー31の角度が該反射ミラー343の反射光に対して45°の時と、無効走査領域と有効走査領域の境界における水平走査ミラーの振角をβ°として該水平走査ミラーの角度が該反射ミラー343の反射光に対して45°±β°の時に反射光を該フォト・ダイオード344、344a及び344bのいずれかの受光面に集光する集光レンズ、346は該発光ダイオード341と該フォト・ダイオード344乃至344bにバイアスを供給すると共に、該フォト・ダイオード344乃至344bが該水平走査ミラーの角度が45°の時と、45°±β°の時に反射光を受けて該フォト・ダイオード344乃至344bが出力するパルスを図3の信号処理回路72に供給する制御基板である。
ここで、上においては表現をまるめて、該水平走査ミラー31の角度が45°に等しい時と、45°±β°に等しい時に反射光を該フォト・ダイオード344、344a及び344bのいずれかの受光面に集光すると記載しているが、図8に則して見れば、実際には該水平走査ミラー31の角度が45°の時に該フォト・ダイオード344が受光し、該水平走査ミラー31の角度が45°+β°の時に該フォト・ダイオード344aが受光し、該水平走査ミラー31の角度が45°−β°の時に該フォト・ダイオード344bが受光することが判る。
尚、筐体への発光ダイオード341、コリメータ・レンズ342、反射ミラー343、フォト・ダイオード344、集光レンズ345の固定手段及び制御基板346の実装手段の説明は必要がないので省略する。
又、水平走査ミラー31及び水平スキャナ制御用角度検出器32についても、装着手段の説明は必要ないので省略する。
図9は、本発明の画像データ取り込み信号と温度基準熱源データ取り込み信号を示す図である。
図9(イ)は、水平スキャナの走査波形である。
実際には鋸歯状波様の波形の最高及び最低付近では丸みを帯びた波形になる(図14参照)が、図示を簡単にするために、丸みを取り除いて完全な鋸歯状波で図示している。
図9(ロ)は、本発明の3点型光学式角度検出器の出力で、図8におけるフォト・ダイオード344が水平走査ミラーの角度が45°であることを検出して出力するパルスである。
これは、水平走査ミラーの角度が走査範囲の中心である時の3点型光学式角度検出器の出力であるので、3点型光学式角度検出器の中心出力と呼ぶことにする。
図9(ハ)は、本発明の3点型光学式角度検出器の出力で、図8におけるフォト・ダイオード344a及び344bが水平走査ミラーの角度が45°±β°であることを検出して出力するパルスである。
これは、水平走査ミラーが有効走査領域と無効走査領域の境界を走査している時の3点型光学式角度検出器の出力であるので、境界出力と呼ぶことにする。
画像データの取り込みは、図9(ロ)の中心出力を基準に行なう。
即ち、中心出力のうち、走査角度が増加中に出力されるパルスCを基準に、所定の時間TCを経過した時刻に画像データの取り込みを開始する。
この時刻は、水平スキャナが無効走査領域における走査から有効走査領域における走査に入る時刻で、走査速度は設計上判っているので時間TCの設定は可能である。
尚、フライ・バック中にも水平走査ミラーの角度が45°になる時刻があり、3点型光学式角度検出器はこの時刻でもパルスDを出力するが、走査角が減少していることを検出する比較器を設けておき、この比較器の出力によって上記パルスDをマスクすることは容易にできるので、画像データ取り込みタイミングを誤ることはない。
一方、図9(ハ)の境界出力を使って温度基準熱源データの取り込みを制御する。
温度基準熱源は高温側と低温側の2個あるので、温度基準熱源データの取り込みタイミングは2つ必要である。
これは、有効走査領域から無効走査領域に移行するタイミングで生成されるパルスを第一の温度基準熱源のデータの取り込みパルスとし(図9(ニ)に、符号Eを付している。
)、有効走査領域から無効走査領域に移行するタイミングで生成されるパルスを第二の温度基準熱源のデータの取り込みパルスとすれば(図9(ニ)に、符号Fを付している。)よい。
尚、3点型光学式角度検出器は、図9(ハ)に示す如く、上記E及びFのパルス以外にも有効走査領域と無効走査領域間を移行するタイミングにパルスを出力するが、上記と同様な原理で不要なパルスをマスクすることができるので、温度基準熱源データの取り込みタイミングを誤ることはない。
尚、図8におけるフォト・ダイオード344乃至344bの受光面は有限の面積を持っているので、水平走査ミラーの角度が所定の角度になる前に反射光を受光し始め、水平走査ミラーの角度が所定の角度を過ぎても反射光を受光し続けるので、フォト・ダイオードが直接出力するパルスは裾を引いた波形をしている上にパルス幅も広いが、フォト・ダイオードが直接出力するパルスを比較器に入力し、所定の振幅以上の時に比較器から出力させるように設定しておけば、中心出力も境界出力もシャープでパルス幅が小さいパルスとすることができるので、画像データ取込みと温度基準熱源データの取り込みのタイミング・パルスとして問題なく使うことができる。
本発明の3点型光学式角度検出器においては、図8の水平走査ミラーからフォト・ダイオードまでの光路長と集光レンズの焦点距離と水平走査ミラーの角度によって反射光を集光させる位置を正確に決めることができる。
即ち、上記中心出力と境界出力が出力されるタイミングは水平走査ミラーの角度と正確に対応しており、しかも、境界出力が出力されないという事態は決して起こらない。
このため、角度検出の誤差を見込んで水平走査ミラーの振角を大きく設定する必要がないので、水平スキャナの駆動力の増加を抑圧することができ、水平スキャナの小型化と軽量化が可能になる。
その上、正確なタイミングで確実に画像データを取り込むパルスと温度基準熱源のデータを取り込むパルスを生成することができるので、赤外線撮像装置の画像表示の信頼度を高めることができる。
図10は、本発明の温度基準熱源と熱源導入光学系の構成である。
尚、図10は、熱源導入光学系の光軸中心を含む水平な平面で温度基準熱源と熱源導入光学系を切った断面図である。
図10において、4は温度基準熱源、6は熱源導入光学系である。
該温度基準熱源4は、サーモ・モジュール41、温度基準板42、放熱フレーム45、Oリング46、温度基準熱源固定ネジ47、シム48及び放熱フレーム固定ねじ49を備えている。
又、該熱源導入光学系6は、熱源導入レンズ61、反射ミラー62及び熱源導入光学系鏡筒63を備えている。
該温度基準熱源4において、該サーモ・モジュール41は一方の表面において該放熱フレーム45に接着固定されており、該サーモ・モジュール41のもう一方の面は該温度基準板42と接着固定されている。
該熱源導入光学系6において、該熱源導入レンズ61は該熱源導入光学系鏡筒63に装着固定されており、又、反射ミラー62も該熱源導入光学系 鏡筒63に装着固定されている。
該温度基準熱源4を構成する該放熱フレーム43は、熱源導入光学系6を構成する該熱源導入光学系鏡筒63に該放熱フレーム固定ねじ49によってねじ止め固定されるが、該放熱フレーム45の該熱源導入光学系鏡筒63との取り付け面には該放熱フレーム45中を周回する溝が形成されており、この溝の中にはOリングが組み込まれている。
これで、該熱源導入光学系鏡筒63上の該放熱フレーム45の取り付け面での密閉性を高く保つことができる。
一方、熱源導入レンズ61と熱源導入光学系鏡筒63との間の密閉性も当然高い。
従って、該放熱フレーム45、該熱源導入光学系鏡筒63及び該熱源導入レンズ61によって囲まれる空間を外部の空間から密閉された空間にすることができる。
このため、上記空間に化学的に不活性な窒素などの乾燥気体を封入することによって、該サーモ・モジュール41と該温度基準板42の表面が露点以下の温度になっても、該サーモ・モジュール41と該温度基準板42の表面に結露が生じないようにすることができる。
又、該シム48と該熱源導入光学系鏡筒63に設けた長径穴64によって、アフォーカル・レンズ系とイメージ・レンズ系に対する該反射ミラー62の位置の調整を行なうことができる。
まず、該シム48の厚さを調整することによって、イメージ・レンズ系に対する該反射ミラー62の位置の調整、即ち、図2のBの方向での位置の調整を行なうことができる。
次に、該温度基準熱源固定ねじ47を緩めた状態で該熱源導入光学系鏡筒63に固定されている該放熱フレーム45を該長径穴64の長径の方向にずらすことによってアフォーカル・レンズ系に対する該反射ミラー62の位置の調整、即ち、図2のAの方向での位置の調整を行なうことができる。
図10の構成の利点は下記の通りである。
即ち、温度基準熱源4においては、放熱フィンとファンを適用しないで、サーモ・モジュールの発熱エネルギーを直接放熱フレーム45に逃がす構成をとっているので、温度基準熱源4自体の小型化と構成の簡易化ができる。
又、熱源導入光学系6においては、反射ミラー62を熱源導入光学系鏡筒63に直接取り付けることによって熱源導入光学系自体の構成の簡易化ができ、シム48と長径穴64による位置調整によって該反射ミラー62のアフォーカル・レンズ系とイメージ・レンズ系に対する位置調整を正確且つ容易に行なうことができる。
更に、温度基準熱源4と熱源導入光学系6の間の空間に乾燥気体を封入することによってサーモ・モジュール41と温度基準板42表面での結露を防止することができる。