JP3769608B2 - 2足歩行ロボットの股関節構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホームロボットや各種サービスロボット、または、義足、脚型車椅子等の医療福祉機器等に適用できる人間型ないし非人間型の2足歩行ロボットの股関節構造に関し、より具体的には2足歩行ロボットの歩行時の消費パワーを減少させるように構成された股関節に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の脚式歩行ロボットは、図1に示されているように、2足歩行ロボットでは通常片脚あたり6軸で構成される(例えば、特開平3−184782号公報参照)。 この2足歩行ロボットの股関節のメカニズムに注目すると胴体10側から旋回軸1(ヨー軸)、左右開閉軸2(ロール軸)、前後動軸3(ピッチ軸)の順に関節軸が配置される場合がほとんどである。この際、股関節の前後動軸3の具体的な構造に着目すると、図2に示すように、通常、ロール軸2をはさみこむように前後動リンク6の上端が前後動軸3に対して両持ち構造として構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、股関節の前後動軸3を図2のような構造にすると機構がロボットの中心軸20付近に集中するために、左右脚間のクリアランスをとることが困難になる。この結果、
(1)両股関節の中心の間隔を広くとる必要がある
(2)両脚をクロスさせることが困難
等の問題が生ずる。
上記(1)は、歩行ロボットにとっては消費パワー増大の原因となる。なぜなら、片脚支持期において股関節ロール軸2に作用するトルクは、図3に示すように、股関節と胴体重心の水平距離rに胴体重量MgをかけたMg・rであり、股関節ロール軸2が体の中心線より離れているほど大きくなる。トルクはモーター電流に比例するため、結果として大きなパワーを消費することになる。
また、上記(2)はロボットの転倒防止の上で問題となる。2足歩行ロボットは、転倒した方向に足を踏み出すことにより安定を確保できる。例えば右脚で体を支持している際に右方向へ転倒した場合、左脚を右脚より右へ着地すなわち両脚をクロスさせる必要があるが、これができない場合、もはやロボットは安定を回復できず転倒するにまかせるしかないものであった。
【0004】
一方、実際の人間の脚部骨格を観察すると、図4に示すように、左右大腿骨は骨盤より一旦外側へ突き出した後、下方へ向かう構造をもっている。その結果、左右股関節の回転中心は短く保たれているにもかかわらず十分な可動範囲が確保されている。さらに確保されたスペースに坐骨が位置しており、着席時や後ろ向き転倒時の衝撃吸収をここで行える構造になっている。
本発明は、人間の脚部骨格構造を参考にして、図5に示すように、外見上人間に類似した関節構造、すなわち、股関節の前後動軸(ピッチ軸)3を完全に外側で保持する構造とすることによって、上述の問題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の2足歩行ロボットの股関節構造は、2足歩行ロボットの各々の股関節を腰板、腰板に対して鉛直回りの外旋または内旋運動をする旋回リンク、旋回リンクに対して開閉運動をする開閉リンクおよび開閉リンクに対して前後動軸を介して前後運動をする前後動リンクより構成し、前後動リンクを前後運動させるための関節軸である前後動軸を片持ち支持構造としたものにおいて、各旋回リンクの回転軸を鉛直方向に設け、各旋回リンクからロボットの中心軸側と反対方向であるところの外側方向に向けて開閉リンクを設け、該開閉リンクから下方に向けて前後動リンクを設け、開閉リンクと前後動リンクの間を入れ子とし、両リンクの関節軸である前後動軸にベアリングを複数個介在させる構成とすることにより開閉リンクの回転中心を極力ロボット中心軸に近づけたことを特徴としている。
また、本発明の2足歩行ロボットの股関節構造は、前後動リンクの下部を内側に向けて曲折した構成とすることを特徴としている。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による実施の形態を図6ないし図7に基づき説明する。
図6は2足歩行ロボットの正面図、図7は図6のA−A断面図、図8は図6の要部拡大図、図9は図7の要部拡大図を示している。
脚を構成する基本的な要素は、腰板11、腰板11に対して旋回軸1、1を介して鉛直回りの外旋または内旋運動を作り出す旋回リンク4、4、旋回リンク4、4に対して開閉軸2、2を介して脚の内転または外転(左右の開閉)を起こす開閉リンク5、5、開閉リンク5、5に対して前後動軸3、3を介して脚の屈曲または進展(前後動)を作り出し大腿に相当する前後動リンク6、6、前後動リンク6、6に対して膝をはさんで下腿に相当するリンク7、7、リンク7、7に対して足部の背屈または底屈(爪先の上下)を作り出すリンク8、8およびリンク8、8対して足部の内返しまたは外返しを作り出し、足部を構成するリンク9、9からなる。
【0007】
次に本発明の主眼である股関節の構成を図8および図9に基づいてさらに細かく説明する。
旋回リンク4、4は、腰板11、11に対して旋回軸1、1、ローラベアリング26、26を介して旋回自在に設けられ、その内側(ロボットの中心軸側)が平面状をなし、外側が開閉リンク5、5が開閉したときに障害にならないように正面からみて図8に示すような形状となっている。
また、開閉リンク5、5は、旋回リンク4、4に対して開閉軸2、2、ローラベアリング36、36を介して所定角度脚を開閉できるように開閉自在に設けられ、旋回リンク4、4から外側方向に向けて形成されている。
また、前記前後動リンク6は、開閉リンク5、5に対して前後動軸3、3、ローラベアリング46、46を介して前後動できるように前後動自在に設けられ、開閉リンク5の一部分は前後動リンク6の中に入れ子となっており、その間隙にローラベアリング46を構成するクロスローラベアリング47が所定の距離で複数個配置されている。
【0008】
このように、開閉リンク5を旋回リンク4から外側方向に向けて形成し、開閉リンク5の一部分を前後動リンク6の中に入れ子構造、すなわち、前後動リンク6を前後運動させるための関節軸を片持ち支持構造とすることにより、開閉リンク5の回転中心をロボットの中心軸20に極力近づけることが可能となった。
そして、開閉リンク5に対する前後動リンク6の上記片持ち支持構造においても、両リンク間を入れ子とし、前後動軸3にクロスローラベアリング47を所定距離で複数個配置することにより、強度状の問題を克服することが可能となった。
なお、リンク5および6の入れ子構造は、開閉リンク5の一部分を前後動リンク6の中に入れ込む方式に代え、その逆でも可能であり、要は両リンク5、6が入れ子構造になっていれば良い。
また、前後動リンク6を一体部品として構成することにより関節のガタが生じにくい構造とすることができる。
さらに、前後動リンク6の下部を図6に示すように、内側に向けて曲折した構成として、その下方に位置するリンク7、8、9をロボットの中心軸20に近づけるように構成すると2足歩行ロボットの脚をスマートに構成できる。
【0009】
腰板11に対する旋回リンク4の外旋または内旋運動はモータ21によって駆動される。その回転はプーリー22、タイミングベルト23、プーリー24によりハーモニック減速器25に伝えられ、腰板11に対する旋回リンク4の回転を作り出す。
開閉リンク5の内転または外転(左右の開閉)運動はモータ31によって駆動され、プーリー32、タイミングベルト33、プーリー34により股関節内部に配置されたハーモニック減速器35に伝えられ開閉リンク5を駆動する。
前後動リンク6屈曲または伸展運動(前後動)は大腿部に配置されたモータ41により駆動され、プーリー42、タイミングベルト43、プーリー44を介してハーモニック減速器45に伝えられ開閉リンク5に対して前後動リンク6を駆動する。
【0010】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、次の効果を奏する。
(1)左右股関節の間隔を狭めることができる。例えばロボットの中心軸と股関節回転中心の距離は従来技術(図2)の場合10cmとなるのに対して、本発明では6cmに減らすことができる。これに伴い片脚支持期に支持脚側の股関節ロール軸が発生するトルクは40%減り、従って歩行時の消費パワーも相当分だけ減らすことが可能となる。
(2)左右両脚をクロスさせることが可能となる。これによって、特に左右方向に押された際の安定性の確保が可能となる。
(3)股間にスペースが確保できるため、ここに坐骨に相当する衝撃吸収パーツを挿入することが可能になる。これによって転倒時の衝撃吸収を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の脚式歩行ロボットの概略を示した斜視図である。
【図2】従来の脚式歩行ロボットの股間節の構造を示した正面図である。
【図3】ロボットの歩行において、片脚支持期における股関節開閉軸に作用するトルクの状態を示した説明図である。
【図4】人間の脚部骨格構造を背面から示した図である。
【図5】外見上人間に類似した関節構造を持った2足歩行ロボットの正面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る2足歩行ロボットの正面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図6の要部拡大図である。
【図9】図7の要部拡大図である。
【符号の説明】
1 旋回軸
2 開閉軸
3 前後動軸
4 旋回リンク
5 開閉リンク
6 前後動リンク
7、8、9 リンク
10 胴体
11 腰板
20 ロボットの中心軸
21、31、41 モータ
22、32、42 プーリー
23、33、43 タイミングベルト
24、34、44 プーリー
25、35、45 ハーモニック減速器
26、36、46 ローラベアリング
47 クロスローラベアリング

Claims (2)

  1. 2足歩行ロボットの各々の股関節を腰板、腰板に対して鉛直回りの外旋または内旋運動をする旋回リンク、旋回リンクに対して開閉運動をする開閉リンクおよび開閉リンクに対して前後動軸を介して前後運動をする前後動リンクより構成し、前後動リンクを前後運動させるための関節軸である前後動軸を片持ち支持構造としたものにおいて、各旋回リンクの回転軸を鉛直方向に設け、各旋回リンクからロボットの中心軸側と反対方向であるところの外側方向に向けて開閉リンクを設け、該開閉リンクから下方に向けて前後動リンクを設け、開閉リンクと前後動リンクの間を入れ子とし、両リンクの関節軸である前後動軸にベアリングを複数個介在させる構成とすることにより開閉リンクの回転中心を極力ロボット中心軸に近づけたことを特徴とする2足歩行ロボットの股関節構造。
  2. 前後動リンクの下部を内側に向けて曲折した構成とすることを特徴とする請求項1記載の2足歩行ロボットの股関節構造。
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