JP3768951B2 - 水硬性材料の長さ変化試験方法 - Google Patents

水硬性材料の長さ変化試験方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントペースト、モルタルおよびコンクリートなどの水硬性材料の乾燥に伴う長さ変化の試験法に関するものである。
建設工事における、レディーミクストコンクリート工場や使用材料の選定、調合の検討や、長さ変化特性のチェック、ひび割れ対策の見直しなどに有効に活用できる、簡便かつ短期間に長さ変化を評価できる試験方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水硬性材料の長さ変化試験法としては、JIS A 1129−1〜3:2001「モルタル及びコンクリートの長さ変化率試験方法」(非特許文献1参照)があり、測定器、試験体寸法などを規定している。
また、各乾燥材齢における測定を簡便にする水硬性材料の長さ変化測定装置が知られている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【非特許文献1】
JIS A 1129−1〜3:2001「モルタル及びコンクリートの長さ変化率試験方法」
【特許文献1】
特開2000−121321号公報
【特許文献2】
特開2002−48514号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、非特許文献1には、乾燥する環境条件について、特に定めはないが、一般的な温湿度環境、すなわち大気圧下で20℃、60%RH程度の一定条件下で試験している。
このような非特許文献1に記載の試験方法では、乾燥開始当初は急激な長さ変化を示すが、変化が徐々にゆっくりとなり、長さ変化がほぼ収束して評価するには半年から1年程度の長期間を要するという問題がある。
【0004】
また、特許文献1,2には、水硬性材料の長さ変化測定装置について記述しているが、これは各乾燥材齢における測定を簡便にするもので、乾燥期間すなわち評価に要する期間を短縮する試験方法や測定装置に関するものではない。
これまで、水硬性材料の長さ変化特性を短期間に評価する手法について、検討は全くされていない。
【0005】
コンクリートの乾燥収縮が大きいと、構造物にひび割れが発生する。ひび割れは、炭酸ガスの進入を引き起こし、元来の強アルカリ性が失われることによる耐久性低下や、雨水の浸入による漏水、美観を損ねるなどの不具合を引き起こす。ひび割れの発生を抑制するには、長さ変化の小さい材料、調合を選定したり、長さ変化特性を考慮してひび割れ分散鉄筋やひび割れ誘発目地を計画的に設けるなどのひび割れ対策を講じることが望ましい。
【0006】
効果的なひび割れ対策を講じるためには、使用するコンクリートの収縮特性を把握しておくことが望ましい。
しかし、従来の長さ変化試験法では、最終的な評価が半年から1年の長期間を要してしまうことから、建設工事で使用するコンクリートの長さ変化特性を把握して材料、調合の選定、ひび割れ対策に反映することは困難であった。
【0007】
本発明は、斯かる従来の問題点を解決するために為されたもので、その目的は、従来の試験方法で必要であった半年から1年の試験期間を飛躍的に短縮できる水硬性材料の促進乾燥方法および水硬性材料の長さ変化試験方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、水硬性材料にて作製された試験体を、大気圧(101kPa)下で温度が常温一定となるまで保持し、次いで、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温して一定に保持し、前記試験体に作用する圧力を大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧して、前記試験体の乾燥を促進し、その後、雰囲気温度を常温に戻し、圧力を大気圧まで戻して前記試験体を乾燥させるに際し、前記試験体の常温、大気圧下での長さの変化を測定することを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、水硬性材料にて作製された試験体を、大気圧(101kPa)下で温度が常温一定となるまで保持し、次いで、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温して一定に保持し、前記試験体に作用する圧力を大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧して、前記試験体の乾燥を促進し、その後、雰囲気温度を常温に戻し、圧力を大気圧まで戻して前記試験体を乾燥させるに際し、前記試験体の高温、減気圧時での長さの変化を測定することを特徴とする
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2記載の水硬性材料の長さ変化試験方法において、前記試験体に作用する圧力は、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温すると同時に大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2記載の水硬性材料の長さ変化試験方法において、前記試験体に作用する圧力は、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温して一定に保持された後に、大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし請求項4の何れか1項記載の水硬性材料の長さ変化試験方法において、前記試験体の乾燥を促進する期間は、2〜20日とすることを特徴とする水硬性材料の長さ変化試験方法。
本発明によれば、高温、減圧養生により、従来の試験方法で必要であった半年から1年の試験期間を20日以内まで飛躍的に短縮することができる。短期間かつ簡便に長さ変化特性の評価が可能となれば、建設工事に長さ変化特性を考慮して反映できるようになり、効果的なひび割れ対策が可能となる。具体的には、本発明を適用し、長さ変化の小さいレディーミクストコンクリート工場の選定、材料、調合の選定、ひび割れ対策仕様の見直し、長さ変化の小さいコンクリートを重要部位へ適用するなどの施工的な配慮などが可能となり、建設工事におけるひび割れに関する不具合を減らすことができる。結果として、建物の躯体品質の確保、向上、補修工事の低減が達成できる。
【0012】
短期間で乾燥に伴う長さ変化を把握するためには、試験体中の水分の逸散を促進する必要がある。試験体を高温に加熱するのが有効であるが、100℃を超える高温状態を長時間保持すると、細孔構造の破壊や、水和生成物から結合水の脱水が生じてしまい、材料の物性に変化を来たしてしまう。また、100℃以下では大気圧下の飽和水蒸気圧に達しないため、水の蒸発を促進するには不十分である。
【0013】
水硬性材料を対象とした場合、元々の物性を変化させることなく、乾燥を飛躍的に促進するには、最大100℃以下の範囲で加熱すると同時に、加熱温度での飽和水蒸気圧より低い圧力に減圧することが効果的であることを見出した。最適な乾燥条件について研究を行った結果、温度の範囲は40〜100℃、圧力の範囲は0〜80kPaとすれば試験体中の水は活発に蒸発し、乾燥開始から20日以内に長さ変化は収束することが判明した。従来の温度20℃、湿度60%、大気圧(101kPa)の環境条件で乾燥させた場合は、半年から1年の試験期間が必要であったが、本発明では従来の1/10〜1/50程度の期間で長さ変化特性を把握することができる。
【0014】
本発明と従来の一般温度、湿度の大気圧下で乾燥する方法では、硬化体の細孔構造、力学特性に大きな違いはなく、材料自体の変質はない。このため、本発明によって得られた長さ変化特性で従来の方法の長さ変化特性を評価することができる。
材料、調合の違いや試験体の初期養生期間の違い、および迅速試験法で設定する温度、圧力の違いにより長さ変化が収束するまでの日数に若干の違いがあるため、長さ変化を連続的に測定し収束する期間を確認しながら試験を行うことが望ましい。
【0015】
なお、本発明では試験体成形から乾燥養生開始までの養生期間、養生条件は特に定めないが、特に理由がなければ、これまで一般的に行われていた湿潤養生7日とすると良い。また、JISA1129に定められる試験体寸法に準じると良い。
本発明は、独自の乾燥条件により短期間に長さ変化率を得るが、本発明により得られる長さ変化率を用いて、条件に応じた係数を乗じることにより、従来の大気圧下での一定温湿度環境(多くの場合は20℃、60%RH)による長さ変化率を予測することができる。これは、本発明と従来の方法で、乾燥の程度が若干異なるが、細孔構造が同等であり、力学的な特性もほぼ同等であること、また、長さ変率に最も大きな影響を及ぼす骨材種類の特性を評価できていることによる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る水硬性材料の長さ変化試験方法を示す(請求項1ないし請求項に対応)。
図1は、縦軸に気圧および温度、横軸に時間をそれぞれ示す。
先ず、水硬性材料で作製した試験体(6×6×40cm、化粧ベニア型枠使用)を、大気圧下(101kPa)で温度が常温一定となるまで保持した後、真空容器に入れる。
【0017】
次に、真空容器内の雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温して一定に保持する。ここでは、先ず、温度20℃を5時間保持した後、80℃まで1時間で昇温して5時間程度保持した。
なお、促進養生の開始時には、試験体の温度を短時間で上昇させるため、昇温時には空気が存在することが望ましい。このため、昇温が完了した後に脱気することが望ましい。
【0018】
次に、この昇温過程もしくは、昇温を終了して高温で保持している過程から、試験体に作用する気圧を、0〜80kPaまで減圧し、高温でかつ減圧した状態を保持して試験体の乾燥を促進する。
次に、この高温かつ減圧した状態を2〜20日間保持した後、温度を最初の常温まで戻し、続いて圧力を大気圧まで戻す。
【0019】
なお、促進養生の終了時には、温度の降下には時間がかかるため、先に大気圧に開放すると空気中の水蒸気を試験体が吸収し、膨張することが懸念される。このため、温度を降下した後、大気圧に開放し、直ちに長さ変化を測定することが望ましい。
以上のように温度と圧力を制御した条件下で試験体を乾燥させ、常温、大気圧での長さ変化(図1における20℃・大気圧ベースの長さの変化)もしくは、高温、減圧時での長さ変化(図1における80℃・減圧時ベースの長さの変化)を測定する。
【0020】
図2〜図8は、このような高温、減圧状態を保持しながら長さ変化を連続測定できる試験装置の一例を示す。
試験装置は、チャンバーまたは加熱炉1と、圧力計3を備え内部に試験体Aを装着する真空容器2と、真空容器2に真空ホース5を介して連絡する水分除去フィルタ付きの真空ポンプ4と、真空容器2に計測用コード7を介して連絡する歪み計測装置6とで構成されている。
【0021】
真空容器2は、容器本体2aと、容器本体2aをパッキン8を介して覆う蓋2bとで構成されている。
容器本体2aには、試験体Aを所定の位置に取り付けるためのフレーム9、補強板10と、試験体Aの長手方向の両端部に配され、試験体の長さを連続測定するための変位計11とが備えてある。
【0022】
変位計11には、計測用コード7が取り付けられ、計測用コード7は配線コネクタ12によって適宜接続されている。
蓋2bには、排気、吸気口13と、真空用配線コネクタ15を取り付ける孔14とが備えてある。
真空用配線コネクタ15には、計測用コード7が気密状態で取り付けられている。
【0023】
なお、試験装置には、試験体Aから逸散する水分を除去するために真空配管に集水トラップを設けるのが望ましい。
【0024】
【実施例】
実施例1
表1に示す使用材料、表2に示すコンクリートの調合で、コンクリートを練り混ぜ、6×6×40cmの試験体を成形し、材齢7日まで水中養生した後、乾燥収縮の迅速試験を行った。
温度および圧力は、20℃、60%RH一定に保持した後、1時間で70℃まで昇温し、5時間70℃を保持し、その後、脱気により0.5kPaまで減圧した。
【0025】
また、比較としてJIS A 1129により温度20℃、湿度60%RHの室内に保管したときの長さ変化率試験を実施した。
試験結果を、図9に示す。
長さ変化が収束するまでの期間は、従来の方法では半年であったのに対し、迅速試験では14日程度であった。
【0026】
【表1】
Figure 0003768951
【表2】
Figure 0003768951
実施例2
表3に示す使用材料材料、表4に示す調合No.3,7,9,10の調合で、コンクリートを練り混ぜ、6×6×40cmの試験体を成形し、材齢7日まで水中養生した後、温度80℃、2kPaとして迅速試験を行った場合と,JIS A 1129により温度20℃、湿度60%RHの室内で乾燥させた場合の長さ変化率試験を実施した。
【0027】
試験結果を、図10および図11に示す。
従来の方法では収縮が収束するのに半年以上が必要であったのに対し、本実施例による迅速試験では、乾燥開始から14日程度で最終収縮量に至った。
【表3】
Figure 0003768951
【表4】
Figure 0003768951
実施例3
表3に示す使用材料、表4に示す調合No.3,11の調合で、コンクリートを練り混ぜ、直径10cm、高さ20cmの円柱試験体を作製し、材齢1日、3日、7日、14日まで水中養生した後、温度20℃、湿度60%RHの大気圧下で乾燥したもの、迅速試験の環境下(温度80℃、2kPa)で14日間乾燥した試験体について細孔構造、圧縮強度、ヤング係数を調べた。
【0028】
細孔構造の測定結果を、図12に示す。
大気圧の一般環境下で乾燥した試験体の細孔分布は、材齢の経過とともに迅速試験の場合の細孔分布に近づいてゆく。迅速法で乾燥させた場合の細孔構造と、大気圧下の一定温度、湿度で長期間にわたり乾燥を受けた試験体で細孔構造が類似していることがわかる。
【0029】
圧縮強度、ヤング係数の測定結果を、図13に示す。
圧縮強度に関しても、迅速法で乾燥した場合と大気圧下の一定温度、湿度で長期間にわたり乾燥させた場合で同等となる。
ヤング係数に関しては、迅速法で乾燥した場合は大気圧下の一定温度、湿度で長期間にわたり乾燥させた場合に対して20〜30%程度低下する。従来言われているように、試験体が乾燥するほどヤング係数は低下する特徴があるためで、本迅速試験法によれば,温度20℃,湿度60%RHの屋内に保管して乾燥させた場合より乾燥が進むことによる。本実施例により相対比較を行う場合は、特に考慮する必要はない。しかし、本実施例から従来の一定の温度,湿度条件における長さ変化率の絶対値を予測するには、ヤング係数の低下影響の補正を考慮することで推定精度を高めることができる。
【0030】
実施例4
表3に示す使用材料、表4に示す調合で、コンクリートを練り混ぜ、6×6×40cmの試験体を成形し、大気圧下で温度20℃、湿度60%RHとした従来の長さ変化試験、温度80℃、2kPaに減圧した迅速試験を行った。
両者の試験値は、図14に示す線形関係があり、いずれの材料、調合においても従来の方法による収縮率は迅速法の0.8程度であった。
【0031】
このことは、必要に応じて、従来の方法と迅速法の収縮率の関係を求めておけば、迅速法の収縮率からJIS法の収縮率を精度良く推定することが可能であることを示している。
本実施例において、JIS法に対して、迅速法の収縮率が20%程度大きく評価される理由の主因は、乾燥程度の違いや迅速法ではヤング係数が20〜30%程度低下していることが一因である。
【0032】
実施例5
表3の使用材料を用い,表4の調合No.3の調合で、コンクリートを練り混ぜ、10×10×40cmの試験体を成形し、温度、湿度、圧力の条件を変化させて長さ変化を測定した。
試験結果を、表5に示す。
【0033】
温度40℃〜100℃、圧力を0〜80kPaの場合は20日以内に長さ変化が収束した。
一方、本実施例によらない場合は、最終的な長さ変化を得るために20日以上の期間が必要であった。
【表5】
Figure 0003768951
実施例6
本実施例は、迅速法で短期間に従来の試験法の収縮率を推定する方法を示す。
【0034】
試験体の成形後、水中で7日間養生し、その後迅速法による乾燥収縮試験を行った。乾燥の温度、圧力条件は、80℃、2kPaとし、乾燥期間は14日間とした。
迅速法で得られた乾燥収縮εrから、従来の方法(温度20℃、湿度60%RH、期間26週間)の長さ変化率εj を、下式により精度良く推定することができた。
【0035】
長さ変化率εj =0.82×εr
図15は、推定値と実測値との関係を示す図である。
上記により得た長さ変化率εrに係数を乗じることにより、従来行われている大気圧、温度200℃、湿度60%の一定温湿度下の水硬性材料の長さ変化率εjを推定する。
【0036】
80℃、2kPaの迅速乾燥条件では、係数は定数0.82で良いが、70℃、2kPaの迅速乾燥条件では、係数は定数1.04、100℃、2kPaの迅速乾燥条件では、係数は定数0.71を用いると良い。
このように迅速乾燥条件で係数が異なる理由は、迅速法による収縮率εrが、迅速乾燥の条件すなわち温度、圧力、乾燥期間によって異なるためである。
【0037】
精度良くεjを推定するためには、迅速法の迅速乾燥条件によって収縮率εrの値がどう変わるか把握しておき、迅速乾燥の条件を考慮した補正後のεrを用いてεjを推定する必要がある。
補正は、▲1▼迅速乾燥の条件(温度、圧力、乾燥期間)の違いの影響の補正、▲2▼試験体成形後の養生条件、迅速乾燥開始までの期間の影響について補正する必要がある。
【0038】
迅速乾燥条件による補正
・温度
温度70℃、80℃、100℃における迅速収縮率εrは80℃のεrを基準とすると、比率は0.79、1.00、1.15程度となり、JIS法の収縮率εjを推定するための係数は1.04、0.82、0.71となる。
【0039】
・迅速乾燥期間
基準とする迅速乾燥の期間と、実際の迅速乾燥の期間との差(70〜80℃では10日を基準とする)に迅速法における収束した収縮速度(実測していない場合は5〜15×10-6/日とする)を乗じた値を加えることにより補正する。
【0040】
・圧力
圧力は、収縮が収束するまでの期間に大きな影響を及ぼすが、収縮率εrの値に及ぼす影響は小さい。目安として、圧力の条件が100℃では40kPa以下、80℃で10kPa以下であれば補正の必要はない。
上記以外の、試験体の断面寸法、成形後の養生方法、養生期間、迅速試験開始までの期間などの条件に対しては、基準とする迅速試験法(例えば80℃、2kPa)の収縮率εrと実施した迅速法の関係を求め、基準とする迅速試験法の収縮率εrとJIS法の収縮率εjの関係式を用いることにより短期間でJIS法の収縮率εjを推定することができる。
【0041】
また、期間的に余裕のある場合は、数種類の材料、調合の水硬性材料に対し、迅速試験方法の試験条件を一定として迅速法の収縮率εrを行うと同時に、従来行われている大気圧、温度15〜25℃、湿度50〜70%の範囲の一定温湿度下の長さ変化率εjを測定して両者の関係式をあらかじめ求めておく。
収縮特性が未知の材料に対して迅速法で長さ変化率εrを測定して、前記の関係式を適用することにより従来の方法の収縮率εjを求めることができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、水硬性材料の乾燥による長さ変化特性を、従来の試験方法である大気圧下で温度20℃、湿度60%程度では半年から1年程度必要であった評価に要する期間を、20日以内に短縮することができる。
また、本発明によれば、評価が短期間で可能であるため、本発明を、▲1▼使用材料、調合の見直し、▲2▼生コン工場の選定、▲3▼実績のない骨材、特に輸入骨材を用いた場合の収縮特性のチェック、▲4▼補強鉄筋量や誘発目地の見直しなどの設計的なひび割れ対策の見直し等に適用することができ、これにより、ひび割れによる不具合の低減による躯体品質の確保、向上および不具合に対する補修費用の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る水硬性材料の長さ変化試験方法を示す説明図である。
【図2】 図1に示す水硬性材料の長さ変化試験方法に用いる試験装置の概念図である。
【図3】図2における真空容器の蓋を取り除いた状態を示す図である。
【図4】図2における真空容器の蓋を示す図である。
【図5】図2における真空容器の中央部を切り欠いて示す図である。
【図6】図2における真空容器を切り欠いて示す図である。
【図7】図2における真空用配線コネクタの断面図である。
【図8】図2における真空用配線コネクタの斜視図である。
【図9】実施例1における促進乾燥収縮試験結果とJIS法での長さの変化率の変化の比較を示す図である。
【図10】実施例2における迅速乾燥収縮試験結果を示す図である。
【図11】実施例2におけるJIS法の乾燥収縮試験結果を示す図である。
【図12】実施例3におけるJIS法と迅速乾燥収縮試験とでの細孔分布の比較示す図である。
【図13】実施例3におけるJIS法と迅速乾燥収縮試験とでの圧縮強度、ヤング係数の比較を示す図である。
【図14】実施例4におけるJIS法と迅速乾燥収縮試験とでの収縮率の関係を示す図である。
【図15】実施例6における推定値と実測値との関係を示す図である。

Claims (5)

  1. 水硬性材料にて作製された試験体を、大気圧(101kPa)下で温度が常温一定となるまで保持し、次いで、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温して一定に保持し、前記試験体に作用する圧力を大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧して、前記試験体の乾燥を促進し、その後、雰囲気温度を常温に戻し、圧力を大気圧まで戻して前記試験体を乾燥させるに際し、前記試験体の常温、大気圧下での長さの変化を測定することを特徴とする水硬性材料の長さ変化試験方法。
  2. 水硬性材料にて作製された試験体を、大気圧(101kPa)下で温度が常温一定となるまで保持し、次いで、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温して一定に保持し、前記試験体に作用する圧力を大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧して、前記試験体の乾燥を促進し、その後、雰囲気温度を常温に戻し、圧力を大気圧まで戻して前記試験体を乾燥させるに際し、前記試験体の高温、減気圧時での長さの変化を測定することを特徴とする水硬性材料の長さ変化試験方法。
  3. 請求項1または請求項2記載の水硬性材料の長さ変化試験方法において、前記試験体に作用する圧力は、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温すると同時に大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧することを特徴とする水硬性材料の長さ変化試験方法。
  4. 請求項1または請求項2記載の水硬性材料の長さ変化試験方法において、前記試験体に作用する圧力は、雰囲気温度を40℃〜100℃の範囲で昇温して一定に保持された後に、大気圧(101kPa)から脱気して0〜80kPaまで減圧することを特徴とする水硬性材料の長さ変化試験方法。
  5. 請求項1ないし請求項4の何れか1項記載の水硬性材料の長さ変化試験方法において、前記試験体の乾燥を促進する期間は、2〜20日とすることを特徴とする水硬性材料の長さ変化試験方法。
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