JP3768754B2 - 微生物を用いた有機化合物で汚染された環境修復の効率化方法 - Google Patents

微生物を用いた有機化合物で汚染された環境修復の効率化方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川、地下水、湖沼、あるいは、工業排水などの水や液体、土壌、及び空気等の環境を汚染する原因となる有機化合物を微生物を用いて、生分解・処理する方法、ならびに、前記の微生物を用いて、有機化合物を生分解・処理する方法を利用して、汚染された環境の浄化、環境修復を行う方法に関する。特には、汚染源となる有機化合物が、難分解性の有機化合物、具体的には、トリクロロエチレン、ジクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素などである際に、継続的にこれら汚染源となる有機化合物の微生物による分解処理の効率化を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生体に対し有害かつ難分解性である揮発性有機塩素化合物による環境汚染が大きな問題となってきている。特に、テトラクロロエチレン(PCE)やトリクロロエチレン(TCE)、ジクロロエチレン(DCE)等の揮発性有機塩素化合物は、種々の産業において、溶媒・溶剤として、長い間利用されてきた。これら企業活動に付随して、使用済みのこれら有機化合物は万全の注意をもって、廃棄・処理されてきたが、誠に不幸なことではあるが、極微量のこれら有機化合物が、回収処理を逃れ、工場等の施設から流出・散逸することも少なからずあった。
【0003】
例えば、テトラクロロエチレン(PCE)やトリクロロエチレン(TCE)、ジクロロエチレン(DCE)等の揮発性有機塩素化合物は、難分解性であるため、次第に蓄積してゆき、国内外の工業地域の土壌中には、前記の難分解性有機塩素化合物による汚染がかなりの範囲で拡がっていると考えられている。実際にも、環境調査等で検出された事例が多数報告されている。これらの揮発性有機塩素化合物は、土壌中に残留したものが雨水等により地下水中に溶解して周辺地域一帯に拡がるとされている。これらの難分解性有機塩素化合物には発癌性の疑いがあり、また、環境中で安定であるため、特に、飲料水の水源として利用されている地下水を汚染する可能性もあり、深刻な社会問題ともなっている。
【0004】
このように、揮発性有機塩素化合物を除去、分解して、汚染地下水等の水性媒体、土壌、およびそれに伴う周辺気相の浄化を図ることは、環境保全の視点からきわめて重要な課題である。既に、浄化に必要な技術の開発(例えば、活性炭による吸着処理、光や熱による分解処理等)が進められてはいるものの、現状の浄化技術の多くは、コストや操作性の面からは、必ずしも実用的であるとはいえない。
【0005】
一方、環境中で安定であるTCE等の揮発性有機塩素化合物に対して、近年微生物による分解方法が報告されている。微生物を利用して、分解・処理する方法の利点として、1)微生物を用いる生物分解処理では、用いる微生物を選択することで無害な物質までに揮発性有機塩素化合物を分解できること、2)基本的に特別な薬品が不要であること、3)メンテナンスにかかる労力やコストを軽減できること、等が挙げられている。
【0006】
TCE等の揮発性有機塩素化合物に対して、その分解を行う微生物も、多数見出され、また、新たに、分解活性を示す新規な菌株を探索する努力も続けられている。既に、文献等に報告・記載されている微生物としては、例えば、TCE分解菌として、Welchia alkenophila sero 5 (USP 4877736, ATCC 53570)、 Welchia alkenophila sero 33 (USP 4877736, ATCC 53571)、Methylocystis sp. strain M (Agric. Biol. Chem., 53, 2903 (1989)、Biosci. Biotech. Biochem., 56, 486 (1992)、同56, 736 (1992))、Methylosinus trichosprium OB3b (Am. Chem. Soc. Natl. Meet. Dev. Environ. Microbiol., 29, 365 (1989)、Appl. Environ. Microbiol., 55, 3155 (1989)、Appl. Biochem. Biotechnol., 28, 877 (1991)、特開平02-92274号公報、特開平03-292970号公報)、Methylomonas sp. MM2(Appl. Environ. Microbiol., 57, 236 (1991))、Alcaligenes denitrificans ssp. xylosoxidans JE75(Arch. microbiol., 154, 410 (1990))、Alcaligenes eutrophus JMP134(Appl. Environ. Microbiol., 56, 1179 (1990))、Alcaligenes eutrophus FERM-13761(特開平07-123976号公報)、Pseudomonas aeruginosa JI104(特開平07-236895号公報)、Mycobacterium vaccae JOB5(J. Gen. Microbiol., 82, 163 (1974)、Appl. Environ. Microbiol., 54, 2960 (1989)、ATCC 29678)、Pseudomonas putida BH (下水道協会誌, 24, 27 (1987))、Pseudomonas sp. strain G4 (Appl. Environ. Microbiol., 52, 383 (1986)、同53, 949 (1987)、同54, 951 (1989)、同56, 279 (1990)、同57, 193 (1991)、USP 4925802, ATCC 53617、この菌株は、初めPseudomonas cepaciaと分類されていたが、後にPseudomonas sp.に分類が変更された)、Pseudomonas mendocina KR-1 (Bio/Technol., 7, 282 (1989))、Pseudomonas putida F1 (Appl. Environ. Microbiol.,54, 1703 (1988)、同54, 2578 (1988))、Pseudomonas fluorescens PFL12(Appl. Environ. Microbiol.,54, 2578 (1988))、Pseudomonas putida KWI-9(特開平06-70753号公報)、Pseudomonas cepacia KK01(特開平06-227769号公報)、Nitrosomonas europaea(Appl. Environ. Microbiol.,56, 1169 (1990))、Lactobacillus vaginalis sp.nov(Int. J. Syst. Bacteriol., 39, 368 (1989)、ATCC 49540)、Nocardia corallina B-276(特開平08-70881号公報、FERM BP-5124、ATCC 31338)などが報告されている。上記のTCE分解菌は、付記した各文献にその菌株名、寄託番号と寄託機関等が明示されており、菌の特定ができ、また、正規の手続きを踏み、これら寄託機関等から分譲を受けることにより、容易に入手することができるものである。 しかしながら、これらの分解菌を実際の環境浄化処理に用いる際には、TCE等の揮発性有機塩素化合物分解活性の発現最適化、および分解活性の継続的維持を図ることが、さらに重要な課題となる。これらの分解菌の分解活性発現には、種々の誘導物質添加が有効であることが判明しており、系内に誘導物質を加えることで、分解活性の発現と維持を図る手法が利用される。例えば、フェノール、トルエン、メタンなどを誘導物質として利用した環境浄化処理においては、これらの誘導物質の枯渇は、そのままTCE等の揮発性有機塩素化合物の分解停止をもたらす。従って、誘導物質の濃度をある水準以上に維持するため、継続的に誘導物質を供給する必要がある。その一方で、本来、分解浄化の目的物質であるTCE等の揮発性有機塩素化合物とこれら誘導物質との間で、その基質親和性を比較すると、しばしば、分解浄化の目的物質自体の基質親和性は誘導物質よりかなり低いことがある。この状況では、誘導物質を系内に添加したため、反って、効率の良い分解浄化が困難となるといった相反する課題を抱えることも起こる。さらに、実際の処理現場においては、誘導物質濃度の緻密な制御は望むべくもなく、浄化処理の安定性、再現性について本質的な課題を抱えている。
【0007】
また、添加した誘導物質が環境中に流出してしまう危険性も指摘されている。例えば、フェノールやトルエンといった芳香族化合物は、特定の菌株に対しては、きわめて有効な誘導物質であるが、その毒性が高いことから環境中への放出は論外である。また、メタンも有効な誘導物質ではあるが、可燃性の気体であり、環境中に導入して、その濃度を制御することは相当の困難を伴い、また、引火等による火災発生等、多大な危険性をも内在している。
【0008】
このように分解微生物を利用した実際の環境浄化においては、誘導物質を利用した分解活性の継続的な発現と分解浄化効率の上昇とは、互いに相容れない困難な課題を持つものである。加えて、環境浄化を行ったため、別の環境汚染を引き起こす危険性もあり、微生物を利用した環境浄化処理の実用化おいて、その普及を阻む大きな課題となっていた。
【0009】
この課題を回避するために、ネルソンらは、揮発性有機塩素化合物の分解誘導物質としてトリプトファンを用いる方法を開発した(特開平4-502277号公報)。しかしながら、上述した誘導物質添加に固有の問題である毒性および危険性に関しては回避可能であるものの、トリプトファンは高価な物質であり、環境中に過剰の炭素源および窒素源を添加すること自体が環境の富栄養化を招く点で、実用的に必ずしも好ましいものではない。また、TCE分解において、トリプトファンが拮抗阻害剤となる点について、何ら解決策になっていない。
【0010】
そこで、分解活性の発現に上記フェノールあるいはトルエンなどの毒性を持つ誘導物質を必要としない、分解菌の探索・創製、開発も進められた。例えば、シールズらは、誘導物質(この場合、フェノールあるいはトルエン)を必要とせずTCE分解能を有するシュードモナス・セパシア(ATCCへの寄託上は、分類をシュードモナス・スピーシズに変更)G4株の変異株を、トランスポゾンを用いた手法で取得している(Appl. Environ. Microbiol., 58, 3977 (1992)、PCT公開公報 WO 92/19738号)。また、メタン資化性TCE分解菌であるメチロシナストリコスポリウムOB3b株でも、誘導物質であるメタンを必要としないTCE分解変異株を取得したと報告されている(米国特許第5316940号)。さらには、特開平8-294387号公報において、ニトロソグアニジンによって変異誘導操作を行い、誘導物質を必要とせず揮発性有機塩素化合物および芳香族化合物を分解しうる菌株JM1株(ブタペスト条約に基づく国際寄託の番号:FERM BP-5352)が報告されている。
【0011】
一方で、誘導物質の環境への流出を回避する方法の一つとして、前培養時に誘導物質を利用してTCE分解能を発現させ、前培養で増殖させた菌を休止菌体として修復現場に投与する試みも検討されてきている(Environ. Sci. Technol., 30, 1982 (1996))。
【0012】
実際に、前述した誘導物質添加を必須としない変異菌株や前培養で増殖させた菌を休止菌体などを利用し、修復現場における誘導物質添加を不要とした浄化処理においては、上述の誘導物質を用いる場合に比較すれば、浄化処理の制御が容易となり、また、浄化効率についても上昇することが報告されている。しかしながら、必要に応じた分解活性の発現および分解の継続に関しては、分解菌の増殖制御が今後解決すべき、大きな課題となっている。また、休止菌体を利用する場合、そもそも投入した休止菌体が分解しうるTCE分解量あるいは分解継続時間のキャパシティーを超えると、それ以降のTCE分解は不可能である。加えて、さらに大規模スケールで実施する場合には、休止菌体化の処理自体に時間を要することから、その間に幾ばくかの分解活性低下が起こることは免れない。これらの制約を含むため、処理装置が大規模なものとなり、処理作業が煩雑となり、それに付随して、低コスト化を阻害する実務的な欠点となている。
【0013】
そこで現在、TCE分解酵素であるオキシゲナーゼあるいはハイドロキシラーゼをコードする遺伝子領域を含むDNA断片を組み込んだプラスミドを宿主微生物に導入し、無害な誘導物質により、あるいは誘導物質が存在しない状況でも構成的にTCE分解活性を発現させようとする試みがなされてきている。例えば、シュードモナス・メンドシナ KR-1(特開平2-503866号公報)、シュードモナス・プチダ KWI-9(特開平6-105691号公報)、シュードモナス・プチダ BH(地下水・土壌汚染とその防止対策に関する研究集会 第3回講演集, 213 (1994))、シュードモナス・プチダ F1由来のトルエン分解酵素遺伝子とシュードモナス・シュードアルカリゲネス由来のビフェニル分解酵素遺伝子のハイブリッド遺伝子を保持する形質転換体(特開平7-143882号公報)などが挙げられる。
【0014】
このように、塩素化エチレン化合物等の難分解性である揮発性有機塩素化合物やフェノールやトルエン等の芳香族化合物を、微生物を利用して分解処理する際の誘導物質添加に付随する諸問題、あるいは分解酵素活性発現の最適化に関する問題の多くは回避されつつある。このような改善の結果、微生物の分解による環境修復処理について、相当広い範囲にわたって、技術的には充分実用に耐えうる水準に達しつつある。
【0015】
一方、微生物分解による有機化合物汚染環境の修復処理においても、長期間の浄化を必要とする場合が少なからず存在している。この長期間の浄化に適用する際には、微生物の分解活性を長期間にわたり維持する必要性が生じる。しかしながら、現状の技術においては、長期間の浄化に要する月日を考えると、微生物の分解活性がきわめて短期間で失活してしまうという課題が依然未解決のまま残されている。
【0016】
その他、微生物分解による有機化合物汚染環境の修復処理においては、利用する微生物の培養に時間やコストがかかることもあり、培養した微生物の能力を最大限に有効活用することが強く望まれる。従って、上記の微生物の分解活性がきわめて短期間で失活してしまうという課題を解決する手段が待望される。
【0017】
この微生物の分解活性が短期間で失活してしまう現象の原因としては、分解酵素の菌体内での自己消化、分解に必要なエネルギーの不足、分解酵素発現そのものに由来する毒性、分解中間産物による毒性などが考えられているが、この中でも、分解中間産物による毒性、分解酵素発現そのものに由来する毒性の問題は、毒性による微生物自体の損傷や死滅、分解酵素の不活性化等を伴い、処理目的とする有機化合物に対する微生物分解活性の本質的な消失という意味で、大変重要な問題となる。この分解中間産物による毒性、分解酵素発現そのものに由来する毒性の問題を解消することは、培養した微生物の能力を最大限に有効活用する上でも必要である。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題を解決するもので、本発明の目的は、難分解性である揮発性有機塩素化合物等の分解活性を示す微生物に対して、その分解酵素発現そのものに由来する毒性や酵素反応により生成する分解中間産物による毒性の影響を除去する方法を提供することにある。より具体的には、毒性を示す分解中間産物の更なる分解を行う酵素、あるいは、分解酵素発現そのものに由来し、細胞毒性を有する物質を生成する副次的な酵素反応を阻害又は抑制する酵素などを、難分解性である揮発性有機塩素化合物等の分解活性を示す微生物自体に生産させて、これら毒性物質を逐次除去する方法を提供することにある。加えて、本発明は、前記の分解酵素発現そのものに由来する毒性や酵素反応により生成する分解中間産物による毒性の影響を除去する方法を利用して、微生物を利用した難分解性である揮発性有機塩素化合物等の分解処理の効率化を図る方法の提供をも、その目的とする。さらには、本発明の真の目的は、前記の分解処理の効率化を図る方法を利用した、高い効率を長期にわたり維持できる微生物を用いる難分解性である揮発性有機塩素化合物等の分解・処理方法、また、同分解・処理方法を環境汚染の修復に利用する方法を提供することにある。
【0019】
【発明を解決するための手段】
前記の課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究を進め、分解中間産物による毒性あるいは分解酵素発現そのものに由来する毒性による分解活性の低下を抑制する機能を有する酵素を探索したところ、微生物をこれら難分解性の有機化合物に接触せしめて分解を行わせる際に、分解系自体の酵素、蛋白質群とともに、グルタチオンレダクターゼを共発現あるいは過剰発現させることにより、分解中間産物による毒性あるいは分解酵素発現そのものに由来する毒性を効果的に抑制・無害化できることを見出した。本発明は、係る知見に基づき完成されたものである。
【0020】
すなわち、本発明の微生物を用いる有機化合物分解処理の効率化方法は、処理の目的とされる有機化合物に対して、前記有機化合物の分解能を有する微生物を接触せしめて分解を行わせる際に、前記有機化合物自体の分解能を有する酵素蛋白質系の発現に加えて、前記微生物にグルタチオンレダクターゼを共発現させることを特徴とする方法である。また、本発明の微生物を用いる有機化合物分解処理の方法は、処理の目的とされる有機化合物の分解能を有する微生物であり、かつ、前記有機化合物自体の分解能を有する酵素蛋白質系の発現に加えて、グルタチオンレダクターゼを共発現する前記微生物を、前記有機化合物に接触せしめて分解を行わせることを特徴とする方法である。
【0021】
あるいは、本発明の微生物を用いる有機物で汚染された環境修復の効率化方法は、微生物を用いて有機化合物により汚染された環境を修復するに際し、その修復の効率化を行う方法であって、環境汚染を引き起こしている有機化合物に対して、前記有機化合物の分解能を有する微生物を接触せしめて分解を行わせる際に、前記有機化合物自体の分解能を有する酵素蛋白質系の発現に加えて、前記微生物にグルタチオンレダクターゼを共発現させることを特徴とする方法である。また、本発明の微生物を用いる有機物で汚染された環境の修復方法は、微生物を用いて有機化合物により汚染された環境を修復する方法であって、汚染を引き起こしている有機化合物の分解能を有する微生物であり、かつ、前記有機化合物自体の分解能を有する酵素蛋白質系の発現に加えて、グルタチオンレダクターゼを共発現する前記微生物を、前記有機化合物に接触せしめて分解を行わせることを特徴とする方法である。
【0022】
本発明の方法において、共発現されるグルタチオンレダクターゼの作用は、以下に説明する機構により、分解中間産物による毒性あるいは分解酵素発現そのものに由来する毒性による分解活性の低下を抑制するものである。
【0023】
微生物は、有害な外来化合物や外界からの各種のストレスに起因する障害・損傷等の排除、あるいは、これら障害・損傷等の修復を行うため、いくつかの生体防御機能を有している。この生体防御機能に深く関与する酵素・蛋白質の一つとして、グルタチオントランスフェラーゼが知られている。グルタチオントランスフェラーゼは、微生物だけでなく、より高等な動物細胞においても、広く見出される酵素であり、基質となるグルタチオンの転位反応を触媒する酵素である。具体的には、グルタチオントランスフェラーゼは、細胞自体の生体防御機能の一翼を担う酵素であり、例えば、酸化ストレスによって生じる過酸化物を還元して無毒化する、あるいは、細胞内に侵入・取り込まれる様々な外来化合物の抱合、細胞外への排出といった生体防御機能に関与する。前記の過酸化物の還元無毒化、外来化合物の抱合、細胞外への排出などは、グルタチオンとグルタチオントランスフェラーゼが協調して機能することにより達成されることが知られている。
【0024】
なお、グルタチオンは、グルタミン酸、システイン及びグリシンから成るペプチド(L-γ-グルタミル-L-システイニルグリシン)化合物であり、ほぼ全ての細胞内に存在し、微生物自らが生合成している。グルタチオンには、様々な生理活性が見出され、その機能はγ-グルタミル基とシステイン残基のSH基に基づくとされている。グルタチオンは還元能を持ち、他の分子(低分子、酵素、タンパク質)にSH基を新たに生成させたり、SH基を維持させる。ある種の酵素タンパク質では、グルタチオンと混合ジスルフィドを形成し、酵素活性が調節されることもある。また、酸化ストレスによって生じる過酸化物の還元無毒化、あるいは、様々な外来化合物の抱合、排出といった生体防御という点でも非常に重要な働きをしている。その他、グルタチオンの重要な機能として、酸化還元系の維持がある。生体内では、通常、おおよそ95%以上が還元型(GSH)で存在する。還元型(GSH)と酸化型(GSSG)との酸化還元反応は、ペントースリン酸サイクルと共役し、還元酵素と酸化酵素、つまりグルタチオンレダクターゼとグルタチオンオキシダーゼの両酵素によって行われる。
【0025】
特に、上述する生体維持機能におけるグルタチオントランスフェラーゼの酵素反応や酸化ストレス下での酸化還元系の維持では、主に還元型グルタチオン(GSH)が使用(消費)され、酸化型グルタチオン(GSSG)となる。この細胞内に蓄積してくる酸化型グルタチオン(GSSG)から還元型グルタチオン(GSH)への再生(変換)は、グルタチオンレダクターゼによりなされる。逆に、還元が進み、酸化型グルタチオン(GSSG)が、極端に減少する際には、グルタチオンオキシダーゼが機能する。グルタチオントランスフェラーゼを有する生物は、皆、このグルタチオン酸化還元状態の調整を行うため、固有のグルタチオンレダクターゼとグルタチオンオキシダーゼを有している。
【0026】
本発明の方法において、処理の対象である塩素化エチレン化合物や芳香族化合物などの微生物分解に供される酵素群は、微生物が発現する各種のオキシゲナーゼまたはハイドロキシラーゼ酵素群である。これら酵素の反応機作として、酵素系はNADHから電子を受け取り、この電子と酸素により酵素活性中心が活性化され、この活性中心において、基質となる有機化合物に酸素を添加することが知られている。この電子のやりとりを行う酵素系においては、ある程度の確率で電子の漏えいが起こることが知られている。すなわち、酵素活性中心の活性化ではなく、ある頻度で、好ましからざる副次的な反応が起こり、例えば、この漏えいした電子が酸素にわたると、スーパーオキシドアニオン、過酸化水素、ヒドロキシラジカルなどの活性酸素種が生じることが知られている。上に述べた塩素化エチレン化合物や芳香族化合物の微生物分解に供される酵素群も、電子のやりとりを行う酵素系であり、分解酵素発現による毒性も、このような副次的な反応で生じる種々の活性酸素種がその原因である可能性が高い。同じく、分解中間産物による毒性も、例えば、中間産物が過酸化物であり、それに伴い、細胞毒性を示すものも多い。あるいは、分解中間産物自体は、毒性を示すものの、それを還元すると無害化されるものも少なくない。
【0027】
上に記したように酸化ストレスによって生じる過酸化物の還元無毒化、あるいは、様々な外来化合物の抱合、排出といった生体防御機能はグルタチオンとグルタチオントランスフェラーゼが協調して機能することにより行われていることが知られいる。本発明の方法においても、微生物自体の酵素反応により生産される分解中間産物による毒性、あるいは分解酵素発現そのものに由来する毒性副産物の除去、無害化も、本質的には、このグルタチオンとグルタチオントランスフェラーゼが協調して機能する生体防御機能を利用するものである。
【0028】
しかしながら、微生物自体の酵素反応が活発であることに伴い、前記グルタチオンとグルタチオントランスフェラーゼが協調して機能する生体防御機能により、除去・無害化される毒性を持つ酵素反応により生産される分解中間産物、あるいは分解酵素発現そのものに由来する毒性副産物の量も多くなる。そのため、細胞内の還元型グルタチオンが急速に消費され、グルタチオンとグルタチオントランスフェラーゼが協調して機能する生体防御機能自体の能力が低下していく。すなわち、還元型グルタチオンが減少するため、前記の生体防御機能が機能できなくなる。その結果、前記の生体防御機能で除去・無害化できない、毒性を持つ分解中間産物、あるいは分解酵素発現そのものに由来する毒性副産物が蓄積してゆき、微生物自体に障害・損傷等が引き起こされる。それに伴い、微生物が示す分解活性も低下することになる。
【0029】
本発明の方法では、上記のグルタチオントランスフェラーゼの関与する生体防御機能において還元型グルタチオンが消費され、酸化型グルタチオンとなったものを、予め、微生物内にグルタチオンレダクターゼを人為的に共発現または過剰発現させておくことで、速やかに酸化型グルタチオンから還元型グルタチオンへ再生するものである。つまり、還元型グルタチオンが大量に消費され、酸化型グルタチオンとなるが、一方で、共発現または過剰発現させたグルタチオンレダクターゼの作用で、酸化型グルタチオンから還元型グルタチオンへの再生がなされるので、上記のグルタチオントランスフェラーゼの関与する生体防御機能を維持することができる。
【0030】
この効果により、毒性を持つ分解中間産物、あるいは分解酵素発現そのものに由来する毒性副産物の蓄積を防ぐことができ、従って、微生物が示す分解活性の低下を抑制することができる。さらに、グルタチオンレダクターゼを人為的に共発現または過剰発現させた際にも、微生物自体の分解酵素系の発現には何らの悪影響も与えることもないので、分解活性の低下の問題を解決することができたものである。特に、反複して分解処理を行う時、分解処理に関わる時間経過とともに、前記分解活性の低下が進行又は誘起されるが、本発明の方法を適用すると、毒性を示す分解中間産物または副次反応産物を逐次、細胞外へ排出又は還元・無害化を行うことができる。従って、分解活性低下の抑制効果は、本質的に時間経過に依存することなく、微生物が生存する限り、長期にわたって継続するものとなる。
【0031】
加えて、これらの効果は、微生物自体が共発現するグルタチオンレダクターゼを用いているため、戸外で実施されることも多い、微生物による環境の修復において、特に有用である。つまり、本発明による汚染物質の分解処理の効率化方法において、仮に汚染物質が存在しないならば、微生物が生存できる条件を満しさえすれば、汚染物質が継続的に供給される時でも、持続的な作用を示すものとなる。
【0032】
このような環境修復に利用する微生物において、目的有機化合物の分解酵素とともに、グルタチオンレダクターゼを共発現あるいは過剰発現させる方法には、従来提供されている遺伝子工学の手法を用いることができる。すなわち、遺伝子工学的手法を利用して、微生物にグルタチオンレダクターゼ遺伝子を組み換え導入し、発現させる方法が適用できる。さらに、この遺伝子組み換えに用いるグルタチオンレダクターゼ遺伝子の起源についても、特にその制約はない。例えば、グルタチオンレダクターゼ遺伝子として、大腸菌由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子、具体的には、大腸菌K-12株(宝酒造)由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子などを用いると好ましい。多くの生物は、それぞれグルタチオンレダクターゼを有しており、そのアミノ酸配列、あるいは、遺伝子の塩基配列の特定されているものも多い。従って、これら既知のグルタチオンレダクターゼをコードする遺伝子を利用することができる。なお、グルタチオンレダクターゼ遺伝子を組み換え導入し、発現させる方法を適用すると、本来、微生物自体もグルタチオンレダクターゼを発現している場合には、過剰発現している状態となる。
【0033】
また、本発明の方法に用いる分解微生物としては、芳香族化合物および/または有機塩素化合物を分解し得る微生物であれば、いかなる属に分類されるものでもよく、具体的には、例えば、各種の塩素化エチレン化合物などの有機塩素化合物を分解し得る微生物が採取されている次の属から選択することができる。従って、エシェリチア(Esherichia)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、バルクホルデリア(Burkholderia)属、アシネトバクター(Acinetobacter)属、モラセラ(Moraxella)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、ビブリオ(Vibrio)属、ノカルジア(Nocardia)属、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、メチロシナス(Methylosinus)属、メチロモナス(Methylomonas)属、ベルキア(Welchia)属、メチロシスチス(Methylocystis)属、ニトロゾモナス(Nitrosomonas)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、に属する微生物などが挙げられる。
【0034】
これらの微生物を利用する環境浄化の対象としての汚染物質は、難分解性の有機化合物であり、具体的には、トリクロロエチレン(TCE)やジクロロエチレン(DCE)等の塩素化エチレン化合物を挙げることができる。また、本発明の方法は、上記の汚染物質で汚染された環境が、液体、土壌、空気いずれであっても、その浄化に等しく用いることができる。すなわち、利用する微生物に汚染物質を接触することができる限り、汚染物質の存在形態には依存するものではない。
【0035】
【発明の実施の形態】
本発明の環境修復の効率化方法では、上述するように利用する微生物に汚染物質を接触することができる限り、汚染物質の存在形態には依存しない。従って、有機化合物によって汚染された環境が地下水や廃液などの液体である場合には、最も容易に実施することができる。例えば、微生物を担体に担持しておき、この担体に担持した微生物に、処理すべき有機化合物を含む液体、つまり汚染された地下水や排水を接触させる態様にて実施することができる。具体的には、担体に担持した微生物を容器に収納しておき、その容器の一端から、処理すべき有機化合物を含む液体を導入し、処理後の液体を前記容器の他端から外に取り出す形態を採ると好ましい。必要があれば、前記の分解処理を、複数段繰り返し、段階的に処理すべき有機化合物濃度を低減する方式を採用することもできる。
【0036】
処理する対象が、処理すべき有機化合物により汚染された土壌である場合にも、本発明の方法を適用することができる。例えば、微生物を含む液、菌懸濁液、容器に収納する、担体に担持した微生物を浸す液などと、土壌と微生物を含む液などとを接触させ、土壌を汚染している有機化合物を微生物を含む液などに移行させることで、分解処理が行える。より具体的には、土壌中に導入することで実施することもでき、前記の土壌中への導入に際し、導入する土壌に設けた注入井において、微生物を含む液を導入する態様などが好ましい。
【0037】
逆に、微生物を含む液中に、処理すべき有機化合物により汚染された土壌を導入する方式をとることもできる。微生物を含む液と土壌とを混合する態様としてもよい。また、微生物を担持した担体と土壌とを接触させる態様としてもよい。これらの態様では、土壌を汚染している有機化合物は、接触・混合に伴い、微生物を覆う液や担体を浸している液に徐々に移行して、分解処理がなされるように、適度の液分を保持するのが望ましい。
【0038】
本発明の方法、特に環境修復の効率化方法は、処理すべき有機化合物により汚染された空気の浄化にも適用できる。例えば、処理すべき有機化合物により汚染された空気を水で洗浄し、この洗浄水に取り込んだ、処理すべき有機化合物の処理を行う間接的な手段を採ることができる。あるいは、処理すべき有機化合物により汚染された空気で水などを曝気して、水など液体に処理すべき有機化合物を取り込ませる方式を採用するとよい。より具体的には、微生物を含む液中に、汚染された空気を直接導入する方法、ないしは、微生物を担持した担体と空気とを接触させる態様をとることができる。さらには、微生物を担持した担体と空気とを接触させるに際して、微生物を担持した担体を容器に収納し、前記容器の一端から汚染された空気を導入し、他端から処理された空気を前記容器外へ排出する態様とすると好ましい。必要があれば、前記の分解処理を、複数段繰り返し、段階的に処理すべき有機化合物濃度を低減する方式を採用することもできる。
【0039】
本発明の方法は、特には、環境修復の効率化方法を適用する要望が高い環境汚染は、環境を汚染している有機化合物が、難分解性であり、揮発性も高い有機化合物である場合である。なかでも、難分解性であり、揮発性も高い有機化合物のうち、溶剤等として利用されている塩素化脂肪族化合物、より具体的には、トリクロロエチレン、またはジクロロエチレン、つまり、trans−1,2-ジクロロエチレン、cis-1,2-ジクロロエチレン、1,1-ジクロロエチレンが処理の対象とする場合、本発明の方法を採用するのが好ましいものである。特に、トリクロロエチレン、またはジクロロエチレンによる汚染では、土壌の汚染、地下水等の水質汚染、その揮発性に起因する空気の汚染、以上の三種の汚染がともに存在しており、本発明の方法を適用すると好ましい。
【0040】
本発明の方法を実施するに際し、用いることができる微生物の一つであるバルクホルデリア・セパシア KK01株(ブタペスト条約に基づく国際寄託の番号:FERM BP-4235)は特公平8-24589号特許公告公報においてフェノール、クレゾール等の芳香族化合物を分解する菌として公告された菌株であり、また、特開平6-296711号公報において、フェノール等の芳香族化合物を誘導物質としてTCE等の有機塩素化合物を分解することが開示されている。
【0041】
本発明の方法を実施するに際し、用いることができる微生物の一つであるJM1株(ブタペスト条約に基づく国際寄託の番号:FERM BP-5352)は、上記J1株を、変異原を用いた変異操作によって変異させて取得した、誘導物質を用いることなくTCE等の有機塩素化合物を分解することができる変異株であることが、特開平8-294387号公報に開示されている。なお、本菌株:JM1株は、当初コリネバクテリウム属に属しているものとして、「コリネバクテリウム・スピーシズJM1株」と表示したが、後の再検討により本菌株は“コリネバクテリウム属に属さない”と認められたため、微生物の識別の表示を「JM1株」と変更した。
【0042】
上記のバルクホルデリア・セパシア KK01株(FERM BP-4235)やJM1株(FERM BP-5352)などは、TCE等の有機塩素化合物を分解することができる分解酵素系を保持しているので、例えば、大腸菌由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子、具体的には、大腸菌K-12株(宝酒造)由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子などを用いて、遺伝子組み換えを行い、グルタチオンレダクターゼを共発現する形質転換体として、本発明において利用すると好ましい。これらの菌株以外に、上で述べた種々の属に属する芳香族化合物および/または有機塩素化合物を分解し得る微生物を利用して、例えば、大腸菌由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子、具体的には、大腸菌K-12株(宝酒造)由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子などを用いて、遺伝子組み換えを行い、グルタチオンレダクターゼを共発現する形質転換体として、本発明において利用することもできる。
【0043】
本発明の方法を実施するに際し、用いることができる微生物の一つであるバルクホルデリア・セパシア KK01株由来の有機塩素化合物分解遺伝子により形質転換した組み換え大腸菌としては、例えば、E. coli TMOKK01 (FERM BP-6916)株である。この形質転換大腸菌は、バルクホルデリア・セパシア KK01株由来の有機塩素化合物分解遺伝子を保持するが、加えて、例えば、大腸菌由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子、具体的には、大腸菌K-12株(宝酒造)由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子などを用いて、遺伝子組み換えを行い、グルタチオンレダクターゼを共発現する形質転換体として、本発明において利用すると好ましい。その他、同様に種々の菌株に由来する外来の有機塩素化合物分解遺伝子を保持し、有機塩素化合物分解活性を付与された形質転換大腸菌についても、例えば、大腸菌由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子、具体的には、大腸菌K-12株(宝酒造)由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子などを用いて、遺伝子組み換えを行い、グルタチオンレダクターゼを共発現する形質転換体として、本発明において利用することができる。
【0044】
これら微生物の培養に使用する培地としては、基本的には生育に必要な炭素源、窒素源、リン源、無機塩類等を含んでいればよく、通常、各菌株の培養に利用される市販の液体培地、あるいは、各菌株が開示されている文献に記載されている液体培地などを用いるのが好ましい。従って、微生物を培養するために用いられる基本的な培地としては、その菌株が生育するために必要な成分が適量含有されていれば特に制限はなく、例えば、汎用されるLB培地、あるいはM9培地やMSB培地等の基礎塩培地を用い、生育に必要な炭素源等を適量添加して調製することができる。
【0045】
以下に、M9培地の組成を示す。
【0046】
Na2HPO4:6.2g
KH2PO4:3.0g
NaCl:0.5g
NH4Cl:1.0g (培地1リットル中;pH7.0)
培養は好気条件下で行なうことができ、液体培地中での培養でも、固体培地上での培養でもよい。なお、培養温度は、利用する微生物に依存して、適宜選択するが、通常15℃〜37℃の間で選択することが望ましい。
以下に、具体例を挙げて、本発明を実施する手順、また、本発明により得られる効率化の程度に関して、さらに詳しく説明する。
【0047】
【実施例】
(実施例1)
大腸菌 HB101 株由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子の取得
大腸菌HB101株を、50mlのLB培地で37℃、終夜培養した。培養後、集菌して、常法により全DNAを調製した。この全DNAをテンプレートとして、以下に示すプライマ1およびプライマ2を用いて、PCRを行いグルタチオンレダクターゼ遺伝子の増幅を行った。
プライマ1
5'-TCGCGGTAAGCTTCGATAAGGACAC-3'
プライマ2
5'-GAGCACACTAAGCTTAGCCCTTTAAC-3'
PCR反応は、市販のLA-PCRキット(宝酒造)を用い、その反応液組成、反応条件は、市販のキットに添付されるインストラクション(標準条件、手順書)に従った。このPCR反応により、約1400bpの増幅産物を得ることができた。この約1400bpの増幅産物を制限酵素HindIIIで完全分解し、市販されている広宿主域プラスミドベクタpBBR122(Mo Bi Tec)の制限酵素HindIII完全分解物に、市販のライゲーションキット(宝酒造)を用いてライゲーション反応を行った。得られるベクタを用いて、宿主大腸菌HB101株(宝酒造)を形質転換した。
【0048】
形質転換体の選択には、広宿主域プラスミドベクタpBBR122自体が有する選択マーカーを利用し、50μg/ml濃度のクロラムフェニコルを含有した寒天LB培地を用いた。前記クロラムフェニコルを含有した寒天LB培地上のコロニーとして選択された形質転換体複数株について、プラスミドベクタ内のグルタチオンレダクターゼ遺伝子の有無を確認した。グルタチオンレダクターゼ遺伝子が、広宿主域プラスミドベクタpBBR122に設計通りに挿入されているかのチェックは、アルカリ法により回収した組み換えプラスミドを制限酵素HindIIIで完全分解することにより行い、グルタチオンレダクターゼ遺伝子が挿入された組み換えプラスミドを保持する形質転換体のみを選別した。この選別された形質転換体を培養し、培養菌体を破砕し、プラスミドを分離回収することで、グルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えプラスミドを得ることができた。
【0049】
(実施例2)
JM1株のTCE分解における、共発現グルタチオンレダクターゼの効果(液体系)実施例1に記載の手法で調製されるグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えプラスミドを用いて、エレクトロポーレーション(Bio-Rad)法により、宿主のJM1株に導入した。得られる形質転換株は、宿主のJM1株(FERM BP-5352)と同様にTCE分解能を有し、新たに導入された大腸菌由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子から、グルタチオンレダクターゼの発現がなされる。
【0050】
エレクトロポーレーションに供する菌の培養条件、集菌条件などは、市販のエレクトロポーレーション装置に添付されるインストラクションに従った。装置の設定は、キャパシタンス25μF、抵抗値200Ωとし、供与するDNA量は1μgとした。また、導入菌株の懸濁液は、OD600が10となるように菌体密度を調製した液を100μl用いた。キュベットは0.2mmギャップのものを用い(Bio-Rad)、印可電圧は2.5kVとした。ここでキュベットは4℃にあらかじめ冷却しておいたものを用いた。エレクトロポーレーションの際の時定数は4.8msであった。
【0051】
上記の条件で、グルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えプラスミドを導入したJM1株の形質転換体の選択は、上記実施例1と同じく、広宿主域プラスミドベクタpBBR122自体が有するクロラムフェニコル耐性選択マーカーを利用し、100μg/ml濃度のクロラムフェニコルを含有した寒天M9培地(0.5%グルタミン酸ナトリウム含有)を用いた。
【0052】
前記のクロラムフェニコルを含有した寒天M9培地(0.5%グルタミン酸ナトリウム含有)上でコロニーを形成する菌株を、グルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えJM1株として選別した。採取したグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えJM1株を、0.5%グルタミン酸ナトリウム含有した液体M9培地200mlに接種し、500ml容振盪フラスコ中、25℃で振盪培養を行った。対数増殖後期にあたる、培養開始から20時間を経過した時点で、菌体を遠心分離により集菌した。集菌した菌体を、等量の炭素源を含まないM9培地に再懸濁し、27.5ml容バイアル瓶に10mlの菌懸濁液を注入した。また、別途、グルタチオンレダクターゼ遺伝子の組み換えを施していないJM1株、すなわち、宿主のJM1株自体も、同様に培養、集菌、懸濁し、その10mlの菌懸濁液を27.5ml容バイアル瓶に注入した。
【0053】
これら菌懸濁液を注入したバイアル瓶2本と、対照としてM9培地のみ10ml加えたバイアル瓶1本、合計3本のバイアル瓶に、各バイアル瓶中の液中濃度が12ppm程度になるようにTCE飽和水溶液所定量を加え、テフロンライナー付きブチルゴム栓及びアルミシールで密栓した。
【0054】
これら密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、バイアル瓶気相部分のTCE濃度を一定時間後にガスクロマトグラフィーで測定した。測定の後、栓を外して一旦開放し、再び、初期と同程度の液中濃度となるTCE飽和水溶液所定量を加えた後に密栓し直した。ただし、対照のバイアル瓶は、初期状態のままとした。次いで、再密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、一定時間が経過した時点で、バイアル瓶気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0055】
上記の測定と再密栓の操作を繰り返し、TCEの繰り返し分解における、共発現させたグルタチオンレダクターゼの効果を評価した。具体的には、1回目:1時間後、2回目:1時間後(合計2時間後)、3回目:1.5時間後(合計3.5時間後)、4回目:1.5時間後(合計5時間後)、5回目:1.5時間後(合計6.5時間後)、6回目:2時間後(合計8.5時間後)、7回目:2時間後(合計10.5時間後)、8回目:2時間後(合計12.5時間後)、9回目:10時間後(合計22.5時間後)の計9回の測定を行った。なお、この間、菌を維持するために、前記する3回目、5回目、7回目の測定を行う際、合計3回、エネルギー源としてホルムアルデヒドを各回菌懸濁液中において最終濃度1mMとなるように、バイアル瓶中に加えた。表1に、測定結果を示す。
【0056】
表1に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、6回目(合計8.5時間後)において、未分解のTCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解のTCEは測定されていない。7回目(合計10.5時間後)以降、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌においても、若干の未分解TCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌における未分解TCE量より、有意に少ない。この比較から、共発現してるグルタチオンレダクターゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。従って、グルタチオンレダクターゼを共発現させることにより、微生物によるTCEの分解効率を高くでき、また、その高い効率を長期間維持できる効果が得られることが示された。
【0057】
【表1】
Figure 0003768754
単位はppm、検出器の検出限界は0.1ppm、
ND:検出限界以下(≦0.1ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
(実施例3)
JM1株のDCE分解における、共発現グルタチオンレダクターゼの効果(液体系)上記のTCE分解と同じく、その他の塩素置換エチレンを分解する際にも、共発現させたグルタチオンレダクターゼにより、分解の効率化が達成できることを検証した。利用した菌は、実施例2に記載するグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えJM1株であり、宿主のJM1株(FERM BP-5352)の分解処理速度を対比させた。
【0058】
本例の試験においては、分解対象物質は、cis-1,2-ジクロロエチレン(cis-1,2-DCE)、trans-1,2-ジクロロエチレン、及び1,1-ジクロロエチレン(1,1-DCE)である。各ジクロロエチレンについて、実施例2と同様に、グルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えJM1株の菌懸濁液、宿主のJM1株の菌懸濁液、ならびに、対照としてM9培地のみをバイアル瓶中に注入した3本をそれぞれ用意した。各DCEについて、各バイアル瓶中の液中濃度が5.0ppmになるようにそれぞれ添加した。DCEを加えた後、各バイアル瓶をテフロンライナー付きブチルゴム栓及びアルミシールで密栓した。
【0059】
これら密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、バイアル瓶気相部分のDCE濃度を一定時間後にガスクロマトグラフィーで測定した。測定の後、栓を外して一旦開放し、再び、初期と同程度の液中濃度となるDCE飽和水溶液所定量を加えた後に密栓し直した。ただし、対照のバイアル瓶は、初期状態のままとした。次いで、再密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、一定時間が経過した時点で、バイアル瓶気相部分のDCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0060】
上記の測定と再密栓の操作を繰り返し、DCEの繰り返し分解における、共発現させたグルタチオンレダクターゼの効果を評価した。測定は基本的に実施例2と同様に行い、具体的には、1回目(1時間後)、2回目(1.5時間後、合計2.5時間後)、3回目(2時間後、合計4.5時間後)、4回目(2.5時間後、合計7時間後)、5回目(3時間後、合計10時間後)、6回目(12時間後、合計22時間後)の計6回の測定を行った。なお、この間、菌を維持するために、前記する1回目、3回目、5回目の測定を行う際、合計3回、エネルギー源としてホルムアルデヒドを各回菌懸濁液中において最終濃度1mMとなるように、バイアル瓶中に加えた。表2に、cis-1,2-DCEに関する測定結果を、表3に、cis-1,2-DCEに関する測定結果を、表4に、1,1-DCEに関する測定結果をそれぞれ示す。
【0061】
表2に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、3回目(合計4.5時間後)において、未分解のcis-1,2-DCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解のcis-1,2-DCEは測定されていない。4回目(合計7時間後)以降、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌でも、僅かに未分解のcis-1,2-DCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌において測定される未分解cis-1,2-DCE量と比較すると、遥かに少ない量である。この比較から、cis-1,2-DCEの分解においても、共発現してるグルタチオンレダクターゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。
【0062】
表3に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、3回目(合計4.5時間後)において、未分解のtrans-1,2-DCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解のtrans-1,2-DCEは測定されていない。5回目(合計10時間後)以降、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌でも、僅かに未分解のtrans-1,2-DCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌において測定される未分解trans-1,2-DCE量と比較すると、格段に少ない。この比較から、trans-1,2-DCEの分解においても、共発現してるグルタチオンレダクターゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。
【0063】
表4に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、3回目(合計4.5時間後)において、未分解の1,1-DCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解の1,1-DCEは測定されていない。4回目(合計7時間後)以降、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌でも、僅かに未分解の1,1-DCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌において測定される未分解1,1-DCE量と比較すると、有意に少ない。この比較から、1,1-DCEの分解においても、共発現してるグルタチオンレダクターゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。
【0064】
従って、グルタチオンレダクターゼを共発現させることにより、微生物による各DCEの分解効率を高くでき、また、その高い効率を長期間維持できる効果が得られることが示された。
【0065】
【表2】
Figure 0003768754
単位はppm、検出器の検出限界は0.1ppm、
ND:検出限界以下(≦0.1ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
【0066】
【表3】
Figure 0003768754
単位はppm、検出器の検出限界は0.1ppm、
ND:検出限界以下(≦0.1ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
【0067】
【表4】
Figure 0003768754
単位はppm、検出器の検出限界は0.1ppm、
ND:検出限界以下(≦0.1ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
本結果より、TCEの分解処理に加えて、JM1株(FERM BP-5352)を用いる液体系のDCEの分解処理においても、グルタチオンレダクターゼを共発現させる効果が示された。また、前記のグルタチオンレダクターゼを共発現させる効果自体は、DCEの種類、塩素置換の位置に実質的に依存していないことが分かる。
【0068】
(実施例4)
KK01株のTCE分解における、共発現グルタチオンレダクターゼの効果(液体系)実施例1に記載の方法.で調製したグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えプラスミドをエレクトロポーレーション(Bio-Rad)法により、バルクホルデリア・セパシア KK01株(FERM BP-4235)に導入した。得られる形質転換株は、宿主のKK01株(FERM BP-4235)と同様にTCE分解能を有し、新たに導入された大腸菌由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子から、グルタチオンレダクターゼの発現がなされる。
【0069】
エレクトロポーレーションに供する菌の培養条件、集菌条件などは、市販のエレクトロポーレーション装置に添付されるインストラクションに従った。装置の設定は、キャパシタンス25μF、抵抗値200Ωとし、供与するDNA量は1μgとした。また、導入菌株の懸濁液は、OD600が10となるように菌体密度を調製した液を100μl用いた。キュベットは0.2mmギャップのものを用い(Bio-Rad)、印可電圧は2.5kVとした。ここでキュベットは4℃にあらかじめ冷却しておいたものを用いた。エレクトロポーレーションの際の時定数は4.7 msであった。
【0070】
上記の条件で、グルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えプラスミドを導入したKK01株の形質転換体の選択は、上記実施例2と同じく、広宿主域プラスミドベクタpBBR122自体が有する選択マーカーを利用し、100μg/ml濃度のクロラムフェニコルを含有した寒天M9培地(0.5%グルタミン酸ナトリウム含有)を用いた。
【0071】
寒天M9培地(0.1%酵母エキス及び2mMフェノール含有)上でコロニーを形成する菌株を、グルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えKK01株として選別した。採取したグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えKK01株を、寒天を除き、前記寒天M9培地と同じ組成の液体M9培地200mlに接種し、500ml容振盪フラスコ中、25℃で振盪培養を行った。対数増殖後期にあたる、培養開始から24時間を経過した時点で、菌体を遠心分離により集菌した。集菌した菌体を、等量の炭素源を含まないM9培地に再懸濁し、27.5ml容バイアル瓶に10mlの菌懸濁液を注入した。
【0072】
また、別途、グルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えを施していないKK01株、すなわち、宿主のKK01株(FERM BP-4235)自体も、同様に培養、集菌、懸濁し、その10mlの菌懸濁液を27.5ml容バイアル瓶に注入した。
【0073】
これら菌懸濁液を注入したバイアル瓶2本と、対照としてM9培地のみ10ml加えたバイアル瓶1本、合計3本のバイアル瓶に、各バイアル瓶中の液中濃度が12ppm程度になるようにTCE飽和水溶液所定量を加え、テフロンライナー付きブチルゴム栓及びアルミシールで密栓した。
【0074】
これら密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、バイアル瓶気相部分のTCE濃度を一定時間後にガスクロマトグラフィーで測定した。測定の後、栓を外して一旦開放し、再び、初期と同程度の液中濃度となるTCE飽和水溶液所定量を加えた後に密栓し直した。ただし、対照のバイアル瓶は、初期状態のままとした。次いで、再密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、一定時間が経過した時点で、バイアル瓶気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0075】
上記の測定と再密栓の操作を繰り返し、TCEの繰り返し分解における、共発現させたグルタチオンレダクターゼの効果を評価した。具体的には、1回目:1時間後、2回目:1時間後(合計2時間後)、3回目:1.5時間後(合計3.5時間後)、4回目:1.5時間後(合計5時間後)、5回目:1.5時間後(合計6.5時間後)、6回目:2時間後(合計8.5時間後)、7回目:2時間後(合計10.5時間後)、8回目:2時間後(合計12.5時間後)、9回目:10時間後(合計22.5時間後)の計9回の測定を行った。その他の操作は、上記実施例2に記載の手順に準じた。表5に、測定結果を示す。
【0076】
【表5】
Figure 0003768754
単位はppm、検出器の検出限界は0.1ppm、
ND:検出限界以下(≦0.1ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
表5に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、7回目(合計8.5時間後)において、未分解のTCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解のTCEは測定されていない。8回目(合計12.5時間後)以降、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌でも、僅かに未分解のTCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌において測定される未分解TCE量と比較すると、格段に少ない。この比較から、共発現してるグルタチオントランスフェラーゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。従って、上記のJM1株と同じくKK01株(FERM BP-4235)においても、グルタチオンレダクターゼを共発現させることにより、微生物によるTCEの分解効率を高くでき、また、その高い効率を長期間維持できる効果が得られることが示された。本結果より、KK01株(FERM BP-4235)においても、液体系のTCEの分解処理におけるグルタチオンレダクターゼの効果が示された。
【0077】
(実施例5)
グルタチオンレダクターゼ遺伝子の取得(2)
グルタチオンレダクターゼ遺伝子及びTCE分解酵素遺伝子とを組み込むプラスミドの構築
大腸菌HB101株を50mlのLB培地で37℃、終夜培養の後、常法により全DNAを調製した。この全DNAをテンプレートとして、以下に示すプライマ3およびプライマ4を用いてPCRを行い、グルタチオンレダクターゼ遺伝子の増幅を行った。
プライマ3
5'-TCGCGGTAATCTAGAATAAGGACAC-3'
プライマ4(プライマ2と同塩基配列)
5'-GAGCACACTAAGCTTAGCCCTTTAAC-3'
上述の実施例1に記載するPCR操作に準じ、LA-PCRキット(宝酒造)を用い、反応液組成、反応条件はキット添付のインストラクションに従った。PCRにより約1400bpの増幅産物を得ることができた。このPCR産物を制限酵素XbaIとHindIIIで完全分解し、特開平6−296711号公報に開示されているKK01株(FERM BP-4235)由来のTCE分解酵素遺伝子を含む発現ベクタpSE280(インビトロジェン)の制限酵素XbaIとHindIIIによる完全分解物に、ライゲーションキット(宝酒造)を用いてライゲーション反応を行った。得られるプラスミドは、大腸菌HB101株由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子およびKK01株(FERM BP-4235)由来のTCE分解酵素遺伝子を含むものとなる。このプラスミドを用いて、宿主のHB101株(宝酒造)を形質転換した。形質転換体の選択には、発現ベクタpSE280自体のアンピシリン耐性選択マーカーを利用し、100μg/ml濃度のアンピシリンを含有した寒天LB培地を用いた。
【0078】
採取した形質転換体において、グルタチオンレダクターゼ遺伝子がKK01株(FERM BP-4235)由来のTCE分解酵素遺伝子を含む発現ベクタpSE280に設計通りに挿入されているかのチェックは、アルカリ法により回収した組み換えプラスミドを制限酵素XbaIとHindIIIで完全分解することにより行った。その確認を経て、グルタチオンレダクターゼ遺伝子が挿入された組み換えプラスミドを保有する形質転換体を得ることができた。この選別された形質転換体を培養し、培養菌体を破砕し、プラスミドを分離回収することで、グルタチオンレダクターゼ遺伝子およびKK01株(FERM BP-4235)由来のTCE分解酵素遺伝子を含む組み換えプラスミドを得ることができた。
【0079】
(実施例6)
TCE分解遺伝子組み換え大腸菌のTCE分解における、共発現グルタチオンレダクターゼの効果(液体系)
実施例5の手法で調製した、KK01株(FERM BP-4235)由来のTCE分解酵素遺伝子及びグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えプラスミドを大腸菌HB101株(宝酒造)に導入した形質転換体を用いて、TCE分解における、共発現グルタチオンレダクターゼの効果を評価した。
【0080】
前記TCE分解酵素遺伝子およびグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換え大腸菌HB101株を寒天LB培地(100μg/mlアンピシリン含有)上に接種し、再度コロニーを選択した。コロニーを形成した菌株を、寒天を除き、前記寒天LB培地(100μg/mlアンピシリン含有)と同じ組成の液体LB培地200mlに接種し、500ml容振盪フラスコ中、37℃で振盪培養を行った。対数増殖後期にあたる、培養開始から12時間を経過する時点で、菌体を遠心分離により集菌し、等量の炭素源を含まないM9培地に再懸濁し、10mlの菌懸濁液を27.5ml容バイアル瓶に注入した。
また、グルタチオンレダクターゼ遺伝子で組み換えていないTCE分解遺伝子組み換えHB101株も同様に培養、集菌、懸濁し、10mlの菌懸濁液を27.5ml容バイアル瓶に注入した。これらのバイアル瓶と、対照としてM9培地のみ10ml加えたバイアル瓶合計3本に、バイアル瓶中の液中濃度が12ppm程度になるようにTCE飽和水溶液を加え、テフロンライナー付きブチルゴム栓及びアルミシールで密栓した。
【0081】
これら密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、バイアル瓶気相部分のTCE濃度を一定時間後にガスクロマトグラフィーで測定した。測定の後、栓を外して一旦開放し、再び、初期と同程度の液中濃度となるTCE飽和水溶液所定量を加えた後に密栓し直した。ただし、対照のバイアル瓶は、初期状態のままとした。次いで、再密栓したバイアル瓶を30℃で振とうし、一定時間が経過した時点で、バイアル瓶気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0082】
上記の測定と再密栓の操作を繰り返し、TCEの繰り返し分解における、共発現させたグルタチオンレダクターゼの効果を評価した。具体的には、1回目:1時間後、2回目:1時間後(合計2時間後)、3回目:1.5時間後(合計3.5時間後)、4回目:1.5時間後(合計5時間後)、5回目:1.5時間後(合計6.5時間後)、6回目:2時間後(合計8.5時間後)、7回目:2時間後(合計10.5時間後)、8回目:2時間後(合計12.5時間後)、9回目:10時間後(合計22.5時間後)の計9回の測定を行った。その他の操作は、上記実施例2に記載の手順に準じた。表6に、測定結果を示す。
【0083】
【表6】
Figure 0003768754
単位はppm、検出器の検出限界は0.1ppm、
ND:検出限界以下(≦0.1ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
表6に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、6回目(合計8.5時間後)において、未分解のTCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解のTCEは測定されていない。8回目(合計12.5時間後)以降、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌でも、僅かに未分解のTCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌において測定される未分解TCE量と比較すると、格段に少ない。この比較から、共発現してるグルタチオンレダクターゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。従って、上記のKK01株(FERM BP-4235)と同じくKK01株(FERM BP-4235)由来のTCE分解酵素遺伝子組み換えプラスミドにより形質転換された大腸菌HB101株においても、グルタチオンレダクターゼを共発現させることにより、微生物によるTCEの分解効率を高くでき、また、その高い効率を長期間維持できる効果が得られることが示された。
【0084】
本結果より、TCE分解酵素遺伝子組み換え大腸菌においても、液体系のTCEの分解処理におけるグルタチオンレダクターゼの効果が示された。
【0085】
(実施例7)
JM1株のTCE分解における、共発現グルタチオンレダクターゼの効果(土壌系)上記実施例2に示した液体系と同様に、TCE汚染土壌浄化に対しても、JM1株のTCE分解において、共発現グルタチオンレダクターゼが効果示すことを下記のとおり評価した。
【0086】
佐原通し砂(含水比13%、未滅菌)を68ml容バイアル瓶15本に各50g入れ、土壌中の濃度が5ppmとなるようにTCE飽和水溶液を加え、密栓して15℃で3日間静置して擬似TCE汚染土壌試料を作成した。
【0087】
その後、実施例2の手順に準じ、調製したグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えJM1株の菌懸濁液をバイアル瓶に5ml注入した。また、グルタチオンレダクターゼ遺伝子で組み換えていない宿主JM1株(FERM BP-5352)の菌懸濁液についても、同様に調製し、バイアル瓶に5ml注入した。さらに、対照として、もう1本にはM9培地のみ5ml添加した。なお、菌懸濁液の静置及びTCE分解実験は実際の土壌温度に近い20℃で行った。
【0088】
TCE分解実験は、バイアル瓶に菌懸濁液を注入した後、土壌中の液体部分にTCEがすべて溶解した場合の濃度が10ppmとなるようにTCE飽和水溶液を加え、テフロンライナーブチルゴム栓及びアルミキャップで完全密封した。これら密栓したバイアル瓶を20℃で静置し、バイアル瓶気相部分のTCE濃度を一定時間後にガスクロマトグラフィーで測定した。測定の後、栓を外して一旦開放し、再び、初期と同程度の液中濃度となるTCEガスを加えた後に密封し直した。ただし、対照のバイアル瓶は、初期状態のままとした。次いで、再密封したバイアル瓶を20℃で静置し、一定時間が経過した時点で、バイアル瓶気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0089】
上記の測定と再密栓の操作を繰り返し、TCEの繰り返し分解における、共発現させたグルタチオンレダクターゼの効果を評価した。具体的には、1回目:2時間後、2回目:3時間後(合計5時間後)、3回目:4時間後(合計9時間後)、4回目:5時間後(合計14時間後)、5回目:10時間後(合計24時間後)の計5回の測定を行った。なお、1回目、3回目、5回目のTCEを添加した後、密封する際に、エネルギー源としてのホルムアルデヒドを各最終濃度1mMとなるように加えた。その他の操作は、上記実施例2に記載の手順に準じた。表7に、測定結果を示す。
【0090】
【表7】
Figure 0003768754
単位はppm、検出器の検出限界は0.01ppm、
ND:検出限界以下(≦0.01ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
表7に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、3回目(合計9時間後)において、未分解のTCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解のTCEは測定されていない。4回目(合計14時間後)以降、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌でも、若干の未分解TCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌において測定される未分解TCE量と比較すると、遥かに少ない。この比較から、共発現してるグルタチオンレダクターゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。本結果より、JM1株を用いた土壌系のTCEの分解処理においても、共発現グルタチオンレダクターゼの効果が示された。すなわち、汚染土壌浄化においても、浄化処理が長期にわたる際にしばしば起こる微生物の示す分解活性の経時的な低下、失活を、グルタチオンレダクターゼを共発現させることで、効果的に抑制できる効果が示された。
【0091】
(実施例8)
JM1株のTCE分解における、共発現グルタチオンレダクターゼの効果(気相系)多孔質セルロース担体(平均ポアサイズ約500mm、直径約5mm)をオートクレーブにて滅菌し、室温以下に冷却したものをバイアル瓶3本に詰めた。実施例2に記載の手順に従い、調製したグルタチオンレダクターゼ遺伝子組み換えJM1株の菌懸濁液をバイアル瓶に15ml注入した。また、グルタチオンレダクターゼ遺伝子で組み換えていない宿主JM1株(FERM BP-5352)の菌懸濁液を別のバイアル瓶に15ml注入した。さらに、対照として、もう1本のバイアル瓶にはM9培地のみ15ml添加した。
【0092】
各バイアル瓶中に、TCE汚染空気(パーミエーターにて作成、ガス濃度100ppm)を1mlガスタイトシリンジで加え、密封した。25℃でTCE分解を行わせ、4時間経過した時点で、気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。測定の後、栓を外して一旦開放し、再び、初期と同程度の気相濃度となるTCEガスを加えた後に密封し直した。ただし、対照のバイアル瓶は、初期状態のままとした。次いで、再密封したバイアル瓶中で25℃でTCE分解を行わせ、4時間が経過した時点で、バイアル瓶気相部分のTCE濃度をガスクロマトグラフィーで測定した。
【0093】
4時間毎に、上記の測定と再密封の操作を繰り返し、TCEの繰り返し分解における、共発現させたグルタチオンレダクターゼの効果を評価した。具体的には、1回目:4時間後、2回目:4時間後(合計8時間後)、3回目:4時間後(合計12時間後)、4回目:4時間後(合計16時間後)、5回目:4時間後(合計20時間後)の計5回の測定を行った。なお、1回目、3回目、5回目のTCEガスを添加、密封する際に、エネルギー源としてのホルムアルデヒドを各最終濃度1mMとなるように加えた。その他の操作は、上記実施例2に記載の手順に準じた。表8に、測定結果を示す。表8に示すTCE濃度はガス濃度である。
【0094】
【表8】
Figure 0003768754
単位はppm(ガス濃度)、検出器の検出限界は10ppm、
ND:検出限界以下(≦10ppm)
GSHR:グルタチオンレダクターゼ
表8に示す結果のとおり、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌では、4回目(合計12時間後)において、未分解のTCEが測定されるが、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌では、未分解のTCEは測定されていない。5回目(合計20時間後)に至ると、グルタチオンレダクターゼを共発現してる菌でも、若干の未分解TCEが測定されるものの、グルタチオンレダクターゼを共発現していない菌において測定される未分解TCE量と比較すると、有意に少ない。この比較から、共発現してるグルタチオントランスフェラーゼにより、明らかに分解処理の効率化、あるいは、分解効率低下の抑制が図られていると判断される。本結果より、JM1株を用いた気相系のTCEの分解処理、つまり汚染空気浄化においても、共発現グルタチオンレダクターゼの効果が示された。すなわち、汚染空気浄化においても、浄化処理が長期にわたる際にしばしば起こる微生物の示す分解活性の経時的な低下、失活を、グルタチオンレダクターゼを共発現させることで、効果的に抑制できる効果が示された。
【0095】
【発明の効果】
本発明の汚染環境の修復方法では、分解活性を示す微生物において、グルタチオンレダクターゼを共発現させることにより、例えば、上述した塩素化エチレン化合物のような難分解性の揮発性有機化合物等で汚染された液体、土壌、及び空気の効率的な生物分解浄化処理が可能となる。特には、浄化処理が長期にわたる際に、グルタチオンレダクターゼを共発現させることにより、微生物の示す分解活性の経時的な低下、失活を効果的に抑制できる効果を持つ。従って、前記の分解活性の経時的な低下、失活を防ぐことに伴い、生物分解浄化処理の効率化が達成される利点を持つ。

Claims (9)

  1. 有機化合物分解能力を有する微生物を用いて、有機化合物により汚染された環境を修復するに際し、
    前記微生物に分解させる有機化合物が、塩素化脂肪族化合物であり、
    前記有機化合物分解能力を有する微生物に対して、グルタチオンレダクターゼ遺伝子を用いて遺伝子組換えを施して得られる、該有機化合物の分解酵素系とともに、該遺伝子組換えグルタチオンレダクターゼを共発現する能力を有する形質転換体を用い、
    前記形質転換体微生物に、有機化合物の分解酵素系とともに、組換えグルタチオンレダクターゼを共発現させて、前記微生物に前記有機化合物を接触せしめて分解を行わせる
    ことを特徴とする微生物を用いた有機化合物で汚染された環境修復の効率化方法。
  2. 前記微生物に分解させる有機化合物が、トリクロロエチレンまたはジクロロエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記有機化合物分解能力を有する微生物が、JM1株(FERM BP−5352)であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記有機化合物分解能力を有する微生物が、バルクホルデリア・セパシアKK01株(FERM BP−4235)であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  5. 前記有機化合物分解能力を有する微生物として、前記有機化合物の分解酵素遺伝子で組み換えられた微生物に対して、グルタチオンレダクターゼ遺伝子を用いて遺伝子組換えを施して得られる、該有機化合物の分解酵素系とともに、該遺伝子組換えグルタチオンレダクターゼを共発現する能力を有する形質転換体を用いる
    ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
  6. 前記有機化合物の分解酵素遺伝子で組み換えられた微生物が、バルクホルデリア・セパシアKK01株(FERM BP−4235)由来の有機化合物の分解酵素遺伝子で組み換えられた微生物であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記有機化合物の分解酵素遺伝子で組み換えられた微生物が、大腸菌を宿主とする形質転換体であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  8. 前記グルタチオンレダクターゼ遺伝子が、大腸菌K−12株由来のグルタチオンレダクターゼ遺伝子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 有機化合物分解能力を有する微生物を用いて、前記有機化合物により汚染された環境を修復するための装置であって、
    前記微生物に分解させる有機化合物が、塩素化脂肪族化合物であり、
    該装置は、前記請求項1に記載される有機化合物で汚染された環境修復の効率化方法を利用する装置の構成として、
    前記有機化合物分解能力を有する微生物として、該有機化合物の分解酵素遺伝子を有する微生物に対して、グルタチオンレダクターゼ遺伝子を用いて遺伝子組換えを施して得られる、該有機化合物の分解酵素系とともに、該遺伝子組換えグルタチオンレダクターゼを共発現する能力を有する形質転換体を選択し、
    前記有機化合物の分解酵素系とともにグルタチオンレダクターゼを共発現させた前記形質転換体微生物を担持させた担体を収納する容器と、
    修復すべき環境として、前記有機化合物により汚染された液体、土壌または空気を該容器内部へ導入するための導入手段と、
    修復を受けた前記液体、土壌または空気を該容器内部から排出するための排出手段とを有する
    ことを特徴とする装置。
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