JP3768360B2 - イオン源及びそのイオン源を用いた質量分析計 - Google Patents
イオン源及びそのイオン源を用いた質量分析計 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はイオン源の技術分野にかかり、特に、圧力を測定する機能が付加された質量分析計に用いられるイオン源に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に用いられている真空装置には、質量分析計が取付け可能になっており、真空装置内のガスの質量分析を行なうことができるようにされている。
このような質量分析計として、質量分析をするとともに真空装置内の圧力を測定することができる質量分析計が提案されている。
【0003】
図10の符号101に、圧力測定機能を付加した質量分析計に用いられるB−A型のイオン源を示す。
このイオン源101は、アノード電極102と、フィラメント103と、引出電極104、105と、イオンコレクタ109と、リペラー106とを有している。
【0004】
アノード電極102は、細いワイヤが円筒の鳥籠状に編まれることで構成されており、その両底面には通過孔137、138が設けられている。
アノード電極102の周囲には、タングステン等の細線からなるリング状のフィラメント103が配置されており、アノード電極102、フィラメント103を取り囲むように、円筒状のリペラー106が配置されている。
【0005】
アノード電極102の両底面近傍には、それぞれ引出電極104、105が配置されている。これらの引出電極104、105はともに金属からなり、円板形形状に形成されており、中央に円形の放出口107、108が設けられている。そして、一方の引出電極104側には、円板状のイオンコレクタ109が配置されており、他方の引出電極105側には、図示しない四重極子が対向配置されている。
【0006】
上記構成を有するイオン源101を有する質量分析計で、真空装置内のガスの質量分析及び圧力測定を行なうには、まず、イオン源101を真空装置内に挿入し、図示しない真空ポンプで真空装置内を真空排気して真空状態にする。真空状態でも、真空装置内にはガスが残留しており(以下で残留ガスと称する。)、残留ガスは、イオン源101のアノード電極102の内部にも導入される。
【0007】
イオン源101内に残留ガスが導入された状態で、フィラメント103に通電して加熱し、フィラメント103から熱電子を発生させる。アノード電極102には、フィラメント103に対して高い電圧が印加されており、発生した熱電子は、アノード電極102から引力を受けるので、アノード電極102へ向けて飛行する。
【0008】
熱電子の一部は、アノード電極102に衝突して消滅するが、図11や図12に示すように、多数の熱電子1111、1112はアノード電極102の内部に入射した後に、アノード電極102から射出される。射出された熱電子1111、1112は、再びアノード電極102から引力を受け、アノード電極102内へと入射し、アノード電極102を挟んで往復運動を繰り返し、最終的にはアノード電極102に衝突して、消滅する。
【0009】
こうしてアノード電極102を挟んで往復運動をする熱電子111は、アノード電極102内でガス分子112に衝突し、ガス分子をイオン化する。イオン化したガス分子(以下ガスイオンと称する。)は多数あるが、図11では、2個の熱電子1111、1112が、それぞれガス分子1121、1122と衝突した状態を示している。
【0010】
引出電極104、105には、アノード電極102に対して低い電圧が印加されており、ガスイオンは、引出電極104、105の両方から引力を受け、引出電極104、105の各放出口107、108のうち、いずれか一方を通ってアノード電極102の外部へと放出される。
【0011】
四重極子側の放出口108から放出されたガスイオン116は、小孔108から放出され、四重極子側の引出電極105に対向配置された四重極子に向けて飛行する。
【0012】
四重極子には、所定の交流電圧が印加されており、飛行してきたガスイオン116のうち、特定種類のガスイオンのみが四重極子を通過できるようにされている。四重極子の後方には、図示しない分析用イオンコレクタが配置されており、四重極子を通過したガスイオンを捕集できるようにされ、捕集されたイオンによるイオン電流を測定できるようにされている。こうしてイオン電流を測定すると、真空装置内の全ガス中に対する特定の一種類のガスイオンの量を求め、そのガスの分圧を測定することができる。
【0013】
四重極子に印加する交流電圧を変化させると、四重極子を通過できるガスイオンの種類も変わるので、この交流電圧を次々と変化させることで、真空装置内の各々のガスイオンの量を求めて質量分析を行なうことができる。
【0014】
他方、イオンコレクタ側の放出口107から放出されたガスイオン117は、イオンコレクタ109で捕集される。このときイオンコレクタ109では、アノード電極102内のガス中の全種類のガスイオンが捕集可能なので、イオンコレクタ109に流れるイオン電流を測定することにより、真空装置内の全種類のガスイオンの量を求め、全圧を測定することができる。
【0015】
上述したイオン源101を搭載した質量分析計は、真空状態での残留ガスの分圧や全圧を測定するため、真空装置内が低圧である場合でも、分圧や全圧が測定できなければならない。
【0016】
しかし、真空装置内が低圧の場合には、真空装置内のガス分子の総量が少なくなるので、熱電子がガス分子に衝突する確率が低くなる。このため、イオン化するガス分子が少なくなり、イオン電流が小さくなり、あまりに微小なイオン電流では、測定することができない。
【0017】
そこで、アノード電極102の体積を大きくし、アノード電極102内部のガス分子の量を増やしたり、フィラメント103に流す電流を大きくして、熱電子の発生量を増やすことで、低圧の状態でもできるだけ大きいイオン電流を生成するようにしている。
【0018】
しかしながら、アノード電極102の体積を大きくすると、イオン源101や質量分析計の体積を大きくしなければならない。また、フィラメント103に流す電流量を増やすと、フィラメント103の消耗が大きいため、寿命が短くなってしまうという問題が生じていた。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、イオン源の体積を大きくしたり、フィラメントの電流を増やしたりすることなく、低圧まで測定可能な技術を提供することにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、イオン源であって、平行に配置され、それぞれに放出口が設けられた第1、第2の引出電極と、前記第1の引出電極と前記第2の引出電極との間に、それぞれ前記第1、第2の引出電極と平行に配置され、前記放出口と対向する通過孔が設けられた第1、第2のアノード電極と、前記第1、第2のアノード電極の周囲に配置され、前記第1、第2のアノード電極が対向する空間に磁界を形成させる磁界発生装置と、前記空間中に挿入されたフィラメントとを有することを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のイオン源であって、前記磁界発生装置は、それ自身がアノードの一部としての役割をもつように構成されたことを特徴とする。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のイオン源であって、前記磁界発生装置は、前記空間の周囲に配置された磁石を有することを特徴とする。
【0023】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のイオン源であって、前記フィラメントは、前記磁石の外周側面から前記空間内へ挿入されるように配置されたことを特徴とする。
【0024】
請求項5記載の発明は、請求項3記載のイオン源であって、前記磁石は、第1、第2のアノード電極の間で二分割されており、前記フィラメントは、前記第1のアノード電極側の磁石と、前記第2のアノード電極側の磁石との間から、前記空間内へと挿入されるように配置されたことを特徴とする。
【0025】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のイオン源であって、前記磁石は、前記第1、第2のアノード電極と、電気的に接続されたことを特徴とする。
【0026】
請求項7記載の発明は、質量分析計であって、請求項1記載のイオン源を有することを特徴とする。
【0027】
請求項8記載の発明は、質量分析計であって、請求項1記載のイオン源を有し、圧力を測定する機能が付加されたことを特徴とする。
【0028】
本発明は、上記のように構成されており、磁界発生装置で、磁界を発生して、第1、第2のアノード電極間で発生した熱電子に磁界を印加できるようにされている。この磁界により、放出された熱電子は、その運動方向と垂直な方向にローレンツ力を受けるので、螺旋運動をする。
【0029】
アノード電極内で螺旋運動をすることにより、熱電子が消滅するまでに飛行する距離は、従来に比して格段に長くなる。このため、熱電子は、多数のガス分子と衝突し、少量の熱電子で効率よく多数のガス分子をイオン化することができる。
【0030】
第1、第2の引出電極に、第1、第2のアノード電極に対して低い電圧が印加された場合には、イオン化された多数のガス分子(以下でガスイオンと称する。)は、第1、第2の引出電極から引力を受け、第1、第2のアノード電極の各通過孔を通過し、第1、第2の引出電極の放出口から、外部に放出される。
【0031】
第1、第2の引出電極の外部に、それぞれ全圧測定用のイオンコレクタと、分圧測定用の質量分析部が設けられた場合には、ガスイオンはイオンコレクタや質量分析部に捕集され、イオン電流として検出される。多数のガス分子がイオン化されるため、検出されるイオン電流は従来に比して大きくなり、低圧でガス分子の数が少ない場合でも、質量分析や分圧測定をするのに十分なイオン電流を得ることができる。
【0032】
しかも、本発明のイオン源では、イオン源の体積を大きくしなくとも大きなイオン電流を得ることができるので、質量分析計を大きく作る必要が無い。また、フィラメントに大電流を流さなくとも大きなイオン電流を得ることができるので、フィラメントの寿命が短くならないようにすることができる。
【0033】
また、従来と同程度のイオン電流を得る場合には、従来に比して少ない熱電子を放出すれば足り、フィラメントに流す電流を従来に比して小さくすることができる。この場合にはフィラメントの消耗が少なくなるので、従来に比してフィラメントの寿命を長くすることができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下で図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。図1の符号1に、本実施形態のイオン源の一例を示す。
【0035】
このイオン源1は、アノードメッシュ31、32と、磁界発生器20と、フィラメント3と、引出電極4、5と、イオンコレクタ9と、金属カバー23とを有している。
【0036】
金属カバー23は、金属板が円筒形状に成形され、その側面に長方形状の切り欠きが設けられることで構成されている。この切り欠きには、略半円状の金属板24、25が溶接されている。
【0037】
金属カバー23の内部には、磁界発生器20が設けられている。この磁界発生器20は、サマリウムコバルト系の永久磁石である上側磁石21と下側磁石22とを有している。これらの磁石21、22はともにリング状に成形されており、上側磁石21は、下側磁石22と、間隔をおいて配置されている。
【0038】
上側磁石21と下側磁石22との間には、2本のフィラメント31、32が挿入されている。フィラメント31、32は、タングステンの細線がV字状に折り曲げられて成り、その先端が、磁石21、22のほぼ中心の位置まで挿入されている。
【0039】
金属カバー23の両底面には、円板状の網からなるアノードメッシュ31、32がそれぞれ溶接されて取り付けられている。アノードメッシュ31、32の中央には、それぞれ円形状の通過孔33、34が設けられている。
【0040】
アノードメッシュ31、32の近傍には、引出電極4、5が配置されている。引出電極4、5は、ともに円形の金属板から成り、その中央にはそれぞれ円形の放出口7、8が設けられている。引出電極4、5のうち、一方の引出電極4側には、円板状のイオンコレクタ9が配置されており、他方の引出電極5側には、図示しない四重極子が対向配置されている。さらに、上述の上側磁石21、下側磁石22、通過孔33、34、放出口7、8の中心軸線は、全て一致するように各部材が配置されている。
【0041】
上記構成を有するイオン源1を有する質量分析計で、真空装置内のガスの質量分析及び圧力測定を行なうには、まず、イオン源1を図示しない真空装置内に挿入し、真空ポンプ(不図示)で真空装置内を真空排気して真空状態にする。真空状態でも、真空装置内には残留ガスが存しており、残留ガスは、イオン源1の磁石21、22の中空内部にも導入される。
【0042】
イオン源1内に残留ガスが導入された状態で、2本のフィラメント31、32のうち、一方のフィラメント31に通電して加熱すると、加熱されたフィラメント31から熱電子が放出される。上述のようにフィラメント31は上側磁石21、下側磁石22の間に挿入されているので、熱電子は上側磁石21、下側磁石22の間から放出され、他方、上側磁石21、下側磁石22にはフィラメント31に対して高い電圧が印加されているので、熱電子は、上側磁石21、下側磁石22の両方から引力を受け、上側磁石21、下側磁石22のいずれか一方へ向けて飛行する。
【0043】
発生した熱電子の一部は、上側磁石21、下側磁石22に衝突して消滅するが、多くの熱電子は、上側磁石21又は下側磁石22の中空内部へと入射する。
図2に示すように、上側磁石21と下側磁石22とは、ともにその両底面がN極とS極になるようにされ、上側磁石21のS極と、下側磁石22のN極とが対向するように配置されているので、図3の磁力線50に示すように、上側磁石21、下側磁石22の中空内部には、アノードメッシュ31、32の法線方向を向く磁界が形成される。
【0044】
この磁界によって、磁石21、22の中空内部に入射した熱電子は、運動方向と垂直な方向にローレンツ力を受けるので、イオンコレクタ9方向又は四重極子方向に螺旋運動をする。螺旋運動をする熱電子は多数発生するが、図3には、イオンコレクタ方向に飛行する熱電子12と、四重極子方向に飛行する熱電子14とをそれぞれ1個ずつ示している。
【0045】
これらの熱電子12、14は、螺旋運動をしながら中空内部のガス分子13、15と衝突してこれをイオン化し、それぞれがガスイオン16、17を生成する。螺旋運動をすることにより、熱電子が消滅するまでに飛行する距離は従来に比して格段に長くなり、熱電子がガス分子と衝突する確率が高くなるので、従来に比して多数のガス分子と衝突し、多数のガス分子をイオン化することができる。
【0046】
引出電極4、5には、アノードメッシュ31、32等に対して低い電圧が印加されており、イオン化したガス分子(以下ガスイオンと称する。)は、引出電極4、5の両方から引力を受け、アノードメッシュ31、32の各通過孔33、34のいずれか一方を通過して、引出電極4、5の放出口7、8から放出される。
【0047】
四重極子側の放出口8から放出されたガスイオン16は、引出電極5に対向配置された四重極子に向けて飛行する。四重極子には、所定の交流電圧が印加されており、飛行してきたガスイオン16のうち、特定種類のガスイオンのみが四重極子を通過できるようにされている。四重極子の後方には、図示しない分析用イオンコレクタが配置されており、四重極子を通過したガスイオンを捕集できるようにされ、捕集されたイオンによるイオン電流を測定できるようにされている。こうして測定されたイオン電流から、真空装置内の全ガス中に対する特定の一種類のガスイオンの量を求め、そのガスの分圧を測定することができる。
【0048】
四重極子に印加する交流電圧を変化させると、四重極子を通過できるガスイオンの種類も変わるので、この交流電圧を次々と変化させることで、真空装置内の各々のガスイオンの量を求めて質量分析を行なうことができる。
【0049】
他方、イオンコレクタ側の放出口7から放出されたガスイオン17は、イオンコレクタ9で捕集される。イオンコレクタ9では、アノード電極2内のガス中の全種類のガスイオンが捕集されるので、イオンコレクタ9に流れるイオン電流を測定することにより、真空装置内の全種類のガスイオンの量を求めることができ、全圧を測定することができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態のイオン源1では、磁界発生器20で磁界50を発生させ、磁界50で熱電子を螺旋運動させることで、従来に比して多数のガス分子をイオン化することができるので、従来と同程度の電流をフィラメントに流すだけで、従来に比して多量のガス分子をイオン化することができる。
【0051】
これにより、圧力が低くなってガス分子の量が少ない場合でも、少量の熱電子で効率よく多数のガス分子をイオン化することができ、従来に比して大きいイオン電流を得ることができるので、低圧でも、分圧や全圧を測定可能な程度のイオン電流を得ることができる。
【0052】
また、フィラメントに供給する電流を、従来に比して少なくした場合には、従来と同程度の大きさのイオン電流を得ることができるので、フィラメントの消耗を少なくして、フィラメントの寿命を長くすることができる。
【0053】
本発明の発明者等は、本発明のイオン源の効果を確かめるべく、従来のイオン源101と、本実施形態のイオン源1の感度を比較した。ここで感度とは、イオン源の性能を示す指標であって、測定されたイオン電流を圧力で除した値である。
【0054】
最初に、従来のイオン源101を備えた質量分析計を真空装置に取付け、真空装置内の窒素ガス圧を1.2×10-2Paとして、フィラメントに0.5mAの電流を流した状態で、窒素ガスイオンによるイオン電流を測定した。その結果、測定されたイオン電流は2.92×10-9Aであり、イオン源101の感度は0.243μA/Paであった。
【0055】
これに対し、本実施形態のイオン源1を備えた質量分析計を真空装置に取付け、真空装置内の窒素ガス圧を1.0×10-2Paとし、フィラメント3に0.05mAの電流を流した状態で、窒素ガスイオンによるイオン電流を測定したところ、測定されたイオン電流は2.40×10-9Aであり、イオン源1の感度は0.240μA/Paであった。
【0056】
このように、本実施形態のイオン源1は、従来とほぼ同じ感度を得ることができるが、フィラメント3に供給する電流は、従来の10%の電流であり、少ない電流をフィラメントに供給しても、従来装置とほぼ同程度の感度を得られることが確認できた。
【0057】
なお、上記したイオン源1では、磁界発生器20として、リング状の磁石21、22を用い、磁石21、22の上方がN極に、下方がS極になるように配置し、アノードメッシュ31、32の法線方向の磁界を発生させているが、本発明の磁界発生器の構成はこれに限らない。
【0058】
本発明の他のイオン源の一例を図4の符号65に示す。このイオン源65は、磁界発生器60として一対の上側磁石61、63と、一対の下側磁石62、64とを有している。
【0059】
このうち一対の上側磁石61、63は、互いのN極が対向するようにイオンコレクタ9側に配置され、一対の下側磁石62、64は、互いのN極が対向するように四重極子側に配置され、一対の上側磁石61、63は、その間で互いに反発力を生じるような磁界を形成し、下側磁石62、64もまた、互いに反発力を生じるような磁界を形成するので、図5の磁力線50に示すように、アノードメッシュ31、32の面に沿う方向の磁界が形成される。この場合でも、磁力線50の向きと異なる方向に熱電子が放出されれば、熱電子はローレンツ力を受け、アノードメッシュ31、32のいずれか一方に向けて螺旋運動をするので、図1のイオン源1と同様に、多数のガス分子をイオン化させることができる。
【0060】
さらに、図6に示すように、磁界発生器70が、イオンコレクタ9側に配置された一対の上側磁石71、73と、四重極子側に配置された下側磁石72、74とを有し、一対の上側磁石71、73は、互いのN極とS極とが対向するようにされ、一対の下側磁石72、74もまた、互いのN極とS極とが対向するようにされるようにしてもよい。
【0061】
この場合には、上側磁石61、63は、その間で互いに吸引力を生じるような磁界を形成し、下側磁石62、64もまた、互いに吸引力を生じるような磁界を形成するので、図7の磁力線50に示すように、アノードメッシュ31、32の面に沿う方向の磁界が形成される。この磁界によって熱電子はローレンツ力を受け、螺旋運動をすることができるので、図1のイオン源1と同様に、多数のガス分子をイオン化させることができる。
【0062】
また、図1のイオン源1では、V字型に折り曲げられたフィラメント31、32を2本用意して、その両方を磁石21、22の間に挿入しているが、このうち、一方のフィラメント31は熱電子発生用のフィラメントであり、他方のフィラメント32は、一方のフィラメント31が切れたときに用いる予備用のフィラメントである。かかる予備用のフィラメントは、設けなくともよいので、フィラメントを1本だけ設けるような構成にしてもよいし、あるいは予備用のフィラメントを2本以上に増やし、3本以上のフィラメントを設けるような構成にしてもよい。
【0063】
さらに、図1のイオン源1では、本実施形態では、イオン源1が四重極型の質量分析計に適用される場合について説明したが、本発明はこれに限らず、真空中でガス分子をイオン化して質量分離可能なものであればよく、例えば磁場偏向型の質量分析計に適用してもよい。
【0064】
さらにまた、本実施形態のイオン源1では、アノードメッシュ31、32を、磁石21、22と一体化して形成したが、本発明はこれに限らず、例えば図8、図9に示すイオン源85のように、アノードメッシュ811、812を略円筒状に形成して、磁石21、22の内壁に接触しないように、リング状の磁石21、22の中空内部に、配置する構成にしてもよい。
【0065】
【発明の効果】
低圧でガス分子の量が少ない場合でも、体積を大きくしたりフィラメントに流す電流を大きくすることなく大きいイオン電流を得ることができ、質量分析や圧力測定をすることができる。
【0066】
また、フィラメントに流す電流を従来に比して小さくしても従来と同程度の性能を得ることができるので、従来に比してフィラメントの寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態のイオン源を説明する斜視図
【図2】本発明の一実施形態のイオン源を説明する断面図
【図3】本発明の一実施形態のイオン源における熱電子、ガスイオンの運動状態を説明するための図
【図4】本発明の他の実施形態のイオン源で、磁石間で反発力が生じるように磁石を配置した状態を説明する図
【図5】本発明の他の実施形態のイオン源で、磁石間で反発力が生じるようにする場合の磁界分布を説明する図
【図6】本発明の他の実施形態のイオン源で、磁石間で吸引力が生じるように磁石を配置した状態を説明する図
【図7】本発明の他の実施形態のイオン源で、磁石間で吸引力が生じるように磁石を配置した状態を説明する図
【図8】本発明のさらに他の実施形態のイオン源を説明する斜視図
【図9】本発明のさらに他の実施形態のイオン源を説明する断面図
【図10】従来技術のイオン源を説明する図
【図11】従来技術のイオン源における熱電子、ガスイオンの運動状態を説明する断面図
【図12】従来技術のイオン源における熱電子、ガスイオンの運動状態を説明する平面図
【符号の説明】
3……フィラメント 7、8……放出口 20……磁界発生装置 21……上側磁石(磁石) 22……下側磁石(磁石) 31、32……アノードメッシュ(アノード電極) 33、34……通過孔
Claims (8)
- 平行に配置され、それぞれに放出口が設けられた第1、第2の引出電極と、
前記第1の引出電極と前記第2の引出電極との間に、それぞれ前記第1、第2の引出電極と平行に配置され、前記放出口と対向する通過孔が設けられた第1、第2のアノード電極と、
前記第1、第2のアノード電極の周囲に配置され、前記第1、第2のアノード電極が対向する空間に磁界を形成させる磁界発生装置と、
前記空間中に挿入されたフィラメントとを有することを特徴とするイオン源。 - 前記磁界発生装置は、それ自身がアノードの一部としての役割をもつように構成されたことを特徴とする請求項1記載のイオン源。
- 前記磁界発生装置は、前記空間の周囲に配置された磁石を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のイオン源。
- 前記フィラメントは、前記磁石の外周側面から前記空間内へ挿入されるように配置されたことを特徴とする請求項3記載のイオン源。
- 前記磁石は、第1、第2のアノード電極の間で二分割されており、
前記フィラメントは、前記第1のアノード電極側の磁石と、前記第2のアノード電極側の磁石との間から、前記空間内へと挿入されるように配置されたことを特徴とする請求項3記載のイオン源。 - 前記磁石は、前記第1、第2のアノード電極と、電気的に接続されたことを特徴とする請求項5記載のイオン源。
- 請求項1記載のイオン源を有することを特徴とする質量分析計。
- 請求項1記載のイオン源を有し、圧力を測定する機能が付加されたことを特徴とする質量分析計。
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