JP3767478B2 - 路面温度推定方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、地中温度の計測値から路面温度を推定する方法に係り、特に、路面温度の初期値を直接的に計測する必要のない路面温度推定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
道路交通において、湿潤、積雪、凍結等の路面状態が生じると、スリップ事故が発生しやすい。このため湿潤、積雪、凍結等の危険な路面状態を速やかに検知して自動車の運転手に注意を促す必要がある。しかし、長距離に及ぶ道路を常に巡回監視するのは、人手、コストの面で困難であるため、このような路面状態を把握する手段として路面状態検出センサが用いられる。
【0003】
従来の路面状態検出センサは、主に2つに分けられる。
【0004】
第1のグループは、道路表面(路面)に赤外線または電磁波を照射し、路面からの反射率を計測するものである。例えば、図10に示した路面状態検出センサは、道路101の近傍に超音波式の距離計102、赤外線照射装置103、赤外線受光装置104および信号処理装置105を設置し、道路101への入射光106と反射光107及び反射光108との強度比が路面状態によって異なることを用いて路面状態を推定する。
【0005】
第2のグループとしては、道路近傍の気象量及び路面温度を計測するセンサが挙げられる。路面温度計測には、熱電対、赤外放射温度計等の単点計測用のセンサに加えて、多点計測が可能で長距離の温度を計測するのに適した光ファイバ温度レーダを用いる手法が提案されている。このセンサによる路面温度の計測結果は、道路管理担当者が過去の知見に基づいて路面状態を推定するときの判断材料として用いられる。
【0006】
第1のグループのように、赤外線または電磁波を照射する方式のセンサを用いて路面状態を道路の長手方向に沿って連続的に把握するためには、多数のセンサを設置する必要があり、コストがかかる。
【0007】
一方、第2のグループのように、気象量と路面温度とを計測する場合は、気象量観測地がある程度の広域に対して適用可能であること、および光ファイバ温度レーダが長距離に敷設可能であることから低コストである。しかし、これらの計測情報から道路管理担当者が路面状態を判断するには、道路管理担当者に経験が求められること、及び危険と判断する地域を限定することが難しいという問題がある。
【0008】
そこで、路面温度の計測値と道路近傍の気象量計測値とから計算によって路面状態を推定する方法が本出願人によって提案されている(特願2001−111367号)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記本出願人による提案では、路面下に埋設してある光ファイバ温度レーダによる地中温度測定値に基づいて、地中から路面への流入熱量Weを計算する過程で、地中深さ方向温度分布の正確な初期値が必要となる。このために、路面に熱電対を設置し、この熱電対で路面温度の初期値を実測している。しかし、道路長手方向に長距離に及ぶ測定区間内の多地点における地中深さ方向温度分布の初期値を全て熱電対で実測することは困難である。
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、路面温度の初期値を直接的に計測する必要のない路面温度推定方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、路面下に道路長手方向に沿わせて埋設してある光ファイバ温度レーダにより、道路長手方向の任意の地点について、該光ファイバ温度レーダの埋設深さにおける地中温度を計測するステップと、その温度計測値を時系列データとして蓄積するステップと、この時系列データから路面温度を推定するステップとを有し、
前記時系列データから路面温度を推定するステップは、前記時系列データを基本周期が1日である周期関数にフーリエ変換することにより、前記埋設深さにおける温度変化の振幅及び位相を求めるステップと、前記埋設深さにおける温度変化の振幅及び位相と前記埋設深さとを路面における温度変化が深さ方向に伝搬するときの減衰率で逆算することにより、路面における温度変化の振幅及び位相を求めるステップと、前記路面における温度変化の振幅及び位相と前記減衰率とから任意深さにおける温度変化の計算式を求めるステップと、前記任意深さにおける温度変化の計算式の周期項に任意の実時刻を代入することで、その任意時刻の地中温度を推定するステップと、前記任意深さとしてゼロを代入することで路面温度を推定するステップと、を有するものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0015】
本発明は、例えば、路面温度の計測値と道路近傍の気象量計測値とから計算によって路面状態を推定する路面状態推定方法において、地中深さ方向の温度分布Tk(k;1〜n,nは計算上設定した地中の階層数)を得る方法として用いることのできるもので、路面温度の初期値を直接的に計測するのではなく、地中温度の計測値時系列から推定するところに特徴を有する。
【0016】
地中深さ方向の温度分布の初期値を求める手順を図1に示す。第一のステップS1−1では、光ファイバ温度レーダの埋設深さにおける地中温度を計測し、その温度計測値を時系列として蓄積する。例えば、時間0から特定の時間Nまでの連続した温度計測値をメモリ等に蓄積する。ただし、所定時間刻み毎に温度計測値をサンプリングする処理は、並列に実行されており、図には示されない。第一のステップS1−1では、時間Nにわたる時系列データが揃っているかどうかを判定し、データが揃っていなければ、温度分布の計算は行わない。データが揃っていれば、第二のステップS1−2にて、時間Nにわたる時系列データをフーリエ変換する。これにより、光ファイバ温度レーダの埋設深さにおける時間N内での温度変化の振幅及び位相を求めることができる。第三のステップS1−3では、上記埋設深さにおける温度変化の振幅及び位相を用いて地中深さ方向の温度分布を算出する。
【0017】
上記手順の詳細を説明する。
【0018】
まず、路面からの距離(地中深さ)をxとし、深さxにおける地中温度をTxとすると、熱拡散方程式から次の一般式がえられる。
【0019】
【数1】
Figure 0003767478
【0020】
光ファイバ温度レーダの埋設深さのみに着目し、計測した温度データをTfとし、この温度データTfが一日周期でサイクリックに変化するものと考えると、その周期関数は、
【0021】
【数2】
Figure 0003767478
【0022】
で表すことができる。
【0023】
この式(2)は、フーリエ級数展開すると、次式で表すことができる。
【0024】
【数3】
Figure 0003767478
【0025】
そして、式(3)で求めた係数から、光ファイバ温度レーダの埋設深さにおける地中温度計測値の位相角εと振幅Dは次式で求めることができる。
【0026】
【数4】
Figure 0003767478
【0027】
ここで、路面における温度変化が深さ方向に伝搬するときの減衰率をδ=ルート(2λ/(ωC))と定義すると、地中温度変化は路面温度変化と比較して深さxにおいて振幅がexp(−x/δ)倍小さくなり、位相はx/δだけ遅れるので、路面における位相ε0及び振幅D0は、埋設深さxにおける位相角ε及び振幅Dから逆算して次式で求めることができる。
【0028】
【数5】
Figure 0003767478
【0029】
同様にして、任意深さxにおける温度変化の位相εx及び振幅Dxを算出することができるので、次式により任意深さxにおける任意時刻θの温度を求めることができる。
【0030】
【数6】
Figure 0003767478
【0031】
任意深さxをゼロとし、任意時刻θを初期値計測時刻とすれば、路面温度の初期値が求まることになる。
【0032】
次に、本発明の応用用途である路面状態推定方法の概略の流れを図2に示す。第一のステップS2−1では、路面状態推定の計算に必要なデータを入力する。計算に必要なデータは、道路近傍の気象量計測値と光ファイバ温度レーダによる地中温度測定値とからなる。気象量には、気温、湿度、風速、雨量、放射収支などが含まれる。第二のステップS2−2では、初期値が既に計算済みであるかどうか判定する。初期値が既に計算済みであれば、初期値計算をスキップして第四のステップS2−4へ行く。初期値が未だ計算済みでなければ、第三のステップS2−3で初期値計算を行う。この初期値計算は、前述したとおりの手順で行われる。第四のステップS2−4では、各種計算が行われる。例えば、路面温度、路面への熱流入量、路面状態判定係数などが計算される。そして、第五のステップS2−5では、路面状態判定計算が行われる。
【0033】
以下、路面状態推定方法を詳しく説明する。
【0034】
路面状態推定の原理は、2つの異なる方法で求めた路面への流入熱量から路面状態を求めるものである。まず、2つの熱量計算方法について説明する。
【0035】
第1の方法は、道路近傍に気象計(気温計、湿度計、日射計、雪雨量計、風速計、放射収支計を含む)を設置して、これらの気象量計測値から路面に流入する熱量を求めるものである。
【0036】
ここで、路面の熱収支関係は、概念的には図3の内容で表される。路面の熱収支は、大気からの熱伝達、大気赤外放射と路面赤外放射、日射エネルギの吸収、及び道路内部熱伝達に分類することができる。本発明では、第1の方法を用いて、道路内部熱伝達を除いた道路の上側(大気側)から流入する熱量の総和Waを計算する。実際には、濡れ路面の乾燥、積雪の融解等の路面上水分の相変化に伴う熱移動(潜熱伝達)も存在するが、この熱量を検出することが本発明の目的であるため、ここでは潜熱伝達は考慮しない。
【0037】
Figure 0003767478
上記の各熱量を気象量計測値から求める計算式を以下に示す。
(1)大気からの熱伝達
大気からの熱伝達Q1は、大気と路面との接触による熱移動であり、次式で求める。
【0038】
Q1=hT ×(Ta−Te)×A (式11)
ただし、 hT :熱伝達係数
Ta:大気の温度
Te:路面温度
A:熱が伝わる面積
である。
(2)大気赤外放射と路面赤外放射
大気から路面に対する放射Q2と、路面から大気に対する放射Q3との計算は、それぞれ次の式で表される。
【0039】
Q2=εa×σ×Ta4 (式12)
Q3=εr×σ×Te4 (式13)
ただし、 εa:大気の放射率
Ta:大気の温度
εr:路面の放射率
Te:路面温度
σ:ステファン・ボルツマン定数
である。
(3)日射エネルギの吸収
日射量と路面の日射吸収率とから、路面に吸収される日射エネルギQ4を算出する。
【0040】
Q4=(1−r)×I (式14)
ただし、 r:路面のアルベト数
I:日射強度
である。
【0041】
よって、
Wa=Q1+Q2+Q3+Q4
により、大気側から路面に流入する熱量の総和Waを求めることができる。
【0042】
第2の方法は、地中に埋設した光ファイバ温度レーダによる地中温度計測値に基づき、地中側から路面に流入する熱量(第1の方法で除外した道路内部熱伝達による流入熱量)を求めるものである。
【0043】
大気側から路面への流入熱量ΔWがΔW* の時、道路に埋設した光ファイバで計測した地中温度Tf がΔt時間当たりΔTf だけ変化したとする。このとき、ΔTf は、ΔW=0の時の光ファイバ埋設位置fでの温度変化量δTf0と、大気側から路面へ熱量ΔW* が流入してきたときの温度変化量δTf との和で表すことができる。
【0044】
ΔTf =δTf0+δTf (式15)
式15において、ΔW=0の時の光ファイバ埋設位置fでの温度変化量δTf0は、次の方法により求める。地中から路面への流入熱W2 は、地中内部の温度分布から求まる。ここでは、地中から路面への流入熱W2 を基底温度T0 から求める方式で説明する。
【0045】
基底温度T0 を利用する方式は、地中深いところ(数10m程度の深さ)の温度が年間を通してほぼ一定になるということを利用するものであり、この温度を基底温度T0 とすると、路面から地中深いところまでの熱等価回路は図4で表すことができる。即ち、地表の測定点から所定の深さごとに地中温度の測定点があるとき、各測定点間には熱抵抗が存在し、各測定点には熱容量が存在し、地表の測定点には大気側から路面への流入熱W1 が入力される。
【0046】
熱量計算は、計算刻み時間Δtごとに行う。地中を図4に示すような階層構造と見なす場合、地表を1番目としたときk番目の階層における地中温度Tk は式16であらわされる。
【0047】
Figure 0003767478
ここで、 R=Δh/λT
C=ρ・Cp ・ΔhD
ただし、
R:当該階層の熱抵抗
C:当該階層の熱容量
ΔhD :道路下深さ方向の刻み幅
λT :当該階層における熱伝導率
ρ:当該階層における地中物質の密度
p :当該階層における面積当たり熱容量
k :階層を表す添字変数(123 ,…)
である。
【0048】
ここで、境界条件は式17、式18で表される。
【0049】
(T1 −T2 )/R1 =W1 (式17)
n =T0 (式18)
式15から式18までの式を解くことで、光ファイバ埋設位置fにおける温度変化量δTf0を求めることができる。
【0050】
次に、図5に示すように、路面から光ファイバ埋設位置fへ流入する熱量と、それに伴う光ファイバ埋設位置fの温度変化量が直線で近似できる範囲内で路面に対する流入熱の変化量ΔWを任意の値ΔWz として与える。このとき、光ファイバ埋設位置fでの仮の温度変化量ΔTfzは、式7のW1 にΔWz を代入して式16から式18までの式を解くことで求めることができる。温度変化量ΔTfzは、ΔW=0の時の光ファイバ埋設位置fでの温度変化量δTf0と、任意に定めた路面への流入熱量ΔWz によって与えられる温度変化量δTfzとの和で表すことができる。
【0051】
ΔTfz=δTf0+δTfz (式19)
よって、W=0の時の光ファイバ埋設位置fでの温度変化量δTf0と仮の温度変化量ΔTfzとが上記までに求められるので、温度変化量δTfzが求まる。
【0052】
また、図5に示す直線関係を仮定しているので、式20の関係が成り立つ。
【0053】
δTf /ΔW* =δTfz/ΔW (式20)
式19、式20から、路面に流入する熱量ΔW* を求める式21が得られる。
【0054】
ΔW* =(ΔWz /δTfz)・δTf (式21)
式21において、δTf は実際の光ファイバ埋設位置fでの温度変化量δTfzは、式19から得られ、また、ΔWz は任意に定めることのできる値であることから、実際の熱量の変化量ΔW* を算出することができる。このようにして求めた熱量ΔW* が地中側から路面への流入熱Weである。
【0055】
上記の計算に必要となる地中の熱定数は、地中の物質の組成によって一定なので、事前に熱流計を用いて計測しておけば、地中側から路面への流入熱Weを正確に算出することができる。
【0056】
次に、第1の方法で求めた熱量Waと第2の方法で求めた熱量Weとを用いて路面状態を推定する手法を以下に述べる。
【0057】
まず、第1の方法で求めた熱量Wa及び熱量Weを用いて、路面の湿潤状態を判定する方法を述べる。路面上の水分の厚みをhW (t)とすると、水分の厚みhW (t)と蒸発熱Wev(t)との関係は式22で表すことができる。
【0058】
W (t)=hW 0−Wev(t)/λW (式22)
ここで、Wev(t)は式23により気象量より求められる値である。
【0059】
Wev(t)=(α+β・v)・(P(Te)−H・P(Ta))(式23)
ただし、
W 0:降雨直後の路面に溜った水分の厚み
λW :水の蒸発潜熱
α,β:定数
v:風速
H:相対湿度
Te:路面温度
Ta:気温
P(Te):温度Teにおける水分の飽和水蒸気圧
P(Ta):温度Taにおける水分の飽和水蒸気圧
である。
【0060】
このように、本発明では、路面上の水分の蒸発による蒸発熱Wevを路面水分厚hW 0、風速v、路面温度Te、相対湿度H、気温Taの測定値(一部推定値も含む)と既知の諸量とから求める。
【0061】
湿潤状態では、大気側から路面への流入熱Wa、大地(地中側)から路面への流入熱We、蒸発熱Wevの間には、以下の関係式が成立する。
【0062】
Wa−We=Wev (式24)
ここで、湿潤判定値Yとして式25を導入する。
【0063】
Y=(Wa−We)/Wev (式25)
湿潤判定値Yは、理論的に、湿潤状態では1、乾燥状態及び凍結状態では0となるので、この値をモニタしていると湿潤の有無が判定できる。即ち、本発明では、大気側から路面への流入熱Wa、地中側から路面への流入熱We、路面上の水分の蒸発による蒸発熱Wevを用いて湿潤判定値Yを求め、この湿潤判定値Yにより路面の湿潤状態を判定する。
【0064】
次に積雪状態の判定方法を述べる。積雪状態の判定条件は、路面への薬剤散布がある場合とない場合とで異なる。路面への薬剤散布がない場合は、次の判定条件によって容易に積雪状態判定が可能である。
【0065】
Te=0℃ かつ ΔTe=0℃
ただし、
ΔTe:計測時間当たりの路面温度の変化量
である。
【0066】
このように、路面への薬剤散布がない場合は、路面温度Teを用い、路面温度Teが時間経過によらず0℃を維持していることで積雪状態が判定できる。
【0067】
薬剤散布が有り得る場合は、まず、積雪判定値Zを式26で定義する。
【0068】
Z=ΔTe/ΔTc (式26)
ただし、
ΔTe:計測時間当たりの路面温度の上昇値(測定値)
ΔTc:大気側からの流入熱Waが流入したときの路面温度の上昇値(計算値)
である。路面温度の変化量であるΔTe及びΔTcは、路面への流入熱We及びWaにそれぞれほぼ比例する。これらの比例関係(ΔTeがWeに比例、ΔTcがWaに比例)によって、ほぼΔTe/ΔTc=We/Waとなる。従って、
Z=We/Wa (式26´)
と表すことができる。
【0069】
また、湿潤状態の判定に用いた湿潤判定値Yについて考えると、積雪の融解または凝固に使われる潜熱量をδWとすれば、
Figure 0003767478
となり、湿潤判定値Yは、積雪状態では
Y=1以上 融解過程(δWが負)のとき
Y=1以下 凝固過程(δWが正)のとき
となる。
【0070】
次に、大気側から路面への流入熱Waと地中側から路面への流入熱Weとの差をΔWとすると、
Figure 0003767478
となる。ここで、δWは、融解過程において正、凝固過程において負となる。
【0071】
式26´、式28から、積雪判定値Zは、次のように表すことができる。
【0072】
Figure 0003767478
式29から以下の条件によって、積雪状態判定を行うことができる。
【0073】
路面温度Teが降下中(熱量Weが負)の時、
Tf(凝固点)が路面温度Teより低い場合(Tf<Te)、
潜熱量δW、蒸発熱Wevがともに正であって、
積雪判定値Zが1より大であること …条件1
Tf(凝固点)が路面温度Teより高い場合、
蒸発熱Wevが正、潜熱量δWが負、
かつ|δW|>|Wev|であって、
(Wev+δW)/We>0であって、
積雪判定値Zが1より小であること …条件2
路面温度Teが上昇中(熱量Weが正)の時、
Tf(凝固点)が路面温度Teより低い場合、
潜熱量δW、蒸発熱Wevがともに正であって、
積雪判定値Zが1より小であること …条件3
Tf(凝固点)が路面温度Teより高い場合、
蒸発熱Wevが正、潜熱量δWが負、
かつ|δW|>|Wev|であって、
(Wev+δW)/We<0とであって、
積雪判定値Zが1より大であること …条件4
の条件が考えられる。結局、積雪が継続する条件は、
条件1=We<0かつTf<TeかつδW>0かつWev>0かつZ≧1、
条件2=We<0かつTf>TeかつδW>0かつWev<0かつ|δW|>|
Wev|かつ(Wev+δW)/We>0かつZ<1、
条件3=We>0かつTf<TeかつδW>0かつWev>0かつZ<1、
条件4=We>0かつTf>TeかつδW<0かつWev>0かつ|δW|>|
Wev|かつ(Wev+δW)/We<0かつZ>1、
の4つの条件であり、条件1〜4のいずれかが満たされている場合は、積雪状態と判定する。
【0074】
このように、本発明では、路面への薬剤散布がない場合は、路面温度Teを用い、路面温度Teが時間経過によらず0℃を維持しているかどうか積雪状態を判定し、路面への薬剤散布がある場合は、路面温度の変化方向(熱量Weの正負)と、水の凝固点Tfに対する路面温度Teの高低と、蒸発熱Wevの正負と、積雪の融解または凝固による潜熱量δWの正負とから路面の積雪状態を判定する。
【0075】
次に、凍結状態の判定方法を述べる。熱的には凍結状態と乾燥状態とでは、ほぼ同じ挙動が生じる。即ち、凍結状態でも乾燥状態でも、積雪判定値Z=ほぼ1、かつ湿潤判定値Y=ほぼ0となる。凍結状態と乾燥状態とを区別するためには、現時点に至るまでの過去の路面状態の時系列を用いる。この時系列で前回の状態を基準にする。即ち、積雪判定値Z=ほぼ1、かつ湿潤判定値Y=ほぼ0であるとき、前回の状態が湿潤状態であれば、今回は乾燥状態に移行すると考える。また、積雪判定値Z=ほぼ1、かつ湿潤判定値Y=ほぼ0であるとき、路面温度Teが前回、前々回の路面温度Teとほぼ同じであれば遷移状態と考え、さらに路面への流入熱ΔWが負の値であれば冷却過程であると考え、冷却過程の遷移状態であれば、次回は凍結状態に移行すると考える。
【0076】
様々の路面状態において計算した判定値Y,Zをそれぞれ横軸、縦軸にとりプロットすると、各路面状態に対応した領域を図6のように示すことができる。この図に即して各路面状態の特長を次に述べる。
1)乾燥状態、凍結状態(定常状態)
Y=0,Z=1のポイントで示される。乾燥状態か凍結状態かの区別はトレンド(過去の路面状態の時系列)から判定することになる。
2)湿潤状態
Y=1,Z=0〜1(温度上昇過程のとき)の範囲か、Y=1,Z=1以上 (温度下降過程のとき)の範囲で示される。
3)積雪状態(薬剤なし)、凍結状態(遷移状態であって薬剤なし)
Z=0,Y=1以下(凝固過程のとき)の範囲か、Z=0,Y=1以上(融解過程のとき)の範囲で示される。
4)積雪状態(薬剤あり)、凍結状態(遷移状態であって薬剤あり)
薬剤を含んだ水の凝固点Tfと路面温度Teとの組み合わせによって、A〜Dの4つの領域に区分される。
【0077】
この4つの領域は、路面温度Teの時間的変化に対して図7のように区分される。即ち、路面温度Teが正の温度から負の温度に降下した後、凝固点Tfに至るまでは領域A、路面温度Teが凝固点Tfより下で降下すると領域B、路面温度Teが凝固点Tfより下で上昇すると領域C、路面温度Teが凝固点Tfより上で上昇し0度に至るまでは領域Dとなる。
【0078】
これまでに述べた路面状態の判定方法を実際に行った結果を図8に示す。対象期間は3日間で、その間に路面状態を目視観測した結果を図の上部に示してある。縦線縞模様を描いた期間は湿潤状態であり、その後の空白を描いた期間は乾燥状態であった。これに対して、潜熱相当の熱量比である湿潤判定値Yは、実線グラフで示したとおりに変化した。なお、図中WwはWevと同義である。この湿潤判定値Yに適切な閾値(ここでは0.1程度)を適用することで湿潤状態を判定することが可能である。
【0079】
本発明の路面状態推定方法を実施するためのシステム構成について図9を用いて説明する。このシステムは、対象となる道路4の近傍に設置された気象センサ1、路面下に埋設された光ファイバ2(光信号を長手方向の温度分布値に変換する光ファイバ温度レーダを含む)、光ファイバ2により計測されたデータを信号線6を介して伝送する信号伝送装置3、気象センサ1により計測されたデータを信号線6を介して伝送する信号伝送装置5、計測データを受信する情報収集装置7、受信したデータに基づいて路面状態推定計算を行う路面状態推定装置8、その推定結果を出力する表示部9により構成される。
【0080】
気象センサ1は、電気的な出力が得られるものであれば、気象諸量の計測方式は特に限定されない。気象センサ1は、気温計、湿度計、日射計、雪雨量計、風速計、放射収支計などを総称したものであり、大気の温度Ta、相対湿度H、日射強度I、風速vなどを計測することができる。
【0081】
図示しないが路面上の塩分濃度を測定する塩分量計が設けられている。塩分量計で測定される塩分濃度によって、路面上の水分の凝固点Tfが計算される。また、塩分濃度によって、薬剤散布の有無を判定することができる。
【0082】
また、水膜厚hW (t)については、予めレーザレーダ等により路面粗さ(路面凹凸深さの平均値)を計測しておき、降雨時の雪雨量計の計測値が路面粗さ以下であれば雪雨量計の計測値を初期水膜厚hW 0とし、降雨時の雪雨量計の計測値が路面粗さを超えるときには、路面粗さを初期水膜厚hW 0とし、ある時間が経過した後の水膜厚hW (t)は式22で求める。
【0083】
路面温度Teは、前述した第2の方法で求めた路面への流入熱Weを用いて路面温度の変化量ΔTeが算出可能であるので、前回の路面温度TeにΔTeを加算することで今回の路面温度Teの値が求まる。ただし、システム起動時などにおいて路面温度Teの初期値が必要な場合には図1で説明した手順で求める。
【0084】
光ファイバ2の埋設位置は、図4の温度T1,T2,T3…の測定点のいずれかであり、実際の深さ位置は施工上の都合で決定することができる。
【0085】
信号伝送装置3、5は、無線伝送装置であってもよい。
【0086】
情報収集装置7は、気象センサ1及び光ファイバ2からの情報を受信し、データの種類や遅延時間等を考慮して必要なデータを路面状態推定装置8に与えるものである。
【0087】
路面状態推定装置8は、これら入力データを用い、これまでに説明した計算式、手順に従い路面状態を判定するものである。
【0088】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0089】
(1)実際の道路に長距離或いは広範囲に適用した場合、赤外線又は電磁波を照射して路面温度を検出する方式よりも低コストで路面温度を検出し、路面状態推定に用いることができる。
【0090】
(2)熱電対などで直接路面温度を検出せずとも、正確に路面温度を検出することができるので、路面状態推定の精度が向上し、より適切な道路情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す地中深さ方向温度分布の初期値を求める手順を示した流れ図である。
【図2】本発明による路面状態推定方法の概略の流れを示した流れ図である。
【図3】本発明による路面状態推定方法の基本となる路面の熱収支の概念図である。
【図4】本発明において地中側から路面に流入する熱量を求めるための地中熱伝導の等価回路図である。
【図5】本発明で使用する地中側から路面に流入する熱量と地中温度変化量との関係図である。
【図6】本発明による判定値Y,Zと路面状態との関係図である。
【図7】本発明による路面温度変化と凝固点温度とによる路面状態判定区分を示した路面温度の時間変化図である。
【図8】本発明で実際に路面状態を判定したときの、熱量比及び路面状態の時間変化図である。
【図9】本発明による路面状態推定方法を実施するためのシステム構成の一例を示すブロック図である。
【図10】従来例を示す路面状態検出センサの構成図である。
【符号の説明】
1 気象センサ(気象計)
2 光ファイバ(光ファイバ温度レーダ)
4 道路
8 路面状態推定装置

Claims (1)

  1. 路面下に道路長手方向に沿わせて埋設してある光ファイバ温度レーダにより、道路長手方向の任意の地点について、該光ファイバ温度レーダの埋設深さにおける地中温度を計測するステップと、その温度計測値を時系列データとして蓄積するステップと、この時系列データから路面温度を推定するステップとを有し、
    前記時系列データから路面温度を推定するステップは、
    前記時系列データを基本周期が1日である周期関数にフーリエ変換することにより、前記埋設深さにおける温度変化の振幅及び位相を求めるステップと、
    前記埋設深さにおける温度変化の振幅及び位相と前記埋設深さとを路面における温度変化が深さ方向に伝搬するときの減衰率で逆算することにより、路面における温度変化の振幅及び位相を求めるステップと、
    前記路面における温度変化の振幅及び位相と前記減衰率とから任意深さにおける温度変化の計算式を求めるステップと、
    前記任意深さにおける温度変化の計算式の周期項に任意の実時刻を代入することで、その任意時刻の地中温度を推定するステップと、
    前記任意深さとしてゼロを代入することで路面温度を推定するステップと、を有することを特徴とする路面温度推定方法。
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