JP3766381B2 - 植物の生育測定器具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンポスト(堆肥)などの有機物の腐熟度の判定や、ある種の水溶液又は肥料含有液などが、どのような種類の植物の種子に対して適正に栽培できるか否かを簡単に試験等することができる植物の生育測定器具、及びその測定器具を用いたコンポスト化処理物の腐熟度判定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、コンポスト(堆肥)などの有機物の腐熟度判定は、耕種農家が堆肥を製造する際し、温度のあがり具合、切返し時の観察、堆積期間、色調、香り、及び手触りなどから経験的に判定している。一般に、農家の場合、長年の経験と堆肥の素材が一定している場合が多いので、あまり大きな問題は発生しない。
【0003】
今日のように、畜産農家と耕種とが分離し、畜産が益々巨大化して大量の家畜糞尿が排出されている。副資材を含めて堆肥の素材が複雑になり、加えて堆肥化の方法も複雑化しているので、従来のような経験が通用しない場面が多くなってきている。そのため、あらゆる有機物に汎用的に使えるものは、以外と少ないのが現状である。そのため、腐熟度の判定には、これらの方法をいくつか組合わせて行っているのが普通であり、家畜糞尿の堆肥化過程等において、製造された製品の腐熟度の評価判定は、極めて重要な事項となっている。
【0004】
従来における腐熟度の評価法としては、生産現場で使えるように合理的に数量化したのが、形状評価点法である。本評価点法は、農業の生産現場では、煩雑ではあるが有効な検定法とされている。この煩雑さを解消するために、客観的な検定法としては、1)作物種子及び茶の花粉等の生物の反応を利用する方法、2)炭素率(水抽出物)、BOD、COD、塩類濃度、陽イオン交換能、還元糖割合、フェノール物質、高速液体クロマトグラフィー法による化学分析による方法、3)円形ろ紙クロマトグラフィー法、ゲルクロマトグラフィー法、物体色測定法、近赤外分光分析法、及びガスセンサー法による化学物理的な分析による方法、4)植物の応答をみる圃場に近いポット栽培試験法等が知られている。
【0005】
しかしながら、これらの腐熟度の判定方法は、高価な機材を必要としたり、操作性が煩雑であったり、長期にわたる多くの作業を強いられたりするなどの課題がある。
また、素材の異なる全ての堆肥の判定に汎用的に利用できるものは少なく、近年における堆肥の複雑化している現状、例えば、家畜糞尿である牛糞、豚糞、鶏糞などの3畜種の混合物などの複合化堆肥の腐熟度の評価法は、様々な素材の堆肥に対応し、かつ、簡便なものでならなければならない要請がある。
【0006】
一方、小型シャーレ(直径5cm)に植物の種子と堆肥抽出液1mlを添加して、27℃で24時間保温静置した後、発芽数と根の伸長を測定する(発芽インデックスを求める)ことにより、堆肥の腐熟度を判定する方法が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0007】
【非特許文献1】
「Zucconi(University of Pisa,Italy),F.,ForteM.,Pera,M.and deBertoldi,M.:Evaluatinb Toxicity of Immature Compost. BioCycie,March-April: 54-57(1981)」
【0008】
しかしながら、上記発芽数と根の伸長による腐熟度の判定方法は、様々な素材の堆肥に対応する点で有効であるが、発芽インデックス法の精度を高めるためには多数のサンプル数の計測をとる必要があるので、生育環境の保持や、測定に時間と手間がかかる点に未だ課題があり、更に簡便な方法等が切望されているのが現状である。
【0009】
他方、上記発芽インデックス法の改良法として、コンポストなどの有機物から抽出物を含有する評価用培地を作成すると共に、その有機物抽出物を含まない対照用培地を作製し、これらの評価用培地及び対照用培地にもやし豆などの早熟の試験用種子をそれぞれ蒔き、発芽及び生育させた後、両試験用種子の発芽状態及び生育状態について比較することにより、コンポストなどの有機物の腐熟度を評価するようにしたことを特徴とするコンポストなどの有機物の腐熟度の評価方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、本発明者は、コンポスト化処理物の腐熟度を下記式(I)の発芽インデックスにより、コンポスト化処理物の腐熟度を判定する方法を開示し、この下記式(I)の発芽インデックスによる堆肥の腐熟判定法が従来法の形状評価点法に較べて優れており、腐熟判定に常用されている従来法のポット栽培法と高い割合で同じ評価を得られることを解明して、精度の高い腐熱判定法であることを開示している(例えば、非特許文献2参照。)。
GI=G/Gc×L/Lc×100 ………(I)
GI:発芽インデックス、G:コンポスト化処理物抽出液での発芽数
Gc:蒸留水での発芽数、L:コンポスト化処理物抽出液での茎長
Lc:蒸留水での茎長
【0010】
【特許文献1】
特開平11−89455号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【非特許文献2】
金澤晋二郎・右近秀二、「堆肥腐熟判定従来法と発芽インデックス法の比較」、日本土壌肥料学会、講演要旨集、第47巻、p.193、平成13年3月21日発行」
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に記載される腐熟度の評価方法も、水の補給がない点で有効であるが、サンプル数が多い場合は生育環境の保持や、測定は手作業であり、時間と手間がかかる点に未だ課題があるものである。
また、上記非特許文献2に記載される上記式(I)の発芽インデックスは、実際の腐熟度に近い優れた判定式であるが、その判定式を得るための植物測定器具が従来と同様に濾紙を収容したシャーレを用いたものであるので、上記と同様にサンプル数が多い場合は生育環境の保持や、測定は手作業であり、時間と手間がかかる点に未だ課題があるものである。
【0012】
更に、ある種の水溶液又は肥料含有液などが、どのような種類の植物の種子等に対して適正に栽培できるか否かを簡単に、且つ精確に試験等することができる植物の生育測定器具の出現が切望されているのが現状である。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、上記従来技術の課題及び現状等に鑑み、これを解消しようとするものであり、サンプル数が多くても簡単な作業で短時間にコンポスト(堆肥)などの有機物の腐熟度の測定ができる器具、並びに、ある種の水溶液又は肥料含有液などが、どのような種類の植物の種子等に対して適正に栽培できるか否かを簡単に、且つ精確に試験等することができる植物の生育測定器具の提供、及びその測定器具を用いたコンポスト化処理物の腐熟度判定方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記従来の課題等について、鋭意検討した結果、特定構造となる器具及びその器具を用いることにより、上記目的の植物の生育測定器具、及びその測定器具を用いたコンポスト化処理物の腐熟度判定方法が得られることに成功し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) 上方が開口した視認性を有する栽培槽を備え、該栽培槽内に設けられる仕切壁体により、少なくとも2以上に区画された各区画栽培槽から構成され、該各区画栽培槽内には、植物の種子を発芽させる着床部材と、該着床部材より発芽した植物が生育する視認性を有する筒状の生育ホルダーが並列に設けられた支持基板とを有し、上記各着床部材は生育ホルダーの下部に設けられ、かつ、上記視認性を有する各区画栽培槽には、生育ホルダー内で生育する植物の生育度合いを測定する目盛部が設けられたことを特徴とする植物の生育測定器具。
(2) 各支持基板には、筒状の生育ホルダーが2本〜30本並列に設けられる上記(1)記載の植物の生育測定器具。
(3) 各支持基板が暗色材から構成される上記(1)又は(2)記載の植物の生育測定器具。
(4) 各支持基板に並列に設けられる各生育ホルダーには、該生育ホルダー内で生育する植物の生育度合いを測定する目盛部が設けられる上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の植物の生育測定器具。
(5) コンポスト化処理物の腐熟度を下記式(I)の発芽インデックスにより、コンポスト化処理物の腐熟度を判定する方法において、下記式(I)の発芽インデックスは、上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の植物の生育測定器具を用いると共に、各区画栽培槽の少なくとも一方を評価用栽培槽、他方を対照用栽培槽とし、各評価用栽培槽、対照用栽培槽に収容するコンポスト化処理物からの抽出液を含有する評価用着床部材と、上記抽出液を含まない対照用着床部材とを作製し、これらの評価用着床部材及び対照用着床部材に夫々試験用植物の種子を蒔き、夫々筒状の生育ホルダー内で発芽、生育させた後、上記各試験用植物の種子の生育度合いを各区画栽培槽又は生育ホルダーに設けた目盛部を測定することにより求められる、コンポスト化処理物の腐熟度を判定することを特徴とするコンポスト化処理物の腐熟度判定方法。
GI=G/Gc×L/Lc×100 ………(I)
GI:発芽インデックス、G:コンポスト化処理物抽出液での発芽数
Gc:蒸留水での発芽数、L:コンポスト化処理物抽出液での茎長
Lc:蒸留水での茎長」
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施形態を示す植物の生育測定器具Aを示す図面であり、図1はその部分分解斜視図、図2(a)〜(c)は夫々正面図、平面図、側面図であり、図3は使用状態を示す概略断面図であり、図4は測定器具A内で植物の種子が発芽した状態の一例を示す概略断面図である。
本第1実施形態の植物の生育測定器具Aは、図1に示すように、上方が開口した視認性を有する栽培槽10と、該栽培槽10に収容される植物の種子を発芽させる着床部材20と、前記栽培槽10に収容されると共に、着床部材20より発芽した植物が生育する視認性を有する筒状の生育ホルダー25が並列に設けられた支持基板30と、視認性を有する蓋体40とを備えている。
【0016】
栽培槽10は、直方体状で上方が開口しており、植物の種子を発芽させる着床部材20と支持基板30とを収容する構造となっており、栽培槽10全体が視認を有する材質、具体的には、透明又は半透明な材質、本形態では透明材質となるアクリル樹脂から構成されている。
この栽培槽10の内底部11には、長手方向に仕切壁体12が立設されており該仕切壁体12により栽培槽が長手方向に2つに区画されている。また、栽培槽10の正面側及び背面側の外表面部13、14には植物の生育度合いを測定する目盛部13a,14aが生育ホルダー21の下端部を基準点15として上方に1cm毎に設けられている。
【0017】
上記支持基板30には、着床部材20より発芽した植物が生育する視認性を有する縦長の円筒状の生育ホルダー25、25……が並列に連設されている。本形態では、生育ホルダー25、25……は15本支持基板30に並列に連設されると共に、支持基板30、側面基板32及び正面基板33により四方が包囲されて一つにユニット化されている。また、各生育ホルダー25、25……の下部には、前記着床部材20が収容される構造となるように各生育ホルダー25、25……の下端部及び側面基板32の下端部は同じ長さとなるように設定され、支持基板30及び正面基板33の下端部は上記各生育ホルダー25、25……の下端部及び側面基板32の下端部より短く設定されている。
【0018】
上記生育ホルダー25、25……、側面基板32及び正面基板33、並びに栽培槽10を施蓋する蓋体40は、共に視認性を有する材質、具体的には、上記栽培槽10と同様に透明又は半透明な材質、本形態では透明材質となるアクリル樹脂から構成されている。また、この蓋体40には、施蓋して種子の発芽、生育中等で各生育ホルダー25内が水蒸気で曇ってしまうため、曇り等を防止するため、長手方向中央には、直径3mmの通気用孔41が等間隔で3箇所形成されている。この孔41が大きすぎると水分の蒸発が多くなり精確な測定を損なうため、蓋体40天面の面積に対して、開口率0.6〜0.8%とすることが好ましい。
また、上記支持基板30は、視認性を有する生育ホルダー25内で生育する植物の生育度合いを視認しやすいように暗色部材、本形態では黒色の樹脂板で構成されている。
【0019】
上記着床部材20は、水分、コンポスト化処理物からの抽出液、肥料含有水溶液等を吸液すると共に、植物の種子の着床、発芽、生育することができる材料から構成されるものであり、例えば、不織布、脱脂綿、スポンジ、濾紙、ロックウール、ガラスウール、セラミック多孔体、ヤシ殻マットなどから構成されるものである。本実施形態では、脱脂綿から構成されている。
【0020】
本発明の第1実施形態を示す植物の生育測定器具Aでは、図1及び図2に示すように、上記仕切壁体12により栽培槽10が長手方向に2つに区画されて、該区画された各区画栽培槽10a,10b内には、夫々上述の着床部材20と視認性を有する筒状の生育ホルダー25、25……が並列に設けられた支持基板30とが夫々収容される構造となっている。
【0021】
このように構成される本発明の第1実施形態を示す植物の生育測定器具Aでは、下記手順▲1▼〜▲5▼の手順で発芽準備を行うことができる。なお、下記手順▲1▼〜▲4▼の手順は使用者の利用しやすい方法で順不同、例えば、▲2▼、▲3▼、▲1▼、▲4▼の順、▲2▼、▲3▼、▲4▼、▲1▼の順、▲2▼、▲4▼、▲1▼、▲3▼の順で行うこともできる。
▲1▼ 所定量となるコンポスト化処理物からの抽出液又は肥料含有水溶液等の評価用水溶液、及び、対照用の液体(蒸留水)を各栽培槽10a、10b内に収容する。
▲2▼ 着床部材20、20を各支持基板30、30に収容する。
▲3▼ 支持基板30、30を各栽培槽10a、10b内に収容する。
▲4▼ 各支持基板30、30の各生育ホルダー25、25……内にコマツナ等の種子をピンセットなどで着床部材20、20に着床させる。
▲5▼ 蓋体40を施蓋する。
この状態で、そのまま室温下で放置して植物の種子を発芽、生育、または、図3に示すように恒温槽50内に収容して放置、例えば、25℃で7日間放置して植物の種子を発芽、生育させる。
【0022】
上記内容で生育させると、図4に示すように、種子は発芽して生育ホルダー25、25……で幼植物S、S…が生育することとなる。本第1実施形態の植物の生育測定器具Aでは、生育ホルダー25、25……、正面基板33、栽培槽10は全て視認性(透明部材)であるので、栽培槽10の外部から肉眼で各生育ホルダー25内で生育する評価用、対照用の幼植物S、S…の生育度合いを見る(視認する)ことができ、上記生育ホルダー内で生育する植物の生育度合いである茎長Lを目盛部13a、14aにより簡単に測定することができることとなる。
本実施形態では、各生育ホルダー25が15本×2列(評価用、対照用)とサンプル数が多くても簡単な作業で短時間に植物の生育度合いである茎長を目盛部13a、14aにより簡単に測定することができるものである。
本第1実施形態の生育測定器具Aでは、着床部材20に吸液させる、ある種の水溶液又は肥料含有液を適宜選択、並びに、植物の種子の選択などにより、ある種の水溶液又は肥料含有液などが、どのような種類の植物の種子に対して適正に栽培できるか否かを簡単に、且つ精確に測定することができるものとなる。また、植物の経時的な生育状態をその都度簡単に、かつ短時間に評価できるものである。更に後述するように、コンポスト(堆肥)などの有機物の腐熟度の測定に好適に使用することができるものとなる。
【0024】
図5は、本発明の第2実施形態を示す植物の生育測定器具Bを示すものである。この生育測定器具Bは、長手方向に仕切壁体12が設けられると共に、更に中央部の幅方向にも仕切壁体15が設けられて、栽培槽が4つに区画され、該区画された各区画栽培槽内には、上記第1実施形態と同様の筒状の生育ホルダー(本形態では各7本)が並列に設けられた支持基板と着床部材が夫々収容される構造となる点でのみ、上記第1実施形態に示す植物の生育測定器具Aと相違するものであり、上記第1実施形態と同様に使用されるものである。
本第2実施形態の植物の生育測定器具Bでは、栽培槽が4つに区画されるので、何れか一つを対照用とし、残り3つを試験用とすることができ、上記第1実施形態と同様に簡単に多種類の試験、測定を行うことができるものとなる。
【0025】
図6は、本発明の第3実施形態を示す植物の生育測定器具Cを示すものである。この生育測定器具Cは、筒状の生育ホルダーが30本(×2列)並列に連設される点でのみ、上記第1実施形態に示す植物の生育測定器具Aと相違するものであり、上記第1実施形態と同様に使用されるものである。
本第3実施形態の植物の生育測定器具Cでは、サンプル数が多数あっても、上記第1実施形態と同様に簡単に試験、測定を行うことができるものとなる。
【0026】
本発明の植物の生育測定器具は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で、種々変更使用することができるものである。
例えば、上記第3実施形態の測定器具Cの幅方向に仕切壁体を1つ又は2つ以上設けて、栽培槽を4つ以上に区画してもよいものである。
また、支持基板30に並列に設けられる円筒状の生育ホルダー25の数は、特に限定されないが、植物の種子の種類などにより適宜変更できるが、2本〜30本程度が好ましく、更に好ましくは、5本〜20本程度である。更に、生育ホルダー25の形状を円筒状としたが、四角筒状などであってもよい。
上記実施形態では、支持基板30を暗色部材で構成したが、目盛部の測定に支障がなければ、視認性を有する部材であってもよい。更に、目盛部の間隔を1cm毎としたが、その間隔を2mm毎、5mm毎などと適宜変更することができるものである。
【0027】
更にまた、支持基板30に並列に設けられる各生育ホルダー25又は正面基板33に、栽培槽10に設けられる目盛部13aと同一の目盛部を併設、または、栽培槽10の目盛部13aを設けないで、各生育ホルダー25又は正面基板33に目盛部を設けてもよいものである。上記栽培槽10の目盛部13aの代わりに、各生育ホルダー25等に目盛部を設けた場合には、着床部材20を支持基板30、側面基板32及び正面基板33により四方が包囲されてユニット化されたもので保持される構造、例えば、支持基板30の下端部にL字状の部材を設けて保持する構造とすれば、生育後、該ユニット化された支持基板30を取り出して、該各生育ホルダー25又は正面基板33に設けた目盛部により幼植物の茎長などを測定しても良いものである。
更に、本発明では、各生育ホルダー25は支持基板30に接着又は溶着などにより固着される構造であるので、取り扱い性が若干劣るが、側面基板32及び正面基板33を設けなくてもよく、この場合でも本発明の効果を発揮できるものである。
また、本発明の生育測定器具を用いることにより、後述するように、コンポスト化処理物の腐熟度を簡単に判定することができ、更に、土壌の健全性(植物が化学物質などの阻害を受けずに成長できる否かの度合い)等を評価することもできるものである。
【0028】
次に、上記構成となる植物の生育測定器具を用いたコンポスト化処理物の腐熟度判定方法を説明する。
本発明方法は、コンポスト化処理物の腐熟度を下記式(I)の発芽インデックスにより、コンポスト化処理物の腐熟度を判定する方法であり、上記構成の植物の生育測定器具、すなわち、上記各実施形態A〜Cの植物の生育測定器具を用いると共に、各区画栽培槽10a,10bの少なくとも一方を評価用栽培槽、他方を対照用栽培槽とし、各評価用栽培槽、対照用栽培槽に収容するコンポスト化処理物からの抽出液を含有する評価用着床部材20と、上記抽出液を含まない対照用着床部材20とを作製し、これらの評価用着床部材20及び対照用着床部材20に夫々試験用植物の種子、例えば、コマツナの種子を蒔き、夫々筒状の各生育ホルダー25内で発芽、生育させた後、上記各試験用植物の種子の生育度合い(茎長)を栽培槽10a.10bなどに設けた目盛部13a,14aより測定する。
次いで、下記式(I)により発芽インデックスを求めることにより、コンポスト化処理物の腐熟度を簡単に判定することができることとなる。
GI=G/Gc×L/Lc×100 ………(I)
GI:発芽インデックス、G:コンポスト化処理物抽出液での発芽数
Gc:蒸留水での発芽数、L:コンポスト化処理物抽出液での茎長
Lc:蒸留水での茎長
この算出された数値により、すなわち、発芽インデックス(GI)が70%以下では、不熟、70〜100%では中熟、100%以上であれば完熟堆肥となり、コンポスト化処理物の腐熟度を簡単に短時間で算出することができるものとなる。
用いることができる植物の種子としては、例えば、コマツナの他、シロイナズナ、ハツカダイコン、ダイコン、カブ、ハクサイ、モロヘイヤ、アサガオ、ワタ、ニチニチソウ、キンセンカ等を挙げることができ、これらに特に限定されるものではない。
【0029】
【実施例】
次に、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0030】
(供試堆肥及び試験方法)
1)供試堆肥
試験に供した堆肥として、牛糞堆肥(敷料:のこくず、醗酵方式:堆積、通気:有、醗酵堆積期間:3ケ月、切り返し頻度7日1回)1点、三種混合(牛、豚、鶏=5:2:3、敷料:のこくず、醗酵方式:堆積、通気:無、醗酵堆積期間:2ケ月、切り返し頻度7日1回)1点、計2点を用いた。
供試堆肥は、風乾させた後、粉砕機(HEIKO T1−100)を用いて、微粉末にして試験に供した。
2)試験方法(発芽インデックス法)
試験は、蒸留水を対照に堆肥の熱水抽出液でコマツナを栽培し、7日目の発芽数及び茎長を調べ、上記式(I)を用いて発芽インデックスを求めた。ここで7日目の発芽数と茎長を調べた理由は、3〜4日迄で種子中の養分が枯渇するので、もし良質な堆把であれば発芽した種子は堆肥の養分を吸収して旺盛な生長を示すからである。従って、本試験は7日目の発芽数と茎長をもって堆肥の腐熟度を判定した。
試験の手順は以下に示す。各粉末乾燥堆肥2.5gを100mL容三角フラスコに入れ、沸騰蒸留水47.5mL加えた後、1時間静置した。その混合液を遠心分離(5000rpm、10min)し、上清液を堆肥抽出液とした。なお、上記堆肥抽出液として、上記混合液を遠心分離(5000rpm、10min)と濾紙5Aにより濾過した濾液を堆肥抽出液としてもよい。
【0031】
上記第1実施形態の下記構成となる植物の生育測定器具Aを用いて試験した。
構成:
栽培槽:アクリル樹脂製(透明体)、3.8×10×16cm
生育ホルダー:アクリル樹脂製(透明体)、内径7mm、長さ7cm、15本
支持基板:アクリル樹脂製(黒色)
目盛部間隔:10mm
蓋体:アクリル樹脂製(透明体)、この蓋体には、曇りを防止するため、長手方向中央には、直径3mmの通気用孔が等間隔で3箇所形成されている。孔が大きすぎると水分の蒸発が多くなり精確な測定を損なうため、蓋体天面の面積に対して、開口率0.65%とした。
着床部材20、20を収容した支持基板30、30を各栽培槽10a、10bに収容し、夫々に評価用堆把抽出液20mL、対照用に蒸留水20mLを添加した。各生育ホルダー内からコマツナの種子1粒合計15粒を置き、蓋体40を施蓋した。これを恒温槽に入れ、25℃の恒温で1週間栽培した。
【0032】
栽培後、発芽数及び茎長を目盛部で測定し(読み取り)、上記式(I)によって発芽インデックスを求めた。なお、茎長は、夫々15本の平均により算出した。
牛糞堆肥:発芽率95%、茎長:7.8cm、発芽インデックス:321%
三種混合:発芽率85%、茎長:1.4cm、発芽インデックス: 52%
蒸留水:発芽率95%、茎長:2.5cm
本法の生育測定器具による発芽試験は、茎長を目盛部で測定する(読み取る)ことにより、簡単に行うことができるので、従来の濾紙を収容したシャーレを用いたものなどに較べて、極めて簡単に発芽インデックスを求めることができると共に、サンプル数が多い場合でも生育環境の保持及び測定が簡単にできることが判った。本法の生育測定器具による発芽試験は、有害成分の有無だけでなく、植物が利用できる堆肥成分の品質をも判定できるものである。
【0033】
【発明の効果】
本発明によれば、サンプル数が多くても簡単な作業で短時間にコンポスト(堆肥)などの有機物の腐熟度の測定ができる器具、並びに、ある種の水溶液又は肥料含有液などが、どのような種類の植物の種子等に対して適正に栽培できるか否かを簡単に、且つ精確に試験、並びに、土壌の健全性、例えば、植物が化学物質などの阻害を受けずに成長できる否かの度合い等を評価することができる植物の生育測定器具が提供される。
また、本発明方法によれば、本発明の生育測定器具を用いることにより、極めて簡便で、且つ迅速な方法でありながら、精度の高い腐熱度の判定が得られるコンポスト化処理物の腐熟度判定方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態を示す植物の生育測定器具の部分分解斜視図である。
【図2】 (a)〜(c)は図1の生育測定器具の夫々正面図、平面図、側面図である。
【図3】 図1の使用状態を示す概略断面図である。
【図4】 図1の測定器具内で植物の種子が発芽した状態の一例を示す概略断面図である。
【図5】 本発明の第2実施形態を示す植物の生育測定器具の平面図である。
【図6】 本発明の第3実施形態を示す植物の生育測定器具の平面図である。
【符号の説明】
A 植物の生育測定器具
10 栽培槽
13a 目盛部
Claims (5)
- 上方が開口した視認性を有する栽培槽を備え、該栽培槽内に設けられる仕切壁体により、少なくとも2以上に区画された各区画栽培槽から構成され、該各区画栽培槽内には、植物の種子を発芽させる着床部材と、該着床部材より発芽した植物が生育する視認性を有する筒状の生育ホルダーが並列に設けられた支持基板とを有し、上記各着床部材は生育ホルダーの下部に設けられ、かつ、上記視認性を有する各区画栽培槽には、生育ホルダー内で生育する植物の生育度合いを測定する目盛部が設けられたことを特徴とする植物の生育測定器具。
- 各支持基板には、筒状の生育ホルダーが2本〜30本並列に設けられる請求項1記載の植物の生育測定器具。
- 各支持基板が暗色材から構成される請求項1又は2記載の植物の生育測定器具。
- 各支持基板に並列に設けられる各生育ホルダーには、該生育ホルダー内で生育する植物の生育度合いを測定する目盛部が設けられる請求項1〜3の何れか一つに記載の植物の生育測定器具。
- コンポスト化処理物の腐熟度を下記式(I)の発芽インデックスにより、コンポスト化処理物の腐熟度を判定する方法において、下記式(I)の発芽インデックスは、請求項1〜4の何れか一つに記載の植物の生育測定器具を用いると共に、各区画栽培槽の少なくとも一方を評価用栽培槽、他方を対照用栽培槽とし、各評価用栽培槽、対照用栽培槽に収容するコンポスト化処理物からの抽出液を含有する評価用着床部材と、上記抽出液を含まない対照用着床部材とを作製し、これらの評価用着床部材及び対照用着床部材に夫々試験用植物の種子を蒔き、夫々筒状の生育ホルダー内で発芽、生育させた後、上記各試験用植物の種子の生育度合いを各区画栽培槽又は生育ホルダーに設けた目盛部を測定することにより求められる、コンポスト化処理物の腐熟度を判定することを特徴とするコンポスト化処理物の腐熟度判定方法。
GI=G/Gc×L/Lc×100 ………(I)
GI:発芽インデックス、G:コンポスト化処理物抽出液での発芽数
Gc:蒸留水での発芽数、L:コンポスト化処理物抽出液での茎長
Lc:蒸留水での茎長
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