JP3766289B2 - フローセンサ - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、流体の流量または流速を計測する熱式のフローセンサに関し、特に流量検出素子の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
流体の流量や流速を計測する熱式のフローセンサとしては、従来から種々提案されている(例:特開平4−295724号公報、特公平6−25684号公報、特開平8−146026号公報等)。
【0003】
この種のフローセンサは、温度検出手段を備えたチップ状の流量検出素子を台座の固着面に固着することによりセンサを構成したものが一般的であり、計測する流体の流れに対して水平になるように設置されて使用される。水平な状態での設置、使用は、流量検出素子の近傍に渦が発生するのを防止するためである(渦が発生すると測定精度が低下する)。
【0004】
台座の材料としては、熱膨張係数が小さい材料、例えばガラス、セラミックス等が用いられる。また、台座をケース内に封着用ガラスによって封止するタイプのセンサにおいては、封着用ガラスより融点の高い材料であることが要求されることから、金属製の台座が用いられる。また、これによって流量検出素子の水平設置が確保される。金属製台座の材料としては、熱膨張係数がガラス、セラミックスに近いコバール(Fe54%、Ni29%、Co17%の合金)が通常用いられる。
【0005】
台座の固着面に対する流量検出素子の取付け方法としては、通常素子を固着面に密接し接着剤によって固着している。このとき、接着剤が流量検出素子の表面に付着すると素子の不良となる。また、接着の良否とは関係なく外部環境の温度が変化すると、台座と流量検出素子の熱膨張係数の相違により流量検出素子のコーナー部に応力が生じるため、素子自体が破損したり電気的特性が劣化する。
【0006】
そこで、このような問題を解決するための方法の一つとして、接着剤の付着防止については例えば実開平5−18029号公報に記載された取付構造が、また応力集中の防止については例えば実開平5−18030号公報に記載された取付構造が知られている。すなわち、実開平5−18029号公報に記載された取付構造は、半導体ベアーチップ等の部品の固着エリアに突部を設け、この突部の上面を前記部品の固着面とするとともに、突部の上面の形状を前記部品の固着面と略同一にし、この突部の上面に部品を接着剤によって固着するようしたものである。このような取付構造によれば、突部と部品との間から流れ出た接着剤が突部の側面に沿って流下するため、部品の表面への付着を防止することができる利点がある。
【0007】
一方、前記実開平5−18030号公報に記載された取付構造は、半導体ベアーチップ等の部品との固着面を前記部品のコーナー部を避けた形状にし、部品を固着面に固着するようにしたものである。つまり、固着面を部品より小さく形成して部品のコーナー部を固着面に固着しないようにしたものである。このような取付構造によれば、外部環境の温度が変化したとき熱膨張係数の相違により部品に生じる応力が分散され、コーナー部への応力集中を防止することができる利点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように従来は、台座の固着面を部品と略同じかこれより若干小さい平坦面に形成し、この固着面に部品を密接して接着剤により固着していた。しかし、このような取付構造では、固着面と部品との接合面積が大きいため、台座からの熱的影響を受け易く、高精度な測定ができないという問題があった。すなわち、外部環境の温度変化に伴って台座の温度が変化すると、熱伝導により流量検出素子の温度も変化して流体の実際の温度と異なり、その結果として、温度検出手段の抵抗値が流量検出素子自体の温度変化に伴って変化してしまい、流量計測値に誤差が生じることがある。
【0009】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、比較的簡単な構造で台座からの熱の影響を緩和または遮断し、精度の高い測定を可能にしたフローセンサを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、流体の温度を検出する温度検出手段が設けられた流量検出素子と、この流量検出素子が装着される台座とを備えたフローセンサにおいて、前記台座は、金属材料によって角棒状に形成されて2つの対角線のうちのいずれか1つが流体の流れ方向と平行になるように設けられ、前記流量検出素子が固着される固着面には流体の流入、通過を可能にする流路用溝が流体の流れ方向と一致するように形成されているものである。
【0011】
本発明において、流路用溝は台座と流量検出素子との接触面積を少なくする。したがって、外部環境の温度変化により台座の温度が変化しても、流量検出素子への熱的影響を軽減することができる。また、流路用溝の形成により流量検出素子の下面も流体に接触することになるので、瞬時の温度変化にも対応できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るフローセンサの一実施の形態を示す外観斜視図、図2は同フローセンサの断面図、図3は流量検出素子の斜視図である。
【0013】
これらの図において、全体を符号1で示すフローセンサは、封着用ガラス2によってケース3内に封着された金属製の台座4および複数本のリードピン5と、台座4の上面に固着された流量検出素子7等で構成されている。
【0014】
前記ケース3は、熱膨張係数の小さい金属、例えばコバール等によって両端が開放する筒体に形成され、基端部外周面に突起9付きのフランジ10が一体に設けられ、このフランジ10が流体11が流れる配管12の内壁にシール部材13を介して密接され、ねじ、接着剤、溶接等によって固定されている。
【0015】
前記台座4は、熱膨張係数がガラスやセラミックスに近い金属、具体的にはコバールによって細長い角棒状に形成されてケース3の中央に軸線を略一致させて配設され、上端部が前記封着用ガラス2を貫通してケース3の上方に突出し、下端部が同じく封着用ガラス2を貫通してケース3の下方に突出し、さらに前記配管12に設けた孔14より配管12の外部に突出している。台座4の上面には、流体11の流入、通過を可能にする流路用溝17が形成され、未加工部分が突起18を構成している。
【0016】
前記流路用溝17は、台座4の上面の四隅部を未加工部分として残し各辺の中央に開放するように十字状に形成された溝からなり、四隅の未加工部分が四角柱からなる前記突起18を構成している。このような流路用溝17と突起18は、研削加工によって容易に形成することができる。各突起18の上面は、前記流量検出素子7の固着面18aを構成している。突起18の固着面18aは全て同一高さで、かつ台座4の軸線に対して略垂直な平坦面に形成され、前記流量検出素子7の下面隅角部が載置され、接着剤によって固着される。
【0017】
前記台座4の上面に形成される流路用溝としては、図3に示した十字状の溝17に限らず、図4に示すように流体11の流れ方向と平行な直線状の溝20であってもよい。すなわち、図4に示す直線状の流路用溝20は、台座4の一方の対角線上の角部に開放するように形成した溝で、流体11の流れ方向と直交する対角線上の角部に未加工部分をそれぞれ残し、これらの未加工部分を流量検出素子7が設置される突起18としている。
【0018】
また、流路用溝としては、台座4の4つの辺のうち流体11の流れ方向と直交する2つの辺の中央に開放するように形成した直線状の溝であってもよい。
【0019】
前記リードピン5は封着用ガラス2を貫通して設けられ、上端が前記流量検出素子7にボンディングワイヤ25によって電気的に接続され、下端部が前記配管12の外部に突出している。
【0020】
前記流量検出素子7は、前記台座4の固着面4aに載置され接着剤によって固着されるシリコン基板26を有している。シリコン基板26は、1辺の長さが1.7mm程度、厚さが0.5mm程度の正方形のチップ状に形成され、上面中央部に多数の開口部27aを有するダイアフラム27が形成されている。ダイアフラム27の下方は、異方性エッチングによって図示しない空間部が形成されており、前記開口部27aを介して流体11の流通を可能にしている。なお、このような空間部の形成は、特公平6−25684号公報に開示されており、従来公知である。
【0021】
前記ダイアフラム27の上面には傍熱型の温度検出手段30を構成する1つの発熱体(抵抗ヒータ)31と、2つの温度センサ32A,32Bが周知の薄膜成形技術によって形成されている。さらに、シリコン基板26の上面外周部には、複数の電極パッド33と配線用金属薄膜34が薄膜成形技術により前記発熱体31、温度センサ32A,32Bの形成と同時に形成されている。例えば、白金等の材料をシリコン基板26の表面に形成した電気絶縁膜の表面に蒸着し、所定のパターンにエッチングすることにより形成され、発熱体31と温度センサ32A,32Bが電極パッド33に配線用金属薄膜34を介してそれぞれ電気的に接続されている。また、各電極パッド33は、前記リードピン5にボンディングワイヤ25を介して電気的に接続されている。
【0022】
前記2つの温度センサ32A,32Bは、発熱体31を挟んで流体11の上流側と下流側にそれぞれ配列されている。発熱体31のパターン幅は10〜15μm、温度センサ32A,32Bのパターン幅は5〜10μmである。
【0023】
このような流量検出素子7を備えたフローセンサ1は、配管12内に流量検出素子7の上面が流体11の流れ方向(矢印方向)と平行になるように取付けられる。また、取付けに際しては、流体11の流れを乱さないようにするために流路用溝17または20が流体11の流れ方向と一致するように取付ける。図3に示した十字状の流路用溝17の場合は、流量検出素子7の2つの対角線のうちのいずれか一方が流体11の流れ方向と平行になるように、言い換えれば流路用溝17が流体11の流れ方向に対して略45°の角度で交差するように、配管12内に取付けることが望ましい。
【0024】
このような構造からなるフローセンサ1において、通電によって発熱体31を周囲温度よりもある一定の高い温度に加熱した状態で流体11を図3の矢印方向に流すと、発熱体31の上流側温度センサ32Aと下流側温度センサ32Bの間に温度差が生じるので、図5に示すようなブリッジ回路によってその電圧差または抵抗値差を検出することにより、流体11の流速または流量を計測する。
【0025】
ここで、図5に示す回路は2つの温度センサ32A,32Bを含むブリッジ回路を用いて電圧出力を供給するものである。この場合、2つの温度センサ32A,32Bを用いているので、流体11の流れの方向を検出することができる利点がある。なお、R1 ,R2 は抵抗、OPはオペアンプである。
【0026】
上記した構造からなるフローセンサ1によれば、金属製の台座4の上面に流路用溝17(または20)を形成しているので、台座4と流量検出素子7の接触面積を小さくすることができる。したがって、外部環境の温度変化に伴い台座4の温度が変化しても、流量検出素子7に対する熱的影響を軽減することができ、精度の高い流量測定を行うことができる。また、流量検出素子7は、上面のみならず下面も流体11に接しているので、流体11の温度が急激に変化したときでも、これに追従して速やかに流体11の温度と等しくなり、より一層精度の高い測定を行うことができる。
【0027】
なお、上記した実施の形態においては、発熱体31から出た熱による流体11の空間的温度分布に流れによって偏りを生じさせ、これを温度センサ32A,32Bで検出する傍熱型のセンサを示したが、これに限らず流体11により発熱体31の熱が奪われることによる電力の変化や抵抗の変化を検出し、流量または流速を検出する自己発熱型のセンサを用いてもよい。また、温度センサは2つに限らず、1つであってもよい。要するに、流量検出素子7としては、流量または流速を計測し得るものであれば何でもよい。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係るフローセンサによれば、流量検出素子に対する台座からの熱的影響を軽減することができるので、測定精度を向上させることができる。また、流量検出素子と流体との接触面積が増大するため、瞬時の流体の温度変化にも対応でき、一層精度の高い測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るフローセンサの一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】 同フローセンサの断面図である。
【図3】 流量検出素子の斜視図である。
【図4】 流路用溝の他の実施の形態を示す斜視図である。
【図5】 流量検出素子の電気回路図である。
【符号の説明】
1…フローセンサ、2…封着用ガラス、3…ケース、4…台座、5…リードピン、7…流量検出素子、11…流体、17…流路用溝、18…突起、20…流路用溝、30…温度検出手段、31…発熱体、32A,32B…温度センサ。
Claims (1)
- 流体の温度を検出する温度検出手段が設けられた流量検出素子と、この流量検出素子が装着される台座とを備えたフローセンサにおいて、
前記台座は、金属材料によって角棒状に形成されて2つの対角線のうちのいずれか1つが流体の流れ方向と平行になるように設けられ、前記流量検出素子が固着される固着面には流体の流入、通過を可能にする流路用溝が流体の流れ方向と一致するように形成されていることを特徴とするフローセンサ。
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