JP3765908B2 - 故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新聞紙等の故紙から脱墨、脱灰分等により再生した紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分等を除去する濃縮無端状織物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来知られている濃縮用無端織物としては例えば、織物の巾方向両端部に突起を縫いつけた特開平2−14090号公報記載のものが知られている。この他特開平4−31682号公報や特開平8−144185号公報に記載された提案がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
故紙等の紙資料の溶解後からの濃縮は製紙とは異なり、溶解物は織物上に均一に少量づつ供給されるのではなく、固形分が不均一に分散した状態で放出される。そのため織物に不均一に大きな荷重がかかり、回転する無端状織物は斜行し、時にはインナーロールから外れてしまう。
この現象を防止するためインナーロールに溝を設け、この溝と嵌合するガイド突起を織物の巾方向両端部に設けることが試みられたが、ガイド突起の織物の中心側の端面部で織物が走行中に短時間で切断してしまうのである。
インナーロールに嵌合溝を設けずにインナーロールの端面にガイド突起の側面を接触して斜行を防止する場合も同様に切断が発生する。
前述の特開平2−14090号の公知技術はこの切断を防止するためガイド突起を織物に縫いつけている。縫合による固着は融着とは異なり、突起と織物の間に遊びがあるため織物の切断がかなり緩和される。
しかしながら、切断も完全には防止出来ず、ガイド性能が低下する欠点がある。特開平4−361682号公報には耳部に抗屈曲部を設けて、この抗屈曲部にガイド突起を設けた濃縮用無端状織物が示されている。
この織物はガイド性能は優れているが、使用中に抗屈曲部の内側末端部で織物が切断する問題が発生した。
さらに、特開平8−144185には織物の緯糸を少なくとも3層にすることにより、織物の切断を防止する濃縮用無端状織物が示されている。
これ等の提案により織物の切断は、かなり防止できるようになったが、抗屈曲部の内側末端部で切断することは完全に防止できず、織物の構造自体が限定されてしまうという欠点があった。
本発明は上記の欠点を解決し良好なガイド性と耐切断強度を有する織物を提供するものである。
なお、明細書中の用語について次のように定義する。
抗屈曲部の「内側」: 抗屈曲部の「無端状織物の巾方向中心側」
抗屈曲部の「外側」: 抗屈曲部の「無端状織物の巾方向端部側」
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、
「1. プラスチックモノフィラメントで製織した織物で形成した無端状織物と、この無端状織物の巾方向の耳部の少なくとも一端に配設した、熱可塑性樹脂を耳部の織物の空間の85%以上を充填して織物の組織内に含有する巾30〜50mmの抗屈曲部と、該抗屈曲部の一面に該充填熱可塑性樹脂と一体に融着結合して配設したポリウレタン樹脂で成形したガイド突起とからなる、故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物において、抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側の剛性が無端状織物の巾方向端部側の剛性より小さい抗屈曲部であることを特徴とする、故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
2. 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側の厚さを無端状織物の巾方向中心側端部方向に徐々に薄く形成した抗屈曲部である、請求項1に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
3. 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部近傍に孔を形成した抗屈曲部である、1項に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
4. 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部近傍に溝を形成した抗屈曲部である、1項に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
5. 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部を波状に形成した抗屈曲部である、1項に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
6. 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部を鋸波状に形成した抗屈曲部である、1項に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
7. 熱可塑性樹脂がポリウレタン樹脂または塩化ビニル樹脂である、1項ないし6項のいずれか1項に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。」
に関する。
本発明で使用する織物は経糸にポリエチレンテレフタレートモノフィラメントを使用し、緯糸にポリエチレンテレフタレートモノフィラメントおよび/またはポリアミドモノフィラメントを用いて製織した、空間率45%〜70%厚さ0.5mm〜1.2mmの織物である。
【0005】
【発明の実施の形態】
織物は経糸と緯糸により織成されるので剛体ではなく仕上げ加工を行っても全体が均一な伸び、抗張力、剛性を有しているわけでない。したがって無端状で回転させると伸びの大きい側から伸びの小さい側に織物は寄って行く。また織物の走行面のクリンプの配列により織物は斜行し片側に寄る。更に無端状で回転させる装置の走行のセンター調節が不十分であるとやはり織物は片側に寄る。
【0006】
この様な種々の原因により織物の斜行が発生する。したがって斜行の方向はそれぞれの織物により決定されまた無端状で回転させる装置により定まる。
したがって斜行する方向が定まっていれば、その反対側の耳部にガイド突起を設ければよいが通常は斜行側は不明であるので両側耳部に配置するのが望ましい。
ところで、故紙等の紙資料の濃縮は、これ等の溶解物を織物上や織物とインナーロールの間に供給して、織物とインナーロールの間で圧縮したり、遠心力で脱水を行う。したがって重量の大きい物が織物上や織物とインナーロールの間に置かれると張力が変化し、斜行が助長される。斜行が激しいと織物はインナーロールからはずれてしまうのである。
【0007】
織物の巾方向端部にガイド突起を配設し、インナーロールに設けた溝と嵌合させてガイドすると、溝の深さがガイド突起とほぼ等しい場合は織物がガイド突起に対して内側に移動しようとする場合、インナーロールと接触している織物の部分ではガイド突起の内側面が溝の内側の壁面に当接するが織物が更に内側に移動しようとするのでガイド突起は内側に引かれて溝から外れようとしてガイド突起の外側が持ち上がり織物はガイド突起の内側面付近で屈曲する。
【0008】
一方織物がガイド突起に対して外側に移動しようとする場合、インナーロールと接触している織物の部分ではガイド突起の外側面が溝の外側の壁面に当接するが織物が更に外側に移動しようとするのでガイド突起は外側に押されて溝から外れようとしてガイド突起の内側が持ち上がり織物はガイド突起に押し付けられて屈曲する。
そしてインナーロールから離れると屈曲が取り除かれる。この屈曲運動が繰り返し行われるので織物はガイド突起の内方側面付近で切断する。
【0009】
ガイド突起の織物との固着をゆるめ、遊びを設けて織物がガイド突起に押しつけられた時がガイド突起が少し移動するようにすると織物の屈曲は多少緩和されるが、切断を防止することは出来ない。しかも、ガイド突起の固着がゆるいとガイド性能が減少し、インナーロールの溝から脱出する傾向が大きくなる欠点がある。突起は織物の巾方向の一端に設けても良く、両端に設けてもよい。勿論ガイド突起はインナーロール端面と接触してガイドしてもよい。
この場合はガイド突起は織物の巾方向両端に配設するのが好適である。そしてこの場合は織物を張架したときにガイド突起はインナーロールに直接的に張架されていないため直接的に張力が働かず織物より張力が低くなる。
したがって、インナーロールと接触している織物の部分でガイド突起はインナーロールの端面でインナーロールの中心軸方向に屈曲する。このため織物はガイド突起の内側面付近で屈曲する。インナーロールから離れると屈曲は緩やかに曲がる程度に緩和される。この屈曲が連続的に繰り返されると、ガイド突起のインナーロールの中心軸方向えの屈曲によりガイド突起付近の織物がインナーロールの端肩部で摩耗されることにより織物はガイド突起の内側面付近で切断する。
なお、溝の深さがガイド突起より大きい溝を設けたインナーロールを用いた場合も上記と同様に切断する。
【0010】
本発明は、織物の巾方向端部のガイドロールを配設する部位に巾30〜50mmの熱可塑性樹脂による抗屈曲部を配置し、この抗屈折部にガイド突起を融着して固着する。このように融着することにより織物と、強固に結合するのでガイドは良好となる。
抗屈曲部は、織物の巾方向端部に熱可塑性樹脂シートを重ねて加熱圧着し、熱可塑性樹脂を織物組織中にも浸透し織物と一体に結合して屈曲しない耳部が形成される。抗屈曲部は巾30mm〜50mmは必要である。30mm以下では屈折が発生し易い。50mm以上でも効果は変らない。
本発明で使用する熱可塑性樹脂としてはポリウレタン樹脂、ナイロン、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等が用いられるが、ポリウレタン樹脂が最も好ましい。以下ポリウレタン樹脂を用いた場合をもって説明する。
【0011】
また、抗屈曲部のポリウレタン樹脂の量は、織物の空間の85%以上を充填する必要がある。85%以下では抗屈曲効果が小さく、ガイド突起との融着も不充分となる。ガイド突起は抗屈曲部と融着させるので、上記のポリウレタン樹脂シートと同じポリウレタン樹脂で成形した突起が最も好ましい。突起の形状はインナーロールの溝に合う形状であれば断面矩形、円形、三角形等適宜でよいが、断面台形の突起が融着面積が大きいので好適である。
【0012】
突起および耳部の加工にポリウレタン樹脂を使用するのは強度が大きく、耐摩耗性も良好で、織物との結合も良く、可撓性が大きいのでインナーロールでの折り返しが良好であるからである。
突起は連続した棒状体でも良く、不連続な何本かの棒状体で形成してもよいが、不連続状とするとインナーロールでの折り返しが一層良好になる。
本発明は、さらに、抗屈曲部の内側の剛性を外側の剛性より小さく形成している。このように剛性を小さくするために、抗屈曲部と織物の境目において剛性の違いがなくなり、その部分で織物が局部的に屈曲することが防止され、切断が発生しない。抗屈曲部の剛性を小さくした内側部分は、特に限定されるものではないが、厚さを右内側端部方向の徐々に薄く形成したり、孔や溝を形成したり、端部を波状や鋸波状に形成することにより、作成することができる。
なお、抗屈曲部の樹脂は、織物の空間の85%以上を充填することが望ましいと前述したが、剛性を小さくした内側部分は、薄く形成したり、孔を形成したりするため、85%以上充填できない場合もある。
【0013】
本発明の無端状織物は、織物の巾方向端部の耳部に、厚さ1mm〜1.5mmのポリウレタン樹脂シートを重ね加熱圧着して樹脂を織物の内部に充分浸透させ、反対側の表面近傍まで浸透させる。
ついで織物のシートを圧着した反対面から同質のポリウレタン樹脂で成形した突起を加熱圧着して、両ポリウレタン樹脂を融着して一体とすることにより製造することが出来る。
本発明の紙資料の濃縮用無端状織物はインナーロールと織物の間のニップ圧と高速回転による遠心力により連続的に紙資料の水溶液からインキ粒子、灰分、紙を形成しない微細繊維等を除去するのである。
【0014】
【実施例】
本発明の実施例を図面について説明する。
【0015】
図1は本発明の織物の巾方向端部の耳部に抗屈曲部とガイド突起を配設するところを断面で示す。1は織物で経糸2と緯糸3で織成されている。巾方向の端部の一面にポリウレタン樹脂シートの抗屈曲部4が重ねられ、反対側に断面台形の突起8が融着されるのである。
抗屈曲部の内側5は内側端部に向って、徐々に薄く形成されており、剛性が小さくなっている。
【0016】
図2はガイド突起を設けた織物の端部断面を示す。織物に加熱圧着されたポリウレタン樹脂シートは織物の組織内に浸透し、反対側表面付近にまで浸透していることがわかる。こうして抗屈曲部が形成されるのである。そしてガイド突起も加熱圧着され、一部は織物組織内に浸透して抗屈曲部と一体に融着している。こうして織物の耳部はポリウレタン樹脂により包まれた構造となる。したがって、ガイド突起の内側の側面付近でも織物は屈曲しない。
【0017】
図3は本発明の織物をインナーロール9に張架した断面を示すインナーロールの端面にガイド突起が接触している。この例では織物の両端の耳部に突起を配設しているが、片方の耳部にのみ配置しても、斜行の増巾が防止されるのでインナーロールからの脱落は発生しない。
図4は、本発明の他の抗屈曲部を示す平面図と断面図である。抗屈曲部の内側5に孔6を形成することにより剛性を小さくしている。
図5は、本発明の他の抗屈曲部を示す平面図と断面図である。抗屈曲部の内側5に溝7を形成することにより剛性を小さくしている。
図6は、本発明の他の抗屈曲部を示す平面図と断面図である。抗屈曲部の内側5を波状に形成することにより剛性を小さくしている。
図7は、本発明の他の抗屈曲部を示す平面図と断面図である。抗屈曲部の内側5を鋸波状形成することにより剛性を小さくしている。
【0018】
図8は本発明の織物を用いて故紙の紙資料を濃縮する濃縮装置を説明する。
紙資料10はインナーロールと織物の間で圧縮されたり、折り返し部で遠心脱水され、収集される。
【0019】
図9は比較試験に用いた装置を説明する。2本のインナーロールは織物の左右端部の周長を変え織物が斜行するように配置されている。
比較試験
実施例と比較試験で使用した織物は、表1で示す同じ織物である。
【0020】
【表1】
【0021】
使用した織物は上下2枚の織物を接結糸によって結合した厚さ1.10mmの上下二層の織物である。
耳部の含有するポリウレタン樹脂は、0.082g/cm2であり織物の空間の100%を充填した。
実施例
厚さ1mmのポリウレタン樹脂シートとの抗屈曲部の内側を内側端部方向に向って徐々に薄く形成した抗屈曲部を両耳部に配設し、ここにガイド突起を融着した図2の無端状織物。
比較例1.
ポリウレタン樹脂で形成したガイド突起を両耳部に糸で縫い付けた特開平2−14090号公報記載の無端状織物。
比較例2.
ポリウレタン樹脂でシートの抗屈曲部の内側の剛性を小さく形成していない抗屈曲部を両耳部に配設し、ここにガイド突起を融着した特開平4−361682号公報記載の無端状織物。
試験方法
図4に示す装置を用いた。すなわち、あらかじめ左右の周長を変え、織物が斜行するように配置した2本のロールに織物を張架して400m/minで回転させた。結果を表2に示す。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
本発明の織物は耳部の切断が発生せず長時間の使用に耐える。
【図面の簡単な説明】
【図1】織物に抗屈曲部とガイド突起を配設する前の状態を示す一部断面図である。
【図2】織物に抗屈曲部とガイド突起を一体に結合して配設したところを示す一部断面図である。
【図3】本発明の織物をロールに張架したところを示す。
【図4】本発明の別の抗屈曲部を示す平面図及び断面図である。
【図5】本発明の別の抗屈曲部を示す平面図及び断面図である。
【図6】本発明の別の抗屈曲部を示す平面図及び断面図である。
【図7】本発明の別の抗屈曲部を示す平面図及び断面図である。
【図8】パルプ濃縮工程を示す説明図である。
【図9】比較試験の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 織物
2 経糸
3 緯糸
4 抗屈曲部断面
5 抗屈曲部の内側
6 孔
7 溝
8 ガイド突起
9 ロール
10 パルプ
11 ヘッドボックス
Claims (7)
- プラスチックモノフィラメントで製織した織物で形成した無端状織物と、この無端状織物の巾方向の耳部の少なくとも一端に配設した、熱可塑性樹脂を耳部の織物の空間の85%以上を充填して織物の組織内に含有する巾30〜50mmの抗屈曲部と、該抗屈曲部の一面に該充填熱可塑性樹脂と一体に融着結合して配設したポリウレタン樹脂で成形したガイド突起とからなる、故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物において、抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側の剛性が無端状織物の巾方向端部側の剛性より小さい抗屈曲部であることを特徴とする、故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
- 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側の厚さを無端状織物の巾方向中心側端部方向に徐々に薄く形成した抗屈曲部である、請求項1に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
- 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部近傍に孔を形成した抗屈曲部である、請求項1に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
- 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部近傍に溝を形成した抗屈曲部である、請求項1に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
- 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部を波状に形成した抗屈曲部である、請求項1に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
- 抗屈曲部が無端状織物の巾方向中心側端部を鋸波状に形成した抗屈曲部である、請求項1に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
- 熱可塑性樹脂がポリウレタン樹脂または塩化ビニル樹脂である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載された故紙等の紙資料の濃縮用無端状織物。
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