JP3764845B2 - データ処理装置および記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動体のスピンに伴うドップラデータの誤差を除去するデータ処理装置および記録媒体に関するものである。例えばスピン型人工衛星の軌道決定の精度向上を目的として、誤差を除去する処理装置等で使用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
人工衛星の軌道を決定するのに必要なデータには、地上局と人工衛星の距離を表すレンジデータ(地上局からの人工衛星までの電波の往復時間から求める)、地上局からの視線方向に対する人工衛星の速度を表すドップラデータ、地上局のアンテナの方位角、仰角などがある。これらのデータのうち、ドップラデータについては、人工衛星がスピン型の場合、人工衛星のアンテナが視線方向に対して近づいたり遠ざかったりすることになり、人工衛星のアンテナの取り付け位置と人工衛星のスピンレート、および人工衛星の姿勢に応じた正弦波形の信号があたかも誤差として重畳することになる。
【0003】
図10は、人工衛星と地上局との関係を示す図である。31は人工衛星の本体を表し、32は人工衛星のスピン軸を表し、33は人工衛星のアンテナを表し、34は地上局を表し、Rはアンテナのオフセット量を表し、θは人工衛星のスピン軸の視線方向に対する傾きを表す。重畳された誤差信号は、スピンレートをω、時間をt、初期位相をφとすると、
Rcosθωsin(ωt+φ)・・・・・・・・・・・・・・▲1▼
と表せる。
【0004】
人工衛星の軌道決定を行なう際に、重畳された誤差信号▲1▼を除去しないドップラデータを用いると軌道決定精度を悪化させる。このため、従来は、特許第2735140号(特願平4−30760)に記載されているように、重畳された誤差信号▲1▼を除去をしないドップラデータを用いてまず人工衛星の軌道決定を行ない、得られたO−C(観測されたドップラデータOと得られた軌道決定値に基づくドップラデータCとの差)から、ドップラデータOに重畳される誤差信号▲1▼としての正弦波を推定し、ドップラデータOからこの重畳信号を除去し、誤差信号の除去されたドップラデータを用いて再度、軌道決定を行なうことを繰り返すことにより、軌道決定精度の向上を図っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこの方法では、軌道決定を複数回実施する必要があり処理量が多くなってしまうと共に、重畳された誤差信号を除去するために全データを一括して扱うため、リアルタイムでの処理に向かないという問題があった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するため、軌道決定処理の実行前に、入力されたドップラデータから逐次処理して重畳誤差信号を除去して軌道決定を1回の処理で済ませ、リアルタイムに軌道決定を可能にすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
図1を参照して課題を解決するための手段を説明する。
図1において、ドップラデータ1は、スピンする移動体から受信したドップラデータである。
【0008】
テレメトリデータ2は、スピンする移動体から受信した、ここでは、スピンレートデータである。
重畳誤差成分除去手段3は、スピンする移動体から受信したドップラデータおよびスピンレートデータをもとに、重畳誤差成分を除去したドップラデータ4を生成するものである。
【0009】
次に、動作を説明する。
重畳誤差成分除去手段3がスピンする移動体(例えば人工衛星)から受信したドップラデータ1およびスピンレートデータ2をもとに、スピンしている移動体を、スピンしていないとしたときのドップラ信号を表す第1の関数、およびスピンしているときのスピンに伴って重畳される周期的な誤差信号を表す第2の関数で近似関数を表現してこれら第1の関数および第2の関数のパラメータを推定するようにしている。
【0010】
この際、第1の関数および第2の関数のパラメータを推定する際に、両者の関数のパラメータを線型部分と非線型部分とに分け、線型部分を最小自乗法で解く第1の処理手段と、非線型部分を線型化して繰り返し法によって最小自乗法で解く第2の処理手段とを設け、第1の処理手段と第2の処理手段とを交互に実行させ、関数のパラメータを推定するようにしている。
【0011】
また、受信したドップラデータ列を所定データずらした所定処理単位データブロックに順次分離し、分離した処理単位データブロックについて、第1の関数および第2の関数のパラメータをそれぞれ推定して第1の関数の代表データの和集合を生成するようにしている。
【0012】
また、第1の関数を多項式関数および第2の関数を正弦関数とするようにしている。
従って、スピンする移動体(例えば人工衛星)の軌道決定処理の実行前に、入力(観測)されたドップラデータから逐次処理して重畳誤差信号を除去して軌道決定を1回の処理で済ませ、リアルタイムに軌道決定を行なうことが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
次に、図1から図9を用いて本発明の実施の形態および動作を順次詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明のシステム構成図を示す。
図1において、ドップラデータ1は、スピンする移動体(例えば人工衛星)から受信(観測)したドップラデータである(図3の(a)参照)。
【0015】
テレメトリデータ2は、スピンする移動体から受信したテレメトリデータ、ここでは、単位時間あたりの回転数を示すスピンレートデータである(図3の(b)参照)。
【0016】
重畳誤差成分除去手段3は、スピンする移動体(人工衛星)から受信したドップラデータ1およびスピンレートデータ2をもとに、重畳誤差成分を除去したドップラデータ4を生成するものである(図2から図9を用いて後述する)。
【0017】
軌道決定手段6は、誤差を除去した修正後のドップラデータ4およびレンジデータ5等をもとに移動体の軌道を決定(計算)するものである。
次に、図2のフローチャートの順番に従い、図1の構成の動作を詳細に説明する。
【0018】
図2は、本発明の動作説明フローチャートを示す。
図2において、S1は、近似関数を定義する。これば、スピンする移動体(人工衛星、以下同じ)のスピンを含んだドップラデータを表現する関数として近似関数を定義する。ここでは、近似関数y(t)を以下のように定義する。
【0019】
y(t)=yd(t)+yp(t) ・・・・・・・・・・(式1)
ここで、yd(t)は多項式関数であって、移動体がスピンしていない場合のドップラデータを表す以下に示す関数(式2)である。yp(t)は正弦関数であって、移動体がスピンしていることに伴って多項式関数yd(t)に重畳される周期的な誤差信号を表す以下に示す関数(式3)である。
【0020】
Figure 0003764845
ここで、tはドップラデータの各データに付けられている時刻であり、t0はデータ開始時刻を表す。
【0021】
a0〜anは多項式関数の係数であり、推定パラメータとする。
ωは移動体(人工衛星)のスピンレートであり、この値はテレメトリデータ(人工衛星の操作、監視用データ)から精度よく得られるものであり、観測データをとりこむ期間中においては、殆ど一定とみなしてよいので、定数として用いる。
【0022】
パラメータAは従来技術で説明した▲1▼の誤差信号の式におけるRcosθωに相当する。ここでRはアンテナオフセット量であることからハードウェア的に固定の値となる。ωはスピンレートであり既述したように殆ど一定となる。cosθはスピン軸の傾きであるが、正確な先見情報がないため、パラメータAについては推定パラメータとする。
【0023】
φは時刻t0における人工衛星スピンの位相(初期位相)であり、推定パラメータとする。
S2は、ドップラ観測データを取り込む。これは、後述する図3の(a)に示すようなドップラ観測データ(図1のドップラデータ1)を取り込む。
【0024】
S3は、スピンレートデータを取り込む。これは、後述する図3の(b)に示すようなスピンレートデータ(移動体がスピンしている速度rpm)を取り込む。
【0025】
S4は、観測データを処理単位データブロックに分解する。これは、S2で取り込んだ図3の(a)のドップラデータ1を、後述する図4に示すように、先頭からnデータ(処理単位)毎に1つづつずらした処理単位データブロック(各n個のドップラデータからなるブロック)に分離(分割)する。式で表現すると下記のようになる。
【0026】
処理単位データブロック1:f(t0),f(t0+tc),f(t0+2tc),・・・・,f(t0+(n−1)*tc)
処理単位データブロック2:f(t0+tc),f(t0+2tc),・・・・,f(t0+n*tc)
処理単位データブロック3:f(t0+2tc),・・・・,f(t0+(n+1)*tc)
以下同様。
【0027】
S5は、近似関数のパラメータを推定する。これは、後述する図5のフローチャートに従い、近似関数(式1)を(式2)の多項式関数と(式3)の正弦関数の和としたときのこれら関数のパラメータを、S4で分解した各処理単位データブロック毎にそれぞれ推定する。
【0028】
S6は、全ブロックについて処理完了か判別する。YESの場合には、S7に進む。NOの場合には、次の処理単位データブロックについて関数のパラメータを推定することを繰り返す。
【0029】
S7は、各ブロック代表データの和集合を修正後ドップラ観測データとする。ただし、両端の代表データから観測データ端までは両端ブロックの値を取る。これは、後述する図7に示すように、S5でブロック毎に推定したパラメータを設定した修正後ドップ観測データの代表点(例えば中央の点)を全て取り出し、両端のブロックの代表点からそれぞれの端までは当該両端のブロックのデータを取る。
【0030】
S8は、レンジ観測データを取り込む。これは、後述する図8の(a)に示す、例えば地上局と人工衛星との間の距離を取り込む。
S9は、軌道決定処理を行なう。これは、S7で決定した修正後のドップラ観測データと、S8で取り込んだレンジ観測データをもとに人工衛星の軌道の決定を行なう。
【0031】
以上によって、近似関数(式1)を多項式関数(式2)と正弦関数(式3)の和と定義し、観測したドップラデータを処理単位データブロックに分離して各処理単位データブロック毎に関数のパラメータを推定(図5を用いて後述)し、推定したパラメータを設定した各処理単位データブロックの代表点および両端は当該両端の処理単位データブロックの値を取って修正後のドップラデータを作成することにより、スピンする移動体(人工衛星)の軌道決定処理の実行前に、入力(観測)されたドップラデータから逐次処理して重畳誤差信号を除去して軌道決定を1回の処理で済ませ、リアルタイムに軌道決定を行なうことが可能となる。以下順次詳細に説明する。
【0032】
図3は、本発明の説明図(その1)を示す。
図3の(a)は、ドップラ観測データ例を示す。これは、例えば移動体から放射された一定周波数の電波について受信したときの周波数変位(Δf(ti),観測周波数)の例を模式的に示す。ここでは、移動体がスピンしているため、正弦関数で観測周波数が変位している。
【0033】
図3の(b)は、スピンレートデータ例を示す。これは、スピンしている移動体から当該移動体のスピンレートのデータを受信したスピンレートデータである。
【0034】
図4は、本発明の説明図(その2)を示す。これは、既述したように、受信したN個のドップラデータを、先頭から1つづつずらして図示のようにn個のデータを1つの処理単位データブロックに分解する様子を模式的に示す。
【0035】
以上のように分解した処理単位データブロックについいて、既述した図2のS5(後述する図5のフローチャート)でパラメータをそれぞれ推定する。
図5は、本発明の動作説明フローチャート(近似関数のパラメータ推定)を示す。これは、既述した図2のS5の詳細フローチャートである。
【0036】
図5において、S11は、まず、φ=[2kπ/M:k=0,1,2,・・・,M−1]とし、それぞれのφに対して、評価関数Jを最小とするパラメータ
・(a0,a1,a2・・・am)
・A
を線型最小自乗法により求め、このときの評価関数値Jの値Jmin(φ)を求める。続いて、それぞれのφに対して得られたJmin(φ)の中で最も小さいJmin(φ)に対応するφを、以降の処理におけるφの初期値とする。
【0037】
S12は、φを固定とし、線型最小自乗法により、評価関数Jを最小とする(a0,a1,a2・・・am),Aを求める。
S13は、(a0,a1,a2・・・am),Aを固定とし、φ’=φ+Δφとおいて、非線型最小自乗法により評価関数Jを最小とするΔφを求める。
【0038】
S14は、φ値を更新する((φ+Δφ)を新しいφとする)。
S15は、評価関数の変化量が基準値以下か判別する。YESの場合には、終了する。NOの場合には、S12に戻り繰り返す。
【0039】
ここで、S11からS15について詳述すると、
(1) 既述した処理単位データブロック毎に、近似関数(式1)で最小自乗法によるフィッティングを行なう。フィッティングで求めるべきパラメータは、
P=(a,A,φ)
である。ここで、
a=(a0,a1,a2・・・am)
である。ω(移動体(人工衛星)のスピンレート)はテレメトリデータから精度よく求まるので、ここでは定数とする。また、パラメータAは(式3)の誤差信号の式(正弦関数)のRcosθωに相当する。評価関数Jは、
Figure 0003764845
ここで、
Figure 0003764845
であり、このJを最小にするパラメータを求めるのが最小自乗法である。なお、評価関数 J(式4)には、通常、データの重みが入るが、ここでは簡単のために重みは全て等しいとして省略した。
【0040】
近似関数(式1)は、非線型の関数であるので、最小自乗法を解くには、パラメータのある近似値のまわりにテイラー展開をし、1次の項までとることで線型化するのが一般的であるが、(式1)のパラメータは、φを除けば線型であることに着目する。即ち、φを固定すれば、(a0,a1,a2・・・am)とAは線型最小自乗法により容易に求めることができる。
【0041】
(2) 次に、このようにして求まった(a0,a1,a2・・・am)とAを固定し、非線型最小自乗法を解いてφを求める。
(3) こうして求めたφを固定して、再び線型最小自乗法により、(a0,a1,a2・・・am)とAを求める。次に、再び、非線型最小自乗法を解いてφを求める。以上を繰り返す。
【0042】
(4) このようにして、線型部分の最小自乗法と非線型部分の最小自乗法を交互に繰り返して解くことで、パラメータPを決定する。
(5) 一般に、非線型最小自乗法では、パラメータの初期値の選び方によって、解が不安定(発散)となることがあるが、この方法では(a0,a1,a2・・・am)とAについては線型最小自乗法で解くため、これらのパラメータの初期値を選ぶ必要がない点と、以下で説明するようにφについては比較的良好な初期値を求めることが可能である点のため、最終的に(a0,a1,a2・・・am)、A、φの全てのパラメータについて安定に解くことが可能となる。
【0043】
(6) 以上から、初期値が必要なのはφだけであるが、この初期値を決定する方法を次に説明する。
(7) 適当なMで分周して、
φ=[2kπ/M:k=0,1,・・・,M−1]
のようにφを変化させ、それぞれのφについて評価関数Jを最小とする(a0,a1,a2,・・・,am)、Aおよびこのときの評価関数Jの値Jmin(φ)を求める。そして、上記のようにφを変化させたときに、Jmin(φ)を最小とするφを、以降の計算におけるφの初期値φ0とする。
【0044】
(8) 以上をまとめると、次のような手順でφおよび(a0,a1,a2・・・am)、Aを逐次更新していくことになる。
手順1:φ=φi(固定)のときの(a0,a1,a2・・・am)、Aを求める(これは、線型最小自乗法)。
【0045】
手順2:φ=φi+Δφiとおいて、эJ/эφをΔφiの1次まで展開し、эJ/эφ=0となるΔφiを求める(これは非線型最小自乗法)。
手順3:φ(i+1)=φi+Δφiとしてφを更新する。
【0046】
手順4:以上の手順1から手順3をJの変化量が予め定めた基準値以下となるまで繰り返し、Jが最小となる(a0,a1,a2・・・am)、Aおよびφを求める。
【0047】
以上の図5のS11からS15によって、近似関数のパラメータ((a0,a1,a2・・・am)、Aおよびφ)を求めることが可能となる。
図6は、本発明の説明図を示す。
【0048】
図6の(a)は、近似関数を模式的に示す。近似関数y(t)は既述した(式1)で表され、パラメータ((a0,a1,a2・・・am)、Aおよびφ)を求める対象の関数であって、後述する図6の(式2)の多項式関数yd(t)と図6の(式3)の正弦関数yp(t)の和で表現されるものであり、左側のグラフに示すように、図6の(b)と図6の(c)の左側の曲線の和で表されるものである。
【0049】
図6の(b)は、多項式関数を模式的に示す。多項式関数yd(t)(修正後データ)は既述した(式2)で表され、パラメータ(a0,a1,a2・・・am)を求める対象の関数であって、左側の曲線に示すように、表されるものである。
【0050】
図6の(c)は、正弦関数を模式的に示す。正弦関数yp(t)(スピンモジュレーション成分)は既述した(式3)で表され、パラメータ(A,φ)を求める対象の関数であって、左側の曲線に示すように、移動体のスピンによるモジュレーション成分(誤差成分)である。
【0051】
本発明では、観測データ(観測したドップラデータおよびスピンレートデータ)をもとにパラメータ((a0,a1,a2・・・am)、Aおよびφ)を既述した手順で推定して修正後データ(図6の(b))を生成することにより、スピンする移動体(人工衛星)の軌道決定処理の実行前に、入力(観測)されたドップラデータおよびスピンレートデータから逐次処理して重畳誤差信号を除去して軌道決定を1回の処理で済ませ、リアルタイムに軌道決定を行なうことが可能となる。
【0052】
図7は、本発明の説明図を示す。これは、既述した図2のS7の詳細な説明図を示す。ここで、斜線の横長の矩形は、処理単位データブロック毎に図2のS1からS5で求めた修正後のデータ(修正後のドップラデータ)である。小さい黒丸は各ブロックの代表点の値を示し、修正後のドップラ観測データとする値である。二重丸は、両端データを表し、両端のブロックの代表点から外側は当該ブロックの点の値を修正後のデータ(修正後のドップラデータ)とする。
【0053】
以上のように、各処理単位データブロック毎にパラメータを求めて各ブロックの代表点の値を抽出、および両端のブロックの代表点から外側は当該ブロックの値を抽出して修正後のドップラ観測データを生成することが可能となる。
【0054】
図8は、本発明の説明図を示す。
図8の(a)は、レンジ観測データの例を示す。レンジ観測データは、図示のように、時刻毎の地上局と人工衛星間の距離であって、例えば地上局と人工衛星間の往復に要する時間で測定されるものである。
【0055】
図8の(b)は、軌道決定処理の出力例を示す。これは、図8の(a)のレンジ観測データと、修正後のドップラ観測データとをもとに計算して出力する例であって、図示の下記のデータを出力する。
【0056】
・ある時刻における人工衛星位置、速度:
・軌道決定期間の加速度パラメータ:
・観測量バイアス等の観測量パラメータ:
図9は、本発明の説明図(最小自乗法)を示す。
【0057】
図9の(a)は、最小自乗法の説明図を示す。最小自乗法は、n個の時刻tに対して、それぞれ観測データf(ti)が与えられているとき、
近似関数y(t,q)
で、ここで、qは測定パラメータに対して評価関数Jを図示の(式11)のように定義する。
【0058】
このJを最小とするパラメータqを求める手法を最小自乗法という。
図9の(b)は、線型最小自乗法の説明図を示す。近似関数が図示の(式12)のように、係数gjと、tの関数gj(t)の線型結合で表される場合にのみ適用可能である。評価関数が極小、即ちэJ/эqk=0(k=0.1.2・・・m)を満たすqを図示の連立方程式(式13)を解くことによって、一意に求める手法である。パラメータqを求めるにあたって初期値を必要とせず、また、一意に安定した解が得られるという特徴がある。
【0059】
図9の(c)は、非線型最小自乗法の説明図を示す。非線型最小自乗法とは、近似関数がいかなる形でパラメータを含んでいても適用可能であって、図示の(式14)に示すように、「パラメータqを、初期値q0、補正項Δqを用いてq=q0+Δqで表す」。評価関数Jにおいて,qi,Δqを含む項についてテイラー展開してΔqの2次以降の高次項を省略したJ’の値が極小となるΔqを求める手法である。一般的には、初期値q0に対してΔqを求め、これによって更新したqを新たに初期値としてΔqを求めてqを更新する。qの更新とΔqの算出をある判定基準を満たすまで(例えばJの変化量がある一定値以下になるまで)繰り返す。パラメータqを求めるにあたって、初期値を必要とし、また、推定条件と初期値の関係によっては解が発散する(解が得られない)可能性があることが、この手法の特徴である。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、スピンする移動体(例えば人工衛星)の軌道決定処理の実行前に、入力(観測)されたドップラデータから逐次処理して重畳誤差信号を除去して軌道決定を1回の処理で済ませ、リアルタイムに軌道決定を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシステム構成図である。
【図2】本発明の動作説明フローチャートである。
【図3】本発明の説明図(その1)である。
【図4】本発明の説明図(その2)である。
【図5】本発明の動作説明フローチャート(近似関数のパラメータ推定)である。
【図6】本発明の説明図である。
【図7】本発明の説明図である。
【図8】本発明の説明図である。
【図9】本発明の説明図(最小自乗法)である。
【図10】スピン型人工衛星と地上局との関係を示す図である。
【符号の説明】
1:ドップラデータ(観測データ)
2:テレメトリデータ(スピンレートデータ)
3:重畳誤差成分除去手段
4:ドップラデータ(修正データ)
5:レンジデータ等
6:軌道決定手段

Claims (5)

  1. 観測データに基づいて移動体の軌道を決定するデータ処理装置において、
    移動体の速度データを、移動体がスピンしていない場合の速度信号を表す第1の関数と、移動体がスピンしている場合に重畳される誤差信号を表す第2の関数で管理し、観測データに基づいてパラメータを決定し、決定された関数によって重畳する誤差信号を除去する重畳誤差成分除去手段
    を備えることを特徴とするデータ処理装置。
  2. 上記第1の関数および第2の関数のパラメータを推定する際に、両者の関数のパラメータを線型部分と非線型部分とに分け、線型部分を最小自乗法で解く第1の処理手段と、
    上記非線型部分を線型化して繰り返し法によって最小自乗法で解く第2の処理手段と、
    上記第1の処理手段と上記第2の処理手段とを交互に実行させる手段と
    を備え、上記パラメータを推定することを特徴とする請求項1記載のデータ処理装置。
  3. 上記受信したドップラデータ列を所定データずらした所定処理単位データブロックに順次分離する手段と、
    上記分離した処理単位データブロックについて、上記第1の関数および第2の関数のパラメータをそれぞれ推定してそれぞれの第1の関数の代表データの和集合を生成する手段と
    を備えたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載のデータ処理装置。
  4. 上記第1の関数を多項式関数および上記第2の関数を正弦関数としたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のデータ処理装置。
  5. スピンしている移動体のドップラデータを取り込む手段と、
    スピンしている移動体のスピンレートデータを取り込む手段と、
    ドップラデータおよびスピンレートデータをもとに、当該スピンしている移動体を、スピンしていないとしたときのドップラ信号を表す第1の関数、およびスピンしているときの当該スピンに伴って重畳される周期的な誤差信号を表す第2の関数で表現してこれら第1の関数および第2の関数のパラメータを推定する手段と
    して機能させるプログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。
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