JP3762940B2 - 非対称方向性結合器型波長フィルタ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、非対称方向性結合器型波長フィルタに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、WDMシステム等において有用な、パワー移行を全透過波長域において均一に生じさせることができ、透過波長域が平坦でサイドローブが非常に低いステップ状のスペクトル特性を有する、新しい非対称方向性結合器型波長フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
光ファイバを用いた光通信は、低伝送損失や広伝送帯域による大容量通信などの非常に優れた特徴を有するため、高度情報化の進展にともなって、その実用化が急速に進んできている。現在、このような光ファイバを用いた光通信では、光信号を発光する光源とこの光信号を受光して電気信号へ変換する光検出器との間を1本の光ファイバで結ぶ一方向1対1通信が実用化されている。
【0003】
しかしながら、このような一方向1対1通信では、伝送できる情報量が非常に限られており、光ファイバの広帯域性を効率良く利用していない。そこで、さらなる大容量通信化、高機能化のために、1対複数や複数対複数の端末装置間を結ぶネットワーク光通信が盛んに研究開発され、実用化が図られている。このネットワーク光通信においては、たとえば、一本の光ファイバのみにより端末間の双方向通信を行う場合や、異なった種類の複数信号を1本の光ファイバのみにより伝送する場合などでは、波長の異なる光を1本の光ファイバに伝送させ、それぞれの波長に各信号を別々にのせることにより双方向通信や一方向多重通信を行う波長分割多重通信(WDM)が採用されている。また、一方向1対1通信においても、伝送容量を飛躍的に拡大させるに、このWDMが用いられようとしている。
【0004】
従来より、加入者系WDMシステムにおいては、波長1.3μmおよび1.55μmの2つのチャンネルを分割するフィルタの実現が望まれている。このフィルタはレーザ発信波長の許容誤差の範囲が含まれるだけの、十分な広帯域特性が必要である。
このような波長フィルタとしては、たとえば、Adiabatic (断熱的)結合を用いて最適化されたスペクトル特性、すなわち、透過波長域における透過効率が平坦且つ一様であり、阻止波長域における透過効率が0となり、さらにこれら2つの波長域間で透過効率が鋭く変化するステップ状のスペクトル特性を有する波長フィルタが提案されている。
【0005】
このような波長フィルタが持つスペクトル特性は、図15に例示したような非対称方向性結合器型波長フィルタにおいても得ることができる。
非対称方向性結合器型波長フィルタは、コアとクラッドの屈折率差Δ、コアの幅wおよびコアの厚さtが互いに異なる第一光導波路(3)と第二光導波路(4)とが組み合わされた構造を有しており、この構造によって、図16に例示したように、波長λに対する伝播定数βの依存性である分散特性が互いに異なり、ある中心波長λ0 でのみ第一光導波路(3)の伝播定数β1 と第二光導波路(4)の伝播定数β2 とが一致して方向性結合器を構成している。また、伝播定数βと等価屈折率neqの間には、次式
【0006】
【数1】
【0007】
により表される関係がある。但し、λは真空中の波長である。したがって、縦軸に等価屈折率neqをとって2つの導波路の分散を表すと、たとえば図17に示したようになり、第一光導波路(3)の等価屈折率neq (1) および第二光導波路(4)の等価屈折率neq (2) も中心波長λ0 においてのみ一致する。
方向性結合器では、一般に、固有状態の電磁界は、横方向電磁界分布が同一方向に2つのピークを形成する偶モード(伝播定数βe )と、逆方向に2つのピークを形成する奇モード(伝播定数βo )とに分かれるため、次式
【0008】
【数2】
【0009】
で与えられる結合長Lo と、第一光導波路(3)と第二光導波路(4)の方向性結合部(5)の長さLとが等しく(あるいは奇数倍に)なるように設計され、これにより、中心波長λo の光信号のみが入射光導波路とは別の光導波路に乗り移って出射される。
しかしながら、このような従来の非対称方向性結合器型波長フィルタでは、入射波長が中心波長λo からずれると最大結合効率は100%より小さくなり、且つ結合長Lo も短くなるため、光導波路間におけるパワーの移行が周期的に変化してサイドローブが大きくなってしまうといった問題があった。
【0010】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、パワー移行を全透過波長域において均一に生じさせることができ、透過波長域が平坦でサイドローブが非常に低いステップ状のスペクトル特性を有する、新しい非対称方向性結合器型波長フィルタを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、2つの光導波路のうちの一方の光導波路のコアが、方向性結合部における結合始端部から結合終端部へ伝播方向に沿ってテーパー状である幅または膜厚を有していることを特徴とする非対称方向性結合器型波長フィルタ(請求項1)を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、上記の波長フィルタにおいて、2つの光導波路が基板面に垂直に結合されていること(請求項2)や、2つの光導波路のうちの一方の光導波路がARROW型光導波路またはチャネル光導波路であり、他方の光導波路がチャネル光導波路であること(請求項3)や、ARROW型光導波路が伝播方向に沿ってテーパー状である幅または膜厚を有していること(請求項4)もその態様として提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、この出願の発明の非対称方向性結合器型波長フィルタを例示したものである。
この図1に示したこの発明の非対称方向性結合器型波長フィルタでは、たとえば、基板上において垂直に結合された一組の光導波路により構成されており、上部光導波路(1)または下部光導波路(2)のどちらか一方が、伝播方向に沿ってテーパー状に変化する幅を有している。
【0014】
たとえば、図2に例示したように基板上に形成された多層構造を有するSLC−ARROW型光導波路、および図4に例示したようにARROW型光導波路上に形成されたチャネル光導波路がそれぞれ、下部光導波路(2)および上部光導波路(1)として垂直結合されて波長フィルタが構成されているとする。
SLC−ARROW型光導波路の幅W’が初期幅W0’からW0’+ΔW’またはW0’−ΔW’に変化すると、等価屈折率は、図3に例示したように、幅値に従って、幅が広がれば高くなり、狭まれば低くなる。また、チャネル光導波路においては、その幅Wが初期幅W0からW0+ΔWまたはW0−ΔWに変化すると、SLC−ARROW型光導波路と同様に、等価屈折率は図5に例示したように変化する。
【0015】
ここで、たとえば、図6に例示したように、SLC−ARROW型光導波路の幅が、方向性結合部における結合始端部の幅W1’が結合終端部の幅W2’よりも広いテーパー状となっているとすると、透過波長域は、図7に例示したように、SLC−ARROW型光導波路の幅W1’の等価屈折率とチャネル光導波路の幅W0の等価屈折率とが一致する波長を下限、SLC−ARROW型光導波路の幅W2’の等価屈折率とチャネル光導波路の幅W0の伝播定数とが一致する波長を上限とした波長域となる。
【0016】
このため、このような構造の非対称方向性結合器型波長フィルタが有するフィルタ特性は、図8に例示しような透過帯域が平坦でサイドロープが非常に低いステップ状のものとなる。
逆に、図9に例示したように、チャネル光導波路が、方向性結合部における結合始端部の幅W1が結合終端部の幅W2よりも広い、伝播方向に沿ってテーパー状である幅を有している場合では、透過波長域は、図10に例示したように、チャネル光導波路の幅W2の伝播定数とSLC−ARROW型光導波路の幅W0’の伝播定数とが一致する波長を下限、チャネル光導波路の幅W1の伝播定数とSLC−ARROW型光導波路の幅W0’の伝播定数とが一致する波長を上限とした波長域となり、よって、図11に例示したようなステップ状のフィルタ特性となる。
【0017】
すなわち、この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタは、一組の光導波路の一方を、伝播方向に沿ってテーパー状に変化する幅(または膜厚)を有するものとすることによって、任意の透過波長域を有するステップ状フィルタ特性を容易に得ることができるようになる。
また、上述のように得られる透過波長域における各波長は、結合器内の伝播方向において各光導波路の等価屈折率が一致する位置で結合される。このため、パワーの移行は全透過波長域にわたって均一に生じることとなる。
【0018】
なお、下部光導波路(2)としては、上述したARROW型光導波路の他に、チャネル光導波路が用いられていてもよい。
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
【実施例】
図1に例示したこの発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの各光導波路パラメータが図12に例示したような値に設計されている場合におけるフィルタ特性を求めた。
ここでは、チャネル光導波路およびARROW型光導波路が、それぞれ、上部光導波路(1)および下部光導波路(2)として基板面に対して垂直に結合されている。
【0020】
ARROW型光導波路の分散特性は比較的平坦であるので、広帯域で動作可能な波長フィルタとするために、ARROW型光導波路の幅を大きく変化させて、チャンネル光導波路と同程度にその伝播定数を変化させる必要がある。したがって、ARROW型光導波路の幅が線形なテーパー状とされている。
ARROW型光導波路のテーパ状幅の変化、つまり前記の図6に例示した方向性結合部の結合始端部幅W1’から結合終端部幅W2’への変化は、10.0μmから5.0μm、9.5μmから5.5μm,9.0μmから6.0μmの3パターンとした場合、特性の半値全幅はそれぞれ32.7、25.3、18.3である。
【0021】
このようなテーパー状幅を有するARROW型光導波路において、その上部コア層(21)および下部コア層(23)は共に膜厚t=3.5μmおよび屈折率n=1.5365、ストライプ横閉じ込め層(=SLC層)(22)は膜厚0.6μmおよび屈折率n=1.4512、第一クラッド(24)は膜厚t=0.8μmおよび屈折率n=1.4512、第二クラッド(25)は膜厚t=3.5μmおよび屈折率n=1.5365、シリコン基板(26)は屈折率n=3.4780である。
【0022】
一方、チャンネル光導波路の幅は1.30μmに固定されており、そのコア(11)は膜厚t=1.3μmおよび屈折率n=1.6150、クラッド(12)の屈折率n=1.4512、SLC−ARROW型導波路の上部コア層(21)とチャネル導波路のコア(11)の間のクラッド層厚は0.5μmとなっている。
【0023】
また、結合長L、つまり方向性結合部の長さLは30mmに固定されている。図13は、このような各光導波路間の相互作用を例示したものであり、デバイス長による結合強度K(z)と離調Δβ(λ,z)とを定性的に表している。この図13に例示したように、離調Δβ(λ,z)、つまり導波路幅の変化は線形に変化する。一方、結合強度は、デバイス長、つまり方向性結合部の長さLに渡って一定であり、その両端近くにおいて滑らかに減少する。波長が変化するとこの曲線は垂直にシフトし、同調点(Δβ(λ,z)=0)は異なった位置に移動する。
【0024】
図14は、各テーパ状幅の変化パターンにおいて得られるフィルタ特性を例示したものである。なお、このフィルタ特性は、個々の光導波路の厳密なモードを用いて導出したものであり、パワー移行特性はモード結合理論を用いて求めた。この図14から明らかなように、この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタでは、透過効率が平坦で且つ一様な透過波長域と、透過効率がほぼ0となる阻止波長域とのステップ状のスペクトル特性を得ることができ、また、光導波路のテーパー状の幅値によって透過波長域が決まることがわかる。つまり、この発明の波長フィルタでは、波長帯域幅を光導波路幅の変化の割合の制御によって容易に行うことができる。
【0025】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、パワー移行を全透過波長域において均一に生じさせることができ、透過波長域が平坦でサイドローブが非常に低いステップ状のスペクトル特性を有する、新しい非対称方向性結合器型波長フィルタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの構成を例示した斜視図である。
【図2】SLC−ARROW型光導波路を例示した構成図である。
【図3】SLC−ARROW型光導波路の等価屈折率特性を例示した図である。
【図4】チャネル光導波路を例示した構成図である。
【図5】チャネル光導波路の等価屈折率特性を例示した図である。
【図6】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの一例を示した平面図である。
【図7】図6の非対称方向性結合器型波長フィルタの等価屈折率特性を例示した図である。
【図8】図6の非対称方向性結合器型波長フィルタのフィルタ特性を例示した図である。
【図9】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの他の一例を示した平面図である。
【図10】図9の非対称方向性結合器型波長フィルタの等価屈折率特性を例示した図である。
【図11】図9の非対称方向性結合器型波長フィルタのフィルタ特性を例示した図である。
【図12】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける各光導波路パラメータの一例を示した図である。
【図13】図12の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける各光導波路間の相互作用を例示した図である。
【図14】図12の非対称方向性結合器型波長フィルタのフィルタ特性を例示した図である。
【図15】従来の非対称方向性結合器型波長フィルタを例示した概念図である。
【図16】図15の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける2つの光導波路の伝播定数の分散関係を例示した図である。
【図17】図15の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける2つの光導波路の等価屈折率の分散関係を例示した図である。
【符号の説明】
1 上部光導波路
11 コア
12 クラッド
2 下部光導波路
21 上部コア層
22 ストライプ横閉じ込め層
23 下部コア層
24 第一クラッド
25 第二クラッド
26 シリコン基板
3 第一光導波路
4 第二光導波路
5 方向性結合部
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、非対称方向性結合器型波長フィルタに関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、WDMシステム等において有用な、パワー移行を全透過波長域において均一に生じさせることができ、透過波長域が平坦でサイドローブが非常に低いステップ状のスペクトル特性を有する、新しい非対称方向性結合器型波長フィルタに関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
光ファイバを用いた光通信は、低伝送損失や広伝送帯域による大容量通信などの非常に優れた特徴を有するため、高度情報化の進展にともなって、その実用化が急速に進んできている。現在、このような光ファイバを用いた光通信では、光信号を発光する光源とこの光信号を受光して電気信号へ変換する光検出器との間を1本の光ファイバで結ぶ一方向1対1通信が実用化されている。
【0003】
しかしながら、このような一方向1対1通信では、伝送できる情報量が非常に限られており、光ファイバの広帯域性を効率良く利用していない。そこで、さらなる大容量通信化、高機能化のために、1対複数や複数対複数の端末装置間を結ぶネットワーク光通信が盛んに研究開発され、実用化が図られている。このネットワーク光通信においては、たとえば、一本の光ファイバのみにより端末間の双方向通信を行う場合や、異なった種類の複数信号を1本の光ファイバのみにより伝送する場合などでは、波長の異なる光を1本の光ファイバに伝送させ、それぞれの波長に各信号を別々にのせることにより双方向通信や一方向多重通信を行う波長分割多重通信(WDM)が採用されている。また、一方向1対1通信においても、伝送容量を飛躍的に拡大させるに、このWDMが用いられようとしている。
【0004】
従来より、加入者系WDMシステムにおいては、波長1.3μmおよび1.55μmの2つのチャンネルを分割するフィルタの実現が望まれている。このフィルタはレーザ発信波長の許容誤差の範囲が含まれるだけの、十分な広帯域特性が必要である。
このような波長フィルタとしては、たとえば、Adiabatic (断熱的)結合を用いて最適化されたスペクトル特性、すなわち、透過波長域における透過効率が平坦且つ一様であり、阻止波長域における透過効率が0となり、さらにこれら2つの波長域間で透過効率が鋭く変化するステップ状のスペクトル特性を有する波長フィルタが提案されている。
【0005】
このような波長フィルタが持つスペクトル特性は、図15に例示したような非対称方向性結合器型波長フィルタにおいても得ることができる。
非対称方向性結合器型波長フィルタは、コアとクラッドの屈折率差Δ、コアの幅wおよびコアの厚さtが互いに異なる第一光導波路(3)と第二光導波路(4)とが組み合わされた構造を有しており、この構造によって、図16に例示したように、波長λに対する伝播定数βの依存性である分散特性が互いに異なり、ある中心波長λ0 でのみ第一光導波路(3)の伝播定数β1 と第二光導波路(4)の伝播定数β2 とが一致して方向性結合器を構成している。また、伝播定数βと等価屈折率neqの間には、次式
【0006】
【数1】
【0007】
により表される関係がある。但し、λは真空中の波長である。したがって、縦軸に等価屈折率neqをとって2つの導波路の分散を表すと、たとえば図17に示したようになり、第一光導波路(3)の等価屈折率neq (1) および第二光導波路(4)の等価屈折率neq (2) も中心波長λ0 においてのみ一致する。
方向性結合器では、一般に、固有状態の電磁界は、横方向電磁界分布が同一方向に2つのピークを形成する偶モード(伝播定数βe )と、逆方向に2つのピークを形成する奇モード(伝播定数βo )とに分かれるため、次式
【0008】
【数2】
【0009】
で与えられる結合長Lo と、第一光導波路(3)と第二光導波路(4)の方向性結合部(5)の長さLとが等しく(あるいは奇数倍に)なるように設計され、これにより、中心波長λo の光信号のみが入射光導波路とは別の光導波路に乗り移って出射される。
しかしながら、このような従来の非対称方向性結合器型波長フィルタでは、入射波長が中心波長λo からずれると最大結合効率は100%より小さくなり、且つ結合長Lo も短くなるため、光導波路間におけるパワーの移行が周期的に変化してサイドローブが大きくなってしまうといった問題があった。
【0010】
そこで、この出願の発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、パワー移行を全透過波長域において均一に生じさせることができ、透過波長域が平坦でサイドローブが非常に低いステップ状のスペクトル特性を有する、新しい非対称方向性結合器型波長フィルタを提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、2つの光導波路のうちの一方の光導波路のコアが、方向性結合部における結合始端部から結合終端部へ伝播方向に沿ってテーパー状である幅または膜厚を有していることを特徴とする非対称方向性結合器型波長フィルタ(請求項1)を提供する。
【0012】
また、この出願の発明は、上記の波長フィルタにおいて、2つの光導波路が基板面に垂直に結合されていること(請求項2)や、2つの光導波路のうちの一方の光導波路がARROW型光導波路またはチャネル光導波路であり、他方の光導波路がチャネル光導波路であること(請求項3)や、ARROW型光導波路が伝播方向に沿ってテーパー状である幅または膜厚を有していること(請求項4)もその態様として提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、この出願の発明の非対称方向性結合器型波長フィルタを例示したものである。
この図1に示したこの発明の非対称方向性結合器型波長フィルタでは、たとえば、基板上において垂直に結合された一組の光導波路により構成されており、上部光導波路(1)または下部光導波路(2)のどちらか一方が、伝播方向に沿ってテーパー状に変化する幅を有している。
【0014】
たとえば、図2に例示したように基板上に形成された多層構造を有するSLC−ARROW型光導波路、および図4に例示したようにARROW型光導波路上に形成されたチャネル光導波路がそれぞれ、下部光導波路(2)および上部光導波路(1)として垂直結合されて波長フィルタが構成されているとする。
SLC−ARROW型光導波路の幅W’が初期幅W0’からW0’+ΔW’またはW0’−ΔW’に変化すると、等価屈折率は、図3に例示したように、幅値に従って、幅が広がれば高くなり、狭まれば低くなる。また、チャネル光導波路においては、その幅Wが初期幅W0からW0+ΔWまたはW0−ΔWに変化すると、SLC−ARROW型光導波路と同様に、等価屈折率は図5に例示したように変化する。
【0015】
ここで、たとえば、図6に例示したように、SLC−ARROW型光導波路の幅が、方向性結合部における結合始端部の幅W1’が結合終端部の幅W2’よりも広いテーパー状となっているとすると、透過波長域は、図7に例示したように、SLC−ARROW型光導波路の幅W1’の等価屈折率とチャネル光導波路の幅W0の等価屈折率とが一致する波長を下限、SLC−ARROW型光導波路の幅W2’の等価屈折率とチャネル光導波路の幅W0の伝播定数とが一致する波長を上限とした波長域となる。
【0016】
このため、このような構造の非対称方向性結合器型波長フィルタが有するフィルタ特性は、図8に例示しような透過帯域が平坦でサイドロープが非常に低いステップ状のものとなる。
逆に、図9に例示したように、チャネル光導波路が、方向性結合部における結合始端部の幅W1が結合終端部の幅W2よりも広い、伝播方向に沿ってテーパー状である幅を有している場合では、透過波長域は、図10に例示したように、チャネル光導波路の幅W2の伝播定数とSLC−ARROW型光導波路の幅W0’の伝播定数とが一致する波長を下限、チャネル光導波路の幅W1の伝播定数とSLC−ARROW型光導波路の幅W0’の伝播定数とが一致する波長を上限とした波長域となり、よって、図11に例示したようなステップ状のフィルタ特性となる。
【0017】
すなわち、この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタは、一組の光導波路の一方を、伝播方向に沿ってテーパー状に変化する幅(または膜厚)を有するものとすることによって、任意の透過波長域を有するステップ状フィルタ特性を容易に得ることができるようになる。
また、上述のように得られる透過波長域における各波長は、結合器内の伝播方向において各光導波路の等価屈折率が一致する位置で結合される。このため、パワーの移行は全透過波長域にわたって均一に生じることとなる。
【0018】
なお、下部光導波路(2)としては、上述したARROW型光導波路の他に、チャネル光導波路が用いられていてもよい。
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0019】
【実施例】
図1に例示したこの発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの各光導波路パラメータが図12に例示したような値に設計されている場合におけるフィルタ特性を求めた。
ここでは、チャネル光導波路およびARROW型光導波路が、それぞれ、上部光導波路(1)および下部光導波路(2)として基板面に対して垂直に結合されている。
【0020】
ARROW型光導波路の分散特性は比較的平坦であるので、広帯域で動作可能な波長フィルタとするために、ARROW型光導波路の幅を大きく変化させて、チャンネル光導波路と同程度にその伝播定数を変化させる必要がある。したがって、ARROW型光導波路の幅が線形なテーパー状とされている。
ARROW型光導波路のテーパ状幅の変化、つまり前記の図6に例示した方向性結合部の結合始端部幅W1’から結合終端部幅W2’への変化は、10.0μmから5.0μm、9.5μmから5.5μm,9.0μmから6.0μmの3パターンとした場合、特性の半値全幅はそれぞれ32.7、25.3、18.3である。
【0021】
このようなテーパー状幅を有するARROW型光導波路において、その上部コア層(21)および下部コア層(23)は共に膜厚t=3.5μmおよび屈折率n=1.5365、ストライプ横閉じ込め層(=SLC層)(22)は膜厚0.6μmおよび屈折率n=1.4512、第一クラッド(24)は膜厚t=0.8μmおよび屈折率n=1.4512、第二クラッド(25)は膜厚t=3.5μmおよび屈折率n=1.5365、シリコン基板(26)は屈折率n=3.4780である。
【0022】
一方、チャンネル光導波路の幅は1.30μmに固定されており、そのコア(11)は膜厚t=1.3μmおよび屈折率n=1.6150、クラッド(12)の屈折率n=1.4512、SLC−ARROW型導波路の上部コア層(21)とチャネル導波路のコア(11)の間のクラッド層厚は0.5μmとなっている。
【0023】
また、結合長L、つまり方向性結合部の長さLは30mmに固定されている。図13は、このような各光導波路間の相互作用を例示したものであり、デバイス長による結合強度K(z)と離調Δβ(λ,z)とを定性的に表している。この図13に例示したように、離調Δβ(λ,z)、つまり導波路幅の変化は線形に変化する。一方、結合強度は、デバイス長、つまり方向性結合部の長さLに渡って一定であり、その両端近くにおいて滑らかに減少する。波長が変化するとこの曲線は垂直にシフトし、同調点(Δβ(λ,z)=0)は異なった位置に移動する。
【0024】
図14は、各テーパ状幅の変化パターンにおいて得られるフィルタ特性を例示したものである。なお、このフィルタ特性は、個々の光導波路の厳密なモードを用いて導出したものであり、パワー移行特性はモード結合理論を用いて求めた。この図14から明らかなように、この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタでは、透過効率が平坦で且つ一様な透過波長域と、透過効率がほぼ0となる阻止波長域とのステップ状のスペクトル特性を得ることができ、また、光導波路のテーパー状の幅値によって透過波長域が決まることがわかる。つまり、この発明の波長フィルタでは、波長帯域幅を光導波路幅の変化の割合の制御によって容易に行うことができる。
【0025】
もちろん、この発明は以上の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上詳しく説明した通り、この発明によって、パワー移行を全透過波長域において均一に生じさせることができ、透過波長域が平坦でサイドローブが非常に低いステップ状のスペクトル特性を有する、新しい非対称方向性結合器型波長フィルタが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの構成を例示した斜視図である。
【図2】SLC−ARROW型光導波路を例示した構成図である。
【図3】SLC−ARROW型光導波路の等価屈折率特性を例示した図である。
【図4】チャネル光導波路を例示した構成図である。
【図5】チャネル光導波路の等価屈折率特性を例示した図である。
【図6】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの一例を示した平面図である。
【図7】図6の非対称方向性結合器型波長フィルタの等価屈折率特性を例示した図である。
【図8】図6の非対称方向性結合器型波長フィルタのフィルタ特性を例示した図である。
【図9】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタの他の一例を示した平面図である。
【図10】図9の非対称方向性結合器型波長フィルタの等価屈折率特性を例示した図である。
【図11】図9の非対称方向性結合器型波長フィルタのフィルタ特性を例示した図である。
【図12】この発明の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける各光導波路パラメータの一例を示した図である。
【図13】図12の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける各光導波路間の相互作用を例示した図である。
【図14】図12の非対称方向性結合器型波長フィルタのフィルタ特性を例示した図である。
【図15】従来の非対称方向性結合器型波長フィルタを例示した概念図である。
【図16】図15の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける2つの光導波路の伝播定数の分散関係を例示した図である。
【図17】図15の非対称方向性結合器型波長フィルタにおける2つの光導波路の等価屈折率の分散関係を例示した図である。
【符号の説明】
1 上部光導波路
11 コア
12 クラッド
2 下部光導波路
21 上部コア層
22 ストライプ横閉じ込め層
23 下部コア層
24 第一クラッド
25 第二クラッド
26 シリコン基板
3 第一光導波路
4 第二光導波路
5 方向性結合部
Claims (4)
- 2つの光導波路のうちの一方の光導波路のコアが、方向性結合部における結合始端部から結合終端部へ伝播方向に沿ってテーパー状である幅または膜厚を有していることを特徴とする非対称方向性結合器型波長フィルタ。
- 2つの光導波路が基板面に垂直に結合されている請求項1の非対称方向性結合器型波長フィルタ。
- 2つの光導波路のうちの一方の光導波路がARROW型光導波路またはチャネル光導波路であり、他方の光導波路がチャネル光導波路である請求項1または2の非対称方向性結合器型波長フィルタ。
- ARROW型光導波路が伝播方向に沿ってテーパー状である幅または膜厚を有している請求項3の非対称方向性結合器型波長フィルタ。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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